(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上流側から電力が供給される三相配電線の三相のうちの何れか二相からなる3つの組み合わせのうちの1つを接続相として接続される複数の単相負荷の接続相を決定する電圧不平衡抑制支援方法であって、
前記三相配電線は、複数の、少なくとも相配列が同一の所定区間に分割されており、
前記所定区間毎に、前記三相配電線の相配列に応じて決まる、線間電圧が3つの前記接続相のうちで最小となる1つの接続相の合計容量が、他の2つの接続相毎の各合計容量よりも小さくなるように、前記単相負荷毎の接続相を決定する、
電圧不平衡抑制支援方法。
前記所定区間内の3つの前記接続相の総容量がそれぞれ3つの前記接続相に均等配分された状態で、前記所定区間内における電圧不均衡の度合いを示す電圧不平衡率を求めて第1電圧不平衡率とする第1ステップと、
前記三相配電線の相配列に応じて、前記所定区間内の3つの前記接続相のうち、合計容量を減らすべき1つの接続相を決定する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて決定した1つの接続相の合計容量を減少させ、当該合計容量の減少量に応じて、他の2つの接続相毎の各合計容量を増加させ、前記所定区間内の3つの前記接続相の総容量に対する3つの前記接続相毎の各合計容量の配分比率を変更し、当該配分比率に応じて、前記所定区間内における前記単相負荷毎の接続相を設定する第3ステップと、
前記第3ステップにおいて変更した、前記所定区間内の3つの前記接続相の総容量に対する3つの接続相毎の各合計容量の配分比率で、前記所定区間内における電圧不平衡の度合いを示す電圧不平衡率を求めて第2電圧不平衡率とする第4ステップと、
前記第1電圧不平衡率と前記第2電圧不平衡率とを比較し、前記第2電圧不平衡率が前記第1電圧不平衡率を下回った場合に、前記第2電圧不平衡率を前記第1電圧不平衡率とすると共に前記第3ステップに移行し、前記第2電圧不平衡率が前記第1電圧不平衡率以上となった場合に、前記第3ステップにおいて設定した、前記所定区間内における前記単相負荷毎の接続相を確定して出力する第5ステップと、
を含む、
請求項1に記載の電圧不平衡抑制支援方法。
上流側から電力が供給される三相配電線の三相のうちの何れか二相からなる3つの組み合わせのうちの1つを接続相として接続される複数の単相負荷の接続相を決定する電圧不平衡抑制支援装置であって、
前記三相配電線は、複数の、少なくとも相配列が同一の所定区間に分割されており、
前記所定区間毎に、前記三相配電線の相配列に応じて決まる、線間電圧が3つの前記接続相のうちで最小となる1つの接続相の合計容量が、他の2つの接続相毎の各合計容量よりも小さくなるように、前記単相負荷毎の接続相を決定する接続相決定部を備える、
電圧不平衡抑制支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
図1は、本実施形態に係る電圧不平衡抑制支援方法を適用する三相配電系統の一例を示す図である。三相配電系統100は、配電用変電所(不図示)内に設置された配電用変圧器200から三相配電線101に三相電力が送出されている。三相配電線101の複数のノードPには、それぞれ単相負荷2が接続されている。
【0019】
配電用変圧器200は、例えば一次側の電圧を所定の変圧比で変圧して、その変圧された電圧を二次側から出力する装置である。配電用変圧器200は、例えば66キロボルトの電圧が6.6キロボルトの電圧に変圧されるように、変圧比が設定されているものとする。
【0020】
三相配電線101は、配電用変圧器200(上流側)からの電力を各単相負荷2に供給するための電力線であり、例えば所定間隔で配設された電柱(不図示)に装柱されている。
【0021】
三相配電線101は、複数の区間1〜5に分割されている。区間1は、三相配電線101と平行に三相配電線102が装柱された2回線装柱区間(多回線装柱区間)である。区間2及び区間4は、三相配電線101の三相の配電線が垂直配列で装柱された垂直装柱区間である。区間3及び区間5は、三相配電線101の三相の配電線が水平配列で装柱された水平装柱区間である。2回線装柱(多回線装柱)、垂直装柱、水平装柱については、後述する。
【0022】
図2は、三相配電線に接続される単相負荷の一例を示す図である。三相配電線101を構成する三相の配電線a,b,cには、各線間電圧の振幅が等しく、且つ、線間電圧の位相が120°異なる三相交流電力が配電用変圧器200から供給されている。
【0023】
柱上変圧器21は、例えば一次側の電圧を所定の変圧比で変圧して、その変圧された電圧を二次側から出力する変圧器である。柱上変圧器21は、例えば6.6キロボルトの電圧が100ボルトまたは200ボルトの電圧に変圧されるように、変圧比が設定されているものとする。柱上変圧器21の一次側は、三相配電線101におけるノードPに対応した位置において、三相の配電線a,b,cのうちのいずれか2本(つまり、a相、b相、c相のうちのいずれか二相)に接続される。
図2では、柱上変圧器21の一次側が配電線a(a相)及び配電線b(b相)に接続された例を示している。
【0024】
負荷22は、三相配電系統100に設けられている電力負荷である。負荷22は、柱上変圧器21を介して三相配電線101に接続される。負荷22は、柱上変圧器21により変圧された電力が供給されることにより動作する電力負荷である。負荷22は、柱上変圧器21を介して、例えばa相とb相との二相、b相とc相との二相、c相とa相との二相のうち、いずれか二相の電力が供給されることにより動作する。以下、負荷22が柱上変圧器21を介して接続される二相を、「単相負荷2の接続相」、あるいは単に「接続相」とも呼ぶものとする。
【0025】
ノードPは、三相配電線101において、例えば柱上変圧器21が設けられる位置を示し、例えば、柱上変圧器21が設けられる電柱の位置に対応する位置を示している。ノードPは、三相配電系統100に設けられている柱上変圧器及び負荷の数に対応する数だけ設けられる。
【0026】
なお、上述した負荷22とは異なる、三相配電系統100に接続される三相電力負荷については、説明の便宜上、省略されている。三相電力負荷とは、三相配電線101の三相全ての配電線a,b,cに接続され、a相、b相、c相の三相全ての電力が供給されることにより動作する電力負荷である。
【0027】
図3は、水平装柱の一例を示す図である。水平装柱では、
図3に示すように、三相配電線101の各配電線a,b,cが地面に対して水平方向に配列されて装柱される。
【0028】
図4は、垂直装柱の一例を示す図である。垂直装柱では、
図3に示すように、三相配電線101の各配電線a,b,cが地面に対して垂直に配列されて装柱される。
【0029】
図5は、2回線装柱(多回線装柱)の一例を示す図である。2回線装柱(多回線装柱)では、三相配電線101と、三相配電線102とが平行して敷設され、三相配電線101の各配電線a,b,c、及び、三相配電線201の各配電線a’,b’,c’が水平装柱あるいは垂直装柱される。
【0030】
次に、三相配電系統100における電圧不平衡について説明する。三相配電系統100においては、電圧不平衡の発生要因として、相配列の非対称性によるものと、負荷配分の不均衡によるものとの2つの要因がある。ここで、「相配列」とは、三相配電線101の各配電線a,b,cの位置関係を指し、「相配列の非対称性による電圧不平衡」とは、水平装柱や垂直装柱において、配電線a,b,cが一列に並べて配置されることや、2回線装柱(多回線装柱)において、他回線の配電線からの影響等により、線間の相互インピーダンスが非対称となることにより生じる電圧不平衡を指すものとする。また、「負荷配分」とは、各接続相毎の負荷容量の配分を指し、「負荷配分の不均衡による電圧不平衡」とは、各接続相に接続される単相負荷の合計容量が不均衡となることにより生じる電圧不平衡を指すものとする。
【0031】
ここでは、まず、
図6及び
図7を用いて、三相配電線101における三相の各配電線a,b,cの相配列の非対称性により生じる電圧不平衡について説明する。
図6は、無負荷状態における三相配電線の等価回路を示す図である。
図7は、無負荷状態の三相配電線において、相配列の非対称性により発生する電圧不平衡の一例を示す電圧ベクトル図である。
【0032】
図6に示す例において、三相電力は三相配電線101の左端側から供給されるものとする。以下、三相配電線101の左端側を「上流側」、三相配電線101の右端側を「下流側」とも呼ぶものとする。
【0033】
三相配電線101の上流側では、各線間電圧Vab,Vbc,Vcaの振幅は等しく、且つ、各線間電圧Vab,Vbc,Vcaの位相は120°異なる。これにより、線間電圧ベクトルにより表される電圧ベクトル図は、
図7に示すように、各線間電圧Vab,Vbc,Vcaが平衡した略正三角形状となる。
【0034】
線路の抵抗成分をR、リアクタンス成分をXとすると、線路インピーダンスの一般式は、Z=R+jX(jは、複素記号)と表される。
【0035】
3本の各配電線a,b,cで構成される三相配電線101においては、
図6に示すように、各配電線a,b,c間の距離に応じて、各配電線a,b,cの間に相互リアクタンス成分Xab,Xbc,Xacが生じる。各配電線a,b,cの抵抗成分及びリアクタンス成分が等しく、且つ、各配電線a,b,cの配置条件が対称である場合には、三相配電線101の下流側における各線間電圧Va’b’,Vb’c’,Vc’a’の平衡状態が保たれる。
【0036】
一方、水平装柱及び垂直装柱では、各配電線a,b,cが一列に並び装柱されるため、各線間に生じる相互リアクタンス成分Xab,Xbc,Xacの大きさが異なる。これにより、線間電圧ベクトルにより表される電圧ベクトル図は、
図7に示すように、各線間電圧Va’b’,Vb’c’,Vc’a’の平衡状態が崩れた不等辺な三角形状となる。
【0037】
各配電線a,b,cの相配列が
図6に示すような順序で並ぶ水平装柱や垂直装柱において、三相配電線101の下流側の各線間電圧Va’b’,Vb’c’,Vc’a’の大小関係は、
図7に示すように、Vb’c’>Vc’a’>Va’b’となり、線間電圧Va’b’が線間電圧Vb’c’及び線間電圧Vc’a’よりも小さくなる。
【0038】
なお、多回線装柱の場合や、水平装柱あるいは垂直装柱であっても、相配列が異なる場合には、
図7に示す特性とは異なる結果となる。つまり、相配列が異なれば、三相配電線101の下流側の各線間電圧Va’b’,Vb’c’,Vc’a’の大小関係が異なる。
【0039】
次に、
図8及び
図9を用いて、負荷配分の不均衡により生じる電圧不平衡について説明する。
図8は、単相負荷をa相とb相との二相間に接続した三相配電線の等価回路を示す図である。
図9は、単相負荷をa相とb相との二相間に接続した三相配電線において、負荷配分の不均衡により発生する電圧不平衡の一例を示す電圧ベクトル図である。
図8及び
図9に示す例では、負荷配分の不均衡により生じる電圧不平衡の説明を容易とするため、上述した相配列による影響、すなわち、各線間に生じる相互リアクタンス成分を考慮せず単純化している。
【0040】
図8に示す例では、b相とc相との二相間、及びc相とa相との二相間は無負荷である。ノードPにおける電圧ベクトル図は、
図9に示すように、各線間電圧Va’b’,Vb’c’,Vc’a’の平衡状態が崩れた不等辺な三角形状となり、各線間電圧Va’b’,Vb’c’,Vc’a’の大小関係は、Vc’a’>Vb’c’>Va’b’となる。つまり、単相負荷2を接続したa相とb相との線間電圧が最も小さくなる。
【0041】
次に、本実施形態に係る電圧不平衡抑制支援方法及び電圧不平衡抑制支援装置について説明する。
【0042】
図10は、
図1に示す各区間1から区間5のいずれかの区間を所定区間Xとして示した模式図である。所定区間Xの区間端Aから区間端A’の間の三相配電線101には、n個(nは、2以上の整数とする)の単相負荷2−1,2−2,2−3,2−4,2−5,2−6,2−7,2−8,・・・,2−nがそれぞれ対応するノードP1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,・・・,Pnに接続される。各単相負荷2−1〜2−nは、後述する接続相決定処理において接続相が決定される。
【0043】
図11は、本実施形態に係る電圧不平衡抑制支援装置の機能ブロックの一例を示す図である。
図11に示すように、本実施形態に係る電圧不平衡抑制支援装置1は、例えば、入力部11、出力部12、表示部13、記憶部14、接続相決定部15、制御部16を有する。
【0044】
入力部11は、電圧不平衡抑制支援装置1に対して情報を入力するための例えばキーボードである。
【0045】
出力部12は、電圧不平衡抑制支援装置1の外部に情報を出力するための例えばプリンタである。
【0046】
表示部13は、電圧不平衡抑制支援装置1に入力された情報を表示したり、改修装置1から出力される情報を表示したりするための例えばモニタである。
【0047】
記憶部14は、例えば、第1の領域141、第2の領域142、第3の領域143を有する。記憶部14は、例えば、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ若しくはフラッシュメモリ等又はこれらを組み合わせたものである。
【0048】
第1の領域141には、例えば、電圧不平衡抑制支援装置1を動作させるためのプログラムが記憶されている。第1の領域141には、更に、例えば、各単相負荷2−1〜2−nの接続相を決定するためのプログラム(以下、「接続相決定処理プログラム」とも称する)が記憶されている。
【0049】
第2の領域142には、例えば、各区間(
図10に示す所定区間X)内に設けられた単相負荷(
図10に示す単相負荷2−1から単相負荷2−n)単位の情報である単相負荷情報設定テーブルT1(
図12)、及び、三相配電系統の配電区域内に設定された各区間(
図1に示す区間1から区間5)単位の情報である区間情報設定テーブルT2(
図13)が記憶されている。単相負荷情報設定テーブルT1及び区間情報設定テーブルT2については、後述する。
【0050】
第3の領域143には、本実施形態に係る電圧不平衡抑制支援方法における接続相決定処理において求める第1電圧不平衡率と第2電圧不平衡率とが記憶される。なお、第1電圧不平衡率及び第2電圧不平衡率については、後述する。
【0051】
接続相決定部15は、第2の領域142に記憶されている各種情報に基づいて、各単相負荷2−1〜2−nの接続相を決定する。
【0052】
制御部16は、第1の領域141に記憶された、例えば電圧不平衡抑制支援装置1を動作させるためのプログラムに基づいて、電圧不平衡抑制支援装置1の動作を制御する。また、制御部16が接続相決定処理プログラムを起動することにより、接続相決定部15により接続相決定処理が実行される。
【0053】
接続相決定部15及び制御部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びメモリを組み合わせて構成することができる。
【0054】
図12は、本実施形態に係る単相負荷情報設定テーブルの一例を示す図である。単相負荷情報設定テーブルT1は、各区間毎に設定され、第2の領域142に記憶されている。ここでは、
図10に示す所定区間Xに対して設けられた例について説明する。
【0055】
単相負荷情報設定テーブルT1は、各単相負荷(例えば、
図10に示す所定区間Xにおける各単相負荷2−1〜2−n)に対して、各単相負荷が接続されている位置に対応する各ノード(例えば、
図10に示すP1〜Pn)と、各単相負荷の容量(電力負荷量)と、各単相負荷の接続相とが対応付けられ、第2の領域142に記憶されている。単相負荷情報設定テーブルT1に設定される各情報のうち、各単相負荷の接続相以外の情報は、後述する接続相決定処理を実施する前に予め設定されているものとする。なお、単相負荷情報設定テーブルT1における各情報は、例えば、入力部11、接続相決定部15等によって設定可能であることとする。
【0056】
なお、各単相負荷の容量とは、例えば、各単相負荷の各柱上変圧器毎に予め定められている容量であり、例えば、各柱上変圧器の定格に基づいて定められる容量である。
【0057】
図13は、本実施形態に係る区間情報設定テーブルの一例を示す図である。単相負荷情報設定テーブルT1は、第2の領域142に記憶されている。
【0058】
区間情報設定テーブルT2は、各区間(例えば、
図1に示す区間1から区間5)に対して、各区間内における三相配電線の相配列と、装柱方法と、各区間内に設けられた単相負荷の総容量と、各区間内における三相配電線のab相に接続される単相負荷の合計容量と、各区間内における三相配電線のbc相に接続される単相負荷の合計容量と、各区間内における三相配電線のca相に接続される単相負荷の合計容量と、係数Kとが対応付けられ、第2の領域142に記憶されている。区間情報設定テーブルT2に設定される各情報のうち、各区間内における三相配電線の相配列、装柱方法、各区間内に設けられた単相負荷の総容量、及び係数Kは、後述する接続相決定処理を実施する前に予め設定されているものとする。なお、区間情報設定テーブルT2における各情報は、例えば、入力部11、接続相決定部15等によって設定可能であることとする。また、接続相に接続される単相負荷の合計容量については、以下、「接続相(ab相、bc相、ca相)の合計容量」とも称するものとする。また、各区間内に設けられた単相負荷の総容量については、以下、「(所定区間内の)3つの接続相の総容量」とも称するものとする。係数Kについては、後述する。
【0059】
図14は、本実施形態に係る電圧不平衡抑制支援方法における接続相決定処理の一例を示すフローチャートである。
【0060】
(ステップS1)
操作者により接続相決定処理を実行する区間が指定され、制御部16により接続相決定処理プログラムが起動されると、まず、接続相決定部15は、指定された所定区間内の3つの接続相(ab相、bc相、ca相)の総容量がそれぞれ3つの接続相に均等配分された状態で、所定区間内における電圧不均衡の度合いを示す電圧不平衡率を求めて第1電圧不平衡率とする。
【0061】
具体的には、接続相決定部15は、指定された区間の単相負荷情報設定テーブルT1から、各単相負荷の容量を読み出し、区間情報設定テーブルT2から、各区間内に設けられた単相負荷の総容量を読み出し、接続相毎の合計容量がそれぞれ均等となるように、各単相負荷の接続相を設定して単相負荷情報設定テーブルT1に記憶すると共に、接続相毎の合計容量を区間情報設定テーブルT2に記憶する(ステップS11)。
【0062】
続いて、接続相決定部15は、単相負荷情報設定テーブルT1から、各単相負荷が接続されている位置に対応する各ノード(例えば、
図10に示すP1〜Pn)と、各単相負荷の容量(電力負荷量)と、各単相負荷の接続相とを読み出し、区間情報設定テーブルT2から、各区間内における三相配電線の装柱方法を読み出し、これらの各情報に基づき、各ノードにおける電圧不平衡率を算出する(ステップS12)。
【0063】
ここで、各ノードにおける電圧不平衡率は、各ノードの正相電圧に対する各ノードの逆相電圧の割合で示され、各ノード毎に求められる。各ノードの正相電圧及び逆相電圧は、例えば、一般的に知られている潮流計算手法を用いて算出することができる。
【0064】
続いて、接続相決定部15は、ステップS12において求めた各ノード毎の電圧不平衡率を比較し、これら各ノード毎の電圧不平衡率のうち、最大の電圧不平衡率を当該区間における電圧不平衡率の初期値として求め、当該区間における電圧不平衡率の初期値を、第1電圧不平衡率として第3の領域143に記憶する(ステップS13)。
【0065】
(ステップS2)
次に、接続相決定部15は、指定された所定区間における三相配電線の相配列に応じて、所定区間内の3つの接続相のうち、合計容量を減らすべき1つの接続相を決定する。
【0066】
具体的には、接続相決定部15は、区間情報設定テーブルT2から、指定された区間内における三相配電線の相配列を読み出し、読み出した相配列に基づき、ab相、bc相,ca相のうち、合計容量を減らすべき接続相を決定する(ステップS21)。
【0067】
ここで、合計容量を減らすべき接続相は、その区間の相配列に基づき決定される。上述したように、線間電圧の大小関係は、三相配電線の相配列によって異なり、例えば、各配電線a,b,cの相配列が
図6に示すような順序で並ぶ相配列である場合には、
図7に示すように、ab相の線間電圧が、bc相の線間電圧及びca相の線間電圧よりも小さくなる。つまり、相配列の非対称性により生じる電圧不平衡は、線間電圧が最も小さい接続相の負荷配分を小さくすることで抑制することができる。
【0068】
(ステップS3)
次に、接続相決定部15は、ステップS2において決定した1つの接続相の合計容量を減少させ、当該合計容量の減少量に応じて、他の2つの接続相毎の各合計容量を増加させ、所定区間内の3つの接続相の総容量に対する3つの接続相毎の各合計容量の配分比率を変更し、当該配分比率に応じて、所定区間内における単相負荷毎の接続相を設定する。
【0069】
具体的には、接続相決定部15は、単相負荷情報設定テーブルT1から、各単相負荷の容量(電力負荷量)と、各単相負荷の接続相とを読み出し、区間情報設定テーブルT2から、指定された区間内におけるab相の合計容量と、bc相の合計容量と、ca相の合計容量と、係数Kとを読み出し、ステップS21において決定した、合計容量を減らすべき接続相の合計容量に係数Kを乗じ、それ以外の接続相の合計容量に(1+(1−K)/2)を乗じて、各々区間情報設定テーブルT2に記憶する(ステップS31)。このステップS31により、所定区間内における単相負荷の総容量に対する3つの接続相毎の各合計容量の配分比率が変更される。
【0070】
続いて、接続相決定部15は、ステップS31において変更された配分比率に応じて、ステップS21において決定した、合計容量を減らすべき接続相に接続されている単相負荷のうちのいくつかを他の接続相に接続変更して、単相負荷情報設定テーブルT1に記憶する(ステップS32)。
【0071】
ここで、係数Kは1以下の整数であり、ステップS5において決定した接続相の合計容量に係数Kを乗じ、それ以外の接続相の合計容量に(1+(1−K)/2)を乗じることにより、各区間内に設けられた単相負荷の総容量を変えることなく、ステップS21において決定した合計容量を減らすべき接続相の合計容量を減らす処理が可能となる。
【0072】
(ステップS4)
次に、接続相決定部15は、ステップS3において変更した、所定区間内の3つの接続相の総容量に対する3つの接続相毎の各合計容量の配分比率で、所定区間内における電圧不平衡の度合いを示す電圧不平衡率を求めて第2電圧不平衡率とする。
【0073】
具体的には、接続相決定部15は、単相負荷情報設定テーブルT1から、各単相負荷が接続されている位置に対応する各ノード(例えば、
図10に示すP1〜Pn)と、各単相負荷の容量(電力負荷量)と、各単相負荷の接続相とを読み出し、区間情報設定テーブルT2から、各区間内における三相配電線の装柱方法を読み出し、これらの各情報に基づき、各ノードにおける電圧不平衡率を算出する(ステップS41)。
【0074】
続いて、接続相決定部15は、ステップS41において求めた各ノード毎の電圧不平衡率を比較し、これら各ノード毎の電圧不平衡率のうち、最大の電圧不平衡率を当該区間における電圧不平衡率として求め、当該区間における電圧不平衡率を、第2電圧不平衡率として第3の領域143に記憶する(ステップS42)。
【0075】
(ステップS5)
次に、接続相決定部15は、第1電圧不平衡率と第2電圧不平衡率とを比較し、第2電圧不平衡率が第1電圧不平衡率を下回った場合に、第2電圧不平衡率を第1電圧不平衡率とすると共にステップS3に移行し、第2電圧不平衡率が第1電圧不平衡率以上となった場合に、ステップS3において設定した、所定区間内における単相負荷毎の接続相を確定して出力する。
【0076】
具体的には、接続相決定部15は、第3の領域143に記憶された第1電圧不平衡率と第2電圧不平衡率とを比較して、第2電圧不平衡率が第1電圧不平衡率以上であるか否かを判定し(ステップS51)、第2電圧不平衡率が第1電圧不平衡率以上となった場合には(ステップS51;Yes)、接続相決定部15は、ステップS6において単相負荷情報設定テーブルT1に記憶された状態で、指定された区間内における各単相負荷の接続相を確定し、例えば表示部13に表示するか、あるいは、出力部12から出力する等の出力処理を行い(ステップS52)、接続相決定処理を終了する。
【0077】
第2電圧不平衡率が第1電圧不平衡率を下回った場合には(ステップS51;No)、接続相決定部15は、ステップS42において記憶した第2電圧不平衡率を第1電圧不平衡率として第3の領域143に記憶する(ステップS53)。そして、ステップS31〜ステップS51の処理を、ステップS51において、第2電圧不平衡率が第1電圧不平衡率以上となるまで、繰り返し実行する。
【0078】
このように、三相配電系統100の配電区域を、少なくとも相配列が同一の複数の区間に分割した各区間毎に、上述した接続相決定処理を実行することで、分割した各区間毎に電圧不平衡率を抑制可能な負荷配分で、各単相負荷の接続相を決定できる。このため、三相配電系統100の配電区域の全域を対象として接続相決定処理を実行する場合に比べ、少ない計算量で、三相配電系統100の配電区域の全域における電圧不平衡率を抑制可能な負荷配分で、各単相負荷の接続相を決定できる。
【0079】
なお、本実施形態では、少なくとも相配列が同一の区間毎に、接続相決定処理を実施するようにしたが、相配列が同一であっても、区間内で複数経路に分岐する分岐点がある場合には、潮流計算における計算が複雑になる。このため、三相配電線の配電経路において三相配電線が複数経路に分岐する分岐点がある場合には、その分岐点を区間端として区間分割するのが好ましい。
【0080】
また、相配列が同一であっても、水平装柱と垂直装柱とでは、三相配電線の線間距離が異なる場合があり、潮流計算における計算が複雑になる可能性がある。このため、水平装柱と垂直装柱との境界点を区間端として区間分割するのが好ましい。
【0081】
さらに、相配列が同一であっても、三相配電線に平行して他の三相配電線が装柱された2回線装柱区間(多回線装柱区間)では、他の三相配電線からの影響を受ける可能性がある。このため、2回線装柱区間(多回線装柱区間)は他の区間と分けて独立した区間とするのが好ましい。
【0082】
以上説明したように、本実施形態に係る電圧不平衡抑制支援方法は、上流側から電力が供給される三相配電線の三相のうちの何れか二相からなる3つの組み合わせのうちの1つを接続相として接続される複数の単相負荷の接続相を決定する際に、三相配電線は、複数の少なくとも相配列が同一の所定区間に分割されており、所定区間毎に、三相配電線の相配列に応じて決まる、線間電圧が3つの接続相のうちで最小となる1つの接続相の合計容量が、他の2つの接続相毎の各合計容量よりも小さくなるように、単相負荷毎の接続相を決定する。具体的には、所定区間内の3つの接続相の総容量がそれぞれ3つの接続相に均等配分された状態で、所定区間内における電圧不均衡の度合いを示す電圧不平衡率を求めて第1電圧不平衡率とする第1ステップと、三相配電線の相配列に応じて、所定区間内の3つの接続相のうち、合計容量を減らすべき1つの接続相を決定する第2ステップと、第2ステップにおいて決定した1つの接続相の合計容量を減少させ、当該合計容量の減少量に応じて、他の2つの接続相毎の各合計容量を増加させ、所定区間内の3つの接続相の総容量に対する3つの接続相毎の各合計容量の配分比率を変更し、当該配分比率に応じて、所定区間内における単相負荷毎の接続相を設定する第3ステップと、第3ステップにおいて変更した、所定区間内の3つの接続相の総容量に対する3つの接続相毎の各合計容量の配分比率で、所定区間内における電圧不平衡の度合いを示す電圧不平衡率を求めて第2電圧不平衡率とする第4ステップと、第1電圧不平衡率と第2電圧不平衡率とを比較し、第2電圧不平衡率が第1電圧不平衡率を下回った場合に、第2電圧不平衡率を第1電圧不平衡率とすると共に第3ステップに移行し、第2電圧不平衡率が第1電圧不平衡率以上となった場合に、第3ステップにおいて設定した、所定区間内における単相負荷毎の接続相を確定して出力する第5ステップと、を含んでいる。これにより、三相配電系統の配電区域の全域対象として接続相決定処理を実行する場合に比べ、少ない計算量で、かつ、相配列の非対称性により発生する電圧不平衡を打ち消す方向に、単相負荷の接続相組み合わせを意図的に不均等にすることで電圧不平衡を下げ、三相配電系統の配電区域の全域における電圧不平衡率を抑制可能な負荷配分とすることができる。
【0083】
また、本実施形態に係る電圧不平衡抑制支援装置は、上流側から電力が供給される三相配電線の三相のうちの何れか二相からなる3つの組み合わせのうちの1つを接続相として接続される複数の単相負荷の接続相を決定する電圧不平衡抑制支援装置であって、三相配電線は、複数の少なくとも相配列が同一の所定区間に分割されており、所定区間毎に、三相配電線の相配列に応じて決まる、線間電圧が3つの接続相のうちで最小となる1つの接続相の合計容量が、他の2つの接続相毎の各合計容量よりも小さくなるように、単相負荷毎の接続相を決定する接続相決定部を備えている。これにより、三相配電系統の配電区域の全域対象として接続相決定処理を実行する場合に比べ、少ない計算量で、かつ、相配列の非対称性により発生する電圧不平衡を打ち消す方向に、単相負荷の接続相組み合わせを意図的に不均等にすることで電圧不平衡を下げ、三相配電系統の配電区域の全域における電圧不平衡率を抑制可能な負荷配分とすることができる。