【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
【0057】
(1)冷キシレン可溶部(CXS)
ポリプロピレン樹脂試料0.5gを135℃のキシレン100mLに溶解して放冷後、20℃の恒温水槽で1時間再結晶させた後にろ過液に溶解しているポリプロピレン系成分を液体クロマトグラフ法にて定量する(Xg)。試料0.5gの精量値(X
0g)を用いて下記式から算出した。
【0058】
CXS(%)=(X/X
0)×100。
【0059】
(2)メソペンタッド分率(mmmm)
ポリプロピレン樹脂、またはポリプロピレンフィルムを試料として溶媒に溶解し、
13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた(参考文献:新版 高分子分析ハンドブック 社団法人日本分析化学会・高分子分析研究懇談会 編 1995年 P609〜611)。
【0060】
A.測定条件
装置:Bruker社製 DRX−500
測定核:
13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
測定濃度:10wt%
溶媒:ベンゼン/重オルトジクロロベンゼン=質量比1:3混合溶液
測定温度:130℃
スピン回転数:12Hz
NMR試料管:5mm管
パルス幅:45°(4.5μs)
パルス繰り返し時間:10秒
データポイント:64K
換算回数:10,000回
測定モード:complete decoupling
B.解析条件
LB(ラインブロードニングファクター)を1.0としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker社製)を用いて、ピーク分割を行う。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、さらに付属ソフトの自動フィッティングを行った。ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmのピーク分率の合計を求めた。なお、上記測定を5回行い、その平均値を本試料のメソペンタッド分率(mmmm)とした。
【0061】
ピーク
(a)mrrm
(b)(c)rrrm(2つのピークとして分割)
(d)rrrr
(e)mrmr
(f)mrmm+rmrr
(g)mmrr
(h)rmmr
(i)mmmr
(j)mmmm 。
【0062】
(3)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定した。メルトフローレートの単位はg/10分である。
【0063】
(4)溶融張力(MS)
JIS K 7210(1999)に示されるMFR測定用の装置に準じて測定した。株式会社東洋精機社製メルトテンションテスターを用いて、樹脂試料を230℃に加熱し、溶融ポリマーを押出速度15mm/分で吐出しストランドとした。このストランドを6.5m/分の速度で引き取る際の張力を測定し、溶融張力を求めた。溶融張力の単位はcNである。
【0064】
(5)フィルム厚み
JIS C 2330(2001)の7.4.1.1に準じ、マイクロメーター法厚みを測定した。
【0065】
(6)80℃熱収縮率
ポリプロピレンフィルムの長手方向もしくは幅方向について、測定方向200mm、測定方向と直角の方向10mmとなるように試料を5本切り出し、両端から50mmの位置に印を付けて試長(l
0:100mm)とした。次に、荷重3gを付けて80℃に保温されたオーブン内に吊し、15分加熱後に取り出して、室温で冷却後、両印間の寸法(l
1)を測定して下記式にて求め、長手方向、幅方向ともにそれぞれ5本の平均値を本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの熱収縮率とした。
【0066】
熱収縮率={(l
0−l
1)/l
0}×100(%)。
【0067】
(7)表面ぬれ張力
ホルムアルデヒドとエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合液によるJIS K 6768(1999)に規定された測定方法に基づいて測定した。
【0068】
(8)算術平均粗さ(SRa)、最大山高さ(SRp)
JIS B 0601(1982)により、株式会社小坂研究所社製非接触三次元微細形状測定器(ET-30HK)、および三次元粗さ分析装置(MODEL SPA-11)を用いて測定した。測定は任意の10箇所において測定を行い、その平均値として算術平均粗さSRa、最大谷深さSRv、最大山高さSRpを求めた。1回の測定の詳細条件については下記の通りとした。
【0069】
A.測定条件
測定面処理:測定面にアルミニウムを真空蒸着し、非接触法とした。
【0070】
測定方向:フィルムの幅方向
幅方向送り速度:0.1mm/秒
測定範囲(幅方向×長さ方向):1.0mm×0.249mm
高さ方向寸法の基準面:LOWER(下側)
幅方向サンプリング間隔:2μm
長さ方向サンプリング間隔:10μm
長さ方向サンプリング本数:25本
カットオフ:0.25mm/秒
幅方向拡大倍率:200倍
長さ方向拡大倍率:20,000倍
うねり、粗さカット:なし。
【0071】
(9)平均硬度、硬度バラツキ
JIS K 6301の規定による高分子計器株式会社製ゴム硬度計ASKER“TypeC”を用いてポリプロピレンフィルムロールの表面(最表層)を幅方向にロール両端10mmを除いて均等に7点測定し、その平均値を求めた。ロールの内層についてはロール最表層からコアまでの直径方向の距離Lとしたとき、所定の位置までロールを切開し、ロール表面と同じ方法で測定値を求めた。なお、硬度計の抑え圧を一定にするため、硬度計と合わせた重量が3.5kgになるように、荷重を硬度計に取り付けた。また、硬度計のロールと接触する加圧面は、加圧面の辺の長い方をロールの幅方向に平行となるよう測定した。硬度バラツキとは、該平均硬度と各測定点の最も離れた硬度との差(該平均硬度−各測定点の硬度のうち該平均硬度から最も離れた硬度)とする。
【0072】
(10)空気漏れ指数
(株)東洋精機製デジベック平滑度試験機を用いて、25℃、65%RHにて測定した。まず、一方の面と反対面を重ね合わせたフィルム(5cm×5cm、そのうち下側の1枚に直径10mmφの孔をあけ)を試料台にセットする。このとき孔の中心部が試料台の中心にくるようにする。この状態で0.2kg/cm
2の荷重を加えて、真空到達度を383mmHgに設定する。383mmHgに到達後、自動的に真空ポンプが停止し、その後、フィルム間を空気が通過して系内に流入するため、真空度が低下する。このとき、382mmHgから381mmHgに変化する所要時間を測定し、5回測定した平均値を空気漏れ指数とした。
【0073】
(11)空気含有率(%)
フィルムロールの外周長さを寸法精度10μmの巻き尺を用いて測定し、外周よりロール直径を求める。外周は、どちらかのロール端部より5mm内側の点より、50mm毎に全幅にわたり測定し、その平均値を用いる。空気含有率は下記の式で示される値である。
【0074】
α= {1−t
1L
R/((d
12−d
22)π/4)}×100
α :空気含有率(%)
t
1:重量法フィルム厚み(μm)
L
R:ロール長さ(m)
d
1:ロール直径(mm)
d
2:コア直径(mm)。
【0075】
(12)コンデンサ製造の際の素子加工性(素子巻き収率)
後述する各実施例および比較例で得られたフィルムに、抵抗加熱型金属蒸着装置を用い、真空室の圧力を10
−4Torr以下として、ポリプロピレンフィルムの片面に、表面抵抗が2Ω/□となるようにアルミニウムを真空蒸着して巻き取った。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状(蒸着部の幅8.0mm、マージン部の幅1.0mmの繰り返し)に蒸着した。
【0076】
上記により得られた蒸着フィルムを左または右に幅0.50mmのマージン部を有する4.50mm幅のテープ状にスリットした。得られた左マージンおよび右マージンの蒸着ポリプロピレンフィルム各1枚ずつを併せて巻き回し、捲回体を得た。このとき、幅方向に蒸着部分が0.5mmずつはみ出すように2枚のフィルムをずらして巻き回した。素子巻き回しには皆藤製作所製KAW−4NHBを用いた。この捲回体から芯材を抜いて、そのまま150℃、10kg/cm
2の温度、圧力で5分間プレスし巻き回し型コンデンサ素子を得た。
【0077】
上記のコンデンサを10個製造した際、巻き始めから巻き終わりまでを目視で観察し、シワやズレが発生したものを不合格とし、不合格となったものの数の製造数全体に対する割合を百分率で示し下記加工性の指標とした(以下、素子巻き収率と称する)。素子巻き収率は高いほど好ましい。また、シワやズレは、目視以外でもコンデンサ端面のズレ量で0.75mm以上のズレが発生している場合、コンデンサ幅が4.25mm以下の場合も不合格と判定した。なお、ここでいうコンデンサ端面ズレ量とは、コンデンサ製品幅と捲回前のリールフィルム幅の差異(mm)である。
【0078】
<素子巻き収率>
100% 優
90%以上100%未満 良
70%以上90%未満 可
70%未満 不良
(13)蒸着コンデンサ特性の評価
後述する各実施例および比較例で得られたフィルムに、株式会社ULVAC社製真空蒸着機でアルミニウムを膜抵抗が9Ω/□で長手方向に垂直な方向にマージン部を設けた所謂T型マージンパターンを有する蒸着パターンを施し、幅60mmの蒸着リールを得た。
【0079】
次いで、このリールを用いて株式会社皆藤製作所製素子巻機(KAW−4NHB)にてコンデンサ素子を巻き取り、メタリコンを施した後、減圧下、105℃の温度で10時間の熱処理を施し、リード線を取り付け、コンデンサ素子を仕上げた。このときのコンデンサ素子の静電容量は5μFであった。
【0080】
こうして得られたコンデンサ素子10個を用いて、100℃高温下でコンデンサ素子に100VDCの電圧を印加し、該電圧で10分間経過後にステップ状に50VDC/1分で徐々に印加電圧を上昇させることを繰り返す所謂ステップアップ試験を行なった。この際の静電容量変化を測定しグラフ上にプロットして、該容量が初期値の70%になった電圧をマイクロメーター法フィルム厚み(上述)で割り返した値がコンデンサの耐電圧(V/μm)であり、下記基準により評価した。優、良は問題なく使用できるが、可では条件次第で使用可能である。不良では実用上の問題を生じる。
<耐電圧性>
優:300V/μm以上
良:250V/μm以上、300V/μm未満
可:200V/μm以上、250V/μm未満
不良:200V/μm未満。
【0081】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製、融点:166℃、MFR:2.5g/10分、mmmm:0.991)100質量%を単軸の溶融押出機に供給し、250℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物除去を行った。Tダイから吐出された溶融シートを95℃に表面温度を制御した冷却ドラム上に密着させ、冷却ドラムに1.5秒間接させることで未延伸シートを得た。溶融シートを冷却ドラム上に密着させるためにエアーナイフを用いた。ついで、130℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。また、フィルムの延伸性を向上させる目的でフィルム延伸部の両側からラジエーションヒーターにより熱量を与えることで、縦延伸においてフィルム破れの発生はなく製膜性に優れていた。縦延伸後に30℃の冷却ロールに通して室温まで冷却した。
【0082】
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前にラジエーションヒーターを両面に設置し、ラジエーションヒーターとフィルムの距離を6mm、ラジエーションヒーターの出力は7kWとした。
【0083】
次に端部をクリップで把持して160℃で幅方向に12倍延伸した。さらに、160℃で熱処理を行い、幅方向に10%の弛緩を行った。
【0084】
その後、冷却室にてフィルムの冷却を行った。冷却室を3室に隔て、冷却室1の冷却室温度を120℃で1.1秒以上、冷却室2の冷却室温度を90℃で1.1秒以上、冷却室3の冷却室温度を60℃で1.1秒以上保持した。
【0085】
その後、室温まで除冷した後にフィルムの片面に25W・min/m
2の処理強度でコロナ放電処理を施し、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去した。なお、表面処理した面をA面、未処理面をB面と呼ぶこととした。端部を除去したフィルムを巻取機で巻き取り、厚み2.5μmの中間フィルムロールを得た。
【0086】
この中間フィルムロールを、スリッターを用いて、スリット速度400m/min、オシレーション速度125mm/min、オシレーション幅80mm、巻出張力6.0kg/m、巻取条件として巻取張力6.5kg/m、張力テーパ65%、面圧45kg/mで、幅620mm、長さ75,000mにスリットした。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0087】
(実施例2)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターとフィルムの距離を8mm、ラジエーションヒーターの出力は9kWとした以外は実施例1と同様にして中間フィルムロールを得た。
【0088】
この中間フィルムロールを、スリッターを用いて、巻取条件として巻取張力3.0kg/m、張力テーパ75%とした以外は実施例1と同様にスリットし、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0089】
(実施例3)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターの出力を10kWとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0090】
(実施例4)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターの出力を6kWとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0091】
(実施例5)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターとフィルムの距離を10mmとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0092】
(実施例6)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターとフィルムの距離を5mmとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0093】
(実施例7)
スリッターの巻取張力を7.5kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0094】
(実施例8)
スリッターの巻取張力を2.0kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0095】
(実施例9)
スリッターの巻取張力を8.0kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0096】
(実施例10)
スリッターの巻取張力を1.0kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0097】
(実施例11)
スリッターの張力テーパを60%とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0098】
(実施例12)
冷却室1、2、3の保持時間を0.6秒とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0099】
(実施例13)
スリッターの巻取張力を7.5kg/m、張力テーパを55%とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0100】
(実施例14)
冷却ドラムの温度を110℃とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0101】
(比較例1)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターを設置しなかった以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0102】
(比較例2)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターとフィルムの距離を4mmとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0103】
(比較例3)
縦延伸冷却後、テンター式延伸機入り口前のラジエーションヒーターの出力を11kWとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0104】
(比較例4)
スリッターの巻取張力を0.8kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0105】
(比較例5)
スリッターの巻取張力を9.0kg/mとした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0106】
(比較例6)
スリッターの張力テーパを50%とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0107】
(比較例7)
スリッターの張力テーパを95%とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0108】
(比較例8)
冷却室1、2、3の保持時間を0.2秒とした以外は実施例1と同様に作製し、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】