(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フラクチャリング流体、泥水、セメンチング流体、 ウェルコントロール流体(well control fluid)、ウェルキル流体(well kill fluid)、酸フラクチャリング流体(acid fracturing fluid)、酸分流流体(acid diverting fluid)、刺激流体(stimulation fluid)、サンドコントロール流体(sand control fluid)、仕上げ流体(completion fluid)、ウェルボーン石化流体(wellbore consolidation fluid)、レメディエーション処理流体(remediation treatment fluid)、スペーサー流体(spacer fluid)、掘削流体(drilling fluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packing fluid)、水適合流体(water conformance fluid)、または砂利パッキング流体(gravel packing fluid)に添加して使用するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らの検討によると、特許文献1で得られる微細セルロース繊維の結晶性は非常に乏しく、強度が十分でない。よって高いせん断力がかかる掘削用途では繊維の切断が起こり、粘度が低下してしまう懸念がある。また、粘度も十分でないと考えられる。これに対し、特許文献2、3のセルロースナノクリスタルは微細セルロース繊維とは異なり、酸加水分解法で製造される。酸加水分解により非結晶領域が破壊され、繊維が非常に短くなってしまい、十分な粘度が得られないという問題があった。
【0011】
一方、分散性のよい微細セルロース繊維は透明性が高いが、粗大繊維が残る場合、外観が白濁した分散液となる。そのため、高い透明性が好まれる化粧品用途を想定した増粘剤としては、粗大繊維は不純物と考えられ、解繊処理の強化や遠心分離による微細化されていない粗大繊維の除去が提案されてきた。また、上述したように、微細セルロース繊維分散液では、繊維の微細化が進むほど粘度が高まるというのが通説であり、如何に十分に微細化し、粗大な繊維を減らすかが重要であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、こうした事情を鑑み、高い増粘効果やゲル化機能を有する微細セルロース繊維分散液を探すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、驚くべきことに、微細化の程度をコントロールし、ヘイズ値を一定範囲内とすることで、またはあえて一定量の粗大繊維を微細繊維と共存させることで、優れた増粘性を有する微細セルロース繊維分散液を製造可能なことを見出した。また、そのような分散液が、掘削用途を想定した実験では、十分な粘度特性に加え、粗大繊維が粒子の安定性や止水性を高めることができる等、掘削用途に非常に適した添加剤であることが明らかとなり、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、以下を提供する。
[1]微細セルロース繊維を含み、セルロース繊維の固形分濃度が0.2質量%となるように水に懸濁したときのヘイズ値が、1.0〜50%である、地下層処理用組成物。
[2]粗大セルロース繊維と微細セルロース繊維とを含む、1に記載の組成物。
[3]粗大セルロース繊維の繊維幅が1μm以上であり、微細セルロース繊維の繊維幅が100nm以下である、1または2に記載の組成物。
[4]粗大セルロース繊維量が、0.5%以上85%未満である、1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[5]分散液または固体の形態である、1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
[6]セルロース繊維が化学変性されている、1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
[7]セルロース繊維がアニオン化またはカチオン化されている、6に記載の組成物。
[8]セルロース繊維がカルボキシル化またはリン酸化されている、7に記載の組成物。
[9]置換基量が0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下である、8に記載の組成物。
[10]セルロース繊維が5%以上の非結晶領域を有する、1〜9に記載の組成物。
[11]フラクチャリング流体、泥水、セメンチング流体、 ウェルコントロール流体(well control fluid)、ウェルキル流体(well kill fluid)、酸フラクチャリング流体(acid fracturing fluid)、酸分流流体(acid diverting fluid)、刺激流体(stimulation fluid)、サンドコントロール流体(sand control fluid)、仕上げ流体(completion fluid)、ウェルボーン石化流体(wellbore consolidation fluid)、レメディエーション処理流体(remediation treatment fluid)、スペーサー流体(spacer fluid)、掘削流体(drilling fluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packing fluid)、水適合流体(water conformance fluid)、または砂利パッキング流体(gravel packing fluid)に添加して使用するための、1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
[12]1〜11のいずれか1項に記載の組成物、ならびに加重材、粘度調整剤、分散剤、凝集剤、逸泥防止剤、pH制御剤、摩擦低減剤、水和膨張制御剤、乳化剤、界面活性剤、殺生物剤、消泡剤、スケール防止剤、腐食防止剤、温度安定剤、樹脂コート剤、亀裂支持材、塩、およびプロパントからなる群から選択されるいずれかを含む、地下層処理用流体。
[13]1〜11のいずれか1項に記載の組成物、および水溶性ポリマー含む、地下層処理用流体。
[14]セルロース繊維の分散液を濃縮、または乾燥させ、得られた濃縮液または乾燥物を水系溶媒に再分散させて再分散液を得る工程を含む、1〜11のいずれか1項に記載の組成物の、製造方法。
[15]濃縮が、濃縮剤および/または乾燥機により実施される、14に記載の製造方法。
【0014】
本発明は、以下を提供する。
[1]微細セルロース繊維を含み、セルロース繊維の固形分濃度が0.2質量%となるように水に懸濁したときのヘイズ値が、1.9〜40%である、地下層処理用組成物。
[2]ヘイズ値が、2.5〜30%である、1に記載の組成物。
[3]ヘイズ値が、2.5〜15%である、2に記載の組成物。
[4]セルロース繊維の固形分濃度が0.4質量%となるように水に懸濁したときの粘度が、4700mPa・s以上である、1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[5]粘度が、7000mPa・s以上である、4に記載の組成物。
[6]粘度が、12500mPa・s以上である、5に記載の組成物。
[7]粗大セルロース繊維と微細セルロース繊維とを含む、1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
[8]粗大セルロース繊維の繊維幅が1μm以上であり、微細セルロース繊維の繊維幅が100nm以下である、7に記載の組成物。
[9]分散液または固体の形態である、1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
[10]セルロース繊維が化学変性されている、1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
[11]セルロース繊維がアニオン化またはカチオン化されている、10に記載の組成物。
[12]セルロース繊維がカルボキシル化またはリン酸化されている、11に記載の組成物。
[13]フラクチャリング流体、泥水、セメンチング流体、ウェルコントロール流体(wellcontrolfluid)、ウェルキル流体(wellkillfluid)、酸フラクチャリング流体(acidfracturingfluid)、酸分流流体(aciddivertingfluid)、刺激流体(stimulationfluid)、サンドコントロール流体(sandcontrolfluid)、仕上げ流体(completionfluid)、ウェルボーン石化流体(wellboreconsolidationfluid)、レメディエーション処理流体(remediationtreatmentfluid)、スペーサー流体(spacerfluid)、掘削流体(drillingfluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packingfluid)、水適合流体(waterconformancefluid)、または砂利パッキング流体(gravelpackingfluid)に添加して使用するための、1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
[14]1〜13のいずれか1項に記載の組成物、ならびに加重材、粘度調整剤、分散剤、凝集剤、逸泥防止剤、pH制御剤、摩擦低減剤、水和膨張制御剤、乳化剤、界面活性剤、殺生物剤、消泡剤、スケール防止剤、腐食防止剤、温度安定剤、樹脂コート剤、亀裂支持材、塩、およびプロパントからなる群から選択されるいずれかを含む、地下層処理用流体。
[15]1〜13のいずれか1項に記載の組成物、および水溶性ポリマー含む、地下層処理用流体。
[16]水溶性ポリマーが天然多糖由来である、15に記載の流体。
[17]フラクチャリング流体、泥水、またはセメンチング流体である、14〜16のいずれか1項に記載の流体。
[18]1〜13のいずれか1項に記載の組成物、または14〜17のいずれか1項に記載の流体を用いる、地下層の処理方法。
[19]1〜13のいずれか1項に記載の組成物、または14〜17のいずれか1項に記載の流体を用いる、石油資源の生産方法。
[20]セルロース繊維の分散液を濃縮、または乾燥させ、得られた濃縮液または乾燥物を水系溶媒に再分散させて再分散液を得る工程を含む、1〜13のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
[21]濃縮が、濃縮剤および/または乾燥機により実施される、20に記載の製造方法。
【0015】
本発明は、以下も提供する。
[1]粗大セルロース繊維と微細セルロース繊維とを含む、地下層処理用組成物。
[2]粗大セルロース繊維量が、0.5%以上85%未満である、1に記載の組成物。
[3]粗大セルロース繊維量が、1.0%以上85%未満である、2に記載の組成物。
[4]粗大セルロース繊維量が、1.5%以上85%未満である、3に記載の組成物。
[5]セルロース繊維の固形分濃度が0.2質量%となるように水に懸濁したときのヘイズ値が、1.9〜40%である、1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
[6]ヘイズ値が、2.5〜30%である、5に記載の組成物。
[7]ヘイズ値が、2.5〜15%である、6に記載の組成物。
[8]セルロース繊維の固形分濃度が0.4質量%となるように水に懸濁したときの粘度が、4700mPa・s以上である、1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
[9]粘度が、7000mPa・s以上である、8に記載の組成物。
[10]粘度が、12500mPa・s以上である、9に記載の組成物。
[11]粗大セルロース繊維の繊維幅が1μm以上であり、微細セルロース繊維の繊維幅が100nm以下である、1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
[12]分散液または固体の形態である、1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
[13]セルロース繊維が化学変性されている、1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
[14]セルロース繊維がアニオン化またはカチオン化されている、13に記載の組成物。
[15]セルロース繊維がカルボキシル化またはリン酸化されている、14に記載の組成物。
[16]フラクチャリング流体、泥水、セメンチング流体、ウェルコントロール流体(wellcontrolfluid)、ウェルキル流体(wellkillfluid)、酸フラクチャリング流体(acidfracturingfluid)、酸分流流体(aciddivertingfluid)、刺激流体(stimulationfluid)、サンドコントロール流体(sandcontrolfluid)、仕上げ流体(completionfluid)、ウェルボーン石化流体(wellboreconsolidationfluid)、レメディエーション処理流体(remediationtreatmentfluid)、スペーサー流体(spacerfluid)、掘削流体(drillingfluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packingfluid)、水適合流体(waterconformancefluid)、または砂利パッキング流体(gravelpackingfluid)に添加して使用するための、1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
[17]1〜16のいずれか1項に記載の組成物、および加重材、粘度調整剤、分散剤、凝集剤、逸泥防止剤、pH制御剤、摩擦低減剤、水和膨張制御剤、乳化剤、界面活性剤、殺生物剤、消泡剤、スケール防止剤、腐食防止剤、温度安定剤、樹脂コート剤、亀裂支持材、塩、およびプロパントからなる群から選択されるいずれかを含む、地下層処理用流体。
[18]1〜16のいずれか1項に記載の組成物、および水溶性ポリマー含む、地下層処理用流体。
[19]水溶性ポリマーが天然多糖由来である、18に記載の流体。
[20]フラクチャリング流体、泥水、またはセメンチング流体である、17〜19のいずれか1項に記載の流体。
[21]1〜16のいずれか1項に記載の組成物、または17〜20のいずれか1項に記載の流体を用いる、地下層の処理方法。
[22]1〜16のいずれか1項に記載の組成物、または17〜20のいずれか1項に記載の流体を用いる、石油資源の生産方法。
[23]繊維幅1μm以上の粗大セルロース繊維を微細化処理して一部を微細化し、粗大セルロース繊維と繊維幅100nm以下の微細セルロース繊維とを含む組成物を得る、粗大セルロース繊維と微細セルロース繊維とを含む組成物の製造方法。
[24]セルロース繊維の分散液を濃縮または乾燥し、得られた濃縮液または乾燥物を水系溶媒に再分散させて再分散液を得る工程を含む、1〜16のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
[25]濃縮が、濃縮剤および/または乾燥機により実施される、請求項25に記載の製造方法。
【0016】
本発明は、以下も提供する。
[1]微細セルロース繊維を含み、セルロース繊維の固形分濃度が0.4質量%となるように水に懸濁したときの粘度が、4700mPa・s以上である、地下層処理用組成物。
[2]粘度が、7000mPa・s以上である、1に記載の組成物。
[3]粘度が、12500mPa・s以上である、2に記載の組成物。
[4]セルロース繊維の固形分濃度が0.2質量%となるように水に懸濁したときのヘイズ値が、1.9〜40%である、1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[5]ヘイズ値が、2.5〜30%である、4に記載の組成物。
[6]ヘイズ値が、2.5〜15%である、5に記載の組成物。
[7]粗大セルロース繊維と微細セルロース繊維とを含む、1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
[8]粗大セルロース繊維の繊維幅が1μm以上であり、微細セルロース繊維の繊維幅が100nm以下である、7に記載の組成物。
[9]分散液または固体の形態である、1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
[10]セルロース繊維が化学変性されている、1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
[11]セルロース繊維がアニオン化またはカチオン化されている、10に記載の組成物。
[12]セルロース繊維がカルボキシル化またはリン酸化されている、11に記載の組成物。
[13]フラクチャリング流体、泥水、セメンチング流体、ウェルコントロール流体(wellcontrolfluid)、ウェルキル流体(wellkillfluid)、酸フラクチャリング流体(acidfracturingfluid)、酸分流流体(aciddivertingfluid)、刺激流体(stimulationfluid)、サンドコントロール流体(sandcontrolfluid)、仕上げ流体(completionfluid)、ウェルボーン石化流体(wellboreconsolidationfluid)、レメディエーション処理流体(remediationtreatmentfluid)、スペーサー流体(spacerfluid)、掘削流体(drillingfluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packingfluid)、水適合流体(waterconformancefluid)、または砂利パッキング流体(gravelpackingfluid)に添加して使用するための、1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
[14]1〜13のいずれか1項に記載の組成物、ならびに加重材、粘度調整剤、分散剤、凝集剤、逸泥防止剤、pH制御剤、摩擦低減剤、水和膨張制御剤、乳化剤、界面活性剤、殺生物剤、消泡剤、スケール防止剤、腐食防止剤、温度安定剤、樹脂コート剤、亀裂支持材、塩、およびプロパントからなる群から選択されるいずれかを含む、地下層処理用流体。
[15]1〜13のいずれか1項に記載の組成物、および水溶性ポリマー含む、地下層処理用流体。
[16]水溶性ポリマーが天然多糖由来である、15に記載の流体。
[17]フラクチャリング流体、泥水、またはセメンチング流体である、14〜16のいずれか1項に記載の流体。
[18]1〜13のいずれか1項に記載の組成物、または14〜17のいずれか1項に記載の流体を用いる、地下層の処理方法。
[19]1〜13のいずれか1項に記載の組成物、または14〜17のいずれか1項に記載の流体を用いる、石油資源の生産方法。
[20]セルロース繊維の分散液を濃縮、または乾燥させ、得られた濃縮液または乾燥物を水系溶媒に再分散させて再分散液を得る工程を含む、1〜13のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
[21]濃縮が、濃縮剤および/または乾燥機により実施される、20に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流体に高い粘度を与えることができる。また、流体に、地下層処理に適した特性を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本明細書に記載される材料、方法および数値範囲などの説明は、発明の実施態様を例示したものであり、当該材料、方法および数値範囲などに発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、それ以外の材料、方法および数値範囲などの使用を除外するものでもない。
範囲「X〜Y」は、両端の値を含む。「%」は、特に記載した場合を除き、質量に基づく割合を表す。
【0020】
〔粗大/微細セルロース繊維〕
本発明でセルロース繊維というときは、特に記載した場合を除き、粗大セルロース繊維と微細セルロース繊維とを含む。
【0021】
本発明で粗大セルロース繊維(単に、粗大繊維ということもある。)は、その平均繊維幅は特に限定されないが、例えば1μm以上であり、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。セルロース繊維の繊維幅の測定方法は後述する。
【0022】
本発明で微細セルロース繊維(単に、微細繊維ということもある。)は、その平均繊維幅は特に限定されないが、例えば1000nm未満であり、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。微細セルロース繊維は、通常製紙用途で用いるパルプ繊維よりもはるかに細いセルロース繊維であっても、または棒状粒子であってもよい。いずれの場合であっても、微細セルロース繊維の平均繊維幅は、2nm以上であることが好ましい。2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細セルロース繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しなくなる。
【0023】
<セルロース繊維の平均繊維幅>
セルロース繊維の平均繊維幅は、以下のようにして測定・算出することができる。濃度0.05〜0.1質量%の微細セルロース繊維の水系懸濁液を調製し、該懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
【0024】
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
【0025】
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細セルロース繊維の平均繊維幅はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
【0026】
なお、セルロース繊維の繊維長は特に限定されない。
【0027】
<セルロース繊維原料>
本発明においては、セルロース繊維として、セルロース原料を化学的処理および解繊処理することによって得られるもの使用することができる。セルロース原料としては、製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース等が挙げられるが、特に限定されない。これらの中でも、入手のしやすさという点で、製紙用パルプが好ましいが、特に限定されない。製紙用パルプとしては、広葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)等)、針葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)等)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。これらの中でも、より入手しやすいことから、クラフトパルプ、脱墨パルプ、サルファイトパルプが好ましいが、特に限定されない。セルロース原料は1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0028】
セルロース繊維は結晶部分を含むセルロース分子の集合体であり、本発明においては、その結晶構造はI型(平行鎖)であることが好ましい。セルロース繊維がI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
【0029】
好ましい実施態様においては、セルロース繊維に占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。ただし、非結晶領域を破壊して製造する特許文献2、特許文献3に記載のセルロースナノクリスタルとは異なり、非結晶領域も有する。
好ましい実施態様においては、セルロース繊維は、5%以上の非結晶領域を有する。セルロース繊維の非結晶領域は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。
【0030】
セルロース繊維に占めるI型結晶構造の割合は、セルロースI型化指数(%)ともいい、X線回折装置による測定値に基づき、下式(1)により算出することができる。
【0032】
式中、I
22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、およびI
18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。
【0033】
<化学的処理>
本発明に用いるセルロース繊維は、化学的な処理が施され、化学変性されていることが好ましい。化学変性により、表面に官能基が導入されたセルロース繊維は、水中での分散性が向上し、続く解繊処理工程における効率を高めることができる。化学的処理の方法は、微細繊維を得ることができる方法である限り特に限定されないが、例えば、酸処理、オゾン処理、TEMPO酸化処理、酵素処理、またはセルロースまたは繊維原料中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理等が挙げられる。
【0034】
酸処理の一例としては、Otto van den Berg; Jeffrey R. Capadona; Christoph Weder;Biomacromolecules 2007, 8, 1353-1357.に記載されている方法を挙げることができるが、特に限定されない。具体的には、硫酸や塩酸等によりセルロース繊維を加水分解処理する。
【0035】
オゾン処理の一例としては、特開2010−254726号公報に記載されている方法を挙げることができるが、特に限定されない。具体的には、繊維をオゾン処理した後、水に分散し、得られた繊維の水系分散液を粉砕処理する。
【0036】
TEMPO酸化の一例としては、Saito T & al. Homogeneous suspentions of individualized microfibrils from TEMPO-catalyzed oxidation of native cellulose. Biomacromolecules 2006, 7 (6), 1687-91に記載されている方法を挙げることができるが、特に限定されない。具体的には、繊維をTEMPO酸化処理した後、水に分散し、得られた繊維の水系分散液を粉砕処理する。
【0037】
酵素処理の一例としては、特願2012−115411号(特願2012−115411号に記載の内容は全て本明細書中に引用されるものとする)に記載の方法を挙げることができるが、特に限定されない。具体的には、繊維原料を、少なくとも酵素のEG活性とCBHI活性の比が0.06以上の条件下で、酵素で処理する方法である。
【0038】
EG活性は下記のように測定し、定義される。
濃度1% (W/V) のカルボキシメチルセルロース(CMCNa High viscosity; Cat No150561, MP Biomedicals, lnc.)の基質溶液(濃度100mM、pH5.0の酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液含有)を調製する。測定用酵素を予め緩衝液(前記同様)で希釈(希釈倍率は下記酵素溶液の吸光度が下記グルコース標準液から得られた検量線に入ればよい)した。90μlの前記基質溶液に前記希釈して得られた酵素溶液10μlを添加し、37℃、30分間反応させる。
検量線を作成するために、イオン交換水(ブランク)、グルコース標準液(濃度0.5〜5.6mMからすくなくとも濃度が異なる標準液4点)を選択し、それぞれ100μlを用意し、37℃、30分間保温する。
【0039】
前記反応後の酵素含有溶液、検量線用ブランクおよびグルコース標準液に、それぞれ300 μlのDNS発色液(1. 6質量%のNaOH、1質量%の3,5−ジニトロサリチル酸、30質量%の酒石酸カリウムナトリウム)を加えて、5分間煮沸し発色させる。発色後直ちに氷冷し、2mlのイオン交換水を加えてよく混合する。30分間静置した後、1時間以内に吸光度を測定する。
吸光度の測定は96穴マイクロウェルプレート(例えば、269620、NUNC社製)に20Oμlを分注し、マイクロプレートリーダー(例えば、infiniteM200、TECAN社製)を用い、540nmの吸光度を測定することができる。
【0040】
ブランクの吸光度を差し引いた各グルコース標準液の吸光度とグルコース濃度を用い検量線を作成する。酵素溶液中のグルコース相当生成量は酵素溶液の吸光度からブランクの吸光度を引いてから検量線を用いて算出する(酵素溶液の吸光度が検量線に入らない場合は前記緩衝液で酵素を希釈する際の希釈倍率を変えて再測定を行う) 。1分間にlμmoleのグルコース等量の還元糖を生成する酵素量を1単位と定義し、下記式からEG活性を求めることができる。
EG活性=緩衝液で希釈して得られた酵素溶液1m1のグルコース相当生成量(μmole) /30分×希釈倍率
[福井作蔵, “生物化学実験法(還元糖の定量法)第二版”、学会出版センター、p.23〜24(1990年)参照]
【0041】
CBHI活性は下記のように測定し、定義される。
96穴マイクロウェルプレート(例えば、269620、NUNC社製)に1. 25mMの-Methylumberiferyl-cel1obioside (濃度125mM、pH5. 0の酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液に溶解した) 3 2μlを分注する。100mMのGlucono-l,5-Lactone 4μlを添加し、さらに、前記同様の緩衝液で希釈(希釈倍率は下記酵素溶液の蛍光発光度が下記標準液から得られた検量線に入ればよい)した測定用酵素液4μlを加え、37℃、30分間反応させる。その後、500mMのglycine-NaOH緩衝液(pH10.5)200μlを添加し、反応を停止させる。
【0042】
前記同様の96穴マイクロウエルプレートに検量線の標準液として4-Methyl-umberiferon標準溶液40μ1 (濃度0〜50μMのすくなくとも濃度が異なる標準液4点)を分注し、37℃、30分間加温する。その後、500mMのglycine-NaOH緩衝液(pH10.5)200μlを添加する。
【0043】
マイクロプレートリーダー(例えば、F1uoroskanAscentFL、ThermoーLabsystems社製)を用い、350nm (励起光460n皿)における蛍光発光度を測定する。標準液のデータから作成した検量線を用い、酵素溶液中の4-Methy1-umberiferon生成量を算出する(酵素溶液の蛍光発光度が検量線に入らない場合は希釈率を変えて再測定を行う) 。1分間に1μmo1の4-Methyl-umberiferonを生成する酵素の量を1単位とし、下記式からCBHI活性を求めることができる。
CBHI活性=希釈後酵素溶液1m1の4-Methyl-umberiferon生成量(μmo1e)/30分×希釈倍率
【0044】
セルロースまたは繊維原料中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理としては、以下の方法を挙げることができるが、特に限定されない。
・特開2011−162608号公報に記載されている四級アンモニウム基を有する化合物による処理;
・特開2013−136859号に記載されているカルボン酸系化合物を使用する方法;並びに
・国際公開WO2013/073652(PCT/JP2012/079743)に記載されている「構造中にリン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸またはそれらの塩から選ばれる少なくなくとも1種の化合物」を使用する方法。
・特開2013−185122号に記載されているカルボキシメチル化反応を使用する方法。
【0045】
特開2011−162608号公報に記載されている四級アンモニウム基を有する化合物による処理は、繊維中の水酸基と四級アンモニウム基を有するカチオン化剤とを反応させて、該繊維をカチオン変性する方法である。
【0046】
特開2013−136859号に記載されている方法では、2つ以上のカルボキシ基を有する化合物、2つ以上のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物、およびそれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸系化合物を使用する。これらの化合物により繊維原料を処理して、繊維原料にカルボキシ基を導入するカルボキシ基導入工程と、前記カルボキシ基導入工程終了後に、カルボキシ基を導入した繊維原料をアルカリ溶液で処理するアルカリ処理工程を含む方法である。
【0047】
国際公開WO2013/073652(PCT/JP2012/079743)には、構造中にリン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸またはそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物(化合物A)により繊維原料を処理する方法が記載されている。具体的には、繊維原料に化合物Aの粉末や水溶液を混合する方法、繊維原料のスラリーに化合物Aの水溶液を添加する方法等が挙げられる。化合物Aはリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸またはこれらのエステルが挙げられるが特に限定されない。また、これらは塩の形であってもよい。リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、さらにリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、さらにリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられるが特に限定されない。
【0048】
特開2011−185122には、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.02〜0.50であるアニオン変性されたセルロースが高圧ホモジナイザーで処理されることを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法が記載されている。ここでのアニオン変性は、例えば、セルロースを原料にし、マーセル化剤として、原料のグルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属を使用してマーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モル添加してエーテル化反応を行うことにより実施できる。
【0049】
本発明に用いられるセルロース繊維は、化学変性することができる。化学変性としては、特に限定されないが、カチオン化またはアニオン化が好ましい。
本発明に用いるセルロース繊維がカチオン化されている場合、カチオン基の導入量は特に限定されない。微細セルロース繊維1g(質量)あたり0.1〜3.0mmol/gであり、0.10〜2.5mmol/gが好ましく、0.14〜2.5mmol/gがさらに好ましく、0.15〜2.0mmol/gがより好ましく、0.2〜2.0mmol/gがさらに好ましく、0.6〜2.0mmol/gが特に好ましい。このような量であれば、高塩濃度のアルカリ性の泥水に添加した場合においても凝集が抑制され、分散された状態を保つことができるからである。なお、カチオン基の導入量は、セルロース繊維に含まれる窒素量を、微量窒素分析装置(例えば、ダイアインスツルメンツ製 TN-110)を用いて測定することで定量することができる。この場合、単位質量あたりのカチオン基物質量(mmol/g)は、カチオン基を含有する微細セルロース繊維1gあたりの窒素含有量(g)をカチオン基に含まれる窒素原子数と窒素の原子量で除することで求められる。
【0050】
本発明に用いられるセルロース繊維は、アニオン化(カルボキシル化、リン酸化など)されていることがより好ましく、リン酸化されていることがさらに好ましい。
本発明に用いるセルロース繊維がアニオン化されている場合、アニオン基の導入量は特に限定されない。微細セルロース繊維1g(質量)あたり0.1〜3.0mmol/gであり、0.10〜2.5mmol/gが好ましく、0.14〜2.5mmol/gがさらに好ましく、0.15〜2.0mmol/gがより好ましく、0.2〜2.0mmol/gがさらに好ましく、0.6〜2.0mmol/gが特に好ましい。アニオンの基導入量が0.1mmol/g未満では、繊維原料の微細化が困難で、微細セルロース繊維の安定性が劣る。アニオン基の導入量が3.0mmol/gを超えると、十分な粘度が得られない。
本発明に用いるセルロース繊維がリン酸化されている場合、リン酸基の導入量は特に限定されない。微細セルロース繊維1g(質量)あたり0.1〜3.0mmol/gであり、0.10〜2.5mmol/gが好ましく、0.14〜2.5mmol/gがさらに好ましく、0.15〜2.0mmol/gがより好ましく、0.2〜2.0mmol/gがさらに好ましく、0.6〜2.0mmol/gが特に好ましい。リン酸基の導入量が0.1mmol/g未満では、繊維原料の微細化が困難で、微細セルロース繊維の安定性が劣る。リン酸基の導入量が3.0mmol/gを超えると、十分な粘度が得られない。
本発明に用いるセルロース繊維がカルボキシル化されている場合、0.1〜3.0mmol/gであり、0.10〜2.5mmol/gが好ましく、0.14〜2.5mmol/gがさらに好ましく、0.15〜2.0mmol/gがより好ましく、0.2〜2.0mmol/gがさらに好ましく、0.6〜2.0mmol/gが特に好ましい。カルボキシル基の導入量が0.1mmol/g未満では、繊維原料の微細化が困難で、微細セルロース繊維の安定性が劣る。カルボキシル基の導入量が3.0mmol/gを超えると、十分な粘度が得られない。
【0051】
<解繊処理/微細化処理工程>
本発明の地下層処理用組成物の成分の一つである微細セルロース繊維を得るためには、所望により化学的処理をしたセルロース繊維を、解繊処理することにより得ることができる。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて繊維を解繊処理して微細繊維含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、当業者であれば適宜選択・設計できる。
【0052】
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル等を使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーター等、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザーが挙げられるが、特に限定されない。
【0053】
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、若しくはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、若しくはt−ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン若しくはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル若しくはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素等を含んでもよい。
【0054】
このような解繊処理/微細化処理により、少なくとも一部のセルロース繊維が微細化され、本発明において増粘に寄与する成分の一つとして用いられる。
【0055】
<組成物の製造方法>
ヘイズ値または粘度値がコントロールされた本発明の地下層処理用組成物の製造方法は、得られた組成物が目的の増粘効果、止水効果、分散性向上効果等発揮しうる限り、特に限定されない。本発明の組成物は、例えば、上述の解繊処理/微細化処理により得られた微細繊維と、別の適切な方法で得た粗大繊維とを配合することにより製造することができる。
【0056】
本発明の組成物の製造に際しては、粗大セルロース繊維を微細化する工程を経るが、このとき粗大セルロース繊維の一部は微細化されるが、全部は微細化されずに残るようにし、それにより粗大セルロース繊維と微細セルロース繊維とを含むように、または粗大セルロース繊維と微細セルロース繊維とを含むことによりヘイズ値または粘度値をコントロールし、製造してもよい。従来の微細セルロース繊維を有効成分とする増粘剤は、高い透明性を確保するため、また繊維を細くすることにより表面積が増加し、繊維同士の接触が多くなって増粘性が高まると考えられているため、微細化されない繊維を減らすことが重要であった。しかしながら、本発明により提案される微細セルロース繊維を含有する組成物の製造方法の一つは、微細化をコントロールし、一定量の粗大繊維を残すことによりヘイズ値または粘度値をコントロールするものである。ある組成物中に本発明でいう粗大セルロース繊維および微細セルロース繊維が含まれるか否かおよびどの程度の割合で含まれるかは、平均繊維幅を測定することにより確認することができる。
【0057】
〔粗大繊維量〕
本発明は、粗大セルロース繊維と微細セルロース繊維とにより増粘するものである。ある組成物中に本発明でいう粗大セルロース繊維および微細セルロース繊維が含まれるか否かおよびどの程度の割合で含まれるかは、平均繊維幅を測定することにより確認することができるが、次に述べる粗大繊維量の測定方法により、確認することもできる。
【0058】
粗大繊維量の測定方法:
対象となる微細繊維含有組成物に水を添加して、繊維固形分濃度を0.2質量%に調整する。次いで12000G×10minの条件で遠心分離し、得られた上澄み液を回収する。そして、上澄み液の固形分濃度を適切な方法で測定する。得られた上澄み液の固形分濃度に基づき、下記式により、粗大セルロース繊維の割合として、粗大セルロース繊維量が求められる。
粗大セルロース繊維の割合(%)=100−(上澄み液の固形分濃度/0.2質量%×100)
【0059】
本発明の組成物に含まれる粗大セルロース繊維量は、特に限定されないが、好ましくは、0.5%以上85%未満である。粗大セルロース繊維量は、より好ましくは1.0%以上85%未満であり、さらに好ましくは、1.5%以上85%未満である。このような範囲であれば、微細繊維のみを成分とする増粘剤に比較して、高い増粘効果が発揮されうるからである。
【0060】
本発明の組成物においては、粗大繊維表面のフィブリル化された繊維とは別に、微細繊維が独立して存在している。繊維の表面が毛羽立って一部がナノ化したものは既に知られているが、本発明の組成物はそうではなく、粗大な、例えば繊維幅が1μm以上のセルロース繊維と、ナノサイズ、例えば繊維幅が数nmの微細セルロース繊維とがそれぞれ独立して存在している点が特徴の一つである。
【0061】
〔ヘイズ(Haze)〕
本発明の組成物は、透明性、すなわちヘイズ値によって特徴づけることができる。ヘイズは、セルロース懸濁液の透明度の尺度であり、ヘイズの値が低いほど透明度が高い。本発明において、ヘイズというときは、特に記載した場合を除き、次の方法で測定された値をいう。
【0062】
ヘイズの測定方法:
対象となる微細繊維含有組成物に水を添加して、繊維固形分濃度を0.2質量%に調整する。調製された液は、粗大繊維、微細繊維、水のみを含むようにする。調製された液を、JIS規格K7136に準拠し、ヘイズメーター、例えば村上色彩技術研究所製ヘイズメーター(HM−150)を用いて、測定する。
【0063】
本発明の組成物のヘイズ値は、特に限定されないが、好ましくは、1.0〜50%である。例えば、1.9〜40%であってもよい。ヘイズ値は、より好ましくは1.0〜40%であり、さらに好ましくは1.0〜30%であり、さらに好ましくは2.0〜30%であり、さらに好ましくは2.0〜20%であり、さらに好ましく2.0〜15%である。このような範囲であれば、高い増粘性を発揮し、また地下層処理において特に好ましい特性が発揮されうるからである。
【0064】
ヘイズ値がコントロールされた本発明の組成物においては、粗大繊維表面のフィブリル化された繊維とは別に、微細繊維が独立して存在していると考えられる。繊維の表面が毛羽立って一部がナノ化したものは既に知られているが、本発明の組成物はそうではなく、粗大な、例えば繊維幅が1μm以上のセルロース繊維と、ナノサイズ、例えば繊維幅が数nmの微細セルロース繊維とがそれぞれ独立して存在している点が特徴の一つである。
【0065】
〔粘度〕
本発明の組成物は、所定の濃度での粘度値によっても特徴づけることができる。本発明において、微細繊維を含む組成物の粘度を示すときは、特に記載した場合を除き、次の方法で測定された値である。
【0066】
粘度の測定方法:
対象となる微細繊維含有組成物に水を添加して、繊維固形分濃度を0.4質量%に調整する。調整された液を、25℃にてB型粘度計(例えば、BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用い、回転数3 rpm(3分)で測定する。
【0067】
本発明の組成物の粘度値は、特に限定されないが、好ましくは、4700mPa・s以上である。粘度は、より好ましくは、7000mPa・s以上であり、さらに好ましくは12500mPa・s以上である。このような範囲であれば、少量のセルロース繊維により高い増粘性を発揮し、また坑井処理において特に好ましい特性が発揮されうるからである。粘度は、いずれの場合も、上限値が問題になることは少ないが、例えば20000mPa・s以下であり得る。
【0068】
粘度値がコントロールされた本発明の組成物においては、粗大繊維表面のフィブリル化された繊維とは別に、微細繊維が独立して存在していると考えられる。繊維の表面が毛羽立って一部がナノ化したものは既に知られているが、本発明の組成物はそうではなく、粗大な、例えば繊維幅が1μm以上のセルロース繊維と、ナノサイズ、例えば繊維幅が数nmの微細セルロース繊維とがそれぞれ独立して存在している点が特徴の一つである。
【0069】
〔特に好ましい特性〕
本発明により得られる流体は、坑井処理のために好ましい特性である、良好なプロパント分散性、向上された泥水粘度、および高い止水性を有しうる。これらの特性の測定方法と好ましい範囲をいかに記載する。
【0070】
<プロパント分散性>
対象となる微細繊維含有組成物に水を添加して、繊維固形分濃度を0.2質量%に調整する。これにNaClを添加し、10質量%NaCl水溶液になるように調整する。この液100mLに、キサンタンガム0.2g(例えば、株式会社テルナイト製、XCD−ポリマー)、澱粉2.0g(例えば、株式会社テルナイト製、テルポリマーDX)を添加し、1分間攪拌し、ポリマー水溶液を調製する。調製したポリマー水溶液に、プロパント6g(例えば、SINTEX社製ボーキサイト20/40)を添加して、1分間攪拌してプロパント/ポリマー水溶液を調製する。調製したプロパント/ポリマー水溶液を容積100mLのメスシリンダーへ入れて、プロパント/ポリマー水溶液の最上部が位置するメスシリンダーの目盛(以下、「静置前の目盛」という。)を読み取り、次いで、1時間静置した後に、プロパントの最上部が位置するメスシリンダーの目盛(以下、「静置後の目盛」という。)を読み取り、静置前の目盛を0mLとし、メスシリンダーの最下部の目盛を100mLとして、プロパント分散性を評価する。
【0071】
プロパント分散性は、静置後の目盛が小さいほど優れているといえる。本発明の組成物により、プロパント分散性を70mL未満とすることができる。好ましい態様においては、55mL未満とすることができ、さらに好ましい態様においては、40mL未満とすることができる。
【0072】
<泥水粘度>
泥水粘度1:
対象となる微細繊維含有組成物に水を添加して、繊維固形分濃度を0.2質量%に調整する。この液1000mLに対してベントナイト(例えば、クニゲルV1、クニミネ工業株式会社)を50g添加して3000rpmで60分間攪拌後、24時間静置して十分に水和した泥水を作液する。得られた泥水の粘度を、上述の方法で測定する。
【0073】
泥水粘度2:
対象となる微細繊維含有組成物に水を添加して、繊維固形分濃度を0.1質量%に調整する。この液1000mLに対してベントナイト(例えば、クニゲルV1、クニミネ工業株式会社)を50gを添加する。さらにカルボキシメチルセルロース(例えば、2質量%の水による懸濁液の25℃での粘度が、500.0〜900.0mPa・sであるもの、東京化成工業株式会社)1gを添加し、3000rpmで60分間攪拌後、24時間静置して十分に水和した泥水を作液する。得られた泥水の粘度測定を、上述の方法で測定する。
【0074】
泥水粘度の値が大きいほど、泥水の粘度が向上されているといえる。本発明の組成物により、上述の泥水粘度1の測定においては、粘度を43000mPa・s以上とすることができる。好ましい態様においては、45500mPa・s以上とすることができ、さらに好ましい態様においては、47500mPa・s以上とすることができる。本発明の組成物により、上述の泥水粘度2の測定においては、粘度を46500mPa・s以上とすることができる。好ましい態様においては、49500mPa・s以上とすることができ、さらに好ましい態様においては、51000mPa・s以上とすることができる。
【0075】
<止水性試験>
止水性試験:
上述の泥水粘度2の方法で作液した泥水200mLを、25℃にてAPI規格による濾過試験器を使用して、室温下30分間、3kg/cm2Gの加圧を行ったときの濾水量を測定する。
【0076】
止水試験においては、すなわち濾水量が少ないほど、止水性能が良好であるといえる。本発明の組成物により、上述の止水性試験においては、漏水量を9.6mL以下とすることができる。好ましい態様においては、8.2mL以下とすることができ、さらに好ましい態様においては、7.8mL以下とすることができる。
【0077】
〔用途〕
(組成物としての用途)
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物(単に、「本発明の組成物」ということもある。)は、流体に添加することにより流体の特性を種々に改変しうるので、そのような特性を活かした種々の目的において使用することができる。本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物の使用目的(用途)は、地下層処理に関連する限り、特に限定されないが、例えば下記を挙げることができる。
【0078】
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、地下層処理用流体において優れた粘性を発揮しうるので、地下層処理用流体における増粘剤として使用できる。
【0079】
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、地下層処理用流体において優れた止水性を発揮しうるので、逸泥防止剤、脱水調節剤として使用できる。
【0080】
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、地下層処理用流体において微細繊維のネットワーク間にオイルの液滴が捕捉されることで乳化機能を発現しうることから、乳化剤としての使用が期待できる。具体的には、エマルション系の地下層処理用流体への使用や、地下層処理用流体に配合されるエマルション物質の安定化に使用できる。
【0081】
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、チキソトロピー性を有することから、泥水に使用した際には、優れた坑壁形成能を発揮しうる。またセメンチング流体に使用した際には、セメント圧入を容易にすることができる。したがって、坑壁形成剤またはセメンチング調節剤として使用できる。
【0082】
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、高温、例えば300℃までの環境下でも使用できる。微細セルロース繊維の分解温度は300℃であり、また、高い結晶性に起因し、融点やガラス転移点をもたないため、一般的な樹脂のようなヘタリがない。そのため、高深水の坑井でも使用できる。
【0083】
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、優れた耐酸性を発揮し、粘度が低下しないため、酸フラクチャリング流体等の酸性流体において使用できる。
【0084】
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、優れた耐アルカリ性を発揮し、粘度が低下しないため、フラクチャリング流体等のアルカリ性の流体中において使用できる。
【0085】
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、優れた耐塩性を発揮し、粘度が低下しないため、塩が大量に添加されるインヒビテッド泥水やフラクチャリング流体において使用できる。
【0086】
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、適切な分散媒に分散させて用いることができる。分散媒は微細セルロース繊維を分散することができるものであれば特に限定されず、水、有機溶剤、油(例えば、軽油、ミネラルオイル、合成油、食用油、非食用油)等を用いることができる。
【0087】
本発明の本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物は、固形物、スラリー、乾燥物、濃縮(ゲル化も含む)物等の種々の形態とすることができる。使用される際には水系の分散媒に分散されることから、分散が容易なように、加工されていてもよい。濃縮する際、その方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維を含有する液に濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、およびWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。
【0088】
本発明の組成物に含有される微細セルロース繊維は、ブレーカーを用いて分解させることができる。分解させることで粘度のコントロールや地下層への残存を防ぐことができる。ブレーカーとしては、セルロース繊維を分解できる種々の成分が利用できる。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の酸化剤、塩酸や硫酸等の酸、およびセルラーゼ等の酵素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本発明の組成物に含有される微細セルロース繊維は、粘性効果等の向上を狙って、架橋させることができる。架橋剤としては、セルロース繊維を架橋できる種々の成分が利用できる。例えば、ホウ酸塩、水酸化カリウム、硝酸塩、ジルコニウム、チタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
(流体)
本発明の組成物は、上述のように、増粘、逸泥防止、脱水調節、乳化、坑壁形成、セメンチング調節のために使用でき、また温度、酸、アルカリ、塩に対して耐性があるため、地下層処理、例えば、坑井掘削において使用される各種の流体に添加して使用することができる。このような流体には、フラクチャリング流体、泥水、セメンチング流体、ウェルコントロール流体(well control fluid)、ウェルキル流体(well kill fluid)、酸フラクチャリング流体(acid fracturing fluid)、酸分流流体(acid diverting fluid)、刺激流体(stimulation fluid)、サンドコントロール流体(sand control fluid)、仕上げ流体(completion fluid)、ウェルボーン石化流体(wellbore consolidation fluid)、レメディエーション処理流体(remediation treatment fluid)、スペーサー流体(spacer fluid)、掘削流体(drilling fluid)、フラクチャリングパッキング流体(frac-packing fluid)、水適合流体(water conformance fluid)、砂利パッキング流体(gravel packing fluid)が含まれる。
【0091】
本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物を流体に含有させて用いる場合、含有量は、意図した効果が発揮される限り特に限定されない。典型的には、流体は、セルロース繊維を固形分濃度で(セルロース繊維の総量として)、0.005〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%で含有しうる。
【0092】
(流体中の他の成分)
本発明により提供される流体は、本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物のほか、従来の地下層処理のための流体に添加される各種の成分を含有し得る。添加される成分の例として、加重材、粘度調整剤、分散剤、凝集剤、逸泥防止剤、脱水調節剤、pH制御剤、摩擦低減剤、水和膨張制御剤、乳化剤、界面活性剤、殺生物剤、消泡剤、スケール防止剤、腐食防止剤、温度安定剤、樹脂コート剤、亀裂支持材、塩およびプロパントを挙げることができるが、これらに限定されない。また、添加される成分は、一種のみならず、二種以上であってもよい。
【0093】
加重材は流体の比重を高め、裸坑壁の安定やガス、水等の噴出を防止するために用いられる。加重材としてはバライトやヘマタイト等の鉱物を使用できるが、これらに限定されない。
【0094】
粘度調整剤はゲル化剤、増粘剤、調泥剤とも呼ばれ、流体の粘度を最適化するために用いられる。このための成分として、ベントナイト、アタバルジャイト、セピオライト、合成スクメタイト等の鉱物類の他、水溶性である天然および合成のポリマーが使用される。水溶性ポリマーの好ましい例の一つは、天然多糖由来のものである。粘度調整剤の具体例としては、天然物または天然物由来のものとして、グァーガムおよびグァーガム誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、グリオキザール付加ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシエチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、アラビアガム、アルギン酸およびそのエステル類、アルギン酸塩、エレミ樹脂、ガティガム、カラギナン、カラヤガム、カロブビーンガム、増粘多糖類、タマリンドガム、トラガントガム、デンプングリコール酸塩、デンプン酸塩、ファーセレラン、ブドウ糖、ブドウ糖多糖類、ショ糖、キサンタンガム等が挙げられるが、これらに限定されない。合成高分子としては、加水分解ポリアクリルアミド(PHPAポリマー)、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート系ポリマー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
逸泥防止剤は、地下層処理用流体の流出を防止するために用いられる。逸泥防止剤として、おがくず、わら、セロファン、セメント、パルプ繊維、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアリレート等を使用できるが、これらに限定されない。
【0096】
脱水調節剤は脱水の減少をはかり、坑壁の保護を強化するために使用される。脱水調節剤としては、スルホン化アスファルト誘導体、デンプン誘導体、ポリアリレート、ポリアニオニックセルロース系ポリマー等が使用されるが、これらに限定されない。
【0097】
乳化剤は、一方の液体中にそれとは通常混合しにくい他方の液体を分散させるために用いられる。乳化剤としては、グリセリンエステル、サポニン、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、カプリン酸エチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オクタン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸ドデシル、ステアリン酸グリセリン、パルミチン酸グリセリン、トリ(カプリル酸カプリン酸)グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、ステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸プロピレングリコール、ラウリン酸プロピレングリコール、ステアリン酸グリコール、ジオレイン酸グリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリコール、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ジメチルコンコポリオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
プロパントは、0.5mm程度の固形物であり、フラクチャリング等の際に割れ目に押し込まれ、支持体となって割れ目を閉じないようにするために用いられる。プロパントの例として、砂、ガラスビーズ、セラミック粒子および樹脂被覆した砂等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
(フラクチャリング流体)
好ましい実施態様の一つは、本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物を含む、水圧破砕において使用されるフラクチャリング流体である。フラクチャリング流体におけるセルロース繊維の含有量は、意図した効果が発揮される限り特に限定されない。フラクチャリング流体は、セルロース繊維を固形分濃度で(セルロース繊維の総量として)、例えば0.002〜20質量%含有し、0.02〜2質量%含有することが好ましく、0.04〜1質量%含有することがより好ましい。
【0100】
フラクチャリング流体は、一般に、溶剤または分散媒として、水や有機溶剤を90〜95質量%程度含有し、プロパント(支持体)を5〜9質量%程度含有する。さらに場合により、ゲル化剤、スケール防止剤、岩石等を溶解するための酸、摩擦低減剤等の種々の添加剤を0.5〜1質量%程度含有する。これらの成分および添加剤は、本実施態様により提供されるフラクチャリング流体も同様の範囲で含有することができる。
【0101】
微細セルロース繊維は、フラクチャリング流体において、プロパントの安定分散に加え、架橋反応による更なる粘度の向上や、使用後に分解して流体の粘度を低下させたりすることで柔軟な粘度コントロールを行うことができる。また、フラクチャリング流体において分解性の逸泥防止剤としての利用も可能である。逸泥を防止することで、坑内で圧力をかかりやすくできるため、より良い亀裂を形成させることができる。通常の逸泥防止剤をフラクチャリング流体に添加すると、ガスの産出流路を塞いでしまう恐れがあるが、微細セルロース繊維からなる逸泥防止剤は、使用後に分解すれば、産出流路を塞ぐことがない。
【0102】
(泥水)
好ましい実施態様の一つは、本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物を含む、坑井掘削の際に使用される泥水である。泥水におけるセルロース繊維の含有量は、意図した効果が発揮される限り特に限定されない。泥水は、セルロース繊維を固形分濃度で(セルロース繊維の総量として)、例えば0.004〜40質量%含有し、0.04〜4質量%含有することが好ましく、0.08〜2質量%含有することがより好ましい。
【0103】
坑井掘削の際に使用される泥水は、一般に、堀屑を坑底から除去し、地上へ運搬するために使用される。また、泥水は、坑井内の圧力を制御して意図しない流体の坑井内への流入や地上への噴出を防止し、また坑壁を保護して地下層の崩壊を防ぎ、さらにドリルストリングと坑壁との摩擦を減らし、坑井内機器を冷却する役割も有する。堀屑やガスを運搬することにより、地下の情報を提供する役割も有する。泥水には、ベントナイト泥水、リグノスルホネート泥水、KClポリマー泥水、油系泥水等があるが、本実施態様により各種の泥水が提供される。
【0104】
一般に、ベントナイト泥水は安価で取扱いが容易であるが、塩分やセメントに弱く、ゲル化しやすい。これらの決定を補うため、従来、カルボキシメチルセルロース等が添加されることがあるが、本発明により、より高い性能のベントナイト泥水が提供されうる。
【0105】
本実施態様により、本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物を含む、分散系泥水が提供される。このような泥水は、粘度調整剤してのセルロース繊維とベントナイトのほか、分散剤としてリグノスルホネート(リグニンスルホン酸ということもある。)やリグナイト(フミン酸誘導体)、pH調整剤(例えば、水酸化ナトリウム)、加重材を含有しうる。本実施態様により提供される分散系の泥水は、泥岩の保護機能、粘性や比重のコントロールの容易性、温度(一般のリグノスルホネート泥水の使用温度は約175℃、リグナイト泥水の使用温度は約190℃といわれる。)、塩、セメント等による耐力が、従来のリグノスルホネート泥水に比較して、より高められていることが期待できる。
【0106】
本実施態様により提供される泥水は、KCl泥水としても構成できる。Kイオンは粘土類の膨潤や分散を抑制する作用に非常に優れていることが知られている。その一方で凝集力が強すぎるために、従来はKイオンを大量に含んだ液中でも増粘性や保護コロイド性を発揮しうる、キタンサンガムや部分加水分解ポリアクリルアミド(PHPA)ポリマーと組み合わせて用いられてきた。本実施態様においては、キタンサンガムやPHPAと共にまたはそれらに代えて、本発明により提供される微細セルロース繊維を含有する組成物を用いることができる。本実施態様により提供されるKCl泥水は、泥岩の保護機能、粘性や比重のコントロールの容易性、塩やセメント等による耐力が、従来のKCl−ポリマー泥水と比較して、より高められていると期待できる。
【0107】
本実施態様により提供される泥水は、油系泥水としても構成できる。油系泥水には、油分95%以上のオイルマッド、さらに15〜35%の水および乳化剤を用いて調製した油中水型の乳化物であるインバートエマルジョンオイルマッドが含まれる。油系泥水は、一般に、水系の泥水に比較して、泥岩層の水和・膨潤の抑制、高温安定性、潤滑性、油層への水の浸入による生産性障害の防止、金属腐食を起こしにくい、腐敗による劣化が少ない等の利点がある。本実施態様により、これらの特性を生かしつつ、さらに改良された油系泥水が提供されると期待できる。
【0108】
(セメンチング流体)
好ましい実施態様の一つは、本発明の微細セルロース繊維を含有する組成物を含む、セメンチング流体である。セメンチング流体におけるセルロース繊維の含有量は、意図した効果が発揮される限り特に限定されない。セメンチング流体は、セルロース繊維を固形分濃度で(セルロース繊維の総量として)、例えば0.001〜40質量%含有し、0.01〜20質量%含有することが好ましく、0.05〜5質量%含有することがより好ましい。
【0109】
セメンチング流体には、ケイ酸三カルシウム等の一般用セメントや高温度の坑井に使用するクラスGセメント等の高温度耐久性セメントを使用することができる。セメンチング時間の最適化のために、セメント速硬剤やセメント遅硬剤等の固結剤を添加剤として使用することができる。また、セメント分散剤、流動性改善剤、低比重、低脱水セメント添加剤等も使用することができる。その他には、脱水調節剤、強度安定剤、加重材、置換効率の改善や坑内洗浄のためのセメントスペーサー添加剤、坑壁洗浄を行うケミカルウォッシュ添加剤、セメントスラリー消泡剤、スケール防止剤、逸泥防止剤、アルミン酸カルシウム、ポリ燐酸ナトリウム、フライアッシュ、発泡剤、泡安定剤、及び泡を形成するに十分な量のガス等が添加されうる。セメンチング流体が硬化したものに弾力性を与えるためには、流体は、必要に応じて不活性で粉砕されたゴムの粒子を含んでいてもよい。
【0110】
微細セルロース繊維は水中で三次元ネットワークを形成し、微細な物質であっても安定分散させることができる。例えば、セメンチング流体では、10μm以下のセメント粒子が存在している。微細セルロース繊維は10μm以下の粒子であっても安定分散させることができる。また、疎水性の粒子も水中に安定分散させることができ、例えば、疎水処理された顔料粒子、鉱物等も安定分散させることができる。また、微細セルロース繊維は親水性が高いため、セメンチング流体の水分離を抑えることができる。耐塩性も高いため、カルシウム分を多く含むセメンチング流体との相性も良好である。
【0111】
また、地熱坑井のような二酸化炭素を含む高温井戸では、塩水を含む二酸化炭素の存在下で劣化しないセメンチング流体が望まれる。また、地熱坑井やそれに類する井戸で用いられるセメント組成物は軽量、例えば約9.5〜約14ポンド/ガロン(約1.14〜約1.68g/cm3)の範囲の密度であることが好ましい。本実施態様により、提供されるセメンチング流体を、このような密度範囲に構成することもできる。
【0112】
〔地下層の処理方法、石油資源の生産方法〕
本発明はまた、本発明の組成物または上述の流体を用いた、地下層の処理方法を提供する。地下層(地層ということもある。)には、海底の地下層も含まれる。
【0113】
地下層の処理には、種々の目的で使用する坑井の掘削が含まれる。坑井には、試掘井(exploratory well またはwildcat)、評価井(appraisal well)、探鉱井(exploratory wellまたはexploration well)、探掘井(delineation well)、開発井(development well)、生産井、圧入井(injection well)、観測井(observation well)、サービス井(service well)等が含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
また、地下層の処理には、下記のものが含まれる。
・セメンチング:主として坑井を掘った後、ケーシングと坑壁との隙間にセメントを充填してケーシングを固定するために行われる。
・坑井調査、検層作業(well logging): これには、泥水検層が含まれる。泥水検層は、循環している掘削泥水中の、ガスや掘り屑を観察、分析するものであり、それにより油ガス層を早期に察知し、また掘削中の岩相を知ることができる。
・石油資源の回収:これには、水攻法(water flooding)、ケミカル攻法(chemical flooding)が含まれる。
・坑井刺激:坑壁や坑井周辺の貯留層の性状を改善し、生産性の向上を図ること等を目的に行われる。これには、塩酸等を用いて洗浄する、酸処理(acidizing)、貯留層に亀裂を生じさせて流体の流路を確保する水圧破砕(hydraulic fracturing、hydrofracturing、fracking)が含まれる。さらに、砂層からの生産の場合の、砂の坑井への流入や砂を含む流体がチュービングや設備に被害を与えることを防止するための、砂対策(sand control)、樹脂を含む流体を地下層に圧入して砂岩を固める樹脂強化(plastic consolidation)等が含まれる。
・水系泥水、油系泥水、ケミカル・フルイド(chemical fluid)またはブライン(brine)を用いた坑井仕上げ。
・浸透率の低いタイトな地下層に通り道(割れ目、フラクチャ)を作るための、高圧のフラクチャリング流体を使用したフラクチャリング。
・坑井改修(well workover)。
・廃坑処理。
【0115】
本発明はまた、本発明により得られる組成物または流体を用いた、石油資源(petroleum)の生産方法を提供する。石油資源とは、地下に存在する、固体、液体、気体のすべての鉱物性炭化水素を指す。石油資源の典型的な例は、一般的な区分である液体の石油(oil)と気体の天然ガスである。また石油資源には、在来型の石油(oil)、天然ガスのほか、タイトサンドガス、シェールオイル、タイトオイル、重質油、超重質油、シェールガス、炭層ガス、ビチュメン、ヘビーオイル、オイルサンド、オイルシェール、メタンハイドレートが含まれる。
【0116】
本発明では、セルロース繊維の分散液を濃縮、または乾燥させ、得られた濃縮液または乾燥物を水系溶媒に再分散させて再分散液を得る工程で組成物を製造することができる。
濃縮する際の濃縮方法は、特に限定されないが、濃縮剤および/または乾燥機を用いて実施することができる。
【0117】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明の範囲は実施例により限定されない。
【実施例】
【0118】
リン酸化セルロース1の調製:
尿素100g、リン酸二水素ナトリウム二水和物55.3g、リン酸水素二ナトリウム41.3gを109gの水に溶解させてリン酸化試薬を調製した。
乾燥した針葉樹晒クラフトパルプの抄上げシートをカッターミルおよびピンミルで処理し、綿状の繊維にした。この綿状の繊維を絶乾質量で100g取り、リン酸化試薬をスプレーでまんべんなく吹きかけた後、手で練り合わせ、薬液含浸パルプを得た。
得られた薬液含浸パルプを140℃に加熱したダンパー付きの送風乾燥機にて、80分間加熱処理し、リン酸化セルロース1を得た。得られたリン酸化セルロース1のリン酸基量は0.678mmol/gであった。
得られたリン酸化パルプをパルプ質量で100g分取し、10Lのイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。次いで、得られた脱水シートを10Lのイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12〜13のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10Lのイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。FT−IRによる赤外線吸収スペクトルの測定により、1230〜1290cm
-1にリン酸基に基づく吸収が見られ、リン酸基の付加が確認された。よって、得られたリン酸オキソ酸導入セルロースは、セルロースのヒドロキシ基の一部が下記構造式(1)の官能基で置換されたものであった。式中、a,b,m,nは自然数である(ただし、a=b×mである。)。α
1,α
2,・・・,α
nおよびα’のうちの少なくとも1つはO
-であり、残りはR,ORのいずれかである。Rは、各々、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、およびこれらの誘導基のいずれかである。βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
【0119】
【化1】
【0120】
リン酸化セルロース2の調製:
リン酸化セルロース1の調製で得たリン酸化パルプの脱水シートを原料にした以外は、同様にして、リン酸基を導入する工程をさらに1回繰り返してリン酸化セルロース2を得た。得られたリン酸化セルロース2のリン酸基量は1.479mmol/gであった。
【0121】
リン酸化セルロース3の調製:
リン酸化セルロース1の調製で得たリン酸化パルプの脱水シートを原料にした以外は、同様にして、リン酸基を導入する工程をさらに2回繰り返してリン酸化セルロース3を得た。得られたリン酸化セルロース3のリン酸基量は1.690mmol/gであった。
【0122】
リン酸化セルロース4の調製:
リン酸化セルロース1の調製において反応時間を100分に変更した以外は同様にしてリン酸化セルロース4を得た。得られたリン酸化セルロース4のリン酸基量は1.298mmol/gであった。
【0123】
カルボキシル化セルロースの調製:
乾燥質量200g相当分の未乾燥の針葉樹晒クラフトパルプとTEMPO2.5gと、臭化ナトリウム25gとを水1500mlに分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が5.0mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なした。
【0124】
その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10Lのイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。FT−IRによる赤外線吸収スペクトルの測定により、1730cm
-1にカルボキシ基に基づく吸収が見られ、カルボキシ基の付加が確認された。
【0125】
(製造例1)
得られたリン酸化セルロース1にイオン交換水を添加し、1.75質量%スラリーを調製した。このスラリーを、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−11S)を用いて、6900回転/分の条件で180分間解繊処理し、セルロース懸濁液1を得た。X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持していた。
【0126】
(製造例2)
製造例1にて得られたセルロース懸濁液1をさらに、湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて1回パスさせセルロース懸濁液2を得た。X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持していた。マイクロスコープ観察写真および透過型電子顕微鏡写真を示す。繊維幅10μm以上の粗大な繊維と1000nm以下の微細な繊維が存在していた(
図1)。
【0127】
(製造例3)
製造例1にて得られたセルロース懸濁液1をさらに、湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて2回パスさせセルロース懸濁液3を得た。X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持していた。
【0128】
(製造例4)
製造例1にて得られたセルロース懸濁液1をさらに、湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて3回パスさせセルロース懸濁液4を得た。X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持していた。
【0129】
(製造例5)
製造例1にて得られたセルロース懸濁液1をさらに、湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて4回パスさせセルロース懸濁液5を得た。X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持していた。
【0130】
(製造例6)
製造例1にて得られたセルロース懸濁液1をさらに、湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて5回パスさせセルロース懸濁液6を得た。X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持していた。
【0131】
(製造例7)
製造例1にて得られたセルロース懸濁液1をさらに、湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて6回パスさせセルロース懸濁液7を得た。X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持していた。
【0132】
(製造例8)
製造例1にて得られたセルロース懸濁液1をさらに、湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて7回パスさせセルロース懸濁液8を得た。X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持していた。
【0133】
(製造例9)
製造例1にて得られたセルロース懸濁液1をさらに、湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて8回パスさせセルロース懸濁液9を得た。X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持していた。
【0134】
(製造例10)
製造例1にて得られたセルロース懸濁液1をさらに、湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて9回パスさせセルロース懸濁液10を得た。X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持していた。
【0135】
(製造例11)
製造例1にて得られたセルロース懸濁液1をさらに、湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて10回パスさせセルロース懸濁液11を得た。X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持していた。マイクロスコープ観察写真および透過型電子顕微鏡写真を示す。繊維幅10μm以上の粗大な繊維は観察されず、繊維幅1000nm以下の微細な繊維が存在していた(
図2)。
【0136】
(製造例12)
リン酸化セルロースを濃度が2質量%になるようイオン交換水で希釈した後、クリアランスを50μmに設定したシングルディスクリファイナーに5回通した。さらに高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社製「Panda Plus 2000」)で、操作圧力1200barにて1回パスさせ、セルロース懸濁液12を得た。
マイクロスコープ観察写真および透過型電子顕微鏡写真を示す。繊維幅10μm以上の粗大な繊維との1000nm以下の微細な繊維が存在していた(
図3)。
【0137】
(製造例13)
リン酸化セルロースを濃度が2質量%になるようイオン交換水で希釈した後、クリアランスを50μmに設定したシングルディスクリファイナーに5回通した。さらに高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社製「Panda Plus 2000」)で、操作圧力1200barにて2回パスさせ、セルロース懸濁液13を得た。
【0138】
(製造例14)
リン酸化セルロースを濃度が2質量%になるようイオン交換水で希釈した後、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で3分間解繊処理した。さらに高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社製「Panda Plus 2000」)で、操作圧力1200barにて1回パスさせ、セルロース懸濁液14を得た。
【0139】
(製造例15)
リン酸化セルロースを濃度が2質量%になるようイオン交換水で希釈した後、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で3分間解繊処理した。さらに高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社製「Panda Plus 2000」)で、操作圧力1200barにて2回パスさせ、セルロース懸濁液15を得た。
【0140】
(製造例16)
針葉樹晒クラフトパルプ(王子エフテックス社製、水分50質量%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)に、濃度4質量%になるように水を加えた。次いで、ダブルディスクリファイナーを用いて変則CSF(平織り80メッシュ、パルプ採取量を0.3gとした以外はJIS P8121に準ずる)が325ml、平均繊維長が0.66mmになるまで叩解して、セルロース懸濁液16を得た。マイクロスコープ観察写真および透過型電子顕微鏡写真を示す。繊維幅10μm以上の粗大な繊維は存在しているが、微細繊維は粗大繊維の表面から生成しており、独立した微細繊維はほとんど見られなかった(
図4)。
【0141】
(製造例17)
カルボキシル化セルロースを濃度が0.5質量%になるようイオン交換水で希釈した後、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で30分間解繊処理してセルロース懸濁液17を得た。
【0142】
(製造例18)
カルボキシル化セルロースを濃度が0.5質量%になるようイオン交換水で希釈した後、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で3分間解繊処理してセルロース懸濁液18を得た。
【0143】
(製造例19)
カルボキシル化セルロースを濃度が0.5質量%になるようイオン交換水で希釈した後、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で90秒間解繊処理してセルロース懸濁液19を得た。
【0144】
(製造例20)
カルボキシル化セルロースを濃度が0.5質量%になるようイオン交換水で希釈した後、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で45秒間解繊処理してセルロース懸濁液20を得た。
【0145】
(製造例21)
カルボキシル化セルロースを濃度が0.5質量%になるようイオン交換水で希釈した後、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で25秒間解繊処理してセルロース懸濁液21を得た。
【0146】
(製造例22)
カルボキシル化セルロースを濃度が0.5質量%になるようイオン交換水で希釈した後、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で13秒間解繊処理してセルロース懸濁液22を得た。
【0147】
(製造例23)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを1回パスさせセルロース懸濁液23を得た。
【0148】
(製造例24)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを2回パスさせセルロース懸濁液24を得た。
【0149】
(製造例25)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを3回パスさせセルロース懸濁液25を得た。
【0150】
(製造例26)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを4回パスさせセルロース懸濁液26を得た。
【0151】
(製造例27)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを5回パスさせセルロース懸濁液27を得た。
【0152】
(製造例28)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを6回パスさせセルロース懸濁液28を得た。
【0153】
(製造例29)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを7回パスさせセルロース懸濁液29を得た。
【0154】
(製造例30)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを8回パスさせセルロース懸濁液30を得た。
【0155】
(製造例31)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを9回パスさせセルロース懸濁液31を得た。
【0156】
(製造例32)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを10回パスさせセルロース懸濁液32を得た。
【0157】
(製造例33)
得られたリン酸化セルロース1にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを1回パスさせセルロース懸濁液33を得た。
【0158】
(製造例34)
得られたリン酸化セルロース1にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを5回パスさせセルロース懸濁液34を得た。
【0159】
(製造例35)
得られたリン酸化セルロース1にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを10回パスさせセルロース懸濁液35を得た。
【0160】
(製造例36)
得られたリン酸化セルロース1にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを20回パスさせセルロース懸濁液36を得た。
【0161】
(製造例37)
得られたリン酸化セルロース1にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーをクリアランスを100μmに設定したシングルディスクリファイナーを30回パスさせセルロース懸濁液37を得た。
【0162】
(製造例38)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーを湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて1回パスさせセルロース懸濁液38を得た。
【0163】
(製造例39)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーを湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて2回パスさせセルロース懸濁液39を得た。
【0164】
(製造例40)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーを湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて3回パスさせセルロース懸濁液40を得た。
【0165】
(製造例41)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーを湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて4回パスさせセルロース懸濁液41を得た。
【0166】
(製造例42)
得られたリン酸化セルロース2にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーを湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて5回パスさせセルロース懸濁液42を得た。
【0167】
(製造例43)
得られたリン酸化セルロース3にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーを湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて1回パスさせセルロース懸濁液43を得た。
【0168】
(製造例44)
得られたリン酸化セルロース3にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーを湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて2回パスさせセルロース懸濁液44を得た。
【0169】
(製造例45)
得られたリン酸化セルロース3にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーを湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて3回パスさせセルロース懸濁液45を得た。
【0170】
(製造例46)
得られたリン酸化セルロース4にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーを湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて2回パスさせセルロース懸濁液46を得た。
【0171】
(製造例47)
得られたリン酸化セルロース4にイオン交換水を添加し、2質量%スラリーを調製した。このスラリーを湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて3回パスさせセルロース懸濁液47を得た。
【0172】
(試験例1)
ヘイズの測定:
ヘイズは、セルロース懸濁液の透明度の尺度であり、ヘイズの値が低いほど透明度が高い。ヘイズの測定は製造したセルロース懸濁液を、そのままイオン交換水で固形分濃度0.2質量%となるように希釈した後、JIS規格K7136に準拠し、村上色彩技術研究所製ヘイズメーター(HM−150)を用いて測定した。
【0173】
(試験例2)
粘度の測定:
得られた各試料を0.4質量%に希釈し、25℃にてB型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用いて回転数3 rpm(3分)で粘度を測定した。
【0174】
(試験例3)
透過型電子顕微鏡観察:
セルロース懸濁液の上澄み液を濃度0.01〜0.1質量%に水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。乾燥後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEOL−2000EX)により観察した。
【0175】
(試験例4)
マイクロスコープ観察:
セルロース懸濁液の上澄み液を濃度0.01〜0.1質量%に水で希釈し、スライドガラスに滴下した。カバーガラスをかぶせ、デジタルマイクロスコープ(Hirox製、KH−7700)により観察した。
【0176】
(試験例5)
粗大繊維量の測定:
解繊パルプスラリーにイオン交換水を添加して、スラリー固形分濃度を0.2質量%に調製整した。冷却高速遠心分離機(コクサン社、H−2000B)を用い、12000G×10minの条件で遠心分離した。得られた上澄み液を回収し、上澄み液の固形分濃度を測定した。下記式に基づいて、粗大セルロースの割合を求めた。
粗大セルロースの割合(%)=100−(上澄み液の固形分濃度/0.2質量%×100)
【0177】
(製造例1〜47の評価結果)
試験例1の方法で測定したHaze値および試験例2の方法で測定した粘度の値、試験例3の方法で測定した粗大繊維量の値を、下表および
図5、6に示す。
【0178】
【表1-1】
【表1-2】
【0179】
(実施例1〜33、参考例1〜14)
プロパント分散性:
製造例1〜47で製造したセルロース懸濁液のプロパント分散性は、以下のプロパント沈降テストによって評価した。すなわち、0.2質量%に希釈したセルロース懸濁液1にNaClを添加し、10質量%NaCl水溶液になるように調整した。この水溶液100mLに、キサンタンガム0.2g(株式会社テルナイト製、XCD−ポリマー)、澱粉2.0g(株式会社テルナイト製、テルポリマーDX)を添加し、1分間攪拌して、ポリマー水溶液を調製した。その後、調製したポリマー水溶液に、プロパント6g(SINTEX社製ボーキサイト20/40)を添加して、1分間攪拌してプロパント/ポリマー水溶液を調製した。調製したプロパント/ポリマー水溶液を容積100mLのメスシリンダーへ入れて、プロパント/ポリマー水溶液の最上部が位置するメスシリンダーの目盛(以下、「静置前の目盛」という。)を読み取り、次いで、1時間静置した後に、プロパントの最上部が位置するメスシリンダーの目盛(以下、「静置後の目盛」という。)を読み取り、静置前の目盛を0mLとし、メスシリンダーの最下部の目盛を100mLとして、プロパント分散性を評価した。測定は3回行い、3回の平均値の目盛に基づき、プロパント分散性を以下の基準で評価した。
A(極めて優秀): 静置後の目盛が、40mL未満
B(優秀): 静置後の目盛が、40mL以上、55mL未満
C(良好): 静置後の目盛が、55mL以上、70mL未満
D(不良): 静置後の目盛が、70mL以上
【0180】
結果を下表に示す。
【0181】
【表2-1】
【表2-2】
【0182】
(実施例34〜66、参考例15〜28)
泥水粘度1:
製造例1〜47で製造して得られたセルロース懸濁液を0.2質量%に希釈し、希釈液1000mLに対してベントナイト(クニゲルV1、クニミネ工業株式会社)を50g添加して3000rpmで60分間攪拌後、24時間静置して十分に水和した泥水を作液した。得られた泥水の粘度を測定した。
【0183】
泥水粘度2:
製造例1〜47で製造して得られたセルロース懸濁液を0.1質量%に希釈し、希釈液1000mLに対してベントナイト(クニゲルV1、クニミネ工業株式会社)を50g、カルボキシメチルセルロース(500.0 〜 900.0 mPa・s(2%, 水, 25 ℃)、東京化成工業株式会社)1gを添加して3000rpmで60分間攪拌後、24時間静置して十分に水和した泥水を作液した。得られた泥水の粘度測定、止水性試験を行った。
【0184】
止水性試験:
得られた泥水200mLを25℃にてAPI規格による濾過試験器を使用して、室温下30分間、3kg/cm2Gの加圧を行ったときの濾水量を測定した。すなわち濾水量が少ないほど、止水性能が良好であるといえる。
【0185】
結果を下表に示す。
【0186】
【表3-1】
【表3-2】
【0187】
(小括)
以上の実験結果より、微細化または粗大繊維と微細繊維の量をコントロールして製造したセルロース懸濁液は高い粘度を有し、掘削用添加剤としての良好な特性が確認できた。特に、ヘイズ1.0〜50%のセルロース懸濁液において掘削用添加剤としての良好な特性が確認できた。さらに、ヘイズ1.0〜30%のセルロース懸濁液において、より良好であり、ヘイズ2.0〜20%においてさらに優れた特性を示した。
【0188】
参考例1〜4、6、12、13、14のように、微細セルロース繊維がほとんどを占める分散液では、実施例1〜33のような粗大繊維と微細繊維のネットワークによるプロパントの分散安定性が、みられなかった。
【0189】
参考例5、7〜11のように粗大繊維量が多すぎる場合は微細化が進んでいないため、粘度を発現させるために必要な微細繊維の量が不足しており、粘度が十分でなかった。また、プロパントの分散安定性も十分でなかった。
【0190】
実施例34〜66では、泥水を調製し、粘度および止水性を測定したが、粗大繊維を所定の割合で混合した泥水は高い粘度、優れた止水性を示した。また、カルボキシメチルセルロースと組み合わせた系においてはさらに優れた増粘性を発揮した。