(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トランスデューサが、複数の電極を備え、前記モードコントローラが、異なる周波数及び波タイプの超音波を生成するために前記トランスデューサの電極の異なる組を選択するように動作可能である、請求項1又は2に記載の装置。
前記モードコントローラが、前記選択された周波数及び波タイプのうちの異なる複数の周波数及び波タイプで連続して動作するように前記発生器及び前記トランスデューサを構成するように動作可能である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
前記モードコントローラが、前記発生器及び前記トランスデューサを1つの構成から別の構成に、それらの構成間の時間遅延を伴って変更するように動作可能である、請求項5に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で説明されるいくつかの例は、窓を清掃する方法及び装置に関する。装置は、窓の表面に沿って又は窓を通って伝搬する超音波を放出するように配置されたトランスデューサを備える。本明細書で説明されるいくつかの例は、窓から降下物を超音波で除去することに関する。「降下物」という用語は、雨、みぞれ、雪、氷、霧雨、霧、もや、ひょう、又はその他の種類の降下物を含むことが意図されている。超音波は、窓から降下物を除去する。トランスデューサは、窓の表面に結合され得る。
【0013】
説明を簡単にするため、以下の記述は、水滴に関する。水滴の除去は、超音波を使用して、窓の表面の水滴を振動させること、進ませること、及び/又は微粒化することの1つ又は複数を含み得る。しかし、本発明の例は、他の液体、たとえば水と他の物質又は油の混合物又は溶液などの液体堆積物を窓から除去するために使用され得る。固体堆積物は、水又は水と洗剤等の添加物の混合物を噴霧するか、又はそれらで洗浄した後、窓を超音波で清掃することにより、窓から取り除かれ得る。
【0014】
窓は、加熱素子をオプションで備え得る。いくつかの例では、窓は、建造物の窓又は車両の窓であり得る。たとえば、窓が車両の窓である場合、その窓は自動車用ガラスから製造され得る。窓は、前面窓、後部窓、サンルーフ、側部窓等の車両の窓であり得る。窓は、ガラスの最上位層と最下位層との間に挟まれた積層を備え得る。たとえば、積層は、焼鈍しガラスの2つの層の間で圧縮されたポリビニルブチラール(PVB)積層であり得る。
【0015】
本明細書で説明されるいくつかの例は、車両の積層前面窓又は積層後部窓から水を除去することに関する。水は、積層前面窓又は積層後部窓から超音波で除去される。
【0016】
「超音波」又は「超音波で」という用語は、超音波周波数を有する波を示すために使用される。超音波周波数は、概ね100キロヘルツ(kHz)〜50メガヘルツ(MHz)の範囲内又はそれよりも高い周波数を有すると考えられる。超音波は、信号発生器に取り付けられたトランスデューサから放出される。発生器は、超音波周波数の電気信号をトランスデューサに提供するように構成された信号発生器であり得る。トランスデューサは、発生器からの超音波信号に基づいて超音波を生成するために駆動されるように配置される。
【0017】
本明細書で説明されるいくつかの例では、トランスデューサは、100kHz〜4MHzの周波数範囲内の周波数又はそれより高い周波数を放出することができるように構成される。窓の清掃は、1つ又は複数のトランスデューサを使用して実現される。
【0018】
本明細書で説明される1つ又は複数のトランスデューサのそれぞれは、複数の電極を備える。各トランスデューサの電極は、各電極が他の電極から独立して操作され得るように構成される。よって、トランスデューサは、実現可能な超音波周波数の範囲内の周波数で動作するように構成され得る。周波数の選択は、信号発生器でその周波数の電気信号を生成し、その信号をその固有周波数に対応する間隔を有する電極の「組」に適用することにより、実現される。本説明を通じて頻繁に使用される「1つの」又は「単一の」周波数という用語は、トランスデューサから放出される中心周波数又は主周波数に関するものとして解釈されるべきである。なぜなら、中心周波数の周囲の帯域幅を有する周波数帯域が放出されるからである。
【0019】
超音波の周波数及び/又は波タイプは、動的に選択され得る。周波数と波タイプとの組み合わせは、本明細書で、動作モードと呼ばれる。異なる表面音響波タイプの例として、レイリー波、ラム波、及び板波がある。特定の周波数範囲は好ましい波タイプを有し得、その逆も然りである。たとえば、レイリー波は、約2.5MHzを超える高い周波数で生成され得る。ラム波は、約1〜2.5MHzの中間的な周波数で生成され得る。板波は、約1MHz未満の低い周波数で生成され得る。
【0020】
本明細書で説明される1つ又は複数のトランスデューサは、1つ又は複数のトランスデューサから放出される超音波の周波数及び/又は波タイプを選択する機能を提供する。よって、各トランスデューサの動作モードは、各トランスデューサの動作条件が動的に選択され得るため、動的である。したがって、各トランスデューサは、トランスデューサごとに利用可能な複数の動作モードが存在するため、「マルチモード」トランスデューサである。
【0021】
いくつかの例について、添付の図面を参照しながら以下に説明する。図面の組で特定の特徴について使用されている同じ参照番号は、同じ特徴を示す。
【0022】
窓を清掃する例示的な方法が
図1の流れ図に示されている。ブロック100で、動作モードが選択される。動作モードは、トランスデューサの動作に関し、トランスデューサの電極の特定の組の動作に基づいて選択され得る。トランスデューサの各電極は、各電極の独立した動作を実現するために、信号発生器に個別に接続され得る。信号発生器に接続される電極を独立して選択することで、トランスデューサの選択された動作周波数を動的に制御する機能が与えられる。たとえば、電極は、個別に接続されるか、連続する群で接続されるか、又は一部の電極がまったく接続されないことがあり得る。たとえば、トランスデューサの電極が1つおきに接続され、それらの電極が操作され、よってアクティブである一方、他の電極が操作されず、よって非アクティブであることがあり得る。よって、トランスデューサの所望の動作周波数は、トランスデューサの動作モードの選択に基づいて、すなわち、動作のために選択された電極の組と発生器からの信号周波数とに基づいて、実現され得る。ブロック150で、選択された動作モードに基づいて、窓が清掃される。窓は、選択された動作モードでトランスデューサから放出される超音波により、すなわち、その動作モードの所望の周波数若しくは複数の周波数及び/又は波タイプで、清掃される。
【0023】
図2Aは、複数の電極210を有するトランスデューサ200を示す。各電極は、後ほど
図9A及び
図9Bを参照して説明するように、周波数発生器及びスイッチング回路への電気接続を提供する独自のコネクタを有する。遮蔽帯板230は、電極210を接地板250から電気的に分離する。トランスデューサの圧電材料240は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)材料、又は水晶結晶等の他の任意の適切な圧電材料であり得る。電極210は、圧電層に沿って延びる電極「指」の物理的外観を有し得る。圧電層の電極指と反対の側にある、さらなる電極は、接地250に電気的に接続される。このさらなる電極は、電極「指」の物理的外観を有することも、そうでないこともある。なぜなら、この追加の電極は、圧電層の個別の電極と反対の側にある電極「シート」であり得るからである。
【0024】
図2Bは、
図2Aを参照して説明したトランスデューサの側面図を示す。さらなる電極260が、接地250に電気的に接続されたものとして示されている。トランスデューサが操作されると、信号発生器が要求された周波数の信号を、その周波数に対して選択された電極の組に適用し、電極が圧電層に取り付けられることで、トランスデューサが超音波を放出する。超音波は、電極指に対して垂直な方向、たとえば、矢印270により示される方向で放出される。
【0025】
トランスデューサは、トランスデューサを窓の表面に取り付けることにより、窓に取り付けられ得る。窓の表面へのトランスデューサの取り付けは、トランスデューサを窓の表面に化学結合させるか、又は物理的に固定することにより、実現され得る。エポキシ樹脂等の適切な結合剤が市販されている可能性がある。結合剤を使用すると、トランスデューサと窓の表面との間に結合層が形成される。この結合層は、たとえば真空下で用意されることで、薄く、厚さが均一で、気泡を含まないようになり得る。トランスデューサは、その電極「指」210が窓の表面を向く状態で窓に取り付けられ得るか、又は代替で、その電極「指」210が窓の表面から離れる方向を向くように取り付けられ得る。電極210が窓を向くようにすると、窓に適用される波エネルギーは増加するが、たとえば電極コネクタを介して、電極への電気的な接続を設けることが難しくなる。
【0026】
トランスデューサの動作モードの例について以下に説明する。本明細書で説明される例では、トランスデューサは、100kHz〜4MHzの範囲又はそれ以上より選択される任意の周波数で動作するように構成され得、特定の物理的特性を有するガラスで使用するのに適している。この例では、ガラスは、自動車の前面窓のガラスである。周波数は、信号発生器により作成される電気信号の選択された周波数と、トランスデューサの電極の特定の組の選択とに基づいて、選択することができる。たとえば、いくつかの例では、約220kHz、約570kHz、約1.39MHz、約2MHz、又は約3.1MHzのいずれか1つの周波数より選択される周波数に対して、電極の組が構成され得る。
【0027】
これらの値の前後の周波数、たとえば、220kHzのプラスマイナス50kHz、570kHzのプラスマイナス50kHz、1.39MHzのプラスマイナス100kHz、2MHzのプラスマイナス100kHz、及び3.1MHzのプラスマイナス100kHzが使用され得る。
【0028】
これらの例示的周波数のそれぞれの選択について、後ほど
図4A、
図4B、
図5A、
図5B、
図6A、及び
図6Bを参照しながら説明する。本明細書で説明される、電極の異なる組の使用に基づいて選択され得る周波数は、いかなる意味でも限定的と考えられるべきではないことに留意する必要がある。なぜなら、任意の周波数を選択可能にすることが想定されるからである。周波数の範囲内の任意の1つの周波数を選択することは、所定の周波数選択に対して製作及び構成されたトランスデューサに基づいて、可能とされるべきである。これにより、電極の異なる組の動作により、本明細書に記載された方法に基づいて動作周波数を選択することが可能となる。ただし、本発明は、本明細書に記載された選択可能な周波数のみに限定されるわけではない。
【0029】
図3A〜
図3Cは、動作時に1つ又は複数のトランスデューサから超音波で放出され得る、異なる波タイプの例を示している。
【0030】
図3Aの例では、トランスデューサ300は、エポキシ樹脂等の結合層320により、窓310の表面に結合されている。水滴330は、窓の表面に存在し得る。トランスデューサは、窓の表面のみを通って伝搬する超音波を放出するように駆動され得る。この例の超音波は、レイリー波340等の表面音響波である。トランスデューサから放出されるレイリー波は、約2.5MHzを超える高い周波数で生成され得る。レイリー波は、窓の表面に沿って、水滴に向かって伝搬する。この超音波は窓の表面に結合されているため、窓の表面の水滴に遭遇し得る。超音波は特定の周波数(よって特定の波長)を有するため、水滴(複数可)に到達したときに、超音波が水滴を「発見」し、超音波から水滴にエネルギーが伝達されて窓の表面から水滴を除去する。超音波の高いエネルギーを水滴(複数可)に効率的に伝達することで、窓の表面の水滴(複数可)の微粒化が実現される。この例では、水滴は、微粒化又は推進の過程により除去され得る。水滴は、微粒化されて窓の表面から部分的又は完全に取り除かれ得る。部分的に微粒化された場合、残りの水滴は、推進又は振動のさらなる過程により除去され得る。たとえば、水滴を窓の表面に沿って進ませて、窓を通じたクリアな視界を邪魔する位置から水滴を移動させることができる。
【0031】
図3Bの例では、トランスデューサから放出される超音波は、ラム波である。ラム波は、窓の表面に沿って伝搬する。この例でトランスデューサから放出されるラム波は、約1〜2.5MHzの周波数を有し得る。トランスデューサが取り付けられた窓の表面に沿って伝搬するラム波350は、窓の反対側の表面に沿って伝搬するラム波360よりも大きい振幅を有し得る。窓の両表面で伝搬するラム波350、360は、同相であるか、又は位相が異なる可能性がある。たとえば、これらのラム波は、それぞれ対称波又は非対称波であり得る。トランスデューサが設けられた表面のラム波350は、窓の反対側の表面のラム波360よりも高い変位を有し得る。よって、トランスデューサから放出された超音波エネルギーのほとんどは、窓の水滴が存在し得る表面を通じて伝搬し得る。この例では、水滴は、窓の表面に沿って水滴を進ませることにより取り除かれ得る。たとえばモード変換を介して、ラム波350から水滴に十分なエネルギーが伝達された場合、水滴の微粒化を介して水滴を除去することが可能であり得る。
【0032】
レイリー波とラム波は、さまざまな周波数で共存する。たとえば1MHzの周波数では、ほとんどがラム波であり、たとえば3.1MHzでは、ほとんどがレイリー波である。周波数が増えるにつれ、波のタイプがラム波からレイリー波に漸進的に変化する。すなわち、低い周波数ではラム波が主流であり得るが、周波数が増えるにつれ、高い周波数ではレイリー波が主流となる。
【0033】
図3Cの例では、トランスデューサから放出される超音波は板波370である。この例でトランスデューサから放出される板波の周波数は、約1MHz未満の比較的低い周波数を有し得る。板波370は、主に窓の本体を通って移動する。板波は、周波数が低くて波長が大きく、よって窓の表面の水滴を振動させるだけであり得る。窓の表面の水滴の振動により、個別の水滴が合併して組み合わされ、比較的大きい水滴を形成し得る。
【0034】
図3A〜
図3Cの例は、窓の表面に取り付けられた1つのトランスデューサのみを示しているが、任意の数のトランスデューサが窓の表面に取り付けられ得る。1つ又は複数のトランスデューサが、窓の縁の近傍又は窓の周辺領域に結合され得る。1つ又は複数のトランスデューサは、視界から隠され得る。
【0035】
しきい値周波数又はカットオフ周波数が存在し、周波数がそれ以上高くなると超音波のエネルギーが高くなるために微粒化を実現できることを理解する必要がある。カットオフ周波数よりも下では、超音波は水滴の微粒化を発生させるための十分なエネルギーを持っていない可能性があるが、水滴(複数可)を窓の表面に沿って進めるための十分なエネルギーは持っている可能性がある。また、それ以下では水滴(複数可)の推進が実現できないが、水滴(複数可)の振動は可能であり得るという、別のカットオフ周波数も存在する。微粒化、推進、又は振動のカットオフ周波数は、水滴(複数可)のサイズ及び/又は構成に依存し得る。例として、窓の表面の水滴について考える。水滴が小さいほど、(表面積対体積の比率が小さくなる大きい水滴に比べて)表面積対体積の比率が大きくなり、よって水滴が小さくなるほど、表面張力は大きくなる。したがって、小さい水滴ほど、表面張力を克服して推進又は微粒化を発生させるために、(高い超音波周波数による)多くのエネルギーを必要とする。すなわち、小さい水滴を微粒化及び取り除くには、微粒化を発生させるためのエネルギーが少なくて済む大きい水滴に比べて、高い超音波周波数が必要となり得る。
【0036】
窓の表面は、たとえば水滴と窓の表面との間の表面張力を変更させ得るオプションの被覆を適用することにより、処理され得る。たとえば、オプションの被覆が窓の表面に適用された場合、窓の表面は疎水性又は親水性となり、それぞれ水滴と窓の表面との間の表面張力を減少又は増加させ得る。たとえば、RainX(RTM)を窓の表面に適用することで、水滴の接触角が変更され得る。よって、窓に対するオプションの被覆又は表面処理により、微粒化、推進、及び/又は振動を発生させるために必要なカットオフ周波数が変更され得る。
【0037】
説明したように、各トランスデューサの電極は、各電極が他の電極から独立して操作され得るように構成される。周波数及び/又は波タイプの選択は、電極の異なる「組」の動作により実現される。たとえば、電極の異なる組み合わせが選択的に操作され得、一部の電極が、異なる位相で動作するか、又は動作しないように、オプションで選択され得る。動作しないように選択された電極は、電気的に浮遊し得る。電極が動作用に選択された場合、選択された電極(複数可)と接地との間に、周波数発生器により信号電圧が適用される。これに対し、オプションで動作しない電極は、電圧が適用されない浮遊電極である。例として、電極の半分のみが操作される場合、「組」は、利用可能な全電極のうちの動作している半分のみを含む。
【0038】
図4A〜
図4Bは、窓の表面の水滴の微粒化を実現するための、トランスデューサの電極の組の例示的な動作モード又は構成を示す。これらの例では、構成により、トランスデューサが約2.5MHzを超える周波数を有し得る超音波を放出する。これらの超音波の波タイプは、主としてレイリー波である。
【0039】
図4Aの例では、トランスデューサ400は、複数の電極405、410を備える。これらの電極は、PTZ材料等の圧電層415に隣接する。圧電層の電極405、410の反対側は、接地425に電気的に接続される、さらなる電極420である。動作中に、一部の電極405は浮遊電極であり、信号発生器に接続されないが、他の電極410は、信号発生器にアクティブに接続される。接続されている電極410の組は、2.5MHzを超える周波数を有する超音波を生成するように操作され得る。
【0040】
トランスデューサ内の特定の物理パラメータは、所定の属性を有するように選択的に製造又は製作され得る。たとえば、電極は、トランスデューサが所定又は選択された周波数で動作するように設計され得る。たとえば、各電極の幅と、連続する電極間の間隙又は空間は、特定の周波数が依存し得る設計パラメータである。トランスデューサの電極は、電極の異なる組の動作により、トランスデューサが所定の周波数で超音波を放出するように設計され得る。たとえば、
図4Aに示されているトランスデューサは、28個の独立した電極を備えている。
図4Aに示されている28個の電極405、410のそれぞれは、0.4ミリメートル(mm)の幅と、電極間の0.1mmの電極間隙又は間隔とを有し得る。約3.1MHzの周波数を有する波を生成するために、28個の電極410のうち、1つおきの14個の電極410の組が信号発生器に接続されて約3.1MHzの周波数を有する信号を受信し、介在する電極405が浮遊状態となる。隣接するアクティブ又は動作中の電極410の間隔は、その周波数で生成される波の波長に比例する。動作中の電極410と接地電極420との間に電場が設定されて、圧電層が超音波を放出するトランスデューサの変位に対してアクティブになり得る。
【0041】
図4Bは、(
図4Aと同様に記載された)トランスデューサ400を示す。このトランスデューサ400では、電極410が第1の周波数及び位相の信号を受信し、介在する電極405が、同周波数だが電極410と比べて180°位相シフトした信号を受信する。この構成により、隣接する電極410、405の間に追加の電界430を設定することができる。この構成により、追加の電界でトランスデューサの圧電層をより「アクティブ」にし、トランスデューサの変位を高める、すなわち、振幅がより大きい超音波を発生させることができる。この構成により、トランスデューサの動作効率が向上し得、及び/又は窓の表面の水滴に伝達されるエネルギーが向上し得る。
【0042】
図4C〜
図4Fの例は、
図3Aを参照しながら説明した例に対応する。トランスデューサ400は、結合層435を介して、窓440の表面に結合される。トランスデューサは、
図4A及び
図4Bに記載されたトランスデューサであり得、2.5MHzを超える周波数を有する超音波を放出し得る。
図4C〜
図4Fに示された例で動作時にトランスデューサから放出される超音波は、レイリー波等の表面音響波である。トランスデューサから放出された超音波445は、窓の表面に取り付けられ、窓の表面に沿って伝搬する。窓の表面に存在する水滴450に、窓の表面に沿って伝搬する超音波が遭遇し得る。水滴に当たると、超音波のエネルギーが水滴に伝達される。このエネルギー伝達は、モード変換に基づき得る。モード変換は、低い周波数よりも高い周波数のほうが強力であり得る。モード変換は、超音波等の機械的な波が、窓の表面の水滴等の液体に結び付き、縦波455が液体に伝えられる、エネルギー伝達過程である。そのため、水滴に入射する超音波の振幅は、エネルギーが伝達されるにつれ低下し、「漏洩」波などと呼ばれ得る。そのため、水滴を超えた超音波の振幅は、水滴に入射する前の振幅に比べて、小さくなり得る。水滴に伝えられた縦波は、水滴の内面に圧力460を加えて、水滴をその水滴が存在する窓の表面に沿って進ませるか、又は水滴を微粒化させる効果を有する。
【0043】
図4Dは、窓の表面の水滴が微粒化465された例を示している。したがって、窓は清掃される。窓は、水滴の微粒化によって清掃される。
【0044】
図4Eは、トランスデューサが積層窓に取り付けられた例を示している。たとえば、積層窓は、車両の前面窓であり得る。トランスデューサは、窓の周辺領域又は縁で窓に取り付けられ得る。トランスデューサは、窓を囲むゴム製シールの下で、視界から隠され得る。積層窓は、ガラスの最上位層440と最下位層475との間に挟まれた積層470を備え得る。窓の表面に取り付けられた1つ又は複数のトランスデューサの動作時に、各トランスデューサは、ガラスの最上位層440の表面480のみを通って伝搬する超音波を放出するように構成され得る。この例では、超音波は実質的にガラスの最上位層のみを通って伝搬するため、積層を通って伝搬しない。これは、超音波の大幅な吸収及び制振を生じさせ得る積層に対して超音波のエネルギーが「失われる」ことがなくなるため、有益である。表面音響波のみを放出するようにトランスデューサを構成すると、積層での減衰が防止されるために窓の清掃効率が向上するという利点がある。すべての超音波エネルギーが窓の表面に限定されて、超音波から水滴へのエネルギー伝達が最大化され、窓の清掃が効率化される。
【0045】
図4Fは、加熱素子485をオプションで備える窓にトランスデューサが取り付けられた例を示す。たとえば、加熱素子を備える窓は、車両の後部窓であり得る。図示されているように、トランスデューサは、窓の加熱素子を備える表面と反対側の表面に取り付けられ得る。窓の表面に取り付けられた1つ又は複数のトランスデューサの動作時に、トランスデューサは、窓の表面480のみを通って伝搬する超音波を放出するように構成され得る。よって、超音波は加熱素子を通って伝搬しない。
図4Eの積層に関する例と同様に、波エネルギーが加熱素子に対して失われることはない。代わりに、利用可能なすべての波エネルギーが、窓を清掃するために窓の表面の水滴に向けられる。後述するように、トランスデューサ400は、窓の効率的な清掃のために、ラム波や板波など、他の波タイプを放出するようにも構成され得る。
【0046】
上述した
図4C〜
図4Fは、約2.5MHzよりも高い周波数を放出することができるトランスデューサに関連して説明されている。放出される高い周波数は、モード変換及び窓の表面の水滴の微粒化を介して窓を清掃するレイリー波などの表面音響波を生成し得る。以下では、異なる電極構成のための、トランスデューサの他の例示的な動作モードについて説明する。本明細書で説明されるすべての電極構成は、シート状のガラスのみからなる単純な窓、積層又は加熱素子を備える窓、その他のタイプの窓など、あらゆるタイプの窓を清掃するために使用され得る。
【0047】
図5A及び
図5Bは、窓の表面の水滴の推進を実現するためのトランスデューサの電極の組の例示的な動作モード又は構成を示す。これらの例では、電極構成により、トランスデューサが約1〜2.5MHzの範囲の周波数を有し得る放射能を放出し得る。放出される超音波は、主としてラム波であり得る。
【0048】
図5A及び
図5Bは、トランスデューサ500の異なる例示的動作モードを示す。
図5A及び
図5Bはそれぞれ、異なる電極構成に関する。トランスデューサ500は、複数の電極505、510を備える。電極は、圧電層515上にある。圧電層の電極505、510と反対の側は、接地電極520である。動作中に、一部の電極505は、信号発生器に接続されないため電気的に浮遊する。一方、他の電極510は、信号発生器に接続されて、選択された周波数の信号を受信する。接続された電極510の組は、約1〜2.5MHzの範囲の周波数の信号を受信し、同周波数の超音波を生成するように操作される。
図5A及び
図5Bのアクティブな電極510は、概ねこの範囲の固有周波数を提供するように離間されている。
【0049】
図5A及び
図5Bの例に示されたトランスデューサは、28個の独立した電極を備える。28個の電極505、510のそれぞれは、0.4mmの幅と、電極間の0.1mmの電極間隙又は間隔とを有し得る。
図5Aの例では、信号発生器に接続された電極510の組は、10個の電極を備え、接続された各電極の間の浮遊電極が接続されないままとなる。この電極構成又は動作モードの具体的な例は、約2MHzの周波数を有する超音波を生成するために使用され得る。
図5Bの例に示されたトランスデューサも、28個の独立した電極を同様に備える。+でマークされた、隣接する対の電極が、図示されているように信号発生器に接続される(ただし、圧電層の各端部にある単一の電極は、単一の電極対として接続される)。この電極構成又は動作モードは、約1.39MHzの周波数を有する超音波を生成するために使用され得る。
図5A及び
図5Bで浮遊している電極505は、選択された周波数ではあるが電極510に比べて180°位相シフトした信号を代替で受信し得る。
【0050】
図5C及び
図5Dの例は、
図3Bを参照しながら説明した例に対応する。トランスデューサ500は、結合層530を介して、窓535の表面に結合される。1つ又は複数のトランスデューサは、
図5A及び
図5Bに記載されたトランスデューサであり得、約1〜2.5MHzの範囲の周波数を有する超音波を放出し得る。
図5C及び
図5Dに示された例で動作中にトランスデューサから放出される超音波は、主としてラム波である。トランスデューサから放出された超音波540、545は、窓の上面及び下面に沿って伝搬する。超音波は、窓の表面に取り付けられる。窓の表面に存在する水滴550に、トランスデューサが取り付けられた窓の上面に沿って伝搬する超音波が遭遇し得る。
図5Cは、水滴を通って伝搬する超音波を示している。水滴内で、超音波のエネルギーが、たとえばモード変換を介して、水滴に伝達される。縦波555が、水滴に伝えられる。物質に伝えられた縦波は、圧力560を水滴の内面に与える効果を有する。
【0051】
図5Dは、水滴に入射した超音波が水滴自体に対して有する効果を示す。水滴に入射した超音波は、窓の表面に沿って水滴を進ませる。推進方向565は、超音波が伝搬する方向と同じであり得る。水滴が窓の表面に沿って進められると、水滴の形状が変化し得る。たとえば、水滴は、窓の表面に対して異なる接触角を有する後端570及び前縁575を有し得る。たとえば、後端570は、前縁575に比べて、窓の表面に対する接触角が大きくなり得る。水滴を窓の表面に沿って進ませる機能により、窓を清掃する580ことができる。
【0052】
水滴が窓の表面に沿って進むと、窓の表面に対する後端の接触角の変化により、水滴に対する超音波のカップリング効果が変化し得る。したがって、推進が始まったら、水滴の推進を維持するために、トランスデューサの動作モードを変更して放出される超音波の周波数を修正することが必要になり得る。よって、窓の清掃は、動作モード、すなわち、放出される超音波の異なる周波数及び/又は波タイプを切り替えることにより、動的に実現され得る。
【0053】
図5C及び
図5Dの例では、トランスデューサが取り付けられた窓の表面に沿って伝搬するラム波540、350は、窓の反対側の表面に沿って伝搬するラム波545、360よりも大きい振幅を有し得る。これは、
図4E及び/又は
図4Fの例の各トランスデューサ400がラム波を放出して窓を清掃するように構成されている場合は、有利であり得る。なぜなら、モード変換を引き起こすラム波540、350のほうが振幅が大きく、積層又は加熱素子に影響されないため、エネルギーが小さく、積層470又は加熱素子385の近傍を伝搬するラム波545、360が、窓から水滴を除去するための推進(又は微粒化)の効率に影響を与えないからである。
【0054】
以下では、異なる電極構成についてのトランスデューサの他の例示的な動作モードについて説明する。
【0055】
図6A及び
図6Bは、窓の表面の水滴を振動させるための、トランスデューサの電極の組の例示的な動作モード又は構成を示している。これらの例では、電極構成により、トランスデューサが約1MHz未満又は約200kHz〜1MHzの周波数を有し得る超音波を放出し得る。放出される超音波は、板波又は振動波であり得る。
【0056】
図6A及び
図6Bは、トランスデューサ600の異なる動作モードを示している。
図6A及び
図6Bはそれぞれ、異なる電極構成に関する。トランスデューサ600は、複数の電極605、610を備える。電極は、圧電層615に位置する。圧電層の電極605、610と反対の側は、接地625に電気的に接続された接地電極620である。動作中に、一部の電極605は信号発生器に接続され得ず、他の電極610は、信号発生器に接続され得る。この例の電極610の組は、約200kHz〜約1MHzの範囲の周波数の信号を受信し、同周波数の超音波を生成するように接続される。
図5Aの単一のアクティブ電極510と、
図5Bの対になったアクティブ電極とは、概ねこの範囲の固有周波数を提供するように構成されている。
【0057】
図6A及び
図6Bの例に示されたトランスデューサは、28個の独立した電極を備える。28個の電極605、610のそれぞれは、0.4ミリメートル(mm)の幅と、電極間の0.1mmの電極間隙又は間隔とを有し得る。
図6Aの例では、信号発生器に接続された電極610の組は、18個の電極を備える。これらは、630、635、640、645、650、655、660でそれぞれ示されているように、「接続4個/ミス4個/接続5個/ミス2個/接続5個/ミス4個/接続4個」の電極の電極群で接続される。この電極構成又は動作モードは、約570kHzの周波数を有する超音波を生成するために使用され得る。
図6A及び
図6Bで浮遊している電極605は、選択された周波数ではあるが電極610に比べて180°位相シフトした信号を代替で受信し得る。
【0058】
同様に、
図6Bの例に示されたトランスデューサは、28個の独立した電極を備え、信号発生器に接続された電極610の組が、18個の電極を備える。図示された電極は、665、670、675でそれぞれ示されているように、圧電層に沿って「接続8個/ミス12個/接続8個」の電極の電極群で接続される。この電極構成又は動作モードは、約220kHzの周波数を有する超音波を生成するために使用され得る。
【0059】
図6C及び
図6Dの例は、
図3Cを参照しながら説明した例に対応する。トランスデューサ600は、結合層を介して、窓の表面に結合される。トランスデューサは、
図6A及び
図6Bに記載されたトランスデューサであり得、約200kHz〜1MHzの範囲の周波数を有する超音波を放出するように駆動され得る。
図6C及び
図6Dに示された例で動作時にトランスデューサから放出される超音波は、板波である。トランスデューサから放出された超音波680は、窓の本体を通って伝搬する。超音波は、窓の共振周波数又は振動周波数(共振条件)に一致する周波数を有し得る。窓の本体を通って伝搬する超音波は、窓を振動させる。
【0060】
図6Cの例では、水滴685が窓の表面に存在するものとして示されている。窓の振動により、水滴と窓の表面との間の表面張力を克服することが可能となる。振動している窓の表面の水滴は、符号690に示すように、窓の表面から「撥ね飛ばされる」か、又は「はじかれる」。したがって、水滴(複数可)は窓の表面を離れ、超音波が窓を清掃する。さらに、窓の表面の上の気流695が、窓の清掃を補助し得る。これは、水滴(複数可)を窓の表面からさらに遠くへ移動させ、それによって水滴(複数可)が振動する表面に戻る可能性を減らすことにより実現され得る。
【0061】
たとえば、
図4E及び/又は
図4Fの例の各トランスデューサ400は、
図6C及び
図6Dを参照して説明した振動する板波を放出して窓を清掃するように構成され得る。これには、積層窓又は加熱素子を含む窓を効率的に清掃できるという利点があり得る。なぜなら、板波は周波数が低く(よって波長が長く)、そのために板波の波長よりもはるかに小さい加熱素子を「発見」しないからである。
【0062】
図4〜
図6で説明した例示的な動作モードは、信号発生器に電気的に接続されている電極の異なる構成に基づいて、発生器により作成される信号の異なる周波数により、トランスデューサ(複数可)から放出される超音波の周波数及び波タイプを制御するために使用され得る。トランスデューサの1つ又は複数の動作モードを使用して窓を清掃する例示的な方法を次に説明する。
【0063】
図7は、トランスデューサの1つ又は複数の選択された動作モードを使用して窓を清掃する方法700を概説する例示的な流れ図である。ブロック760で、水滴の存在が窓で検出される。ブロック770で、動作モード又は動作モードのシーケンスが選択される。窓を清掃するために、1つの動作モードを選択するか、又は複数の動作モードのシーケンスを選択することが可能である。トランスデューサの動作モードはトランスデューサの信号発生器にアクティブに接続されている電極の構成に基づくため、システムの例では、単一のトランスデューサについて、一度に1つの動作モードのみが操作され得る。したがって、窓の清掃780のために複数の動作モードが必要な場合、動作モードを逐次的に選択しなければならない。
【0064】
たとえば、2つの動作モードを使用して窓の表面から水滴を除去する場合、選択される第1の動作モードは、トランスデューサが約3.1MHzの周波数を有する超音波を放出するように構成されるものであり得、選択される第2の動作モードは、約2MHzの周波数を有する超音波を放出するようにトランスデューサを構成するものであり得る。この例で、トランスデューサの2つの動作モードは、最初に約3.1MHzで超音波を放出し、次に約2MHzで超音波を放出するようにトランスデューサを構成するために、動的に切り替えられ得る。もちろん、放出される周波数の選択は、窓の表面に存在する水滴の数又は水滴のサイズに依存し得る。他の例示的な周波数を使用して、低い周波数で水滴の振動を開始し、その後高い周波数で水滴を推進又は微粒化させることもできる。
【0065】
図7に記載された窓の清掃方法では、トランスデューサから放出される超音波の周波数及び波タイプ(すなわち、動作モード)を動的に制御又は選択することができる。これは、たとえば、車両の窓から氷又は泥を除去するために有利であり得る。最初のモードは、窓を振動させて表面の氷を割るように選択され得、2番目のモードは、窓の表面に散らばった氷の破片を移動して窓を清掃するように選択され得る。さらに、溶けた氷又は水滴を微粒化により除去するために、さらなるモードが選出又は選択され得る。トランスデューサの動作周波数の動的な選択により、異なる周波数の超音波を制御された態様でトランスデューサから放出して、窓の表面全体に、又はオプションで窓の本体を通って、伝搬させることができる。本明細書で上述した電極構成の多数の異なる組み合わせに基づいて、単一のトランスデューサで複数の動作モードを利用することができる。
【0066】
動作モードは、各動作モードの選択の間に設定時間遅延を置いて、逐次的に選択され得る。たとえば、連続する動作モード間の時間遅延は、5マイクロ秒であり得る。すなわち、トランスデューサ(複数可)から放出される超音波の周波数と、電極の組とは、5マイクロ秒ごとに変更され得る。時間遅延は、等価で固定されるか、又は動作時に動的に変更され得る。5マイクロ秒の時間遅延は一例に過ぎない。たとえば、1〜10マイクロ秒など、数マイクロ秒単位の他の遅延も使用され得る。遅延は、水滴に対する1つのモードの結果が、次のモードが水滴に適用されたときに依然として有効であるようにするために、選択され得る。検出760と、動作モード(複数可)の選択770とは、手動又は自動であり得る。たとえば、車両の運転者は、窓の表面の水滴又は他の降下物の視覚的な観察に基づいて、トランスデューサの動作モードを手動で選択することができる。代替で、降下物の存在を自動的に検出するように、検出システムを構成することができる。検出が自動的に行われる場合、送信機として機能する第1のトランスデューサと、受信機として機能する第2のトランスデューサの、少なくとも2つのトランスデューサが必要である。信号発生器と、降下物の除去に使用される1つ又は複数のトランスデューサとが、検出システムの送信機として使用され得る。代替で、追加の独立したトランスデューサを送信機として使用することもできる。降下物の検出は、受信機で検出される、送信機が放出した超音波に基づき得る。この超音波は、窓の表面に水滴又は他の降下物が存在しない状態に対応する、「既定の」振幅又は信号強度を有する。第2のトランスデューサで受信された信号の強度が、既定の信号強度から変化している場合、窓の表面に水又は他の降下物が存在することを示している可能性がある。水又は他の降下物が窓の表面に存在する場合、伝搬する超音波から水又は他の降下物にエネルギーが伝達され得る。そのため、超音波は減衰する可能性があり、超音波が第2のトランスデューサである受信機に到達したときに、信号強度が既定の値よりも下がる。これにより、窓の表面に水滴又は他の降下物が存在することが検出される。減衰のレベルは、窓の表面の降下物(又は水滴)の量、又は降下物のタイプ(たとえば、みぞれ)を示し得る。検出された水又は他の降下物の量は、上述したように窓を清掃するための動作モードを自動的に選択するために使用され得る。
【0067】
図8は、分散810を、ガラス基板(すなわち、窓)での超音波の位相速度820の関数としてモデル化したグラフ800である。この情報は、各波タイプが窓の表面に存在する水滴に与える影響を判断するのに有益である。縦軸は、位相速度を毎秒メートル、m/sの単位で表す。横軸は、厚さ3mmのシート状ガラスでの周波数をMHz単位で表し、Hz単位で測定される分散(周波数)に対応する。
【0068】
図8の例では、モデル化された超音波は表面音響波である。モデル化されたガラス基板は、厚さ3mmである。これは、概ね車両の窓、又は積層前面窓のガラスの最上位層の厚さである。反対称ラム波及び対称ラム波についての、バルクガラスを通って伝搬する超音波の位相速度が、曲線830及び835により与えられている。窓などの薄いシート状ガラス又はガラス基板の場合、波はバルクガラスの場合と異なる動作をする可能性があり、表面結合又は板波動作を示す可能性がある。超音波の位相速度は、毎秒メートル(m/s)単位で示されており、分散はヘルツ(Hz)、すなわち、厚さ3mmのガラス基板での周波数の単位で示されている。グラフは、ガラス基板を通って伝搬する際に超音波の位相速度又は速さが周波数とともにどのように変化するのかを表している。
【0069】
図8は、放出される超音波が、一次波(第1モード)830、835、二次波(第2モード)840、845、三次波(第3モード)850、855、又はそれ以上の高次波であり得ることを示している。
図8に示されているように、超音波は、ラム波であり、反対称波又は対称波、すなわち、異なる位相又は同相であり得る。反対称波の位相速度は、830、840、及び850により示されている。対称波の位相速度は、835、845、及び855により示されている。本明細書に記載されたトランスデューサ(複数可)の異なる構成について放出される超音波の周波数が、反対称波の一次モード(830)についての位相速度対分散の関係で、860A、865A、870、及び875により示されている。570kHzの「板」波の位相速度は、860Aにより示されている。約1.5MHzのラム波の位相速度は、865Aにより示されている。それよりも高い周波数の「レイリー」波の位相速度は、870及び875により示されている。分散の値が小さい場合、すなわち、板波の場合では、トランスデューサの変位は大きくなり得る。なぜなら、小さい分散値のために放出される超音波は、長い波長を有するからである。放出された超音波のグラフの点線880、885、890、895を横切る部分の波長(λ)は、それぞれλ=10mm、λ=4.9mm、λ=2.16mm、λ=1.55mmである。
【0070】
たとえば、第1モード反対称波860Aについての570kHzの「板」波は、波長が10mmであり、二次反対称波860B(周波数がわずかに高くシフト)も波長が10mmである。見てわかるように、一次波860Aの約2000m/sという位相速度は、二次波の約8000m/sという位相速度よりも遅い。
【0071】
例として、波長がそれぞれ2.16mm及び1.55mmと短い高周波数の超音波870、875は、典型的な水滴の直径(数mm)に近い波長を有する。よって、これらの波は、強いモード変換に起因して水滴を微粒化するのにより適している。これに対し、波長が10mmと長い低周波数の超音波860Aは、きわめて弱いモード変換(存在する場合)を有し、水滴を微粒化するのには適していないが、水滴を振動させるには適している可能性がある。もちろん、微粒化と振動との間に位置する、周波数の「中間的な」組も存在する。これらの周波数は、低周波数のきわめて弱いモード変換と、高周波数の強力なモード変換との間の、一定のレベルのモード変換を生み出す。このグラフは、窓から水滴を除去するのに最も適した周波数を特定するのに役立つ。マルチモードトランスデューサ(複数可)と関連する回路の例示的な実装を、
図9A及び
図9Bを参照しながら本明細書で説明する。
【0072】
図9Aを参照すると、複数のうちの1つであり得るトランスデューサが、たとえば
図2に示されているように、圧電基板上の複数の電極210を備えている。各電極210は、コネクタ960を介して、スイッチ回路940の複数のバイナリスイッチ941の対応する1つに接続されている。すべてのスイッチは、周波数発生器925の出力926に接続されている。モードコントローラ930は、周波数発生器と、スイッチ回路とを制御する。モードコントローラは、スイッチ941に適用される出力信号の周波数を制御する。また、モードコントローラは、導電性のあるスイッチと、導電性のないスイッチとを選択し、それによって出力信号を受信する電極210の組を選択する。この例で、他の電極は、電気的に浮遊している。モードコントローラは、たとえば、スイッチの制御入力942にバイナリ信号を適用することにより、スイッチを制御する。周波数と、出力信号を受信するように選択された電極の組との組み合わせにより、交換機の選択された動作モードが上述したように画定される。
【0073】
周波数発生器は、パルス発生器950をさらに含み得る。パルス発生器950は、所望のマーク対スペース比で出力信号926をオン及びオフでパルス化して、トランスデューサの加熱を軽減する。出力信号926のパルス化は、コントローラ930により制御され得る。パルス化は、センサTにより測定されるトランスデューサの温度に依存して制御され得る。
【0074】
図9Bは、
図9Aで浮遊している電極211が、周波数発生器の180度位相シフトされた出力信号926を受信する点で、
図9Aと異なる。この目的のために、周波数発生器は、さらなる出力926+180と、追加のスイッチ回路940−とを有する。追加のスイッチ回路940−は、モードコントローラ930の制御の下で、他の電極211を選択する。モードコントローラ930は、追加のスイッチ回路940−を制御するための追加の制御ポート943を有する。よって、
図9Bのシステムは、トランスデューサの任意の電極を選択して、信号926又は180度シフトした信号926を受信することができる。
【0075】
モードの選択は、
図7を参照しながら上述したように、車両の運転者等の操作者により手動で行われ得る。モードの選択は、
図7を参照しながら上述したように、窓にある水の量を検出する検出器970を使用して自動で行われ得る。
【0076】
図10A及び
図10Bは、車両に設置された本発明の清掃装置を概略的に示している。
【0077】
図10Aの例は、車両の窓1010に取り付けられた清掃装置1000を示している。清掃装置は、本明細書で説明されている1つ又は複数のマルチモードトランスデューサ1020を備える。この場合、車両の窓は、積層窓であり得る前面窓である。複数のトランスデューサ1020が、窓の周辺領域に取り付けられ、オプションで、ゴム製シールの下で視界から隠され得る。トランスデューサは、窓の表面に取り付けられ窓の表面全体に伝搬する超音波1030を放出するように駆動される。この例での伝搬方向は、トランスデューサの電極に対して垂直な方向である。窓の表面の降下物1040は、本明細書に記載された方法、たとえば、振動、推進、及び/又は微粒化に応じて、除去され得る。トランスデューサは、超音波が窓の表面全体に伝搬し得るように、窓の縁に沿って線形の態様で配置され得る。トランスデューサの取り付け位置により、窓の表面の任意の領域から降下物を除去することができる。トランスデューサは、車両の運転者にとって、及び好ましくは助手席の乗員にとっても、窓を通した視界を遮らないように、窓に取り付けられる。図示された例では、トランスデューサは、窓の最上部に取り付けられる。トランスデューサは、窓の周辺の別の位置にも配置され得る。清掃装置1000は、側部窓1050及び/又は後部窓など、車両の他の窓にもオプションで取り付けられ得る。
【0078】
図10Bは、車両の窓の降下物を検出及び除去する例示的な装置1060を示す。この例では、
図7を参照しながら上述したように、窓に取り付けられた複数のトランスデューサ1020の1つ又は複数が送信機として機能し得、別の1つ又は複数のトランスデューサ1070が受信機として機能し得る。窓に沿って伝搬する超音波1080が、トランスデューサ(複数可)1070により送信及び受信される。これにより、降下物の存在が検出され得る。よって、本明細書で上述したように、水滴が窓から自動的に除去される。
【0079】
本明細書で上述した例は、窓の表面から水滴(複数可)を除去する堅牢な方法を提供する。複数の電極を有するトランスデューサと、電極及び動作周波数の異なる組み合わせの選択とを組み合わせることで、幅広い動作モードを選択することが可能となる。モードは、自動的に選択され得る。本明細書に記載された例では、単一のトランスデューサが、電極の異なる構成のための5つの異なる周波数等の複数の異なる周波数で超音波を個別に放出するように、動的に構成され得る。ただし、ほかにも多くの周波数が追加で選択され得ることが理解される。
【0080】
例として上述した本発明は、一度に1つの選択された周波数でトランスデューサを操作する。しかし、トランスデューサは、基本周波数と、その周波数の1つ又は複数の調波とで、同時に動作するように設計され得る。
【0081】
動作モードの選択により、トランスデューサから放出される超音波エネルギーのほとんどが、水滴が存在している可能性がある窓の表面を通って伝搬するモードを選択することが可能となる。これにより、窓の表面を清掃するために水滴を効率的に取り除くことが可能となる。
【0082】
本発明は、例として、詳細には車両の窓である窓に関して説明されているが、オートバイ等の前面窓を持たない車両の運転者により使用されるバイザーから降下物を除去するために使用され得る。他の使用例には、車両の外部ミラーが含まれる。
【0083】
本発明は、例として、特に水滴である降下物を除去することに関して説明されているが、前面窓に適用される洗浄液など、窓を洗浄するために使用される洗剤及び/又は解氷剤等の添加物を含み得る他の水滴を除去するために使用され得る。土又は他の汚染物質は、水又は洗剤を含む水により洗浄した後、本発明を使用して汚染水を除去することにより、窓から取り除かれ得る。
【0084】
以上の説明は、説明される原則の例を明示及び説明するために提示された。この説明は、開示された任意の形式そのものに対して網羅的であること、又はそのような形式にこれらの原則を限定することを意図されたものではない。上記の教示に鑑み、多数の変更及び変形が可能である。特定の例を参照して説明された特徴は、その特定の例に限定されると考えられるべきではなく、むしろ本明細書で説明された例のいずれかと組み合わせ又は統合され得る。