特許第6476470号(P6476470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6476470無線通信装置及びインピーダンス補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476470
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】無線通信装置及びインピーダンス補正方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/52 20150101AFI20190225BHJP
   H04B 1/56 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   H04B1/52
   H04B1/56
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-96859(P2015-96859)
(22)【出願日】2015年5月11日
(65)【公開番号】特開2016-213716(P2016-213716A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】谷井 隆
【審査官】 鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−011341(JP,A)
【文献】 特開2001−308739(JP,A)
【文献】 特開平10−256930(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/052277(WO,A2)
【文献】 特開2015−027001(JP,A)
【文献】 特開2010−288035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/52
H04B 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信に係るインピーダンスを補正する第1補正部と、
送信信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器の出力段に設けられ、送信に係るインピーダンスを補正する第2補正部と、
受信に係るインピーダンスの第1補正量と送信に係るインピーダンスの第2補正量との対応関係を記憶するメモリと、
前記メモリに接続されたプロセッサとを有し、
前記プロセッサは、
第1補正量を前記第1補正部に設定し、
前記メモリを参照して、前記第1補正部に設定された第1補正量に対応する第2補正量を前記第2補正部に設定し、
前記増幅器の消費電流に基づいて、前記第2補正部に設定された第2補正量を調整する
処理を実行することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記第1補正部に設定する処理は、
受信レベルを最大にする第1補正量を前記第1補正部に設定することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記調整する処理は、
前記増幅器の消費電流が最小になるように第2補正量を調整することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記調整する処理は、
前記増幅器の消費電流が所定の閾値以下になるように第2補正量を調整することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記メモリは、
無線通信装置の試作機を用いた実測により求められる対応関係であって、複数の第1補正量とそれぞれの第1補正量を設定した場合に増幅器の消費電流を最小にする第2補正量との対応関係を記憶することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項6】
受信に係るインピーダンスを補正する第1補正量を、無線通信装置が備える第1補正部に設定し、
設定された第1補正量に対応してあらかじめ記憶され、送信に係るインピーダンスを補正する第2補正量を取得し、
取得された第2補正量を、前記無線通信装置が備える第2補正部に設定し、
前記無線通信装置が送信する送信信号を増幅する増幅器の消費電流に基づいて、前記第2補正部に設定された第2補正量を調整する
処理を有することを特徴とするインピーダンス補正方法。
【請求項7】
コンピュータによって実行されるインピーダンス補正プログラムであって、前記コンピュータに、
受信に係るインピーダンスを補正する第1補正量を、無線通信装置が備える第1補正部に設定し、
設定された第1補正量に対応してあらかじめ記憶され、送信に係るインピーダンスを補正する第2補正量を取得し、
取得された第2補正量を、前記無線通信装置が備える第2補正部に設定し、
前記無線通信装置が送信する送信信号を増幅する増幅器の消費電流に基づいて、前記第2補正部に設定された第2補正量を調整する
処理を実行させることを特徴とするインピーダンス補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置及びインピーダンス補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば携帯電話機などの無線通信装置には、アンテナが設けられている。アンテナは、無線通信装置の筐体に内蔵されることもあり、無線通信装置を把持するユーザの手の位置によっては、アンテナの通信性能が劣化することがある。すなわち、アンテナの周辺に例えば人体や金属などの物体があると、これらの物体からの干渉を受けてインピーダンス整合が取れなくなることがある。
【0003】
そこで、インピーダンスの変動があった場合に、アンテナにおけるインピーダンス特性を調整し、インピーダンス整合を最適な状態に保つことが考えられている。このようにインピーダンス特性を調整する整合回路は、例えばアンテナの直近に設けられたり、送信信号を増幅する増幅器の出力段に設けられたりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−13276号公報
【特許文献2】特開平11−136157号公報
【特許文献3】特開平10−256930号公報
【特許文献4】特開2001−308739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、無線通信装置は、送信と受信とでは周波数が異なる通信を行うことがあり、一方の周波数でインピーダンス整合が最適な状態であっても、必ずしも他方の周波数でインピーダンス整合が最適な状態であるとは限らない。このため、送信信号を増幅する増幅器の出力段に設けられる整合回路によって送信に係るインピーダンスを調整し、アンテナの直近に設けられる整合回路によって受信に係るインピーダンスを調整することなどが考えられる。
【0006】
しかしながら、送受信それぞれに対応する整合回路によってインピーダンスを調整する場合には、インピーダンス整合を最適な状態にするまでにかかる時間が長くなり、消費電力が増大するという問題がある。すなわち、例えば受信用の整合回路によってインピーダンスを調整した後、送信用の整合回路によってインピーダンスを調整する場合には、送受信についてそれぞれ独立に調整が行われ、調整時間が長くなる。そして、送信におけるインピーダンス整合が最適な状態でない間は、増幅器の消費電流が増加することがあり、無線通信装置の消費電力が増大する。
【0007】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、インピーダンスの調整時間を短縮するとともに消費電力の増大を抑制することができる無線通信装置及びインピーダンス補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願が開示する無線通信装置は、1つの態様において、受信に係るインピーダンスを補正する第1補正部と、送信信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力段に設けられ、送信に係るインピーダンスを補正する第2補正部と、受信に係るインピーダンスの第1補正量と送信に係るインピーダンスの第2補正量との対応関係を記憶するメモリと、前記メモリに接続されたプロセッサとを有し、前記プロセッサは、第1補正量を前記第1補正部に設定し、前記メモリを参照して、前記第1補正部に設定された第1補正量に対応する第2補正量を前記第2補正部に設定し、前記増幅器の消費電流に基づいて、前記第2補正部に設定された第2補正量を調整する処理を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本願が開示する無線通信装置及びインピーダンス補正方法の1つの態様によれば、インピーダンスの調整時間を短縮するとともに消費電力の増大を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施の形態に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、補正量テーブルの具体例を示す図である。
図3図3は、一実施の形態に係るBBプロセッサの機能を示すブロック図である。
図4図4は、一実施の形態に係る補正設定処理を示すフロー図である。
図5図5は、一実施の形態に係る第1補正量の決定処理を示すフロー図である。
図6図6は、一実施の形態に係る第2補正量の決定処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願が開示する無線通信装置及びインピーダンス補正方法の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、一実施の形態に係る無線通信装置100の構成を示すブロック図である。図1に示す無線通信装置100は、ディスプレイ101、タッチパネル102、スピーカー103、マイク104及びアプリケーションプロセッサ(以下「APプロセッサ」と略記する)105を有する。また、無線通信装置100は、ベースバンドプロセッサ(以下「BBプロセッサ」と略記する)106、電源回路109、メモリ115及び無線回路を有する。そして、無線回路は、変調部107、パワーアンプ108、インピーダンス補正部110、デュープレクサ111、インピーダンス補正部112、ローノイズアンプ113及び復調部114を有する。
【0013】
ディスプレイ101は、例えば液晶モジュールなどを備え、APプロセッサ105による制御に従って種々の情報を表示する。
【0014】
タッチパネル102は、例えばディスプレイ101と重ねて配置された静電容量式のタッチパネルであり、静電容量の変化を検知することにより、ユーザによる接触を検知する。そして、タッチパネル102は、検知したタッチの位置座標をAPプロセッサ105へ通知する。
【0015】
スピーカー103は、APプロセッサ105による制御に従って種々の音声情報を出力する。
【0016】
マイク104は、例えばユーザが発する音声などの音声情報を取得し、取得した音声情報をAPプロセッサ105へ出力する。
【0017】
APプロセッサ105は、例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)などを備え、アプリケーションを実行する。そして、APプロセッサ105は、アプリケーションの処理に応じてディスプレイ101、タッチパネル102、スピーカー103及びマイク104などを制御する。また、APプロセッサ105は、受信データをBBプロセッサ106から取得して受信データを用いた処理を実行したり、処理の結果生成された送信データをBBプロセッサ106へ出力したりする。
【0018】
BBプロセッサ106は、例えばCPU、DSP又はFPGAなどを備え、APプロセッサ105から出力される送信データに対して符号化及びデジタル変調などの所定のベースバンド処理を施し、変調部107へ出力する。また、BBプロセッサ106は、復調部114から出力される受信データに対してデジタル復調及び復号などの所定のベースバンド処理を施し、APプロセッサ105へ出力する。
【0019】
さらに、BBプロセッサ106は、受信時のインピーダンス整合が最適な状態になるようにインピーダンスの第1補正量を決定し、送信時のインピーダンス整合が最適な状態になるようにインピーダンスの第2補正量を決定する。すなわち、BBプロセッサ106は、インピーダンス補正部112に設定する第1補正量を決定した後、インピーダンス補正部110に設定する第2補正量を決定する。このとき、BBプロセッサ106は、第1補正量を決定した後にメモリ115を参照して、決定した第1補正量に対応する第2補正量の初期値を取得し、第2補正量の調整を実行する。BBプロセッサ106による第1補正量及び第2補正量の決定処理については、後に詳述する。
【0020】
変調部107は、BBプロセッサ106から出力される送信データをD/A(Digital/Analogue)変換した後に、無線周波数にアップコンバートする。
【0021】
パワーアンプ108は、電源回路109から供給される電流を用いて送信データを増幅する。パワーアンプ108が消費する電流は、パワーアンプ108の出力段におけるインピーダンスに応じて変化する。
【0022】
電源回路109は、パワーアンプ108へ電流を供給し、パワーアンプ108が消費する電流を測定して測定結果をBBプロセッサ106へ通知する。
【0023】
インピーダンス補正部110は、BBプロセッサ106からの指示に従って、パワーアンプ108の出力段におけるインピーダンスを補正する。すなわち、インピーダンス補正部110は、BBプロセッサ106から指示される第2補正量を設定し、送信に係るインピーダンスを補正する。
【0024】
デュープレクサ111は、送信データをインピーダンス補正部112及びアンテナを介して送信するとともに、アンテナによって受信された受信データをローノイズアンプ113へ出力する。
【0025】
インピーダンス補正部112は、BBプロセッサ106からの指示に従って、アンテナ直近におけるインピーダンスを補正する。すなわち、インピーダンス補正部112は、BBプロセッサ106から指示される第1補正量を設定し、受信に係るインピーダンスを補正する。
【0026】
ローノイズアンプ113は、受信データを低雑音で増幅する。そして、ローノイズアンプ113は、増幅後の受信データを復調部114へ出力する。
【0027】
復調部114は、ローノイズアンプ113から出力される受信データをベースバンド周波数又は中間周波数にダウンコンバートした後に、A/D(Analogue/Digital)変換する。
【0028】
メモリ115は、BBプロセッサ106によって実行される処理に用いられる種々の情報を記憶する。具体的には、メモリ115は、例えばインピーダンス補正部112に設定される第1補正量とインピーダンス補正部110に設定される第2補正量との対応関係を示す補正量テーブルをあらかじめ記憶する。
【0029】
図2は、補正量テーブルの具体例を示す図である。図2に示すように、補正量テーブルには第1補正量Am〜An(mは負の整数、nは正の整数)と対応する第2補正量Bm〜Bnとが記憶されている。第1補正量は、インピーダンス補正部112に設定される受信に係るインピーダンスの補正量であり、補正量テーブルでは、例えば値が小さい順に並んでいる。そして、補正量テーブルには、それぞれの第1補正量がインピーダンス補正部112に設定された場合に、パワーアンプ108の消費電流を最小にするための第2補正量が記憶されている。補正量テーブルでは、第1補正量が値が小さい順に並んでいたとしても、第2補正量が値が小さい順に並ぶとは限らない。
【0030】
このような第1補正量及び第2補正量の対応関係は、例えば無線通信装置の試作機において、それぞれの第1補正量Am〜Anを設定した場合の最適な第2補正量Bm〜Bnを実測により求めることで得られる。したがって、図2に示す補正量テーブルによれば、例えばインピーダンス補正部112に第1補正量A0が設定された場合、無線通信装置の試作機ではインピーダンス補正部110に第2補正量B0を設定することにより、パワーアンプ108の消費電流が最小になったことが示されている。
【0031】
次に、図3を参照して、一実施の形態に係るBBプロセッサ106の機能について説明する。図3は、一実施の形態に係るBBプロセッサ106の機能を示すブロック図である。図3においては、通常のBBプロセッサに備えられる例えば符号化、デジタル変調及び歪み補償などの機能に関するブロックを省略している。図3に示すように、BBプロセッサ106は、第1補正量設定部201、受信レベル判定部202、第2補正量設定部203及び消費電流判定部204を有する。
【0032】
第1補正量設定部201は、補正量テーブルに記憶されたいずれかの第1補正量を初期値としてインピーダンス補正部112に設定する。そして、第1補正量設定部201は、受信レベル判定部202からの指示に従って、インピーダンス補正部112に設定する第1補正量を順次変更する。第1補正量設定部201は、最終的に、受信レベル判定部202の判定結果に応じて、受信レベルを最大にする第1補正量をインピーダンス補正部112に設定する。
【0033】
受信レベル判定部202は、復調部114によってダウンコンバート及びA/D変換された受信データの受信レベルを用いて、インピーダンス補正部112に設定された第1補正量の適否を判定する。具体的には、受信レベル判定部202は、第1補正量の初期値がインピーダンス補正部112に設定された際の受信レベルを取得すると、第1補正量設定部201に対して、第1補正量を一段階異なる第1補正量に変更するように指示する。すなわち、例えば図2に示した補正量テーブルの第1補正量A0が初期値として設定されていた場合、受信レベルを取得後に、第1補正量A1を設定するように指示する。
【0034】
そして、受信レベル判定部202は、第1補正量A0が設定された際の受信レベルと第1補正量A1が設定された際の受信レベルとを比較し、第1補正量A1が設定された際の受信レベルが大きい場合には、第1補正量設定部201に対して、第1補正量A2を設定するように指示する。一方、受信レベル判定部202は、第1補正量A0が設定された際の受信レベルが大きい場合には、第1補正量設定部201に対して、第1補正量A-1を設定するように指示する。
【0035】
このように、受信レベル判定部202は、初期値と一段階異なる第1補正量とをそれぞれ設定した場合の受信レベルを比較し、受信レベルを大きくする方向へ第1補正量を変更させる。そして、受信レベル判定部202は、第1補正量の変更と受信レベルの比較とを繰り返すことにより、受信レベルを最大にする第1補正量を決定する。
【0036】
第2補正量設定部203は、第1補正量設定部201によって受信レベルを最大にする第1補正量がインピーダンス補正部112に設定されると、この第1補正量に対応する第2補正量をメモリ115に記憶された補正量テーブルから取得する。そして、第2補正量設定部203は、取得した第2補正量を初期値としてインピーダンス補正部110に設定する。また、第2補正量設定部203は、消費電流判定部204からの指示に従って、インピーダンス補正部110に設定する第2補正量を順次変更する。第2補正量設定部203は、最終的に、消費電流判定部204の判定結果に応じて、消費電流を最小にする第2補正量をインピーダンス補正部110に設定する。
【0037】
消費電流判定部204は、電源回路109によって測定されるパワーアンプ108の消費電流を用いて、インピーダンス補正部110に設定された第2補正量の適否を判定する。具体的には、消費電流判定部204は、第2補正量の初期値がインピーダンス補正部110に設定された際のパワーアンプ108の消費電流を取得すると、第2補正量設定部203に対して、第2補正量を一段階異なる第2補正量に変更するように指示する。すなわち、例えば図2に示した補正量テーブルの第2補正量B0が初期値として設定されていた場合、消費電流を取得後に、第2補正量B1を設定するように指示する。
【0038】
そして、消費電流判定部204は、第2補正量B0が設定された際の消費電流と第2補正量B1が設定された際の消費電流とを比較し、第2補正量B1が設定された際の消費電流が小さい場合には、第2補正量設定部203に対して、第2補正量B2を設定するように指示する。一方、消費電流判定部204は、第2補正量B0が設定された際の消費電流が小さい場合には、第2補正量設定部203に対して、第2補正量B-1を設定するように指示する。
【0039】
このように、消費電流判定部204は、初期値と一段階異なる第2補正量とをそれぞれ設定した場合の消費電流を比較し、消費電流を小さくする方向へ第2補正量を変更させる。そして、消費電流判定部204は、第2補正量の変更と消費電流の比較とを繰り返すことにより、消費電流を最小にする第2補正量を決定する。
【0040】
次いで、上記のように構成された無線通信装置100における補正設定処理について、図4〜6に示すフロー図を参照しながら説明する。図4は、一実施の形態に係る補正設定処理を示すフロー図であり、図5、6は、それぞれ第1補正量及び第2補正量を決定する処理の詳細なフロー図である。
【0041】
補正設定処理は、主にBBプロセッサ106によって実行される。補正設定処理は、例えば所定の周期で周期的に実行されても良いし、人体や金属などの接近に伴うインピーダンス変動が検出された場合に実行されても良い。補正設定処理が開始されると、第1補正量設定部201によって、補正量テーブルにおいて一段階ずつ異なる第1補正量がインピーダンス補正部112に順次設定される(ステップS101)。そして、受信レベル判定部202によって、受信レベルが最大となったか否かが判定され(ステップS102)、受信レベルが最大となっていない間は(ステップS102No)、インピーダンス補正部112に設定される第1補正量が順次変更される。
【0042】
一方、受信レベルを最大にする第1補正量が決定すると(ステップS102Yes)、第1補正量設定部201によって、該当する第1補正量がインピーダンス補正部112に設定される。これにより、受信に係るインピーダンスの第1補正量が最適な状態に設定される。また、第2補正量設定部203によって、補正量テーブルが参照され、受信レベルを最大にする第1補正量に対応する第2補正量が取得される(ステップS103)。ここで取得される第2補正量は、無線通信装置の試作機において、パワーアンプ108の消費電流を最小にした補正量である。このため、取得された第2補正量に近い補正量によって、無線通信装置100のパワーアンプ108の消費電流も最小になる可能性が高い。
【0043】
そこで、第2補正量設定部203によって、取得された第2補正量を初期値として一段階ずつ異なる第2補正量がインピーダンス補正部110に順次設定される(ステップS104)。そして、消費電流判定部204によって、パワーアンプ108の消費電流が最小となったか否かが判定され(ステップS105)、消費電流が最小となっていない間は(ステップS105No)、インピーダンス補正部110に設定される第2補正量が順次変更される。そして、消費電流を最小にする第2補正量が決定すると(ステップS105Yes)、第2補正量設定部203によって、該当する第2補正量がインピーダンス補正部110に設定される。これにより、送信に係るインピーダンスの第2補正量が最適な状態に設定される。
【0044】
次に、受信に係るインピーダンスの第1補正量の決定処理について、より詳細に図5を参照しながら説明する。第1補正量の決定処理は、主に第1補正量設定部201及び受信レベル判定部202によって実行される。
【0045】
まず、補正量テーブルにおける第1補正量を指定するパラメータkが0に初期化される(ステップS201)。図2に示したように、補正量テーブルにおいては、第1補正量A0は、値が小さい順に並ぶ第1補正量Am〜Anのうちの中央付近の値である。したがって、パラメータkが0に初期化されることにより、第1補正量設定部201によって、第1補正量の初期値として第1補正量A0がインピーダンス補正部112に設定される(ステップS202)。そして、第1補正量A0が設定された状態での受信レベルRSSI0が測定され(ステップS203)、受信レベル判定部202によって取得される。
【0046】
受信レベル判定部202によって受信レベルRSSI0が取得されると、第1補正量設定部201によって、第1補正量Ak+1がインピーダンス補正部112に設定される(ステップS204)。すなわち、ここでは、第1補正量A1がインピーダンス補正部112に設定される。そして、第1補正量A1が設定された状態での受信レベルRSSI1が測定され(ステップS205)、受信レベル判定部202によって取得される。
【0047】
受信レベルRSSI0と受信レベルRSSI1とは、受信レベル判定部202によって大小比較される(ステップS206)。この比較の結果、受信レベルRSSI1の方が大きい場合には(ステップS206Yes)、第1補正量を大きくすることによって受信レベルが大きくなっていることから、さらに第1補正量を大きくする。すなわち、パラメータkが1インクリメントされ(ステップS207)、第1補正量設定部201によって、第1補正量Ak+1がインピーダンス補正部112に設定される(ステップS204)。すなわち、ここでは、第1補正量A2がインピーダンス補正部112に設定される。そして、第1補正量A2が設定された状態での受信レベルRSSI2が測定され(ステップS205)、受信レベル判定部202によって取得される。
【0048】
そして、受信レベルRSSIkよりも受信レベルRSSIk+1が大きい間は、パラメータkが1ずつインクリメントされ、受信レベルRSSIkが最大となるタイミングで受信レベルRSSIk+1が受信レベルRSSIk以下になる(ステップS206No)。そこで、受信レベル判定部202によって、パラメータkが初期値の0のままであるか否かが判定され(ステップS208)、パラメータkが0でなければ(ステップS208No)、第1補正量Akが受信レベルを最大にすると決定される(ステップS213)。
【0049】
一方、パラメータkが初期値の0の状態で、受信レベルRSSIkの方が大きい場合には(ステップS206No)、受信レベル判定部202によって、パラメータkが初期値の0のままであると判定される(ステップS208Yes)。この場合には、第1補正量を大きくすることによって受信レベルが小さくなっていることから、第1補正量を初期値よりも小さくする。すなわち、第1補正量設定部201によって、第1補正量Ak-1がインピーダンス補正部112に設定される(ステップS209)。すなわち、ここでは、第1補正量A-1がインピーダンス補正部112に設定される。そして、第1補正量A-1が設定された状態での受信レベルRSSI-1が測定され(ステップS210)、受信レベル判定部202によって取得される。
【0050】
受信レベルRSSI0と受信レベルRSSI-1とは、受信レベル判定部202によって大小比較される(ステップS211)。この比較の結果、受信レベルRSSI-1の方が大きい場合には(ステップS211Yes)、第1補正量を小さくすることによって受信レベルが大きくなっていることから、さらに第1補正量を小さくする。すなわち、パラメータkが1デクリメントされ(ステップS212)、第1補正量設定部201によって、第1補正量Ak-1がインピーダンス補正部112に設定される(ステップS209)。すなわち、ここでは、第1補正量A-2がインピーダンス補正部112に設定される。そして、第1補正量A-2が設定された状態での受信レベルRSSI-2が測定され(ステップS210)、受信レベル判定部202によって取得される。
【0051】
そして、受信レベルRSSIkよりも受信レベルRSSIk-1が大きい間は、パラメータkが1ずつデクリメントされ、受信レベルRSSIkが最大となるタイミングで受信レベルRSSIk-1が受信レベルRSSIk以下になる(ステップS211No)。そこで、受信レベル判定部202によって、第1補正量Akが受信レベルを最大にすると決定される(ステップS213)。
【0052】
なお、パラメータkが初期値の0の状態で、受信レベルRSSIk+1が受信レベルRSSIk以下であり(ステップS206No)、かつ受信レベルRSSIk-1も受信レベルRSSIk以下である場合には(ステップS211No)、第1補正量A0が受信レベルを最大にする補正量となる。
【0053】
このように、補正量テーブルにおいて値が小さい順に並ぶ第1補正量Am〜Anのうちの中央付近の第1補正量A0を初期値として、一段階ずつ第1補正量を変更しながら受信レベルを最大にする第1補正量が決定される。このため、受信に係るインピーダンスを最適にする第1補正量を短時間で決定することができる。
【0054】
次に、送信に係るインピーダンスの第2補正量の決定処理について、より詳細に図6を参照しながら説明する。第2補正量の決定処理は、主に第2補正量設定部203及び消費電流判定部204によって実行される。
【0055】
第1補正量設定部201によって受信レベルを最大にする第1補正量Akが決定されると、第2補正量設定部203によってメモリ115に記憶された補正量テーブルが参照される。そして、第2補正量設定部203によって、補正量テーブルから、第1補正量Akに対応する第2補正量Bjが取得され、インピーダンス補正部110に設定される(ステップS301)。補正量テーブルにおいて第1補正量Akに対応する第2補正量Bjは、パワーアンプ108の消費電流を最小にする第2補正量に近い値である。このため、第2補正量Bjが初期値としてインピーダンス補正部110に設定される。
【0056】
第2補正量Bjが設定されると、電源回路109によって、第2補正量Bjが設定された状態でのパワーアンプ108の消費電流Ijが測定され(ステップS302)、消費電流判定部204へ通知される。
【0057】
消費電流判定部204によって消費電流Ijが取得されると、第2補正量設定部203によって、第2補正量Bj+1がインピーダンス補正部110に設定される(ステップS303)。そして、第2補正量Bj+1が設定された状態での消費電流Ij+1が測定され(ステップS304)、消費電流判定部204によって取得される。
【0058】
消費電流Ijと消費電流Ij+1とは、消費電流判定部204によって大小比較される(ステップS305)。この比較の結果、消費電流Ij+1の方が小さい場合には(ステップS305Yes)、図2に示す補正量テーブルにおいて下方向に第2補正量を変更することによって消費電流が小さくなっていることから、さらに下方向の第2補正量に変更する。すなわち、パラメータjが1インクリメントされ(ステップS306)、第2補正量設定部203によって、新たな第2補正量Bj+1がインピーダンス補正部110に設定される(ステップS303)。そして、新たな第2補正量Bj+1が設定された状態での消費電流Ij+1が測定され(ステップS304)、受信レベル判定部202によって取得される。
【0059】
そして、消費電流Ijよりも消費電流Ij+1が小さい間は、パラメータjが1ずつインクリメントされ、消費電流Ijが最小となるタイミングで消費電流Ij+1が消費電流Ij以上になる(ステップS305No)。そこで、消費電流判定部204によって、パラメータjが初期値のままであるか否かが判定され(ステップS307)、パラメータjが初期値から変わっていれば(ステップS307No)、第2補正量Bjが消費電流を最小にすると決定される(ステップS312)。
【0060】
一方、パラメータjが初期値の状態で、消費電流Ijの方が大きい場合には(ステップS305No)、消費電流判定部204によって、パラメータjが初期値のままであると判定される(ステップS307Yes)。この場合には、図2に示す補正量テーブルにおいて下方向に第2補正量を変更することによって消費電流が大きくなっていることから、図2に示す補正量テーブルにおいて上方向に第2補正量を変更する。すなわち、第2補正量設定部203によって、第2補正量Bj-1がインピーダンス補正部110に設定される(ステップS308)。そして、第2補正量Bj-1が設定された状態での消費電流Ij-1が測定され(ステップS309)、消費電流判定部204によって取得される。
【0061】
消費電流Ijと消費電流Ij-1とは、消費電流判定部204によって大小比較される(ステップS310)。この比較の結果、消費電流Ij-1の方が小さい場合には(ステップS310Yes)、図2に示す補正量テーブルにおいて上方向に第2補正量を変更することによって消費電流が小さくなっていることから、さらに上方向の第2補正量に変更する。すなわち、パラメータjが1デクリメントされ(ステップS311)、第2補正量設定部203によって、新たな第2補正量Bj-1がインピーダンス補正部110に設定される(ステップS308)。そして、新たな第2補正量Bj-1が設定された状態での消費電流Ij-1が測定され(ステップS309)、消費電流判定部204によって取得される。
【0062】
そして、消費電流Ijよりも消費電流Ij-1が小さい間は、パラメータjが1ずつデクリメントされ、消費電流Ijが最小となるタイミングで消費電流Ij-1が消費電流Ij以上になる(ステップS310No)。そこで、消費電流判定部204によって、第2補正量Bjがパワーアンプ108の消費電流を最小にすると決定される(ステップS312)。
【0063】
なお、パラメータjが初期値の状態で、消費電流Ij+1が消費電流Ij以上であり(ステップS305No)、かつ消費電流Ij-1も消費電流Ij以上である場合には(ステップS310No)、初期値の第2補正量Bjが消費電流を最小にする補正量となる。
【0064】
このように、補正量テーブルにおいて最適な第1補正量Akに対応する第2補正量Bjを初期値として、一段階ずつ第2補正量を変更しながら消費電流を最小にする第2補正量が決定される。このため、最適に近い第2補正量を初期値として、消費電流を最小にする第2補正量を決定することができ、送信に係るインピーダンスを最適にする第2補正量を短時間で決定することができる。結果として、パワーアンプ108における消費電流が増加する第2補正量の調整時間を短縮することができ、消費電力の増大を抑制することができる。
【0065】
以上のように、本実施の形態によれば、受信に係るインピーダンスの第1補正量を最適に調整した後、この第1補正量に対応する第2補正量を補正量テーブルから取得して、送信に係るインピーダンスの第2補正量調整時の初期値とする。このため、最適に近い第2補正量を初期値として第2補正量の調整をすることができ、インピーダンスの調整時間を短縮するとともに消費電力の増大を抑制することができる。
【0066】
なお、上記一実施の形態においては、パワーアンプ108の消費電流が最小になるまで第2補正量を変更するものとしたが、必ずしも消費電流を最小するように第2補正量を調整しなくても良い。すなわち、例えばパワーアンプ108の消費電流が所定の閾値以下になった場合、その時点でインピーダンス補正部110に設定された第2補正量を最終的な第2補正量としても良い。
【0067】
また、上記一実施の形態においては、図2に示す補正量テーブルの下方向又は上方向に第2補正量を変更するものとしたが、第2補正量の変更はこれに限定されない。具体的には、例えば第2補正量を所定値ずつ増加又は減少させながら、パワーアンプ108の消費電流を最小にする第2補正量を決定することも可能である。
【0068】
さらに、上記一実施の形態における補正設定処理をコンピュータが実行可能なプログラムとして記述することも可能である。この場合、このプログラムをコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納し、コンピュータに導入することも可能である。コンピュータが読み取り可能な記録媒体としては、例えばCD−ROM、DVDディスク、USBメモリなどの可搬型記録媒体や、例えばフラッシュメモリなどの半導体メモリが挙げられる。
【符号の説明】
【0069】
101 ディスプレイ
102 タッチパネル
103 スピーカー
104 マイク
105 APプロセッサ
106 BBプロセッサ
107 変調部
108 パワーアンプ
109 電源回路
110、112 インピーダンス補正部
111 デュープレクサ
113 ローノイズアンプ
114 復調部
115 メモリ
201 第1補正量設定部
202 受信レベル判定部
203 第2補正量設定部
204 消費電流判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6