特許第6476875号(P6476875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6476875トルクコンバータのステータホイール及びトルクコンバータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476875
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】トルクコンバータのステータホイール及びトルクコンバータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 41/26 20060101AFI20190225BHJP
【FI】
   F16H41/26
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-4301(P2015-4301)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-130542(P2016-130542A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】都築 幸久
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−355701(JP,A)
【文献】 特開平08−004875(JP,A)
【文献】 特開平09−303531(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0247054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 41/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機からトルクを入力されることにより回転可能であるとともに、回転することにより作動流体を流動させることが可能なポンプと、
流動する前記作動流体を介して前記ポンプからトルクが入力されることにより回転可能であるとともに、回転軸に接続可能であり、回転することで当該回転軸にトルクを出力可能なタービンと、
を備えるトルクコンバータにおいて、前記ポンプと前記タービンとの間に位置するステータホイールであって、
回転中心回りに回転可能な第1の環状部分と、
前記第1の環状部分から前記第1の環状部分の径方向に離間した第2の環状部分と、
前記第1の環状部分の周方向に間隔を介して設けられ、前記第1の環状部分と前記第2の環状部分との間で前記第1の環状部分の径方向にそれぞれ延びるとともに、前記回転軸の軸方向に向かうに従って前記第1の環状部分の周方向の一方側に向かうように延び、前記第1の環状部分及び前記第2の環状部分と一体的に作られ、前記第1の環状部分の周方向の一方側に設けられた第1の面と、前記第1の環状部分の周方向に関して前記第1の面の反対側に位置するとともに、前記ポンプが回転するとともに前記タービンが静止した状態において前記タービンから前記ポンプに向かって流動する前記作動流体から受ける圧力が前記第1の面よりも低い第2の面と、をそれぞれ有した複数の羽根と、
を具備し、
前記複数の羽根のうち一つの羽根の前記第1の環状部分の周方向の一方側の端部において、前記第1の面と前記第1の環状部分とが接続された部分である第1の接続部分の、前記回転軸の軸方向と直交する仮想平面上の曲率半径が、前記一つの羽根に対して前記第1の環状部分の周方向の一方側に隣接する他の前記羽根の、前記第1の環状部分の周方向の他方側の端部において、前記第2の面と前記第1の環状部分とが接続された部分である第2の接続部分の、前記回転軸の軸方向と直交する仮想平面上の曲率半径よりも大きく、
前記一つの羽根の前記第1の環状部分の周方向の一方側の端部において前記第1の面と前記第2の環状部分とが接続された部分である第3の接続部分の、前記回転軸の軸方向と直交する仮想平面上の曲率半径が、前記一つの羽根に対して前記第1の環状部分の周方向の一方側に隣接する前記他の羽根の前記第1の環状部分の周方向の他方側の端部において前記第2の面と前記第2の環状部分とが接続された部分である第4の接続部分の、前記回転軸の軸方向と直交する仮想平面上の曲率半径よりも大きい、
トルクコンバータのステータホイール。
【請求項2】
前記第1の接続部分は、前記第1の面から前記第1の環状部分に連続する曲面状に形成され、
前記第2の接続部分は、前記第2の面から前記第1の環状部分に連続する曲面状に形成され、
前記第3の接続部分は、前記第1の面から前記第2の環状部分に連続する曲面状に形成され、
前記第4の接続部分は、前記第2の面から前記第2の環状部分に連続する曲面状に形成される、
請求項1のトルクコンバータのステータホイール。
【請求項3】
前記第1の環状部分の周方向における前記羽根の長さは、前記第1の環状部分の外周面の円周を前記羽根の数で除した長さから、前記第1の環状部分の周方向における前記第1の接続部分の長さの二倍の長さと、前記第1の環状部分の周方向における第1の接続部分及び前記第2の接続部分の間の距離と、を減じた長さよりも長い、請求項1又は請求項2のトルクコンバータのステータホイール。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つのステータホイールを具備したトルクコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、トルクコンバータのステータホイール及びトルクコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、オートマチックトランスミッションを備える自動車のような装置に、トルクコンバータが設けられる。トルクコンバータは、例えば、ポンプインペラと、タービンランナと、ステータホイールとを備える。エンジンのクランクシャフトに接続されたポンプインペラは、作動流体を介して、トランスミッションの入力軸に接続されたタービンランナにエンジンの動力を伝達することが可能である。
【0003】
ステータホイールは、例えば、アウターシェルと、インナーコアと、アウターシェル及びインナーコアの間に介在する複数のステータブレードとを有する。ステータホイールは、タービンランナからポンプインペラに戻る作動流体の向きを所定の向きに整えることで、エンジンの動力を増幅させたり、トルクコンバータの容量性能を向上させたりすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−105282号公報
【特許文献2】特開2010−190273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステータホイールは、当該ステータホイールの軸方向に金型を移動させるダイカスト方式で製造されることがある。この場合、ステータホイールの軸方向に金型を移動させるため、ステータブレードは、例えばステータホイールの軸方向において互いに重なることを避けるよう設定される。このため、例えば、ステータブレードの長さ、数、及び形状が制限されることがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のトルクコンバータのステータホイールは、原動機からトルクを入力されることにより回転可能であるとともに、回転することにより作動流体を流動させることが可能なポンプと、流動する前記作動流体を介して前記ポンプからトルクが入力されることにより回転可能であるとともに、回転軸に接続可能であり、回転することで当該回転軸にトルクを出力可能なタービンと、を備えるトルクコンバータにおいて、前記ポンプと前記タービンとの間に位置するステータホイールであって、回転中心回りに回転可能な第1の環状部分と、前記第1の環状部分から前記第1の環状部分の径方向に離間した第2の環状部分と、前記第1の環状部分の周方向に間隔を介して設けられ、前記第1の環状部分と前記第2の環状部分との間で前記第1の環状部分の径方向にそれぞれ延びるとともに、前記回転軸の軸方向に向かうに従って前記第1の環状部分の周方向の一方側に向かうように延び、前記第1の環状部分及び前記第2の環状部分と一体的に作られ、前記第1の環状部分の周方向の一方側に設けられた第1の面と、前記第1の環状部分の周方向に関して前記第1の面の反対側に位置するとともに、前記ポンプが回転するとともに前記タービンが静止した状態において前記タービンから前記ポンプに向かって流動する前記作動流体から受ける圧力が前記第1の面よりも低い第2の面と、をそれぞれ有した複数の羽根と、を備え、前記複数の羽根のうち一つの羽根の前記第1の環状部分の周方向の一方側の端部において、前記第1の面と前記第1の環状部分とが接続された部分である第1の接続部分の、前記回転軸の軸方向と直交する仮想平面上の曲率半径が、前記一つの羽根に対して前記第1の環状部分の周方向の一方側に隣接する他の前記羽根の、前記第1の環状部分の周方向の他方側の端部において、前記第2の面と前記第1の環状部分とが接続された部分である第2の接続部分の、前記回転軸の軸方向と直交する仮想平面上の曲率半径よりも大きい。前記一つの羽根の前記第1の環状部分の周方向の一方側の端部において前記第1の面と前記第2の環状部分とが接続された部分である第3の接続部分の、前記回転軸の軸方向と直交する仮想平面上の曲率半径が、前記一つの羽根に対して前記第1の環状部分の周方向の一方側に隣接する前記他の羽根の前記第1の環状部分の周方向の他方側の端部において前記第2の面と前記第2の環状部分とが接続された部分である第4の接続部分の、前記回転軸の軸方向と直交する仮想平面上の曲率半径よりも大きい。よって、例えば第1の接続部分の曲率半径と第2の接続部分の曲率半径とが同一の場合に比べ、周方向における羽根の長さをより長くしつつ、作動流体から第1の面に受ける圧力に対する羽根の耐久性の低下を抑制することが可能となる。
【0007】
また、上記トルクコンバータのステータホイールでは、前記第1の接続部分は、前記第1の面から前記第1の環状部分に連続する曲面状に形成され、前記第2の接続部分は、前記第2の面から前記第1の環状部分に連続する曲面状に形成され、前記第3の接続部分は、前記第1の面から前記第2の環状部分に連続する曲面状に形成され、前記第4の接続部分は、前記第2の面から前記第2の環状部分に連続する曲面状に形成される。
【0008】
また、上記トルクコンバータのステータホイールでは、前記第1の環状部分の周方向における前記羽根の長さは、前記第1の環状部分の外周面の円周を前記羽根の数で除した長さから、前記第1の環状部分の周方向における前記第1の接続部分の長さの二倍の長さと、前記第1の環状部分の周方向における第1の接続部分及び前記第2の接続部分の間の距離と、を減じた長さよりも長い。よって、作動流体の整流性及びステータホイールの性能を向上させることが可能となる。
【0009】
実施形態のトルクコンバータは、上記いずれか一つのステータホイールを備える。よって、例えば第1の接続部分の曲率半径と第2の接続部分の曲率半径とが同一の場合に比べ、周方向における羽根の長さをより長くしつつ、作動流体から第1の面に受ける圧力に対する羽根の耐久性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一つの実施の形態に係るトルクコンバータを概略的に示す断面図である。
図2図2は、一つの実施形態のステータホイールの一部を示す正面図である。
図3図3は、一つの実施形態のステータホイールの一部を図2のF3−F3線に沿って概略的に示す断面図である。
図4図4は、一つの実施形態のステータホイールの一部を図3のF4−F4線に沿って示す断面図である。
図5図5は、一つの実施形態のステータホイールの一部を図3のF5−F5線に沿って示す断面図である。
図6図6は、トルクコンバータの各性能の一例について示すグラフである。
図7図7は、一つの実施形態の低速度比状態のステータホイールの一部を概略的に示す断面図である。
図8図8は、一つの実施形態の高速度比状態のステータホイールの一部を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、一つの実施の形態について、図1乃至図8を参照して説明する。なお、実施形態に係る構成要素や、当該要素の説明について、複数の表現を併記することがある。当該構成要素及び説明について、記載されていない他の表現がされることは妨げられない。さらに、複数の表現が記載されない構成要素及び説明について、他の表現がされることは妨げられない。
【0012】
図1は、一つの実施の形態に係るトルクコンバータ2を概略的に示す断面図である。トルクコンバータ2は、例えば自動車のような装置に搭載される。なお、トルクコンバータ2はこれに限らず、他の装置に搭載されても良い。
【0013】
トルクコンバータ2は、エンジン1と、トランスミッション3との間に介在する。トルクコンバータ2は、例えば、作動流体の一例である作動油を介して、エンジン1の動力をトランスミッション3に伝達することが可能である。
【0014】
エンジン1は、原動機の一例であり、例えばガソリンエンジンである。なお、原動機はこれに限らず、例えば、ディーゼルエンジンやモータのような他の装置であっても良い。エンジン1は、クランクシャフト11を有する。クランクシャフト11は、例えば、回転軸及び出力軸とも称され得る。エンジン1は、駆動させられることで、クランクシャフト11を回転させる。
【0015】
トランスミッション3は、例えばオートマチックトランスミッションである。トランスミッション3は、入力軸31を有する。入力軸31は、回転軸の一例である。トランスミッション3は、入力軸31に入力されたトルクを、例えば車輪に伝達することが可能である。
【0016】
トルクコンバータ2は、ポンプインペラ21と、タービンランナ22と、ステータホイール23と、ベアリング24と、ワンウェイクラッチ25とを備える。ポンプインペラ21は、ポンプの一例であり、例えば、回転体とも称され得る。タービンランナ22は、タービンの一例であり、例えば、回転体とも称され得る。ステータホイール23は、例えば、回転体又は固定体とも称され得る。
【0017】
ポンプインペラ21は、インペラハブ211と、フロントカバー212と、インペラシェル213と、複数のインペラブレード214と、インペラコア215とを有する。インペラハブ211、フロントカバー212、インペラシェル213、インペラブレード214、及びインペラコア215は、互いに固定され、回転中心Ax回りに一体的に回転可能である。
【0018】
フロントカバー212は、エンジン1のクランクシャフト11に接続される。クランクシャフト11が回転させられると、フロントカバー212は、クランクシャフト11と一体的に、図1に一点鎖線で示す回転中心Ax回りに回転する。言い換えると、フロントカバー212は、エンジン1からトルクを入力されることにより回転可能である。
【0019】
回転中心Axは、エンジン1のクランクシャフト11、ポンプインペラ21、タービンランナ22、ステータホイール23、及びトランスミッション3の入力軸31の回転の中心軸である。以下、回転中心Axに直交する方向を回転中心Axの径方向、回転中心Axに沿う方向を回転中心Axの軸方向、回転中心Ax回りに回転する方向を回転中心Axの周方向とそれぞれ称する。
【0020】
フロントカバー212は、壁部2121と、周壁2122とを有する。壁部2121は、インペラハブ211から、回転中心Axの径方向に延びる略円盤状の部分である。壁部2121の内周側の端部は、インペラハブ211に固定される。周壁2122は、壁部2121の外周側の端部から回転中心Axの軸方向に延びる略円筒状の部分である。
【0021】
インペラシェル213は、フロントカバー212の周壁2122に固定される。インペラシェル213は、フロントカバー212と共に作動油室216を形成する。作動油室216は、作動油を収容する。
【0022】
複数のインペラブレード214は、インペラシェル213の内面にそれぞれ固定される。複数のインペラブレード214は、互いに間隔を介して、回転中心Axの周方向に並ぶように配置される。
【0023】
インペラコア215は、円環状に形成され、複数のインペラブレード214の内側の端部に固定される。言い換えると、複数のインペラブレード214は、インペラコア215を、インペラシェル213から離間した位置に支持する。複数のインペラブレード214は、インペラシェル213とインペラコア215との間に複数の流路を形成する。
【0024】
タービンランナ22は、タービンシェル221と、複数のタービンブレード222と、タービンコア223と、タービンハブ224を有する。タービンシェル221、タービンブレード222、タービンコア223、及びタービンハブ224は、互いに固定され、回転中心Ax回りに一体的に回転可能である。
【0025】
タービンシェル221は、作動油室216の内部に配置され、円環状に形成される。複数のタービンブレード222は、タービンシェル221の内面にそれぞれ固定される。複数のタービンブレード222は、互いに間隔を介して、回転中心Axの周方向に並ぶように配置される。
【0026】
タービンコア223は、円環状に形成され、複数のタービンブレード222の内側の端部に固定される。言い換えると、複数のタービンブレード222は、タービンコア223を、タービンシェル221から離間した位置に支持する。複数のタービンブレード222は、タービンシェル221とタービンコア223との間に複数の流路を形成する。
【0027】
タービンハブ224は、リベット225によって、タービンシェル221の内周側の端部に固定される。タービンハブ224は、トランスミッション3の入力軸31に接続される。タービンハブ224は、入力軸31と一体的に、回転中心Ax回りに回転可能である。
【0028】
タービンハブ224の外周面に、ベアリング24が取り付けられる。ベアリング24は、タービンハブ224に対して相対的に回転可能に、インペラハブ211を支持する。すなわち、ポンプインペラ21とタービンランナ22とは、互いに相対的に回転可能である。
【0029】
ポンプインペラ21に形成された流路の外周側の端部は、タービンランナ22に形成された流路の外周側の端部に面する。ポンプインペラ21に形成された流路の内周側の端部と、タービンランナ22に形成された流路の内周側の端部との間に、ステータホイール23が配置される。言い換えると、ステータホイール23は、ポンプインペラ21とタービンランナ22との間に位置する。
【0030】
ステータホイール23は、アウターシェル231と、インナーコア232と、複数のステータブレード233とを有する。アウターシェル231は、第1の環状部分の一例であり、例えば内周部とも称され得る。インナーコア232は、第2の環状部分の一例であり、例えば外周部とも称され得る。複数のステータブレード233は、複数の羽根の一例であり、例えば壁とも称され得る。
【0031】
図2は、ステータホイール23の一部を、回転中心Axの軸方向から示す正面図である。アウターシェル231は、略円筒形状に形成される。インナーコア232は、アウターシェル231の外径よりも大きい内径を有する略円筒形状に形成される。インナーコア232は、アウターシェル231から回転中心Axの径方向に離間して配置され、アウターシェル231を囲む。
【0032】
複数のステータブレード233は、アウターシェル231とインナーコア232との間で、回転中心Axの径方向にそれぞれ延びる。ステータブレード233の内周側の端部は、アウターシェル231の外周面2311に接続される。ステータブレード233の外周側の端部は、インナーコア232の内周面2321に接続される。
【0033】
複数のステータブレード233は、回転中心Axの周方向に、互いに間隔を介して並ぶように設けられる。複数のステータブレード233は、アウターシェル231とインナーコア232との間に複数の流路を形成する。
【0034】
図1に示すように、ステータホイール23に形成された流路の一方の端部は、ポンプインペラ21に形成された流路の内周側の端部に面する。ステータホイール23に形成された流路の他方の端部は、タービンランナ22に形成された流路の内周側の端部に面する。
【0035】
ステータホイール23のアウターシェル231は、ワンウェイクラッチ25によって、例えば、固定軸に取り付けられる。当該固定軸は、例えば、トランスミッション3側から延び、入力軸31の外周面を覆う円筒状の軸である。
【0036】
ワンウェイクラッチ25は、ステータホイール23が、回転中心Ax回りの一方の回転方向に回転することを制限する。さらに、ワンウェイクラッチ25は、ステータホイール23が、回転中心Ax回りの他方の回転方向に回転することを許容する。このため、ステータホイール23は、ポンプインペラ21及びタービンランナ22に対して相対的に、回転中心Ax回りに回転可能である。
【0037】
トルクコンバータ2は、さらに、ロックアップクラッチ及びダンパのような他の部品を有しても良い。当該ロックアップクラッチは、ポンプインペラ21に対するタービンランナ22の相対的な回転を制限し、ポンプインペラ21からタービンランナ22に直接的にトルクを伝達させることが可能である。
【0038】
以下、ステータホイール23について詳しく説明する。図3は、ステータホイール23の一部を、図2のF3−F3線に沿って概略的に示す断面図である。図3に示すように、ステータブレード233は、回転中心Axの軸方向におけるアウターシェル231の一方の端部2312から、他方の端部2313まで、方向D1に沿って延びる。言い換えると、ステータブレード233は、アウターシェル231の一方の端部2312と他方の端部2313との間で、方向D1に沿って延びる。
【0039】
別の表現をすれば、図1に示すように、ステータブレード233は、回転中心Axの軸方向におけるインナーコア232の一方の端部2322から、他方の端部2323まで、方向D1に沿って延びる。なお、ステータブレード233は、アウターシェル231の端部2312,2313及びインナーコア232の端部2322,2323の少なくとも一つから離間しても良い。
【0040】
図3に示すように、方向D1は、回転中心Axの軸方向に対して傾斜した方向である。このような方向D1に沿って延びるステータブレード233は、回転中心Axの軸方向に向かうに従って回転中心Axの周方向の一方側に向かうように延びる。
【0041】
ステータブレード233は、正圧面2331と、負圧面2332とを有する。正圧面2331は、第1の面の一例であり、例えば、側面とも称され得る。負圧面2332は、第2の面の一例であり、例えば、側面とも称され得る。
【0042】
正圧面2331は、方向D1に延びるステータブレード233の一方の側面であり、タービンランナ22側(図3における下側)に位置する。別の表現をすれば、正圧面2331は、回転中心Axの周方向の一方側(図3における右側)に設けられる。
【0043】
負圧面2332は、方向D1に延びるステータブレード233の他方の側面であり、正圧面2331の反対側に位置する。負圧面2332は、ポンプインペラ21のインペラシェル213側(図3における上側)に位置する。別の表現をすれば、負圧面2332は、回転中心Axの周方向の他方側(図3における左側)に設けられる。
【0044】
図2に示すように、ステータブレード233は、第1の接続部分2333と、第2の接続部分2334と、第3の接続部分2335と、第4の接続部分2336とをさらに有する。第1乃至第4の接続部分2333〜2336は、例えば、継ぎ目、連結部、結合部、曲面部、及び曲率部とも称され得る。
【0045】
第1の接続部分2333は、ステータブレード233の正圧面2331と、アウターシェル231の外周面2311とが接続された部分である。第1の接続部分2333は、正圧面2331からアウターシェル231の外周面2311に連続する曲面状に形成される。
【0046】
第2の接続部分2334は、ステータブレード233の負圧面2332と、アウターシェル231の外周面2311とが接続された部分である。第2の接続部分2334は、負圧面2332からアウターシェル231の外周面2311に連続する曲面状に形成される。
【0047】
第3の接続部分2335は、ステータブレード233の正圧面2331と、インナーコア232の内周面2321とが接続された部分である。第3の接続部分2335は、正圧面2331からインナーコア232の内周面2321に連続する曲面状に形成される。
【0048】
第4の接続部分2336は、ステータブレード233の負圧面2332と、インナーコア232の内周面2321とが接続された部分である。第4の接続部分2336は、負圧面2332からインナーコア232の内周面2321に連続する曲面状に形成される。
【0049】
上記のようなステータホイール23は、例えば、回転中心Axの軸方向に金型を移動させるダイカスト方式によって作られる。このため、アウターシェル231と、インナーコア232と、ステータブレード233とは、一体的に作られる。なお、ステータホイール23は、他の方法によって作られても良い。
【0050】
上述のように、複数のステータブレード233は、回転中心Axの周方向に、互いに間隔を介して設けられる。言い換えると、複数のステータブレード233は、回転中心Axの軸方向において、互いに重なることを避けるように配置される。このため、回転中心Axの軸方向に金型を移動させることができる。図3に、二つの金型である固定型と可動型との分割線Sを二点鎖線で示す。分割線Sは、回転中心Axの周方向に隣接するステータブレード233の間に設けられる。
【0051】
図3に示すように、以下、回転中心Axの周方向における、ステータブレード233の配置が可能な長さをLw、ステータブレード233の長さをLb、第1の接続部分2333の長さをLc1、第2の接続部分2334の長さをLc2、第1の接続部分2333と分割線Sとの間の距離をLg1、第2の接続部分2334と分割線Sとの間の距離をLg2、とそれぞれ定義する。
【0052】
全てのステータブレード233が同一形状を有する場合、長さLwは、下記の(式1)のように示される。
Lw=2×π×r/n …(式1)
(式1)におけるrは、回転中心Axからステータブレード233までの距離である。例えば、アウターシェル231の外周面2311における長さLwを求めるためのrは、アウターシェル231の外周面2311の半径である。nは、ステータブレード233の数である。長さFwは、第1の環状部分の外周面の円周を羽根の数で除した長さ、の一例である。
【0053】
長さLbは、下記の(式2)のように表される。
Lb=Lw−((Lg1+Lg2)+(Lc1+Lc2)) …(式2)
長さLbは、回転中心の周方向における羽根の長さ、の一例である。(Lg1+Lg2)は、回転中心Axの周方向における、第1の接続部分2333と第2の接続部分2334との間の距離に等しい。
【0054】
図4は、ステータホイール23の一部を図3のF4−F4線に沿って示す断面図である。詳しく述べると、図4は、一つのステータブレード233の回転中心Axの周方向の一方側(図3における右側)の端部における、回転中心Axの軸方向と直交する仮想平面上の、ステータホイール23の断面を示す。図4は、説明のため、アウターシェル231の外周面2311とインナーコア232の内周面2321とを平坦に示す。
【0055】
図5は、ステータホイール23の一部を図3のF5−F5線に沿って示す断面図である。詳しく述べると、図5は、図4のステータブレード233に対して回転中心Axの周方向の一方側(図3における右側)に隣接する他のステータブレード233の、回転中心Axの周方向の他方側(図3における左側)の端部における、回転中心Axの軸方向と直交する仮想平面上の、ステータホイール23の断面を示す。図5も、説明のため、アウターシェル231の外周面2311とインナーコア232の内周面2321とを平坦に示す。
【0056】
図4に示すステータブレード233の端部における第1の接続部分2333の曲率半径は、図5に示すステータブレード233の端部における第2の接続部分2334の曲率半径よりも大きい。第1の接続部分2333の全体の曲率半径も、第2の接続部分2334の全体の曲率半径よりも大きい。なお、第1の接続部分2333の一部の曲率半径が、第2の接続部分2334の少なくとも一部の曲率半径と同じか、より小さくても良い。
【0057】
同様に、図4に示すステータブレード233の端部における第3の接続部分2335の曲率半径は、図5に示すステータブレード233の端部における第4の接続部分2336の曲率半径よりも大きい。第3の接続部分2335の全体の曲率半径も、第4の接続部分2336の全体の曲率半径よりも大きい。なお、第3の接続部分2335の一部の曲率半径が、第4の接続部分2336の少なくとも一部の曲率半径と同じか、より小さくても良い。
【0058】
以下、トルクコンバータ2の作用の一例について説明する。図1のエンジン1が始動すると、エンジン1から、クランクシャフト11を介して、トルクがポンプインペラ21のフロントカバー212に入力される。これにより、ポンプインペラ21が、クランクシャフト11と一体的に、回転中心Ax回りに回転する。
【0059】
ポンプインペラ21は、回転することで、作動油室216に収容された作動油を、ポンプインペラ21の流路に沿って流動させる。作動油は、ポンプインペラ21の流路の外周側の端部に向かって流動する。言い換えると、ポンプインペラ21は、インペラブレード214に沿って作動油を流動させる。
【0060】
作動油は、ポンプインペラ21の流路の外周側の端部から、タービンランナ22の流路の外周側の端部に流入し、タービンブレード222に圧力を作用させる。これにより、タービンランナ22が回転中心Ax回りに回転する。言い換えると、タービンランナ22は、流動する作動油を介して、回転するポンプインペラ21からトルクが入力されることにより回転する。タービンランナ22は、回転することで、トランスミッション3の入力軸31にトルクを出力する。
【0061】
作動油は、タービンランナ22の流路の内周側の端部から、ステータホイール23の流路の一方の端部に流入する。作動油は、ステータホイール23によって流動する方向を整えられ、ステータホイール23の流路の他方の端部から、ポンプインペラ21の流路の内周側の端部に流入する。このように、ポンプインペラ21、タービンランナ22、及びステータホイール23において、作動油が循環する。ステータホイール23が作動油の流動方向を整えることで、トルクコンバータ2は、エンジン1の動力を増幅させることができる。
【0062】
図6は、トルクコンバータ2の各性能の一例について示すグラフである。図6は、トルクコンバータ2の速度比eに対する、容量係数C、トルク比t、及び効率ηを示す。速度比eは、ポンプインペラ21の回転速度に対するタービンランナ22の回転速度を示す。容量係数Cは、下記の(式3)で表される。
C=Te/NE …(式3)
(式3)において、Teはポンプインペラ21に入力されるエンジン1の出力トルクを示し、NEはポンプインペラ21の回転速度を示す。トルク比tは、ポンプインペラ21に入力されたトルクに対するタービンランナ22が出力するトルクの割合を示す。
【0063】
図6における破線のグラフは、本実施形態のトルクコンバータ2の各性能の一例を示す。図6における実線のグラフは、比較例として示すトルクコンバータ(以下、比較例と称する)の各性能の一例を示す。
【0064】
比較例の第1の接続部分(2333)(以下、比較例の各要素は、区別のため括弧付きで示される)の曲率半径と第2の接続部分(2334)の曲率半径とは、本実施形態のトルクコンバータ2の第1の接続部分2333の曲率半径と等しい。さらに、比較例の第3の接続部分(2335)の曲率半径と第4の接続部分(2336)の曲率半径とは、本実施形態のトルクコンバータ2の第3の接続部分2335の曲率半径と等しい。すなわち、比較例の各接続部分の曲率半径は一定である。
【0065】
エンジン1が始動し、ポンプインペラ21が回転を開始する時点において、タービンランナ22は静止した状態(ストール状態)である。タービンランナ22がストール状態にあるとき、速度比eは0である。
【0066】
タービンランナ22は、ポンプインペラ21から作動油を介してトルクを入力されることにより、回転を開始する。ポンプインペラ21の回転速度とタービンランナ22の回転速度とが近づくに従って、速度比eが1に近づく。
【0067】
図7は、低速度比状態のステータホイール23の一部を概略的に示す断面図である。図7は、例えば、速度比eが0.0〜0.2である状態のステータホイール23の一部を示す。すなわち、低速度比状態は、ストール状態を含む。なお、低速度比状態の速度比eはこれに限らない。
【0068】
低速度比状態(ストール状態)において、タービンランナ22からポンプインペラ21に向かって流動する作動油は、図7に示す方向D2に向かって流れる。図7の矢印Fl1で示すように、作動油は、ステータホイール23の一方の端部から、ステータブレード233の間に形成された流路に流入し、ステータブレード233の正圧面2331に向かって流れる。さらに、作動油は、ステータブレード233の正圧面2331に沿って流れ、ステータホイール23の他方の端部から、ポンプインペラ21の流路に向かって流れる。
【0069】
作動油が上述のように流れるため、低速度状態(ストール状態)において、タービンランナ22からポンプインペラ21に向かって流動する作動油から負圧面2332が受ける圧力は、正圧面2331が受ける圧力よりも低い。
【0070】
ステータブレード233の間の流路において、ステータブレード233の負圧面2332の近傍では、図7の矢印Fl2で示す作動油の流れの剥離が生じることがある。作動油の流れの剥離の発生量は、図7に示す出口幅Ldに影響される。出口幅Ldは、ステータホイール23の流路の端部における、隣接するステータブレード233の間の距離である。
【0071】
図8は、高速度比状態のステータホイール23の一部を概略的に示す断面図である。図8は、例えば、速度比eが0.8〜1.0である状態のステータホイール23の一部を示す。なお、高速度比状態の速度比eはこれに限らない。
【0072】
タービンランナ22からポンプインペラ21に向かう作動油が流れる方向は、速度比eが増加するに従って変化する。高速度比状態において、タービンランナ22からポンプインペラ21に向かって流動する作動油は、図8に示す方向D3に向かって流れる。高速度比状態において作動油が流れる方向D3は、低速度比状態において作動油が流れる方向D2よりも、ステータブレード233が延びる方向D1に近い。
【0073】
作動油は、ステータホイール23の一方の端部から、ステータブレード233の間に形成された流路に流入し、例えば、ステータブレード233の負圧面2332に向かって流れる。さらに、作動油は、ステータブレード233の負圧面2332に沿って流れ、ステータホイール23の他方の端部から、ポンプインペラ21の流路に向かって流れる。なお、高速度比状態における作動油の流れはこれに限らない。
【0074】
作動油が負圧面2332を押すことで、ワンウェイクラッチ25に支持されたステータホイール23が、回転中心Ax回りに回転する。これにより、ポンプインペラ21、タービンランナ22、及びステータホイール23がそれぞれ回転し、ステータホイール23がポンプインペラ21の回転を抑えることが抑制される。
【0075】
容量係数Cの大きさは、図8に示す流路面積Arに影響される。流路面積Arは、ステータホイール23の流路の面積の平均値を示す。ステータホイール23の流路面積Arは、トルクコンバータ2の流路の面積の平均値Acに影響する。トルクコンバータ2の平均流路面積Acは、上述の(式3)から求められる下記の(式4)に示されるように、容量係数Cの大きさに影響する。
C=Te/NE
=(ρ×Q×(v×r−v×r))/NE
=(ρ×Ac×v×(v×r−v×r))/NE …(式4)
(式4)において、ρは作動油の密度を示し、Qはトルクコンバータ2の流路の流量を示し、vはポンプインペラ21の流路の出口における作動油の円周方向の流速を示し、rはポンプインペラ21の流路の出口における半径を示し、vはステータホイール23の流路の出口における作動油の円周方向の流速を示し、rはステータホイール23の流路の出口における半径を示し、vはトルクコンバータ2の流路における作動油の流速の平均値を示す。
【0076】
ここで、本実施形態のトルクコンバータ2と、比較例とを比較する。回転中心Axの周方向において、比較例の第1の接続部分(2333)の長さと、第2の接続部分(2334)の長さとは、図3に示す本実施形態のトルクコンバータ2の第1の接続部分2333の長さLc1に等しい。
【0077】
上記のような比較例のステータブレード(233)の長さ(Lb´)は、下記の(式5)のように表される。
Lb´=Lw−((Lg1+Lg2)+(Lc1+Lc2))
=Lw−((Lg1+Lg2)+(2×Lc1))…(式5)
比較例のステータブレード(233)の長さ(Lb´)は、第1の環状部分の外周面の円周を羽根の数で除した長さから、回転中心の周方向における第1の接続部分の長さの二倍の長さと、回転中心の周方向における第1の接続部分及び第2の接続部分の間の距離と、を減じた長さ、の一例である。
【0078】
回転中心Axの周方向における、本実施形態の第2の接続部分2334の長さLc2は、第1の接続部分2333の長さLc1よりも短い。このため、本実施形態のステータブレード233の長さLbは、比較例のステータブレード(233)の長さ(Lb´)よりも長い。このため、本実施形態のステータブレード233が延びる方向D1の、回転中心Axの軸方向に対する傾きは、比較例のステータブレード(233)が延びる方向(D1)の、回転中心Axの軸方向に対する傾きよりも大きい。
【0079】
上記のような本実施形態のステータホイール23において、図7に示す出口幅Ldは、比較例の出口幅(Ld)よりも狭くなる。ステータホイール23の流路における作動油の流れの剥離の発生量は、出口幅Ldが短くなるに従って低減される。このため、本実施形態のステータホイール23で生じる作動油の流れの剥離の発生量は、比較例のステータホイール(23)で生じる作動油の流れの剥離の発生量よりも少ない。従って、本実施形態のステータホイール23は、比較例よりも、作動油の運動エネルギーの損失が少ない。
【0080】
本実施形態のステータホイール23において、図8に示す流路面積Arは、比較例の流路面積(Ar)よりも広くなる。このため、図6に示すように、本実施形態のトルクコンバータ2の容量係数Cは、比較例の容量係数(C)よりも大きい。
【0081】
トルクTeの増加に対する回転速度NEの上昇の特性を最適なものとするために、トルクTeの大きい大排気量のエンジン1ほど容量係数Cが大きく設定され、逆にトルクTeの小さい小排気量のエンジン1ほど容量係数Cが小さく設定される。すなわち、本実施形態のトルクコンバータ2は、出力トルクのより大きいエンジン1に用いられることができる。
【0082】
上記実施の形態に係るトルクコンバータ2において、ステータブレード233の正圧面2331は、ストール状態においてタービンランナ22からポンプインペラ21に向かって流動する作動油から受ける圧力が負圧面2332よりも高い。一つのステータブレード233の回転中心Axの周方向の一方側の端部において、正圧面2331とアウターシェル231とが接続された部分である第1の接続部分2333の、回転中心Axの軸方向と直交する仮想平面上の曲率半径が、一つのステータブレード233に対して回転中心Axの周方向の一方側に隣接する他のステータブレード233の、回転中心Axの周方向の他方側の端部において、負圧面2332とアウターシェル231とが接続された部分である第2の接続部分2334の、回転中心Axの軸方向と直交する仮想平面上の曲率半径よりも大きい。
【0083】
上記のようなトルクコンバータ2は、例えば比較例に比べ、周方向におけるステータブレード233の間の間隔をより短くしつつ、作動油から正圧面2331に受ける圧力に対するステータブレード233の耐久性の低下を抑制することが可能となる。すなわち、作動油からより大きい圧力を受ける正圧面2331は、より大きい曲率半径を有する第1の接続部分2333によって補強される。一方、圧力を受けにくい負圧面2332の第2の接続部分2334の曲率半径をより小さく設定することで、周方向におけるステータブレード233の間隔をより短くすることが可能となる。
【0084】
さらに、周方向におけるステータブレード233の間の間隔が短縮可能であるため、周方向におけるステータブレード233の長さLbをより長くし、作動油の整流性及びステータホイール23の性能を向上させることが可能となる。また、ステータブレード233の数をより多くすることも可能となる。
【0085】
ステータブレード233とインナーコア232とが接続される部分においても、第3の接続部分2335の曲率半径が、第3の接続部分2336の曲率半径よりも大きい。これにより、周方向におけるステータブレード233の間の間隔をさらに短くしつつ、作動油から正圧面2331に受ける圧力に対するステータブレード233の耐久性の低下を抑制することが可能となる。
【0086】
加えて、周方向におけるステータブレード233の間の間隔が短縮可能であるため、周方向におけるステータブレード233の長さLbをさらに長くし、作動油の整流性及びステータホイール23の性能を向上させることが可能となる。
【0087】
回転中心Axの周方向におけるステータブレード233の長さLbは、アウターシェル231の外周面2311の円周をステータブレード233の数で除した長さから、回転中心Axの周方向における第1の接続部分2333の長さの二倍の長さと、回転中心Axの周方向における第1の接続部分2333及び第2の接続部分2334の間の距離と、を減じた長さ(Lb´)よりも長い。すなわち、周方向におけるステータブレード233の長さLbは、第1の接続部分2333の曲率半径と第2の接続部分2334の曲率半径とが同一の場合のステータブレード233の長さ(Lb´)よりも長い。これにより、作動油の整流性及びステータホイール23の性能を向上させることが可能となる。
【0088】
上述の本発明の実施形態は、発明の範囲を限定するものではなく、発明の範囲に含まれる一例に過ぎない。本発明のある実施形態は、上述の実施形態に対して、例えば、具体的な用途、構造、形状、作用、及び効果の少なくとも一部について、発明の要旨を逸脱しない範囲において変更、省略、及び追加がされたものであっても良い。
【0089】
例えば、上記実施形態において、第1の接続部分2333の曲率半径が第2の接続部分2334の曲率半径よりも大きく、且つ、第3の接続部分2335の曲率半径が第4の接続部分2336の曲率半径よりも大きい。しかし、第1の接続部分2333の曲率半径が第2の接続部分2334の曲率半径よりも大きい場合、第3及び第4の接続部分2335,2336の曲率半径が同じであっても良い。この場合、アウターシェル231が第1の環状部分の一例であり、インナーコア232が第2の環状部分の一例である。また、第3の接続部分2335の曲率半径が第4の接続部分2336の曲率半径よりも大きい場合、第1及び第2の接続部分2333,2334の曲率半径が同じであっても良い。この場合、アウターシェル231が第2の環状部分の一例であり、インナーコア232が第1の環状部分の一例である。
【符号の説明】
【0090】
1…エンジン、2…トルクコンバータ、21…ポンプインペラ、22…タービンランナ、23…ステータホイール、231…アウターシェル、232…インナーコア、233…ステータブレード、2331…正圧面、2332…負圧面、2333…第1の接続部分、2334…第2の接続部分、2335…第3の接続部分、2336…第4の接続部分、31…入力軸、Ax…回転中心。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8