特許第6476872号(P6476872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476872
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/534 20060101AFI20190225BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   A61F13/534 110
   A61F13/535 200
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-3804(P2015-3804)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-129530(P2016-129530A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】金刺 敬美
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−125485(JP,A)
【文献】 特開平02−193665(JP,A)
【文献】 特開2010−194254(JP,A)
【文献】 特開2006−167196(JP,A)
【文献】 特開2013−255571(JP,A)
【文献】 特開2013−017531(JP,A)
【文献】 特開2012−130531(JP,A)
【文献】 特開平02−060646(JP,A)
【文献】 特開2009−297048(JP,A)
【文献】 特開2000−192396(JP,A)
【文献】 特開平10−014977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15−13/84
A61L 15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着時において着用者の腹側に位置する前身頃(1)と着用者の背側に位置する後身頃(2)の間に位置する股下部(3)を有する吸収性物品において,
肌対向面側に位置する液透過性のトップシート(10)と,
肌非対向面側に位置する液不透過性のバックシート(20)と,
前記トップシート(10)と前記バックシート(20)の間に介在し,厚み方向に重ねられた複数の吸収体と,を備え,
前記複数の吸収体は,少なくとも,
前記トップシート(10)側に位置する上層吸収体(30)と,
前記バックシート(20)側に位置する下層吸収体(40)と,
前記上層吸収体(30)と前記下層吸収体(40)の間に,複数の高吸水性ポリマー(SAP)が配置されることにより形成されたSAP層(50)と,を含み,
前記上層吸収体(30)及び前記下層吸収体(40)は,
少なくとも前記股下部(3)に設けられ,前記吸収体を構成する繊維の密度が比較的低い少なくとも1つの低密度領域(71)と,
前記低密度領域(71)の以外の領域に設けられ,前記吸収体を構成する繊維の密度が比較的高い少なくとも1つの高密度領域(72)と,を有し,
前記上層吸収体(30)と前記下層吸収体(40)は,少なくとも部分的に,前記低密度領域(71)が厚み方向に重なっており,
前記上層吸収体(30)の前記低密度領域(71)には,上側開口部(31)が形成され,
前記下層吸収体(40)の前記低密度領域(71)には,下側開口部(41)が形成されており,
前記SAP層(50)は,前記上側開口部(31)と前記下側開口部(41)の両方に重ならない範囲に形成されている
吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,着用者の股下に装着され,尿などの液体を吸収し保持するための吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,排泄された体液を吸収保持することを目的として,着用者の股下に装着される吸収性物品が知られている。吸収性物品の例は,使い捨ておむつ,吸収性パッド,及び生理用ナプキンである。また,使い捨ておむつとしては,例えば,前身頃と後身頃の左右両側部が接合されているパンツ型のものや,後身頃に取り付けられた止着テープを前身頃に取り付けて着用されるテープ型ものが知られている。
【0003】
また,一般的な吸収性物品は,液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートとの間に,吸収性繊維と高吸水性ポリマー(SAP)などによって構成された吸収体が設けられている。このような吸収性物品は,吸収体の肌対向面をトップシートによって被覆し,吸収体の肌非対向面をバックシートによって被覆した構成となっている。このため,着用者が排泄した尿などの液体は,トップシートを透過して吸収体に吸収し保持される。また,吸収体に保持されている液体は,吸収体の裏面側に配置された液不透過性のバックシートによって外部に漏洩することが防止されている。
【0004】
ところで,従来から,吸収量を増加させることなどを目的として,トップシートとバックシートの間に複数の吸収体を積層して介在させた吸収性物品が知られている(例えば,特許文献1〜3)。このように,複数の吸収体を重ねることで,1つの吸収体では吸収しきれない大量の尿が排泄された場合であっても,2つ目の吸収体で十分に吸収することができるため,着用者に対して安心感を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−200968号公報
【特許文献2】特開2014−014726号公報
【特許文献3】特開2014−079284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,複数の吸収体を積層する場合,吸収体を単層で用いた場合と比較して,吸収性物品全体が型崩れしやすくなるという問題があった。すなわち,一般的な吸収体は,吸収性繊維をマット状に成型したものであり,それほど高い強度を有していない。このため,強度の弱い吸収体を複数層積み重ねることで,全体的な強度が低下してしまい,吸収性物品の着用中に吸収体にヨレやズレが生じるおそれがあった。また,複数の吸収体を積層する場合,着用者が歩行や着座などの動作をしているときに,各吸収体が剥離してしまい,吸収性物品全体が型崩れするという問題もある。特に,吸収体の層間に剥離が生じると,着用者に対して不快感を与えてしまうおそれがあった。
【0007】
これに対して,吸収性物品の型崩れを防止するために,吸収体を構成する吸収性繊維の密度を高めて,積層する複数の吸収体の強度を向上させることも考えられる。しかしながら,吸収体の構成繊維の密度を高めると,各吸収体の吸収力が損なわれて,吸収体に液体が浸透する速度が低下したり,吸収体によって保持される液体の量が減少するといった問題が生じることとなる。このように,各吸収体の吸収力が損なわれると,複数の吸収体を積層する意味が失われてしまう。
【0008】
従って,現在では,複数の吸収体を積層した場合であっても,吸収性物品の型崩れを防止するとともに,各吸収体の吸収力を維持することのできる吸収性物品が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は,従来の課題の解決手段について鋭意検討した結果,積層された複数の吸収体のうちの少なくとも股下部に,構成繊維の密度が低い低密度領域を形成し,その低密度領域以外の領域に,構成繊維の密度が高い高密度領域を形成することとした。このように,各吸収体に高密度領域を形成することで,各吸収体の強度(保型性)が向上するため,各吸収体を積層した場合であっても,吸収性部品全体が型崩れすることを防止できる。また,各吸収体の少なくとも股下部に低密度領域を形成することで,この低密度領域に尿などの液体を浸透させやすくなるため,各吸収体の吸収力を維持することができる。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0010】
本発明は,使い捨ておむつや,吸収性パッド,生理用ナプキンなどの吸収性物品に関する。本発明の吸収性物品は,装着時において着用者の腹側に位置する前身頃1と着用者の背側に位置する後身頃2との間に股下部3を有している。
また,本発明の吸収性物品は,肌対向面側に位置する液透過性のトップシート10と,肌非対向面側に位置する液不透過性のバックシート20と,トップシート10とバックシート20の間に介在し厚み方向に重ねられた複数の吸収体と,を備える。
複数の吸収体は,少なくとも,トップシート10側に位置する上層吸収体30と,バックシート20側に位置する下層吸収体40と,を含む。
上層吸収体30と下層吸収体40は,それぞれ,少なくとも1つの低密度領域71と,少なくとも1つの高密度領域72を有している。低密度領域71は,少なくとも股下部3に設けられ,吸収体を構成する繊維の密度が比較的低い領域である。高密度領域72は,低密度領域71の以外の領域に設けられ,吸収体を構成する繊維の密度が比較的高い領域である。
【0011】
上記構成のように,上層吸収体30と下層吸収体40のそれぞれに高密度領域72を設けることで,上層吸収体30と下層吸収体40の強度(具体的には曲げ強度)が向上する。これにより,上層吸収体30と下層吸収体40を積み重ねた場合であっても,その積層体が型崩れすることを防止できる。ただし,上層吸収体30と下層吸収体40の構成繊維の密度を全体的に高めると,これらの積層体の吸収力が低下するという懸念がある。そこで,本発明では,上層吸収体30と下層吸収体40のうち,少なくとも股下部3に,構成繊維の密度が低い低密度領域71を形成する。この股下部3は,着用者によって配設された尿などの液体が最初に触れる部分である。従って,股下部3に低密度領域71を設けておくことで,各吸収体30,40の吸収力を維持することができる。これにより,上層吸収体30と下層吸収体40の吸収性能と保型性を両立させることができる。
【0012】
本発明の吸収性物品において,上層吸収体30と下層吸収体40は,部分的又は全体的に,低密度領域71が厚み方向に重なっていることが好ましい。また,上層吸収体30と下層吸収体40は,部分的又は全体的に,高密度領域72が厚み方向に重なっていることが好ましい。
【0013】
上記構成のように,少なくとも部分的に上層吸収体30と下層吸収体40の低密度領域71を重ねることで,上層吸収体30の低密度領域71で吸収した液体を,下層吸収体40の低密度領域71に浸透させやすくなる。これにより,吸収性物品の全体の吸収力が向上する。また,少なくとも部分的に上層吸収体30と下層吸収体40の高密度領域72を重ねることで,上層吸収体30と下層吸収体40とがズレにくくなるため,着用者が動作している状態であっても,各層の間に剥離が生じにくくなる。
【0014】
本発明の吸収性物品において,上層吸収体30と下層吸収体40の間には,液拡散性シートが配置されていることが好ましい。
【0015】
上記構成のように,上層吸収体30と下層吸収体40の間に液拡散性シートを配置しておくことで,上層吸収体30によって吸収された液体が,液拡散性シートによって広い範囲に拡散される。これにより,上層吸収体30と下層吸収体40が持つ吸収能力を効率良く活用することが可能になる。
【0016】
本発明の吸収性物品は,上層吸収体30と下層吸収体40の間に,複数の高吸水性ポリマー(SAP)が配置されることにより形成されたSAP層50を,さらに備えることが好ましい。
【0017】
上記構成のように,上層吸収体30と下層吸収体40の間にSAP層50を設けておくことで,上層吸収体30によって拡散された液体を迅速に吸収することができる。また,SAP層50を,上層吸収体30と下層吸収体40の間に配置することで,液体を吸収してSAPの体積が膨張しても,その感触が着用者に伝わりにくくなる。さらに,SAP層50上には上層吸収体30が配置されているため,尿などの液体がSAP層50に直接触れにくくなっている。これにより,SAP層50を構成するSAPが固まって,SAPの塊(ゲルブロック)が形成されるのを防止することができる。
【0018】
本発明の吸収性物品において,上層吸収体30と下層吸収体40の両方又はいずれか一方は,低密度領域71に,一又は複数の開口部31,41を有することが好ましい。
【0019】
上記構成のように,上層吸収体30と下層吸収体40の少なくとも一方の低密度領域71に,開口部31,41を設けておくことで,尿などの液体がこの開口部31,41に沿って拡散されるため,吸収性物品全体の液拡散性を高めることができる。従って,上記構成によれば,吸収性物品の吸収能力,液拡散性,及び捕集能力を向上させることができる。
【0020】
本発明の吸収性物品は,トップシート10とバックシート20との間に,吸収体30が1つのみ介在する形態とすることもできる。この場合,吸収体30は,少なくとも1つの低密度領域71と,少なくとも1つの高密度領域72を有する。低密度領域71は,少なくとも股下部3に設けられ,吸収体を構成する繊維の密度が比較的低い領域である。高密度領域72は,低密度領域71の以外の領域に設けられ,吸収体を構成する繊維の密度が比較的高い領域である。
【0021】
本発明の吸収性物品は,1つの吸収体30の低密度領域71に,開口部31が形成されていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の使い捨ておむつによれば,複数の吸収体を積層した場合であっても,吸収性物品の型崩れを防止するとともに,各吸収体の吸収力を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は,第1の実施形態に係る吸収性物品を示した平面図である。
図2図2は,図1に示したX1−X1線における断面図である。
図3図3は,第2の実施形態に係る吸収性物品を示した平面図である。
図4図4は,図3に示したX2−X2線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0025】
本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
また,本願明細書において,「長手方向」とは,吸収性物品のうち,着用者の腹部側に位置する前身頃と着用者の背部側に位置する後身頃とを結ぶ方向を意味する。また,「幅方向」とは,吸収性物品の長手方向に平面的に直交する方向を意味する。本願の図において,吸収性物品の長手方向はY軸で示されており,吸収性物品の幅方向はX軸で示されている。
また,本願明細書において,「肌対向面」とは,吸収性物品の着用時において着用者の肌に対向する面を意味する。また,「肌非対向面」とは,吸収性物品の着用時において着用者の肌に対向しない面を意味している。
【0026】
[1.第1の実施形態]
まず,図1及び図2を参照して,本発明に係る吸収性物品100の第1の実施形態について説明する。図1は,第1の実施形態に係る吸収性物品100を示した平面図である。また,図2は,図1に示したX1−X1線における吸収性物品100の断面構造を模式的に示した断面図である。なお,図2の断面図において,吸収性物品100の構成を分かりやすく示すために,各種の構成部材の間に隙間を設けて描画しているが,実際には構成部材の間には隙間はほとんど形成されない。
【0027】
本実施形態に係る吸収性物品100は,吸収性パッドに関する。吸収性パッドは,単独でも使用することもできるし,パンツ型やテープ型の使い捨ておむつの内面側に重ねて使用することも可能である。図1に示されるように,吸収性物品100は,着用者の腹部側に位置する前身頃1と,着用者の背部側に位置する後身頃2と,これらの間に位置する股下部3とに,長手方向に区分することができる。具体的に説明すると,吸収性物品100は,その平面視において,ひょうたん型若しくは砂時計型と表現することのできる形状となっている。すなわち,吸収性物品100は,股下部3に,吸収性物品100の横幅が最も狭くなった部位であるくびれ部が存在する。他方で,吸収性物品100の前身頃1と後身頃2には,股下部3のくびれ部よりも幅方向の左右外側に延出する部位であるサイドフラップが存在する。つまり,サイドフラップが形成された部分において,前身頃1と後身頃2の横幅は,股下部3のくびれ部における横幅よりも広く形成されている。このように,吸収性物品100はひょうたん型(砂時計型)とすることができる。ただし,吸収性物品100の形状は適宜変更することができ,例えば単純な矩形状とすることも可能である。
【0028】
また,図1及び図2に示されるように,吸収性物品100は,基本的に,液透過性のトップシート10と,液不透過性のバックシート20と,これらの間に介在する複数の吸収体30,40を有している。図2の断面図に示されるように,複数の吸収体30,40は厚み方向に重ねられている。また,トップシート10は,積層された吸収体30,40の肌対向面側を被覆しており,バックシート20は,積層された吸収体30,40の肌非対向面側を被覆している。図1及び図2に示されるように,吸収体30,40の周囲においては,トップシート10とバックシート20が互いに接合されている。これにより,吸収体30,40は,トップシート10とバックシート20の接合部によって周囲を囲われたものとなる。
【0029】
トップシート10は,着用者の股下の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体30,40へ透過させるためのシート状の部材である。このため,トップシート10は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。トップシート10を構成する液透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。不織布としては,エアスルー不織布,ポイントボンド不織布,スパンボンド不織布,メルトブロー不織布などを挙げることができる。
【0030】
バックシート20は,トップシート10透過して吸収体30,40に吸収された液体が,おむつの外部へ漏出することを防止するためのシート状の部材である。このため,バックシート20は,液不透過性材料によって構成される。バックシート20を構成する液不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,バックシート20としては,液不透過性を維持しつつ通気性を確保するために,0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0031】
吸収体30,40は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体30,40は,液透過性のトップシート10と,液不透過性のバックシート20の間に配置される。本実施形態に係る吸収性物品100は,トップシート10側に位置する上層吸収体30とバックシート20側に位置する下層吸収体40との2つの吸収体を備えている。上層吸収体30と下層吸収体40は,それぞれ,公知の吸収性材料により構成することができる。吸収性材料としては,例えば,針葉樹などの繊維材料を解砕してなるフラッフパルプや,高吸水性ポリマー(SAP),親水性シートを用いることとしてもよい。また,吸収性材料には,フラッフパルプ,高吸水性ポリマー,又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし,2種類以上を組合せて併用することとしてもよい。
【0032】
本実施形態において,上層吸収体30は,フラッフパルプと高吸水性ポリマーを組み合わせたものであり,複数の粒状の高吸水性ポリマーがフラッフパルプによって担持された構成となっている。他方で,下層吸収体40は,フラッフパルプのみからなり,高吸水性ポリマーは分布していない。このように,複数の吸収体のうち,少なくとも着用者の肌に近い位置に位置する上層吸収体30に高吸水性ポリマーを含有させるとともに,この高吸水性ポリマーを含有しない下層吸収体40を設けることが,本発明の好ましい形態である。上層吸収体30が高吸水性ポリマーを含むものであることにより,尿などの液体をこの上層吸収体30によって迅速に吸収することができるため,吸収性物品100の表面がサラサラし,着用者に不快感を与えることを回避できる。他方,下層吸収体40においては,上層吸収体30によって吸収しきれなかった液体を吸収することになる。このとき,下層吸収体40に高吸水性ポリマーを設けて吸収速度を高めるよりは,むしろ高吸水性ポリマーを設けずに下層吸収体40の広い範囲で液体を吸収する方が,液体の吸収量を向上させるという観点において効果的である。このため,本実施形態では,上層吸収体30にのみ高吸水性ポリマーを散布し,下層吸収体40には敢えて高吸水性ポリマーを散布しない構成となっている。ただし,上層吸収体30と下層吸収体40の両方に高吸水性ポリマーが含まれていない形態とすることもできるし,下層吸収体40にのみ高吸水性ポリマーが含まれ上層吸収体30に高吸水性ポリマーが含まれていない形態とすることもできる。
【0033】
図1及び図2に示されるように,本発明に係る吸収性物品100は,上層吸収体30と下層吸収体40とが,それぞれ,低密度領域71と高密度領域72とを有している。
【0034】
図1及び図2に示されるように,上層吸収体30と下層吸収体40うち,少なくとも股下部3に低密度領域71が形成され,この低密度領域71以外の領域が高密度領域72となっている。低密度領域71は,各吸収体30,40を構成する繊維の密度が高密度領域72よりも低い領域である。また,高密度領域72は,各吸収体30,40を構成する繊維の密度が低密度領域71よりも高い領域である。
【0035】
具体的に説明すると,本実施形態において,低密度領域71は,各吸収体30,40の幅方向の中央部分に形成されている。また,低密度領域71は,股下部3を中心に前身頃1及び後身頃2にかけて,各吸収体30,40の長手方向全体に亘って形成されている。このように,低密度領域71は,少なくとも,股下部3の幅方向中央部分に形成されている。このように,本発明では,各吸収体30,40の幅方向の中央部分に低密度領域71を形成する。これにより,着用者が排泄した尿などの液体を,各吸収体30,40の低密度領域71において迅速に吸収することができる。
【0036】
他方,低密度領域71以外の領域は,高密度領域72となっている。本実施形態において,高密度領域72は,低密度領域71の幅方向の左右両側に形成されており,低密度領域71を挟んで2つの領域に分かれている。すなわち,左右の高密度領域72は,それぞれ,各吸収体30,40の長手方向全体に亘って形成されている。
【0037】
高密度領域72は,例えば,上層吸収体30と下層吸収体40の両方を同時に押圧することによって形成することができる。各吸収体30,40の押圧には,公知のプレスローラなどのプレス装置を用いることができる。このように,各吸収体30,40を押圧することにより,各吸収体30,40の厚みが小さくなるため,その分,各吸収体30,40を構成する繊維の密度が高まる。これにより,各吸収体30,40うち,押圧された領域(又は強く押圧された領域)が高密度領域72となり,押圧されていない領域(又は弱く押圧された領域)が低密度領域71となる。
【0038】
また,図2に示されるように,本実施形態において,上層吸収体30の低密度領域71及び高密度領域72が形成された位置と,下層吸収体40の低密度領域71及び高密度領域72が形成された位置は,揃っていることが好ましい。つまり,上層吸収体30の低密度領域71は,下層吸収体40の低密度領域71と厚み方向に重なり,さらに上層吸収体30の高密度領域72は,下層吸収体40の高密度領域72と厚み方向に重なることとなる。このようにするためには,例えば,上層吸収体30と下層吸収体40とを重ねた後,これらの吸収体30,40を同時に押圧して高密度領域72及び低密度領域71を形成することが効率的である。このように,上層吸収体30と下層吸収体40に高密度領域72を形成することで,各吸収体30,40の保型性を高めることができ,着用時においても各吸収体30,40が型崩れしにくくなる。
【0039】
また,本発明では,上層吸収体30と下層吸収体40とを重ねることとしている。この場合に,高密度領域72が重なるように各吸収体30,40を配置することで,着用時において,各吸収体30,40の位置がずれることを防止できる。特に,本実施形態では,上層吸収体30と下層吸収体40とを重ねた後に,各吸収体30,40を同時に押圧して,高密度領域72を形成することとしている。このようにすることで,各吸収体30,40の高密度領域72がより密着するため,各吸収体30,40の層間の位置ずれを効果的に防止することができる。
【0040】
図2に示された例において,上層吸収体30の低密度領域71の厚さが,符号T1で示され,上層吸収体30の高密度領域72の厚さが,符号T2で示されている。図2に示されるように,高密度領域72の厚さT2は,低密度領域71の厚さT1よりも薄くなっている(T2<T1)。例えば,高密度領域72の厚さT2は,低密度領域71の厚さT1に対して,10%〜90%であることが好ましく,10%〜50%であることが特に好ましい。例えば,低密度領域71の厚さは,5mm〜15mmとすればよい。また,高密度領域72の厚さは,3mm〜8mmであって,低密度領域71よりも薄いものとすればよい。なお,下層吸収体40の低密度領域71と高密度領域72の厚さの関係性も,上述した上層吸収体30の低密度領域71と高密度領域72と同様とすることができる。
【0041】
また,上層吸収体30において,低密度領域71と高密度領域72の密度差の割合(密度の比)は,10%〜49%であることが好ましく,20%〜40%であることが特に好ましい。ここで,低密度領域71と高密度領域72の密度差の割合を求めるには,例えば,同じ体積の低密度領域71と高密度領域72の試験片を用意して,各試験片の重量を測定し,各試験片の密度を求める。その上で,高密度領域72の試験片の密度に対する低密度領域71の試験片の密度を求める。このため,密度差の割合は,[低密度領域71の試験片の密度/高密度領域72の試験片の密度]によって求めることができる。なお,密度の単位は,重量(mg)/体積(cm)である。例えば,低密度領域71の密度は,5〜50mg/cmであることが好ましい。また,高密度領域72の密度は,20〜150mg/cmであって,低密度領域71の密度よりも高い範囲であることが好ましい。なお,下層吸収体40の低密度領域71と高密度領域72の密度の関係性も,上述した上層吸収体30の低密度領域71と高密度領域72と同様とすることができる。
【0042】
また,上層吸収体30において,低密度領域71の横幅B1は,上層吸収体30の全幅(最大値)に対して,例えば,20%〜80%,又は30%〜70%であることが好ましい。なお,上層吸収体30は,低密度領域71以外の領域が,高密度領域72となる。また,下層吸収体40の低密度領域71の横幅は,上層吸収体30の低密度領域71の横幅と一致させることが好ましい。また,下層吸収体40は,低密度領域71以外の領域が,高密度領域72となる。
【0043】
なお,本実施形態において,低密度領域71は1つの繋がった領域となっているが,低密度領域71は2つ以上の領域に区分されていてもよい。また,低密度領域71は,少なくとも股下部3に形成されていればよく,前身頃1や後身頃2には形成されていなくてもよい。
【0044】
図1及び図2に示されるように,本実施形態において,上層吸収体30と下層吸収体40の形状は異なっていてもよい。つまり,上層吸収体30は,いわゆるひょうたん型又は砂時計型に成型されているのに対し,下層吸収体40は,長方形状に成型されていてもよい。このように,上層吸収体30と下層吸収体40の形状を異ならせることもできる。特に,上層吸収体30は,下層吸収体40上に重ねたときに,前身頃1及び後身頃2において,この下層吸収体40よりも幅方向外側に向かって広がる延出部32を有している。従って,本実施形態において,上層吸収体30は,延出部32の分だけ,下層吸収体40よりも大きく形成されている。このように,上層吸収体30のサイズを大きくすることで,尿などが排泄されたときに,この上層吸収体30の広い範囲で迅速に吸収することができるため,尿漏れの防止に繋がる。また,上層吸収体30の下方に配置する下層吸収体40も,上層吸収体30と同様に,ひょうたん型に成型することも考えられるが,吸収性物品100の着用感が低下するおそれがあるため,あまり好ましくはない。そこで,本実施形態のように,下層吸収体40の形状は上層吸収体30よりも小さい長方形状としておくことで,吸収性物品100全体の吸収量を増加させるととともに,着用感を良好に維持することができる。
【0045】
図2の断面図に示されるように,本実施形態に係る吸収性物品100は,第1拡散シート61,第2拡散シート62,及び第3拡散シート63を,さらに備えていてもよい。図2に示されるように,第1拡散シート61は,トップシート10と上層吸収体30の間に配置されている。また,第2拡散シート62は,上層吸収体30と下層吸収体40の間に配置されている。また,第3拡散シート63は,下層吸収体40とバックシート20の間に配置されている。本実施形態において,第2拡散シート62と第3拡散シート63は,一枚のシート部材から構成されたものあり,両者は,下層吸収体40の周囲を被包するように一体的に繋がったものとなっている。このように,各拡散シート61〜63は,それぞれ別々のシート部材から構成されたものであってもよいし,繋がったシート部材から構成されていてもよい。ただし,上記の拡散シート61〜63は任意の構成であり,吸収性物品の構成として設けてもよいし設けなくてもよい。
【0046】
第1拡散シート61,第2拡散シート62,及び第3拡散シート63は,液体を吸収して拡散可能な液拡散性を有するシート状の部材である。各拡散シート61〜63は,例えば,ティッシュペーパのような薄葉紙であってもよいし,不織布であってもよい。不織布としては,エアスルー不織布,ポイントボンド不織布,スパンボンド不織布,メルトブロー不織布などを挙げることができる。
【0047】
図2に示されるように,第1拡散シート61は,上層吸収体30を肌対向面側から被覆している。また,第2拡散シート62は,上層吸収体30を肌非対向面側から被覆するとともに,下層吸収体40を肌対向面側から被覆している。さらに,第3拡散シート63は,下層吸収体40を肌非対向面側から被覆している。このように,各吸収体30,40を液拡散性のシート部材によって被覆することで,着用者が排泄した液体を効率的に拡散させることができる。これにより,2つの吸収体30,40の広い範囲で液体が吸収されるため,2つの吸収体30,40の吸収能力を効果的に活用することができる。特に,上層吸収体30と下層吸収体40の隙間には液体が浸透しにくい。そこで,上層吸収体30と下層吸収体40の隙間に第2拡散シート62を設けることで,通常であれば液体を吸収しにくいとされる上層吸収体30と下層吸収体40の隙間の領域にも液体を浸透させることができる。
【0048】
図2の断面図に示されるように,本実施形態に係る吸収性物品100は,さらに,SAP層50を有する。このSAP層50は,上層吸収体30と下層吸収体40の間に形成されている。SAP層50は,複数の粒状の高吸水性ポリマー(SAP)が集まることによって形成された層である。SAP層50は,複数の高吸水性ポリマーが上層吸収体30と下層吸収体40によって挟み込まれることで,これらの吸収体30,40の間に保持されている。高吸水性ポリマー(SAP)としては公知の素材を用いればよい。例えば,高吸水性ポリマーは,自重の100倍〜1000倍程度の液体を吸収する。高吸水性ポリマーとしては,例えば,液体の吸収前の乾燥状態において0.1mm〜0.5mm程度の直径を有するものを採用すればよい。
【0049】
上記のように,上層吸収体30と下層吸収体40の間にSAP層50を設けておくことで,第2拡散シート62によって上層吸収体30と下層吸収体40の間に導かれた液体を,このSAP層50によって迅速に吸収することができる。従って,上層吸収体30に浸透した液体を,第2拡散シート62によって広い範囲に拡散させながら,SAP層50によって確実に捕集できる。これにより,上層吸収体30の中央部分に大量の液体が排出されても,その液体が外部に漏洩することを防止することが可能である。また,SAP層50は,上層吸収体30と下層吸収体40の間に配置されているため,このSAP層50が大量の液体を吸収して体積が膨張しても,その感触が着用者に伝わりにくい。従って,液体の排泄前と排泄後とで変わらない良好な装着感を,着用者に提供できる。
【0050】
また,図2に示されるように,SAP層50は,上層吸収体30と下層吸収体40の間であって,且つ,第2拡散シート62と下層吸収体40の間に形成されていることが好ましい。特に,本実施形態において,下層吸収体40は,第2拡散シート62と第3拡散シート63を連結してなる一枚のシート部材の内部に封入されている。このような場合に,第2拡散シート62と第3拡散シート63から構成される一枚のシート部材の中に,下層吸収体40と共に,SAP層50を封入しておくことが好ましい。これにより,高吸水性ポリマーが周りに散乱してしまうという事態を回避できる。また,第2拡散シート62の下方にSAP層50を形成しておくことで,第2拡散シート62に浸透した液体がSAP層50に移りやすくなるため,より効率的にSAP層50によって液体を吸収することが可能となる。
【0051】
[2.第2の実施形態]
続いて,図3及び図4を参照して,本発明に係る吸収性物品100の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態については,上述した第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し,第1の実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。図3は,図1と同様に,吸収性物品100の平面図を示している。また,図4は,図2と同様に,図3に示したX2−X2線における断面図を示している。
【0052】
図3及び図4に示されるように,第2の実施形態に係る吸収体物品100において,上層吸収体30には上側開口部31が形成されている。上側開口部31は,上層吸収体30の厚み方向に貫通した孔(スリット)である。上側開口部31は,少なくとも,上層吸収体30のうち,着用者が排泄した尿に最初に直接触れやすい部位に形成される。具体的には,図3に示されるように,上側開口部31は,上層部吸収体30の低密度領域71に形成される。例えば,上側開口部31は,低密度領域71のうち,股下部3内の一部分に形成されたものであってもよいし,股下部3を超えて前身頃1及び後身頃2の両方又はいずれか一方にまで延出するように形成されていてもよい。また,上側開口部31は,股下部3の幅方向の中心部分に位置していることが好ましい。例えば,股下部3を,幅方向に,左部分,中央部分,及び右部分の3つの領域に等分した場合に,上側開口部31は,この股下部3の中央部分に位置していることが好ましい。
【0053】
上記のように,上層吸収体30の股下部3に上側開口部31を形成することで,着用者によって排泄された尿が,この上側開口部31に沿って長手方向に拡散する。また,上側開口部31を形成することで上層吸収体30の表面積が増えるため,尿などの液体を迅速に吸収することができる。さらに,上層吸収体30上に排泄された尿などの液体を,上側開口部31を通じて,下層吸収体40へと導くことができる。これにより,上層吸収体30と下層吸収体40の両方によって,液体を効率的に吸収することが可能になる。
【0054】
図3及び図4に示されるように,上側開口部31は,所定の長さL1(最大値)と所定の横幅W1(最大値)を有している。上側開口部31の長さL1と横幅W1は,吸収性物品100の大きさに合わせて適宜調節すればよい。例えば,吸収性物品100が大人用の吸収性パッドである場合,上側開口部31の長さL1は,100mm〜300mm,又は150mm〜250mmとすればよい。また,上側開口部31の横幅W1は,少なくとも長さL1よりも短いものであって,例えば,5mm〜35mm,又は10mm〜30mmとすればよい。このように,上側開口部31は,長手方向に長い形状となる。図3に示された例において,上側開口部31は,長手方向に延びる長方形状に形成されている。ただし,上側開口部31の形状は,図示されたものに限られず,例えば三角形や,五角形,その他の多角形,円形など種々の形状を採用することも可能である。
【0055】
また,図3及び図4に示されるように,第2の実施形態に係る吸収体物品100において,下層吸収体40には下側開口部41が形成されている。下側開口部41は,下層吸収体40の厚み方向に貫通した孔(スリット)である。下側開口部41は,下層吸収体40の低密度領域71に形成されていることが好ましい。下側開口部41は,所定の長さL2(最大値)と所定の横幅W2(最大値)を有している。ここで,図に示されるように,下層吸収体40の下側開口部41の長さL2と横幅W2は,それぞれ,上層吸収体30の上側開口部31の長さL1と横幅W1よりも短くなっている(L2<L1,W2<W1)。例えば,下側開口部41の長さL2は,上側開口部31の長さL1に対して,40%〜95%,又は50%〜90%であることが好ましい。また,下側開口部41の横幅W2は,上側開口部31の横幅W1に対して,30%〜95%,又は40%〜90%であることが好ましい。このように,下側開口部41の長さ及び横幅が上側開口部31の長さ及び横幅よりも短いため,基本的に,下側開口部41の開口面積は,上側開口部31の開口面積よりも小さくなる。図3に示されるように,下側開口部41の形状は,上側開口部31と相似となる長方形状であることが好ましい。ただし,下側開口部41の形状は,上側開口部31と相似形でなくてもよく,三角形や,五角形,その他の多角形,円形など種々の形状を採用することができる。
【0056】
また,下層吸収体40の下側開口部41は,上層吸収体30の上側開口部31と少なくとも部分的に重畳する位置に形成されている。特に,図3に示されるように,下側開口部41は,その全体が,上側開口部31に重なっていることが好ましい。ただし,下側開口部41は,上側開口部31と重ならない部分を有していてもよい。例えば,下側開口部41の全体の面積を100%とした場合に,下側開口部41は,その面積の50%〜100%又は90%〜100%が,上側開口部31と重なるものであることが好ましい。このように,下側開口部41の一部又は全部を上側開口部31と重ねることで,これらの2つの開口部31,41が連通するようになる。
【0057】
上記のように,上層吸収体30の上側開口部31と下層吸収体40の下側開口部41とを連通させることで,着用者の排泄した液体が,上側開口部31を通じて下側開口部41へと導かれるため,各吸収体30,40の広い範囲で液体を吸収することができる。また,吸収性物品100が着用者の股下に装着されると,各吸収体30,40が幅方向に圧縮されると考えられる。このとき,上側開口部31を下側開口部41よりも大きく形成しておくことで,各吸収体30,40が幅方向に圧縮されて下側開口部41が塞がってしまった場合であっても,上側開口部31の空間を維持することができる。これにより,吸収性物品の装着時にも,上側開口部31を通じて,尿などの液体を下層吸収体40へと導くことができ,吸収性物品の吸収能力を向上させることができる。また,尿などの液体は上層吸収体30の上側開口部31と下層吸収体40の下側開口部41に沿って拡散されるため,吸収性物品全体の液拡散性を高めることができる。さらに,上層吸収体30の上側開口部31よりも下層吸収体40の下側開口部41を小さくしておくことで,上側開口部31を抜けた液体を,下層吸収体40によって捕集しやすくなる。特に,本実施形態のように,低密度領域71の左右両側に高密度領域72を形成しておくことで,各吸収体30,40が幅方向に圧縮された場合であっても,この低密度領域71に形成された上側開口部31と下側開口部41が塞がれにくくなる。これにより,着用時においても,各吸収体30,40の吸収能力及び液拡散性を維持することができる。
【0058】
また,第2の実施形態において,上層吸収体30と下層吸収体40の間に設けられたSAP層50は,少なくとも,下側開口部41の幅方向の左右両側に形成されている。特に,SAP層50は,下側開口部41の幅方向の左右両側であって,且つ,上側開口部31の幅方向の左右両側に形成されていることが好ましい。このように,SAP層50を上側開口部31と下側開口部41の両方に重ならない範囲に設けることで,SAP層50全体を完全に上層吸収体30と下層吸収体40とによって挟み込むことができる。このため,吸収性物品の着用者が大きく動いたような場合であっても,SAP層50を構成する高吸水性ポリマーが,上側開口部31や下側開口部41の中に脱落することを防止できる。高吸水性ポリマーが開口部31,41の中に脱落すると,このポリマーが液体を吸収したときに開口部31,41を塞いでしまうおそれや,高吸水性ポリマーのざらざらとした感触が着用者に伝わるおそれがある。この点,SAP層50を上側開口部31と下側開口部41の両方に重ならない範囲に設けることで,高吸水性ポリマーが開口部31,41内に脱落することをより確実に防止できる。なお,図示は省略するが,SAP層50は,上側開口部31や下側開口部41の長手方向の前後両側に形成されていてもよい。
【0059】
また,図4に示されるように,本実施形態において,上層吸収体30と下層吸収体40の間に位置する第2拡散シート62は,部分的に2重に重なっている。この場合に,第2拡散シート62の重畳部分が,上側開口部31の肌非対向面側と,下側開口部41の肌対向面側を被覆していることが好ましい。このように,上側開口部31及び下側開口部41が形成されている部位において,第2拡散シート62を部分的に重ねて厚くしておくことで,各開口部31,41に流れ込んだ液体をより効率的に拡散させることができる。
【0060】
また,図3及び図4に示されるように,上層吸収体30の低密度領域71には上側開口部31が形成され,下層吸収体40の低密度領域71には下側開口部41が形成されている。図4の断面図に示されるように,上側開口部31の横幅W1は,低密度領域71の横幅B1に対して,10%〜90%とすればよく,50%〜90%であることが好ましい。なお,上述したとおり,下層吸収体40の下側開口部41の横幅は,上層吸収体30の上側開口部31の横幅よりも狭くなる。このため,下層吸収体40の下側開口部41も,下層吸収体40の低密度領域71内に収まることとなる。このように,低密度領域71には長手方向に延びる開口部31,41が形成されているため,低密度領域71全体に液体を拡散させることができる。
【0061】
本実施形態において,上層吸収体30の上側開口部31と下層吸収体40の下側開口部41は,低密度領域71にのみ形成されており,高密度領域72には形成されていない。ただし,各開口部31,41を,低密度領域71と高密度領域72の両方に亘って形成することも可能である。
【0062】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は,使い捨ておむつや吸収性パッドなどの吸収性物品に関する。従って,本発明は,吸収性物品等の製造業において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…前身頃 2…後身頃 3…股下部
10…トップシート 20…バックシート 30…上層吸収体
31…上側開口部 40…下層吸収体 41…下側開口部
50…SAP層 61…第1拡散シート 62…第2拡散シート
63…第3拡散シート 71…低密度領域 72…高密度領域
100…吸収性物品
図1
図2
図3
図4