(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発振回路は、前記励磁コイルの一端およびグランド間に接続された電流検出用抵抗と、出力側に前記励磁コイルの他端が接続されて前記矩形波電圧を発生するオペアンプと、前記励磁コイルの一端および電流検出用抵抗の接続点と前記オペアンプの反転入力側との間に接続された前記帯域通過フィルタと、前記オペアンプの非反転入力側に閾値電圧を供給する当該オペアンプの出力側と接地との間に接続された分圧抵抗とを有することを特徴とする請求項1に記載の電流検知装置。
前記帯域通過フィルタは、前記接続点および前記オペアンプの反転入力との間に接続されたインダクタンス素子および容量素子の直列回路と、前記インダクタンス素子および容量素子の接続点とグランドとの間に接続された抵抗素子とで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電流検知装置。
前記第2電流検出部は、前記矩形波電圧の周波数増加時にのみ当該矩形波電圧を通過させる高域通過フィルで構成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電流検知装置。
前記第1電流検出部および前記第2電流検出部の出力が個別に供給される第1比較回路及び第2比較回路と、前記第1比較回路及び前記第2比較回路の比較出力が入力される論理和回路とを備えた出力判定回路をさらに備えていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電流検知装置。
【背景技術】
【0002】
この種の電流検知装置としては、種々の構成を有するものが提案され、実施されているが、構造的に簡単で微小電流の検知が可能なものとしてフラックスゲート型の電流センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載された従来例では、
図10(a)に示す構成を有する。すなわち、軟質磁性体製の同形,等大に構成された円環状をなすコア101および102と、各コア101および102に等しい回数巻回された励磁コイル103と、各コア101および102にわたるよう一括して巻回された検出コイル104とを備えている。
【0003】
励磁コイル103には図示しない交流電源が、また検出コイル104には図示しない検出回路が接続されている。そして、両コア101および102の中心に電流を測定する対象物たる被測定導線107が挿通されている。
励磁コイル103はこれに通電したとき両コア101および102に生じる磁場が逆相であって互いに打ち消し合うようコア101および102に巻回されている。
【0004】
そして、励磁コイル103に励磁電流iexを通電したとき、各コア101および102に生じる磁束密度Bの経時変化は、
図10(b)に示すようになる。軟質磁性体製のコア101および102の磁気特性は磁場の大きさHが所定の範囲内では磁場の大きさHと磁束密度Bとは直線的な関係にある。しかしながら、磁場の大きさHが所定値を超えると、磁束密度Bが変化しない磁気飽和の状態となる関係にあることから、励磁コイル103に励磁電流iexを通電すると、各コア101および102に発生する磁束密度Bは実線図示のように上下対称の台形波状に変化し、しかも相互に180°位相がずれた状態となる。
【0005】
今、被測定導線107に矢印で示す如く下向きに直流電流値Iが通電しているものとすると、この直流分に相当する磁束密度が重畳される結果、磁束密度Bは
図10(b)に破線で示す如く、台形波のうち、上方の台形波はその幅が拡大され、一方下方の台形波はその幅が縮小された状態となる。
ここで、両コア101および102に生じた磁束密度Bの変化を正弦波(起電力に対応)で表現すると
図10(c)に示すようになる。この
図10(c)では、前述した
図10(b)で実線図示の台形波に対応して実線図示のように180°位相がずれた周波数fの正弦波(起電力)が表れるが、これらは180°ずれているため互いに打ち消し合う。
【0006】
一方、
図10(b)で破線図示の台形波に対応して
図10(c)には破線図示のような2倍の周波数2fの2次高調波が表れる。この2次高調波は位相が180°ずれているため、相互に重畳すると
図10(c)の最下段に示すような正弦波信号となり、これが検出コイル104で検出される。
この検出コイル104で捉えられた検出信号は被測定導線107を流れる直流の電流値Iに対応しており、これを処理することで電流値Iを検出することができる。
【0007】
また、フラックスゲート形の他の電流センサとして、特許文献2に示された構成が知られている。
図11は、特許文献2に示された電流センサの動作を説明するためのブロック図である。
図において、感知される電流201は、ソフトフェライトのトロイダルコアを有する小型変成器でなる可飽和コア磁気検知素子204の一次巻線を通って流れる。この変成器の二次巻線は一端が電力スイッチ203に接続され、この電力スイッチ203は、電源202から二次巻線に供給される電圧の極性を交互に切り替える。また、二次巻線の他端は、検知装置205に接続されている。
【0008】
電力スイッチ203が正極性を有する電流を供給すると、可飽和コア磁気検知素子204の二次巻線に流れる電流によりコアを飽和させる。コアが飽和すると、検知装置205の両端の電圧が急激に上昇し、検知装置205から出力される制御信号207はヒステレシススイッチ206に供給される。制御信号207があるレベルに到達したとき電力スイッチ203を反転させることで、可飽和コア磁気検知素子204の二次巻線に流れる電流の極性を切り替える。
【0009】
これにより、可飽和コア磁気検知素子204には負極性の電流が供給され、コアの磁化は減少し、反対方向にコアが飽和される。すると、検知装置205の両端の電圧は、急速に負方向に上昇し、ヒステレシススイッチ206を介して電力スイッチ203は極性を切替え、二次巻線に供給されている電圧の極性を反転させる。このように、このシステムは、安定して周期的パターンで動作を繰り返す。
【0010】
感知される電流201に比例する出力を得るために、ローパスフィルタ208が電力スイッチ203の出力に接続されて、混在する磁化電流成分の大部分を除去する。このローパスフィルタ208の出力線209における信号は、感知される電流201の高周波成分が小型変成器である可飽和コア磁気検知素子204の二次巻線に誘起されるので、変成器211の出力信号212は、出力線209における信号を電力増幅器210で増幅した直流成分を含む非常に低い周波数成分と高周波成分を含んでいる。これにより、広い周波数帯域にわたって電流の測定ができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
本発明の一態様である電流検知装置1は、
図1に示すように、例えば漏電検知等の対象物に設けられた例えば10A〜800Aの往復の電流Iが流れる導線2a,2bの微小な差異電流を検知する。ここで、健全状態では導線2a,2bに流れる電流の和はゼロであるが、漏電や地絡などで導線2a,2bに流れる電流の和が零にならず、検出対象とする例えば15mA〜500mA程度の微小な差異電流が流れる。これら導線2a,2bの回りには導線2a,2bを一次巻線とするようにリング状の磁気コア3が配設されている。つまり、磁気コア3内に導線2a,2bが一次巻線として挿通されている。
【0019】
磁気コア3には、二次巻線としての励磁コイル4が所定巻数で巻回されている。この励磁コイル4には発振回路5が接続され、この発振回路5から励磁電流Ibが励磁コイル4に供給される。
また、発振回路5の出力側には、発振回路5から出力される出力電圧のデューティ比を検出して小電流領域の測定電流を検出する第1電流検知部としての第1電流検出回路6と、発振回路5から出力される出力電圧の周波数を検出して小電流領域より大きな大電流領域の測定電流を検出する第2電流検出部としての第2電流検出回路7が接続されている。そして、2つの電流検出回路6および7の出力側には出力判定部としての出力判定回路8が接続されている。
【0020】
発振回路5は、
図2に示すように、励磁コイル4の両端が接続されるコイル接続端子tc1およびtc2と、矩形波電圧Vaを出力する出力端子to1およびto2とを有する。発振回路5は、出力側がコイル接続端子tc1および出力端子to1に接続されコンパレータとして動作し、矩形波電圧Vaを出力するオペアンプ51を備えている。このオペアンプ51の出力側がコイル接続端子tc1および出力端子to1に接続されている。また、オペアンプ51の反転入力側は帯域通過フィルタ52を介してコイル接続端子tc2に接続されている。また、コイル接続端子tc2および帯域通過フィルタ52間の接続点とグランドとの間に電流検出用抵抗53が接続されている。
【0021】
さらに、オペアンプ51の出力側とグランドとの間に分圧抵抗54および55が直列に接続されている。これら分圧抵抗54および55間の接続点は、オペアンプ51の非反転入力側に接続され、オペアンプ51の非反転入力側に閾値電圧Vthを供給する。
この閾値電圧Vthは、分圧抵抗54の抵抗値をR1、分圧抵抗55の抵抗値をR2とし、オペアンプ51の出力電圧をVaとすると下記(1)式で表される。
【0022】
Vth=Va{R2/(R1+R2)} …………(1)
また、帯域通過フィルタ52は、
図2に示すように、オペアンプ51の反転入力端子とコイル接続端子tc2および電流検出用抵抗53間の接続点との間に直列に接続されたインダクタンス素子52aおよび容量素子52bと、インダクタンス素子52aおよび容量素子52bの接続点と分圧抵抗54および55間の接続点との間に接続された抵抗素子52cとから一次の帯域通過フィルタとして構成することができる。
【0023】
この帯域通過フィルタ52で通過させる測定電圧Vdの中心周波数fは、下記(1)式で設定することができる。
f=1/2π√LC …………(1)
この帯域通過フィルタ52では、励磁コイル4を流れる電流を電圧に変換した測定電圧Vdに含まれる測定電流の測定に影響を与えるノイズ成分となる高域成分と励磁電流Ibのレベル変動を生じさせる直流成分を除去することができる。
【0024】
この発振回路5では、分圧抵抗54および55の接続点Eの閾値電圧Vthがオペアンプ51の非反転入力側に供給されており、この閾値電圧Vthと、励磁コイル4および電流検出用抵抗53との接続点Dの電圧を帯域通過フィルタ52で低域成分および高域成分を除去した電圧Fとが比較される。そして、発振回路5から
図6(a)に示す矩形波となる矩形波電圧Vaとして出力される。
【0025】
また、コイル接続端子tc1およびtc2間に励磁コイル4が接続され、出力端子to1およびto2に第1電流検出回路6および第2電流検出回路7が接続されている。
第1電流検出回路6は、
図3に示すように、発振回路5から出力される矩形波電圧Vaを平均化する低域通過フィルタ61と、この低域通過フィルタ61のフィルタ出力を絶対値化する絶対値回路62とから構成することができ、発振回路5の矩形波電圧Vaのデューティ変化に応じた小電流領域の測定電流値に対応する電圧出力を得ることができる。
【0026】
第2電流検出回路7は、
図3に示すように、発振回路5から出力される矩形波電圧Vaを周波数−電圧変換して電圧信号を出力する高域通過フィルタ71と絶対値回路72とから構成することができ、発振回路5の矩形波電圧Vaの周波数増加を検出して小電流領域より大きい大電流領域の測定電流を検出することができる。
さらに、出力判定回路8は、第1電流検出回路6および第2電流検出回路7の出力が個別に供給される第1比較回路81および第2比較回路82と、これら2つの比較回路81および82の出力が入力される論理和回路83とから構成することができる。
【0027】
第1比較回路81の一態様は、
図4に示すように、例えばオペアンプで構成される比較器90を備えている。この比較器90の非反転入力側には絶対値回路62が接続され、反転入力側には直流電源91と接地との間に接続された可変抵抗器92の可動子が接続されている。したがって、比較器90では、絶対値回路62から入力される電流検出電圧Vi1が可変抵抗器92の可動子から出力される閾値電圧Vth2未満であるときにローレベルを維持し、電流検出電圧Viが閾値電圧Vth2以上となったときにハイレベルとなる比較信号Sc1を出力する。
【0028】
また、第1比較回路81の他の態様は、
図5に示すように、比較器90の反転入力側に供給する閾値電圧Vth2を可変抵抗器92に代えて閾値電圧設定回路95で設定することもできる。すなわち、閾値電圧設定回路95は、CPU等の演算処理装置96と、この演算処理装置96に接続されたROM、EEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶素子97と、演算処理装置96の出力側に接続されたDAコンバータ98と、DAコンバータ98の出力側と接地との間に直列に接続された分圧抵抗99aおよび99bとで構成することができる。
【0029】
この閾値電圧設定回路95では、演算処理装置96で不揮発性記憶素子97に記憶された閾値電圧指令値Vtを読み出し、DAコンバータ98でアナログ電圧に変換し、このアナログ電圧を分圧抵抗99aおよび99bに供給することにより、これら分圧抵抗99aおよび99bで分圧された閾値電圧Vth2を比較器90の非反転入力側に供給する。
この
図5に示すように第1比較回路81を構成することにより、不揮発性記憶素子97に記憶された閾値電圧指令値Vtを読み出して分圧抵抗99aおよび99bに供給するだけで、閾値電圧Vth2の設定を行うことができる。したがって、第1比較回路81として
図5の構成を採用することにより、
図4に示す可変抵抗器92のように抵抗値の手動での調整が不要となり、第1比較回路81の低コスト化、高精度化を実現することができる。
【0030】
また、第2比較回路82についても、
図4および
図5に示す構成を適用することができ、比較器90で絶対値回路72から出力される電流検出電圧Vi2と可変抵抗器92または閾値電圧設定回路95で設定される第2設定信号としての閾値電圧Vth3とを比較する。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
【0031】
今、
図6(a)に示すように、時点t1で、オペアンプ51の出力側の矩形波電圧Vaがハイレベルとなると、これが励磁コイル4に印加される。このため、励磁コイル4を矩形波電圧Vaと抵抗53の抵抗値とに応じた励磁電流Ibで励磁する。このとき、励磁電流Ibは、
図6(b)に示すように、矩形波電圧Vaの立ち上がり時点から比較的急峻に立ち上がり、その後緩やかに増加する放物線状となる。
【0032】
このとき、オペアンプ51の非反転入力側に矩形波電圧Vaを分圧抵抗54および55の接続点Eで得られる分圧抵抗54および55の抵抗値R1およびR2で分圧された比較的小さな閾値電圧Vthが入力されている。
一方、オペアンプ51の反転入力側の励磁コイル4および抵抗53の接続点Dの測定電圧Vdは、励磁コイル4の励磁電流Ibの増加に応じて増加する。そして、測定電圧Vdに対して、インダクタンス素子52a、容量素子52bおよび抵抗素子52cからなる帯域通過フィルタ52で高周波成分及び低周波成分を除去したF点のフィルタ出力電圧Vfが時点t2で非反転入力側の閾値電圧Vth、すなわち
図6(b)の+Ith1を上回ると、オペアンプ51から出力される矩形波電圧Vaが
図6(a)に示すように、ローレベルに反転する。これに応じて励磁コイル4を流れる励磁電流Ibの極性が反転し、励磁電流Ibは、最初は急峻に低下し、その後、緩やかに低下する放物線状に減少する。
【0033】
このとき、閾値電圧Vthは、矩形波電圧Vaがローレベルとなっていることにより、閾値電圧Vth1も低い電圧となっている。そして、オペアンプ51の反転入力側の励磁コイル4および抵抗53の接続点Dの測定電圧Vdが、励磁コイル4の励磁電流Ibの減少に応じて減少し、電圧Fが時点t3で非反転入力側の閾値電圧Vth、すなわち
図6(b)の−Vth1を下回ると、オペアンプ51の矩形波電圧Vaが
図6(a)に示すように、時点t1と同様にハイレベルに反転する。
【0034】
このため、矩形波電圧Vaは、
図6(a)に示すように、ハイレベルおよびローレベルを繰り返す矩形波電圧となり、発振回路5が非安定マルチバイブレータとして動作する。そして、励磁コイル4の励磁電流Ibは、
図6(b)に示すように増加および減少を繰り返す波形となる。
ところで、磁気コア3は、
図7(a)に示すように角型比の大きな磁束密度Bと磁界の強さHとの関係を表すB−H特性を有し、高透磁率材料の非線型な特性を有する。このB−H特性を有する磁気コア3のインダクタンスは、導線2a,2bの差電流が零であるときに、
図7(b)に示すように飽和電流付近Gで急激に消失する。磁気コア3を貫通する導線2a,2bに任意の検出対象となる微小な差電流Cが生じると、
図7(b)のインダクタンス特性は、破線図示のように差電流Cに応じてインダクタンスが消失するタイミングが変化する。
【0035】
このため、電流が零のときにインダクタンスが飽和する電流(
図7(b)のG)と励磁電流Ibの極性が切り換わる電流(
図6(b)のP)とを一致させる。そうすると、インダクタンスが飽和する電流(
図7(b)のJ)が導線2a,2bの差電流の電流値Cに応じて変化するので、励磁電流Ibの極性が切り換わる電流(
図6(b)のH)も同様に変化することになる。
【0036】
この励磁電流Ibの極性が切り換わる電流値が変化することにより、フィルタ出力電圧Vfが閾値電圧Vthを上回るタイミングが遅れることになり、オペアンプ51から出力される矩形波電圧Vaの立ち下がり時点が導線2a,2bの差電流の電流値Cに応じて
図6(a)で破線図示のように遅れる。この結果、矩形波電圧Vaのデューティ比が導線2a,2bの差電流の電流値Cに応じて変化する。
【0037】
したがって、発振回路5の出力端子to1およびto2にデューティ比を検出する第1電流検出部としての第1電流検出回路6を接続し、この第1電流検出回路6で、矩形波電圧Vaのハイレベル状態を維持している時間とローレベル状態を維持している時間とを計測することにより、デューティ比を検出することができ、数アンペア以下の微小電流を含む小電流領域を検出することができる。なお、小電流領域とは、
図8(a)において、第1電流検出回路6の出力が線形に推移する電流を示す。
【0038】
本実施形態では、第1電流検出回路6は、
図3に示すように、矩形波電圧Vaの平均化を行う低域通過フィルタ61と絶対値回路62とから構成することができる。
次に、数アンペア以上の大電流領域の検出について、
図1と
図8とを用いて説明する。ここで、大電流領域とは
図8(a)において、第1電流検出回路6の出力が飽和し始める電流よりも大きい電流領域を示す。
【0039】
図1において、本実施形態では、発振回路5に第2電流検出部としての第2電流検出回路7を接続し、
図2に示す発振回路5の出力端子to1およびto2から出力される矩形波電圧Vaを、第2電流検出回路7にも供給するようにしている。
第2電流検出回路7は、
図3に示すように、高域通過フィルタ71と絶対値回路72とから構成することができ、発振回路5から出力される矩形波電圧Vaの周波数増加を検出するものである。
【0040】
ここで、第1電流検出回路6と、第2電流検出回路7の出力電圧を
図8に基づいて説明する。
図8は、本実施形態の各検出回路の出力電圧波形を示す模式図であり、(a)は第1電流検出回路6の出力波形図、(b)は第2電流検出回路7の出力波形図である。
図において、第1電流検出回路6の出力電圧は、
図8(a)に示すように、最初線形に推移するが、電流の増加とともに一旦飽和し、その後減少を続け、最終的にゼロとなる。これは測定電流の大きさに比較して
図6(b)の励磁電流Ibも大きくなることで、磁気コア3が十分飽和する前に閾値電圧(+Ith1、−Ith1)に達してしまうためである。
【0041】
これにより、発振回路5の矩形波電圧Vaの周波数も急激に増加し、最終的には発振は停止する。
また、第2電流検出回路7の出力電圧は、
図8(b)に示すように、第1電流検出回路6の出力が飽和し始めると同時に急激に増加し始め、ある電流以上でほぼ一定の周波数を維持する。
【0042】
そこで、第1電流検出回路6および第2電流検出回路7の出力をもとに、下記表1に示すように電流検出を行うことで、微小電流から大電流までの広い電流範囲の電流検知が可能になる。表1は測定電流と2つの電流検出回路6および7との関係を示したものである。
【0044】
この表1において、測定電流が
図8(a)に示すように、ある電流値+I1、−I1を越えないXの領域にあるときには、第1電流検出回路6の出力電圧の大きさを検知する。
また、測定電流が
図8(b)に示すように、ある電流値+I1、−I1より大きい領域Yでは、第2電流検出回路7の出力電圧がある値、すなわち、ある電流値+I1、−I1に対応した電圧V1よりも大きいことを検知することで、+I1、−I1より大きい電流値を検知できる。
【0045】
このように、
図8のXおよびYの領域に応じて、第1電流検出回路6および第2電流検出回路7の出力電圧を検知することで、小電流から大電流までの広い電流領域の電流を検知することができる。
すなわち、測定電流がXの領域であるときは、第1電流検出回路6で発振回路5の矩形波電圧Vaのデューティ比を検出することで、+I1〜−I1の微小電流を含む小電流領域の測定電流を検出する。また、測定電流がYの領域であるときは、第2電流検出回路7で周波数−電圧変換を行い、発振回路5の矩形波電圧Vaの周波数増加を検出して+I1、−I1より大きい電流値となる大電流領域の測定電流を検出する。
【0046】
ここで、出力判定回路8を、
図3に示すように、第1電流検出回路6の絶対値回路62および第2電流検出回路7の絶対値回路72から出力される出力電圧Vi1およびVi2を個別に第1比較回路81および第2比較回路82に供給して、第1電流検出回路6についても出力電圧Vi1が所望の閾値電圧Vth2以上であるときに小電流領域の測定電流が生じていることを簡易に検出することができる。
【0047】
このように、上記実施形態によると、発振回路5内に帯域通過フィルタ52を配置し、この帯域通過フィルタ52によって励磁コイル4を通過した励磁電流Ibに応じた接続点Dの測定電圧Vdから高周波成分および低周波成分を除去したフィルタ出力電圧Vfをオペアンプ51の反転入力側に供給するので、このオペアンプ51でノイズ成分および直流成分を確実に除去したフィルタ出力電圧Vfと閾値電圧Vthとの比較が行われる。このため、オペアンプ51から出力される矩形波電圧Vaへのノイズの影響を確実に除去することができる。したがって、矩形波電圧Vaに基づく測定電流の検知をより正確に行うことができる。
【0048】
さらに、発振回路5から出力される矩形波電圧Vaを第1電流検出回路6および第2電流検出回路7に供給し、第1電流検出回路6で矩形波電圧Vaのデューティ比に基づいて微小電流を含む小電流領域の測定電流を検出し、第2電流検出回路で矩形波電圧Vaの周波数の増加に基づいて小電流領域より高い高電流領域の測定電流を検出するので、広範囲の測定電流を検知することができる。
【0049】
ここで、第1電流検出回路6は低域通過フィルタ61によって構成することが可能であり、第2電流検出回路7は高域通過フィルタ71によって構成することが可能であるので、ともに簡易な構成で測定電流を検出することができる。
また、第1電流検出回路6および第2電流検出回路7の出力信号を、第1比較回路81および第2比較回路82を有する出力判定回路8に供給するようにしたので、簡易な構成で広範囲の測定電流の検知を行うことができる。
【0050】
なお、上記実施形態においては、出力判定回路8に論理和回路83を設けたので、第1比較回路81の比較出力がローレベルとなる大電流領域で第2比較回路82から出力される比較出力がハイレベルとなるように閾値電圧Vth3を設定することにより、第1比較回路81で設定した微小電流を含む小電流領域内の閾値電圧Vth2以上の測定電流を検知することができる。
【0051】
しかしながら、第1電流検出回路6の第2低域通過フィルタ61から出力されるフィルタ出力Vi1が、
図8(a)に示すように正弦波状となるので、出力判定回路8の第1比較回路81に供給する閾値電圧Vth2を
図8(a)に示すように0より大きい微小電流値に対応する電圧に設定したときに、この第1比較回路81から出力される比較出力はX領域を超えた場合でもハイレベルを維持することになる。このため、論理和回路83の論理和出力だけでは、測定電流が小電流領域Xであるか大電流領域Yであるかを判別することはできない。
【0052】
一方、第2比較回路82に供給する閾値電圧Vth3を、
図8(b)に示すように、Y領域の電流検知が可能な閾値電圧に設定すると、この第2比較回路82からY領域の電流を検知することが可能となる。
すなわち、測定電流が小電流領域であるか高電流領域であるかを判別する場合には、第2比較回路82の比較出力がローレベルで、第1比較回路81の比較出力のみがハイレベルであるときに小電流領域であり、第1比較回路81の比較出力にかかわらず、第2比較回路82の比較出力がハイレベルとなったときに、高電流領域であると判断することができる。
【0053】
この結果、出力判定回路8を、
図9に示すように、論理和回路83を省略して、第1比較回路81の比較出力を論理積回路86の一方の入力側に供給し、第2比較回路82の比較出力をインバータ85でレベル反転して論理積回路86の他方の入力側に供給することにより、論理積回路86から小電流領域Xの測定電流が検知されたことを表す小電流領域検知出力SSを得ることができ、第2比較回路82の出力をそのまま出力することにより、大電流領域検知出力SLを得ることができる。
【0054】
また、上記実施形態においては、出力判定回路8を設けた場合について説明したが、ここれに限定されるものではなく、第1電流検出回路6および第2電流検出回路7の少なくとも一方の出力信号をAD変換してディジタル値に変換し、このディジタル値をマイクロコンピュータ等の演算処理装置に供給して測定電流値を算出するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、2本の導線2aおよび2bの差電流を検知する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、1本の導線に流れる微小電流を検出することもできる。