(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、自動巻線および小型化が可能で、銅損が小さく高結合なコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
磁性コアと、ボビンと、前記ボビンの外周に装着してあるコイルとを有するコイル装置であって、
前記コイルが、前記コイルの巻回軸に沿って、第1コイル部と、第2コイル部と、これらの第1コイル部と第2コイル部との間に位置する中間コイル部とを有し、
前記巻回筒部の外周には、前記第1コイル部と前記中間コイル部とを仕切る第1巻回隔壁鍔と、前記第2コイル部と前記中間コイル部とを仕切る第2巻回隔壁鍔と、が少なくとも形成してあり、
前記第1巻回隔壁鍔と第2巻回隔壁鍔部とには、前記第1コイル部と前記第2コイル部とを前記巻回軸に沿って連絡する切り欠き部が形成してあり、
前記切り欠き部に対応する位置で、ボビン補助部が前記ボビンに装着してあり、
前記ボビン補助部は、
前記中間コイル部を構成する中間ワイヤの周方向一部が巻回される中間部分筒と、
前記中間部分筒の内周側に形成され、前記第1コイル部と前記第2コイル部とを共通ワイヤで形成するためのワイヤ連通路と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るコイル装置では、中間コイル部を、第1コイル部と第2コイル部とで挟む構造である。そのため、中間コイル部を一次コイルとし、第1コイル部と第2コイル部とを二次コイルとすること、または、中間コイル部を二次コイルとし、第1コイル部と第2コイル部とを一次コイルとすることが可能になる。そのため、これらのコイル間の結合を高くすることができ、たとえば車載用リーケージトランスなどとしても好適に用いることができる高結合なコイル装置を実現することができる。
【0009】
また、中間部分筒のワイヤ連通路を通して、第1コイル部と第2コイル部とが共通ワイヤで連続して形成してあるため、ワイヤ長が短くなり、銅損を小さくすることができる。銅損を小さくできれば、効率が向上し、発熱も低減することができる。また、放熱性が悪い空中配線部分が少なく(短く)なることから、放熱性が向上すると共に、装置の小型化が可能になる。さらに、コイル部はもちろんのこと、第1コイル部と第2コイル部とを連絡するワイヤの一部においても、ワイヤは、ボビンまたはボビン補助部に接触することになり、ワイヤの熱は積極的にボビンから放熱させ、装置全体を冷却することができる。
【0010】
さらに、第1コイル部と第2コイル部とを共通ワイヤで連続して形成した後、ボビン補助部を切り欠き部に取り付け、第1巻回隔壁鍔と第2巻回隔壁鍔部との間に位置する中間部分筒および巻回筒部の外周に、中間ワイヤを巻回すれば、中間コイル部が得られる。したがって、第1コイル部および第2コイル部を構成する共通ワイヤの巻線作業のみでなく、中間コイル部を構成する中間ワイヤの巻線作業の自動化も容易になる。また、最低、二つのワイヤのみを用いて巻線作業を行うため、自動巻線機での巻線作業も容易である。
【0011】
また、第1コイル部と中間コイル部とは、第1巻回隔壁鍔により絶縁することができ、第2コイル部と中間コイル部とは、第2巻回隔壁鍔により効果的に絶縁することができ、耐電圧特性にも優れている。さらに、ボビン補助部の中間部分筒を用いて、第1コイル部および第2コイル部を連絡する共通ワイヤの一部を、中間コイル部を構成する中間ワイヤから効果的に絶縁することができる。
【0012】
好ましくは、前記ボビン補助部は、
前記切り欠き部において前記第1巻回隔壁鍔の補助となる第1巻回隔壁部分鍔と、
前記切り欠き部において前記第2巻回隔壁鍔の補助となる第2巻回隔壁部分鍔と、をさらに有する。
【0013】
これらの部分鍔を有することで、第1コイル部と中間コイル部との絶縁と、第2コイル部と中間コイル部との絶縁とが向上する。
【0014】
好ましくは、前記巻軸方向に沿って前記第1巻回隔壁鍔と前記第2巻回隔壁鍔との間には、中間巻回隔壁鍔が前記ボビンの外周に形成してあり、
前記中間巻回隔壁鍔は、前記切り欠き部において、切り欠かれている。
【0015】
中間巻回隔壁鍔を形成することで、巻回軸に沿って中間コイル部を分離することが可能になる。なお、中間巻回隔壁鍔が切り欠き部において切り欠かれているのは、ボビン補助部を切り欠き部に取り付けるためである。また、中間巻回隔壁鍔は、第1コイル部または第2コイル部にも具備させても良い。中間巻回隔壁鍔を設けることで、コイル装置の耐電圧特性がさらに向上する。
【0016】
さらに、本発明に係るコイル装置では、設置面が巻軸に対して垂直な縦型コイル装置として構成することが容易であり、設置面の小型化に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0019】
第1実施形態
図1および
図2A〜
図2Eに示すように、本実施形態に係るコイル装置としてのトランス10は、たとえば車載用の高結合トランスやリーケージトランスなどとして用いられる。このトランス10は、ボビン20と、ボビン20に巻回してあるコイル300(
図2B参照)と、磁性コア40と、絶縁カバー50とを有する。このトランス10は、たとえば図示省略してある筐体の上表面に取り付けられ、設置面が巻軸(Z軸)に対して垂直な縦型コイル装置である。筺体は、たとえばトランス10が取り付けられる板状部材であり、自動車部品の一つであっても良く、その背面(トランス10の取付面とは反対側)には、冷却水が流れていても良い。
【0020】
図3に示すように、ボビン20は、ボビン本体24と、ボビン本体24のX軸方向の両端上部に一体に成形してある端子台部22,23とを有する。端子台部22および23には、それぞれY軸方向の両端に、リード取付部22a,22bおよび23a,23bが形成してある。リード取付部22a,22bには、端子金具38a1,38b1がそれぞれ取り付けられ、それぞれに中間ワイヤ38の両端に形成してあるリード部38a,38bが接続される。リード取付部23a,23bには、端子金具37a1,37b1がそれぞれ取り付けられ、それぞれに共通ワイヤ37の両端に形成してあるリード部37a,37bが接続される。
【0021】
共通ワイヤ37は、第1コイル部301と第2コイル部302を構成し、中間ワイヤ38は、中間コイル部303を構成する。第1コイル部301と第2コイル部302と中間コイル部303とで、コイル300を構成しており、Z軸方向に沿って、中間コイル部303が第1コイル部301と第2コイル部302とで挟まれている。これらの共通ワイヤ37および中間ワイヤ38と、第1コイル部301と第2コイル部302と中間コイル部303との関係については後述する。
【0022】
図3に示すように、本実施形態では、磁性コア40は、上部コア40aと、下部コア40bとを有する。これらのコア40a,40bは、本実施形態では、同じ形状であり、Z−Y断面で断面E字形状を有し、いわゆるE型コアを構成する。
【0023】
Z軸方向の上側に配置される上部コア40aは、Y軸方向に延びるベース部44aと、ベース部44aのY軸方向の両端からZ軸方向に突出している一対の側脚部48aと、これらの側脚部48aの間でY軸方向の中央からZ軸方向に突出する中脚部46aとを有する。Z軸方向の下側に配置される下部コア40bは、Y軸方向に延びるベース部44bと、ベース部44bのY軸方向の両端からZ軸方向に突出している一対の側脚部48bと、これらの側脚部48bの間でY軸方向の中央からZ軸方向に突出する中脚部46bとを有する。
【0024】
中脚部46aは、ボビン20のコア脚用貫通孔26の内部にZ軸方向の上方から挿入されるようになっている。同様に、中脚部46bは、ボビン20のコア脚用貫通孔26の内部にZ軸方向の下方から挿入され、貫通孔26の内部において、それらの先端は、中脚部46aの先端に接触または所定のギャップで向き合うように構成してある。
【0025】
中脚部
46aおよび中脚部
46bは、貫通孔26の内周面形状に一致するように、円柱形状を有しているが、その形状は、特に限定されず、貫通孔26の形状に合わせて変化させても良い。また、側脚部48a,48bは、ボビン本体24の外周面形状に合わせた内側凹曲面形状を有し、その外面は、X−Z平面に平行な平面を有している。本実施形態では、各コア40a,40bの材質は、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。
【0026】
側脚部48a,48bの内周面とボビン本体24の外周面との間には、それぞれ絶縁カバー50が配置してある。カバー50のカバー本体52は、ボビン20における端子台22および23の間に位置するボビン本体24の外周を覆うような形状を有する。カバー本体52のZ軸方向の両端には、カバー本体52からボビン本体24に向けて略垂直方向に折り曲げられてる係止片54が一体成形してある。カバー本体52のZ軸方向の両側に形成してある一対の係止片54は、ボビン本体24のZ軸方向の上下面を挟み込むように取り付けられる。
【0027】
また、カバー本体52のX軸方向の両端外面には、それぞれZ軸方向に延びる側脚ガイド片56が一体に成形してある。一対の側脚ガイド片56の間に位置するカバー本体52の外面には、側脚部48a,48bの内面が接触し、側脚部48a,48bのX軸方向の移動が、一対の側脚ガイド片56により制限されるようになっている。これらのカバー50は、ボビン20と同様なプラスチックなどの絶縁部材で構成してある。
【0028】
さらに本実施形態のトランス10は、ボビン補助部200を有する。ボビン補助部200は、ボビン20と同様な、または異なるプラスチックなどの絶縁部材で構成してある。ボビン補助部200は、ボビン20とは別に成形されて、共通ワイヤ37がボビン20に巻回された後に、ボビン20の周方向の一部に取り付けられる。ボビン補助部200の詳細については、後述する。
【0029】
なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸は、第1コイル部301、第2コイル部302および中間コイル部303を形成するための共通ワイヤ37および中間ワイヤ38の巻軸と一致し、トランス10の高さ(厚み)に対応する。本実施形態では、トランス10のZ軸方向の下方が、トランスの設置面(筐体の表面)となる。また、Y軸は、ベース部44a,44bの長手方向に一致する。さらに、X軸は、ボビン20の長手方向に一致するようになっている。
【0030】
図5Bに示すように、本実施形態のトランス10におけるボビン20の巻回筒部28のZ軸方向の両端には、端部隔壁鍔31および32が半径方向の外方に延びるように、X−Y平面に略平行に一体成形してある。端部隔壁鍔31および32のZ軸方向の間に位置する巻回筒部28の外周面には、巻回隔壁鍔33〜36が径方向外方に突出するように、Z軸方向に所定間隔で形成してある。
【0031】
これらの端部隔壁鍔31および32の間に形成された巻回隔壁鍔33〜36により、これらの隔壁鍔の間には、Z軸方向の下から順に、巻回区画S1〜S5が形成される。なお、巻回隔壁鍔33〜36および巻回区画S1〜S5の数は、特に限定されない。
【0032】
本実施形態では、巻回区画S1,S2に、共通ワイヤ37が連続して巻回してあり、区画S3およびS4に、中間ワイヤ38が連続して巻回してある。また、区画S5には、巻回区画S1,S2に巻回してある共通ワイヤ37と同じものが巻回してある。本実施形態では、共通ワイヤ37が一次コイルを構成し、中間ワイヤ38が二次コイルを構成するが、逆であっても良い。
【0033】
また、本実施形態では、
図6Aおよび
図6Bに示すように、巻回隔壁鍔33には、隣接する各区画S1およびS2相互を連絡する少なくとも1の連絡溝33aが形成してある。連絡溝33aを通して、区画S1に巻回してある共通ワイヤ37が区画S2に通され、この区画S2でボビン20の巻回筒部28の外周に巻回可能になっている。
【0034】
また、巻回隔壁鍔35には、隣接する各区画S3およびS4相互を連絡する少なくとも1の連絡溝35aが形成してある。この連絡溝35aを通して、区画S3に巻回してある中間ワイヤ38が区画S4に通され、この区画S4でボビン20の巻回筒部28の外周に巻回可能になっている。本実施形態では、第1コイル部301を構成する共通ワイヤ37のための連絡溝33aと、中間コイル部を構成する中間ワイヤ38のための連絡溝35aとは、X軸方向の相互に反対側に形成してあることが好ましい。
【0035】
なお、本実施形態では、巻回隔壁鍔部34が、第1コイル部301と中間コイル部303とをZ軸方向に仕切る第1巻回隔壁鍔に対応し、巻回隔壁鍔部36が、第2コイル部302と中間コイル部303とをZ軸方向に仕切る第2巻回隔壁鍔に対応する。巻回隔壁鍔部34および巻回隔壁鍔部36に関しては、共通ワイヤ37と中間ワイヤ38とを絶縁するために、前述したような連絡溝は形成する必要がない。
【0036】
しかしながら、本実施形態では、
図6Bに示すように、第1コイル部301を構成する共通ワイヤ37を、第2コイル部302を構成する共通ワイヤ37と連続させる必要がある。そのために、共通ワイヤ37の一部37c(コイル301および302の内周側)を通すための切り欠き部34a,36aが、巻回隔壁鍔部34および36の周方向の一部に形成してある。
【0037】
図7Aおよび
図7Bに示すように、切り欠き部34aは、ボビン20の巻回筒部28の外周面位置まで到達する深さであることが好ましい。切り欠き部36aに関しても同様である。共通ワイヤ37の一部37cを、巻回筒部28の外周面近くでZ軸方向に通すためである。
【0038】
また、
図7A〜
図7Eに示すように、これらの切り欠き部34a,36aが形成されている周方向位置で、巻回隔壁鍔部34と36の間に位置する巻回隔壁鍔部35には、
図4に示すボビン補助部200の周方向幅に対応する幅で、切り欠き部35bが形成してあり、そこに、ボビン補助部200が装着可能になっている。
【0039】
図4に示すように、ボビン補助部200は、円筒の一部を構成する中間部分筒202と、そのZ軸方向の両端にX−Y軸平面で平行に形成してある部分鍔204および206と、中間部分筒202の周方向の中央部に形成してあり、Z軸方向に伸びる凹状のワイヤ通路208とを有する。凹状のワイヤ通路208は、部分鍔204および206が中間部分筒202から広がっている方向に凹んでいる。一方の部分鍔204が第1巻回隔壁部分鍔に対応し、他方の部分鍔206が第2巻回隔壁部分鍔に対応する。
【0040】
図4、
図6Aおよび
図6Bに示すように、ボビン補助部200は、中間コイル部303を構成する中間ワイヤ38の周方向一部が巻回される中間部分筒202を有する。
図7Aに示すように、中間部分筒202の内周面は、ボビン20の巻回筒部28の外周面に密着可能になっている。
【0041】
ただし、
図6Aおよび
図6Bに示すように、第1コイル部301と第2コイル部302とを単一の共通ワイヤ37で形成するために、共通ワイヤ37の一部37cが挿通可能な凹状のワイヤ連通路208が、
図4に示す中間部分筒202の内周面に形成してある。
【0042】
図6Bおよび
図7Bに示すように、巻回隔壁鍔部34のZ軸方向の上側表面には、切り欠き部34aが形成されている周方向位置で、Z軸方向に貫通しないザグリ面34bが形成してある。ザグリ面34bには、ボビン補助部200の部分鍔部204がX軸方向からスライド装着可能になっている。
【0043】
また同様に、
図6Bおよび
図7Dに示すように、巻回隔壁鍔部36のZ軸方向の下側表面には、切り欠き部36aが形成されている周方向位置で、Z軸方向に貫通しないザグリ面36bが形成してある。ザグリ面36bには、ボビン補助部200の部分鍔部206がX軸方向からスライド装着可能になっている。
【0044】
図5Bに示すように、第1コイル部301を構成する共通ワイヤ37が巻回される各区画S1,S2におけるZ軸に沿っての区画幅T1は、Z軸方向に2本の共通ワイヤ37が入り込める幅に設定してある。ただし、区画幅T1は、1本または3本以上の共通ワイヤ37が入り込める幅に設定してもよい。また、本実施形態では、区画幅T1は、全て同じであることが好ましいが、多少異なっていても良い。
【0045】
また、第2コイル部302を構成する共通ワイヤ37が巻回される区画S5におけるZ軸に沿っての区画幅T2は、Z軸方向に1本の共通ワイヤ37が入り込める幅に設定してある。ただし、区画幅T2は、2本以上の共通ワイヤ37が入り込める幅に設定してもよい。また、本実施形態では、区画幅T2は、区画幅T1と異ならせてあるが、同じであってもよい。
【0046】
また、中間コイル部303を構成する中間ワイヤ38が巻回される各区画S3およびS4におけるZ軸に沿っての区画幅T3は、Z軸方向に2本の中間ワイヤ38が入り込める幅に設定してあり、各区画毎に、ワイヤ巻回部分相互を分離可能になっている。本実施形態では、各区画S3およびS4におけるZ軸に沿っての区画幅T3は、中間ワイヤ38の線径に合わせて、区画幅T1と同じでも異なっていても良い。
【0047】
また、隔壁鍔31〜36の高さ(巻軸に対して半径方向の長さ)H1は、1本(1層以上)以上のワイヤ37または38が入り込める高さに設定してあり、本実施形態では、好ましくは2〜8層のワイヤが巻回できる高さに設定してある。各隔壁鍔31〜36の高さH1は、全て同じであることが好ましいが、異なっていても良い。本実施形態では、各区画S1〜S5に巻回されるワイヤ37または38の巻回方法は、特に限定されず、通常巻でもα巻でも良い。
【0048】
ワイヤ37および38は、単線で構成されても良く、あるいは撚り線で構成されても良く、絶縁被覆導線で構成されることが好ましい。ワイヤ37および38の外径は、特に限定されないが、大電流を流す場合には、たとえばφ1.0〜φ3.0mmが好ましい。中間ワイヤ38は、共通ワイヤ37と同じであっても良いが、異なっていても良い。
【0049】
図3に示すように、Z軸方向の最下部に位置する端部隔壁鍔31のX軸方向の両端には、それぞれボビン脚部31aが一体に成形してある。各ボビン脚部31aは、端部隔壁鍔31のX軸方向の両端から、Z軸方向の下方に突出して形成してある。
【0050】
ボビン20は、たとえばPPS、PET、PBT、LCP、ナイロンなどのプラスチックで構成してあるが、その他の絶縁部材で構成されても良い。ただし、本実施形態では、ボビン20としては、たとえば1W/m・K以上に熱伝導率が高いプラスチックで構成することが好ましく、たとえばPPS、ナイロンなどで構成してある。
【0051】
本実施形態では、
図6Aに示すように、中間コイル部303を、第1コイル部301と第2コイル部302とで挟む構造である。そのため、たとえば中間コイル部303を一次コイルとし、第1コイル部301と第2コイル部302とを二次コイルとすること、または、中間コイル部303を二次コイルとし、第1コイル部301と第2コイル部302とを一次コイルとすることが可能になる。そのため、これらのコイル間の結合を高くすることができ、たとえば車載用リーケージトランスなどとしても好適に用いることができる高結合なコイル装置を実現することができる。
【0052】
また、中間部分筒202のワイヤ連通路208を通して、第1コイル部301と第2コイル部302とが共通ワイヤ37の一部37cで連続して形成してあるため、ワイヤ長が短くなり、銅損を小さくすることができる。銅損を小さくできれば、効率が向上し、発熱も低減することができる。また、放熱性が悪い空中配線部分が少なく(短く)なることから、放熱性が向上すると共に、トランス10の小型化が可能になる。さらに、コイル部301,302および303では、ワイヤ37および38がボビン20またはボビン補助部200に接触すると共に、共通ワイヤ37の一部37cにおいても、ワイヤ37は、ボビン20またはボビン補助部200に接触する。このため、ワイヤ37および38の熱は積極的にボビン20から放熱させ、トランス10の全体を冷却することができる。
【0053】
本実施形態では、第1コイル部301と第2コイル部302とを単一の共通ワイヤ37で連続して形成した後、
図7A〜
図7Dに示すように、ボビン補助部200を切り欠き部35bおよびザグリ部34b,36b(切り欠き部34a,36aに対応)に取り付ける。その後に、
図6Aおよび
図6Bに示すように、巻回隔壁鍔34と巻回隔壁鍔36との間に位置する中間部分筒202および巻回筒部28の外周に、中間ワイヤ38を巻回すれば、中間コイル部303が得られる。したがって、第1コイル部301および第2コイル部302を構成する共通ワイヤ37の巻線作業のみでなく、中間コイル部303を構成する中間ワイヤ38の巻線作業の自動化も容易になる。また、最低、二つのワイヤ37,38のみを用いて巻線作業を行うため、自動巻線機での巻線作業も容易である。
【0054】
また、第1コイル部301と中間コイル部303とは、巻回隔壁鍔部34により絶縁することができ、第2コイル部302と中間コイル部303とは、巻回隔壁鍔部36により効果的に絶縁することができ、耐電圧特性にも優れている。さらに、ボビン補助部200の中間部分筒202を用いて、第1コイル部301および第2コイル部302を連絡する共通ワイヤ37の一部を、中間コイル部303を構成する中間ワイヤ38から効果的に絶縁することができる。
【0055】
また本実施形態では、第1巻回隔壁鍔34の補助となる第1巻回隔壁部分鍔204と、第2巻回隔壁鍔36の補助となる第2巻回隔壁部分鍔206と、をさらに有する。そのため、第1コイル部301と中間コイル部303との絶縁と、第2コイル部302と中間コイル部303との絶縁とが向上する。
【0056】
さらに本実施形態では、Z軸方向に沿って第1巻回隔壁鍔34と第2巻回隔壁鍔36との間には、中間巻回隔壁鍔35がボビン20の巻回筒部28の外周に形成してあるが、中間巻回隔壁鍔35は、切り欠き部35bにおいて、切り欠かれている。
【0057】
中間巻回隔壁鍔35を形成することで、巻回軸(Z軸)に沿って中間コイル部303を分離することが可能になる。なお、中間巻回隔壁鍔35が切り欠き部35bにおいて切り欠かれているのは、ボビン補助部200を切り欠き部35bに取り付けるためである。また、中間巻回隔壁鍔35と同様な巻回隔壁鍔33は、第1コイル部301または第2コイル部302にも具備させても良い。中間巻回隔壁鍔を設けることで、コイル装置の耐電圧特性がさらに向上する。
【0058】
さらに、本実施形態に係るトランス10では、ワイヤ37(38)の巻回軸(Z軸)に沿って相互に隣り合うワイヤ巻回部分相互を分離する巻回隔壁鍔33〜36が形成してあることから、ワイヤ37(38)の外径を太くしても絶縁化が容易であり、大電流化(高出力化)に対応しやすい。また、従来では、電圧の高周波化に伴い、相互に隣接するワイヤ相互が影響し合い、電流が流れ難くなると言う悪影響もあるが、本実施形態のトランス10では、巻回隔壁鍔33〜36を有するために、このような悪影響を少なくすることができ、高周波特性も向上する。
【0059】
さらにまた、端部隔壁鍔31,32、巻回隔壁鍔33〜36は、放熱フィンとしても作用するために、トランス10の放熱性にも優れている。また本実施形態では、ワイヤの巻数が多い区画S1およびS2を、ボビン20のZ軸方向の下方に位置させているため、トランス10の下部から冷却するのに都合が良い。ワイヤの巻数が多いと、発熱量も大きくなるため、発熱量が大きい部分を冷却部分に近づけることで、放熱性が向上する。
【0060】
さらにまた、本実施形態に係るトランス10では、設置面が巻軸に対して垂直な縦型コイル装置として構成することが容易であり、設置面の小型化に寄与する。
【0061】
第2実施形態
この実施形態のトランスは、下記に示す以外は、第1実施形態と同様な構成を有し、同様な作用効果を奏する。以下、重複する部分の説明は省略する。
【0062】
図5Cに示すように、この実施形態のトランス10では、絶縁カバー50の内周面に内方凸部53が周方向に沿って、好ましくは連続的(または断続的でも良い)に形成してある。巻回隔壁鍔34の外周端には、内方凸部53が嵌合する凹部34cが形成してある。内方凸部53が凹部34cに嵌合することで、絶縁カバー50とボビン20との接合が強固になる。また、区画S2と区画S3との絶縁距離が増大し、第1コイル部301と第2コイル部302との絶縁、すなわち一次コイルと二次コイルとの絶縁が強化される。
【0063】
第3実施形態
図8A〜
図9に示すように、この実施形態のトランス10Aは、下記に示す以外は、第1実施形態または第2実施形態と同様な構成を有し、同様な作用効果を奏する。以下、重複する部分の説明は省略する。
【0064】
図8Bに示すように、ボビン20Aは、ボビン本体24と、ボビン本体24のX軸方向の両端上部に一体に成形してある端子台部22,23とを有する。端子台部22および23には、それぞれY軸方向の両端に、リード取付部22a,22bおよび23a,23bが形成してある。リード取付部22a,22bおよび23a,23bには、それぞれに共通ワイヤ37の両端に形成してあるリード部37a,37bおよび中間ワイヤ38の両端に形成してあるリード部38a,38bが接続される。
【0065】
共通ワイヤ37は、第1コイル部301と第2コイル部302を構成し、中間ワイヤ38は、中間コイル部303を構成する。第1コイル部301と第2コイル部302と中間コイル部303とで、コイル300を構成しており、Z軸方向に沿って、中間コイル部303が第1コイル部301と第2コイル部302とで挟まれている。
【0066】
本実施形態のトランス10Aでは、
図8Bに示すように、磁性コア40Aは、上部コア40aと、下部コア40bとを有する。これらのコア40a,40bは、それぞれ同じ形状を持つ2つの分割コア42a,42aおよび42b,42bに分離可能である。本実施形態では、各分割コア42a,42aおよび42b,42bは、全て同じ形状であり、Z−Y断面で断面コ字形状を有し、U型コアの一種である。
【0067】
Z軸方向の上部に配置される一対の分割コア42a,42aが組み合わされることにより、Z−Y断面で断面E字形状を有し、いわゆるE型コアを構成する。Z軸方向の下部に配置される他の一対の分割コア42b,42bも、組み合わされることにより、Z−Y断面で断面E字形状を有し、いわゆるE型コアを構成する。
【0068】
Z軸方向の上側に配置される各分割コア42aは、Y軸方向に延びるベース部44aと、ベース部44aのY軸方向の両端からZ軸方向に突出している一対の中脚部46aおよび側脚部48aとを有する。Z軸方向の下側に配置される各分割コア42bは、Y軸方向に延びるベース部44bと、ベース部44bのY軸方向の両端からZ軸方向に突出している一対の中脚部46bおよび側脚部48bとを有する。
【0069】
一対の中脚部46aは、ボビン20のコア脚用貫通孔26の内部にZ軸方向の上方から挿入されるようになっている。同様に、一対の中脚部46bは、ボビン20のコア脚用貫通孔26の内部にZ軸方向の下方から挿入され、貫通孔26の内部において、それらの先端は、中脚部46aの先端に接触または所定のギャップで向き合うように構成してある。
【0070】
中脚部42a,42aまたは中脚部42b,42bは、それぞれ組み合わされた状態で、貫通孔26の内周面形状に一致するように、X軸方向に長い楕円柱形状を有しているが、その形状は、特に限定されず、貫通孔26の形状に合わせて変化させても良い。また、側脚部48a,48bは、ボビン本体24の外周面形状に合わせた内側凹曲面形状を有し、その外面は、X−Z平面に平行な平面を有している。本実施形態では、各分割コア42a,42bの材質は、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。
【0071】
図8Cに示すように、本実施形態のトランス10Aにおけるボビン20Aの巻回筒部28のZ軸方向の両端には、端部隔壁鍔31および32が半径方向の外方に延びるように、X−Y平面に略平行に一体成形してある。端部隔壁鍔31および32のZ軸方向の間に位置する巻回筒部28の外周面には、巻回隔壁鍔33〜36a,36bが径方向外方に突出するように、Z軸方向に所定間隔で形成してある。
【0072】
これらの端部隔壁鍔31および32の間に形成された巻回隔壁鍔33〜36bの間には、Z軸方向の下から順に、巻回区画S1〜S6が形成される。なお、巻回隔壁鍔33〜36bおよび巻回区画S1〜S6の数は、特に限定されない。
【0073】
本実施形態では、巻回区画S1に、共通ワイヤ37が連続して巻回してあり、区画S2およびS3に、中間ワイヤ38が連続して巻回してある。また、区画S4〜S6には、巻回区画S1に巻回してある共通ワイヤ37と同じものが巻回してある。本実施形態では、共通ワイヤ37が一次コイルを構成し、中間ワイヤ38が二次コイルを構成するが、逆であっても良い。
【0074】
また、本実施形態では、
図8D、
図8Jおよび
図8Lに示すように、巻回隔壁鍔36a,36bには、隣接する各区画S4〜S6相互を連絡する少なくとも1の連絡溝36a1,36b1がそれぞれ形成してある。これらの連絡溝36a1,36b1を通して、区画S4に巻回してある共通ワイヤ37が区画S5に通され、区画S5に巻回してある共通ワイヤ37が区画S6に通され、これらの区画S3〜S6でボビン20Aの巻回筒部28の外周に巻回可能になっている。
【0075】
本実施形態では、巻回隔壁鍔部33が、第1コイル部301と中間コイル部303とをZ軸方向に仕切る第1巻回隔壁鍔に対応し、巻回隔壁鍔部35が、第2コイル部302と中間コイル部303とをZ軸方向に仕切る第2巻回隔壁鍔に対応する。巻回隔壁鍔部33および巻回隔壁鍔部35に関しては、共通ワイヤ37と中間ワイヤ38とを絶縁するために、前述したような連絡溝は形成する必要がない。
【0076】
しかしながら、本実施形態では、
図8Dに示すように、第1コイル部301を構成する共通ワイヤ37を、第2コイル部302を構成する共通ワイヤ37と連続させる必要がある。そのために、共通ワイヤ37の一部37c(コイル301および302の内周側)を通すための切り欠き部33b,35bが、巻回隔壁鍔部33および35の周方向の一部に形成してある。
【0077】
切り欠き部33bは、ボビン20の巻回筒部28の外周面位置まで到達する深さであることが好ましい。切り欠き部35bに関しても同様である。共通ワイヤ37の一部37cを、巻回筒部28の外周面近くでZ軸方向に通すためである。
【0078】
また、これらの切り欠き部33b,35bが形成されている周方向位置で、巻回隔壁鍔部33と35の間に位置する巻回隔壁鍔部34には、
図9に示すボビン補助部200Aの周方向幅に対応する幅で、切り欠き部34dが形成してあり、そこに、ボビン補助部200Aが装着可能になっている。
【0079】
本実施形態では、
図9に示すように、ボビン補助部200Aは、円筒の一部を構成する中間部分筒202と、そのZ軸方向の両端にX−Y軸平面で平行に形成してある部分鍔204および206と、を有する。本実施形態では、中間部分筒202の内周方向の両端部に、Z軸方向に互い違いで、中間部分筒202の半径方向内側に向けて突出する凸片204a,206aが形成してある。
【0080】
凸片204aは、中間部分筒202を中心として、部分鍔204と反対側に突出するように形成してあり、その先端部には、円弧状内周面204bが形成してある。凸片206aは、中間部分筒202を中心として、部分鍔206と反対側に突出するように形成してあり、その先端部には、円弧状内周面206bが形成してある。
【0081】
ボビン補助部200Aの内周面204bは、
図8Kに示すように、ボビン20Aの巻回筒部28の外周面に密着し、内周面206bは、
図8Lに示すように、ボビン20Aの巻回筒部28の外周面に密着するようになっている。そして、内周面204bが形成してある凸片204aと、内周面206bが形成してある凸片206aとの間に、
図8Dおよび
図8Jに示すように、Z軸方向に伸びるワイヤ通路208が形成される。
【0082】
本実施形態では、ワイヤ通路208は、
図9に示すように、Z軸方向に沿って平行な通路では無く、Z軸に対して、共通ワイヤ37の一部37cが傾斜することを許容している。そのため、第1コイル部301と第2コイル部302とを共通ワイヤ37の一部37cで連絡する際に、これらのコイル部301および302の巻回方向に合わせて、共通ワイヤ37の一部37cをZ軸に対して傾斜させることができる。
【0083】
図8Bに示すように、本実施形態では、ボビン20のコア脚用貫通孔26には、断面コ字形状に分割された分割コア42a,42bの分割脚部46a,46bが挿入される。本発明者等の実験によれば、このような構成にすることで、コアが大型になったとしても、従来のE型コアを用いる場合に比較して、中脚とベースとの交差部に発生する局所的な応力を、分散させることができる。そのため、本実施形態に係るトランス10Aでは、コアに熱応力が発生してもクラックなどが発生することを効果的に抑制することができる。
【0084】
また、分割コア42a,42bが組み合わされて構成されるE型コアにおける中脚46a,46bおよびベースは、分割コア42a,42bの分割面で分離されており、分割面の相互間には所定の隙間を形成することが可能であり、放熱性も向上する。さらに、E型コアを、それぞれが単純な形状を持つ一対の分割コア42a,42bを組み合わせて構成することとなり、コアの製造も容易となり、製造コストの低減も図れる。しかも分割型のE型コアは、全体としては、E型コアと同様な磁力線を有することになるため、コアの磁気特性は、一般的なE型コアと同等である。
【0085】
また本実施形態では、各区画S1〜S6においては巻回軸方向に沿って単一のワイヤのみが存在するようにワイヤ37(38)を巻回するために、一層当たりのワイヤ37(38)の巻回数のバラツキを防止することが容易になり、コイル特性の安定化に寄与する。すなわち、一次コイルと二次コイルとの結合係数Kを厳密に制御することがる。
【0086】
また、本実施形態のトランス10Aでは、
図8Bに示すように、
図3に示す絶縁カバー50を設けなくても良いが、設けても良い。
【0087】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0088】
たとえば、第3実施形態のトランス10Aでは、磁性コアの分割の態様を変化させてもよい。たとえば上述した実施形態では、分割コアであるUコア−Uコアの組合せにより、磁性コアを構成したが、Uコア−Iコアの組合せにより、磁性コアを組み立てても良い。また、ボビン20,20Aの形状や構造、ワイヤ37および38の巻回数や巻回方法なども、上述した第1〜第3実施形態に限定されず、種々に改変しても良い。