【実施例】
【0030】
「実施例1」
一辺150mm×150mmの
図3(A)に示す正方形状の透明プラスチック製の壁部21を5つ用意し、接着剤を用いてこれらを立体状に組み立てて底面のみを開口させた立方体形状のカバー体22を構成し、内部にコーヒーカップ23を収容可能とした。
図3(A)に示すカバー体22と同等構成の別のカバー体22を用意し、このカバー体22の底面を除く各面に先の実施形態において説明した積層構造と同等構造であり、後述する積層構造のマイクロ波遮蔽粘着シートの剥離紙を剥がして粘着層面を貼付し、粘着層付きのマイクロ波遮蔽体25を備えた試験用カバー体26を構成した。
【0031】
試験用カバー体に貼り付けたマイクロ波遮蔽体は、表面基材(PET:厚さ38μm),水含有層(ポリアクリル酸:水40質量%含水:厚さ2mm),PETからなる遮熱フィルム(厚さ188μm),粘着層(リンテック(株)製汎用アクリル系強粘着剤:PAT1を用いた粘着層:乾燥後の厚さ20μm),リンテック(株)製剥離紙「8K」をこの順番で積層した積層構造のマイクロ波遮蔽粘着シートを用いた。
【0032】
このマイクロ波遮蔽粘着シートは以下の手順により製造した。
前記剥離紙の剥離剤層上に、溶媒(トルエンと酢酸エチルの混合溶液)に分散させた粘着剤を塗布し、温度100℃で1分間加熱して溶媒を揮発させ、厚さ20μmの粘着層を得た。
この粘着層の剥離紙とは反対面に、上述の厚さのPETからなる遮熱フィルムを貼り合わせた。
表面基材(PET:厚さ38μm)にマイクロ波遮蔽材となる水性ゲルを、上述の含水率、膜厚となるように塗布し、前記遮熱フィルムの粘着層と反対の面と、水性ゲルの表面基材と反対の面とを貼り合せた。
このマイクロ波遮蔽粘着シートを、150mm×150mmのサイズに抜き加工してカバー体に貼り付け可能なマイクロ波遮蔽粘着シートを得、カバー体22に貼り付けて試験用カバー体26を構成した。
次に、一定量(60cc)の水(水温12.5℃)を収容したコーヒーカップ23を家庭用の電子レンジ(出力600W)に収容し、
図3(B)に示す構成のカバー体26で覆った後、電子レンジで40秒間加熱した。
40秒間の電子レンジ加熱の結果、コーヒーカップ内の水は12.5℃から20.5℃まで上昇した(上昇温度8.0℃)。
【0033】
「比較例1」
一定量(60cc)の水(水温13.5℃)を収容したコーヒーカップ23を家庭用の電子レンジ(出力600W)に収容し、
図3(A)に示す構成のカバー体22で覆った後、電子レンジで40秒間加熱した。その結果、コーヒーカップ内の水は13.5℃から44℃まで上昇した(上昇温度30.5℃)。
以上説明の結果から、ポリアクリル酸からなる水含有層を備えたマイクロ波遮蔽粘着シートは電子レンジのマイクロ波に対し優れた遮蔽効果を発揮することを確認できた。
【0034】
「実施例2」
前記構造のマイクロ波遮蔽体に替えて、表面基材(PET:厚さ38μm),水含有層(ポリアクリル酸:水40質量%含水:厚さ2mm),発泡PETの遮熱フィルム(東洋紡(株)商品名:クリスパーK2323、厚さ125μm),粘着層(リンテック(株)製汎用アクリル系強粘着剤:PAT1を用いた粘着層:乾燥後の厚さ20μm),リンテック(株)製剥離紙「8K」をこの順番で積層した積層構造のマイクロ波遮蔽粘着シートを用いた。
40秒間の電子レンジ加熱の結果、コーヒーカップ内の水は12.5℃から19.5℃まで上昇した(上昇温度7.0℃)。
以上説明の結果から、水含有層を備えたマイクロ波遮蔽体は電子レンジのマイクロ波に対し優れた遮蔽効果を発揮することを確認できた。
【0035】
「実施例3」
前記構造のマイクロ波遮蔽体に替えて、表面基材(PET:厚さ38μm),水含有層(ポリアクリル酸:水40質量%含水:厚さ2mm),ポリイミドの遮熱フィルム(東レ・デュポン(株)商品名:カプトン、厚さ125μm),粘着層(リンテック(株)製汎用アクリル系強粘着剤:PAT1を用いた粘着層:乾燥後の厚さ20μm),リンテック(株)製剥離紙「8K」をこの順番で積層した積層構造のマイクロ波遮蔽粘着シートを用いた。
40秒間の電子レンジ加熱の結果、コーヒーカップ内の水は12.5℃から23.0℃まで上昇した(上昇温度10.5℃)。
以上説明の結果から、水含有層を備えたマイクロ波遮蔽体は電子レンジのマイクロ波に対し優れた遮蔽効果を発揮することを確認できた。
【0036】
「実施例4」
前記構造のマイクロ波遮蔽体に替えて、表面基材(PET:厚さ38μm),水含有層(ポリアクリル酸:水40質量%含水:厚さ2mm),発泡ポリプロピレンの遮熱フィルム(ユポ・コーポレーション商品名:ユポSGS、厚さ110μm),粘着層(リンテック(株)製汎用アクリル系強粘着剤:PAT1を用いた粘着層:乾燥後の厚さ20μm),リンテック(株)製剥離紙「8K」をこの順番で積層した積層構造のマイクロ波遮蔽粘着シートを用いた。
40秒間の電子レンジ加熱の結果、コーヒーカップ内の水は12.5℃から22.0℃まで上昇した(上昇温度9.5℃)。
以上説明の結果から、水含有層を備えたマイクロ波遮蔽体は電子レンジのマイクロ波に対し優れた遮蔽効果を発揮することを確認できた。
【0037】
「実施例5」
前記構造のマイクロ波遮蔽体に替えて、表面基材(ポリエステル不織布:坪量50g/m
2),水含有層(ポリアクリル酸:水40質量%含水:厚さ2mm),PETの遮熱フィルム(厚さ188μm),粘着層(リンテック(株)製汎用アクリル系強粘着剤:PAT1を用いた粘着層:乾燥後の厚さ20μm),リンテック(株)製剥離紙「8K」をこの順番で積層した積層構造のマイクロ波遮蔽粘着シートを用いた。
40秒間の電子レンジ加熱の結果、コーヒーカップ内の水は12.5℃から25.5℃まで上昇した(上昇温度13.0℃)。
以上説明の結果から、水含有層を備えたマイクロ波遮蔽粘着シートは電子レンジのマイクロ波に対し優れた遮蔽効果を発揮することを確認できた。
【0038】
「実施例6」
前記構造のマイクロ波遮蔽体に替えて、表面基材(ポリエステル不織布:坪量50g/m
2),水含有層(ポリアクリル酸:水40質量%含水:厚さ2mm),ポリエステル不織布の遮熱フィルム(坪量 50g/m
2),粘着層(リンテック(株)製汎用アクリル系強粘着剤:PAT1を用いた粘着層:乾燥後の厚さ20μm),リンテック(株)製剥離紙「8K」をこの順番で積層した積層構造のマイクロ波遮蔽粘着シートを用いた。
40秒間の電子レンジ加熱の結果、コーヒーカップ内の水は12.5℃から28.0℃まで上昇した(上昇温度15.5℃)。
以上説明の結果から、水含有層を備えたマイクロ波遮蔽粘着シートは電子レンジのマイクロ波に対し優れた遮蔽効果を発揮することを確認できた。
【0039】
「実施例7」
前記構造のマイクロ波遮蔽体に替えて、表面基材(PET:厚さ38μm),水含有層(ポリビニルアルコール:水40質量%含水:厚さ2mm),PETからなる遮熱フィルム(厚さ188μm),粘着層(リンテック(株)製汎用アクリル系強粘着剤:PAT1を用いた粘着層:乾燥後の厚さ20μm),リンテック(株)製剥離紙「8K」をこの順番で積層した積層構造のマイクロ波遮蔽粘着シートを用いた。
40秒間の電子レンジ加熱の結果、コーヒーカップ内の水は12.5℃から21.0℃まで上昇した(上昇温度8.5℃)。
以上説明の結果から、水含有層を備えたマイクロ波遮蔽粘着シートは電子レンジのマイクロ波に対し優れた遮蔽効果を発揮することを確認できた。
【0040】
上述の実施例1〜実施例7について主要な項目毎に以下の表1に試験結果をまとめて記載する。表1において、PAAc:ポリアクリル酸、PVA:ポリビニルアルコールを示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1には成型性と上昇温度も併記した。
【0043】
また、
参考例8〜11として、表面基材(PET:38μm)と遮熱層(PET:188μm)と粘着層(PAT1)は共通のものを用い、実施例8はPAAc:水5質量%:厚さ3mmの水含有層、実施例9はPAAc:水70質量%:厚さ100μmの水含有層、実施例10はPAAc:水98質量%:厚さ2mmの水含有層、実施例11はPAAc:水95質量%:厚さ2mmの水含有層を用いて各マイクロ波遮蔽粘着シートを構成した。
【0044】
表1に示す結果から、水含有層を有し遮熱層を有する実施例のマイクロ波遮蔽粘着シートであるならば、いずれの例であっても、比較例1に対し上昇温度を抑えることができた。
なお、表1の結果から、含水率が低いとマイクロ波遮蔽効果が低く、含水率が高いと加工性および形状維持が困難となることがわかる。
更に、水含有層が薄いとマイクロ波遮蔽効果が低く、厚過ぎると加工性および形状維持が困難になることもわかる。
また、遮熱層について、熱伝導率が高いと含水層中の水が加温された際に、その熱を内部に伝えてしまう。また、熱伝導率が高いものはマイクロ波照射によって燃えてしまうおそれがある。
【0045】
「評価方法」
「成型性」
成型性とは、上述の成型加工方法によりマイクロ波遮蔽材を製造する際、以下に説明する基準で成形性を判断した結果である。
マイクロ波遮蔽粘着シートを製造する場合、所望のサイズに切れ込みとカス上げを行い、不要部分を除去する加工工程時(抜き加工)時と、加工後の経時(常温にて7日保管)による形状保持性を確認した。
評価:×の場合
下記のいずれかが発生した場合。
・抜き加工した際にマイクロ波遮蔽粘着シート端部から、水性ゲルが糸引きして抜き加工できなかったり、カス上げの際に共上がりしてしまう場合。
・抜き加工したマイクロ波遮蔽粘着シート端部から、水性ゲルが経時(常温にて7日保管)で、5mm以上はみ出してしまう場合。
【0046】
評価:△の場合
抜き加工とカス上げは問題なく出来たが、抜き加工したマイクロ波遮蔽粘着シート端部から、水性ゲルが経時(常温にて7日保管)で、1mm以上〜5mm未満、はみ出してしまう場合。
評価:○の場合
抜き加工とカス上げが問題なく出来、抜き加工したマイクロ波遮蔽粘着シート端部から、水性ゲルが経時(常温にて7日保管)で、はみ出しが1mm未満の場合。
【0047】
「上昇温度」
一辺150mm×150mmの
図3(A)に示す正方形状の透明プラスチック製の壁部21を5つ用意し、接着剤を用いてこれらを立体状に組み立てて底面のみを開口させた立方体形状のカバー体22を構成した。このカバー体22の底面を除く各面にマイクロ波遮蔽体粘着シートの剥離紙を剥がして粘着層面を貼付し、試験用カバー体26を構成した。次に、一定量(60cc)の水(水温12.5℃)を収容したコーヒーカップ23を家庭用の電子レンジ(出力600W)に収容し、
図3(B)に示す構成のカバー体26で覆った後、電子レンジで40秒間加熱した。
この試験(加熱)前後の温度差を上昇温度とし、この上昇温度が20℃以下であれば、マイクロ波遮蔽効果あり、と判断した。