特許第6477170号(P6477170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6477170
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】配線用遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/06 20060101AFI20190225BHJP
   H01H 73/02 20060101ALI20190225BHJP
   H01H 83/02 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   H01H73/06 B
   H01H73/02 B
   H01H83/02 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-74819(P2015-74819)
(22)【出願日】2015年4月1日
(65)【公開番号】特開2016-195055(P2016-195055A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2017年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佑高
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−173438(JP,A)
【文献】 特開平8−321249(JP,A)
【文献】 特開2003−272509(JP,A)
【文献】 特開2014−077682(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0155136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 〜 69/01
H01H 71/00 〜 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースの内部に接点を介して各極の電源側端子と負荷側端子の間に敷設した主回路導体、および該主回路導体を1次導体として負荷側端子に連なる主回路導体に嵌挿配置した貫通形変流器を装備し、該貫通形変流器の出力信号を基に電路の過電流状態を検出した際に前記接点を開極操作して電路を開路する配線用遮断器において、
前記本体ケース内に各極の主回路導体を保持する樹脂製のホルダーを内装するとともに、貫通形変流器の外囲樹脂ケースにはタブ状の係合突起を設けておき、前記貫通形変流器を主回路導体に嵌挿し、かつ主回路導体を前記ホルダーに保持した状態で、前記係合突起をホルダーに掛止して貫通形変流器を所定の組立位置に固定したことを特徴とする配線用遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の配線用遮断器において、前記貫通形変流器の外囲樹脂ケースに左右一対のタブ状の係合突起を設けるとともに、該係合突起に対向してホルダーの壁面に係合穴を穿設し、組立時に前記係合突起をホルダーの係合穴に差し込んで貫通形変流器を所定の組立位置に掛止固定したことを特徴とする配線用遮断器。
【請求項3】
請求項1,2に記載の配線用遮断器において、前記主回路導体はその中間部がZ字形に屈曲したバー導体で、該バー導体の屈曲部位に貫通形変流器が横置姿勢に嵌挿配置され、一方、ホルダーは断面L字形の樹脂部材で、その底壁部には負荷側端子に通じる主回路導体を嵌入する導体保持溝が形成され、底壁部の後端から起立する壁部には貫通形変流器の係合突起を掛止する係合穴が穿設されていることを特徴とする配線用遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式の配線用遮断器 に関し、詳しくはその本体ケースの内部に接点を介して主回路端子間に敷設した主回路導体、および該主回路導体に嵌挿配置した貫通形変流器の組立支持構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
周知のように配線用遮断器は、そのトリップ方式によって熱動−電磁式、完全電磁式、および電子式がある。この電子式の配線用遮断器では電路に流れる電流を計測する変流器を遮断器の本体ケースに内蔵した上で、この変流器の二次出力を電子制御回路に送って電路に流れる電流を監視し、電路に過電流が流れた際に前記電子制御回路から接点開閉機構にトリップ指令を出力して電路を開路するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
次に、前記の電子式配線用遮断器について、その略示組立構造の一例を図4に示す。
【0004】
図4において、1は箱形ケース1aと上部カバー1bからなるモールド樹脂製の本体ケース、2は電源側端子、3は負荷側端子、4は電源側端子2と一体に連ねて本体ケース1の底部側に配した固定接触子、5は固定接触子4の固定接点4aに対向する可動接点を有する可動接触子、6は消弧装置の消弧グリッド、7は一端を可撓接続導体8に接続して前記可動接触子5と負荷側端子3との間に敷設した主回路導体、9は前記主回路導体7を1次導体として該主回路導体7の中間部位に嵌挿配置して電路の通流電流を計測する貫通形変流器である。また、図中に略示表示した10は本体ケース1の内方上部に配した接点開閉機構、11は電子制御回路である。なお、上記構成になる配線用遮断器の動作,機能については先記特許文献1にも詳しく述べられている。
【0005】
なお、図4の組立構造は1極分を表しており、例えば三相回路に適用する配線用遮断器では、U,V.W各相に対応する主回路端子間にそれぞれ固定接触子4,可動接触子5,主回路導体7,および貫通形変流器9が左右に並べて本体ケース1の内部に収容配置されている。
【0006】
また、この種の配線用遮断器は、漏電遮断器との製品系列化に合わせて組立部品の共用化、および小形,コンパクト化を図るために、図4に例示の配線用遮断器では前記主回路導体7の途中箇所を図示のようにZ字形に屈曲形成した上で、その屈曲部位に貫通形変流器9を横置姿勢で嵌挿配置するようにしている。
【0007】
次に、前記の主回路導体7、および貫通形変流器9について、その詳細な組立構造を図5図6に示す。すなわち、主回路導体7は平角の銅バー導体であり、その中間に形成したZ形屈曲部に貫通形変流器9を嵌挿するために、あらかじめバー導体を分割導体7a,7b,7cに分割し、上下方向に延在する中間の分割導体7bに貫通形変流器9を嵌挿した上で、各分割導体7a,7b,7cの相互間をロー付けなどにより接合してZ形屈曲部を形成している(図5参照)。
【0008】
また、貫通形変流器9は、環状コア9aに二次巻線9b(トロイダルコイル)を巻装した上で、環状の外囲樹脂ケース9cに収容した構造になる(図6参照)。
【0009】
なお、前記貫通形変流器9に代えて、本体ケース内に敷設した主回路導体7に零相変流器を嵌挿配置して漏電遮断器を構成する場合には、本体ケース1の内部に敷設した各極(三相ではU,V,W相)の主回路導体7について、左右の外側に並ぶ主回路導体(U,W相)の屈曲部を中央極(V相)に寄せるように引き回した上で、各極の主回路導体7を囲んで零相変流器を横置姿勢に嵌挿配置するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−211217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、図4のように貫通形変流器9を主回路導体7に嵌挿配置した配線用遮断器の組立構造では、製品の組立性,信頼性の確保のために貫通形変流器9を所定の組立位置に位置決めして主回路導体7、もしくは本体ケース1などに固定支持する必要がある。すなわち、貫通形変流器9はその二次巻線(細線)の出力端が電子制御回路11のプリント板に接続されていることから、その位置が所定位置からずれ動いたりすると変流器の二次巻線に不要な力が加わって接続リードが断線するおそれがある。
【0012】
かかる点、従来では貫通形変流器9を主回路導体7の分割導体7b(図5参照)と一体にモールド成形する。あるいは、特許文献1の図1に開示されているように、変流器(10)の本体を樹脂製の変流器ホルダー(22)と一体成形した上で、このホルダーを介して本体ケース(14)内の所定位置に組み込むようにしている。
【0013】
しかしながら、前記のように貫通形変流器9を主回路導体7、あるいは変流器ホルダーと一体化させるには製品組立ラインに樹脂モールド工程が必要であり、そのために組立ラインの設備,工程が加わって製造コストが嵩むことになる。
【0014】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は従来の樹脂モールド法による設備,工程を排除し、簡易な嵌入,スナップフィット結合を適用して主回路導体、および該主回路導体に嵌挿した貫通形変流器の各部品を所定の組立位置に位置決めして固定支持できるように改良した配線用遮断器の組立構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明によれば、本体ケースの内部に接点を介して各極の電源側端子と負荷側端子の間に敷設した主回路導体、および該主回路導体を1次導体として負荷側端子に連なる主回路導体に嵌挿配置した貫通形変流器を装備し、該貫通形変流器の出力信号を基に電路の過電流状態を検出した際に前記接点を開極操作して電路を開路する配線用遮断器において、
前記本体ケース内に各極の主回路導体を保持する樹脂製のホルダーを内装するとともに、貫通形変流器の外囲樹脂ケースにはタブ状の係合突起を設けておき、前記貫通形変流器を主回路導体に嵌挿し、かつ主回路導体を前記ホルダーに保持した状態で、前記係合突起をホルダーに掛止して貫通形変流器を所定の組立位置に固定する(請求項1)ものとし、具体的には次記のような態様で構成することができる。
(1)前記構成において、貫通形変流器の外囲樹脂ケースに左右一対のタブ状の係合突起を設けるとともに、該係合突起に対向してホルダーの壁面に係合穴を穿設し、組立時に前記係合突起をホルダーの係合穴に差し込んで貫通形変流器を所定の組立位置に掛止固定する(請求項2)。
(3)前記構成において、主回路導体はその中間部がZ字形に屈曲したバー導体で、該バー導体の屈曲部位に貫通形変流器が横置姿勢に嵌挿配置され、一方、前記ホルダーは断面L字形の樹脂部材で、その底壁部には負荷側端子に通じる主回路導体を嵌入する導体保持溝を形成し、底壁部の後端から起立する壁部には貫通形変流器の係合突起を掛止する係合穴を穿設している(請求項3)。
【発明の効果】
【0016】
上記の組立構造によれば、配線用遮断器の組立工程で本体ケースの内部に主回路導体、および該主回路導体に嵌挿した貫通形変流器を組み込む際に、あらかじめ用意した別部品の樹脂製ホルダーに各極の主回路導体を嵌入保持するとともに、貫通形変流器の外囲樹脂ケースに設けたタブ状の係合突起をホルダーの壁面に穿設した係合穴に差し込んで掛止(スナップフィット結合)することにより、従来の組立構造に要した樹脂モールド工程を排除して主回路導体,および貫通形変流器を簡易な組立作業で所定の組立位置に固定支持することができて製品の組立性の向上、製造コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例による配線用遮断器の主回路導体,貫通形変流器,ホルダーの組立構造を表す図であって、(a)は側視断面図、(b)は(a)におけるP部の斜視図である。
図2図1で主回路導体に貫通形変流器を嵌挿した仮組立状態の斜視図である。
図3図2の仮組立体をホルダーに位置決め支持する組立工程を説明する分解斜視図である。
図4】従来の配線用遮断器全体の側視断面図である。
図5図4における主回路導体と貫通形変流器の仮組立状態を表す斜視図である。
図6図5における貫通形変流器の斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図1図3に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で、図4に対応する同一部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0019】
図1において、配線経路の途中箇所がZ字形に屈曲した平角バー導体になる主回路導体7、およびこの主回路導体7の屈曲部位に横置姿勢で嵌挿した貫通形変流器9は、次記構造になる樹脂製のホルダー12を組立ベースとして各部品がそれぞれ所定の組立位置に位置決め保持されており、その詳細な組立構造,組立手順を以下に述べる。
【0020】
まず、主回路導体7は、図4と同様に分割導体7a,7b,7cを組み合わせてZ字形の屈曲部を形成している。また、主回路導体7の屈曲部位に対応して上下方向に延在する分割導体7bに嵌挿配置する貫通形変流器9については、その外囲樹脂ケース9c(図6参照)の周面から背後に向けて突き出すように左右一対のタブ状の係合突起9dが一体に形成されており、その係合突起9dの板面には角穴9d-1が開口している。
【0021】
一方、主回路導体7,および貫通形変流器9を所定の組立位置に位置決め保持するホルダー12は図示のように断面L字形の樹脂製部材であり、その底壁部12aには負荷側端子3(図4参照)に連なる主回路導体7の分割導体7cが嵌入する導体保持溝12bが形成され、また底壁部12aの後端から起立した壁部12cの壁面には貫通形変流器9の係合突起9dを差し込む係合穴12dが穿設されており、この係合穴12dの内面には前記係合突起9dの角穴9d-1とスナップフィット結合する楔形のテーパー状の掛止爪12d-1が形成されている。また、壁部12cの根元部には前記導体保持溝12bに連なる導体貫通穴12eが穿口されている。
【0022】
次に、前記主回路導体7、および貫通形変流器9の組立手順について説明する。先ず、図2で示すように分割導体7a,7b,7cの三分割構造になる主回路導体7に対し、そのZ字形屈曲部を形成する分割導体7bに貫通形変流器9を横置姿勢に遊嵌した上で、分割導体7a〜7cの相互間を結合して仮組み立てし、続く工程では前記の仮組立体を図3に示す要領でホルダー12に組み付ける。この際に主回路導体7の分割導体7cをホルダー12の底壁部12aに形成した導体保持溝12bに前方から嵌入し、同じ工程で主回路導体7に嵌挿した貫通形変流器9について、その外囲樹脂ケースから背後に向けて突出する左右一対のタブ状の係合突起9dをホルダー12の壁部12cに穿設した係合穴12dに押し込み、タブ状の係合突起9dの角穴9d-1を前記係合穴12dの内壁面に形成した掛止爪12d-1に係合して貫通形変流器9をホルダー12にスナップフィット結合させる。そして、前記と同様な組立手順でホルダー12に三相の各極に対応する主回路導体7,貫通形変流器9を組み付けた上で、この組立体を図4に示した本体ケース1の内部に組み込んでホルダー12を本体ケース1の内部に固定する。
【0023】
なお、図3に示したホルダー12は3極用に作られたもので、ホルダー12の底壁部12a,壁部12cにはU,V,W相の各極に対応する導体保持溝12b,および貫通形変流器9の係合穴12dが左右に並べて穿設されているが、ホルダー12を各極と個別に対応する分割構造としてもよい。
【0024】
上記の説明で明らかなように、本発明の組立構造によれば、本体ケース内に組み込む樹脂製のホルダー12を組立部材として、ここに各極の主回路導体7、および該主回路導体7に嵌挿した貫通形変流器9のタブ状の係合突起を嵌入,差し込むことにより、主回路導体7,貫通形変流器9を所定の組立位置に固定支持して貫通形変流器の不要な変位に起因するコイルの断線事故を確実に防ぐことができる。
【0025】
これにより、主回路導体7に遊嵌した貫通形変流器9についても、従来のように手間のかかる樹脂モールドによる組立工程を要することなく、簡易なスナップフィット工法によりワンタッチ操作で所定の組立位置に固定支持することができて組立性の向上、組立時間の短縮化とともに、製品の生産性向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 本体ケース
2 電源側端子
3 負荷側端子
4 固定接触子
5 可動接触子
7 主回路導体
7a〜7c 分割導体
9 貫通形変流器
9c 外囲樹脂ケース
9d タブ状の係合突起
12 ホルダー
12a 底壁部
12b 導体保持溝
12c 壁部
12d 係合穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6