【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施例1に係る巻線装置Aの斜視図である。線材供給手段Bは断面形状が平角であるコイル線材2を送出又は停止させて把持するものであり、ボビン(図示せず)に巻かれたコイル線材2を図の矢印Jの方向に送出するものである。線材供給手段Bは、モータと駆動ローラの組み合わせた駆動機構を2セット配している。すなわち第1モータ3と第1モータ3の回転を伝達する第1駆動ローラ4と、第1駆動ローラ4と受動的に回転する第1受動ローラ5とでコイル線材2を挟み込む第1の駆動機構と、第2モータ6と第2駆動ローラ7と、受動的に回転する第2受動ローラ8とによってもコイル線材2を挟み込む第2の駆動機構とがあり、駆動ローラと受動ローラをそれぞれ矢印K1、矢印K2、矢印K3、矢印K4の方向に回転させることによりコイル線材2を送出する。コイル線材2はまず第1駆動ローラ4と第1受動ローラ5とにより送られ、線材ガイド9aで案内され、第2駆動ローラ7と第2受動ローラ8でさらに駆動されて線材ガイド9bに達する。線材ガイド9bの端部には後述するように曲げガイド9baが設けられている(
図3参照)。また各モータの回転を停止することでコイル線材2を把持する。
それぞれのモータは、回転速度を適正にするために減速器を備えることができ、またモータの回転を発停する制御装置(図示せず)を有する。
なお、第1モータ3と第1駆動ローラ4と第1受動ローラ5との組み合わせ、あるいは第2モータ6と第2駆動ローラ7と第2受動ローラ8との組み合わせによる線材供給手段の代わりに、モータとねじによる直線運動変換機構を用いても良い。
【0013】
曲げ手段Cは回転機構である曲げモータ10の回転軸11にレバー12を介して回転自由な曲げローラ13を備え、矢印L方向に回転し、
図1においてはコイル線材2に当接して後述する曲げガイド9baを支点としてコイル線材2を図の上方向に折り曲げる。コイル移動ガイド21は線材ガイド9b側に固定されており、コイル線材2がコイル状になって曲折した際にこのコイル移動ガイド21に案内されて順次回転しながら移動する。
【0014】
曲げ手段Cが幾度か回転してコイル線材2を折り曲げることによって
図2に示すように矩形の渦巻状に巻回されたコイル14を形成する。曲げ手段Cの曲げローラ13がコイル線材2を折り曲げる位置でのコイルの中心線をZ1とし、このとき曲げ手段Cの回転軸11の中心線をZ2とすると、中心線Z2は、コイル14の外周面よりも外側に位置している。
巻回されたコイル14は、コイルガイド15の接触部15a上に置かれ、コイル14の重量を支えられている。コイルガイド15はコイル線材2の曲折時にコイル14の回転によって発生するコイル14の揺動を制動する機能を有する。
【0015】
なお、
図1および
図2では、巻回されたコイルが重力の方向に対して垂直方向に設置されているが、線材供給手段Bや曲げ手段Cの配置を変更することにより、コイルを重力の方向に対して平行になるように設置することもできる。
【0016】
本発明の巻線装置の巻回の過程を矩形コイルの製作を例にして、
図3〜
図4に模式図にて示す。なお、
図3から
図4の図面は
図1に示すX−X方向からの図である。
図3(a)はステップ1を示したもので、コイル線材2が巻回を始める前の状態を示しており、回転軸11と曲げローラ13は停止しており、コイル線材2は矢印Jの方向に送られ、線材ガイド9Bから突出する。なお円形の2点鎖線は曲げローラ13の回転軌跡を示す。さらにコイル線材2が送られて、
図3(b)のステップ2に示すように矩形コイルの一辺の長さに到達すると、線材供給手段Bは回転を停止し、コイル線材2を把持する。このコイル線材2の送出長さの制御は線材供給手段Bのモータの回転数で行われる。コイル線材2が所定長さ送られたことに同期して曲げローラ13が矢印L方向に回転を開始し、コイル線材2に曲げローラ13が当接しコイル線材2を線材ガイド9bの端部にある曲面形状の曲げガイド9baを中心に折り曲げを開始する。
【0017】
図3(c)はステップ3を示し、コイル線材2が曲線部2cを経てほぼ90度に折り曲げられた状態を示している。この状態で曲げローラ13は時計方向に回転しほぼ左端の位置に移動した状態にあり、コイル線材2を反時計方向に約90度、場合によってはスプリングバックの影響を考慮して90度以上の鋭角に曲げる。さらに曲げローラ13が時計方向に回転を継続するとコイル線材2より離れていくことになる。
図3(d)のステップ4では曲げローラ13がさらに回転し、コイル線材2を折り曲げた後、コイル線材2よりしだいに離れていく。
図3(b)から(c)までの間コイル線材2は移動せずにその位置を保っているが、この後線材供給手段Bによってコイル線材2の供給が開始される。このとき曲げローラ13も回転を継続しており、曲げローラ13の移動の方が速く行われるので、
図3(d)に示すようにコイル線材2の先端部2aや直線部2bが曲げローラ13に接触することはない。なお、コイル線材2を送出するタイミングは安全を期すなら、曲げローラ13が相当の距離離れてから行わせてもよい。
【0018】
矩形コイルの他の辺の長さ分だけコイル線材2が送出されると
図4(a)のステップ5に示すように線材供給手段Bはコイル線材2の送出を停止し把持する。曲げローラ13は継続して回転を行っておりコイル線材2に近づいていく。このとき曲げローラ13にかかる駆動負荷は小さいので速度を上げて時間を節約することが可能である。特に矩形形状の一辺が短いときに無駄な待ち時間をなくすことができる。
【0019】
図4(b)はステップ6を示しており、曲げローラ13がコイル線材2に当接し曲げガイド9bの端部9baを中心として曲げ加工が開始され、
図4(c)のステップ7で2回目の曲げ加工が完了する。このときは曲げローラ13には比較的大きな負荷がかかるので回転速度を下げてモータトルクを上げて曲げ加工を行う。さらに同様の動作により
図4(d)のステップ8で3回目の曲げ加工が行われる。以上の動作を繰り返すことにより
図2に示すように積層された矩形のコイル14が製造される。
図4(d)に示すように曲げ手段Cの曲げローラ13によってコイル線材2の曲げ加工が行われ、コイル移動ガイド21に乗り上げるようにして案内されてコイル状に形成される。コイル14が形成されたときのコイルの中心Z1と回転軸11の中心Z2とは位置が異なっており、Z2はコイル14の外周よりもさらに外側に位置している。
【0020】
曲げローラ13とコイル線材2とは
図3〜
図4に示したように曲げ加工のとき以外は接触することがなく、必ずしも曲げローラ13を逆回転させたり、コイルをコイル面と垂直方向に方向に移動させる必要がないことがわかる。また曲げローラ13は加工が開始されると中心軸を軸方向に移動させることなく連続回転を行えばよいので曲げモータ10の制御は容易であり、高速に回転することが可能である。曲げモータ10は一般にサーボモータと称される誘導モータ、同期モータ、ステッピングモータなどが使用され、モータの回転位置を検出する位置検出器を備えていても良い。
【0021】
このようにして
図3から
図4の動作を繰り返すとコイル周長が一定のコイルが製造できる。なお、曲折の角度を変更すれば、四角形以外の多角形のコイルが製造可能である。
本実施例では曲げローラ13が同一方向に継続的に回転する例を示したが、曲げローラ13がコイル線材を曲折後(
図3(c))に逆回転(反時計回り)させて
図4(a)の状態に復帰させてコイル線材2を送出後に再度回転方向を変更(時計回り)して曲折するようにしても良い。
また、実施例1では回転機構として曲げモータ10を示したが、往復運動を行う電気駆動のソレノイドや空圧式のプランジャを用いても良い
【0022】
次に本発明の実施例1として、7.6mmx2mmの矩形コイルをエッジワイズで巻回
し、最外周が84mmx84mmで、最内周が28mmx28mmの矩形渦巻型のコイル
の製造方法を
図5〜
図6の模式図にて示す。なお、具体的な寸法は一つの例であって、本
発明はこの寸法に限定されるものではない。第1巻回行程として周長の大きいコイルから
巻回して、順に周長の小さいコイルを巻回する工程を説明する。
図5(a)はコイルを巻
回する前の初期位置の状態を示しており、線材供給手段B(
図1)によって線材ガイド9
bに沿ってコイル線材2を送出する。21は、コイル移動手段としてのコイル移動ガイド
である。
図5(b)に示すようにコイル線材2は所定長さ(直線部2b)送られると停止
し、
図5(c)に示すように曲げローラ13が回転しコイル線材2の曲折部2cの部分で
線材ガイド9bに沿って1回目の曲折を行う。この1回目の曲折は端子を取り出すので、
例えば最外周の1辺の長さが84mmの矩形コイルではやや長めの例えば110mm程度
にする。次に線材供給手段Bによってコイル線材2が
図5(d)に示すように矢印方向に
例えば60mm(直線部2d)の2回目の送出を行われて停止する。曲げローラ13はこ
の間も回転を継続しており
図5(e)に示すようにコイル線材2が送出を完了した後再び
曲折部2eにて2回目の曲折をする。このときコイル線材先端部2aや直線部2bはコイ
ル移動ガイド21に乗り上げてガイドされながら回転する。直線部2eがコイル移動ガイ
ド21のガイド面21aにガイドされるため曲折するコイル面と直角方向に移動してコイ
ル線材2が変形することになるが、この変形量はコイル線材の弾性限界以下の変形量にな
るように、コイル移動ガイド21の傾斜が設定してある。3回目の送出として直線部2e
が同様にして
図5(f)に示すようにコイル線材2が2回目の送出(
図5(d))と同じ
直線部2fの長さ(60mm)が送出されて
図5(g)に示すように曲げローラ13によ
り曲折部2gにて3回目の曲折を行う。このとき直線部2bから直線部2dの線材はコイ
ル移動ガイド21にガイドされて回転する。さらに直線部2bは
コイル移動ガイド21か
ら線材ガイド9b(
図2)の外側にガイドされ、線材ガイド9bの内側を通過するコイル
線材2とは立体的に交差するので、互いに干渉することはない。
【0023】
次に
図5(h)に示すように、線材コイル2の送出を3回目の送り量60mmよりもコイル線材2の幅(本実施例では7.6mm)よりも短く、例えば直線部2hの長さを52mmに設定して4回目の送出を行い、
図6(a)に示すように曲折部2iで4回目の曲折を行う。直線部2bは前述のように線材ガイド9bの外側にガイドされているので、供給されるコイル線材2とは立体的に交差している。5回目のコイル線材2の送出は、
図6(b)に示すように4回目と同じ長さに設定し、
図6(c)に示すように曲折部2kにて曲折を行う。このとき直線部2dが線材ガイド9bの外側にガイドされているのでと曲折部2bと曲げローラ13とは干渉せず、曲折部2kにて5回目の曲折が行われる。6回目の送出は、
図6(d)に示すように5回目の送出量52mmよりもさらにコイル線材2の幅よりも短く、直線部2eの長さを例えば44mmに設定されて送出される、曲折部2mによって6回目の曲折が行われる。
【0024】
以下同様に、7回目(
図6(f)・
図6(g))は送出量44mm、8回目(
図6(h)・
図7(
a))と9回目(
図7(b)・
図7(c))は
送出量36mm、10回目(
図7(d)・
図7(e))と11回目(
図7(f)・
図7(g))は送出量28mm、12回目(
図7(h)・
図8(a))と13回目(
図8(b)・
図8(c))は送出量20mmのコイル線材2の送出と曲折が行われる、
図8(c)の曲折において、周長が大きいほうから小さい方への矩形の渦巻状のコイルが形成される。
【0025】
次にコイル周長の小さいコイルから周長の大きいコイルを巻回する第2巻回工程について説明する。14回目からのコイル線材の送出と曲折は、コイル周長が小さい方から大きい方への矩形渦巻のコイルが作成される。すなわち14回目(
図8(d)・
図8(e))と15回目(
図8(f)・
図8(g))は送出量20mmで送出と曲折とが行われる。なお、
図8(e)以降のコイル図面は、周長が大きい方から小さい方へ巻回されて部分を破線で示し、周長が小さいほうから大きい方へ巻回されて部分は実線で示している。実践部分のコイル線材は破線と重ならないように線材の幅をやや小さく記載しているが、実際には1本の線材なので、その線材の幅は第1工程のときと同一である。16回目(
図8(h)・
図9(a))と17回目(
図9(b)と
図9(c))は送出量28mm、18回目(
図9(d)・
図9(e))と19回目(
図9(f)・
図9(g)は送出量36mm、20回目(
図9(h)・
図10(a)と21回目(
図10(b)・
図10(c))送出量44mm、22回目(
図10(d)・
図10(e)は送出量52mmで送出と曲折が行われ、コイル線材2を切断して
図10(f)に示すような2層に重なり合った(1部は1層)矩形の渦巻コイルが形成される。
この第1巻回工程と第2巻回工程とで1巻回単位を構成し、最外周部から接続用端子を取り出すことができる。また後述するように1巻回単位工程を繰り返すことにより、3層以上に積層されたコイルを製作することができる。
図5から
図10の工程において、曲げローラ13は継続して回転し、コイル線材2は継続して供給され、途中でコイル線材を切断したりあるいはもう一方の端部からも巻回することがなく、いわゆる一筆書きで製造が行われる。
【0026】
図11と
図12は実施例1の製造方法により作成された渦巻コイルである。
図11(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図、(e)は平面図、(f)は底面図であり、
図12の(a)と(b)はそれぞれ
図11(a)正面図に示されるA−A断面図とB−B断面図である。
図11の矩形渦巻コイルは最大4回巻を2層に形成している。コイル線材2を曲折する際に既に巻回されたコイルはコイル移動ガイド21にガイドされてコイルの巻回する面に対して垂直方向に変形することになるが、変形の範囲がコイル線材2の弾性限界範囲内に設定されているので、自然な状態では弾性により変形が戻り、
図11に示すように周長の小さいコイルが周長の大きいコイルの内側に入り込み渦巻状のコイルを形成する。
コイルに垂直方向の変形を弾性限度内に保つために、コイル移動ガイド21の大きさはコイル線材の弾性係数やコイルの周回長等によって最適値を選定することが必要であるが、通常用いられる銅製の線材で実施例1に示したサイズであれば特に問題はなく製造が可能である。
図12の断面図に示されるように、渦巻形状コイルの最内周部と最外周部とは1巻回単位において線材が重ならない部分を設けることによって、コイル線材を一端から連続して巻回することが可能である。
【0027】
図5(a)に示すようにコイル線材の一端2aから巻回を開始し、コイル周長の大きいものから小さいものへ巻回し、さらに継続してコイル周長の小さいものから大きいものへと巻回するので、コイルの最外周と最内周は巻回数が少なくなるように構成する。すなわち多くが2層で巻回されているが、最内周と最外周とに1層の部分を設けることで、コイル線材の端部2aから同一方向に連続して巻回して製造することができる。
渦巻の内周部分では非線形コイルの一辺が短くなるので、コイル移動量が弾性限界以上になることも考えられるが、若干の変形は薄型の寸法への許容範囲内であれば差し支えない。特に最内周では1巻回単位では重なりがない部分もあるので、薄型寸法を保つことができる。