特許第6476941号(P6476941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

特許6476941蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法
<>
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000002
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000003
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000004
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000005
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000006
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000007
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000008
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000009
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000010
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000011
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000012
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000013
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000014
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000015
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000016
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000017
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000018
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000019
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000020
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000021
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000022
  • 特許6476941-蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476941
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/36 20060101AFI20190225BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20190225BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20190225BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20190225BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20190225BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20190225BHJP
【FI】
   H01M2/36 101D
   H01M2/20 A
   H01M2/02 A
   H01M2/04 A
   H01G11/78
   H01G11/84
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-21458(P2015-21458)
(22)【出願日】2015年2月5日
(65)【公開番号】特開2016-143656(P2016-143656A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 伸介
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】村上 聡
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−007560(JP,A)
【文献】 特開平11−111246(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/063381(WO,A1)
【文献】 特開2013−033661(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/186862(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/171848(WO,A1)
【文献】 特開2012−169255(JP,A)
【文献】 特開2000−090891(JP,A)
【文献】 特開2011−230158(JP,A)
【文献】 特開2013−128975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/36−2/40
H01M 2/00−2/08
H01M 2/20
H01G 11/00−11/86
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の第一部材と、
前記第一部材と重なった状態で配置される金属製の第二部材と、を備え、
前記第一部材と前記第二部材とが重なっている部位に、線状に連なる溶接痕によって構成される溶接部であって該第一部材と該第二部材とを接続する溶接部が形成され、
前記溶接部は、
出力波形がパルス状のレーザによるキーホール溶接の溶接痕によって形成された第一部位であって、該溶接部における最初に形成された溶接痕を含む第一部位と、
前記第一部位と連なり且つレーザによる熱伝導溶接の溶接痕によって形成された第二部位であって、該溶接部における最後に形成された溶接痕を含む第二部位と、を有し、
前記第二部位の一部が前記第一部位と重なることによって所定の領域を囲み、
前記線状の溶接部において、前記第一部位と前記第二部位との境界は、該第一部位と該第二部位とが重なっている位置より前記最初に形成された溶接痕に近い位置にある、蓄電素子。
【請求項2】
電極体及び電解液を収容する内部空間が形成されるケースであって、前記電解液を前記内部空間に注入可能な注液孔と該注液孔を塞ぐ注液栓とを有するケースを備え、
前記注液栓は、前記注液孔を覆うように前記ケースの注液孔周縁部と重なる頭部を有し、
前記第二部材は、前記注液栓であり、
前記第一部材は、前記注液栓を除いた前記ケースであり、
前記所定の領域は、前記頭部である、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
開口を有するケース本体と該ケース本体の開口周縁部に重ねられて前記開口を塞ぐ蓋板とを有するケースを、備え、
前記第一部材は、前記ケース本体であり、
前記第二部材は、前記蓋板であり、
前記所定の領域は、前記ケース本体の開口である、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項4】
複数の蓄電素子を有する蓄電装置であって、
該蓄電装置を構成する金属製の第一部材と、
前記第一部材と重なった状態で配置される金属製の第二部材と、を備え、
前記第一部材と前記第二部材とが重なっている部位に、線状に連なる溶接痕によって構成される溶接部であって該第一部材と該第二部材とを接続する溶接部が形成され、
前記溶接部は、
出力波形がパルス状のレーザによるキーホール溶接の溶接痕によって形成された第一部位であって、該溶接部における最初に形成された溶接痕を含む第一部位と、
前記第一部位と連なり且つレーザによる熱伝導溶接の溶接痕によって形成された第二部位であって、該溶接部における最後に形成された溶接痕を含む第二部位とを有し、
前記第二部位の一部が前記第一部位と重なることによって所定の領域を囲み、
前記線状の溶接部において、前記第一部位と前記第二部位との境界は、該第一部位と該第二部位とが重なっている位置より前記最初に形成された溶接痕に近い位置にある、蓄電装置。
【請求項5】
前記複数の蓄電素子のうちの少なくとも一つの蓄電素子が有する外部端子に接続されるバスバを備え、
前記外部端子は、前記バスバが面接触した状態で配置される接続面を有し、
前記第一部材は、前記外部端子であり、
前記第二部材は、前記バスバであり、
前記所定の領域は、前記接続面に沿って設定される、請求項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
蓄電素子を構成するための金属製の第一部材及び第二部材が重なっている部位に対し、所定の領域の周縁に沿って溶接痕が線状に連なるように、出力波形がパルス状のレーザによってキーホール溶接を行うことと、
前記キーホール溶接に続いて、前記所定の領域の周縁に沿って溶接痕が線状になるようにレーザによって熱伝導溶接を行うことと、を備え、
前記キーホール溶接の溶接痕と前記熱伝導溶接の溶接痕とが前記所定の領域を囲むように連なることで形成される溶接部であって、前記第一部材と前記第二部材とを接続する溶接部が形成され、
前記溶接部は、
前記キーホール溶接の溶接痕によって形成された第一部位であって、該溶接部における最初に形成された溶接痕を含む第一部位と、
前記第一部位と連なり且つ前記熱伝導溶接による溶接痕によって形成された第二部位であって、該溶接部における最後に形成された溶接痕を含む第二部位とを有し、
前記第二部位の一部が前記第一部位と重なることによって所定の領域を囲み、
前記線状の溶接部において、前記第一部位と前記第二部位との境界は、該第一部位と該第二部位とが重なっている位置より前記最初に形成された溶接痕に近い位置にある、蓄電素子の製造方法。
【請求項7】
複数の蓄電素子を有する蓄電装置を構成するための金属製の第一部材及び第二部材が重なっている部位に対し、所定の領域の周縁に沿って溶接痕が線状に連なるように、出力波形がパルス状のレーザによってキーホール溶接を行うことと、
前記キーホール溶接に続いて、前記所定の領域の周縁に沿って溶接痕が線状になるようにレーザによって熱伝導溶接を行うことと、を備え、
前記キーホール溶接の溶接痕と前記熱伝導溶接の溶接痕とが前記所定の領域を囲むように連なることで形成される溶接部であって、前記第一部材と前記第二部材とを接続する溶接部が形成され、
前記溶接部は、
前記キーホール溶接の溶接痕によって形成された第一部位であって、該溶接部における最初に形成された溶接痕を含む第一部位と、
前記第一部位と連なり且つ前記熱伝導溶接による溶接痕によって形成された第二部位であって、該溶接部における最後に形成された溶接痕を含む第二部位とを有し、
前記第二部位の一部が前記第一部位と重なることによって所定の領域を囲み、
前記線状の溶接部において、前記第一部位と前記第二部位との境界は、該第一部位と該第二部位とが重なっている位置より前記最初に形成された溶接痕に近い位置にある、蓄電装置の製造方法。
【請求項8】
金属製の第一部材と、
前記第一部材と重なった状態で配置される金属製の第二部材と、を備え、
前記第一部材と前記第二部材とが重なっている部位に、線状に連なる溶接痕によって形成される溶接部であって該第一部材と該第二部材とを接続する溶接部が形成され、
前記溶接部は、
出力波がパルス状のレーザによるキーホール溶接の溶接痕によって形成された第一部位であって、該溶接部における最初に形成された溶接痕を含む第一部位と、
前記第一部位と連なり且つレーザによる熱伝導溶接の溶接痕によって形成された第二部位であって、該溶接部における最後に形成された溶接痕を含む第二部位と、を有し、
前記第二部位の一部が前記第一部位と重なることによって所定の領域を囲み、
前記最初に形成された溶接痕及び前記最後に形成された溶接痕の少なくとも一方は、前記所定の領域の周縁と異なる位置に形成され、
前記線状の溶接部において、前記第一部位と前記第二部位との境界は、該第一部位と該第二部位とが重なっている位置より前記最初に形成された溶接痕に近い位置にある、蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電可能な蓄電素子、蓄電素子を備えた蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及び蓄電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子、及び蓄電素子を備える蓄電装置では、金属部材同士が溶接によって接合されている場合がある。例えば、金属製の注液栓が金属製の電池蓋の注液口の周縁部にレーザ溶接によって接合されている(特許文献1参照)。
【0003】
前記レーザ溶接による接合において、重ねた金属部材同士が強固に接合されるよう溶接部における溶接深さを確保するために、重ねた金属部材同士をキーホール溶接によって接合する場合がある。このキーホール溶接では、高出力のレーザを溶接部位に照射することで、照射部位に生じた金属蒸気が該照射部位における溶融金属を押し広げてキーホールと呼ばれるくぼみを形成し、このキーホール内に前記レーザが進入することで、該レーザが材料内の奥深くに照射され、これにより、溶接深さが確保されて前記金属部材同士が強固に接合される。
【0004】
蓄電素子等の製造時において、重ねた金属部材同士をキーホール溶接するときに、接合した金属部材間の密閉性を確保するために、溶接部における溶接開始部位と溶接終了部位とが重なる(オーバーラップする)ように溶接する場合がある。この場合、キーホール溶接では、キーホール内で生じた気体(金属蒸気等)が溶接痕の内部に気泡として残ることがあるため、溶接開始部位に溶接終了部位をオーバーラップさせるために一端冷えて固まった溶接開始部位にレーザが再度照射されると、該溶接開始部位内の気泡をレーザが貫通し、これにより、気泡と外部とが連通してブローホールが形成され(即ち、溶接欠陥が生じ)、蓄電素子等の品質が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−167862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、品質の高い蓄電素子、品質の高い蓄電装置、品質の高い蓄電素子の製造方法、及び品質の高い蓄電装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る蓄電素子は、
金属製の第一部材と、
前記第一部材と重なった状態で配置される金属製の第二部材と、を備え、
前記第一部材と前記第二部材とが重なっている部位に、線状に連なる溶接痕によって構成される溶接部であって該第一部材と該第二部材とを接続する溶接部が形成され、
前記溶接部は、出力波形がパルス状のレーザによるキーホール溶接の溶接痕によって形成された第一部位と、前記第一部位と連なり且つレーザによる熱伝導溶接の溶接痕によって形成された第二部位とを有し、該溶接部の第二部位側の端部であって該溶接部において最後に形成された溶接痕を含む端部が前記第一部位と重なることによって所定の領域を囲み、
前記第二部位は、少なくとも前記最後に形成された溶接痕を含む。
【0008】
かかる構成によれば、溶接部において、少なくとも最後の溶接痕が形成されるときに該最後の溶接痕が形成される部位(キーホール溶接よる溶接痕によって形成された第一部位)に気泡が混入していても、少なくとも前記最後の溶接痕が溶接時にキーホール(くぼみ)の生じない熱伝導溶接によって形成されるため、該熱伝導溶接のためのレーザが前記気泡を貫通してブローホールを形成することが防がれる。これにより、溶接欠陥が抑えられ、蓄電素子の品質が高くなる。
【0009】
前記蓄電素子では、
前記第二部位は、少なくとも前記溶接部における前記第一部位と重なっている前記第二部位側の端部を含むことが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、溶接部において、少なくとも第二部位側の端部(第一部位と重なっている部位)が熱伝導溶接によって形成されるため、溶接時にブローホールの生じ易い部位(キーホール溶接により形成された溶接痕(第一部位)と重なる部位)におけるブローホールが抑えられ、これにより、溶接欠陥がより抑えられ、蓄電素子の品質がより高くなる。
【0011】
また、本発明に係る蓄電素子は、
金属製の第一部材と、
前記第一部材と重なった状態で配置される金属製の第二部材と、を備え、
前記第一部材と前記第二部材とが重なっている部位に、線状に連なる溶接痕によって構成される溶接部であって該第一部材と該第二部材とを接続する溶接部が形成され、
前記溶接部は、
出力波形がパルス状のレーザによるキーホール溶接の溶接痕によって形成された第一部位であって、該溶接部における最初に形成された溶接痕を含む第一部位と、
前記第一部位と連なり且つレーザによる熱伝導溶接の溶接痕によって形成された第二部位であって、該溶接部における最後に形成された溶接痕を含む第二部位と、を有し、
前記第二部位の一部が前記第一部位と重なることによって所定の領域を囲み、
前記線状の溶接部において、前記第一部位と前記第二部位との境界は、該第一部位と該第二部位とが重なっている位置より前記最初に形成された溶接痕に近い位置にある。
【0012】
かかる構成によれば、溶接部において、第二部位の少なくとも一部が第一部位と重なっているため、第一部位における第二部位と重なる領域に気泡が混入していても、第二部位が溶接時にキーホール(くぼみ)の生じない熱伝導溶接によって形成されるため、第一部位における第二部位と重なる領域において第二部位を形成するためのレーザが前記気泡を貫通してブローホールを形成することが防がれる。これにより、溶接欠陥が抑えられ、蓄電素子の品質が高くなる。
【0013】
例えば、前記蓄電素子は、
電極体及び電解液を収容する内部空間が形成されるケースであって、前記電解液を前記内部空間に注入可能な注液孔と該注液孔を塞ぐ注液栓とを有するケースを備え、
前記注液栓は、前記注液孔を覆うように前記ケースの注液孔周縁部と重なる頭部を有し、
前記第二部材は、前記注液栓であり、
前記第一部材は、前記注液栓を除いた前記ケースであり、
前記所定の領域は、前記頭部であってもよい。
【0014】
かかる構成によれば、注液栓の頭部とケースの注液孔周縁部との溶接部における溶接欠陥が抑えられ、蓄電素子の品質が高くなる。
【0015】
また、前記蓄電素子は、
開口を有するケース本体と該ケース本体の開口周縁部に重ねられて前記開口を塞ぐ蓋板とを有するケースを、備え、
前記第一部材は、前記ケース本体であり、
前記第二部材は、前記蓋板であり、
前記所定の領域は、前記ケース本体の開口であってもよい。
【0016】
かかる構成によれば、ケース本体と蓋板との溶接部における溶接欠陥が抑えられ、蓄電素子の品質が高くなる。
【0017】
また、本発明に係る前記蓄電装置は、
金属製の第一部材と、
前記第一部材と重なった状態で配置される金属製の第二部材と、を備え、
前記第一部材と前記第二部材とが重なっている部位に、線状に連なる溶接痕によって構成される溶接部であって該第一部材と該第二部材とを接続する溶接部が形成され、
前記溶接部は、出力波形がパルス状のレーザによるキーホール溶接の溶接痕によって形成された第一部位と、前記第一部位と連なり且つレーザによる熱伝導溶接の溶接痕によって形成された第二部位とを有し、該溶接部の第二部位側の端部であって該溶接部において最後に形成された溶接痕を含む端部が前記第一部位と重なることによって所定の領域を囲み、
前記第二部位は、少なくとも前記最後に形成された溶接痕を含む。
【0018】
かかる構成によれば、溶接部において、少なくとも最後の溶接痕が形成されるときに該最後の溶接痕が形成される部位(キーホール溶接よる溶接痕によって形成された第一部位)に気泡が混入していても、少なくとも前記最後の溶接痕が溶接時にキーホール(くぼみ)の生じない熱伝導溶接によって形成されるため、該熱伝導溶接のためのレーザが前記気泡を貫通してブローホールを形成することが防がれる。これにより、溶接欠陥が抑えられ、蓄電装置の品質が高くなる。
【0019】
前記蓄電装置では、
外部端子を有する少なくとも一つの蓄電素子と、
前記外部端子に接続されるバスバと、を備え、
前記外部端子は、前記バスバが面接触した状態で配置される接続面を有し、
前記第一部材は、前記外部端子であり、
前記第二部材は、前記バスバであり、
前記所定の領域は、前記接続面に沿って設定されてもよい。
【0020】
かかる構成によれば、外部端子と該外部端子の接続面に配置されたバスバとの溶接部における溶接欠陥が抑えられ、蓄電装置の品質が高くなる。
【0021】
また、本発明に係る蓄電素子の製造方法は、
蓄電素子を構成するための金属製の第一部材及び第二部材が重なっている部位に対し、所定の領域の周縁に沿って溶接痕が線状に連なるように、出力波形がパルス状のレーザによってキーホール溶接を行うことと、
前記キーホール溶接に続いて、前記所定の領域の周縁に沿って溶接痕が線状になるようにレーザによって熱伝導溶接を行うことと、を備え、
前記キーホール溶接の溶接痕と前記熱伝導溶接の溶接痕とが前記所定の領域を囲むように連なることで形成される溶接部であって、前記第一部材と前記第二部材とを接続する溶接部が形成され、
前記溶接部は、前記キーホール溶接の溶接痕によって形成された第一部位と、前記第一部位と連なり且つ前記熱伝導溶接による溶接痕によって形成された第二部位とを有し、該溶接部の第二部位側の端部であって該溶接部において最後に形成された溶接痕を含む端部が前記第一部位と重なることによって前記所定の領域を囲み、
前記第二部位は、少なくとも前記最後に形成された溶接痕を含む。
【0022】
かかる構成によれば、溶接部において、少なくとも最後の溶接痕が形成されるときに該最後の溶接痕が形成される部位(キーホール溶接よる溶接痕によって形成された第一部位)に気泡が混入していても、少なくとも前記最後の溶接痕が溶接時にキーホール(くぼみ)の生じない熱伝導溶接によって形成されるため、該熱伝導溶接のためのレーザが前記気泡を貫通してブローホールを形成することが防がれ、これにより、溶接欠陥が抑えられた品質の高い蓄電素子が得られる。
【0023】
また、本発明に係る蓄電装置の製造方法は、
蓄電装置を構成するための金属製の第一部材及び第二部材が重なっている部位に対し、所定の領域の周縁に沿って溶接痕が線状に連なるように、出力波形がパルス状のレーザによってキーホール溶接を行うことと、
前記キーホール溶接に続いて、前記所定の領域の周縁に沿って溶接痕が線状になるようにレーザによって熱伝導溶接を行うことと、を備え、
前記キーホール溶接の溶接痕と前記熱伝導溶接の溶接痕とが前記所定の領域を囲むように連なることで形成される溶接部であって、前記第一部材と前記第二部材とを接続する溶接部が形成され、
前記溶接部は、前記キーホール溶接の溶接痕によって形成された第一部位と、前記第一部位と連なり且つ前記熱伝導溶接による溶接痕によって形成された第二部位とを有し、該溶接部の第二部位側の端部であって該溶接部において最後に形成された溶接痕を含む端部が前記第一部位と重なることによって前記所定の領域を囲み、
前記第二部位は、少なくとも前記最後に形成された溶接痕を含む。
【0024】
かかる構成によれば、溶接部において、少なくとも最後の溶接痕が形成されるときに該最後の溶接痕が形成される部位(キーホール溶接よる溶接痕によって形成された第一部位)に気泡が混入していても、少なくとも前記最後の溶接痕が溶接時にキーホール(くぼみ)の生じない熱伝導溶接によって形成されるため、該熱伝導溶接のためのレーザが前記気泡を貫通してブローホールを形成することが防がれ、これにより、溶接欠陥が抑えられた品質の高い蓄電装置が得られる。
【0025】
また、本発明に係る蓄電素子は、
金属製の第一部材と、
前記第一部材と重なった状態で配置される金属製の第二部材と、を備え、
前記第一部材と前記第二部材とが重なっている部位に、線状に連なる溶接痕によって形成される溶接部であって該第一部材と該第二部材とを接続する溶接部が形成され、
前記溶接部は、
出力波がパルス状のレーザによるキーホール溶接の溶接痕によって形成された第一部位であって、該溶接部における最初に形成された溶接痕を含む第一部位と、
前記第一部位と連なり且つレーザによる熱伝導溶接の溶接痕によって形成された第二部位であって、該溶接部における最後に形成された溶接痕を含む第二部位と、を有し、
前記第二部位の一部が前記第一部位と重なることによって所定の領域を囲み、
前記最初に形成された溶接痕及び前記最後に形成された溶接痕の少なくとも一方は、前記所定の領域の周縁と異なる位置に形成され、
前記線状の溶接部において、前記第一部位と前記第二部位との境界は、該第一部位と該第二部位とが重なっている位置より前記最初に形成された溶接痕に近い位置にある。
【0026】
かかる構成によれば、溶接部において、第二部位の少なくとも一部が第一部位と重なるように形成されるときに第一部位における第二部位と重なる領域に気泡が混入していても、第二部位が溶接時にキーホール(くぼみ)の生じない熱伝導溶接によって形成されるため、第一部位における第二部位と重なる領域において第二部位を形成するためのレーザが前記気泡を貫通してブローホールを形成することが防がれる。これにより、溶接欠陥が抑えられ、蓄電素子の品質が高くなる。
【発明の効果】
【0027】
以上より、本発明によれば、品質の高い蓄電素子、品質の高い蓄電装置、品質の高い蓄電素子の製造方法、及び品質の高い蓄電装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
図2図2は、図1のII―II位置における断面図である。
図3図3は、前記蓄電素子の分解斜視図である。
図4図4は、前記蓄電素子の注液栓の断面斜視図である。
図5図5は、前記蓄電素子の製造方法を示すフロー図である。
図6図6は、図5のケース本体と蓋板とのレーザ溶接における詳細なフロー図である。
図7図7は、図5の蓋板の注液孔周縁部と注液栓とのレーザ溶接における詳細なフロー図である。
図8図8は、キーホール溶接におけるレーザのパルス波形と熱伝導溶接におけるレーザのパルス波形とを説明するための図である。
図9図9は、ケース本体と蓋板の溶接部を説明するための図である。
図10図10は、キーホール溶接によって形成された溶接部の表面写真である。
図11図11は、略パルス発振型のレーザでの熱伝導溶接によって形成された溶接部の表面写真である。
図12図12は、連続発振型のレーザでの熱伝導溶接によって形成された溶接部の表面写真である。
図13図13は、蓋板の注液孔周縁部と注液栓の溶接部を説明するための図である。
図14図14は、本発明の一実施形態に係る蓄電装置の斜視図である。
図15図15は、前記蓄電装置における外部端子とバスバとの溶接部を説明するための図である。
図16図16は、前記蓄電装置の製造方法を示すフロー図である。
図17図17は、図16の外部端子とバスバとの溶接部における詳細なフロー図である。
図18図18は、他実施形態に係る溶接部の形状を示す模式図である。
図19図19は、他実施形態に係る溶接部の形状を示す模式図である。
図20図20は、他実施形態に係る溶接部の形状を示す模式図である。
図21図21は、他実施形態に係る溶接部の形状を示す模式図である。
図22図22は、他実施形態に係る溶接部の形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態(第一実施形態)について、図1図10を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0030】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0031】
蓄電素子は、図1図3に示すように、正極及び負極を含む電極体2と、電極体2を収容するケース3と、ケース3の外側に配置される外部端子4であって電極体2と導通する外部端子4と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2、ケース3、及び外部端子4の他に、電極体2と外部端子4とを導通させる集電体5等も有する。
【0032】
電極体2は、巻芯21と、正極と負極とがセパレータによって互いに絶縁された状態で積層された積層体22であって、巻芯21の周囲に巻回された積層体22と、を備える(図2参照)。電極体2においてリチウムイオンがセパレータを介して正極と負極との間を移動することにより、蓄電素子1が充放電する。
【0033】
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間33に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。
【0034】
ケース3は、ケース本体31の開口周縁部34と、蓋板32(本実施形態の例では、蓋板32の周縁部)とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。ケース3では、ケース本体31と蓋板32とによって、内部空間33が画定される。本実施形態では、ケース本体31の開口周縁部34と蓋板32の周縁部とは、レーザ溶接によって接合されている。
【0035】
ケース本体31は、板状の閉塞部311であってケース3の内側を向く内面とケース3の外側を向く外面とを有する閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される胴部312であって、閉塞部311の内面側に延び且つ該内面を包囲する筒状の胴部312とを備える。
【0036】
閉塞部311は、開口が上を向くようにケース本体31が配置されたときに、ケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向視において、矩形状である。
【0037】
以下では、図1に示すように、閉塞部311の長辺方向を3軸直交座標におけるX軸方向とし、閉塞部311の短辺方向をY軸方向とし、閉塞部311の法線方向をZ軸方向とする。
【0038】
本実施形態の胴部312は、角筒形状を有する。詳しくは、胴部312は、偏平な角筒形状を有する。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0039】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。
【0040】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。具体的に、蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐようにケース本体31に当接する。より具体的には、ケース本体31の開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34(図2及び図3参照)に重ねられる。開口周縁部34と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32側から蓋板32とケース本体31とがレーザ溶接される。これにより、ケース3が構成される。蓋板32は、Z軸方向視において、ケース本体31の開口周縁部34に対応した輪郭形状を有する。即ち、蓋板32は、Z軸方向視において、X軸方向に長い矩形状の板材である。
【0041】
ケース3には、電解液を注入するための注液孔325が設けられる。即ち、ケース3は、注液孔325を有する。注液孔325は、ケース3の内部(内部空間33)と外部とを連通する。本実施形態の注液孔325は、蓋板32に設けられる。注液孔325は、蓋板32をZ軸方向(厚さ方向)に貫通する円形の穴である。
【0042】
以上のように構成される注液孔325は、注液栓326によって密閉される(塞がれる)。即ち、ケース3は、注液栓326を有する。注液栓326は、電解液に耐性を有する金属製であり、レーザ溶接によってケース3(本実施形態の例では蓋板32)の注液孔周縁部に固定(接合)される。本実施形態の注液栓326は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。この注液栓326は、図1、3、4に示すように、注液孔325を覆う頭部327を有する。また、注液栓326は、頭部327から延びる挿入部328も有する。
【0043】
頭部327は、注液孔325を覆う部位である。頭部327は、Z軸方向視において注液孔325より大きい。即ち、頭部327は、注液孔325を覆うようにケース3(蓋板32)の注液孔周縁部と重なる。具体的に、頭部327は、板状の部位であり、蓋板32と重なるようにして注液孔325を覆う。本実施形態の頭部327は、Z軸方向視において略円形の輪郭を有する。即ち、頭部327は、円板状の部位である。この頭部327の周縁部と、蓋板32の注液孔周縁部とが溶接されることにより、注液栓326がケース3に固定される。尚、図4における頭部327は、蓋板32の注液孔周縁部への溶接前の形状である。
【0044】
頭部327における蓋板32と反対の面の中央に、基準凹部329が設けられる。基準凹部329は、頭部327の周縁と蓋板32とをレーザ溶接(自動溶接)するときの溶接位置(レーザ照射位置)を決めるための基準等として用いられる。
【0045】
挿入部328は、頭部327から注液孔325を通ってケース3内に延びる。即ち、挿入部328は、頭部327から延びる柱状の部位である。本実施形態の挿入部328は、頭部327から該頭部327の拡がり方向と直交する方向に延びる略円柱状の部位である。挿入部328の先端側の部位(先端を含む部位)では、外径が先端に向かって漸減する。挿入部328の基部は、蓋板32の注液孔325よりも僅かに大きい。即ち、挿入部328の基部の外径は、蓋板32の注液孔325の内径よりも僅かに大きい。このため、注液栓326を蓋板32に取り付けるときには、挿入部328は、注液孔325に圧入される。
【0046】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。外部端子4は、バスバ等が溶接可能な接続面41を有する。本実施形態の接続面41は、平面である。
【0047】
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と外部端子4とを通電可能に直接又は間接に接続する。集電体5は、導電性を有する部材によって形成され、ケース3の内面に沿って配置される。集電体5は、蓄電素子1の正極と負極とにそれぞれ配置される。
【0048】
蓄電素子1は、電極体2とケース3とを絶縁する絶縁部材6等も備える。本実施形態の絶縁部材6は、ケース3(詳しくはケース本体31)と電極体2との間に配置される袋状の部材である。この絶縁部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって袋状に形成される。蓄電素子1では、袋状の絶縁部材6に収容された状態の電極体2(詳しくは、電極体2及び集電体5)がケース3内に収容される。
【0049】
次に、蓄電素子1の製造方法について、図5図10も参照しつつ説明する。
【0050】
電極体2、外部端子4、及び集電体5等が蓋板32に取り付けられる(ステップS1)。このとき、注液栓326は、蓋板32に取り付けられない。即ち、蓋板32において、注液孔325が開口した状態である。
【0051】
電極体2等が蓋板32に取り付けられると、蓋板32に取り付けられた電極体2及び集電体5が開口からケース本体31内に挿入されるように該蓋板32がケース本体31の開口周縁部34に重ねられる(ステップS2)。このとき、袋状の絶縁部材6がケース本体31と電極体2及び集電体5との間に位置するように配置される。続いて、蓋板32とケース本体31とがレーザ溶接される(ステップS3)。本実施形態のレーザ溶接では、出力波形がパルス状のレーザをケース3の側面方向からケース本体31と蓋板32との境界線(境界位置)に沿って照射することで、ケース本体31と蓋板32とを溶接する。具体的に、レーザ溶接は、以下のように行われる。
【0052】
先ず、パルス状のレーザが照射され、キーホール溶接が行われる(ステップS31)。このとき、略円形の溶接痕が線状に連なるように、パルス間隔が設定されている。このキーホール溶接では、例えば、図8の実線で示すような波形のパルス状のレーザが用いられる。このキーホール溶接で用いられるレーザのパルス波形は、急峻に出力が上下する高出力部分(図8の第I区間参照)と、高出力部分のピーク出力よりも出力が低く且つ略一定の定出力部分(図8のII区間)とを有し、高出力部分で材料(ワーク)表面の酸化膜を除去し、続く定出力部分でキーホールを形成した後に該部位を本溶接するような波形である。
【0053】
図9に示すように、蓋板32の周縁部とケース本体31の開口周縁部34とが重なっている部分に沿って、略円形の溶接痕が連なって線状の溶接部50が形成されるようにパルス状のレーザによるキーホール溶接が行われる。そして、レーザ照射位置が最初に形成された溶接痕(即ち、溶接開始位置)510の手前で、パルス状のレーザのパルス波形が切り換えられ(ステップS32)、続いて、熱伝導溶接が行われる(ステップS33)。この熱伝導溶接では、図8の一点鎖線で示すような波形の略パルス状のレーザが用いられる。この熱伝導溶接で用いられるレーザのパルス波形は、ピーク出力をキーホール溶接でのパルス波形よりも下げ、且つパルス幅(射出時間)を長くしている。即ち、熱伝導溶接でのパルス波形は、キーホール溶接の高出力部分のピーク値よりも低く、且つ出力の上下変動が少ないなだらかな形状である。このため、熱伝導溶接では、材料(ワーク)に照射されたレーザは、該材料表面で吸収され、キーホールを形成することなく熱に変換される。変換された熱は、材料表面から熱伝導によって材料中に広がり、これにより、該材料を溶融させて溶接する。
【0054】
ここで、レーザ溶接におけるキーホール溶接と熱伝導溶接の特徴を説明する。キーホール溶接では、溶接の過程で材料表面にくぼみ(キーホール)が生成されるため、溶接部(溶接痕)表面は、比較的大きな凸凹形状を有する(図10参照)。一方、熱伝導溶接では、溶接の過程で材料表面にキーホールが生成されないため、溶接部(溶接痕)表面は、凸凹形状の少ない比較的平坦な形状を有する(図11及び図12参照)。また、溶接部を断面観察すると、キーホール溶接では、深い溶け込み溶接痕が形成されている。一方、熱伝導溶接では、深い溶け込みはなく比較的浅く広がった溶接痕が形成されている。尚、図10は、キーホール溶接によって形成された溶接部の表面写真である。また、図11は、略パルス発振型のレーザでの熱伝導溶接によって形成された溶接部の表面写真である。また、図12は、連続発振型のレーザでの熱伝導溶接によって形成された溶接部の表面写真である。
【0055】
熱伝導溶接は、溶接部50の溶接開始位置(溶接部50において最初に形成された溶接痕の位置)510を含む端部と重なる(オーバーラップする)ように行われる。これにより、溶接部50が、蓋板32の周縁に沿ってケース本体31の開口(所定の領域)を囲う。この溶接部50は、キーホール溶接の溶接痕によって形成された部位(第一部位)51と、第一部位51と連なり且つ熱伝導溶接の溶接痕によって形成された部位(第二部位)52と、を有する。溶接部50では、第二部位側の端部であって該溶接部50において最後に形成された溶接痕を含む端部(オーバーラップ部)520が第一部位51と重なっている。第二部位52は、少なくとも溶接部50において最後に形成された溶接痕(熱伝導溶接による溶接痕)を含む。該溶接部50では、第二部位52がオーバーラップ部520と略一致している。
【0056】
オーバーラップ部520(第二部位52)が溶接部50の溶接開始位置510を含む端部(第一部位51)と重なる(オーバーラップする)ように、溶接部50が形成されることで、溶接部50において、オーバーラップ部520が形成されるときに熱伝導溶接が行われるため、溶接時にブローホールの生じ易い第一部位51と重なる部位でのブローホールの発生が抑えられる。
【0057】
蓋板32とケース本体31とが接合されると、電解液が注液孔325からケース3の内部に注入される(ステップS4)。この電解液の注入が終わると、注液孔325が注液栓326によって塞がれる(ステップS5)。このとき、注液栓326の頭部327が蓋板32の注液孔周縁部に当接するまで、挿入部328が注液孔325に圧入される。続いて、蓋板32の注液孔周縁部と注液栓326(詳しくは、頭部327)とがレーザ溶接される(ステップS6)。このレーザ溶接は、以下の通りである。
【0058】
図13に示すように、蓋板32とケース本体31との溶接と同様に、先ず、パルス状のレーザによるキーホール溶接が頭部327の周縁に沿って行われる(ステップS61:図13の符号51参照)。本実施形態では、頭部327に向けて蓋板32(詳しくは、蓋板32の広がる方向)と直交する方向からレーザが照射される。尚、図13の溶接部において、図9に示す溶接部50の各部位と対応する部位には同一符号を用いる。
【0059】
注液栓326は小さな部品であるため、頭部327の周縁に沿ってレーザが照射されると、狭い範囲にレーザが照射され続けることになり、材料(ワーク:注液栓326及び蓋板32の注液孔周縁部)の温度が上昇し易い。このため、レーザの照射によって材料(ワーク)が溶融する範囲が前記温度上昇に伴って広がり、これにより、溶接痕の幅(線状の溶接部の幅)も溶接開始位置から徐々に広がる。この溶接痕の幅が十分広がり、その幅(十分に広がった幅)で安定すると、材料の温度が十分に上がって溶け易くなっているため、レーザの出力を下げても十分な溶接が行われる。そこで、この溶接痕の幅が広がった状態で安定するタイミングで、パルス状のレーザのパルス波形が切り換えられ(ステップS62)、続いて、熱伝導溶接が行われる(ステップS63:図13の符号52参照)。即ち、注液栓326の頭部327及び蓋板32の注液孔周縁部が十分に昇温したタイミングで、パルス状のレーザのパルス波形が切り換えられ、これにより、キーホール溶接から熱伝導溶接に切り換えられる。
【0060】
本実施形態では、蓋板32は、アルミ製であり、厚さが1.2mmである。また、注液栓326は、アルミ製であり、頭部327の直径が4mm、頭部327の周縁部(パルス状のレーザが照射される部位)の厚さが0.3mm、挿入部328の直径が1.9mm、挿入部328の長さが2mmである。また、パルス状のレーザの出力は、5.6kWであり、照射範囲(パルス1回分の照射範囲)は、0.6mmである。この注液栓326の頭部327と、蓋板32の注液孔周縁部とが重なった状態で頭部327の周縁に沿ってパルス状のレーザでキーホール溶接すると、頭部327の周方向において1/6周程度の位置で、溶接痕の幅が広がった状態で安定する。このため、本実施形態では、この位置でキーホール溶接から熱伝導溶接に切り換えられる(図13の符号51、52参照)。即ち、頭部327と注液孔周縁部との溶接部50では、溶接開始位置からこの位置(1/6周程度の位置)までが、第一部位51であり、該位置から溶接終了位置までが第二部位52である。
【0061】
前記切り換え後、注液栓326の頭部327の周縁に沿って、溶接痕が線状に連なるようにパルスレーザによる熱伝導溶接が行われる。そして、溶接部50における溶接開始位置510を含む端部と重なるようにオーバーラップ部520が形成され、熱伝導溶接が終了する。これにより、蓋板32の注液孔周縁部と注液栓326の頭部327とが接合される。
【0062】
以上のように、注液孔325が注液栓326によって密閉(封止)されることで、蓄電素子1が完成する。
【0063】
本実施形態の蓄電素子1、及び蓄電素子1の製造方法によれば、溶接部50において、少なくとも最後の溶接痕が形成されるときに、溶接部50において、少なくとも最後の溶接痕(熱伝導溶接による溶接痕)が形成されるときに該最後の溶接痕が形成される部位(キーホール溶接よる溶接痕によって形成された第一部位51)に気泡が混入していても、レーザの出力が小さいため該レーザが前記気泡を貫通してブローホールを形成することが防がれる。これにより、溶接欠陥が抑えられた品質の高い蓄電素子が得られる。
【0064】
本実施形態の溶接部50では、第二部位52が少なくともオーバーラップ部(溶接部50における第一部位51と重なっている第二部位側の端部)520を含むため、溶接部50において第一部位51と重なる部位520全体が熱伝導溶接によって形成される。このため、溶接時にブローホールの生じ易い部位(溶接部50において第一部位51と第二部位52とが重なる部位)におけるブローホールが抑えられ、これにより、溶接欠陥がより抑えられた品質のより高い蓄電素子が得られる。
【0065】
具体的に、本実施形態では、頭部327と注液孔周縁部との溶接部50において、キーホール溶接によって形成された第一部位51と、熱伝導溶接によって形成されたオーバーラップ部520とが重なっているため、該部位(第一部位51と第二部位52とが重なっている部位)における溶接欠陥(ブローホール等)が抑えられる。
【0066】
また、ケース本体31と蓋板32との溶接部50においても、キーホール溶接が行われた第一部位51と、熱伝導溶接が行われたオーバーラップ部520とが重なっているため、該部位(第一部位51と第二部位52とが重なっている部位)における溶接欠陥(ブローホール等)が抑えられる。
【0067】
次に、本発明に係る蓄電装置の一実施形態(第二実施形態)について図14図17を参照しつつ説明する。上述の実施形態における蓄電素子と同様の構成には同一符号を用いると共に説明を繰り返さず、異なる構成ついてのみ説明する。
【0068】
蓄電装置11は、外部端子4を有する少なくとも一つの蓄電素子1と、外部端子4に接続される少なくとも一つのバスバ12と、を有する。本実施形態の蓄電装置11は、複数の蓄電素子1と、複数のバスバ12と、を備える。
【0069】
バスバ12は、蓄電装置11に配置されている複数の蓄電素子1の外部端子4同士を導通可能に接続する。バスバ12は、導電性を有する部材によって形成される。本実施形態のバスバ12は、矩形の板状部材であり、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成されている。尚、複数のバスバ12のうち少なくとも二つは、蓄電素子1の外部端子4と、蓄電装置11の外部にある端子等とを導通可能に接続するのに用いられる。バスバ12は、外部端子4の接続面41と面接触するように外部端子4と接合されている。
【0070】
また、蓄電装置11は、蓄電素子1とバスバ12との他に、蓄電素子1に隣接するスペーサ110と、蓄電素子1及びスペーサ110をひとまとめに保持する保持部材113とを備える。また、蓄電装置11は、蓄電素子1と保持部材113との間に配置されるインシュレータ114も備える。
【0071】
以上のように構成される蓄電装置11は、以下のように製造される。
【0072】
複数の蓄電素子1と、蓄電素子1間に配置されるスペーサ110と、が保持部材113によってひとまとめに保持される(ステップS10)。このとき、インシュレータ114は、各蓄電素子1と保持部材113との間に配置されている。続いて、外部端子4とバスバ12とがレーザ溶接される(ステップS11)。このレーザ溶接は、以下の通りである。
【0073】
蓄電素子1の製造方法における溶接と同様に、先ず、パルス状のレーザによるキーホール溶接がバスバ12における所定の領域の周縁に沿って行われる(ステップS111)。この所定の領域は、バスバ12と外部端子4との当接面(接続面41)に沿った領域である。レーザ照射位置が最初に形成された溶接痕(即ち、溶接開始位置510)の手前で、パルス状のレーザのパルス波形が切り換えられ(ステップS112)、続いて、熱伝導溶接が行われる(ステップS113)。即ち、溶接部50の溶接開始位置510を含む第一部位51の端部と重なるように、第二部位52(オーバーラップ部520)が形成される(図15参照)。
【0074】
このようにバスバ12と外部端子4とがレーザ溶接によって接合されると、蓄電装置11が完成する。
【0075】
以上の蓄電装置11及び蓄電装置11の製造方法では、溶接部50において、少なくとも最後の溶接痕が形成されるときに該最後の溶接痕が形成される部位(キーホール溶接よる溶接痕によって形成された第一部位51)に気泡が混入していても、レーザの出力が小さいため該レーザが前記気泡を貫通してブローホールを形成することが防がれる。これにより、溶接欠陥が抑えられた品質の高い蓄電装置が得られる。
【0076】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0077】
上記第一及び第二実施形態では、ケース本体31と蓋板32、注液孔周縁部と頭部327、及び、外部端子4とバスバ12の接合において、溶接部50(溶接開始位置510を含む端部とオーバーラップ部520とが重なった溶接部50)が形成されるように溶接されているが、この構成に限定されない。例えば、蓋板32に安全弁を取り付ける等、蓄電素子1又は蓄電装置11の製造時において、金属製の部材同士が重ね合わされた状態で接合される場合(即ち、金属製の第一部材と、第一部材と重なった状態で配置される金属製の第二部材とが接合される場合)に、溶接部50が形成されるように溶接されればよい。具体的に、上記第一及び第二実施形態等に示す例では、ケース3(注液栓326を除く)が第一部材のときに、注液326栓が第二部材であり、ケース本体31が第一部材のときに、蓋板32が第二部材であり、外部端子4が第一部材のときに、バスバ12が第二部材である。
【0078】
上記第一及び第二実施形態の溶接部50では、第一部位51と第二部位52との境界が溶接部50におけるオーバーラップ部520の開始位置から溶接方向において離れた位置であるが、この構成に限定されない。例えば、前記境界位置は、オーバーラップ部520の開始位置の少し手前の位置(前記開始位置に近い位置)であってもよく、オーバーラップ部520上であってもよい。即ち、第二部位52は、オーバーラップ部520より長くてもよく、短くてもよい。
【0079】
上記第一及び第二実施形態の溶接部50では、溶接開始位置(最初に形成された溶接痕)510と溶接終了位置(最後に形成された溶接痕)とが何れも溶接部50が囲む所定の領域の周縁上にあるが、この構成に限定されない。例えば、図18図22に示すように、溶接開始位置510及び溶接終了位置512の少なくとも一方が、前記所定の領域(溶接部50によって囲まれた領域)の周縁と異なる位置に形成されてもよい。この場合、溶接開始位置510又は溶接終了位置512は、前記所定の領域内に位置してもよく(図18図19図22参照)、所定の領域外に位置してもよい(図20図21参照)。尚、図18図22の溶接部50において、第一部位51と第二部位52との境界位置を符号514で示す。
【0080】
また、上記第一及び第二実施形態における溶接部50では、最後に形成された溶接痕によって構成される第二部位52の端部は、オーバーラップ部520上であるが、オーバーラップ部520上になくてもよい。
【0081】
蓄電素子1及び蓄電装置11において、溶接部50が形成されるように溶接される部材は、ケース本体31及び蓋板32のみでもよく、蓋板32の注液孔周縁部と頭部327のみでもよく、外部端子4とバスバ12のみでもよい。
【0082】
溶接部50を形成する際に、キーホール溶接から熱伝導溶接に切り換える具体的なタイミングは、限定されない。溶接部50が第一部位(キーホール溶接の溶接痕によって構成される部位)51と第二部位(熱伝導溶接の溶接痕によって構成される部位)52とを有し、少なくとも、第二部位52が、溶接部50において最後に形成された溶接痕を含んでいればよい。
【0083】
上記第一及び第二実施形態では、第一部位51及び第二部位52の両方の部位が、出力波形がパルス状のレーザを用いた溶接によって形成されているが、この構成に限定されない。第二部位52は、出力を図8の一点鎖線のピーク値程度とした連続光(連続発振)のレーザを用いた溶接(CW溶接等)によって形成されてもよい。この場合も、第二部位52は、熱伝導溶接によって形成される。
【0084】
上記第一及び第二実施形態の蓄電素子1は、電極が巻回された巻回型の電極体を備えているが、この構成に限定されない。蓄電素子1は、電極が積層された積層型の電極体を備えていてもよい。
【0085】
また、上記第一及び第二実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記第一及び第二実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1…蓄電素子、2…電極体、21…巻芯、22…積層体、3…ケース、31…ケース本体、311…閉塞部、312…胴部、313…長壁部、314…短壁部、32…蓋板、325…注液孔、326…注液栓(第二部材)、327…頭部、328…挿入部、329…基準凹部、33…内部空間、34…開口周縁部、4…外部端子、41…接続面、5…集電体、6…絶縁部材、11…蓄電装置、110…スペーサ、113…保持部材、114…インシュレータ、12…バスバ、50…溶接部、51…第一部位、510…溶接開始位置、52…第二部位、520…オーバーラップ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22