【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施例1に係る巻線装置Aの斜視図である。なお、コイルガイドは曲げ手段の説明の都合上図には示していない。線材供給手段Bは断面形状が平角であるコイル線材2を送出又は停止させて把持するものであり、ボビン(図示せず)に巻かれたコイル線材2を図の矢印Jの方向に送出するものである。線材供給手段Bは、モータと駆動ローラの組み合わせた駆動機構を2セット配している。すなわち第1モータ3と第1モータ3の回転を伝達する第1駆動ローラ4と、第1駆動ローラ4と受動的に回転する第1受動ローラ5とでコイル線材2を挟み込む第1の駆動機構と、第2モータ6と第2駆動ローラ7と、受動的に回転する第2受動ローラ8とによってもコイル線材2を挟み込む第2の駆動機構とがあり、駆動ローラと受動ローラをそれぞれ矢印K1、矢印K2、矢印K3、矢印K4の方向に回転させることによりコイル線材2を送出する。コイル線材2はまず第1駆動ローラ4と第1受動ローラ5とにより送られ、線材ガイド9aで案内され、第2駆動ローラ7と第2受動ローラ8でさらに駆動されて線材ガイド9bに達する。線材ガイド9bの端部には後述するように曲げガイド9baが設けられている(
図3参照)。また各モータの回転を停止することでコイル線材2を把持する。
それぞれのモータは、回転数を適正にするために減速器を備えることができ、またモータの回転を発停する制御装置(図示せず)を有する。
なお、第1モータ3と第1駆動ローラ4と第1受動ローラ5との組み合わせ、あるいは第2モータ6と第2駆動ローラ7と第2受動ローラ8との組み合わせによる線材供給手段の代わりに、モータとねじによる直線運動変換機構を用いても良い。
【0016】
曲げ手段Cは回転機構である曲げモータ10の回転軸11にレバー12を介して回転自由な曲げローラ13を備え、矢印L方向に回転し、
図1においてはコイル線材2に当接して後述する曲げガイド9baを支点としてコイル線材2を図の上方向に折り曲げる。積層ガイド21は線材ガイド9b側に固定されており、コイル線材2がコイル状になって曲折した際にこの積層ガイド21に案内されて順次積層される。
【0017】
曲げ手段Cが幾度か回転してコイル線材2を折り曲げることによって
図2に示すように積層されたコイル14を形成する。曲げ手段Cの曲げローラ13がコイル線材2を折り曲げる位置でのコイルの中心線をZ1とし、このとき曲げ手段Cの回転軸11の中心線をZ2とすると、中心線Z2は、コイル14の外周面よりも外側に位置している。
【0018】
巻回されたコイル14は、コイルガイド15の接触部15a上に置かれ、コイル14の重量を支えられている。コイルガイド15の動作については後述する。
【0019】
本発明の巻線装置の巻回の過程を矩形コイルの製作を例にして、
図3〜
図4に模式図にて示す。なお、
図3から
図4の図面は
図1に示すX−X方向からの図である。
図3(a)はステップ1を示したもので、コイル線材2が巻回を始める前の状態を示しており、回転軸11と曲げローラ13は停止しており、コイル線材2は矢印Jの方向に送られ、線材ガイド9Bから突出する。なお円形の2点鎖線は曲げローラ13の回転軌跡を示す。さらにコイル線材2が送られて、
図3(b)のステップ2に示すように矩形コイルの一辺の長さに到達すると、線材供給手段Bは回転を停止し、コイル線材2を把持する。このコイル線材2の送出長さの制御は線材供給手段Bのモータの回転数で行われる。コイル線材2が所定長さ送られたことに同期して曲げローラ13が矢印L方向に回転を開始し、コイル線材2に曲げローラ13が当接しコイル線材2を線材ガイド9bの端部にある曲面形状の曲げガイド9baを中心に折り曲げを開始する。
【0020】
図3(c)はステップ3を示し、コイル線材2が曲線部2aを経てほぼ90度に折り曲げられた状態を示している。この状態で曲げローラ13は時計方向に回転しほぼ左端の位置に移動した状態にあり、コイル線材2を反時計方向に約90度、場合によってはスプリングバックの影響を考慮して90度以上の鋭角に曲げる。さらに曲げローラ13が時計方向に回転を継続するとコイル線材2より離れていくことになる。
図3(d)のステップ4では曲げローラ13がさらに回転し、コイル線材2を折り曲げた後、コイル線材2よりしだいに離れていく。
図3(b)から(c)までの間コイル線材2は移動せずにその位置を保っているが、この後線材供給手段Bによってコイル線材2の供給が開始される。このとき曲げローラ13も回転を継続しており、曲げローラ13の移動の方が速く行われるので、
図3(d)に示すようにコイル線材2の直線部2bが曲げローラ13に接触することはない。なお、コイル線材2を送出するタイミングは安全を期すなら、曲げローラ13が相当の距離離れてから行わせてもよい。
矩形コイルの他の辺の長さ分だけコイル線材2が送出されると
図4(a)のステップ5に示すように線材供給手段Bはコイル線材2の送出を停止し把持する。曲げローラ13は継続して回転を行っておりコイル線材2に近づいていく。このとき曲げローラ13にかかる駆動負荷は小さいので速度を上げて時間を節約することが可能である。特に矩形形状の一辺が短いときに無駄な時間をなくすことができる。
【0021】
図4(b)はステップ6を示しており、曲げローラ13がコイル線材2に当接し曲げガイド9bの端部9baを中心として曲げ加工が開始され、
図4(c)のステップ7で2回目の曲げ加工が完了する。このときは曲げローラ13には比較的大きな負荷がかかるので回転速度を下げてモータトルクを上げて曲げ加工を行う。さらに同様の動作により
図4(d)のステップ8で3回目の曲げ加工が行われる。以上の動作を繰り返すことにより
図2に示すように積層された矩形のコイル14が製造される。
図4(d)に示すようにかげ手段Cの曲げローラ13によってコイル線材2の曲げ加工が行われ、積層ガイド21に乗り上げるようにして案内されてコイル状に積層される。コイル14が形成されたときのコイルの中心Z1と回転軸11の中心Z2とは位置が異なっており、Z2はコイル14の外周よりもさらに外側に位置している。
【0022】
曲げローラ13とコイル線材2とは
図3〜
図4に示したように曲げ加工のとき以外は接触することがなく、曲げローラ13を逆回転させたり、コイルの積層方向に移動させる必要がないことがわかる。また曲げローラ13は加工が開始されると中心軸を軸方向に移動させることなく連続回転を行えばよいので曲げモータ10の制御は容易であり、高速に回転することが可能である。曲げモータ10は一般にサーボモータと称される誘導モータ、同期モータ、ステッピングモータなどが使用され、モータの回転位置を検出する位置検出器を備えていても良い。
【0023】
なお本実施例では、4つの曲げ部とその間を接続する直線の非曲げ部とからなる正方形に近い矩形の積層コイルを示したが、長辺と短辺との寸法差がある場合にも線材供給手段Bの送り量を調節することで適用できる。また4つの曲げ部とその間を連絡する直線部とからなる4角形状の積層コイルばかりでなく他の多角形のコイルも適用可能である。
【0024】
上述のステップを繰り返して
図2に示すようにコイル14が生成される。製造時間を短縮するためにコイルを高速で送り、高速で曲げることが必要であるが、速度を高めるとコイル14は慣性によって揺動を起こす。この揺動の大きさはコイル積層の高さやコイル線材2の強度やコイル14の重量によっても変わり、揺動が大きくまた揺動時間が長くなると曲げ加工が適切に行われなくなりコイル14の寸法に生じたり、あるいは揺動が停止して安定するまでの時間が必要となってコイルの製作時間がかかることになる。この揺動を未然に防止するためコイルガイド15を曲げガイド9baの近傍に配置している。
図5(a)(b)(c)にコイルガイドの動作について示す。
図5(a)はコイル線材2が供給されて、曲げ加工が行われる前の状態を示し、
図5(b)は曲げローラ13がコイル線材2を曲げガイド9baに沿って曲げ加工を行っている状態を示し、
図5(c)は前期の曲げ加工が終了した状態を示す。コイルガイド15は
図5(a)または(b)に示すように、接触部15aがコイル14の一辺と曲げ加工の開始前あるいは曲げ加工の終了時において接触するように配置している。
図5(a)ではコイル線材2が線材供給手段Bによって図の右方向に供給された状態にあり、コイル14の一辺14aがコイルガイド15の接触部15aと接触しながら移動し、このときコイル線材2の移動によるコイル14の揺動は抑制される。
図5(b)では曲げローラ13が曲げローラ9baと接触し、コイル線材2を曲折している状態である。そして
図5(c)において曲げ加工が終了しコイル14の一辺14bが接触部15aに接触し、曲げ加工時に発生する揺動を抑制する。
【0025】
図2に示すように、コイル14は曲げ手段Cの方向と反対方向に積層され、コイル14はコイルガイド15上に設置されている。コイルガイド15の接触部15aは曲げガイド9baの接線方向と同じ方向になり、コイル線材2と平行して配置されている。本実施例ではコイル14の曲げ終了時にはコイル14の一辺は供給されるコイル線材2と平行になるように設計されている。その結果、コイル線材2の供給時あるいは矩形のコイル14の曲げ加工の終了時にコイル14の一辺が曲げガイド15に接触し、コイルコイル14の揺動を抑制する。本発明の構成によれば矩形のコイル14の長辺と短辺の比率が異なっても揺動を抑制することが可能であり、さらに四角形状に限らず他の多角形コイルでも同様の効果を有する。
【実施例4】
【0029】
図9に本発明の実施例4の構成の斜視図を示す。実施例1との相違点はコイル14の先端をあらかじめ積層する軸方向に曲折した点にある。
図9(a)はコイル線材2の先端を曲折する動作を示すもので、
図9(b)はコイル線材2をコイルとして巻始めるときの動作を示し、
図9(c)はコイル14を形成するときの動作を示したものである。
図9(a)において、コイル線材2の先端2aを端部曲げ手段16を用いてコイルの積層方向(図の上方向)に曲折するものである。線材供給手段Bにより線材が供給され、所定長さコイル線材2が送られると、端部曲げ手段16を矢印M方向に移動させる駆動手段(図示せず)により先端を曲折する。先端2aは巻回されるコイル14の内側に向けて曲折され、この曲げ長さは、コイルを電気的に接続するための端子を設けるに必要な長さに設定する。しかる後コイル線材2が供給され、
図9(b)に示すように曲げ手段Cによって
図9(c)に示すように非円形のコイル14を形成する。コイル線材2の先端部2aはコイル端部曲折部14dとなってリード線(図示せず)を配線することができる。端部曲げ手段16の駆動手段として、ねじ機構を有するモータや電磁ソレノイドや空圧駆動のプランジャなどの直線機構が用いられる。
コイル端部曲折部14dをコイル14上に直角に曲げることにより、コイルガイド15に部分的に接触させることができ、特定の曲げ動作のときに制動の効果を高めることができる。
【実施例6】
【0031】
図12に本発明の実施例6の構成の斜視図を示す。実施例2との相違点はコイルガイドを斜めに構成した点にある。
図12(a)に示したコイルガイド20はコイルの当接部20aが上に向かって直線的に傾斜している。
図12(b)はコイル19を製造しているときP矢視の図である。コイル19は台形状にすることで、より巻回時の揺動は小さくなるが、さらに揺動を小さくするためにコイル19の形状に適合するようにコイルガイド18の接触部18aに傾斜をもたせたものである。台形状のコイル19は線材供給手段をBの供給量を変化させることで製造が可能である。この台形の傾斜と接触部18aの傾斜とをほぼ一致させることで巻回ごとに適切な制動を行うことができる。なお接触部18aは図に示すものは直線的な傾斜であるが、階段状に構成しても良い。
【0032】
なおコイルガイド15は、コイル14と接触する際にコイル14を傷つけないように表面をなめらかに加工し、かつ滑りの良い材料を使用することが好ましく、ローラーのような回転体を用いて摩擦を低減することも可能である。また当接時の衝撃を吸収するために弾性体や柔らかな材料を使用しても良い。
また実施例ではコイルガイド15を直方体の形状で構成したが、板状のものを折り曲げてL字型に構成しても良い。
コイルガイド15の接触部15aの位置はコイル線材2と平行に設置されているので、コイル形状が変化しても位置を変更する必要はないが、制動の程度を調節するためにその位置を微調節する目的で、コイルガイド15の位置を変更するための調節手段を設けることができる。