(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476917
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 51/02 20060101AFI20190225BHJP
【FI】
B65G51/02 D
B65G51/02 G
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-14196(P2015-14196)
(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-137974(P2016-137974A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】泉原 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】河田 勝幸
【審査官】
井上 信
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭47−10096(JP,Y1)
【文献】
米国特許第4178662(US,A)
【文献】
特開2001−199540(JP,A)
【文献】
実開昭59−170518(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を搬送する搬送装置であって、圧縮空気を動力源として空気の吸込み及び吐出を行うエアガンと、エアガンの空気吐出側に設置される搬送路とを備え、
前記搬送路は、複数の線条部材を断面略円形となるように配列することにより周囲が開放された略筒状の空間として形成され、
搬送装置の入り口と対向する位置に搬送物が移動したタイミングで、これを検知してエアガンをオンすることで、前記搬送物は、前記エアガンの吸込みによる慣性力により、前記線条部材で囲まれる空間内を線条部材の長手方向に沿って移送され、
前記搬送路はU字形状となるように曲げられており、前記搬送物は、前記移送に伴って上下反転されることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の搬送装置の入り口側に第1のターンテーブルが配置されるとともに、前記搬送装置の出口側に第2のターンテーブルが配置され、
前記搬送物は、第1のターンテーブルの回転に伴って周方向に移動し、搬送装置の設置位置まで移送され、搬送装置によって第2のターンテーブルへと移送されることを特徴とする搬送物の製造ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器等の搬送物を搬送するための搬送装置に関するものであり、特に、搬送路を開放空間として形成し、搬送物を慣性力で移送するようにした新規な搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器の成形においては、成形機による成形の後、バリ取り工程や検査工程等を行う必要があり、成形されたプラスチック容器を搬送しながら、これらの工程を順次行うことが広く行われている。例えば、ブロー成形されたプラスチック容器は、口部のバリ取りの後、寸法の検査等を行い、内容物の充填工程へと搬出される。
【0003】
成形したプラスチック容器の搬送装置としては、多用なものが開発されており、例えば特許文献1には、容器の上方部を支持案内しながら搬送するエア搬送コンベヤを備えた軽量容器用搬送コンベヤ装置が開示されている。特許文献1に記載される軽量容器用搬送コンベヤ装置で、直立の姿勢を保持したままエアの噴流による推進力によってプラスチック容器を搬送するものであり、軽量の容器を安定に搬送できるという利点を有する。
【0004】
ただし、特許文献1に記載される搬送コンベヤ装置のように容器の上方部を支持案内しながら搬送する方式のものでは、プラスチック容器を例えば上下反転移送することができず、上下反転を要する搬送には適用することができないという問題がある。
【0005】
このような状況から、エアシューターと呼ばれる搬送装置が提案されており、多様な搬送形態に対応可能となっている。エアシューターは、プラスチック容器等を密閉搬送路内で気流にのせて搬送するものであり、上下反転等も可能である(例えば、特許文献2や特許文献3を参照)。
【0006】
特許文献2に記載される搬送装置は、エアーシューターや搬入部、搬出部を備えたものであり、エアーシューターに方向転換部分を設けることにより、カップ状容器を円滑に反転移送できるようにしたものである。特許文献3に記載されるペットボトル搬送装置は、輸送管に送風機から輸送空気を送り込むことによってペットボトルを搬送するようにしたものであり、輸送管を屈曲部を含む任意の経路に沿って配置することができる、という特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2799107号公報
【特許文献2】実公昭63−20648号公報
【特許文献3】特開平11−240620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述の特許文献2や特許文献3に開示されるエアーシューター(輸送管)は、いずれも密閉空間内に空気を送り込み、気流によって容器やボトルを搬送する、というのが基本的な考えである。この場合、搬送される容器やボトルの着地点にも気流が到達し、軽量なプラスチック容器が転倒する等、安定して搬送する搬送系を構築することが難しいという問題がある。
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、搬送物であるプラスチック容器の着地点に気流が到達することがなく、軽量のプラスチック容器であっても転倒等の支障をきたすことなく安定した搬送を実現することが可能な搬送装置を提供することを目的とする。また、上下反転等、自由に搬送経路を構築することが可能な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために、本発明の搬送装置は、搬送物を搬送する搬送装置であって、圧縮空気を動力源として空気の吸込み及び吐出を行うエアガンと、エアガンの空気吐出側に設置される搬送路とを備え、前記搬送路は、複数の線条部材を断面略円形となるように配列することにより周囲が開放された略筒状の空間として形成され、
搬送装置の入り口と対向する位置に搬送物が移動したタイミングで、これを検知してエアガンをオンすることで、前記搬送物は、前記エアガンの吸込みによる慣性力により、前記線条部材で囲まれる空間内を線条部材の長手方向に沿って
移送され、前記搬送路はU字形状となるように曲げられており、前記搬送物は、前記移送に伴って上下反転されることを特徴とする。
【0011】
本発明の搬送装置では、搬送路が密閉された空間ではなく、線条部材を円周上に配列することにより構成された開放された空間となっている。この開放された空間を、搬送物は慣性力によって移動する。したがって、エアガンで発生した空気流は、搬送路外へ逃げ、搬送物の着地点には到達しない。したがって、軽量なプラスチック容器であっても、気流の影響で転倒する等の不具合が生ずることがなく、安定した搬送が実現される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の搬送装置によれば、搬送物の着地点に気流が到達することがなく、軽量のプラスチック容器であっても転倒等の支障をきたすことなく安定した搬送を実現することが可能である。また、搬送路を構成する線状部材を屈曲させること等により、搬送路を自由に設計することができ、搬送に伴って搬送物を上下反転することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】プラスチック容器の製造ラインの一例を模式的に示す側面図である。
【
図2】
図1に示すプラスチック容器の製造ラインの平面図である。
【
図4】搬送路の一部を拡大して示す要部概略斜視図である。
【
図5】搬送路における線状部材の配列状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した搬送装置の実施形態について、これを組み込んだプラスチック容器の製造ラインを例にして、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、搬送物はプラスチック容器ということになる。
【0015】
本実施形態の製造ラインは、
図1及び
図2に示すように、第1のターンテーブル1及び第2ターンテーブル2、成形されたプラスチック容器10を第1のターンテーブル1に供給するシューター3、プラスチック容器10を第1のターンテーブル1から第2のターンテーブル2へと搬送する搬送装置4、プラスチック容器10を第2のターンテーブル2から次工程へと搬送するコンベア5から構成されている。
【0016】
シューター3は、例えばアクリル樹脂等の透明樹脂からなる筒状体であり、この中をブロー成形機等で成形されたプラスチック容器10が落下する。シューター3を落下するプラスチック容器10は、上下反転された状態であり、口部11側を下にしてシューター3内を落下する。なお、この時点(成形直後)では、プラスチック容器10の口部11の先にバリ12が残存した状態である。
【0017】
第1のターンテーブル1は、外周に沿ってボトルホルダ21が円周上に等角度間隔で設置されており、これらボトルホルダ21が順次シューター3の底部と対向するように回転される。シューター3を次々に落下してくるプラスチック容器10は、口部11を下にしたまま回転する第1のターンテーブル1のボトルホルダ21に順次収容される。
【0018】
第1のターンテーブル1のボトルホルダ21に収容された各プラスチック容器10は、第1のターンテーブル1の回転に伴って次の搬送装置4に対応する位置に到達するまでの間に、バリ取りが行われる。バリ取りは、第1のターンテーブル1の下方位置において、切断刃22をプラスチック容器10の成形されたプラスチック容器10を口部11とバリ12の間に押し当て、バリ12をプラスチック容器10から切断除去する。第1のターンテーブル1では、前記バリ取りを行うために、プラスチック容器10の口部11が下になるように上下反転した状態でボトルホルダ21に収容することが好ましい。
【0019】
バリ取りを行ったプラスチック容器10は、第1のターンテーブル1の回転に伴って周方向に移動し、搬送装置4の設置位置まで移送され、搬送装置4によって第2のターンテーブル2へと移送される。
【0020】
搬送装置4は、シューター3と同様、筒状の空間を搬送路とし、プラスチック容器10を搬送するものであるが、本実施形態の搬送装置4では、搬送路が密閉された空間ではなく、線条部材を円周上に配列することにより構成された開放された空間となっており、この開放された空間をプラスチック容器10が慣性力によって移動することが特徴事項である。以下、搬送装置4の構成について詳述する。
【0021】
本実施形態の搬送装置4は、圧縮空気を動力源として空気の吸込み及び吐出を行うエアガン31と、エアガンの空気吐出側に設置される搬送路32とを備えており、エアガン31における空気の吸い込みよりプラスチック容器10を吸い上げ、搬送路32内を移送させるものである。
【0022】
円筒状のエアガン31は、
図3に示すように、その中途部に圧縮空気の導入部31aが設けられ、ここから圧縮空気を導入することで、一方の端部31bから気流が吐出され、他方の端部31cから外気が吸い込まれる。エアガン31としては、市販のものが使用可能であり、例えばオオサワ社製の商品名ワンダーガン等が好適である。
【0023】
前記エアガン31は、搬送路32の入口側の端部(第1のターンテーブル1側の端部)32aに設置され、前記外気吸い込み側の端部31cを第1のターンテーブル1により移送されたプラスチック容器10に向け、気流吐出側の端部31bを搬送路32側に向けて設置されている。こうすることにより、第1のターンテーブル1上のプラスチック容器10を吸い込み、搬送路32へと送り出すことが可能となる。
【0024】
一方、前記搬送路32は、
図4及び
図5に示すように、複数の線条部材33を断面略円形となるように配列することにより周囲が開放された略筒状の空間として形成されている。線状部材33は、例えばステンレス製のシャフト33aの周囲に鞘状のプラスチック管33bを配したものであり、プラスチック管33bには、屈曲を容易にするために、所定の間隔で切れ込みを入れてもよい。
【0025】
本実施形態の場合、搬送路32は、8本の線条部材33から構成され、
図5に示すように、これら線条部材33を円周上に等角度間隔で配列することにより構成されている。したがって、これら線条部材33によって囲まれる空間は、筒状の空間であるが、密閉されておらず、線条部材33間において開放されている。なお、各線条部材33は、前記配列状態を保つために、リング状部材33dによって固定されている。なお、リング状部材33dは、線条部材33の長手方向において、所定の間隔で複数設けられている。
【0026】
また、前記搬送装置4において、前記搬送路32はU字形状となるように曲げられてアーチ状の経路として構成されており、一方の端部32aが第1のターンテーブル1上に、他方の端部32bが第2のターンテーブル2上に位置するように設置されている。したがって、搬送装置4により移送されるプラスチック容器10は、第1のターンテーブル1から第2のターンテーブル2への移送に伴って、上下反転されることになる。
【0027】
以上のような構成を有する搬送装置4においては、第1のターンテーブル1上のプラスチック容器10は、エアガン31の端部31cにおける吸い込み力によって吸い込まれ、吐出側の端部31bから空気流とともに搬送路32へと送り込まれる。搬送路32では、エアガン31の吐出側の端部31bから吐出された空気流は、線条部材33間の隙間から搬送路32外へと逃げ、搬送路32におけるプラスチック容器10の着地点である端部32bに到達することはない。したがって、第2のターンテーブル2に着地したプラスチック容器10が気流の影響で転倒することはない。
【0028】
プラスチック容器10は、エアガン31の外気吸い込み側の端部31cの吸い込み力、及び気流吐出側の端部31bにおける空気吐出力により搬送路32に送り込まれるが、その後は前記吸い込み力及び空気吐出力によって付与された慣性力により搬送路32内を線条部材33の長手方向に沿って移動し、第2のターンテーブル2へと反転移送される。
【0029】
本実施形態では、第1のターンテーブル1の搬送装置4の入り口近傍にセンサ23が設置されており、搬送装置4の入り口と対向する位置にプラスチック容器10が移動したタイミングで、これを検知してエアガン31をオンし、端部31cから吸い込むように設定されている。
【0030】
第2のターンテーブル2には、外周縁に沿って製品ガイド41が設けられており、搬送装置4によって移送されたプラスチック容器10は、この製品ガイド41に収容されて回転移動する。第2のターンテーブル2では、例えば位置Xにおいてプラスチック容器10の高さチェック等が行われ、検査済みのものがコンベア5によって次の工程(例えば内容物の充填工程)へと運ばれる。
【0031】
以上のように構成される本実施形態の製造ラインでは、ブロー成形等により成形されたプラスチック容器10がシューター3内を落下することにより第1のターンテーブル1へと移送され、ここでバリ取りが行われる。次いで、バリ取り後のプラスチック容器10は、第1のターンテーブル1の回転により搬送装置4と対向する位置まで移動し、搬送装置4のエアガン31により付与された慣性力により搬送路32を移動する。搬送装置4により搬送されたプラスチック容器10は、第2のターンテーブル2に着地し、検査工程等を経て、コンベア5から次工程へと送り出される。
【0032】
搬送装置4では、プラスチック容器10の着地点に気流が到達することがなく、軽量のプラスチック容器10であっても転倒等の支障をきたすことなく安定した搬送を実現される。また、搬送路32は、線状部材33を屈曲させること等により、アーチ状等、自由に設計することができる。
【0033】
以上、本発明を適用した実施形態についてを説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 第1のターンテーブル
2 第2のターンテーブル
3 シューター
4 搬送装置
5 コンベア
10 プラスチック容器(搬送物)
11 口部
12 バリ
21 ボトルホルダ
22 切断刃
31 エアガン
31b 外気吸い込み側の端部
31c 気流吐出側の端部
32 搬送路
33 線条部材