(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記確認部は、前記制御装置によって前記改質水ポンプが前記蒸発部に前記改質水を供給するように制御されている際、所定時間継続して前記振動検出装置によって前記振動が検出されない場合、前記改質水ポンプの異常の有りを確認する請求項1または請求項2記載の燃料電池システム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明による燃料電池システムの一実施形態について説明する。なお、本明細書においては説明の便宜上、
図1および
図2における上側および下側をそれぞれ燃料電池システムの上方および下方として説明する。
図1に示すように、燃料電池システムは、発電ユニット10および貯湯槽21を備えている。発電ユニット10は、燃料電池モジュール11(30)、熱交換器12、インバータ装置13、水タンク14、および制御装置15を備えている。
【0009】
燃料電池モジュール11は、後述するように燃料電池34を少なくとも含んで構成されるものである。燃料電池モジュール11は、改質用原料、改質水およびカソードエアが供給されている。具体的には、燃料電池モジュール11は、一端が供給源Gsに接続されて改質用原料が供給される改質用原料供給管11aの他端が接続されている。改質用原料供給管11aは、原料ポンプ11a1が設けられている。さらに、燃料電池モジュール11は、一端が水タンク14に接続されて改質水が供給される水供給管11bの他端が接続されている。水供給管11bは、後述する改質水ポンプ11b1(40)が設けられている。さらに、燃料電池モジュール11は、一端がカソードエアブロワ11c1に接続されてカソードエアが供給されるカソードエア供給管11cの他端が接続されている。
【0010】
熱交換器12は、燃料電池モジュール11から排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽21からの貯湯水が供給され、燃焼排ガスと貯湯水とが熱交換する熱交換器である。具体的には、貯湯槽21は、貯湯水を貯湯するものであり、貯湯水が循環する(図にて矢印の方向に循環する)貯湯水循環ライン22が接続されている。貯湯水循環ライン22上には、貯湯槽21の下端から上端に向かって順番に貯湯水循環ポンプ22aおよび熱交換器12が配設されている。熱交換器12は、燃料電池モジュール11からの排気管11dが接続(貫設)されている。熱交換器12は、水タンク14に接続されている凝縮水供給管12aが接続されている。
【0011】
熱交換器12において、燃料電池モジュール11からの燃焼排ガスは、排気管11dを通って熱交換器12内に導入され、貯湯水との間で熱交換が行われ凝縮されるとともに冷却される。凝縮後の燃焼排ガスは排気管11dを通り外部に排出される。また、凝縮された凝縮水は、凝縮水供給管12aを通って水タンク14に供給される。なお、水タンク14は、凝縮水をイオン交換樹脂によって純水化するようになっている。
【0012】
上述した熱交換器12、貯湯槽21および貯湯水循環ライン22から、排熱回収システム20が構成されている。排熱回収システム20は、燃料電池モジュール11の排熱を貯湯水に回収して蓄える。
【0013】
さらに、インバータ装置13は、燃料電池34から出力される直流電圧を入力し所定の交流電圧に変換して、交流の系統電源16aおよび外部電力負荷16c(例えば電化製品)に接続されている電源ライン16bに出力する。また、インバータ装置13は、系統電源16aからの交流電圧を電源ライン16bを介して入力し、所定の直流電圧に変換して補機(各ポンプ、ブロワなど)や制御装置15に出力する。なお、制御装置15は、補機を駆動して燃料電池システムの運転を制御する。
【0014】
燃料電池モジュール11(30)は、ケーシング31、蒸発部32、改質部33および燃料電池34を備えている。ケーシング31は、断熱性材料で箱状に形成されている。
蒸発部32は、後述する燃焼ガスにより加熱されて、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成するとともに、供給された改質用原料を予熱するものである。蒸発部32は、このように生成された水蒸気と予熱された改質用原料を混合して改質部33に供給するものである。改質用原料としては天然ガス、LPガスなどの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料があり、本実施形態においては天然ガスにて説明する。
【0015】
蒸発部32には、一端が供給源Gsに接続された改質用原料供給管11aの他端が接続されている。供給源Gsは、例えば都市ガスのガス供給管、LPガスのガスボンベである。また、蒸発部32には、一端が水タンク14に接続された水供給管11bの他端が接続されている。水供給管11bには、改質水ポンプ11b1(40)が配設されている。
【0016】
改質水ポンプ40は、
図2に示すように、第一ハウジング41、第二ハウジング42、筒状のコイル43、プランジャ44およびスプリング45を備えている。改質水ポンプ40は、コイル43への通電と非通電とを繰り返すことでプランジャ44を往復運動させることにより、水タンク14から改質水(凝縮水)を吸入し、蒸発部32に供給するプランジャポンプである。
【0017】
第一ハウジング41は、本体部41a、フランジ部41b、吸入管41cおよび吐出管41dを備えている。本体部41aは、軸線41a1方向に延びる円筒状に形成されている。フランジ部41bは、本体部41aの上端部にて、本体部41aの軸線41a1の周方向に全周に亘って突出するように形成されている。
【0018】
吸入管41cは、本体部41a内に改質水を導入するものである。吸入管41cは、円筒状に形成され、第一ハウジング41と同軸に、第一ハウジング41に配設されている。吸入管41cの上端が、本体部41aの下端に接続されている。吸入管41cの下端は、水供給管11bが接続されている。
吐出管41dは、本体部41aから改質水を導出するものである。吐出管41dは、円筒状に形成され、本体部41aの側壁を貫通し、本体部41aの径方向に延びるように配設されている。吐出管41dの左側端が、本体部41a内に接続されている。吐出管41dの右側端は、水供給管11bに接続されている。
【0019】
また、改質水ポンプ40は、第一チェックバルブ41eおよび第二チェックバルブ41fをさらに備えている。第一チェックバルブ41eは、吸入管41c内に設けられ、第二チェックバルブ41fは、吐出管41d内に設けられている。
第一チェックバルブ41eは、水供給管11bから本体部41a内への改質水の流れを許容するが、その逆の流れを規制する逆止弁である。第一チェックバルブ41eは、吸入管41cの上端側から順に、改質水が流通可能な貫通穴41e1aが形成された第一保持板41e1、第一保持板41e1に保持されている第一スプリング41e2、第一スプリング41e2に付勢された球状の第一弁体41e3および第一弁座41e4から構成されている。第一弁座41e4は、隔壁41e4aに形成された貫通穴41e4bの上側の開口縁に形成されている。第一保持板41e1は、吸入管41c内に、例えば圧入により固定されている。第一チェックバルブ41eは、第一弁体41e3と第一弁座41e4とが当接することにより、改質水の流れを規制する「閉状態」(
図2および
図3に実線にて示す)、および第一弁体41e3と第一弁座41e4とが離れることにより、改質水の流れを許容する「開状態」(
図3に破線にて示す)の2つの状態を有している。
【0020】
第二チェックバルブ41fは、本体部41a内から水供給管11bへの改質水の流れを許容するが、その逆の流れを規制する逆止弁である。第二チェックバルブ41fは、吐出管41dの右端側から順に、改質水が流通可能な貫通穴41f1aが形成された第二保持板41f1、第二保持板41f1に保持されている第二スプリング41f2、第二スプリング41f2に付勢された球状の第二弁体41f3および第二弁座41f4から構成されている。第二弁座41f4は、板部材41f5に形成された貫通穴41f5aの右側の開口縁に形成されている。第二保持板41f1および板部材41f5は、吐出管41d内に、例えば圧入により固定されている。第二チェックバルブ41fは、第二弁体41f3と第二弁座41f4とが当接することにより、改質水の流れを規制する「閉状態」(実線にて示す)、および第二弁体41f3と第二弁座41f4とが離れることにより、改質水の流れを許容する「開状態」(破線にて示す)の2つの状態を有している。
【0021】
第二ハウジング42は、シリンダ42a、および、シリンダ42aの下端部にて、軸線41a1の周方向に全周に亘って突出するように形成されたフランジ部42bを備えている。第二ハウジング42は、フランジ部42bの下端面が第一ハウジング41のフランジ部41bの上端面に接触し、第一ハウジング41の上端を覆うように配設され、第一ハウジング41に、例えば取付ボルト(図示なし)によって固定されている。
【0022】
シリンダ42aは、プランジャ44を軸線41a1方向に往復運動可能に収納するものである。シリンダ42aは、軸線41a1と同軸に、下端を本体部41a内に開口する有底円筒状に形成されている。シリンダ42aは、プランジャ44を収納する大径部42a1および大径部42a1の上方に大径部42a1より径が小さい小径部42a2が形成されている。大径部42a1と小径部42a2とによって、プランジャ44の上端面が接触可能な段状の第一接触部42a3が形成されている。また、大径部42a1は、本体部41aの内径より大きくなるように形成されている。これにより、第一ハウジング41(フランジ部41b)の上端面にプランジャ44の下端面が接触可能な段状の第二接触部41b1が形成される。
【0023】
コイル43は、筒状に導線が巻かれたものである。コイル43は、シリンダ42aと同軸にシリンダ42aの周囲に配設されている。また、コイル43は、プランジャ44の中央部から上端部がコイル43内に埋設するように配設されている。コイル43は、通電されることにより磁場を形成する。
【0024】
プランジャ44は、円柱状に形成され、第一ハウジング41と同軸に、シリンダ42a内に摺動可能に配設されている。シリンダ42aの内周面とプランジャ44の外周面とが摺動可能に接触するように、プランジャ44およびシリンダ42aが形成されている。プランジャ44の上端面は、シリンダ42aの第一接触部42a3と接触可能に配設されている(
図3参照)。また、プランジャ44の下端面は、第一ハウジング41の第二接触部41b1と接触可能に配設されている(
図2参照)。
【0025】
スプリング45は、シリンダ42a内に、シリンダ42a内の上端面とプランジャ44の上端面との間に配設され、プランジャ44を第一ハウジング41側に付勢するものである。
また、改質水ポンプ40は、第一ハウジング41と第二ハウジング42との間からの改質水の漏れを防止するシール部材46を、さらに備えている。シール部材46は、弾性体(例えばNBR)によって環状に形成されている。
【0026】
また、改質水ポンプ40は、ポンプ室PRを備えている。ポンプ室PRは、第一チェックバルブ41eの第一弁座41e4と、第二チェックバルブ41fの第二弁座41f4との間に形成されている。ポンプ室PRは、隔壁41e4a、吸入管41c、本体部41a、シリンダ42a、プランジャ44、吐出管41dおよび板部材41f5によって区画された空間である。ポンプ室PRは、
図2および
図3に示すように、プランジャ44の往復運動に応じて容積が変化する。
【0027】
次に、改質水ポンプ40の作動について説明する。コイル43が通電されていない状態から説明する。コイル43が通電されていない場合、
図2に示すように、プランジャ44は、スプリング45の付勢力によりシリンダ42a内の下端部に位置している。具体的には、プランジャ44の位置は、プランジャ44の下端面が、第二接触部41b1と接触する位置である。また、各弁体41e3,41f3は、各弁座41e4,41f4にそれぞれ当接している。すなわち、各チェックバルブ41e,41fは、共に「閉状態」である。
【0028】
このような状態において、コイル43が通電された場合、コイル43が形成する磁界によって、プランジャ44がシリンダ42aの上方に向けて吸引される。プランジャ44は、スプリング45の付勢力に抗して、シリンダ42a内を上方に向けて移動する。プランジャ44の上端面が第一接触部(特許請求の範囲の被衝突部に相当)42a3に衝突して、
図3に示すように、プランジャ44が、第一接触部42a3に接触した状態で位置決めされる。このとき、この衝突により振動が発生し、振動が第二ハウジング42全体および第一ハウジング41全体に伝達する。また、この場合、ポンプ室PRの容積が増加するように変化する。これにより、ポンプ室PR内の圧力が下降するため、第一チェックバルブ41eの第一弁体41e3が第一スプリング41e2の付勢力に抗して上方に向けて移動する。これにより、第一チェックバルブ41eが「開状態」となるため、吸入管41cから改質水がポンプ室PRに流入する(破線の矢印にて示す)。なお、このとき、第二チェックバルブ41fは、「閉状態」のままである。
【0029】
そして、コイル43への通電が停止されると、コイル43によって形成された磁界が無くなる。よって、プランジャ44は、スプリング45の付勢力により、シリンダ42a内を下方に向けて移動する。プランジャ44の下端面が第二接触部(特許請求の範囲の被衝突部に相当)41b1に衝突して、
図2に示すように、プランジャ44が、第二接触部41b1に接触した状態で位置決めされる。このとき、この衝突により振動が発生し、振動が第二ハウジング42および第一ハウジング41全体に伝達する。また、この場合、ポンプ室PRの容積が減少するように変化する。これにより、ポンプ室PR内の改質水が加圧され、ポンプ室PR内の圧力が上昇するため、第二チェックバルブ41fの第二弁体41f3が第二スプリング41f2の付勢力に抗して右側方に向けて移動する。これにより、第二チェックバルブ41fが「開状態」となるため、ポンプ室PRから改質水が貫通穴41f1aから吐出する。なお、このとき、第一チェックバルブ41eは、「閉状態」のままである。
【0030】
このように、コイル43への通電と非通電とが繰り返されることで、プランジャ44が往復運動することにより、改質水が、吸入管41cからポンプ室PR内へ、さらに、ポンプ室PR内から貫通穴41f1aを介して吐出管41dから吐出する。
【0031】
また、プランジャ44が一往復したときに吐出管41dから吐出される改質水の量は、ポンプ室PRの容積の変化量に相当する。よって、吐出管41dから吐出される改質水の流量(単位時間あたりの流量)は、プランジャ44の単位時間あたりの往復回数によって定まる。したがって、改質水の流量の調整は、プランジャ44の単位時間あたりに一往復する回数(周波数)を調整することにより行う。具体的には、制御装置15により、コイル43への単位時間あたりの通電と非通電とが繰り返される回数(周波数)が調整されている。ここで、改質水ポンプ40は、制御装置15によりPWM制御によって駆動されている。改質水ポンプ40の制御指令値は、制御装置15によって、PWM制御のデューティ比にて、改質水ポンプ40のドライバ回路(図示なし)に出力される。すなわち、制御装置15によってデューティ比が調整されることにより、コイル43への単位時間あたりの通電と非通電とが繰り返される回数(周波数)、ひいては、改質水の流量が調整されている。改質水の目標流量は、燃料電池34の発電量に基づいて予め設定され、制御装置15に記憶されている。なお、改質水の流量は、およそ0.3〜30mL/分の範囲内となるように設定されている。
【0032】
また、燃料電池システムは、振動検出装置50をさらに備えている。振動検出装置50は、プランジャ44の往復運動の際、プランジャ44の衝突による振動が伝達する伝達部位Pに配設され、プランジャ44の衝突による振動を検出するものである。プランジャ44の衝突による振動は、上述したように、各ハウジング41,42全体に伝達する。本実施形態において、伝達部位Pは、第一ハウジング41のフランジ部41bの外表面である。また、振動検出装置50は、加速度センサであり、振動の加速度を検出する。振動検出装置50は、例えば、静電容量式加速度センサである。振動検出装置50は、制御装置15と電気的に接続され、振動検出装置50によって検出された検出値が制御装置15に送信されるようになっている。制御装置15は、振動検出装置50によって送信された検出値に基づいて、FFTによる周波数解析を行い、周波数ごとの振動の大きさを算出する。そして、制御装置15は、周波数ごとの振動の大きさのうち最大値を検出振動値Vrとして検出する。
【0033】
図1に戻って、燃料電池システムの構成の説明を続ける。
改質部33は、後述する燃焼ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部32から供給された混合ガス(改質用原料、水蒸気)から改質ガスを生成して導出するものである。改質部33内には、触媒(例えば、RuまたはNi系の触媒)が充填されており、混合ガスが触媒によって反応し改質されて水素ガスと一酸化炭素などを含んだガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の天然ガス(メタンガス)、改質に使用されなかった改質水(水蒸気)を含んでいる。このように、改質部33は改質用原料(原燃料)と改質水とから改質ガス(燃料)を生成して燃料電池34に供給する。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応である。
【0034】
燃料電池34は、燃料極、空気極(酸化剤極)、および両極の間に介装された電解質からなる複数のセル34aが積層されて構成されている。本実施形態の燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、電解質として固体酸化物の一種である酸化ジルコニウムを使用している。燃料電池34の燃料極には、燃料として水素、一酸化炭素、メタンガスなどが供給される。
【0035】
セル34aの燃料極側には、燃料である改質ガスが流通する燃料流路34bが形成されている。セル34aの空気極側には、酸化剤ガスである空気(カソードエア)が流通する空気流路34cが形成されている。
【0036】
燃料電池34は、マニホールド35上に設けられている。マニホールド35には、改質部33からの改質ガスが改質ガス供給管38を介して供給される。燃料流路34bは、その下端(一端)がマニホールド35の燃料導出口に接続されており、その燃料導出口から導出される改質ガスが下端から導入され上端から導出されるようになっている。カソードエアブロワ11c1によって送出されたカソードエアはカソードエア供給管11cを介して供給され、空気流路34cの下端から導入され上端から導出されるようになっている。
【0037】
燃焼部36は、燃料電池34と蒸発部32および改質部33との間に設けられている。燃焼部36は、燃料電池34からのアノードオフガス(燃料オフガス)と燃料電池34からのカソードオフガス(酸化剤オフガス)とが燃焼されて蒸発部32および改質部33を加熱する。
【0038】
燃焼部36では、アノードオフガスが燃焼されて燃焼ガス(火炎37)が発生している。燃焼部36では、アノードオフガスが燃焼されてその燃焼排ガスが発生している。燃焼部36には、アノードオフガスを着火させるための一対の着火ヒータ36a1,36a2が設けられている。
【0039】
次に、制御装置15が改質水ポンプ40の異常の有無を確認する確認制御について、
図4に示すフローチャートに沿って説明する。制御装置15は、改質水ポンプ40の駆動を開始したときに
図4に示すフローチャートを実行する。制御装置15は、ステップS102にて、改質水ポンプ40の駆動を開始してから第一所定時間T1が経過したか否かを判定する。第一所定時間T1は、改質水ポンプ40の駆動が開始されてから、改質水の流量(単位時間あたりの流量)が安定するまでの時間(例えば5秒)である。制御装置15は、第一所定時間T1が経過していない場合、ステップS102にて「NO」の判定を繰り返し実行する。一方、制御装置15は、第一所定時間T1が経過した場合、ステップS102にて「YES」と判定し、プログラムをステップS104に進める。
【0040】
制御装置15は、ステップS104(確認部)にて、検出振動値Vrに基づいて、改質水ポンプ40の異常の有無を確認する。具体的には、制御装置15は、検出振動値Vrが第一判定値V1(特許請求の範囲の判定値に相当)より大きいか否かを判定する。第一判定値V1は、改質水ポンプ40が正常である場合の検出振動値Vrである正常検出振動値Vnより大きい検出振動値Vrに設定されている。ここで、検出振動値Vrに基づいて、改質水ポンプ40の異常の有無を確認できることの理由を説明する。改質水ポンプ40が正常に改質水を吐出している場合、シリンダ42a内の改質水の量が比較的多い。この場合、プランジャ44と第一接触部42a3との間、およびプランジャ44と第二接触部41b1との間に改質水が存在するため、この改質水がプランジャ44の衝突に対する緩衝材として作用する。よって、この場合、シリンダ42a内の改質水の量が比較的少ない場合に比べて、プランジャ44の衝突により発生する検出振動値Vrが抑制される。すなわち、正常検出振動値Vnは、シリンダ42a内の改質水の量が比較的少ない場合の検出振動値Vrに比べて小さくなる。例えば、貫通穴41e4bのゴミつまりによってシリンダ42a内に改質水の吸入ができない改質水ポンプ40の異常が発生した場合、シリンダ42a内の改質水の量が比較的少なくなるため、このときの検出振動値Vrが、正常検出振動値Vnより大きくなる。そして、検出振動値Vrが第一判定値V1より大きくなった場合、改質水ポンプ40内の改質水が比較的少なくなる異常が発生していると判定することができる。第一判定値V1および正常検出振動値Vnは、予め実験等により実測され、制御装置15に記憶されている。
【0041】
制御装置15は、検出振動値Vrが第一判定値V1より大きい場合、シリンダ42a内に改質水が比較的少なくなっていると判定(ステップS104にて「YES」と判定)し、改質水ポンプ40の異常の有りを確認する(ステップS108)。この場合における改質水ポンプ40の異常は、例えば、貫通穴41e4bのゴミつまりによってシリンダ42a内に改質水の吸入ができない状態や、シリンダ42a内の空気溜りの発生である。改質水ポンプ40の異常の有りが確認された場合、制御装置15は、例えば、燃料電池システムの運転を停止する。
一方、制御装置15は、検出振動値Vrが第一判定値V1以下である場合、ステップS104にて「NO」と判定し、プログラムをステップS106に進める。
【0042】
制御装置15は、ステップS106(確認部)にて、検出振動値Vrに基づいて、改質水ポンプ40の異常の有無を確認する。具体的には、制御装置15は、第二所定時間(特許請求の範囲の所定時間に相当)T2継続して検出振動値Vrが第二判定値V2より小さいか否かを判定する。第二所定時間T2は、改質水ポンプ40に出力されるデューティ比の周期より長い時間(例えば、デューティ比の周期の5倍の時間)に設定されている。第二判定値V2は、第一判定値V1および正常検出振動値Vnより十分小さく、かつ、ゼロよりも大きい検出振動値Vrに設定されている。第二判定値V2は、予め実験等により実測され、制御装置15に記憶されている。例えば、コイル43の断線やシリンダ42a内のゴミ混入によるプランジャ44が動作できない状態(例えば固着状態)となる改質水ポンプ40の異常が発生した場合、プランジャ44の衝突による振動が発生しない。よって、制御装置15は、第二所定時間T2継続して検出振動値Vrが第二判定値V2より小さい場合、プランジャ44が作動していない改質水ポンプ40の異常が発生していると判定(ステップS106にて「YES」と判定)し、改質水ポンプ40の異常の有りを確認する(ステップS108)。
【0043】
一方、改質水ポンプ40が正常に作動している場合、プランジャ44の衝突による振動が発生する。よって、制御装置15は、検出振動値Vrが第二判定値V2以上である場合、改質水ポンプ40が正常に作動して振動が発生していることで改質水ポンプ40が正常に作動していると判定(ステップS106にて「NO」と判定)し、プログラムをステップS104に戻す。このように、改質水ポンプ40が正常に作動している場合、制御装置15は、ステップS104およびステップS106の判定を繰り返し実行する。
【0044】
次に、上述したフローチャートに沿って、改質水ポンプ40の異常の有りが確認される場合の燃料電池システムの作動について説明する。はじめに、
図5に示すタイムチャートに沿って、改質水ポンプ40の駆動中にコイル43の断線が発生した場合について説明する。
制御装置15は、改質水の流量が所定の流量となるように、改質水ポンプ40の制御を開始する(時刻t1)。このとき、プランジャ44の衝突により、検出振動値Vrが検出される。プランジャ44が、デューティ比の周期と同じ周期にて往復運動するため、検出振動値Vrは、デューティ比の周期と同じ周期にて検出される。改質水ポンプ40が正常に作動している場合、第一所定時間T1が経過した時点において(時刻t2;ステップS102)、改質水の流量が所定の流量になっている。この場合、検出振動値Vrは、所定の流量に応じた大きさに抑制されるため、正常検出振動値Vnにて推移する。
【0045】
改質水ポンプ40が正常に作動しているときに、コイル43の断線が発生した場合(時刻t3)、コイル43による磁界が形成されないため、プランジャ44が第二接触部41b1に接触した状態で位置決めされている。これにより、プランジャ44の衝突が発生しないため、検出振動値Vrが第二判定値V2より小さくなる(時刻t4)。そして、検出振動値Vrが、第二所定時間T2継続して第二判定値V2より小さい状態になったとき(時刻t5;ステップS106)、制御装置15によって改質水ポンプ40の異常の有りが確認され(ステップS108)、燃料電池システムの運転が停止される。
【0046】
さらに、
図6に示すタイムチャートに沿って、改質水ポンプ40の駆動中に、シリンダ42a内に空気溜りが発生し、シリンダ42a内の改質水の量が比較的少なくなった場合について説明する。
図5に示すタイムチャートと同様に、制御装置15によって改質水ポンプ40の駆動が開始され(時刻t1)、改質水ポンプ40が正常に作動している場合、第一所定時間T1が経過した時点において(時刻t2;ステップS102)、改質水の流量が所定の流量になっている。この場合、検出振動値Vrは、所定の流量に応じた大きさに抑制されるため、正常検出振動値Vnにて推移する。
改質水ポンプ40が正常に作動しているときに、シリンダ42a内に空気溜りが発生して(時刻t6)、シリンダ42a内の改質水の量が比較的少なくなった場合、プランジャ44の衝突に対して改質水が緩衝材として作用しなくなるため、検出振動値Vrが大きくなる。そして、検出振動値Vrが第一判定値V1より大きくなったとき(時刻t7;ステップS104)、制御装置15によって改質水ポンプ40の異常の有りを確認され(ステップS108)、燃料電池システムの運転が停止される。
【0047】
本実施形態によれば、燃料電池システムは、燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池34と、改質水から水蒸気を生成する蒸発部32と、改質用原料と水蒸気とから燃料を生成して燃料電池34に供給する改質部33と、通電されることにより磁場を形成するコイル43と、コイル43により形成された磁場によって移動するプランジャ44と、プランジャ44を往復運動可能に収納し、プランジャ44の往復運動に応じて容積が変化するポンプ室PRを構成するシリンダ42aと、を備え、プランジャ44の往復運動によって、改質水をポンプ室PRに吸入するとともに、改質水を加圧してポンプ室PRより吐出することにより、改質水を蒸発部32に供給する改質水ポンプ40と、改質水ポンプ40を少なくとも制御する制御装置15と、を備えている。また、改質水ポンプ40は、プランジャ44の往復運動の際、プランジャ44が衝突する第一接触部42a3および第二接触部41b1に対する衝突によって振動が発生し、燃料電池システムは、振動が伝達する伝達部位Pに配設され、振動を検出する振動検出装置50をさらに備え、制御装置15は、振動検出装置50によって検出された検出振動値Vrに基づいて、改質水ポンプ40の異常の有無を確認する確認部(ステップS104,S106)を備えている。
【0048】
改質水ポンプ40が正常に作動している場合、ポンプ室PR内が改質水で満たされており、プランジャ44と第一接触部42a3との間、およびプランジャ44と第二接触部41b1との間に改質水が存在するため、シリンダ42a内の改質水が緩衝材として作用する。その結果、プランジャ44の衝突による検出振動値Vrが抑制される。一方、改質水ポンプ40の異常によりシリンダ42a内の改質水の量が、改質水ポンプ40が正常に作動しているときに比べて変化した場合、プランジャ44の衝突による検出振動値Vrが変化する。よって、確認部は、振動検出装置50によって検出される検出振動値Vrに基づいて、改質水ポンプ40の異常の有無を確認できる。また、改質水ポンプ40の異常を確認した場合、例えば燃料電池システムの運転を停止する等の対処を行うことができる。
例えば、シリンダ42a内に空気溜りが発生して、シリンダ42a内の改質水の量が比較的少ない場合、改質水ポンプ40が正常に作動している場合に比べて、シリンダ42a内の改質水の量が少ないため、プランジャ44の衝突による検出振動値Vrが大きくなる。この場合、確認部は、振動検出装置50によって検出される検出振動値Vrに基づいて、例えば、シリンダ42a内に空気溜りが発生しているとして、改質水ポンプ40の異常の有りを確認できる。また、例えば、コイル43の断線によりプランジャ44が往復運動しない場合、プランジャ44の衝突が無い。よって、プランジャ44の衝突による振動が発生していないため、検出振動値Vrが検出されない。この場合、確認部は、振動検出装置50によって検出される検出振動値Vrに基づいて、プランジャ44が作動していないとして、改質水ポンプ40の異常を確認できる。
また、モータの回転数を検出することにより改質水ポンプの異常の有無を確認する従来技術では、シリンダ42a内の空気溜りが発生している改質水ポンプ40の異常の有無を確認することができない。これに対し、制御装置15の確認部は、上述したように、シリンダ42a内の空気溜りが発生している改質水ポンプ40の異常の有無についても確認することができる。
また、従来技術の改質水ポンプを構成するポンプおよびポンプを駆動するモータにおいて、モータは、例えばDCモータやステッピングモータであるため、モータの部品点数ひいては改質水ポンプの部品点数が比較的多い。これに対し、本実施形態の改質水ポンプ40は、プランジャポンプであるため、従来技術のポンプおよびモータの組み合わせに比べて部品点数を少なくすることができる。よって、改質水ポンプ40の低コスト化を図ることができる。
さらに、振動検出装置50は、改質水と接触しないように配設されているため、振動検出装置50が改質水の流路内に改質水に接触するように配設されている場合に比べて、改質水の汚染や改質水ポンプ40内の空気溜りを抑制することができる。
【0049】
また、確認部は振動検出装置50によって検出されたプランジャ44の衝突による検出振動値Vrが第一判定値V1より大きい場合、改質水ポンプ40の異常の有りを確認する。
これによれば、確認部は、例えば、貫通穴41e4bのゴミつまりによってシリンダ42a内に改質水の吸入ができない状態や、改質水ポンプ40のシリンダ42a内の空気溜りの発生による検出振動値Vrが大きくなるような改質水ポンプ40の異常を、より確実に確認することができる。
【0050】
また、確認部は、制御装置15によって改質水ポンプ40が蒸発部に改質水を供給するように制御されている際、第二所定時間T2継続して振動検出装置50によって検出された検出振動値Vrが第二判定値V2より小さい場合、改質水ポンプ40の異常の有りを確認する。
これによれば、確認部は、例えば、コイル43の断線やシリンダ42a内のゴミつまりによりプランジャ44が動作できない状態(固着状態)であることで、プランジャ44の衝突による検出振動値Vrが生じないような改質水ポンプ40の異常を、より確実に確認することができる。
【0051】
なお、上述した実施形態において、燃料電池システムの一例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、
図5に示すフローチャートにおいて、制御装置15は、ステップS104にて、検出振動値Vrが第一判定値V1より大きい場合「YES」と判定し、直ちに改質水ポンプ40の異常を確認するが、これに代えて、第二所定時間T2継続して検出振動値Vrが第一判定値V1より大きい場合、ステップS104にて「YES」と判定するようにしても良い。
また、上述した実施形態において、振動検出装置50は、第一ハウジング41のフランジ部41bの外表面に配設されているが、これに代えて、第一ハウジング41の本体部41aの側面または、第二ハウジング42の上面に配設するようにしても良い。