(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾斜規制部は、前記立壁に沿わせて固定された、上下方向の断面が円形の棒状部材よりなり、前記棒状部材と前記案内面の間には、前記棒状部材の断面の直径よりも狭い間隙が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電極測長装置。
金属材料を収容した炉体を電極の軸に対して旋回可能で、前記電極を介して放電を起こすことで前記金属材料を溶融させる旋回式電気炉とともに設けられることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電極測長装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5(a)に示すように、放電を行う前の電極Eにおいては通常、先端E1が、電極Eの軸の周りに略対称な形状となるように、また平坦になるように、加工されている。しかし、電極Eを放電に用いた際に、先端E1が軸対称で平坦な形状を維持したまま消耗されるとは限らない。例えば、複数の電極を用いて放電を行う場合に、
図5(b)に示すように、他の電極と対向していた方向d1側の部位で消耗が速く起こる一方、反対の方向d2側の部位の消耗は遅く、先端E1が方向d2側に偏って尖った形状となる場合がある。あるいは、放電中に電極Eが金属材料と衝突すること等で折損が生じることもあり、この場合にも先端E1が軸対称から逸脱した複雑な形状をとりうる。
【0006】
上記のように、特許文献1においては、電極の先端を接触させる受台が平坦な面よりなっており、
図5(a)のように先端E1が軸対称で平坦な状態の電極Eを受台に接触させた場合には、電極Eの軸を中心にしたある程度広い領域が受台に接触し、接触が高感度に検出されやすい。しかし、
図5(b)のように先端E1が軸対称から逸脱し、しかも尖った複雑な形状を有する電極Eを受台に接触させた場合には、電極の軸の位置から外れた位置の狭い領域で受台に接触することになるので、電極Eの接触が検出されにくくなってしまう。その結果、電極Eの長さを安定に計測できない可能性がある。例えば、特許文献1に記載されるように、電極Eの接触を検知する手段が光センサよりなり、電極Eの先端E1が光を遮ったのを検出して電極Eの接触を検知する場合に、電極Eの先端E1が
図5(b)における方向d2側の尖った部位で受台に接触したとしても、検出用の光が電極Eの方向d1側の消耗が進んでいる部位を通り抜けて遮断されないという事態が起こり得る。あるいは、同じく特許文献1に記載されるように、電極Eの接触を検知する手段がリミットスイッチよりなり、スプリングで支持した受台にリミットスイッチを当接させておき、電極Eが受台に接触したときに受台が下がってリミットスイッチを付勢することによって接触が検知される場合に、
図5(b)における方向d2側の先端E1が受台に接触したとしても、その尖った形状のために、受台を十分に押し下げられない可能性がある。また、その非対称な形状のために、受台の中心から方向d2側に外れた位置に下向きの力を印加することになるので、受台が傾き、リミットスイッチが正しく作動されない可能性もある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、電極の先端が複雑な形状を有する場合にも、電極の長さを安定に計測することができる電極測長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる電極測長装置は、電極を把持する把持部と、前記把持部を昇降させる昇降部と、前記把持部の上下方向の位置を検知する把持位置検知部と、上方に前記電極が侵入可能な開口を有し、底面に上方から力が印加されることで下降する容器と、前記容器の下降を検知する下降検知部と、を備え、前記電極の温度よりも高い融点を有する耐熱性粉粒体が前記容器内に充填された電極接触部と、前記昇降部によって前記電極を基準位置から下降させ、前記下降検知部が前記容器の下降を検知するまでの、前記把持位置検知部によって検知された前記把持部の位置の変化量に基づいて、前記把持部の位置から下端までの前記電極の長さを検出する制御部と、を有することを要旨とする。
【0009】
ここで、前記耐熱性粉粒体としては、砂を挙げることができる。また、前記下降検知部は、前記容器に前記電極が侵入する軸の周りの複数の位置に取り付け可能であることが好ましい。そして、前記下降検知部としては、例えばリミットスイッチを挙げることができる。
【0010】
また、前記容器は、下方に延びた案内面を一体に有し、前記容器を上方に付勢する付勢手段を介して、設置面の上方に支持されており、前記設置面には、前記案内面と対向する立壁が立設され、前記案内面と前記立壁のいずれか一方の面には、他方の面と対向する部位に、該他方の面と当接することで前記立壁に対する前記案内面の傾斜を規制する傾斜規制部が設けられているとよい。この際、前記傾斜規制部は、前記立壁に沿わせて固定された、上下方向の断面が円形の棒状部材よりなり、前記棒状部材と前記案内面の間には、前記棒状部材の断面の直径よりも狭い間隙が設けられているとよい。
【0011】
上記のような電極測長装置は、金属材料を収容した炉体内に電極を介して放電を起こすことで前記金属材料を溶融させる電気炉、ないし金属材料を収容した炉体を電極の軸に対して旋回可能で、前記電極を介して放電を起こすことで前記金属材料を溶融させる旋回式電気炉とともに設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記発明にかかる電極測長装置においては、容器の内部に粉粒体が充填されており、把持部に把持された電極が昇降部によって下降された際に、電極の先端が開口部から粉粒体の層に接触することになる。すると、電極先端から粉粒体に対して下方に力が加えられ、粉粒体がその力を容器の底面に伝達することで、容器が下降し、下降検知部によって検知される。粉粒体の存在により、電極先端から印加される力が空間的に分散されて容器の底面に伝達されるので、電極の先端が軸対称から逸脱した形状を有している場合にも、容器が安定に押し下げられ、粉粒体を有さない場合と比べ、容器の下降が検出されやすくなる。また、電極の先端が尖っている場合にも、先端部が粉粒体の層に陥入することで、電極の表面の広い面積から粉粒体に力が伝達され、十分に容器を下降させやすくなる。これらの結果、電極の先端の形状が複雑であっても、安定に電極の長さを計測することが可能となっている。また、粉粒体が、電極の温度よりも高い融点を有していることで、放電や通電を行った後に高温になった状態の電極に対しても、長さの測定を行うことができる。
【0013】
ここで、耐熱性粉粒体が砂である場合には、容器に緻密に充填できるうえ、非常な高温の状態にある電極と接触しても変性等を実質的に受けず、安定な電極長の測定に寄与する耐熱性粉粒体を、安価に利用することができる。
【0014】
また、下降検知部が、容器に電極が侵入する軸の周りの複数の位置に取り付け可能である場合には、電極の先端が軸対称から逸脱した形状を有するために、粉粒体を介してもなお、容器を不均一に下降させ、傾斜させてしまうことが起こった際に、相対的に下降しやすい位置に下降検知部を取り付けることにより、容器の下降を下降検知部によって高感度に検知することができる。
【0015】
また、容器が、下方に延びた案内面を一体に有し、容器を上方に付勢する付勢手段を介して、設置面の上方に支持されており、設置面に、案内面と対向する立壁が立設され、案内面と立壁のいずれか一方の面に、他方の面と対向する部位に、該他方の面と当接することで立壁に対する案内面の傾斜を規制する傾斜規制部が設けられている場合には、付勢手段が備えられていることで、粉粒体への電極の接触、嵌入によって容器が下降しても、電極が離れると容器が元位置に復帰し、電極長の測定を繰り返すことができる。そして、容器と一体になった案内面と設置面に固定された立壁の間に傾斜規制部材が設けられていることで、付勢手段を介して設置面に支持されている容器が昇降する際に傾斜しようとしても、その傾斜が規制され、容器のスムーズな昇降が補助される。これにより、一層安定に電極の長さを測定することができる。
【0016】
この際、傾斜規制部が、立壁に沿わせて固定された、上下方向の断面が円形の棒状部材よりなり、棒状部材と案内面の間に、棒状部材の断面の直径よりも狭い間隙が設けられている場合には、容器が傾斜しても、案内面と棒状部材が当接することで、それ以上の傾斜が規制されるので、簡素な構成で傾斜規制部を設けることができる。また、棒状部材が円形の断面を有していることで、棒状部材と案内面の当接があっても、容器の昇降運動が滑らかに案内される。一方で、案内面と棒状部材の間に間隙が設けられていることで、ある程度の容器の傾斜は許容されるので、容器に小程度の傾斜が生じた場合でも、電極の長さの計測を継続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態にかかる電極測長装置について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
[電極測長装置の概略]
本発明の一実施形態にかかる電極測長装置1は、
図1に示したような構成を有する。本電極測長装置1は、例えば、アーク放電によって金属材料を溶融させる電気炉の近傍に設置され、放電に使用する電極の長さを計測するのに用いられる。金属材料の溶融には、炭素電極等の電極が用いられるが、この種の電極は放電によって消耗され、短くなるので、放電条件を制御する観点から、所定時間の使用後にその長さを計測して消耗の程度を把握する必要がある。本電極測長装置1は、この電極の長さの計測を行うものである。電極測長装置1は、電極接触部10を除き、特許文献1に開示される電極長さの調整装置と同様の構成を有する。以下に、その概要を簡単に説明する。
【0020】
図1に示すように、本電極測長装置1は、電極Eの接触を検知する電極接触部10と、電極Eを把持する把持部30と、把持部30を介して電極Eの運動を駆動する駆動部20と、それらを制御する制御部40と、を有している。本電極測長装置1において、把持部30によって、略円筒形で中実に形成された長尺の電極Eを把持し、その長さを計測する。
【0021】
把持部30は、軸を上下方向に配置した電極Eを、外周方向から挟み込んで把持するクランプ状の部材である。把持部30は、制御部40によって制御されるシリンダ機構31によって開閉されることで、電極Eを把持した状態と把持を解除した状態を切り替えることができる。把持部30による把持を解除した状態においても、電極Eは、把持部30との当接により、倒れない状態に保持される。
【0022】
駆動部20は、上下運動を駆動する昇降部22として、例えば油圧シリンダを有する。油圧シリンダの出力軸は、支柱21aに連結されている。そして、支柱21aと把持部30の間が支腕21bによって結合されている。これにより、昇降部22によって上下運動を駆動すると、把持部30および把持された電極Eが昇降される。昇降部22の油圧シリンダには、リニアエンコーダよりなる把持位置検知部24が設けられており、把持部30の上下方向位置を検出する役割を果たす。リニアエンコーダは、読み取ったカウントを制御部40に出力する。なお、ここでは、昇降部22として油圧シリンダを用いる形態を示しているが、特許文献1に示されるように、動滑車を用いて昇降部22を構築してもよい。また、把持位置検知部24としてリニアエンコーダを用いているが、特許文献1に示されるように、光センサやリミットスイッチの配列等を用いてもよい。
【0023】
電極接触部10の構成については、後に詳しく説明するが、把持部30の直下に配置されており、電極Eが昇降部22によって下降され、その先端(下端)E1が接触すると、接触を検出して制御部40に信号を送る。制御部40は、公知の演算装置よりなる。
【0024】
電極Eの長さを測定するに際し、制御部40は、昇降部22を制御して、電極Eの先端E1が電極接触部10から十分に上方に離れた所定の基準位置から、把持部30を下降させる。そして、電極Eの先端E1が電極接触部10に接触すると、制御部40にそのことを示す信号が入力され、制御部40は昇降部22による把持部30の下降を停止する。そして制御部40は、把持位置検知部24のリニアエンコーダが出力したカウント数における基準位置からの変化量に基づいて、基準位置からの把持部30の移動量を算出する。さらに、電極接触部10が設置された設置面Pからの電極接触部10の上面および基準位置の高さが既知であるので、それら既知の高さと算出した把持部30の移動量に基づいて、把持部30の位置から先端E1までの電極Eの長さ(首下長さ)を算出する。
【0025】
電極Eは、放電に使用すると消耗して短くなるので、上記のようにして計測された首下長さが、所定の基準長さよりも短くなっていれば、再度放電を行う前に、把持部30で把持する位置を電極Eの上方に移動させ、首下長さを長くすることが望ましい。放電の条件は、炉内の金属材料と電極Eとの間の距離に大きく依存し、距離が遠すぎると放電が有効に起こらないからである。具体的には、制御部40が算出した首下長さが基準長さよりも短くなっていれば、制御部40は、電極Eの先端E1を電極接触部10に接触させた状態のまま、把持部30に連結されたシリンダ機構31によって把持部30を開状態としてから、昇降部22によって電極Eに沿って把持部30を上昇させる。昇降部22が所望の距離だけ上昇すると、上昇を停止させ、シリンダ機構31によって把持部30を閉状態とする。把持部30の上昇量の決定方法は、特許文献1に記載されているものを採用すればよい。
【0026】
[電極接触部の構成]
次に、電極接触部10について詳細に説明する。電極接触部10は、
図2〜4に示されたような構成を有する。電極接触部10は、ブロック状の耐火物12と、耐火物12の上方に一体に固定された金属製の容器14とを有する。そして、この耐火物12と容器14の組合体が、上下方向に軸を向けて配置された付勢手段としてのコイルばね16によって、設置面Pの上方に支持されている。
【0027】
容器14は、有底の円筒状に形成されており、下降してきた電極Eの先端E1が侵入可能な開口を上方に有している。容器14の内部には、砂15が充填されている。コイルばね16は、耐火物12および砂15を充填した容器14を安定に支持できるように、例えば3本設けられている(
図4参照)。さらに、設置面Pには、容器14の下降を検知する下降検知部として、リミットスイッチ18が固定されている。そして、容器14の外側には、リミットスイッチ18の上方に、ストライカ18aが固定されている。リミットスイッチ18から出力された信号は、制御部40に入力される。容器14に上下方向の外力が印加されない状態においては、リミットスイッチ18とストライカ18aは上下に離間しているが、外力によって容器14を下降させることによって、リミットスイッチ18にストライカ18aが接触され、制御部40に向かって信号が出力される。
【0028】
設置面Pには、コイルばね16が設置された領域を囲むように、略円筒形の立壁17が立設されている。そして、容器14には、側壁を下方に延出させて、案内面14aが設けられている。案内面14aは、設置面Pに固定された立壁17より大径の略円筒状に形成されており、立壁17の外側を囲むように立壁17の面に対向して配置されている。設置面Pと案内面14aが対向している部位には、設置面Pと案内面14aの間に、傾斜規制部19が配置されている。傾斜規制部19は、断面略円形の棒状部材が略円環状に成形されたものである。傾斜規制部19は、立壁17の外径と略等しい円環内径を有し、円環の中心軸を上下方向に配置して立壁17の外周に沿わせた状態で、溶接により立壁17に固定されている。一方、容器14が直立した状態において、傾斜規制部19と案内面14aの間は接触しておらず、間に間隙Gを有している。
【0029】
図2(b)に示すように、昇降部22によって下降された電極Eの先端E1が容器14内の砂15が充填された領域に達すると、電極Eの先端E1が砂15の層の表面に接触する。あるいは、さらに砂15の層の中に陥入する。すると、砂15の層に上方から下方に向かう力が印加され、その力が砂15の層を介して容器14の底面に伝達され、コイルばね16を圧縮しながら容器14が耐火物12とともに下降する。すると、容器14に固定されたストライカ18aが設置面Pに固定されたリミットスイッチ18に接触し、そのことを示す信号が制御部40に伝達される。これにより、制御部40が、容器14の下降、すなわち電極接触部10への電極Eの接触を認識し、昇降部22による電極Eの下降を停止させる。電極Eの首下長さを算出するための制御部40におけるその後の演算については、上述のとおりである。容器14がコイルばね16によって上方に付勢されているので、再度電極Eが上昇されて砂15の層の表面から離れると、コイルばね16の圧縮が解消され、もとの
図2(a)の状態に戻る。これにより、再度電極Eの首下長さを計測することが可能となる。
【0030】
金属材料の溶融を複数の電極Eからの放電で行う場合のように、複数の電極Eが同時に使用される場合も多いが、その場合には、電極Eと同数の電極接触部10を設け、電極Eの配置に応じて、それらを配置すればよい。例えば
図4では、3本の電極Eを用いる場合に対応した形態を上面図として示している。3つの電極接触部10は、共通の設置面Pとなるベース50に据え付けられている。
【0031】
リミットスイッチ18は、1つの電極接触部10に対して1つ設けるが、リミットスイッチ18は、電極接触部10の中心軸の周りの角度位置が異なる複数の位置に取り付け可能としておくことが好ましい。例えば、
図4に示した例では、ベース50上に、リミットスイッチ18をねじ締結によって取り付けるための取付孔が、各電極接触部10の外周を囲んで、120°ずつ離間させて、3組設けられている(51a〜51c)。また、容器14の外壁にも、ストライカ18aを取り付けるための取付片が、3個設けられている(52a〜52c)。これにより、電極Eが侵入する軸となる容器14の中心軸の周りに設けられた3つの取付位置のうち、1つを選択してリミットスイッチ18およびストライカ18aを取り付けることができる。
【0032】
本電極接触部10は、上記のように、容器14に充填した砂15の層に電極Eの先端E1を接触または陥入させて、容器14の下降を検出するようにしていることで、電極Eの先端E1が複雑な形状を有していても、安定に容器14の下降、すなわち電極接触部10への電極Eの接触を検出することができる。
図5(b)に示したように、放電に用いた電極Eの先端E1は、不均一な消耗や折損によって、軸対称から大きく逸脱した形状や、鋭く尖った形状をとりやすい。特許文献1に記載されるように、耐火物ブロックのような剛体に電極Eの先端E1を接触させ、その剛体の下降をリミットスイッチによって検出する場合には、その剛体に印加される下向きの力が不均一になることで剛体が傾く事態や、十分広い領域に力が印加されないことで剛体が十分な変位量で下降しない事態が起こり得る。これらの場合には、リミットスイッチが作動せず、剛体の下降、すなわち電極Eの接触を十分に検知できない場合がある。
【0033】
これに対し、本電極接触部10においては、砂15の層の表面に電極Eが接触して砂15の層に力を印加するので、砂15の粒状体としての性質により、その力が砂15の層の中で空間的に分散されて容器14の底面に印加され、容器14を下降させる。そのため、
図5(b)のように、電極Eの中心から外れた部位が尖っており、砂15の層の表面に不均一な力を印加したとしても、砂15の層がその不均一性を緩和して、力を容器14の底面の広い範囲に伝達する。これにより、傾きが小さい状態で、また大きな変位量で容器14が下降されやすくなる。結果として、容器14の下降、すなわち電極接触部10への電極Eの接触の検出において、電極Eの先端E1の形状による検出/不検出の不確定性が小さくなり、電極Eの接触を安定に検出することができる。これにより、電極Eの首下長さの正確な計測が可能となっている。
【0034】
特に、電極Eの先端E1が砂15の層の表面に接触するだけでなく、
図5(b)のように、砂15の層の内部にまで陥入する場合には、砂15が電極Eの先端E1を取り囲むので、電極Eの表面の広い領域から力を受けることになる。これにより、砂15の層が電極Eから印加された力を一層効果的に分散させ、容器14の底面に伝達するので、容器14の下降が一層安定に検出される。
【0035】
さらに、上記のように、本電極測長装置1は、電極Eの首下長さを計測するだけでなく、その計測結果に基づいて、把持部30による電極Eの把持位置を変更する掴み替え装置としての機能も果たすが、砂15の存在により、この掴み替えも安定に行うことができる。掴み替えのために把持部30を開状態として移動させる間、電極Eは把持部30に固定されておらず、不安定な状態となる。しかし、この際に電極Eの先端E1が砂15の層に接触、特に陥入していることで、安定に保持されるので、電極Eが略垂直に立った状態が維持されやすい。これにより、電極Eに沿った把持部30の移動をスムーズに行うことができる。
【0036】
容器14内に充填する物質としては、砂に限られず、測長時の電極Eの先端E1の温度よりも高い融点を有する無機材料よりなる粉粒体であればよい。アーク放電終了直後の炭素電極Eの場合、先端E1の温度は2000℃程度になっている。電極Eの先端E1と接触する粉粒体は、この温度でも融解等の変性を起こさないことが求められる。このような材料としては、無機酸化物、炭化物、窒化物等を挙げることができる。砂は、上記のような高温でも非常に安定であり、また高密度に充填することができる。そして、安価に入手できるので、特に好適である。
【0037】
さらに、本電極接触部10においては、
図4に示すように、容器14の下降を検知するリミットスイッチ18を、複数の位置に取り付けることができるようになっている。そのため、容器14の下降を検出しやすい部位を選択してリミットスイッチ18を取り付けることで、検出の感度を高め、一層安定に電極Eの首下長さを計測することが可能となっている。具体的には、電極Eの不均一な消耗等により、先端E1の一部の部位(
図5(b)では方向d2側)が他の部位よりも突出した状態となると、その突出した部位で電極接触部10に接触し、下向きの力を印加することになるので、この突出した部位に対応する位置において容器14が下に傾斜し、下降量が大きくなりやすい。上記のように、電極Eと接触する部位に砂15を配置して電極Eから電極接触部10に印加される力を分散させることで、容器14が下降する際の傾きを抑制でき、下降量の不均一性を緩和することができるものの、完全にはそのような不均一性が排除できない可能性もある。しかし、容器14の下降量が大きい部位に近接した取付位置を選択してリミットスイッチ18を取り付ければ、容器14全体の中で下降量が小さい部位があっても、高感度に容器14の下降を検出することができる。
【0038】
電極Eの先端E1の形状や炉体との位置関係、複数の電極Eの相対配置等によって、電極Eのどの部位が消耗されやすいかは、ある程度一定している。例えば、3本の電極Eを三角形の頂点をなすように配置してアーク放電を行った場合に、各電極において、他の電極Eと対向している部位において(
図5(b)の方向d1に対応)、アークの出力が大きくなるので、この部位が消耗されやすくなる。つまり、各電極Eがなす三角形の内側に向いた部位で電極Eが消耗されやすいのに対し、三角形の外側に向いた部位で電極Eが消耗されにくく、内側よりも外側が突出した状態となる。よって、
図4に示しているように、三角形の頂点に配置された3つの電極接触部10において、それぞれ三角形の外側に相当する取付位置(左上の電極接触部10の場合、取付孔51cおよび取付片52c)にリミットスイッチ18およびストライカ18aを取り付けておけば、通常は最も高感度に容器14の下降を検出することができる。しかし、放電時の電極Eの消耗の空間的なパターンは、1回ごとの操業における炉内の金属材料の不均一性等、様々な要因に起因して、測長を行うたびに変化する可能性がある。また、電極Eの折損が起こった場合には、全く異なる先端形状をとる場合もある。このような場合には、容器14の下降量が比較的大きい取付位置を選択して、リミットスイッチ18を取り付ければよい。
【0039】
さらに、本電極接触部10においては、上記のような電極Eの形状の不均一性等に起因する容器14の傾きを抑制する観点から、設置面Pに固定された立壁17と容器14に固定された案内面14aの間に、傾斜規制部19が配置されている。容器14は、コイルばね16を介して設置面P上に支持されており、電極Eの先端形状の不均一性等に起因して容器14の底面に不均一に力が印加されると、コイルばね16の湾曲可能な範囲で容器14が傾斜しようとするが、案内面14aが傾斜規制部19に当接することで、容器14の傾斜が所定の範囲内に制限される。このようにして、容器14のまっすぐな下降が誘導される。さらに、傾斜規制部19が断面略円形の滑らかな曲面を有していることで、案内面14aが当接した状態でも、容器14の下降をスムーズに誘導することができる。
【0040】
容器14の傾斜が全く許容されない場合には、容器14の底面に不均一な力が印加された際に、リミットスイッチ18を作動させられる位置まで容器14が下降できない可能性や、案内面14aと立壁17の間にいわゆるカジリが生じる可能性があり、かえって安定な電極長の計測を妨げてしまうことになるが、傾斜規制部19と案内面14aの間に間隙Gが設けられているため、ある程度の容器14の傾斜が許容され、容器14の下降の安定な検出が促進される。間隙Gの幅は、許容される容器14の傾斜の程度に応じて選択すればよいが、有効に容器14の傾斜を規制する観点から、傾斜規制部19を構成する棒材の略円形の断面の直径よりも狭いことが好ましい。間隙Gの幅を傾斜規制部19の棒材の直径に対して1/6程度とする場合を、特に好適な例として挙げることができる。なお、ここでは傾斜規制部19が立壁17に固定されているが、案内面14a側に固定し、立壁17との間に間隙Gを設けるようにしてもよい。
【0041】
[電極測長装置と電気炉の併用]
上記のように、本発明の実施形態にかかる電極測長装置1は、アーク放電によって金属材料を溶融する電気炉に併設し、放電によって消耗される電極Eの測長および掴み替えを行うのに好適に用いることができる。また、放電の条件は、金属材料と電極Eの間の距離に大きく依存するので、金属材料の溶融の進行に伴って炉体に収容された未溶融の金属材料の体積が減少し、金属材料の上面の高さ位置が低くなった際に、昇降部22を用いて、電極Eの位置を下降させるようにすればよい。そして、電気炉で金属材料を溶融させる操業を何度も繰り返す場合に、操業と操業の間の時間に、電極測長装置1を用いて電極Eの首下長さを計測し、その結果に応じて、電極Eの掴み替えや交換を行えばよい。
【0042】
本電極測長装置1においては、安定に電極Eの測長を行えるので、従来の電極測長装置を用いる場合よりも、電極Eの測長や掴み替えを、簡便に、また短時間で実行することができる。これにより、金属材料の溶融の効率化に寄与する。また、上記のように、金属材料の溶融に伴う体積変化に対応して、電極Eの高さを下げる制御を溶融工程の最中に行う場合に、本電極装置を用いて事前に電極Eの首下長さを高精度に計測しておくことで、電極Eの高さを正確に制御し、溶融の効率を高めることができる。
【0043】
ここで、電気炉は、複数の電極Eを有し、それら電極Eの軸に対して金属材料を収容した炉体を旋回させられる旋回式電気炉とすることができる。複数の電極Eを用いて金属材料を溶融させる場合に、各電極Eに近い部位では金属材料が溶融しやすいホットスポットが形成される一方、電極と電極の間の部位では金属材料が溶融しにくいコールドスポットが形成され、金属材料の溶融状態が電極Eの軸の周りに不均一に分布することになる(例えば特開2014−40965号公報参照)。そこで、溶融の進行途中に炉体を電極Eの軸に対して旋回させて、電極Eと炉体の相対位置を変化させ、ホットスポットとコールドスポットの位置を入れ替えることで、溶融状態の不均一性を解消し、溶融の効率を高めることができる。このような旋回式電気炉と本電極測長装置1をともに用いることで、両者の与える効率性を利用し、金属材料の溶融と電極Eの首下長さの測定を交互に繰り返す操業工程全体を、高い効率で実行することができる。
【0044】
さらに、複数の電極Eを用いて金属材料を溶融させる場合に、炉体に投入する金属材料の塊の大きさの不均一性等に起因して、ある電極の周囲において、他の電極の周囲よりも金属材料の溶融が遅くなることがある。このような場合には、炉体を旋回させずに、その電極の周囲の金属材料を確実に溶融させた方がよい。金属材料と電極Eとの間の距離は、電極Eに流れる電流の大きさをモニターすることで見積もることができ、この種の電気炉においては通常、電極Eと金属材料の間の距離を一定に保つように、電流値に基づくフィードバック制御を行う。よって、ある電極の周囲の金属材料の溶融が他の電極の周囲よりも遅ければ、その電極の高さが他の電極より高くなる。このことは、把持位置検知部24によって、把持部30の高さとして検知される。そして、把持位置検知部24からその情報を入力された制御部40において、各電極間の高さの差が所定の基準より大きい間は炉体の旋回を行わないという判定を行うようにしておけばよい。この場合、炉体旋回の可否を判断するための指標として、把持位置検知部24の読み取り値をもとに、各電極Eの高さ位置を正確に見積もる必要があるが、そのためには、同じ把持位置検知部24を用いて各電極Eの首下長さを正確に知っておくことが重要である。この観点から、本電極測長装置1を用いて電極Eの首下長さを高精度に見積もっておくことで、旋回式電気炉において、炉体旋回の可否を的確に判定し、金属材料の溶融を高効率に進めることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、容器14の下降を検知する下降検知部として、上記ではリミットスイッチ18を用いたが、容器14の下降を検知できるものであればこれに限られず、設置面Pに光センサを設置し、下降する容器14の一部を検知する形態とすることができる。