(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記上り送信を間欠的に行うタイミングの間のそれぞれにおいて、前記無線端末から前記他無線端末への前記端末間通信と該他無線端末から該無線端末への該端末間通信とを交互に行うように前記無線通信部を制御する
請求項1に記載の無線端末。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いながら、開示の無線端末、無線局、無線通信システム、および無線通信方法の実施形態について説明する。尚、便宜上別個の実施形態として説明するが、各実施形態を組み合わせることで、組合せの効果を得て、更に、有用性を高めることもできることはいうまでもない。
【0018】
[問題の所在]
上述したように、従来技術においては、効率的な端末間通信を実現できない等の問題がある。まず、各実施形態を説明する前に、従来技術における問題の所在を説明する。この問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものであることに注意されたい。
【0019】
一般に、従来のLTEシステム等の無線通信システム(携帯電話システムやセルラーシステムと言い換えてもよい)においては、2台の無線端末20は基地局10を経由して通信を行う(以降は、このような通信形態を便宜上「基地局経由通信」と称する)。これに対し、LTEシステムにおけるD2D等のような端末間通信では、無線端末20同士が基地局10を介さずに直接無線通信を行う。なお、以下ではLTEシステムにおける用語「D2D」を用いずに、より一般的な用語「端末間通信」を用いて説明を進めるが、「端末間通信」を「D2D」と適宜読み替えても構わない。
【0020】
ここで、セルラーシステムにおける無線端末20は、基地局10の管理下に置かれ、基地局10からの指示等に基づいて各種の動作や制御を行うのが一般的である。例えば、上述した基地局経由通信を行う場合、無線端末20は基地局10から無線リソースの割当を受ける必要がある。このような考え方に基づけば、端末間通信についても一定程度は基地局10の管理下で行われるのが自然であると考えられる。具体的には、端末間通信も可能なセルラーシステムにおいては、通常は基地局経由通信を行い、所定条件を満たす場合に基地局10が無線端末20に対して端末間通信を許可することが想定される。この許可は、端末間通信用の無線リソースの割当を伴うものとすることができる。これにより、基地局10の管理下で端末間通信が開始されることになる。なお、端末間通信に行うための所定条件としては、様々なものが考えられる。一例としては、基地局10の負荷が高い場合に、基地局10の負荷を減らすべく、基地局10が配下の一部の無線端末20を基地局経由通信から端末間通信に移行させることが考えられる。
【0021】
LTEシステムに即してより具体的に説明すると、次のような状況が想定される。基地局10は、端末間通信開始の所定条件を満たす場合(例えば基地局10の負荷が所定値以上である場合)に、2台の無線端末20に対し、端末間通信の開始を許可する旨の信号(以下では便宜上、端末間通信開始信号と称する)を送信する。端末間通信開始信号には、端末間通信を行うために必要な各種のパラメータを含む。このようなパラメータとしては、例えば、端末間通信に使用するリソースブロック(Resource Block)が考えられる。リソースブロックとは、LTEシステムにおけるいわゆる部分帯域(サブバンド)に相当する。上述したようにLTEシステムの端末間通信は上りの周波数帯域を使用するため、端末間通信用のリソースブロックは、上りの周波数帯域の一部が割り当てられる。上りの残りの周波数帯域については、基地局経由通信用の無線リソースとして割り当てたり、他の端末間通信用の無線リソースとして割り当てることができる。
【0022】
基地局10から端末間通信を許可された2台の無線端末20は、基地局10から端末間通信用として割り当てられたリソースブロックを用いて、端末間通信を開始する。端末間通信は、周波数軸方向ではこのリソースブロックにおいて行われるが、時間軸方向では各サブフレームにおいて行うことができる。なお、端末間通信を開始するタイミングについては、端末間通信開始信号を受けた次のサブフレームとしても良いし、開始タイミングを示す情報を端末間通信開始信号により基地局10が指定することとしてもかまわない。
【0023】
その後、基地局10は、端末間通信終了の所定条件を満たす場合(例えば基地局10の負荷が所定値以下となった場合)に、2台の無線端末20に対し、端末間通信を終了する旨の信号(以下では便宜上、端末間通信終了信号と称する)を送信する。無線端末20は、端末間通信終了信号を受信すると、当該信号に基づいて端末間通信を終了する。なお、端末間通信を終了するタイミングについては、端末間通信終了信号を受けた次のサブフレームとしても良いし、終了タイミングを示す情報を端末間通信終了信号により基地局10が指定することとしてもかまわない。
【0024】
以上のようにすれば、基地局10の管理下における端末間通信をある程度は実現することができるように思われる。しかしながら、上記の方式には端末間通信の管理について不十分な点が残っている。具体的には、基地局10からの指示に基づく端末間通信の開始と終了の間において、2台の無線端末20が継続的に(間断なく)端末間通信を行うのは、管理上望ましくないと考えられる。
【0025】
管理上望ましくない場合の典型例を説明する。上記の方式においては一例として基地局10が端末間通信の開始や終了を基地局10の負荷に基づいて決定しているが、これらの決定は無線端末20間の無線品質に基づくのがより望ましいと考えられる。端末間通信を行う無線端末20間の無線品質が悪い場合には、端末間通信を効果的に行うのが困難であるためである。ここで、基地局10が無線端末20間の無線品質を把握するためには、基地局10は無線端末20から無線品質の測定結果について報告を受ける必要がある。2台の無線端末20の間の無線品質を測定できるのは、それらの無線端末20のみであり、基地局10が測定することはできないためである。
【0026】
ただし、端末間通信の終了の決定については考慮すべき点がある。無線端末20が無線端末20間の無線品質の報告を行うためには、基地局10に対して上り送信を行う必要がある。また、基地局10が端末間通信の終了のタイミングを適時に決定するためには、無線端末20間の品質がある程度の頻度で報告される必要がある。しかしながら、前述したように、LTEシステムにおいては端末間通信と上り送信は時分割で行う必要がある。したがって、基地局10が端末間通信の終了のタイミングを適時に決定するためには、端末間通信の開始と終了の間において、ある程度の頻度で端末間通信を行わずに上り送信を行う必要があることになる。言い換えれば、端末間通信を開始するサブフレームと端末間通信を終了するサブフレームとの間の連続するサブフレームにおいて、端末間通信を行わずに上り送信を行うためのサブフレームがある程度の頻度で必要ということになる。
【0027】
したがって、端末間通信の開始と終了の間の各サブフレームに対して、端末間通信用または上り送信用といった用途を割り当てる必要がある。ここで、上述したように、各サブフレームに対して端末間通信用または上り送信用といった用途を割り当てる技術は従来から知られている。しかしながら、これらの従来技術は以下に述べるような問題を抱えており、本願が想定するような状況にはそぐわないものであると考えられる。この問題は、発明者の子細な技術検討により新たに見いだされた物である。
【0028】
図2に、前述した従来技術に係る端末間通信を行うためのサブフレーム割当ての例を示す。
図2では紙面の都合上、時間軸方向において第0サブフレーム〜第9サブフレームの10個のサブフレームのみが示されているが、この前後において同じパターンのサブフレームが繰り返されても構わないことに留意されたい。
【0029】
前述した従来技術はいずれも、
図2に例示されるように、各サブフレームに対する端末間通信用や上り送信用といった用途の割当が、上り用の周波数帯域の全体に渡って画一的に行われている。
図2においては、一例として上り周波数帯域が6個のリソースブロックを含むが、これら全てに用途の割当が画一的に行われている。これは、従来技術におけるサブフレームへの用途の割当が、ある基地局10の管理下で端末間通信を行う2台の無線端末20のみならず、ある基地局10の管理下にあるすべての無線端末20(基地局10経由型通信を行っている無線端末20も含む)に適用されることを意味する。
【0030】
また、従来技術においては、各サブフレームへの用途の割当が固定的に行われている。そして従来技術においては、上り送信用と端末間通信用とでサブフレームの割合を比較すると、前者が多いか同程度となっており、上り送信用の割当が比較的多くなっている。
図2においては、一例として、第0サブフレームと第5サブフレームとが端末間通信用として固定的に割り当てられている。また、第1〜第4サブフレームと第6〜第9サブフレームとが上り送信用として固定的に割り当てられている。これは、従来技術の割当はある基地局10の管理下の全ての無線端末20に適用されるところ、無線端末20のうちで端末間通信を行うのはあくまでも少数派であり、多くの無線端末20は基地局経由通信に係る上り送信を行うためであると推察される。換言すれば、従来技術はある基地局10配下の全無線端末20を対象としているため、需要が大きい上り送信のサブフレームを比較的多く割り当て、需要が小さい端末間通信用のサブフレームを比較的少なく割り当てているものと考えられる。
【0031】
これに対し、本願が想定しているような端末間通信に対して個別にリソースブロック(サブバンド)を割り当てるような場合においては、従来技術のようなサブフレーム割当では支障がある可能性がある。まず、端末間通信を行う無線端末20においても、前述したように一定の上り送信が必要ではあるが、無線品質等の定期的な報告が行えれば十分であり、それほど多くの割合のサブフレームは必要ないと考えられる。特に、端末間通信を行う2台の無線端末20がいずれも移動していない場合には無線端末20間の無線品質の変動はそれほど大きくない。そのため、このような場合には、無線品質の報告の頻度も少なくて良く、上り送信用のサブフレームは数十〜数百サブフレームに1サブフレーム程度でも十分であると思われる。しかしながら、上述した従来技術においては、上り送信用のサブフレームの方がむしろ多くなっており、無線品質等の報告に必要な割合を大幅に超えてしまう可能性が高いと推察される。そして、上り送信用のサブフレームが多いと、端末間通信用のサブフレームがその分少なくなってしまう。これにより、端末間通信に使える無線リソースが少なくなるため、端末間通信のスループット(伝送効率)が低下してしまう恐れがある。
【0032】
また、そもそも端末間通信において必要な上り送信の頻度は一定ではないことにも注意すべきである。例えば、端末間通信を行う2台の無線端末20がいずれも移動していない場合と、いずれもが高速で移動している場合とでは、無線品質の変動の大きさが異なるため、無線品質の報告の頻度も異なるのが自然である。しかしながら、上述した従来技術においては、上り送信用のサブフレームが全ての無線端末20に対して固定的に割り当てられており、そのため、先に述べた2つの場合で無線品質の報告頻度が同じにならざるを得ない。これにより、上り送信用サブフレームが多すぎたり、反対に少なすぎるような事態が発生しうる。そして、上り送信用のサブフレームが多すぎる場合には(前述したように)端末間通信のスループット低下を招き、少なすぎる場合には端末間通信の適時な終了が遂行できない恐れがある。端末間通信の終了タイミングは基地局10によって決定されるが、この決定は無線端末20から上り送信される無線品質の報告等に基づいて行われるためである。
【0033】
以上をまとめると、LTEシステムにおいて端末間通信は上り用の周波数帯を用いることが規定されているため、端末間通信と上り送信を時分割で行う必要がある。一方、無線端末20は端末間通信を行いながらも上り送信を行うことが要求されることから、端末間通信をある程度の頻度で中断して、その合間に上り送信を行うことが必要となる。ここで、従来技術では本願のように端末間通信に個別にリソースブロック(サブバンド)が割り当てられるような状況が十分に考慮されていないため、端末間通信の合間に行う上り送信の設定が柔軟に行えない、当該上り送信の頻度が大きすぎるといった不都合が見出された。そして、このような不都合に伴い、従来技術は、端末間通信のスループット低下や適時な終了の困難を招き、その結果、端末間通信を効果的に行えないという問題を有している。なお、以上の説明はLTEシステムに即して行ってきたが、この問題はLTEシステムに限られず、これと同様の無線通信システムも備えうることに留意されたい。以降では、この問題を解決するための本願の各実施形態を順に説明する。
【0034】
[第1実施形態]
第1実施形態は、無線端末20であって、所定周波数帯域を用いて無線局に対する上り送信を行う無線通信部と、前記無線端末20が他無線端末20と端末間通信を開始してから終了するまでの間における前記上り送信を間欠的に行うタイミングを示す信号を前記無線局から受信し、前記所定周波数帯域の内で該端末間通信のために割り当てられた周波数帯域を用いて、該端末間通信と該上り送信とを該信号に基づいて時分割で行うように前記無線通信部を制御する制御部とを備える無線端末20に係る実施形態である。
【0035】
ここで、上記の無線局としては典型的には基地局10(「無線基地局」とも称される。)が考えられるが、第3の無線端末20等を含むその他の無線通信装置であってもかまわない。一例としては、災害等により基地局10が機能しなくなったときに、無線端末20が基地局10の機能を代理する場合が考えられる。本実施形態および後述する各実施形態においては、無線局が基地局10である場合を説明するが、これに限られないことに留意されたい。
【0036】
以下ではLTEシステムにおいて本願発明を適用した場合を説明する。しかしながら、本願発明はLTEシステムに限定されるものではなく、上記で説明した問題を有する同様の無線通信システムも適用可能なことに留意されたい。
【0037】
図3は第1実施形態に係る処理シーケンスの一例を示す図である。
【0038】
第1実施形態の前提を説明する。いま2台の無線端末20である第1無線端末20aと第2無線端末20bとが基地局10の管理下(配下)にあるとする。第1無線端末20aと第2無線端末20bのそれぞれは、通信中である必要はないが、少なくとも基地局10と同期している状態であるものとする。ここでの同期の意味は、無線端末20が、少なくとも基地局10が送信する同期信号や共通制御信号を受信しその内容を確認できる状態にあることである。なお、本願においては、第1無線端末20aと第2無線端末20bとを合わせて単に無線端末20と称することがあることに留意されたい。
【0039】
図3のS101で第1無線端末20aと第2無線端末20bとは、基地局10が端末間通信の可否または要否を判定するための信号を、基地局10に対して上り送信する。以下では便宜上、この情報を判定用信号と称する。判定用信号は、上りの制御チャネルであるPUCCH(Physical Uplink Control CHannel)を介して送信されてもよいし、上りのデータチャネルであるPUSCH(Physical Uplink Shared CHannel)を介して送信されても構わない。一例としては、上位の制御信号であるRRC(Radio Resource Control)信号としてPUSCHを介して送信することもできる。
【0040】
以下では第1無線端末20aが送信する判定用信号を例に説明を行う。第2無線端末20bが送信する判定用信号についてもこれと同様であるため、説明は省略する。
【0041】
第1無線端末20aが送信する判定用信号は、任意の情報を含むことができるが、例えば第2無線端末20bから第1無線端末20aへの方向の無線環境の品質(無線品質)を含むことができる。これは第1無線端末20aにおける第2無線端末20bからの無線信号の受信品質に相当する。また、判定用信号は第1無線端末20aと第2無線端末20bの間のパスロス(伝搬損失)を含むこととしてもよい。第1無線端末20aは、これらの無線品質やパスロスを、第2無線端末20bから送信された参照信号(基準信号またはパイロット信号とも称する)に基づいて測定または計測することができる。
判定用信号の送信タイミングは、予め基地局10によって指示されてもよいし、無線端末20が何らかの事象を検出した場合に送信することとしてもよい。また、判定用信号の送信タイミングは、第1無線端末20aと第2無線端末20bとで共通のタイミング(共通のサブフレーム)でも良いし、異なるタイミング(異なるサブフレーム)であってもよい。
【0042】
図3のS102で基地局10は、S101で第1無線端末20aと第2無線端末20bとから受信した判定用信号に基づいて、第1無線端末20aと第2無線端末20bとの端末間通信を開始するか否かの判定(または決定)を行う。この判定は任意の基準に基づいて行うことができる。例えば、判定用信号が示す第1無線端末20aと第2無線端末20bの間の無線品質が、双方向で所定の基準を満たす場合に、端末間通信を開始する旨の判定を行う。一方、第1無線端末20aと第2無線端末20bの間の無線品質がいずれかの方向において所定の基準を満たさない場合に、端末間通信を開始しない旨の判定を行う。またS102の判定は、S101の判定用信号に含まれる無線品質以外の情報(例えばパスロス)に基づいて行うこととしてもよい。さらに、S102の判定は、S101の判定用信号には含まれない種々の情報(例えば基地局10の負荷等)に基づいて行っても構わないことは言うまでもない。
【0043】
図3のS102においては、一例として、基地局10は第1無線端末20aと第2無線端末20bとの端末間通信を開始する旨の判定を行ったものとする。この場合、基地局10はさらに、第1無線端末20aと第2無線端末20bとが端末間通信を行うための各種パラメータを決定する。例えば、基地局10は、第1無線端末20aと第2無線端末20bとの端末間通信のために割り当てられるリソースブロック(サブバンド)を決定する。
【0044】
また、第1無線端末20aと第2無線端末20bとの端末間通信を開始する旨の判定を行った場合、基地局10は、端末間通信の開始後(且つ終了前)において第1無線端末20aと第2無線端末20bが上り送信を行うためのタイミングを決定する。以下では便宜上、このタイミングを上り送信タイミングと称する。上り送信タイミングは、第1無線端末20aと第2無線端末20bとで共通としてもよいし、別々とすることも可能である。本実施形態においては上り送信タイミングは、サブフレームの識別子(番号)により指定される。ここで、サブフレームとは、LTEシステムにおける時間軸方向の無線リソースの割当単位である。1サブフレームは1ミリ秒の長さを有し、1サブフレームは連続する2つのスロットから構成される。1スロットは連続する7個のシンボルから構成され、したがって1サブフレームは連続する14個のシンボルから構成される。また、連続する10サブフレームで1フレームを構成する。
【0045】
上り送信タイミングの決定は任意の方法で行うことができる。典型的な例としては、第1無線端末20aと第2無線端末20bとの間の無線品質の単位時間当たりの変化の大きさに基づいて上り送信タイミングを決定することができる。より具体的には、無線品質の変化が大きい場合には上り送信タイミングを比較的高い頻度に設定し、変化が小さい場合には比較的低い頻度に設定する。このようにすることで、無線端末20が高速に移動している等によって無線品質が不安定な場合には、基地局10は比較的高い頻度で当該無線品質を無線端末20から得ることができ、無線品質の変化に追従しやすくなる。反対に、無線端末20が静止している等によって無線品質が安定している場合には、基地局10は比較的低い頻度で当該無線品質を無線端末20から得ることができ、上り信号の量を抑制することができる。
【0046】
図3のS103で基地局10は、S102の判定に基づいて、端末間通信を開始する旨の信号を第1無線端末20aと第2無線端末20bとに下り送信する。以下では便宜上、この信号を端末間通信開始信号と称する。なお、端末間通信の開始を、端末間通信のアクティベーション(Activation:活性化)と呼ぶこととしてもよい。
【0047】
端末間通信開始信号は、下りの制御チャネルであるPDCCH(Physical Downlink Control CHannel)を介して送信されてもよいし、下りのデータチャネルであるPDSCH(Physical Downlink Shared CHannel)を介して送信されても構わない。一例としては、上位の制御信号であるRRC(Radio Resource Control)信号としてPDSCHを介して送信することもできる。
【0048】
端末間通信開始信号は、基地局10がS102で決定した、第1無線端末20aと第2無線端末20bとが端末間通信を行うための各種のパラメータを含む。例えば、端末間通信開始信号は、第1無線端末20aと第2無線端末20bとの端末間通信のために割り当てるリソースブロック(サブバンド)を含むことができる。また、端末間通信の開始タイミングを含むこととしてもよい。
【0049】
さらに、第1実施形態に係る端末間通信開始信号は、前述した上り送信タイミングを示す情報を含むことができる。ここで、上り送信タイミングの指定は、上り送信用のサブフレームの指定に相当するが、その方法の典型例としては、上り送信用の最初のサブフレームを示すオフセット値と、上り送信用のサブフレームの周期とにより指定することができる。また、このオフセット値をシステムにおいて固定し、周期のみを指定することとしても構わない。
【0050】
なお、ここでは上り送信用のサブフレームは間欠的であることを前提としているとともに、各上り送信の長さが1サブフレームであることを前提としていることに留意されたい。より端的に言えば、上り送信用のサブフレームは周期的な単一のサブフレームであることを前提としている。前述したように、端末間通信の開始と終了の間において各無線端末20は上り送信を行う必要はあるものの、当該上り送信で送信されるのは基地局10が端末間通信の状況を把握するための情報に過ぎない。こういった情報は間欠的に(周期的に)送信されれば十分であるし、情報の大きさも比較的小さいことから、前記のような前提を置くのが妥当と考えたものである。このような前提を置くことで、上り送信用のサブフレームを指定する方法と比較して、上り送信タイミングの情報量を抑制できるという効果を奏する。送信周期を量子化し、例えば2、5、10、20、32、40、64、80、128、160(単位はサブフレーム)から択一的に選択するものとすれば、上り送信タイミングの情報量はさらに抑制される。ただし、本願発明は上記の前提を必須とするものではなく、端末間通信開始信号における上り送信タイミングは任意の方法により指定されてかまわない。
【0051】
図3のS104で第1無線端末20aと第2無線端末20bとは、S103で受信した端末間通信開始信号に基づいて、端末間通信を開始する。この端末間通信は、端末間通信開始信号で指定されているリソースブロック(サブバンド)を用いて行うことができる。また、端末間通信開始信号において端末間通信の開始タイミングが指定されている場合には、第1無線端末20aと第2無線端末20bとは当該開始タイミングに従って端末間通信を開始する。なお、端末間通信が行われるサブフレームは、第1無線端末20aから第2無線端末20bへ送信するサブフレームと、第2無線端末20bから第1無線端末20aへ送信するサブフレームとを含むが、この割当は任意に定めることができるものとしてよい。
【0052】
なお、本願においては、端末間通信の方式等は問わない。例えば、端末間通信は同期通信方式と非同期通信方式とのどちらで行うこととしても構わない。端末間通信が同期通信方式で行われる場合、無線端末20間で同期を確立する処理を行ってから端末間通信を開始することができる。この場合、端末間通信開始信号により、無線端末20間が同期をとる(無線リンクを確立する)ために必要な情報を通知することとしてもよい。
【0053】
図3のS105で第1無線端末20aと第2無線端末20bとは、S103で受信した端末間通信開始信号が指定する上り送信タイミングに基づいて、端末間通信開始後の初回の上り送信を行う。例えば、前述したように上り送信タイミングが上り送信用の最初のサブフレームを示すオフセット値と、上り送信用のサブフレームの周期とによって指定される場合、S105のタイミングは当該オフセット値により特定されるサブフレームとなる。なお、S105で送信する信号は、PUCCHを介して送信されてもよいし、PUSCHを介して送信されても構わない。一例としては、上位の制御信号であるRRC信号としてPUSCHを介して送信することもできる。
【0054】
S105で送信する信号は任意の情報を含んでいてよいが、典型的には、S101と同様の判定用信号とすることができる。先に述べたように、端末間通信の開始後に基地局10は端末間通信の終了のタイミングを適時に決定する必要がある。そのために基地局10は、当該決定の判断材料として、無線端末20から判定用信号を定期的に受信するのが望ましいと考えられる。なお、
図3のS105においては一例として第1無線端末20aと第2無線端末20bの両方が上り送信を行っているが、いずれかの無線端末20のみが行ってもよいし、いずれの無線端末20も行わなくてもかまわない。例えば、上り送信の各タイミングにおいて、第1無線端末20aと第2無線端末20bとが交互に上り送信を行うことも可能である。
【0055】
図3のS106で基地局10は、S105で第1無線端末20aと第2無線端末20bとから受信した判定用信号に基づいて、第1無線端末20aと第2無線端末20bとの端末間通信を終了するか否かの判定(または決定)を行う。この判定は任意の基準に基づいて行うことができるが、例えば第1無線端末20aと第2無線端末20bの間の無線品質がいずれかの方向において所定の基準を満たさない場合に、端末間通信を終了する旨の判定を行う。一方、第1無線端末20aと第2無線端末20bの間の無線品質が双方向で所定の基準を満たす場合に、端末間通信を終了しない(継続する)旨の判定を行う。またS106の判定は、S105の判定用信号に含まれる無線品質以外の情報(例えばパスロス)やそこには含まれない情報(例えば基地局10の負荷)に基づいて行うこととしてもよい。
【0056】
図3のS106においては、一例として、基地局10は第1無線端末20aと第2無線端末20bとの端末間通信を終了しない旨の判定を行ったものとする。この場合、基地局10は第1無線端末20aと第2無線端末20bとに対して通知等を行う必要は特にない。
【0057】
次にS107で第1無線端末20aと第2無線端末20bとは端末間通信を行う。S107はS104と同様に行えばよいため、説明は割愛する。
【0058】
図3のS108で第1無線端末20aと第2無線端末20bとは、端末間通信開始後の2回目の上り送信を行う。例えば、前述したように上り送信タイミング情報が上り送信用の最初のサブフレームを示すオフセット値と、上り送信用のサブフレームの周期とによって構成される場合、S108のタイミングはS105のサブフレームから当該周期だけ後のサブフレームとなる。S108はS105と同様に行えばよいため、説明は割愛する。
【0059】
次にS109で基地局10は、S108で第1無線端末20aと第2無線端末20bとから受信した判定用信号に基づいて、第1無線端末20aと第2無線端末20bとの端末間通信を終了するか否かの判定(または決定)を行う。S109はS106と同様に行えばよいため、説明は割愛する。
図3のS109においても、一例として、基地局10は第1無線端末20aと第2無線端末20bとの端末間通信を終了しない旨の判定を行ったものとする。
【0060】
以降はS107〜S109と同様にして、第1無線端末20aと第2無線端末20bとは端末間通信と上り送信とを繰り返し行い、その都度、基地局10は上り送信に基づいて端末間通信を終了するか否かを判定する。
【0061】
図4に、第1実施形態において端末間通信用として割り当てられたリソースブロックに係るサブフレーム構成の一例を示す。
図4では紙面の都合上、時間軸方向において第0サブフレーム〜第9サブフレームの10個のサブフレームのみが示されているが、この前後において同じパターンのサブフレームが繰り返されても構わないことに留意されたい。
【0062】
図4の例においては、上り周波数帯域を構成する6個のリソースブロックのうちの1つ(
図4において上から4番目)が、端末間通信用のリソースブロックとして割り当てられている。そして、この端末間通信用のリソースブロックのみに対して、端末間通信用や上り送信用といった用途が割り当てられている。ここで、端末間通信用のリソースブロック以外の5つのリソースブロックは、端末間通信用のリソースブロックのみに対して割り当てられた用途には拘束されない。そのため、基地局10は、端末間通信用のリソースブロック以外の5つのリソースブロックを、基地局経由通信用の無線リソースとして割り当てたり、他の端末間通信用の無線リソースとして割り当てることができる。
【0063】
図4の例は、上り送信タイミングの周期が5サブフレームである場合を示している。
図4においては、一例として、第0〜第3サブフレームと第5〜第8サブフレームとが端末間通信用として割り当てられている。また、第4サブフレームと第9サブフレームとが上り送信用として割り当てられている。これらの割当ては固定的なものではなく、端末間通信開始信号によって可変的(動的)に割り当てられるものであることに留意されたい。
【0064】
図4の例においては、端末間通信の開始と終了の間においては、割り当てられたリソースブロックの80%(=4/5)程度を端末間通信に使用でき、効率的に端末間通信を行うことができる。上り送信タイミングの周期をより大きくすれば、より効率的に端末間通信を行うことも可能となる。
【0065】
図3の説明に戻って、S110で第1無線端末20aと第2無線端末20bとが判定用信号を基地局10に送信したものとする。そして、一例としてS111で基地局10が、S110の判定用信号に基づいて、第1無線端末20aと第2無線端末20bとの端末間通信を終了する旨の判定を行ったものとする。
【0066】
このとき、
図3のS112で基地局10は、S111の判定に基づいて、端末間通信を終了する旨の信号を第1無線端末20aと第2無線端末20bとに下り送信する。以下では便宜上、この信号を端末間通信終了信号と称する。なお、端末間通信の開始を、端末間通信のディアクティベーション(Deactivation:非活性化)と呼ぶこととしてもよい。
【0067】
端末間通信終了信号は、PDCCHを介して送信されてもよいし、PDSCHを介して送信されても構わない。一例としては、上位の制御信号であるRRC信号としてPDSCHを介して送信することもできる。また、端末間通信終了信号は、端末間通信の終了に関するパラメータを含んでいてもよい。このようなパラメータの一例としては、端末間通信の終了タイミングを挙げることができる。
【0068】
第1無線端末20aと第2無線端末20bとは、基地局10から端末間通信終了信号を受信すると、端末間通信を終了する。端末間通信終了信号に端末間通信の終了タイミングが含まれている場合、第1無線端末20aと第2無線端末20bとは当該終了タイミングに基づいて端末間通信を終了する。第1無線端末20aと第2無線端末20bとが端末間通信を終了した後に引き続き通信を行う場合には、通常のセルラー通信の方式に基づいて基地局10を経由して行う。
【0069】
以上で説明した第1実施形態によれば、端末間通信が開始される際に当該端末間通信に対して適切な上り送信タイミングを個別に設定することができる。そのため、端末間通信の合間に行う上り送信のタイミングを柔軟的に設定できずに、必要以上に高い頻度で上り送信タイミングが設定されていた従来技術が有する問題が解決される。これにより、第1実施形態によれば、端末間通信のスループットを確保できるとともに、端末間通信の適時な終了を実現することができる。したがって、第1実施形態は、端末間通信を効果的に行えるという従来技術にはない効果を奏するものである。
【0070】
[第2実施形態]
第2実施形態は第1実施形態の下位概念に相当しており、より効果的な端末間通信を、無線端末20の構成も踏まえて具体的に実現するものである。
【0071】
第2実施形態は第1実施形態の下位概念であるため、以下では第2実施形態において第1実施形態と異なる点を中心に詳しく述べる。第2実施形態においては、第1実施形態と重複する説明は適宜割愛されていることに留意されたい。
【0072】
まず第2実施形態を説明するための準備として、無線端末20において無線信号を処理する回路部分のハードウェア構成を説明する。なお、本実施形態においては、上りと下りで異なる周波数帯域を用いるFDD(Frequency Division Duplex:周波数分割複信)を前提とするものとする。
【0073】
図5Aに、端末間通信を行わない一般的な無線端末20において無線信号を処理する無線通信部25のハードウェア構成を示す。
図5Aの無線通信部25は、アンテナ121、周波数分離フィルタ1221、送信回路1222、および受信回路1223を備えている。なお、
図5Aの無線通信部25は、後述する
図9における無線通信部25に対応している。また、
図5Aのアンテナ121は
図11のアンテナ121に対応しており、
図5Aの周波数分離フィルタ1221、送信回路1222、および受信回路1223は
図11のRF回路122に対応している。
【0074】
図5Aにおいて、アンテナ121は送受共用であるものとする。この場合、アンテナ121においては上り信号と下り信号とが混信することになる。しかしながら、本実施形態のようにFDDを前提とする場合には、上り信号と下り信号で異なる周波数帯域が用いられるため、これらをアンテナ121に接続された周波数分離フィルタ1221(デュプレクサ)によって電気的に分離することが可能である。これにより、送信回路1222は上り信号を処理することができ、受信回路1223は下り信号を処理することができる。
【0075】
これに対し、
図5Bに、端末間通信を行う無線端末20において無線信号を処理する無線通信部25のハードウェア構成を示す。
図5Bの無線通信部25は、アンテナ121、周波数分離フィルタ1221、送信回路1222、受信回路1223に加えて、スイッチ1224を備えている。なお、
図5Bの無線通信部25も、後述する
図9における無線通信部25に対応している。また、
図5Bのアンテナは
図11のアンテナ121に対応しており、
図5Aの周波数分離フィルタ1221、送信回路1222、受信回路1223、およびスイッチ1224は
図11のRF回路122に対応している。
【0076】
これまで述べてきた通り、LTEシステムにおける端末間通信は上りの周波数帯域を使用する。一方、端末間通信は一般に双方向通信であるため、これには送信処理のみならず受信処理が必要となる。これを実現するために、端末間通信を行う無線端末20においては、
図5Bに示されるように、周波数分離フィルタ1221によって分離された上り周波数帯域の信号を、さらにスイッチ1224の切替えによって機械的に送信回路1222と受信回路1223とに分離する構成となる。
【0077】
ここで、スイッチ1224による切替えは、周波数分離フィルタ1221のように電気的な処理ではないため、切替え時間(ギャップ)を要する。この切替え時間は微小であり、1シンボル程度(14シンボルが1サブフレームに相当)の時間でも可能ではあるが、切替え時間においては無線端末20は上り周波数帯域を用いた送信も受信もできないことになる。そのため、この切替え時間をサブフレームにどのように配置するかにより、端末間通信の効率が左右される可能性がある。第2実施形態は、このような観点に基づいて創案されたものである。
【0078】
第2実施形態に係る処理シーケンスは、
図3に例示される第1実施形態に係る処理シーケンスと同様であるため、説明を割愛する。
【0079】
図6に、第2実施形態において端末間通信用として割り当てられたリソースブロックに係るサブフレーム構成の一例を示す。
図6では紙面の都合上、時間軸方向において第0サブフレーム〜第9サブフレームの10個のサブフレームのみが示されているが、この前後において同じパターンのサブフレームが繰り返されても構わないことに留意されたい。
【0080】
図6は、第1実施形態における
図4に対応しており、一例として、上り送信タイミングの周期が5サブフレームである場合を示している。
図6においては、一例として、第0〜第3サブフレームと第5〜第8サブフレームとが端末間通信用として割り当てられている。また、第4サブフレームと第9サブフレームとが上り送信用として割り当てられている。これらの割当ては固定的なものではなく、端末間通信開始信号によって可変的(動的)に割り当てられるものであることに留意されたい。
【0081】
ここで、
図6においては、上り送信用の各サブフレームを構成する14シンボルのうちで最初と最後のシンボルを、前述した切替え時間として使用している。さらに、
図6においては、端末間通信用のサブフレームを通信方向によって2つに分けている。具体的には、一例として、第0〜第3サブフレームは第1無線端末20aから第2無線端末20bへの端末間通信用のサブフレームとする。また、第5〜第8サブフレームは第2無線端末20bから第1無線端末20aへの端末間通信用のサブフレームとする。このように、上り送信用のサブフレームを挟んで、第1無線端末20aから第2無線端末20bへの端末間通信用のサブフレームと第2無線端末20bから第1無線端末20aへの端末間通信用のサブフレームとが交互に現れるようにする。
【0082】
図6のようにサブフレームを構成したうえで、第1無線端末20aにおいては、第4サブフレームの最後のシンボル、および第9サブフレームの最初のシンボルのそれぞれで、送受信の切替えを行う。一方、第1無線端末20aにおいては、第4サブフレームの最初のシンボル、および第9サブフレームの最後のシンボルのそれぞれでは、送受信の切替えは行わない。同様に、第2無線端末20bにおいては、第4サブフレームの最初のシンボル、および第9サブフレームの最後のシンボルのそれぞれで、送受信の切替えを行う。一方、第2無線端末20bにおいては、第4サブフレームの最後のシンボル、および第9サブフレームの最初のシンボルのそれぞれでは、送受信の切替えは行わない。
【0083】
このようにすることで、第1無線端末20aは第0〜第4サブフレームおよび第9サブフレームで送信を行い、第5〜第8サブフレームで受信を行うことになり、10個のサブフレームの内で2回の送受信切替え(スイッチ1224による切替え)を行えばよい。同様に、第2無線端末20bは第4〜第9サブフレームで送信を行い、第0〜第3サブフレームで受信を行うことになり、10個のサブフレームの内で2回の送受信切替え(スイッチ1224による切替え)を行えばよい。このように、第1無線端末20aと第2無線端末20bのいずれもが、上り送信用サブフレームと同数の切替え回数により、端末間通信と上り通信とを効率的に切り替えることが可能となる。
【0084】
また、
図6のように端末間通信用サブフレームではなく上り通信用サブフレームに切替え時間を設定することで、端末間通信を効率的に行うことができる。一方、端末間通信を行っている際の上り送信は、前述したように無線品質の報告などに留まり、情報のサイズは比較的小さい。そのため、
図6のように上り送信用のサブフレームに切替え時間を設けても、特に問題は生じないと考えらえる。
【0085】
さらに、LTEシステムにおいては上りの各サブフレームの最後のシンボルは、一般に、上りのスケジューリング用の参照信号であるサウンディング参照信号が配置される。しかしながら、端末間通信を行っている無線端末20においては、上りのスケジューリングは不要なため、サウンディング参照信号を送信する必要がない。したがって、上り送信用のサブフレームの最後のシンボルを送受信切替え時間として設定するのは、送信の必要が元々ないシンボルを有効活用していることになり、効率的な端末間通信に益々資するものと考えられる。
【0086】
以上で説明した第2実施形態によれば、端末間通信が開始される際に当該端末間通信に対して適切な上り送信タイミングを個別に設定することができる。そのため、端末間通信の合間に行う上り送信のタイミングを柔軟的に設定できずに、必要以上に高い頻度で上り送信タイミングが設定されていた従来技術が有する問題が解決される。これにより、第2実施形態によれば、端末間通信のスループットを確保できるとともに、端末間通信の適時な終了を実現することができる。したがって、第2実施形態は、端末間通信を効果的に行えるという従来技術にはない効果を奏するものである。
【0087】
[各実施形態の無線通信システムのネットワーク構成]
次に
図7に基づいて、各実施形態の無線通信システム1のネットワーク構成を説明する。
図7に示すように、無線通信システム1は、基地局10と、無線端末20とを有する。なお、
図7においては2台の無線端末20である無線端末20aと無線端末20bが例示されているが、これは一例にすぎないのは言うまでもない。基地局10は、セルC10を形成している。無線端末20はセルC10に存在している。なお、本願においては基地局10を「送信局」、無線端末20を「受信局」と称することがあることに注意されたい。
【0088】
基地局10は、有線接続を介してネットワーク装置3と接続されており、ネットワーク装置3は、有線接続を介してネットワーク2に接続されている。基地局10は、ネットワーク装置3およびネットワーク2を介して、他の基地局10とデータや制御情報を送受信可能に設けられている。
【0089】
基地局10は、無線端末20との無線通信機能とデジタル信号処理及び制御機能とを分離して別装置としてもよい。この場合、無線通信機能を備える装置をRRH(Remote Radio Head)、デジタル信号処理及び制御機能を備える装置をBBU(Base Band Unit)と呼ぶ。RRHはBBUから張り出されて設置され、それらの間は光ファイバなどで有線接続されてもよい。また、基地局10は、マクロ基地局10、ピコ基地局10等の小型基地局10(マイクロ基地局10、フェムト基地局10等を含む)の他、様々な規模の基地局10であってよい。また、基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線端末20との送受信及びその制御)も本願の基地局10に含まれることとしてもよい。
【0090】
一方、無線端末20は、
図7に示されるように、無線通信で基地局10と通信を行う。また、
図7においては、一例として、無線端末20aと無線端末20bとが端末間通信を行っている。このように、無線端末20は他無線端末20と端末間通信を行う。
【0091】
無線端末20は、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ(Personal Computer)、無線通信機能を有する各種装置や機器(センサー装置等)などの無線端末20であってよい。また、基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(基地局10との送受信及びその制御)も本稿の無線端末20に含まれることとしてもよい。
【0092】
ネットワーク装置3は、例えば通信部と制御部とを備え、これら各構成部分が、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。ネットワーク装置3は、例えばゲートウェイにより実現される。ネットワーク装置3のハードウェア構成としては、例えば通信部はインタフェース回路、制御部はプロセッサとメモリとで実現される。
【0093】
なお、基地局10、無線端末20の各構成要素の分散・統合の具体的態様は、第1実施形態の態様に限定されず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することもできる。例えば、メモリを、基地局10、無線端末20の外部装置としてネットワークやケーブル経由で接続するようにしてもよい。
【0094】
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成]
次に、
図8〜
図9に基づいて、各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成を説明する。なお、上述したように、無線端末20と述べた場合には、上述した各実施形態における第1無線端末20aと第2無線端末20bとを含むことに留意されたい。
【0095】
図8は、基地局10の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図8に示すように、基地局10は、例えば、無線送信部11と、無線受信部12と、制御部13と、記憶部14と、通信部15とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、無線送信部11と無線受信部12とをまとめて無線通信部16と称する。
【0096】
無線送信部11は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。無線送信部11は、無線端末20に対して無線信号(下りの無線信号)を送信する。無線送信部11が送信する無線信号には、無線端末20向けの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0097】
無線送信部11が送信する無線信号の具体例としては、
図3において基地局10が無線端末20に対して送信している各無線信号(図中の矢印)が挙げられる。無線送信部11が送信する無線信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で基地局10が無線端末20に対し送信するあらゆる無線信号を含む。
【0098】
無線受信部12は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で受信する。無線受信部12は、無線端末20から無線信号(上りの無線信号)を受信する。無線受信部12が受信する無線信号には、無線端末20により送信される任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0099】
無線受信部12が受信する無線信号の具体例としては、
図3において基地局10が無線端末20から受信している無線信号(図中の矢印)が挙げられる。無線受信部12が受信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で基地局10が無線端末20から受信するあらゆる無線信号を含む。
【0100】
制御部13は、無線端末20に送信するデータや制御情報を無線送信部11に出力する。制御部13は、無線端末20から受信されるデータや制御情報を無線受信部12から入力する。制御部13は、後述する記憶部14との間でデータ、制御情報、プログラム等の入出力を行う。制御部13は、後述する通信部15との間で、他の基地局10等を相手に送受信するデータや制御情報の入出力を行う。制御部13はこれら以外にも基地局10における種々の制御を行う。
【0101】
制御部13が制御する処理の具体例としては、
図3において基地局10が送受信している各信号(図中の矢印)に対する制御、および基地局10が行っている各処理(図中の矩形)に対する制御が挙げられる。制御部13が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で基地局10が実行するあらゆる処理に関する制御を含む。
【0102】
記憶部14は、データ、制御情報、プログラム等の各種情報の記憶を行う。記憶部14が記憶する各種情報は、上記の各実施形態および変形例で基地局10において記憶されうるあらゆる情報を含む。
【0103】
通信部15は、有線信号等(無線信号でも構わない)を介して、他の基地局10等を相手にデータや制御情報を送受信する。通信部15が送受信する有線信号等の具体例としては、各実施形態において基地局10が他の基地局10を相手に送受信している各有線信号等が挙げられる。通信部15が送受信する有線信号等は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で基地局10が他の基地局10等を相手に送受信するあらゆる有線信号等を含む。
【0104】
なお、基地局10は、無線送信部11や無線受信部12を介して無線端末20以外の無線通信装置(例えば他の基地局10や中継局)と無線信号を送受信してもかまわない。
【0105】
図9は、無線端末20の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、無線端末20は、例えば、無線送信部21と、無線受信部22と、制御部23と、記憶部24とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、無線送信部21と無線受信部22とをまとめて無線通信部25と称する。
【0106】
無線送信部21は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。無線送信部21は、基地局10に対して無線信号(上りの無線信号)を送信する。無線送信部21が送信する無線信号には、基地局10向けの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0107】
また、無線送信部21は、他の無線端末20に対して無線信号を送信することができる(端末間通信)。無線送信部21が送信する無線信号には、他の無線端末20向けの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0108】
無線送信部21が送信する無線信号の具体例としては、
図3において無線端末20が基地局10に対して送信している各無線信号(図中の矢印)、および無線端末20が他の無線端末20に対して送信している各無線信号が挙げられる。無線送信部21が送信する無線信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が基地局10に対し送信するあらゆる無線信号、および無線端末20が他の無線端末20に対して送信しているあらゆる無線信号を含む。
【0109】
無線受信部22は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で受信する。無線受信部22は、基地局10から無線信号(下りの無線信号)を受信する。無線受信部22が受信する無線信号には、基地局10により送信される任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0110】
また、無線受信部22は、他の無線端末20から無線信号を受信することができる(端末間通信)。無線受信部22が送信する無線信号には、他の無線端末20からの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0111】
無線受信部22が受信する無線信号の具体例としては、
図3において無線端末20が基地局10から受信している各無線信号(図中の矢印)、および無線端末20が他の無線端末20から受信している各無線信号が挙げられる。無線受信部22が受信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が基地局10から受信するあらゆる無線信号、および無線端末20が他の無線端末20から受信しているあらゆる無線信号を含む。
【0112】
制御部23は、基地局10に送信するデータや制御情報を無線送信部21に出力する。制御部23は、基地局10から受信されるデータや制御情報を無線受信部22から入力する。制御部23は、後述する記憶部24との間でデータ、制御情報、プログラム等の入出力を行う。制御部23はこれら以外にも無線端末20における種々の制御を行う。
【0113】
制御部23が制御する処理の具体例としては、
図3において無線端末20が送受信している各信号(図中の矢印)に対する制御、および無線端末20が行っている各処理(図中の矩形)に対する制御が挙げられる。制御部23が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が実行するあらゆる処理に関する制御を含む。
【0114】
記憶部24は、データ、制御情報、プログラム等の各種情報の記憶を行う。記憶部24が記憶する各種情報は、上記の各実施形態および変形例で無線端末20において記憶されうるあらゆる情報を含む。
【0115】
なお、無線端末20は、無線送信部21や無線受信部22を介して基地局10以外の無線通信装置と無線信号を送受信してもかまわない。
【0116】
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成]
図10〜
図11に基づいて、各実施形態および各変形例の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成を説明する。なお、上述したように、無線端末20と述べた場合には、上述した各実施形態における第1無線端末20aと第2無線端末20bとを含むことに留意されたい。
【0117】
図10は、基地局10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図10に示すように、基地局10は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ111を備えるRF(Radio Frequency)回路112と、プロセッサ113と、メモリ114と、ネットワークIF(Interface)115とを有する。これら各構成要素は、バスを介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
【0118】
プロセッサ113は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)である。本願においては、プロセッサ113をデジタル電子回路で実現することとしてもかまわない。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
【0119】
メモリ114は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。この他に、基地局は不図示の補助記憶装置(ハードディスク等)等を備えていても良い。
【0120】
図8に示す基地局10の機能構成と
図10に示す基地局10のハードウェア構成との対応を説明する。無線送信部11および無線受信部12(あるいは無線通信部16)は、例えばRF回路112、あるいはアンテナ111およびRF回路112により実現される。制御部13は、例えばプロセッサ113、メモリ114、不図示のデジタル電子回路等により実現される。記憶部14は、例えばメモリ114により実現される。通信部15は、例えばネットワークIF115により実現される。
【0121】
図11は、無線端末20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図11に示すように、無線端末20は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ121を備えるRF(Radio Frequency)回路122と、プロセッサ123と、メモリ124とを有する。これら各構成要素は、バスを介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
【0122】
プロセッサ123は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)である。本願においては、プロセッサ123をデジタル電子回路で実現することとしてもかまわない。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
【0123】
メモリ124は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。
【0124】
図9に示す無線端末20の機能構成と
図11に示す無線端末20のハードウェア構成との対応を説明する。無線送信部21および無線受信部22(あるいは無線通信部25)は、例えばRF回路122、あるいはアンテナ121およびRF回路122により実現される。制御部23は、例えばプロセッサ123、メモリ124、不図示のデジタル電子回路等により実現される。記憶部24は、例えばメモリ124により実現される。