特許第6477909号(P6477909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6477909
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】ポリプロピレンフィルムロール
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20190225BHJP
   H01G 4/18 20060101ALI20190225BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   C08J5/18CES
   H01G4/18
   H01G4/32 511L
   H01G4/32 551B
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-546260(P2017-546260)
(86)(22)【出願日】2017年8月7日
(86)【国際出願番号】JP2017028571
(87)【国際公開番号】WO2018034182
(87)【国際公開日】20180222
【審査請求日】2018年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-160745(P2016-160745)
(32)【優先日】2016年8月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】津金 和平
(72)【発明者】
【氏名】藤本 聡一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 哲也
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−232254(JP,A)
【文献】 特開2006−273997(JP,A)
【文献】 特開2015−195367(JP,A)
【文献】 特開2003−146496(JP,A)
【文献】 特開平11−59986(JP,A)
【文献】 特開2003−192203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
H01G 4/18,4/32
B65H 18/00−18/28
B29C 55/00−55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンフィルムをコアに巻いてなるフィルムロールであり、ロール最表層の平均硬度が84.0〜94.0°、かつロール最表層の幅方向の硬度バラツキが±2.0°以内であるポリプロピレンフィルムロール。
【請求項2】
ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面の最大山高さSRpが0.4〜2.0μmである請求項1に記載のポリプロピレンフィルムロール。
【請求項3】
ロール最表層からコアまで直径方向の距離をLとしたとき、ロール最表層から0、L/5、2L/5、3L/5、4L/5の距離におけるロール幅方向平均硬度をそれぞれH(0)、H(L/5)、H(2L/5)、H(3L/5)、H(4L/5)としたとき、式(1)〜(4)を満たし、
1.00<H(L/5)/H(0)≦1.02 式(1)
1.00<H(2L/5)/H(L/5)≦1.02 式(2)
1.00<H(3L/5)/H(2L/5)≦1.02 式(3)
1.00<H(4L/5)/H(3L/5)≦1.02 式(4)
かつロール最表層からL/5、2L/5、3L/5、4L/5地点における幅方向の硬度バラツキが±2.0°以内である請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルムロール。
【請求項4】
ロール最表層からコアまで直径方向の距離Lが20〜300mmである請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムロール。
【請求項5】
ポリプロピレンフィルムの80℃熱収縮率が、長手方向について0.4〜2.0%、幅方向について−0.5〜0.5%である請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムロール。
【請求項6】
一方の面と反対面を重ね合わせたときの空気漏れ指数が100〜1,500秒である請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムロール。
【請求項7】
空気含有率が0.1〜8.0%である請求項1〜6のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムロール。
【請求項8】
ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の表面の表面粗さ(中心面平均粗さ)SRaが0.01〜0.05μmである請求項1〜7のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムロール。
【請求項9】
マイクロメーター法によるフィルム厚みが、0.5〜7.0μmである請求項1〜8のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムロール。
【請求項10】
フィルム長さが20,000m以上である請求項1〜9のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムロール。
【請求項11】
フィルム幅が500mm以上1,050mm以下である請求項1〜10のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムロール。
【請求項12】
コンデンサ用である請求項1〜11のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンフィルムロールに関するものであり、詳しくは、コンデンサ用途において、特に蒸着コンデンサを作製する場合に、蒸着工程でのトラブルを防止することができ、さらに各コンデンサ製造において加工性に優れたポリプロピレンフィルムロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性などに優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途などの様々な用途に用いられている。
【0003】
この中でもコンデンサ用途としては、その優れた耐電圧特性、低損失特性から直流用途、交流用途に限らず高電圧コンデンサ用に特に好ましく用いられている。最近では、各種電気設備がインバーター化されつつあり、それに伴いコンデンサの小型化、大容量化の要求が一層強まってきている。そのような市場、特に自動車用途(ハイブリッドカー用途含む)や太陽光発電、風力発電用途の要求を受け、ポリプロピレンフィルムの耐電圧性を向上させ、生産性、加工性を維持させつつ、フィルムを薄膜化していくことが必須な状況となってきている。
【0004】
また近年、電子機器等の発達、小型化に伴い、電解コンデンサに匹敵するような大容量のフィルムコンデンサを安価に得る要求が大きくなっている。フィルムコンデンサの大容量化は、即ち誘電体であるフィルムの薄膜化および大面積化であり、従来より薄いフィルムをより高い生産性で製造し、より高い加工性でコンデンサを加工する技術が必須な状況である。また、コストダウンの観点からフィルムロールの広幅化、長尺化が進んだ結果、コンデンサ製造工程、特に真空蒸着下において、フィルムロールからフィルムを巻き出す際の巻きズレや、走行時のローラー間でのフィルム蛇行、シワ、マージン精度不良等の種々の問題が起こり、最終製品の歩留まりを著しく悪化させていた。特に真空蒸着時のフィルムロールの巻きズレ、シワの発生が大きな問題となっていた。
【0005】
これは、生原反(蒸着前のフィルムロール)製造工程と蒸着加工工程の環境変化に起因する。すなわち、生原反製造工程は1気圧の大気圧下で製造されたため、製品ロール内に1気圧の空気を巻き込んでおり、これが蒸着チャンバ内で減圧雰囲気に曝されることによって空気が膨張してフィルムの層間隙を拡げ、フィルムの巻き張力とのバランスが不安定になって巻き出し中でのフィルム蛇行、シワの発生原因となる。この空気の膨張力は外部との圧力差、すなわち約1気圧の圧力差に相当するものである。この膨張力により加工装置内でフィルムの巻き張力とのバランスがくずれ、フィルムに機械的な幅方向の差が生じて、フィルム蛇行やシワの発生という現象が起こると、ひどくなると蒸着加工ができなくなったり、シワにより蒸着品の著しい品位低下となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
上記問題を解決するため、ポリプロピレンフィルムロールの内層硬度を特定範囲内とすること(例えば、特許文献1)が提案されている。また、幅方向におけるロール直径を特定範囲内とすること(例えば、特許文献2)などが提案されている。
【特許文献1】特開2006−273997号公報
【特許文献2】特開2015−195367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1や特許文献2の提案では、近年の高精度な送り出しが要求されるコンデンサ製造工程、蒸着工程等において、フィルム幅方向の硬度差が解消できず、フィルム蛇行や搬送シワといった問題解決には至らなかった。
【0008】
更に、蒸着フィルムではマージンといわれる蒸着されない部分で仕切られた蒸着レーンが幾条にも形成されており、特に近年このマージン部分(非蒸着部分)の幅が狭くなってきており、この部分の精度が蒸着品の品質レベルを決定するに至っている。これらのマージンは、テープやオイル(マージン形成材料)によって部分的に蒸着を遮って形成するので、蒸発工程(蒸着装置内)において被蒸着フィルム及びマージン形成材料が変動したり形成されていないといったことがなければ出来上がりのマージンは変動、形成不良しない。しかし、上述のごとき高精度のマージンを形成するためには、高精度の送り出し、巻き取りが要求されるため、巻き出しのフィルムの微小な変動(蛇行・シワ)が問題となる場合がある。蒸着後にスリットし、更にその後巻回または、積層してコンデンサを製造した時に設計通りの容量を持ち、かつ正常な電極を形成させるためには高精度の蒸着幅とマージン幅をもったリールに巻き上げることが必要であり、そのためには上記マージン精度を達成することが非常に重要となる。
【0009】
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、蒸着コンデンサを作製する場合に、蒸着工程でのフィルムロールの巻きズレや縦シワ、搬送中での蛇行等のトラブルを防止することができ、さらに各コンデンサ製造において加工性に優れたポリプロピレンフィルムロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するため本発明のポリプロピレンフィルムロールは、次の構成を有する。すなわち、
ポリプロピレンフィルムをコアに巻いてなるフィルムロールであり、ロール最表層の平均硬度が84.0〜94.0°、かつロール最表層の幅方向の硬度バラツキが±2.0°以内であるポリプロピレンフィルムロール、である。
【0011】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面の最大山高さSRpが0.4〜2.0μmであることが好ましい。
【0012】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、ロール最表層からコアまで直径方向の距離をLとしたとき、ロール最表層から0、L/5、2L/5、3L/5、4L/5の距離におけるロール幅方向平均硬度をそれぞれH(0)、H(L/5)、H(2L/5)、H(3L/5)、H(4L/5)としたとき、式(1)〜(4)を満たし、
1.00<H(L/5)/H(0)≦1.02 式(1)
1.00<H(2L/5)/H(L/5)≦1.02 式(2)
1.00<H(3L/5)/H(2L/5)≦1.02 式(3)
1.00<H(4L/5)/H(3L/5)≦1.02 式(4)
かつロール最表層からL/5、2L/5、3L/5、4L/5地点における幅方向の硬度バラツキが±2.0°以内であることが好ましい。
【0013】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、ロール最表層からコアまで直径方向の距離Lが20〜300mmであることが好ましい。
【0014】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、ポリプロピレンフィルムの80℃熱収縮率が、長手方向について0.4〜2.0%、幅方向について−0.5〜0.5%であることが好ましい。
【0015】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、一方の面と反対面を重ね合わせたときの空気漏れ指数が100〜1,500秒であることが好ましい。
【0016】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、空気含有率が0.1〜8.0%であることが好ましい。
【0017】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の表面の表面粗さ(中心面平均粗さ)SRaが0.01〜0.05μmであることが好ましい。
【0018】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、マイクロメーター法によるフィルム厚みが、0.5〜7.0μmであることが好ましい。
【0019】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、フィルム長さが20,000m以上であることが好ましい。
【0020】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、フィルム幅が500mm以上1,050mm以下であることが好ましい。
【0021】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、コンデンサ用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のポリプロピレンフィルムロールをコンデンサ用誘電体として用いた場合、蒸着加工工程やコンデンサ製造工程において、加工性に優れるだけでなく、耐電圧性にも優れており、コンデンサ用誘電体として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、さらに詳しく本発明のポリプロピレンフィルムロールについて説明する。
【0024】
本発明のポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主成分とすることが好ましい。また、ポリプロピレン樹脂としては、後述する共重合体や分岐鎖状ポリプロピレンも含まれてもよい。なお、本発明において「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。ポリプロピレン樹脂以外の成分としては、後述する酸化防止剤や易滑剤といった添加剤が挙げられる。
【0025】
かかるポリプロピレン樹脂としては、主としてプロピレンの単独重合体を用いても良いが、本発明の目的を損なわない範囲で他の不飽和炭化水素を共重合したポリプロピレン共重合体を用いてもよいし、プロピレンの単独重合体と他の重合体とのブレンド物を用いても良い。上記ポリプロピレン共重合体の共重合成分としては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。上記のブレンドすべき他の重合体としては、プロピレン以外の不飽和炭化水素の単独重合体やプロピレンを含む不飽和炭化水素の共重合体を用いることができる。耐電圧特性、寸法安定性の観点から、共重合量は1mol%未満とするのが好ましい。ブレンド量は20重量%未満とするのが好ましい。
【0026】
本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂としては、冷キシレン可溶部(以下、CXS)が5質量%以下であることが好ましい。ここでCXSとは、フィルムを135℃のキシレンで完全溶解せしめた後、20℃で析出させた時に、キシレン中に溶解しているポリプロピレン成分のことをいい、立体規則性が低い、分子量が低いなどの理由により結晶化し難い成分に該当していると考えられる。ポリプロピレン樹脂のCXSは5質量%以下であるとより好ましく、3質量%以下であるとさらに好ましく、1質量%以下であると特に好ましい。CXSが5質量%を超える場合、ポリプロピレンフィルムの耐電圧特性や寸法安定性が劣ることがある。ポリプロピレン樹脂のCXSを上記の範囲内とするには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはプロピレンモノマー自身で洗浄する方法などがある。
【0027】
本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率は、高温時の熱収縮特性の観点から95%以上であることが好ましく、更に好ましくは97%以上である。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレン樹脂の結晶相の立体規則性を示す指標であり、該数値が高いものほど結晶化度が高く、融点が高くなり、特に高温での蒸着加工性の観点から好ましい。このような立体規則性の高い樹脂を得るには、n−ヘプタン等の溶媒で得られた樹脂パウダーを洗浄する方法や、触媒および/または助触媒の選定、組成の選定を適宜行う方法等が好ましく採用される。メソペンタッド分率が上記好ましい範囲の場合は耐電圧特性や寸法安定性に優れる。
【0028】
本発明のポリプロピレンフィルムを構成する上記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(以下、MFR。単位はg/10分)はJIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定した場合において、1.0〜10g/10分であることが好ましく、1.5〜8g/10分であるとより好ましく、2.0〜5g/10分であるとさらに好ましい。ポリプロピレン樹脂のMFRが上記好ましい範囲の場合、製膜性に優れ安定してポリプロピレンフィルムが得られる一方、耐電圧特性にも優れる。ポリプロピレン樹脂のMFRを上記の範囲内とするためには、平均分子量や分子量分布を制御する方法などが好ましく採用される。
【0029】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、上記のポリプロピレンフィルムをコアに巻いてなるフィルムロールである。本発明のフィルムロールに用いるコア(円筒状コア)は、変形の少ないプラスチック製、繊維強化プラスチックス製、金属製が好ましく、強度の観点から繊維強化プラスチックスを用いることがより好ましい。繊維強化プラスチックスコアとしては、例えば炭素繊維あるいはガラス繊維を巻回して円筒形とし、これに不飽和ポリエステル樹脂のような熱硬化性樹脂を含浸せしめ、硬化させた樹脂含浸タイプのコアなどが挙げられる。
【0030】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、ロール最表層の平均硬度が84.0〜94.0°である。より好ましくは86.0〜92.0°であり、さらに好ましくは88.0〜90.0°である。ロール最表層の平均硬度が84.0°未満ではロールが軟らかすぎるため、運搬時などに巻き崩れが生じる場合がある。94.0°を超えると硬く巻かれることで、巻き出し時にフィルム層間でブロッキングが生じ、巻き出し時のフィルム剥離が安定せずフィルム切れの原因となる場合がある。ロール最表層の平均硬度を上記範囲内とするには、上述したポリプロピレン樹脂を使用して、後述する通り、フィルム製膜時の冷却ドラム条件、延伸条件を特定の条件とし、フィルム表面状態を制御すること、およびスリット条件を特定の条件とすることで達成できる。
【0031】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、ロール最表層の硬度バラツキが±2.0°以内である。より好ましくは±1.5°以内であり、さらに好ましくは±1.0°以内である。ロール最表層の硬度バラツキが±2.0°を超えると、蒸着時に加工装置内で空気が膨張してフィルムの層間隙を拡げるが、幅方向でフィルムの巻き張力とのバランスが不安定になり、フィルムに機械的な幅方向の差が生じて、フィルム蛇行やシワの発生という現象が起こり、不良率が増加する場合がある。ロール最表層の硬度バラツキを±2.0°以内とするには、上述したポリプロピレン樹脂を使用して、後述する通り、フィルム製膜時の冷却ドラム条件、延伸条件を特定の条件とし、フィルム表面状態を制御すること、およびスリット条件を特定の条件とすることで達成できる。
【0032】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面の最大山高さSRpが0.4〜2.0μmであることが好ましい。より好ましくは0.5〜1.7μmであり、さらに好ましくは0.6〜1.4μmである。最大山高さSRpが上記好ましい範囲の場合、適切な空気含有率を保持することができ、また平滑面とはならないためブロッキングや巻きズレ、蛇行が生じにくく、一方、巻き取り後にフィルム内部がフィルムにかかる圧力により巻き締まった際に、粗大突起が存在しないので接触しているフィルムに転写して、微細凹凸が生じるおそれもない。また、実厚みが薄くならないため、耐電圧性が悪化することもない。少なくとも片面において上記範囲内の最大山高さSRpとすれば、適切な空気含有率を保持することができ、加工性が向上する。特に最大山高さSRpが両面ともに上記範囲を満たす場合、搬送ロールとの滑り性も良好となるため、加工性に優れる結果となり、より好ましい。最大山高さSRpを0.4〜2.0μmの範囲内とするためには、上述したポリプロピレン樹脂を使用して、後述する通り、フィルム製膜時の縦延伸工程、横延伸工程を特定の条件とすることで達成できる。
【0033】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、ロール最表層からコアまでの直径方向の距離をLとし、ロール最表層から0、L/5、2L/5、3L/5、4L/5の距離におけるロール幅方向の平均硬度をそれぞれH(0)、H(L/5)、H(2L/5)、H(3L/5)、H(4L/5)としたとき、下記式を満たすことが好ましい。
1.00<H(L/5)/H(0)≦1.02
1.00<H(2L/5)/H(L/5)≦1.02
1.00<H(3L/5)/H(2L/5)≦1.02
1.00<H(4L/5)/H(3L/5)≦1.02
より好ましくは下記式を満たす場合である。
1.00<H(L/5)/H(0)≦1.01
1.00<H(2L/5)/H(L/5)≦1.01
1.00<H(3L/5)/H(2L/5)≦1.01
1.00<H(4L/5)/H(3L/5)≦1.01
上記式でH(L/5)/H(0)、H(2L/5)/H(L/5)、H(3L/5)/H(2L/5)、H(4L/5)/H(3L/5)が上記好ましい範囲である場合、外層硬度が内層硬度よりも高くならないため、内層フィルムが潰されて変形することはなく、内部でシワが入ることがない。また、内層は外層から巻き締まりの圧力が大きくならず、内層フィルムが潰されて変形することもない。一方、内層硬度が高くならず、内層でシワやタルミが生じにくく加工性に優れる。上記の範囲内とするためには、上述したポリプロピレン樹脂を使用して、後述する通り、フィルム製膜時のスリット工程を特定の条件とすることで達成できる。
【0034】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、ロール最表層からL/5、2L/5、3L/5、4L/5地点における幅方向の硬度バラツキがそれぞれ±2.0°以内であることが好ましい。より好ましくは±1.5°以内であり、さらに好ましくは±1.0°以内である。ロール最表層からL/5、2L/5、3L/5、4L/5地点における幅方向のバラツキが上記好ましい範囲であると、蒸着時に加工装置内でバランスがくずれにくいので、フィルムに機械的な幅方向の差が生じにくく、フィルム蛇行やシワの発生が起こらず、不良率が増加することがない。幅方向の硬度バラツキを上記の範囲内とするためには、上述したポリプロピレン樹脂を使用して、後述する通り、フィルム製膜時の縦延伸工程、横延伸工程、スリット条件を特定の条件とすることで達成できる。
【0035】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、コンデンサの需要、生産性の観点から、ロール最表層からコアまでの直径方向の距離Lが20〜300mmを満たすことが好ましい。より好ましくは50〜280mmを満たし、さらに好ましくは90〜240mmである。
【0036】
本発明のポリプロピレンフィルムは、80℃、15分の処理条件における長手方向(フィルム製膜時にフィルムが流れる方向)の熱収縮率が0.4〜2.0%であることが好ましい。より好ましくは0.5〜1.5%である。80℃の熱収縮率は巻き取り後のフィルム収縮と関係しており、長手方向の熱収縮率が上記好ましい範囲の場合、巻き締まりすぎないのでシワやタルミが発生しにくい一方、巻き締まりが適度で、フィルム層間のエア抜けが良好なため、蒸着加工時にフィルムの蛇行等が発生しにくい。また幅手方向(長手方向とフィルム平面上で直交する方向)の熱収縮率が−0.5〜0.5%であることが好ましい。より好ましくは−0.4〜0.4%である。幅手方向の熱収縮率が上記好ましい範囲の場合、巻き取り後に幅方向のフィルム端面不揃いが発生しにくく、蒸着加工時にフィルム切れを起こしにくい。80℃、15分の処理条件における長手方向および幅方向の熱収縮率をともに上記の範囲内とするためには、上述したポリプロピレン樹脂を使用して、後述する通り、フィルム製膜時の横延伸工程を特定の条件とすることで達成できる。
【0037】
本発明のポリプロピレンフィルムは、一方の面と反対側の表面を重ね合わせたときの空気漏れ指数は100〜1,500秒であることが好ましい。より好ましくは200〜900秒である。フィルムの空気漏れ指数が上記好ましい範囲であると、フィルム層間の接触が適度で、巻き取り時に突起の転写やシワが生じにくい一方、フィルム層間に巻き込まれた空気を排除することができ、巻き取り時に巻きズレが発生しにくい。空気漏れ指数を上記の範囲内とするためには、上述したポリプロピレン樹脂を使用して、後述する通り、フィルム製膜時の冷却ドラム条件、延伸条件を特定の条件とし、フィルム表面状態を制御することで達成できる。
【0038】
また、巻きズレ防止、マージン精度の観点から、空気含有率は0.1〜8.0%であることが好ましく、より好ましくは、1.0〜3.0%である。空気含有率が上記好ましい範囲であるとフィルムロールの表層硬度が適度で、巻き出し時にフィルム層間でブロッキングが起こりにくく、巻き出し時のフィルム剥離が安定するのでフィルム切れが起こりにくい一方、フィルム層間の空気量が適度で真空蒸着時の巻きズレや走行中の蛇行、シワ、マージン精度不良といった不具合が発生しにくい。
【0039】
本発明のポリプロピレンフィルムの表面粗さSRaは、少なくとも一方の表面において0.01〜0.05μmであることが好ましく、より好ましくは、0.02〜0.04μmである。フィルム表面粗さSRaが上記好ましい範囲の場合は、フィルムロールとした場合の空気含有率を適正に制御でき、巻きズレ、蛇行といった蒸着加工性の悪化が起こりにくく、素子加工時のシワ等の欠点が発生せず耐電圧性が低下するおそれもない一方、フィルム表面の凹凸が適度で、滑り性が良好なため、製膜工程や蒸着工程で搬送シワが発生しにくく、巻きズレが生じにくい。少なくとも片面において上記のフィルム表面粗さSRaを満たせば、適切な空気含有率を保持することができ、加工性が向上する。特にフィルム表面粗さSRaが両面ともに上記範囲を満たす場合、搬送ロールとの滑り性も良好となり、加工性に優れる結果となるため、より好ましい。
【0040】
本発明のポリプロピレンフィルムは、フィルム厚みが0.5〜7.0μmであることが好ましい。フィルム厚みは0.8〜6.8μmであるとより好ましく、1.2〜6.5μmであるとさらに好ましい。フィルム厚みが上記好ましい範囲の場合、機械強度や耐電圧特性に優れ、製膜および加工時にフィルム破断が生じにくい一方、コンデンサ用誘電体として用いた際に体積当たりの容量が小さくなりにくい。フィルム厚みを上記の範囲内とするためには、シートを形成する際に樹脂の吐出量を調整したり、ドラフト比を調整することで適宜設定することができるが、フィルム厚みが薄くなればなるほど製膜時のフィルム破断が生じやすくなるため、上述したポリプロピレン樹脂を使用して、後述する通りフィルム製膜時のキャスト工程、縦延伸工程、横延伸工程を特定の条件とすることで安定して製膜することが可能となる。
【0041】
本発明において、コンデンサの需要、生産性の観点から、フィルムロール幅(ポリプロピレンフィルムの幅)は、500mm以上1,050mm以下が好ましい。より好ましくは、600mm以上950mm以下であり、更に好ましくは620mm以上820mm以下であり、コンデンサ生産性が更に向上する。フィルムロール幅が上記好ましい範囲であると、巻き取り技術の難易度を考慮しても、生産性が良好である一方、蒸着効率に優れ、生産性が良好である。
【0042】
また、蒸着加工の効率を向上させ、生産性を上げて、コストを下げるために、フィルム長さは20,000m以上、好ましくは、30,000m以上である。生産性の観点と巻き取り技術の難易度を考慮すると、更に好ましくは30,000m以上80,000m未満である。フィルム長さが上記好ましい範囲であると重量が適度であるため、取り扱いが容易で、また巻き締まりが適度であるため、加工時にシワやタルミなどの不具合が生じにくい一方、生産性が悪化することもない。
【0043】
本発明のポリプロピレンフィルムは、製膜性を向上させる目的で分岐鎖状ポリプロピレンを含有してもよい。この場合、分岐鎖状ポリプロピレンは、230℃で測定したときの溶融張力(MS)とメルトフローレート(MFR)が、log(MS)>−0.56log(MFR)+0.74なる関係式を満たす分岐鎖状ポリプロピレンであることが好ましい。ここで、溶融張力(MS)の単位はcNである。230℃で測定したときの溶融張力(MS)とメルトフローレート(MFR)が、log(MS)>−0.56log(MFR)+0.74なる関係式を満たす分岐鎖状ポリプロピレンを得るには、高分子量成分を多く含むポリプロピレンをブレンドする方法、分岐構造を持つオリゴマーやポリマーをブレンドする方法、特開昭62−121704号公報に記載されているようにポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法、あるいは特許第2869606号公報に記載されているような方法等が好ましく用いられる。具体的には、LyondellBasell社製“PRO−FAX”(登録商標)PF−814、Borealis社製“Daploy”(商標)HMS−PP(WB130HMS、WB135HMSなど)が例示されるが、この中でも電子線架橋法により得られる樹脂が該樹脂中のゲル成分が少ないために好ましく用いられる。なお、ここでいう分岐鎖状ポリプロピレンとは、カーボン原子10,000個中に対し5箇所以下の内部3置換オレフィンを有するポリプロピレンであり、この内部3置換オレフィンの存在は、H−NMRスペクトルのプロトン比により確認することができる。分岐鎖状ポリプロピレンは、α晶核剤としての作用を有しながら、一定範囲の添加量であれば結晶形態による粗面形成も可能となる。詳しくは、溶融押出した樹脂シートの冷却工程で生成するポリプロピレンの球晶サイズを小さく制御でき、延伸工程で生成する絶縁欠陥の発生を抑制し、耐電圧特性に優れたポリプロピレンフィルムを得ることができる。
【0044】
本発明のポリプロピレンフィルムに分岐鎖状ポリプロピレンを含有せしめる場合、含有量は0.05〜3.0質量%であることが好ましく、0.1〜2.0質量%であるとより好ましく、0.3〜1.5質量%であるとさらに好ましく、0.5〜1.0質量%であると特に好ましい。分岐鎖状ポリプロピレンの含有量が上記好ましい範囲の場合、製膜性の向上効果が得られる一方、ポリプロピレンフィルムとしての立体規則性が低下しないので、耐電圧特性に優れる。
【0045】
本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、易滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有せしめることも好ましい。
【0046】
上記した添加剤の中で、酸化防止剤の種類、および添加量の選定は長期耐熱性の観点から重要である。すなわち、酸化防止剤としては、立体障害性を有するフェノール系のもので、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。具体的には、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えば、BASF社製“Irganox”(登録商標)1330:分子量775.2)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えば、BASF社製“Irganox”(登録商標)1010:分子量1177.7)などを単独使用、もしくは併用することが好ましい。これら酸化防止剤の総含有量はポリプロピレン樹脂全量に対して0.03〜1.0質量%であることが好ましく、0.1〜0.9質量%であるとより好ましい。ポリプロピレン樹脂中の酸化防止剤含有量が優れる一方、高温での耐電圧特性に優れる。
【0047】
本発明のポリプロピレンフィルムは、少なくとも片面の表面ぬれ張力が37〜50mN/mであることが好ましく、38〜49mN/mであるとより好ましく、39〜48mN/mであるとさらに好ましく、40〜47mN/mであると特に好ましい。表面ぬれ張力が上記好ましい下限以上の場合、金属蒸着する際に金属との密着が十分となる。
【0048】
次に本発明のポリプロピレンフィルムロールの製造方法を以下に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0049】
まず、上述した好ましいポリプロピレン樹脂を単軸の溶融押出機に供給し、230〜260℃の温度でスリット状口金から押出し、冷却ドラム上で固化させ未配向シートを得る。ここで、本発明のフィルムを得るため、β晶を適正に生成せしめる目的で、冷却ドラムの温度制御を適切に行うことが好ましい。β晶を効率的に生成せしめるためには、β晶の生成効率が最大となる樹脂温度に所定時間維持することが好ましく、該温度は通常は115〜135℃である。また保持時間としては1.5秒以上保持することが好ましい。これらの条件を実現するためには樹脂温度や押出量、引き取り速度等に応じて適宜プロセスを決定することができるが、生産性の観点からは、冷却ドラムの径が保持時間に大きく影響するために、該ドラムの直径は少なくとも1m以上であることが好ましい。更に、選定すべき冷却ドラム温度としては上述のように他の要素が影響するためにある程度の任意性を含むものの、70〜130℃であることが好ましく、さらに好ましくは90〜110℃の範囲である。冷却ドラム温度が上記好ましい範囲であるとフィルムの結晶化が進行しすぎないので後の工程での配向が容易で、フィルム内にボイドができにくく耐絶縁破壊特性が低下することもない。冷却ドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、平面性が良好でかつ表裏の熱収縮特性や表面粗さの制御が可能なエアーナイフ法が好ましい。
【0050】
次に、得られた未延伸シートを二軸延伸し、二軸配向せしめる。具体的な延伸条件としては、まず、未延伸シートを長手方向に延伸する温度を制御する。温度制御の方法は、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などがある。まず未配向フィルムを100〜150℃に保たれたロールに通して予熱し、引き続き該シートを110℃〜150℃の温度に保ち、この場合、長手方向の延伸倍率として3〜7倍配向した後、10〜40℃の冷却ロールに通して室温まで冷却する。
【0051】
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前にラジエーションヒーターを両面に設置し、局所的に熱量を与えることで、フィルム表面構造を制御する。フィルム最大山高さを適切な範囲に制御できる点、幅方向の均一粗さを達成できる観点から、ラジエーションヒーターとフィルムの距離は、5〜10mmであると好ましく、6〜8mmであるとより好ましい。ラジエーションヒーターとフィルムの距離が上記好ましい範囲の場合、ラジエーションヒーターとフィルムが接触しにくい一方、フィルムの表面制御に必要とされる熱量を十分に供給できる。次にラジエーションヒーターの出力は6〜10kWであると好ましく、7〜9kWであるとより好ましい。ラジエーションヒーターの出力が上記好ましい範囲であるとフィルムの表面制御に必要とされる熱量を十分に供給できる一方、熱量過多となりにくく、最大山高さを適切な範囲に収めることができ、また、熱量過多によるフィルム破れが起きにくい。
【0052】
次に、テンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入する。好ましくは150〜170℃、より好ましくは153〜168℃、さらに好ましくは155〜165℃に加熱して幅方向に7〜14倍、より好ましくは9〜13倍、さらに好ましくは10〜13倍延伸を行う。次いで140〜160℃の温度で熱固定することが好ましい。温度は147〜160℃であることが好ましく、150〜160℃であるとより好ましい。さらに、熱処理時にはフィルムの長手方向および/もしくは幅方向に弛緩させながら行ってもよく、幅方向の弛緩率を10〜20%で弛緩することが好ましい。
【0053】
次に冷却室にてフィルムを冷却する。幅手方向の厚みムラ、熱寸法安定性の観点から、冷却室を3室に隔て、冷却室3室をそれぞれ冷却室1、2、3としたとき、冷却室1の冷却室温度を110〜130℃で0.5秒以上、冷却室2の冷却室温度を80〜100℃で0.5秒以上、冷却室3の冷却室温度を50〜70℃で0.5秒以上保持することが好ましい。冷却室1、2、3の保持時間を1.0秒以上であることがより好ましい。保持時間が上記好ましい下限以上である場合、急激に冷却されにくいので幅手方向の厚みムラを抑制でき、熱寸法安定性が良好である。
【0054】
次に、蒸着を施す面に蒸着金属の密着性を良くする観点で、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムに空気中、窒素中、炭酸ガス中、あるいはこれらの混合気体中で処理強度20〜30W・min/mでコロナ放電処理を施し、蒸着金属の接着性を付与する。
【0055】
次にスリット工程にてフィルムロールを所定の幅にしてコアに巻き取るが、前述の最大山高さのコントロールとともにフィルムのスリット条件が重要であり、スリット条件は、巻き出しの張力が2.0〜8.0kg/mであることが好ましい。巻き取り時の張力は、1.0〜8.0kg/mが好ましく、2.0〜7.5kg/mがより好ましく、3.0〜7.0kg/mがさらに好ましい。巻き取り時の面圧が5〜60kg/m、スリット速度が100〜500m/minであり、オシレーション速度75〜125mm/min、オシレーション幅10〜400mm、といった条件を採用することにより、フィルムロール中の空気含有率を0.1〜8%とすることが好ましい。また、前述の内層硬度を達成するためには張力テーパは60〜80%が好ましく、より好ましくは65〜75%である。これにより、本発明のポリプロピレンフィルムロールをコンデンサ用誘電体として用いた場合、コンデンサ製造工程や蒸着工程において、蒸着時、スリット時ともに優れた加工性を得ることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
【0057】
(1)冷キシレン可溶部(CXS)
ポリプロピレン樹脂試料0.5gを135℃のキシレン100mLに溶解して放冷後、20℃の恒温水槽で1時間再結晶させた後にろ過液に溶解しているポリプロピレン系成分を液体クロマトグラフ法にて定量する(Xg)。試料0.5gの精量値(Xg)を用いて下記式から算出した。
【0058】
CXS(%)=(X/X)×100。
【0059】
(2)メソペンタッド分率(mmmm)
ポリプロピレン樹脂、またはポリプロピレンフィルムを試料として溶媒に溶解し、13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた(参考文献:新版 高分子分析ハンドブック 社団法人日本分析化学会・高分子分析研究懇談会 編 1995年 P609〜611)。
【0060】
A.測定条件
装置:Bruker社製 DRX−500
測定核:13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
測定濃度:10wt%
溶媒:ベンゼン/重オルトジクロロベンゼン=質量比1:3混合溶液
測定温度:130℃
スピン回転数:12Hz
NMR試料管:5mm管
パルス幅:45°(4.5μs)
パルス繰り返し時間:10秒
データポイント:64K
換算回数:10,000回
測定モード:complete decoupling
B.解析条件
LB(ラインブロードニングファクター)を1.0としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker社製)を用いて、ピーク分割を行う。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、さらに付属ソフトの自動フィッティングを行った。ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmのピーク分率の合計を求めた。なお、上記測定を5回行い、その平均値を本試料のメソペンタッド分率(mmmm)とした。
【0061】
ピーク
(a)mrrm
(b)(c)rrrm(2つのピークとして分割)
(d)rrrr
(e)mrmr
(f)mrmm+rmrr
(g)mmrr
(h)rmmr
(i)mmmr
(j)mmmm 。
【0062】
(3)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定した。メルトフローレートの単位はg/10分である。
【0063】
(4)溶融張力(MS)
JIS K 7210(1999)に示されるMFR測定用の装置に準じて測定した。株式会社東洋精機社製メルトテンションテスターを用いて、樹脂試料を230℃に加熱し、溶融ポリマーを押出速度15mm/分で吐出しストランドとした。このストランドを6.5m/分の速度で引き取る際の張力を測定し、溶融張力を求めた。溶融張力の単位はcNである。
【0064】
(5)フィルム厚み
JIS C 2330(2001)の7.4.1.1に準じ、マイクロメーター法厚みを測定した。
【0065】
(6)80℃熱収縮率
ポリプロピレンフィルムの長手方向もしくは幅方向について、測定方向200mm、測定方向と直角の方向10mmとなるように試料を5本切り出し、両端から50mmの位置に印を付けて試長(l:100mm)とした。次に、荷重3gを付けて80℃に保温されたオーブン内に吊し、15分加熱後に取り出して、室温で冷却後、両印間の寸法(l)を測定して下記式にて求め、長手方向、幅方向ともにそれぞれ5本の平均値を本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの熱収縮率とした。
【0066】
熱収縮率={(l−l)/l}×100(%)。
【0067】
(7)表面ぬれ張力
ホルムアルデヒドとエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合液によるJIS K 6768(1999)に規定された測定方法に基づいて測定した。
【0068】
(8)算術平均粗さ(SRa)、最大山高さ(SRp)
JIS B 0601(1982)により、株式会社小坂研究所社製非接触三次元微細形状測定器(ET-30HK)、および三次元粗さ分析装置(MODEL SPA-11)を用いて測定した。測定は任意の10箇所において測定を行い、その平均値として算術平均粗さSRa、最大谷深さSRv、最大山高さSRpを求めた。1回の測定の詳細条件については下記の通りとした。
【0069】
A.測定条件
測定面処理:測定面にアルミニウムを真空蒸着し、非接触法とした。
【0070】
測定方向:フィルムの幅方向
幅方向送り速度:0.1mm/秒
測定範囲(幅方向×長さ方向):1.0mm×0.249mm
高さ方向寸法の基準面:LOWER(下側)
幅方向サンプリング間隔:2μm
長さ方向サンプリング間隔:10μm
長さ方向サンプリング本数:25本
カットオフ:0.25mm/秒
幅方向拡大倍率:200倍
長さ方向拡大倍率:20,000倍
うねり、粗さカット:なし。
【0071】
(9)平均硬度、硬度バラツキ
JIS K 6301の規定による高分子計器株式会社製ゴム硬度計ASKER“TypeC”を用いてポリプロピレンフィルムロールの表面(最表層)を幅方向にロール両端10mmを除いて均等に7点測定し、その平均値を求めた。ロールの内層についてはロール最表層からコアまでの直径方向の距離Lとしたとき、所定の位置までロールを切開し、ロール表面と同じ方法で測定値を求めた。なお、硬度計の抑え圧を一定にするため、硬度計と合わせた重量が3.5kgになるように、荷重を硬度計に取り付けた。また、硬度計のロールと接触する加圧面は、加圧面の辺の長い方をロールの幅方向に平行となるよう測定した。硬度バラツキとは、該平均硬度と各測定点の最も離れた硬度との差(該平均硬度−各測定点の硬度のうち該平均硬度から最も離れた硬度)とする。
【0072】
(10)空気漏れ指数
(株)東洋精機製デジベック平滑度試験機を用いて、25℃、65%RHにて測定した。まず、一方の面と反対面を重ね合わせたフィルム(5cm×5cm、そのうち下側の1枚に直径10mmφの孔をあけ)を試料台にセットする。このとき孔の中心部が試料台の中心にくるようにする。この状態で0.2kg/cmの荷重を加えて、真空到達度を383mmHgに設定する。383mmHgに到達後、自動的に真空ポンプが停止し、その後、フィルム間を空気が通過して系内に流入するため、真空度が低下する。このとき、382mmHgから381mmHgに変化する所要時間を測定し、5回測定した平均値を空気漏れ指数とした。
【0073】
(11)空気含有率(%)
フィルムロールの外周長さを寸法精度10μmの巻き尺を用いて測定し、外周よりロール直径を求める。外周は、どちらかのロール端部より5mm内側の点より、50mm毎に全幅にわたり測定し、その平均値を用いる。空気含有率は下記の式で示される値である。
【0074】
α= {1−t/((d−d)π/4)}×100
α :空気含有率(%)
:重量法フィルム厚み(μm)
:ロール長さ(m)
:ロール直径(mm)
:コア直径(mm)。
【0075】
(12)コンデンサ製造の際の素子加工性(素子巻き収率)
後述する各実施例および比較例で得られたフィルムに、抵抗加熱型金属蒸着装置を用い、真空室の圧力を10−4Torr以下として、ポリプロピレンフィルムの片面に、表面抵抗が2Ω/□となるようにアルミニウムを真空蒸着して巻き取った。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状(蒸着部の幅8.0mm、マージン部の幅1.0mmの繰り返し)に蒸着した。
【0076】
上記により得られた蒸着フィルムを左または右に幅0.50mmのマージン部を有する4.50mm幅のテープ状にスリットした。得られた左マージンおよび右マージンの蒸着ポリプロピレンフィルム各1枚ずつを併せて巻き回し、捲回体を得た。このとき、幅方向に蒸着部分が0.5mmずつはみ出すように2枚のフィルムをずらして巻き回した。素子巻き回しには皆藤製作所製KAW−4NHBを用いた。この捲回体から芯材を抜いて、そのまま150℃、10kg/cmの温度、圧力で5分間プレスし巻き回し型コンデンサ素子を得た。
【0077】
上記のコンデンサを10個製造した際、巻き始めから巻き終わりまでを目視で観察し、シワやズレが発生したものを不合格とし、不合格となったものの数の製造数全体に対する割合を百分率で示し下記加工性の指標とした(以下、素子巻き収率と称する)。素子巻き収率は高いほど好ましい。また、シワやズレは、目視以外でもコンデンサ端面のズレ量で0.75mm以上のズレが発生している場合、コンデンサ幅が4.25mm以下の場合も不合格と判定した。なお、ここでいうコンデンサ端面ズレ量とは、コンデンサ製品幅と捲回前のリールフィルム幅の差異(mm)である。
【0078】
<素子巻き収率>
100% 優
90%以上100%未満 良
70%以上90%未満 可
70%未満 不良
(13)蒸着コンデンサ特性の評価
後述する各実施例および比較例で得られたフィルムに、株式会社ULVAC社製真空蒸着機でアルミニウムを膜抵抗が9Ω/□で長手方向に垂直な方向にマージン部を設けた所謂T型マージンパターンを有する蒸着パターンを施し、幅60mmの蒸着リールを得た。
【0079】
次いで、このリールを用いて株式会社皆藤製作所製素子巻機(KAW−4NHB)にてコンデンサ素子を巻き取り、メタリコンを施した後、減圧下、105℃の温度で10時間の熱処理を施し、リード線を取り付け、コンデンサ素子を仕上げた。このときのコンデンサ素子の静電容量は5μFであった。
【0080】
こうして得られたコンデンサ素子10個を用いて、100℃高温下でコンデンサ素子に100VDCの電圧を印加し、該電圧で10分間経過後にステップ状に50VDC/1分で徐々に印加電圧を上昇させることを繰り返す所謂ステップアップ試験を行なった。この際の静電容量変化を測定しグラフ上にプロットして、該容量が初期値の70%になった電圧をマイクロメーター法フィルム厚み(上述)で割り返した値がコンデンサの耐電圧(V/μm)であり、下記基準により評価した。優、良は問題なく使用できるが、可では条件次第で使用可能である。不良では実用上の問題を生じる。
<耐電圧性>
優:300V/μm以上
良:250V/μm以上、300V/μm未満
可:200V/μm以上、250V/μm未満
不良:200V/μm未満。
【0081】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製、融点:166℃、MFR:2.5g/10分、mmmm:0.991)100質量%を単軸の溶融押出機に供給し、250℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物除去を行った。Tダイから吐出された溶融シートを95℃に表面温度を制御した冷却ドラム上に密着させ、冷却ドラムに1.5秒間接させることで未延伸シートを得た。溶融シートを冷却ドラム上に密着させるためにエアーナイフを用いた。ついで、130℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。また、フィルムの延伸性を向上させる目的でフィルム延伸部の両側からラジエーションヒーターにより熱量を与えることで、縦延伸においてフィルム破れの発生はなく製膜性に優れていた。縦延伸後に30℃の冷却ロールに通して室温まで冷却した。
【0082】
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前にラジエーションヒーターを両面に設置し、ラジエーションヒーターとフィルムの距離を6mm、ラジエーションヒーターの出力は7kWとした。
【0083】
次に端部をクリップで把持して160℃で幅方向に12倍延伸した。さらに、160℃で熱処理を行い、幅方向に10%の弛緩を行った。
【0084】
その後、冷却室にてフィルムの冷却を行った。冷却室を3室に隔て、冷却室1の冷却室温度を120℃で1.1秒以上、冷却室2の冷却室温度を90℃で1.1秒以上、冷却室3の冷却室温度を60℃で1.1秒以上保持した。
【0085】
その後、室温まで除冷した後にフィルムの片面に25W・min/mの処理強度でコロナ放電処理を施し、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去した。なお、表面処理した面をA面、未処理面をB面と呼ぶこととした。端部を除去したフィルムを巻取機で巻き取り、厚み2.5μmの中間フィルムロールを得た。
【0086】
この中間フィルムロールを、スリッターを用いて、スリット速度400m/min、オシレーション速度125mm/min、オシレーション幅80mm、巻出張力6.0kg/m、巻取条件として巻取張力6.5kg/m、張力テーパ65%、面圧45kg/mで、幅620mm、長さ75,000mにスリットした。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0087】
(実施例2)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターとフィルムの距離を8mm、ラジエーションヒーターの出力は9kWとした以外は実施例1と同様にして中間フィルムロールを得た。
【0088】
この中間フィルムロールを、スリッターを用いて、巻取条件として巻取張力3.0kg/m、張力テーパ75%とした以外は実施例1と同様にスリットし、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0089】
(実施例3)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターの出力を10kWとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0090】
(実施例4)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターの出力を6kWとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0091】
(実施例5)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターとフィルムの距離を10mmとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0092】
(実施例6)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターとフィルムの距離を5mmとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0093】
(実施例7)
スリッターの巻取張力を7.5kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0094】
(実施例8)
スリッターの巻取張力を2.0kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0095】
(実施例9)
スリッターの巻取張力を8.0kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0096】
(実施例10)
スリッターの巻取張力を1.0kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0097】
(実施例11)
スリッターの張力テーパを60%とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0098】
(実施例12)
冷却室1、2、3の保持時間を0.6秒とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0099】
(実施例13)
スリッターの巻取張力を7.5kg/m、張力テーパを55%とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0100】
(実施例14)
冷却ドラムの温度を110℃とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0101】
(比較例1)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターを設置しなかった以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0102】
(比較例2)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターとフィルムの距離を4mmとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0103】
(比較例3)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターの出力を11kWとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0104】
(比較例4)
スリッターの巻取張力を0.8kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0105】
(比較例5)
スリッターの巻取張力を9.0kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0106】
(比較例6)
スリッターの張力テーパを50%とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0107】
(比較例7)
スリッターの張力テーパを95%とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0108】
(比較例8)
冷却室1、2、3の保持時間を0.2秒とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のポリプロピレンフィルムロールは、コンデンサ用途において、特に蒸着コンデンサを作製する場合に、蒸着工程でのフィルムロールの巻きズレや縦シワ、搬送中での蛇行、シワ等のトラブルを防止することができ、さらに各コンデンサ製造において加工性に優れたコンデンサ用ポリプロピレンフィルムロールを提供することができる。