(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蓄電量−電位充電特性である第1特性、及び蓄電量−電位放電特性である第2特性が、充放電の繰り返しにより変化する活物質を含む単極を有する蓄電素子の前記単極の第1特性、第2特性、及び、電位VとdQ/dVとの関係であるV−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定する推定装置であって、
充放電の繰り返しにより変化する特徴値に対応する、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかを、前記特徴値の変化に応じて複数記憶し、又は前記特徴値の関数として記憶する記憶部と、
前記蓄電素子の前記特徴値を取得する取得部と、
該取得部により取得した特徴値に基づき、前記第1特性、前記第2特性、及び、前記V−dQ/dVの少なくともいずれかを参照し、又は前記関数を参照して、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定する第1推定部と
を備える、推定装置。
前記特徴値は、高電圧範囲内の、所定の電圧におけるdQ/dV、第1電圧から第2電圧に至るまでの時間、及び第1電圧と第2電圧との間におけるV−dQ/dVの傾き[Δ(dQ/dV)/ΔV]のいずれかである、請求項1に記載の推定装置。
蓄電量−電位充電特性である第1特性、及び蓄電量−電位放電特性である第2特性が、充放電の繰り返しにより変化する活物質を含む単極を有する蓄電素子の劣化状態を推定する推定装置であって、
高電圧範囲内の、第1電圧から第2電圧に至るまでの時間、又は第1電圧と第2電圧との間におけるV−dQ/dVの傾き[Δ(dQ/dV)/ΔV]である特徴値を取得する取得部と、
前記特徴値に基づいて、前記蓄電素子の劣化状態を推定する推定部と
を備える、推定装置。
蓄電量−電位充電特性である第1特性及び蓄電量−電位放電特性である第2特性が、充放電の繰り返しにより変化する活物質を含む単極を有する蓄電素子の前記単極の第1特性、第2特性、及び、電位VとdQ/dVとの関係であるV−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定する推定方法であって、
充放電の繰り返しにより変化する特徴値に対応する、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかを、前記特徴値の変化に応じて複数記憶し、又は前記特徴値の関数として記憶してあり、
取得した特徴値に基づき、前記第1特性、前記第2特性、及び、前記V−dQ/dVの、少なくともいずれかを参照し、又は前記関数を参照して、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定する、推定方法。
蓄電量−電位充電特性である第1特性、及び蓄電量−電位放電特性である第2特性が、充放電の繰り返しにより変化する活物質を含む単極を有する蓄電素子の前記単極の第1特性、第2特性、及び、電位VとdQ/dVとの関係であるV−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定するコンピュータに、
前記蓄電素子の、充放電の繰り返しにより変化する特徴値を取得し、
前記特徴値に対応する、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかが、前記特徴値の変化に応じて複数記憶されたテーブルを参照し、又は前記特徴値の関数として記憶された、該関数を参照して、取得した前記特徴値に基づき、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定する
処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド車等に用いられる車両用の二次電池や、電力貯蔵装置、太陽光発電システム等に用いられる産業用の二次電池においては、高容量化が求められている。これまで様々な検討と改良が行われてきて、電極構造等の改良のみで更なる高容量化を実現することは困難である。その為、現行の材料より高容量である正極材料の開発が進められている。
【0003】
従来、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池用の正極活物質として、α−NaFeO
2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が検討され、LiCoO
2を用いた非水電解質二次電池が広く実用化されていた。LiCoO
2の放電容量は120〜130mAh/g程度であった。
リチウム遷移金属複合酸化物をLiMeO
2(Meは遷移金属)で表したとき、MeとしてMnを用いることが望まれてきた。MeとしてMnを含有させた場合、Me中のMnのモル比Mn/Meが0.5を超える場合には、充電をするとスピネル型へと構造変化が起こり、結晶構造が維持できない為、充放電サイクル性能が著しく劣る。
Me中のMnのモル比Mn/Meが0.5以下であり、Meに対するLiのモル比Li/Meが略1であるLiMeO
2型活物質が種々提案され、実用化されている。リチウム遷移金属複合酸化物であるLiNi
1/2Mn
1/2O
2及びLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2等を含有する正極活物質は150〜180mAh/gの放電容量を有する。
【0004】
LiMeO
2型活物質に対し、Me中のMnのモル比Mn/Meが0.5を超え、遷移金属(Me)の比率に対するLiの組成比率Li/Meが1より大きいリチウム遷移金属複合酸化物を含む、いわゆるリチウム過剰型活物質も知られている。
【0005】
上述の高容量の正極材料として、リチウム過剰型であるLi
2 MnO
3 系の活物質が検討されている。この材料は、同一のSOC(State Of Charge)に対して、充電時及び放電時の各SOC−OCV(Open Circuit Voltage)間に、電圧及び電気化学的特性の差が生じる、ヒステリシスという性質を有する。
ヒステリシスを有する場合、SOCに対して電圧が一義的に決まらない為、SOC−OCVに基づいてSOCを推定するOCV法によるSOCの推定は困難である。SOC−OCV曲線が一義的に決まらない為、ある時点での放電可能エネルギーを予測することも困難である。
【0006】
リチウム過剰型の材料は、充放電の繰り返しにより正極のSOC−OCP(Open Circuit Potential)曲線が略全域に亘って変化する、電位降下(Voltage Fade、以下VFという)という性質を有する。平均放電電位の値が減少するため、現時点のSOH(State of Health)として放電可能容量だけでなく、放電可能電力量を推定する必要がある。直近の充放電の履歴が同一であっても、劣化により単極のSOC−OCP曲線に基づく電池セル(以下、単に「セル」ともいう。)のSOC−OCV曲線形状が大幅に変わるため、OCV法は採用できない。直近の充放電履歴が同一の条件とは、例えば、完全放電状態を経由した後の充電が挙げられる。完全放電状態を経由した後の充電において、劣化に応じて単極のSOC−OCP曲線が変わる為、セルのSOC−OCV曲線形状が大幅に変わってしまう。
【0007】
二次電池の充放電電流を積算する電流積算法によりSOCを推定する場合、電流積算が長期継続されると、電流センサの計測誤差が蓄積する。また、電池容量は経時的に小さくなる。その為、電流積算法によって推定されるSOCは、その推定誤差が経時的に大きくなる。従来、電流積算を長期継続した場合にOCV法によりSOCを推定して、誤差の蓄積をリセットするOCVリセットが行われている。
【0008】
VF及びヒステリシスを有する電極材料を用いた蓄電素子においても、電流積算を継続すると誤差が蓄積する。しかし、SOCに対して電圧が一義的に決まらない為、OCV法によるSOCの推定を行うこと(OCVリセットを行うこと)は困難である。
【0009】
このような活物質を含む蓄電素子を制御する上で、現時点の、満充電状態から完全放電状態まで、完全放電状態から満充電状態までの、正極のSOC−OCP特性を推定する必要がある。
現行の非水電解質二次電池のSOH及びSOCの推定技術は、VF及びヒステリシスの性質を有する活物質を使用した蓄電素子に適用することは困難である。
【0010】
リチウムイオン二次電池等の蓄電素子は、車載用等において、SOCが40%以上である状態で繰り返して使用されることが多い。充電する場合、満充電付近まで電圧を上げることも多く、充電終了後、電圧が高く、即ちSOCが高い高電圧領域(高SOC領域)で、劣化状態を把握できると、放電可能容量及び放電可能電力量を推定でき、適切なタイミングで劣化を抑制する制御を行うこともできるので、利便性が高い。
高SOC領域においても、簡便、迅速、かつ高精度に劣化状態を推定することが求められている。
【0011】
特許文献1に開示の蓄電池評価装置の判定部は、蓄電池の電圧データを含む計測データに基づいて畜電池の充放電傾向を判定する。補正部は畜電池の充放電傾向及び/又は劣化状態に応じた補正パラメータに基づいて電圧データを補正する。QV曲線生成部は電圧データに基づいて畜電池のQV曲線を生成する。評価部は、QV曲線に基づいて劣化状態を評価する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
[実施形態の概要]
【0019】
実施形態に係る推定装置は、蓄電量−電位充電特性である第1特性、及び蓄電量−電位放電特性である第2特性が、充放電の繰り返しにより変化する活物質を含む単極を有する蓄電素子の前記単極の第1特性、第2特性、及び、電位VとdQ/dVとの関係であるV−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定する推定装置であって、充放電の繰り返しにより変化する特徴値に対応する、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかを、前記特徴値の変化に応じて複数記憶し、又は前記特徴値の関数として記憶する記憶部と、前記蓄電素子の前記特徴値を取得する取得部と、該取得部により取得した特徴値に基づき、前記第1特性、前記第2特性、及び、前記V−dQ/dVの少なくともいずれかを参照し、又は前記関数を参照して、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定する第1推定部とを備える。
ここで、dQ/dVは充電電気量若しくは放電容量Qを電位Vで微分した微分値である。
【0020】
上記構成によれば、特徴値に対応する第1特性、第2特性、又はV−dQ/dVが、蓄電素子の劣化に応じて複数記憶される。現時点の特徴値が取得されたとき、記憶された第1特性、第2特性、又はV−dQ/dVを参照して、現時点の第1特性、第2特性、又はdQ/dV−Vが推定される。又は、これら第1特性、第2特性、若しくはV−dQ/dVに関するデータが、特徴値の関数として記憶されており、現時点の特徴値を代入することで、第1特性、第2特性、又はdQ/dV−Vが算出される。
充放電の繰り返しにより単極の蓄電量−電位特性が変化する、VFの性質を有する活物質を用いた場合に、特徴値を用いて、容易に、高精度に、現在の単極の蓄電量−電位特性、又はV−dQ/dVを求めることができる。
現在の単極の第1特性、第2特性、又はV−dQ/dVは、現時点の劣化状態を示す指標となる。従って、複雑な使用環境下においても、高精度に単極の劣化状態を監視することができる。
【0021】
上述の推定装置において、前記特徴値は、所定の電圧範囲
の両端の電圧に対応する充電電気量
の差分若しくは放電容量
の差分、又は平均放電電位
である。
【0022】
充電電気量又は放電容量と平均放電電位との間に直線関係があり、劣化の前後で、対極との電位差(セル電圧)が変わらない電位範囲に対応するセルの電圧範囲が、前記所定の電圧範囲とされる。所定の電圧範囲における充電電気量又は放電容量を特徴値として用い、劣化の程度に応じた特徴値に対応付けて第1特性、第2特性、又はV−dQ/dVを複数記憶していた場合、精度良く、現時点での第1特性、第2特性、又はV−dQ/dVが推定できる。平均放電電位を用いた場合も、同様に精度良く第1特性、第2特性、又はV−dQ/dVが推定できる。
【0023】
上述の推定装置において、前記記憶部は、前記充電電気量若しくは前記放電容量、又は前記平均放電電位の大小に応じて、複数のV−dQ/dVを記憶し、又は前記関数を記憶しており、前記第1推定部は、前記特徴値と前記V−dQ/dVとの関係を参照して、前記単極のV−dQ/dVを推定してもよい。
【0024】
特徴値の大小に応じて複数のV−dQ/dV、又は前記関数を記憶し、特徴値とV−dQ/dVとの関係を参照することで、単極のV−dQ/dVが精度良く推定できる。
【0025】
上述の推定装置において、前記活物質の劣化の度合に応じて、前記充電電気量又は前記放電容量を補正してもよい。
【0026】
充電電気量又は放電容量は劣化に伴い、変化するので、劣化の度合に応じて補正することで、より精度良く蓄電量−電位特性又はV−dQ/dVが推定できる。
【0027】
上述の推定装置において、前記特徴値は、高電圧範囲内の、所定の電圧におけるdQ/dV、第1電圧から第2電圧に至るまでの時間、及び第1電圧と第2電圧との間におけるV−dQ/dVの傾き(Δ(dQ/dV)/ΔV)のいずれかであってもよい。
【0028】
前記dQ/dV、前記時間、及び前記[Δ(dQ/dV)/ΔV]は、充放電の繰り返しによるV−dQ/dVの変化に対応して、変化する。従って、これらの特徴値に対応付けて第1特性、第2特性、又はV−dQ/dVを複数記憶していた場合、精度良く、現時点での第1特性、第2特性、又はV−dQ/dVが推定できる。
【0029】
実施形態に係る推定装置は、蓄電量−電位充電特性である第1特性、及び蓄電量−電位放電特性である第2特性が、充放電の繰り返しにより変化する活物質を含む単極を有する蓄電素子の劣化状態を推定する推定装置であって、高電圧範囲内の
、第1電圧から第2電圧に至るまでの時間、
又は第1電圧と第2電圧との間におけるV−dQ/dVの傾き[Δ(dQ/dV)/ΔV]
である特徴値を取得する取得部と、前記特徴値に基づいて、前記蓄電素子の劣化状態を推定する推定部とを備える。
【0030】
VFを有する活物質を用いた場合、劣化により生じた化合物に起因して、高電圧範囲においても反応が進行する。従って、劣化に伴い、dQ/dVが大きくなる。
高電圧範囲内で、上述の反応が生じるので、高電圧範囲内の第1電圧から第2電圧に至るまでの時間Δtが長くなる。
[Δ(dQ/dV)/ΔV]も劣化に応じて変化する。
dQ/dV、Δt、又はΔ(dQ/dV)/ΔVを特徴値として取得し、この特徴値を用いて、蓄電素子の劣化の状態を良好に推定できる。
【0031】
上述の推定装置において、前記推定部は、前記特徴値の閾値に基づいて、前記蓄電素子の劣化状態を推定してもよい。
【0032】
閾値により、容易に蓄電素子の劣化状態を推定できる。
【0033】
上述の推定装置において、前記活物質は、第1特性及び第2特性間のヒステリシスを示し、前記第1推定部により推定した前記第1特性及び/又は前記第2特性、並びに前記蓄電素子の充放電の履歴に基づいて、前記蓄電素子の電圧により蓄電量を推定するときの参照のための蓄電量−電圧充電特性である第3特性、及び/又は参照のための蓄電量−電圧放電特性である第4特性を推定する第2推定部を備えてもよい。
【0034】
活物質がヒステリシスを有する場合、現時点の単極の劣化状態に応じた第1特性及び/又は第2特性、並びに蓄電素子の充放電の履歴に基づいて、精度良く第3特性及び/又は第4特性を推定することができる。
【0035】
上述の推定装置において、充放電の履歴、前記第3特性及び/又は前記第4特性、並びに取得した電圧に基づいて、蓄電量を推定する第3推定部を備えてもよい。
【0036】
上記構成においては、VFの性質を有し、蓄電量−電圧特性がヒステリシスを示す活物質を有する蓄電素子の蓄電量を良好に容易に推定できる。
電圧を用いるので、蓄電量としてSOCに限定されず、電力量等、蓄電素子に蓄えられた現在のエネルギーの量が推定できる。充放電特性に基づいて、SOC0%までの放電可能なエネルギー、及びSOC100%までに必要な充電エネルギーを予測することができる。現時点での残存電力量と貯蔵可能電力量とが推定できる。
従って、複数の蓄電素子を用いる場合のバランシング、回生受け入れの制御、蓄電素子を車載した場合の走行距離の推定等を精度良く行うことができる。
【0037】
実施形態に係る蓄電装置は、蓄電素子と、上述の推定装置とを備える。
【0038】
上記構成においては、蓄電素子の蓄電量が、複雑な使用環境下においても、精度良く推定できる。
【0039】
実施形態の推定方法は、蓄電量−電位充電特性である第1特性及び蓄電量−電位放電特性である第2特性が、充放電の繰り返しにより変化する活物質を含む単極を有する蓄電素子の前記単極の第1特性、第2特性、及び、電位VとdQ/dVとの関係であるV−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定する推定方法であって、充放電の繰り返しにより変化する特徴値に対応する、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかを、前記特徴値の変化に応じて複数記憶し、又は前記特徴値の関数として記憶してあり、取得した特徴値に基づき、前記第1特性、前記第2特性、及び、前記V−dQ/dVの、少なくともいずれかを参照し、又は前記関数を参照して、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定する。
【0040】
上記構成によれば、VFの性質を有する活物質を用いた場合に、特徴値を用いて、容易に、高精度に、単極の蓄電量−電位特性、又はV−dQ/dVを求めることができる。
【0041】
実施形態の他の推定方法は、蓄電量−電位充電特性及び蓄電量−電位放電特性が、充放電の繰り返しにより変化する活物質を含む単極を有する蓄電素子の劣化状態を推定する推定方法であって、高電圧範囲内の
、第1電圧から第2電圧に至るまでの時間、
又は第1電圧と第2電圧との間におけるV−dQ/dVの傾き[Δ(dQ/dV)/ΔV]
である特徴値を取得し、前記特徴値に基づいて、前記蓄電素子の劣化状態を推定する。
【0042】
上記構成によれば、dQ/dV、Δt、又はΔ(dQ/dV)/ΔVを特徴値として取得し、この特徴値を用いて、蓄電素子の劣化の状態を良好に推定できる。
【0043】
実施形態に係るコンピュータプログラムは、蓄電量−電位充電特性である第1特性、及び蓄電量−電位放電特性である第2特性が、充放電の繰り返しにより変化する活物質を含む単極を有する蓄電素子の前記単極の第1特性、第2特性、及び、電位VとdQ/dVとの関係であるV−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定するコンピュータに、前記蓄電素子の、充放電の繰り返しにより変化する特徴値を取得し、前記特徴値に対応する、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかが、前記特徴値の変化に応じて複数記憶されたテーブルを参照し、又は前記特徴値の関数として記憶された、該関数を参照して、取得した前記特徴値に基づき、前記単極の第1特性、第2特性、及び、V−dQ/dV、の少なくともいずれかを推定する処理を実行させる。
【0044】
実施形態に係る他のコンピュータプログラムは、蓄電量−電位充電特性及び蓄電量−電位放電特性が、充放電の繰り返しにより変化する活物質を含む単極を有する蓄電素子の劣化状態を推定するコンピュータに、高電圧範囲内の
、第1電圧から第2電圧に至るまでの時間、
又は第1電圧と第2電圧との間におけるV−dQ/dVの傾き[Δ(dQ/dV)/ΔV]
である特徴値を取得し、該特徴値に基づいて、前記蓄電素子の劣化状態を推定する処理を実行させる。
【0045】
以下、具体的に説明する。
実施形態に係る蓄電素子の電極体の単極は、VFの性質を有し、蓄電量−電位特性がヒステリシスを有する活物質を含む。
活物質がVFの性質を有する場合、充放電の繰り返しにより、単極のSOC−OCP曲線(第1特性、第2特性)、及び、セルのSOC−OCV曲線の形状が変化する。この活物質を含むセルは、微小電流を流して、完全放電状態から満充電状態に充電したとき、及び満充電状態から完全放電状態に放電したときのSOC−OCV曲線間の最大の電位差が100mV以上であるヒステリシスを有する。
【0046】
図1は、正極のSOC−OCPの一例を示すグラフである。横軸はSOC(%)、縦軸はOCPとしての電位E(VvsLi/Li
+ :Li/Li
+平衡電位を基準にしたときの電位)である。劣化前の充放電曲線を破線で、劣化後の充放電曲線を実線で示す。
図1に示すように、劣化によりVFが生じ、充放電曲線は下側にシフトする。
【0047】
VFの性質を有さない活物質の場合、前記ヒステリシスは有さず、単極のSOC−OCP曲線は充放電の繰り返しによっては変化しない。単極の劣化(曲線の縮小)又は容量バランスのずれ量の拡大によって、セルのSOC−OCV曲線の形状は充放電の繰り返しにより変化する。
【0048】
実施の形態においては、現時点の蓄電量特性を推定する。蓄電量特性としては、単極の充電SOC−OCP特性、放電SOC−OCP特性、充電V−dQ/dV、及び放電V−dQ/dVの少なくともいずれかが挙げられる。
充放電の繰り返しにより変化する特徴値と、上述の蓄電量特性との間に、相関関係がある。
【0049】
特徴値として充電電気量、放電容量を用いる場合、充電状態、正極有効度に基づいて補正することにしてもよい。
充電電気量及び放電容量の補正のための算出式の一例を示す。
Q(x),dis=n×Q(x)
Q(x),cha=n×(100+ΔQox,max×Rcha)/100×Q(x)
但し、Q(x),dis:放電容量の補正値
Q(x):放電容量の実測値
Q(x),cha:充電電気量の補正値
n:正極の有効度、0≦n≦1、SOC−OCP曲線のx方向の収縮の度合を示す値
Rcha:正極の充電SOC−OCPの割合、
Rcha=(ΔQox,max−ΔQox)/ΔQox,max、0≦Rcha≦1
ΔQox=ΔSOCmax−ΔSOC
ΔQox,max:ΔQoxの最大値
ΔSOC:Q(x)を取得した電位における放電SOC−OCP及び充電SOC−
OCP間のSOCの差
ΔSOCmax:ΔSOCの最大値
【0050】
VFの性質を有する活物質の場合、特徴値の変化(劣化)に対応して、充放電曲線形状が連続的及び一義的に変化すると考えられる。LiMeO
2-Li
2MnO
3系の活物質
に関して、充放電の繰り返しに伴い、結晶構造が変化することが報告されている(Journal of Power Sources, vol.229(2013), pp239-248)。結晶構造の変化に伴い、充放電曲線の形状が変化すると考えられる。短期的で一つの温度水準の充放電サイクルにおいて、結晶構造の変化は連続的に生じることが論文の結果から示唆される。そして、結晶構造が層状からスピネル類縁結晶に変化したという報告から、変化の仕方は一通りであると推察される。即ち、短期的で一つの温度水準において、VFの性質を有する活物質の場合、結晶構造が連続的かつ一義的に変化している。この報告から、長期的かつ、いかなる使用履歴においても、結晶構造の変化に従って充放電曲線形状が連続的かつ一義的に変化すると、本願発明者等は考えた。後述する実験結果から、長期的に、使用履歴が異なっても、充放電曲線形状が連続的かつ一義的に変化することが確認された。
【0051】
VFの性質を有さない活物質の場合、単極の充放電曲線形状は充放電の繰り返しによっては変化しない。上述のように単極の劣化又は容量バランスのずれ量の拡大によって、個別に、即ち非一義的に、セルの充放電曲線形状は充放電の繰り返しにより変化する。
【0052】
実施形態の場合、特徴値の変化に対して、単極の蓄電量特性が連続的かつ一義的に変化するので、特徴値の変化に対する蓄電量特性の変化の推移を一部記憶しておくことで、現時点での蓄電量特性を精度良く推定できる。
即ち、まず、特徴値の変化に対応して、上述の少なくともいずれかの蓄電量特性を複数、テーブルに記憶しておく。又は、蓄電量特性を特徴値の関数として記憶しておく。
【0053】
後述するCPU62は、現時点の特徴値を取得する。
CPU62は、特徴値が充電電気量又は放電容量である場合、所定電圧範囲における特徴値を取得する。但し、現時点における、各蓄電量に対する対極の電位(対極の蓄電量特性及び容量バランスのずれ)が推定できる場合は、電池電圧を単極電位に変換し、特徴値抽出のために、変換した電位範囲を使用してもよい。
電圧範囲に対応する単極の電位範囲として、充電電気量又は放電容量と単極の平均放電電位との間に、直線関係があり、劣化の前後で、対極との電位差(セル電圧)が変わらない範囲を選択するのが好ましい。
【0054】
図2は、前記所定電圧範囲に対応する正極の電位範囲と、各電位範囲における、各劣化状態に対応する充電電気量の範囲との関係を示す概念図である。電位範囲はa、b、cの順に狭くなる。電位範囲が狭くなった場合、充電電気量の範囲が狭くなる。即ち、使用する電位範囲の縮小に伴い、誤差が増大する。一方、電位範囲が広い場合、充電電気量の取得に時間及び労力が要される。従って、推定精度及び測定の容易さのバランスを考慮して、適切な電位範囲を設定するのが好ましい。
【0055】
CPU62は、取得した特徴値に基づき、記憶した蓄電量特性を参照して、現時点の蓄電量特性を推定する。又は、CPU62は、記憶した特徴値の関数に取得した特徴値を代入して、現時点の蓄電量特性を算出する。
【0056】
図3Aは、前記活物質を含む初期品の正極の電位とdQ/dVとの関係を示すグラフ、
図3Bは劣化品の正極の電位とdQ/dVとの関係を示すグラフである。横軸は電位(VvsLi/Li
+:Li/Li
+平衡電位を基準にしたときの電位)、縦軸はdQ/dVである。
【0057】
図4は充電電位に対する、X線吸収分光測定(XAFS測定)によって算出した前記活物質のNiのK吸収端エネルギーの推移を示すグラフである。横軸は充電電位E(VvsLi/Li
+ )であり、縦軸はNiのK吸収端エネルギーE
0 (eV)である。
図2において、初期品を●で、劣化品を■で示している。
【0058】
図3Bにおいて、電位が略4.7Vで、dQ/dVが上に凸に膨らんでおり、反応が生じていることが分かる。
図4において、初期品の場合、該領域でE
0 が一定になっているのに対し、劣化品の場合、EとE
0 とが比例関係を示している。
以上より、初期品の場合、4.5V以上の領域でNiの酸化反応は生じていないが、劣化が進むことにより、該領域でNiの酸化反応が生じることが分かる。
劣化により、5VスピネルのLiNi
0.5Mn
1.5O
4 のような相が形成されたと考えられる。LiNi
0.5Mn
1.5O
4 は略5Vの領域で、安定に存在する。LiNi
0.5Mn
1.5O
4 の場合、4.9V付近において、Ni起因のレドックス反応が生じる。
図4に示すように、初期品の場合、高電位領域で曲線が平坦化し、反応が収束するのに対し、劣化品の場合、高電位領域においても反応が進行している。
【0059】
従って、蓄電素子の充電時又は放電時において、高電圧範囲内の所定電圧V
1 のdQ/dVを取得することにより、蓄電素子の劣化の状態を推定することができる。
高電位範囲内で、上述の反応が生じるので、蓄電素子の高電圧範囲内の第1電圧V
1 から第2電圧V
2 に至るまでの時間Δtが長くなる。Δtを取得することにより、蓄電素子の劣化の状態を推定することができる。
第1電圧V
1 から第2電圧V
2 に至るまでのV−dQ/dVの傾き(Δ(dQ/dV)/ΔV)も劣化に応じて変化するので、[Δ(dQ/dV)/ΔV]を取得することにより、蓄電素子の劣化の状態を推定することができる。
高SOC領域においても、簡便、迅速、かつ高精度に劣化状態を推定することができる。
【0060】
[実施形態1]
以下、実施形態1として、車両に搭載される蓄電装置が例示される。
図5は、蓄電装置の一例を示す。蓄電装置50は、複数の蓄電素子200と、監視装置100と、それらを収容する収容ケース300とを備えている。蓄電装置50は、電気自動車(EV)や、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)の動力源として使用されてもよい。
蓄電素子200は、角形セルに限定されず、円筒形セルやパウチセルであってもよい。監視装置100は、複数の蓄電素子200と対向して配置される回路基板であってもよい。監視装置100は、蓄電素子200の状態を監視する。監視装置100が、推定装置であってもよい。代替的に、監視装置100と有線接続または無線接続されるコンピュータやサーバが、監視装置100が出力する情報に基づいて蓄電量特性又は蓄電量を推定する推定方法を実行してもよい。
【0061】
図6は、蓄電装置の他の例を示す。蓄電装置(以下、電池モジュールという)1は、エンジン車両に好適に搭載される、12ボルト電源や、48ボルト電源であってもよい。
図6は12V電源用の電池モジュール1の斜視図、
図7は電池モジュール1の分解斜視図、
図8は電池モジュール1のブロック図である。
電池モジュール1は直方体状のケース2を有する。ケース2に複数のリチウムイオン二次電池(以下、電池という)3、複数のバスバー4、BMU(Battery Management Unit
)6、電流センサ7が収容される。
【0062】
電池3は、直方体状のケース31と、ケース31の一側面に設けられた、極性が異なる一対の端子32,32とを備える。ケース31には、正極板、セパレータ、及び負極板を積層した電極体33が収容されている。
【0063】
電極体33の正極板が有する正極活物質及び負極板が有する負極活物質の少なくとも一方は、VF及びヒステリシスの性質を有する。
正極活物質としては、LiMeO
2-Li
2MnO
3固溶体、Li
2O−LiMeO
2固溶体、Li
3NbO
4 −LiMeO
2固溶体、Li
4 WO
5 −LiMeO
2固溶体、Li
4 TeO
5 −LiMeO
2固溶体、Li
3SbO
4 −LiFeO
2固溶体、Li
2RuO
3 −LiMeO
2固溶体、Li
2RuO
3 −Li
2 MeO
3 固溶体等のLi過剰型活物質が挙げられる。負極活物質としては、ハードカーボン、Si、Sn、Cd、Zn、Al、Bi、Pb、Ge、Ag等の金属若しくは合金、又はこれらを含むカルコゲン化物等が挙げられる。カルコゲン化物の一例として、SiOが挙げられる。本発明の技術は、これらの正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方が含まれていれば適用可能である。
【0064】
ケース2は合成樹脂製である。ケース2は、ケース本体21と、ケース本体21の開口部を閉塞する蓋部22と、蓋部22の外面に設けられたBMU収容部23と、BMU収容部23を覆うカバー24と、中蓋25と、仕切り板26とを備える。中蓋25や仕切り板26は、設けられなくてもよい。
ケース本体21の各仕切り板26の間に、電池3が挿入されている。
【0065】
中蓋25には、複数の金属製のバスバー4が載置されている。電池3の端子32が設けられている端子面に中蓋25が配置されて、隣り合う電池3の隣り合う端子32がバスバー4により接続され、電池3が直列に接続されている。
【0066】
BMU収容部23は箱状をなし、一長側面の中央部に、外側に角型に突出した突出部23aを有する。蓋部22における突出部23aの両側には、鉛合金等の金属製で、極性が異なる一対の外部端子5,5が設けられている。BMU6は、基板に情報処理部60、電圧計測部8、及び電流計測部9を実装してなる。BMU収容部23にBMU6を収容し、カバー24によりBMU収容部23を覆うことにより、電池3とBMU6とが接続される。
【0067】
図8に示すように、情報処理部60は、CPU62と、メモリ63とを備える。
メモリ63には、メモリ63には、本実施形態に係る蓄電量特性の推定プログラム、蓄電量の推定プログラムを含む各種のプログラム63aと、蓄電量特性が格納されたテーブル63bとが記憶されている。プログラム63aは、例えば、CD−ROMやDVD−ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体70に格納された状態で提供され、BMU6にインストールすることによりメモリ63に格納される。代替的に、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラム63aを取得し、メモリ63に記憶させてもよい。メモリ63、及びCPU62の処理部としての第1推定部、第2推定部、又は第3推定部は、BMU6に搭載されている場合に限定されない。これらを外部装置に搭載し、特徴値を取得したときに、単極の蓄電量−電位特性、電圧参照用蓄電量−電圧特性、又は蓄電量を推定し、BMU6へ結果を渡すことにしてもよい。
【0068】
テーブル63bに記憶する蓄電量特性について、具体例を挙げて説明する。
セルにつき、下記の表1に示す電圧範囲、サイクル数、及び試験温度の条件で各No.のサイクル試験を行った。
【0070】
充放電の条件は、以下の通りである。
・負極:グラファイト
・試験レート:充電0.5CA、放電1.0CA
【0071】
SOC−OCPを求めるための確認試験の条件は、以下の通りである。
・負極:Li金属
・試験レート:充電0.1CA、放電0.1CA
・試験温度:25℃
これにより、各No.の試験につき、蓄電量特性として、正極のSOC−OCP特性、又はV−dQ/dV特性が求められる。この蓄電量特性を所定電圧範囲の充電電気量若しくは放電容量、又は平均放電電位と対応付けて、テーブル63bに格納する。各試験により、劣化した状態の単極の蓄電量特性を取得し、これを特徴値の順に並べて、特徴値と蓄電量特性とを対応付ける。長期的に、使用履歴が異なっても、蓄電量特性が連続的かつ一義的に変化することが確認される。
CPU62はメモリ63から読み出したプログラムに従って、後述する蓄電量特性推定処理及び蓄電量推定処理を実行する。
【0072】
電圧計測部8は、電圧検知線を介して電池3の両端に夫々接続されており、各電池3の電圧を所定時間間隔で測定する。
電流計測部9は、電流センサ7を介して電池3に流れる電流を所定時間間隔で計測する。
電池モジュール1の外部端子5,5は、エンジン始動用のスターターモータ及び電装品等の負荷11に接続されている。
ECU(Electronic Control Unit)10は、BMU6及び負荷11に接続されている。
【0073】
以下、本実施形態に係る蓄電量特性の推定方法について説明する。
図9は、CPU62による蓄電量特性の推定処理の手順を示すフローチャートである。
CPU62は、所定の間隔でS1からの処理を繰り返す。
CPU62は、特徴値を取得する(S1)。
CPU62は、取得した特徴値に対応する蓄電量特性を算出する。CPU62は、例えば2つの参照する特徴値に対応する蓄電量特性から目的の蓄電量特性を内挿計算により算出する(S2)。又は、上述の特徴値の関数に、取得した特徴値を代入して、目的の蓄電量特性を算出する。
CPU62は、算出した蓄電量特性をテーブル63bに記憶する(S3)。
CPU62は、算出した蓄電量特性に基づいて、電池3の劣化状態を推定し(S4)、処理を終了する。蓄電量特性は劣化の指標となる。なお、S4の処理を行わず、S3の処理後、終了してもよい。
【0074】
以下、具体的に説明する。
CPU62は、特徴値として、単極の電位の範囲がP1V〜P2V、セルの電圧範囲がC1V〜C2Vである充電電気量を取得する。この充電電気量がQinP1-P2Vと定義される。
テーブル63bには、表1のNo.1〜15に対し、QinP1-P2Vと対応付けて、V−dQ/dVのデータが記憶されているとする。
CPU62は、取得した特徴値が、No.2及びNo.3夫々のQinP1-P2Vの間にある場合、No.2及びNo.3夫々のV−dQ/dVデータを用い、内挿計算を行って、特徴値に対応するV−dQ/dVデータを取得する。
取得したV−dQ/dVデータはSOC−OCPデータに変換できる。
【0075】
図10〜
図20は、上記のようにして算出したSOC−OCPデータの、実測値に基づくSOC−OCPデータに対する誤差を求めた結果を示すグラフである。横軸は充電時又は放電時の電位E(VvsLi/Li
+ :Li/Li
+平衡電位を基準にしたときの電位)、縦軸は誤差(%)である。図中、eは充電のデータを、fは放電のデータを示す。
図10は、No.1及びNo.3のデータからNo.2のデータを求めた場合の、前記誤差を示すグラフである。
図11は、No.2及びNo.4のデータからNo.3のデータを求めた場合の、前記誤差を示すグラフである。
図12は、No.3及びNo.7のデータからNo.4のデータを求めた場合の、前記誤差を示すグラフである。
図13は、No.4及びNo.5のデータからNo.7のデータを求めた場合の、前記誤差を示すグラフである。
【0076】
図14は、No.5及びNo.6のデータからNo.13のデータを求めた場合の、前記誤差を示すグラフである。
図15は、No.6及びNo.13のデータからNo.5のデータを求めた場合の、前記誤差を示すグラフである。
図16は、No.12及びNo.13のデータからNo.6のデータを求めた場合の、前記誤差を示すグラフである。
図17は、No.6及びNo.14のデータからNo.12のデータを求めた場合の、前記誤差を示すグラフである。
【0077】
図18は、No.11及びNo.14のデータからNo.8のデータを求めた場合の、前記誤差を示すグラフである。
図19は、No.8及びNo.10のデータからNo.11のデータを求めた場合の、前記誤差を示すグラフである。
図20は、No.9及びNo.11のデータからNo.10のデータを求めた場合の、前記誤差を示すグラフである。
【0078】
図10〜
図20より、算出の誤差は小さく、特に電位が3.5V〜4.5Vの範囲内にある場合、誤差がより小さいことが分かる。試験条件が異なるデータを種々の組み合わせで選択しても、算出の誤差は小さい。
従って、特徴値に対応するV−dQ/dVデータと、取得した特徴値とに基づいて、特徴値を取得した時点のV−dQ/dVデータを精度良く算出できることが確認された。VFの性質を有する活物質を含む正極は、連続的かつ一義的にV−dQ/dVの形状が変化するので、試験条件が異なるデータを用いても精度良く現時点における完全充放電時のV−dQ/dVを算出できる。特徴値の変化に対するV−dQ/dVの変化の推移が一部記憶されればよい。テーブル63bに記憶するV−dQ/dVデータの数は少なくて済む。
【0079】
以下、直近に算出したV−dQ/dVデータを用いてSOCを推定する場合について説明する。
図21及び
図22は、CPU62によるSOC推定処理の手順を示すフローチャートである。CPU62は、所定の間隔でS11からの処理を繰り返す。
予め実験により、ヒステリシスを生じる反応の酸化量及び還元量が小さい電圧が求められ、閾値V1とされる。電圧がV1よりも貴になった後に取得した電圧が上側基準電圧(Vup)に設定される。Vupは、取得した電圧が前回取得した電圧より大きい場合に更新される。電圧がV1よりも卑になった後に取得した電圧が下側基準電圧(Vlow)に設定される。Vlowは、取得した電圧が前回取得した電圧より小さい場合に更新される。
【0080】
CPU62は、電池3の端子間の電圧及び電流を取得する(S11)。閾値V1及び上側基準電圧VupはOCVであるので、電池3の電流量が大きい場合、取得した電圧をOCVに補正する必要がある。OCVへの補正値は、複数の電圧及び電流のデータから回帰直線を用いて、電流がゼロである場合の電圧を推定すること等により得られる。電池3を流れる電流量が暗電流程度に小さい(微小電流である)場合、取得した電圧がOCVとみなされる。
【0081】
CPU62は、電流の絶対値が休止閾値以上であるか否かを判定する(S12)。休止閾値は、電池3の状態が充電状態又は放電状態と、休止状態とのいずれであるかを判定する為に設定される。CPU62は電流の絶対値が休止閾値以上でないと判定した場合(S12:NO)、処理をS22へ進める。
【0082】
CPU62は、電流の絶対値が休止閾値以上であると判定した場合(S12:YES)、電流が0より大きいか否かを判定する(S13)。電流が0より大きい場合、電池3の状態は充電状態であると判定される。CPU62は電流が0より大きくないと判定した場合(S13:NO)、処理をS18へ進める。
【0083】
CPU62は電流が0より大きいと判定した場合(S13:YES)、電圧がV1以上であるか否かを判定する(S14)。CPU62は電圧がV1以上でないと判定した場合(S14:NO)、処理をS17へ進める。
【0084】
CPU62は電圧がV1以上であると判定した場合(S14:YES)、取得した電圧が前回メモリ63に記憶されたVupより大きいか否かを判定する(S15)。CPU62は電圧が前回のVupより大きくないと判定した場合(S15:NO)、処理をS17へ進める。
【0085】
CPU62は電圧が前回のVupより大きいと判定した場合(S15:YES)、メモリ63において、電圧をVupに更新する(S16)。
CPU62は、電流積算によりSOCを推定し(S17)、処理を終了する。
【0086】
CPU62は電流が0より小さく、電池3の状態が放電状態であると判定した場合(S13:NO)、電圧がV1未満であるか否かを判定する(S18)。CPU62は電圧がV1未満でないと判定した場合(S18:NO)、処理をS21へ進める。
CPU62は電圧がV1未満であると判定した場合(S18:YES)、取得した電圧が前回メモリ63に記憶された下側基準電圧Vlowより小さいか否かを判定する(S19)。
CPU62は電圧が前回のVlowより小さくないと判定した場合(S19:NO)、処理をS21へ進める。
CPU62は電圧が前回のVupより小さいと判定した場合(S19:YES)、メモリ63において、電圧をVlowに更新する(S20)
CPU62は、電流積算によりSOCを推定し(S21)、処理を終了する。
【0087】
CPU62は電流の絶対値が休止閾値未満であり、電池3の状態が休止状態であると判定した場合(S12:NO)、設定時間が経過したか否かを判定する(S22)。設定時間は、取得した電圧をOCVとみなす為に十分な、実験により求めた時間である。CPU62は、休止状態であると判定してからの電流の取得回数及び取得間隔に基づき、前記時間を超えたか否かを判定する。これにより、休止状態において、より高精度にSOCが推定される。
CPU62は設定時間が経過していないと判定した場合(S22:NO)、電流積算によりSOCを推定し(S23)、処理を終了する。
【0088】
CPU62は設定時間が経過したと判定した場合(S22:YES)、取得した電圧はOCVとみなすことができる。
【0089】
CPU62は、直近の蓄電量特性をテーブル63bから取得する(S24)。なお、最後に特徴値を取得した日から期間が空いた場合、取得後から現時点までの履歴を考慮して、推定した蓄電量特性を補正する、又は蓄電量特性を新たに求めて更新するのが好ましい。
CPU62は、取得した蓄電量特性に基づいて電圧参照のための蓄電量特性を算出する(S25)。CPU62は、例えば蓄電量特性が正極のV−dQ/dVである場合、セルのV−dQ/dVに換算する。CPU62は、セルのV−dQ/dVに基づいてセルの充電SOC−OCV又は放電SOC−OCVを算出する。CPU62は、該充電SOC−OCV又は放電SOC−OCV、及びVupに基づいて電圧参照用の充電SOC−OCV(第3特性)又は電圧参照用の放電SOC−OCV(第4特性)を算出する。CPU62は、例えば、ヒステリシスを生じる反応の酸化量,還元量を考慮して、充電SOC−OCV又は放電SOC−OCVを用いて、電圧参照用の充電SOC−OCV又は放電SOC−OCVを算出する。
【0090】
CPU62は、電圧参照用の充電SOC−OCV又は放電SOC−OCVにおいて、S1で取得した電圧に対応するSOCを読み取ってSOCを推定し(S26)、処理を終了する。
【0091】
なお、CPU62が電圧計測部8から取得する電圧は、電流により多少変動するので、実験により補正係数を求めて電圧を補正することもできる。
【0092】
以上のように、本実施形態においては、現時点の特徴値を取得し、記憶した蓄電量−電圧特性又はV−dQ/dV、又はその関数を参照して、現時点の蓄電量−電位特性又はV−dQ/dVを推定する。
充放電の繰り返しにより単極の蓄電量−電位特性が変化する活物質を有する蓄電素子を用いた場合に、特徴値のみから、簡便な方法により、高精度に、単極の現時点の蓄電量−電位特性又はV−dQ/dVが推定できる。テーブル63bに記憶するV−dQ/dVデータの数は少なくて済む。
【0093】
現在の単極の蓄電量−電位特性、又はV−dQ/dVは、現在の劣化状態を示す指標となる。従って、複雑な使用環境下においても、高精度に単極の劣化状態が監視され得る。
【0094】
所定の電圧範囲における充電電気量、放電容量を特徴値として用い、劣化の程度に応じた特徴値に対応付けて蓄電量−電位特性又はV−dQ/dVを複数記憶していた場合、精度良く、現時点での蓄電量−電位特性又はV−dQ/dVが推定できる。平均放電電位の場合も同様である。
【0095】
活物質がヒステリシスを有する場合に、現在の単極の劣化状態に応じた蓄電量−電位特性、及び蓄電素子の充放電の履歴に基づいて、精度良く電圧参照用の蓄電量−電圧特性が推定できる。VFの性質を有する活物質を含む蓄電素子につき、ヒステリシスの挙動の知見を併用することで、蓄電量が良好に容易に推定できる。
電圧を用いるので、蓄電量としてSOCに限定されず、電力量等、蓄電素子に蓄えられた現在のエネルギーの量が推定できる。充放電特性に基づいて、SOC0%までの放電可能なエネルギー、及びSOC100%までに必要な充電エネルギーを予測することができる。現時点での残存電力量と貯蔵可能電力量とを推定できる。
従って、複数の蓄電素子を用いる場合のバランシング、回生受け入れの制御、蓄電素子を車載した場合の走行距離の推定等を精度良く行うことができる。
【0096】
[実施形態2]
実施形態2に係る電池モジュールの情報処理部60のCPU62は、高電圧範囲内の、所定電圧V
0 におけるdQ/dV、第1電圧V
1 から第2電圧V
2 に至るまでの時間Δt、及び第1電圧V
1 と第2電圧V
2との間のV−dQ/dVの傾き[Δ(dQ/dV)/ΔV]のいずれかを特徴値として取得する。CPU62は該特徴値に基づいて電池3の劣化状態を推定する。
図4に示したように、初期品の場合、高電位領域で曲線が平坦化し、反応が収束するのに対し、劣化品の場合、高電位領域においても反応が進行している。劣化により、電池3の高電圧範囲内のV
0 におけるdQ/dVが変化するので、電池3の充電時又は放電時において、該dQ/dVを取得することにより、電池3の劣化の状態を推定できる。
高電位範囲内で、上述の反応が生じるので、蓄電素子の高電圧範囲内の第1電圧V
1 から第2電圧V
2 に至るまでの時間Δtが長くなる。Δtを取得することにより、蓄電素子の劣化の状態を推定できる。
第1電圧V
1 と第2電圧V
2 との間のV−dQ/dVの傾き[Δ(dQ/dV)/ΔV]も劣化に応じて変化するので、Δ(dQ/dV)/ΔVを取得することにより、蓄電素子の劣化の状態を推定できる。
高電圧範囲としては、4.4Vから5.0Vの範囲が好ましい。電圧V
0 、V
1 、V
2 については、
図4、後述する
図24及び
図25等を参照し、充電時、放電時夫々において、劣化に応じて特徴値の変化量が大きくなる電圧を選択する。
【0097】
メモリ63のテーブル63bには、予め実験により求めた、サイクル数と前記dQ/dVとの関係、サイクル数と前記Δtとの関係、及びサイクル数とΔ(dQ/dV)/ΔVとの関係のいずれかが記憶されている。メモリ63には、これらの関係を関数化して記憶してもよい。上述の関係又は関数は、レート別に記憶してもよい。メモリ63には、特徴値とSOHとの関係も記憶してもよい。
【0098】
図23は、CPU62による劣化状態の推定処理の手順を示すフローチャートである。 CPU62は、充放電の履歴に基づいて、dQ/dV、Δt、及びΔ(dQ/dV)/ΔVのいずれかの特徴値を取得する(S31)。
CPU62は、特徴値に対応して、サイクル数とdQ/dV、Δt、又はΔ(dQ/dV)/ΔVとの関係をテーブル63bから読み出す。CPU62は、読み出した関係を参照し、取得した特徴値に基づいて、現時点の電池3が劣化状態にあるか否かを推定し(S32)、処理を終了する。
CPU62は、電池3のユーザの使用状況、使用条件、及びユーザから入力した劣化の判断基準等を考慮して、劣化状態を推定する。CPU62は、特徴値とSOHとの関係に基づいて劣化状態を推定してもよい。CPU62は、上述の関数に基づいて劣化状態を推定してもよい。
【0099】
(変形例1)
変形例1のメモリ63のテーブル63bには、サイクル数とdQ/dV、Δt、又はΔ(dQ/dV)/ΔVとの関係に基づき、劣化状態を推定するために設定した特徴値の閾値を記憶する。
この場合、CPU62は、S32において、S31で取得した特徴値に対応する閾値をテーブル63bから読み出し、閾値に基づいて、電池3の劣化状態を推定する。
電池3の充電時に、dQ/dV、Δt、又はΔ(dQ/dV)/ΔVを取得した場合、特徴値が閾値以上である場合、CPU62は、電池3が劣化状態であると推定する。
電池3の放電時に、特徴値として、dQ/dV又はΔtを取得した場合、|dQ/dV|又はΔtが閾値以上である場合、CPU62は電池3が劣化状態であると推定する。dQ/dVを負の数として用いる場合、dQ/dVが閾値以下である場合、CPU62は電池3が劣化状態であると推定する。
特徴値としてΔ(dQ/dV)/ΔVを取得した場合、CPU62は特徴値が閾値以下である場合、電池3が劣化状態であると推定する。
【0100】
(変形例2)
変形例2のメモリ63のテーブル63bには、経時的な劣化に対応する複数のV−dQ/dVが、特徴値と関連付けて記憶されている。
CPU62は、実施形態1と同様に、
図9に示す手順により、劣化状態を推定する。
CPU62は、dQ/dV、Δt、及びΔ(dQ/dV)/ΔVのいずれかの特徴値を取得する(S1)。
CPU62は、取得した特徴値に対応する、目的の蓄電量特性(V−dQ/dV)を算出する。CPU62は、例えば2つの参照する特徴値に対応する蓄電量特性から目的の蓄電量特性を内挿計算により算出する(S2)。又は、特徴値の関数に、取得した特徴値を代入して、目的の蓄電量特性を算出する。
CPU62は、算出した蓄電量特性をテーブル63bに記憶する(S3)。
CPU62は、算出した蓄電量特性に基づいて、電池3の劣化状態を推定し(S4)、処理を終了する。得られた蓄電量特性が劣化の指標となる。
得られたV−dQ/dVに基づいてSOC−OCVを求め、該SOC−OCV及び充放電の履歴に基づいて、電圧参照のためのSOC−OCVを求め、OCV法により、特徴値を取得した時点のSOCを算出することもできる。
【0101】
(実施例)
以下、実施形態2の実施例を具体的に説明するが、この実施例に限定されるものではない。
正極活物質として上述のLi過剰型の活物質を、負極活物質としてグラファイトを用いて実施例の電池3を作製した。この電池3を用いて充放電サイクル試験を行い、10回から480回目までの複数のサイクル数に対応して、充電時のV−dQ/dVを求めた。その結果を
図24に示す。横軸は電圧(V)、縦軸はdQ/dVである。
充放電サイクル試験においては、温度25℃の条件下、0.5Cで電圧が4.6Vに到達するまでCC充電を行い、4.6Vで電流が0.1Cに到達するまでCV充電を行い、10分間休止した。その後、1.0Cで電圧が2.0Vに到達するまでCC放電を行い、10分間休止した。これを1サイクルとして、充放電を繰り返した。
図24は、上述の複数のサイクル数に対応して、放電時のV−dQ/dVを求めた結果示すグラフである。横軸は電圧(V)、縦軸はdQ/dVである。
図24において、上側の曲線が下側の曲線よりサイクル数が大きい。
図24に示されるように、(1)の4.55VにおけるdQ/dVは、サイクル数が大きい程、大きくなることが分かる。
(2)の4.50V〜4.55Vの範囲において、サイクル数が大きくなるに従い、V−dQ/dVの曲線は上に凸になり、酸化反応がより多く生じているので、4.50Vから4.55Vに至るまでの時間Δtが長くなる。(2)の範囲における傾きΔ(dQ/dV)/ΔVは、サイクル数が大きくなるに従って大きくなる。
【0102】
図25は、上述の複数のサイクル数に対応して、放電時のV−dQ/dVを求めた結果示すグラフである。横軸は電圧(V)、縦軸はdQ/dVである。
図25において、下側の曲線が上側の曲線よりサイクル数が大きい。
図25に示されるように、(3)の4.45VにおけるdQ/dVの絶対値は、サイクル数が大きい程、大きくなることが分かる。
(4)の4.40V〜4.45Vの範囲において、サイクル数が大きくなるに従い、V−dQ/dVの曲線は下に凸になり、還元反応がより多く生じているので、4.45Vから4.40Vに至るまでの時間Δtが長くなる。(4)の範囲における傾き[Δ(dQ/dV)/ΔV]は、サイクル数が大きくなるに従って小さくなる。
【0103】
図26は、電池3のサイクル数と、充電時の4.55VにおけるdQ/dVとの関係を求めた結果を示すグラフである。横軸はサイクル数、縦軸はdQ/dVである。
図26に示すように、サイクル数が増加するに従い、dQ/dVは大きくなる。
【0104】
図27は、電池3のサイクル数と、充電時の電圧が4.50Vから4.55Vに至るまでの時間Δtとの関係を求めた結果を示すグラフである。横軸はサイクル数、縦軸はΔtである。
図27に示すように、サイクル数が増加するに従い、Δtは大きくなる。
【0105】
図28は、電池3のサイクル数と、充電時の電圧が4.50Vと4.55Vとの間のV−dQ/dVの曲線の傾き[Δ(dQ/dV)/ΔV]を求めた結果を示すグラフである。横軸はサイクル数、縦軸はΔ(dQ/dV)/ΔVである。
図28に示すように、サイクル数が増加するに従い、Δ(dQ/dV)/ΔVは大きくなる。
【0106】
図29は、電池3のサイクル数と、放電時の4.45Vにおける|dQ/dV|を求めた結果を示すグラフである。横軸はサイクル数、縦軸は|dQ/dV|である。
図29に示すように、サイクル数が増加するに従い、|dQ/dV|は大きくなる。
【0107】
図30は、電池3のサイクル数と、放電時の電圧が4.45Vから4.40Vに至るまでの時間Δtとの関係を求めた結果を示すグラフである。横軸はサイクル数、縦軸はΔtである。
図30に示すように、サイクル数が増加するに従い、Δtは大きくなる。
【0108】
図31は、電池3のサイクル数と、放電時の4.45Vと4.40Vとの間のV−dQ/dV曲線の傾き[Δ(dQ/dV)/ΔV]を求めた結果を示すグラフである。横軸はサイクル数、縦軸はΔ(dQ/dV)/ΔVである。
図31に示すように、サイクル数が増加するに従い、Δ(dQ/dV)/ΔVは小さくなる。
【0109】
以上のように、VFを有する活物質を用いた場合、高電圧範囲で、dQ/dV、Δt、及び(Δ(dQ/dV)/ΔV)が劣化に伴い、特徴的に変化する。
サイクル数とdQ/dV、Δt、又はΔ(dQ/dV)/ΔVとの関係をテーブル63bに記憶し、サイクル数の増加に伴う特徴値の変化量とSOHとを関連づけることで、特徴値を取得した時点の劣化状態を良好に推定できる。劣化状態は特徴値の閾値によっても良好に判定できる。
【0110】
車両の使用後、夜の未使用期間に充電する場合に、高電圧範囲の特徴値に基づき、使用開始時に簡便に、かつ迅速に劣化状態を推定でき、利便性が高い。
精度良く劣化状態を推定できる為、適切なタイミングで劣化を抑制する為の制御を行うことができ、電池3の寿命を延ばすことができる。
通常の使用条件の範囲内で劣化状態を推定でき、劣化状態を推定するときに電池3が劣化することがない。
【0111】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0112】
実施形態1及び2においては、正極がVF及びヒステリシスを有する活物質を含む場合につき説明したが、負極がVF及びヒステリシスを有する活物質を含む場合も、同様にして蓄電量−電位特性又はV−dQ/dVを推定することができる。
【0113】
本発明に係る電圧参照による蓄電量の推定は休止時に行う場合に限定されず、充電時又は放電時にリアルタイムに行ってもよい。この場合、取得した電圧及び電流から現時点のOCVが算出される。OCVの算出は、複数の電圧及び電流のデータから回帰直線を用いて、電流がゼロである場合の電圧を推定すること等により得られる。また、電流が暗電流のように小さい場合は、取得した電圧をOCVに読み替えることもできる。
【0114】
本発明に係る推定装置は、車載用のリチウムイオン二次電池に適用される場合に限定されず、鉄道用回生電力貯蔵装置、太陽光発電システム等の他の蓄電装置にも適用できる。また、本発明に係る推定装置は、ノートパソコン、携帯電話機、及びシェーバー等のモバイル機器にも適用できる。微小電流が流れる蓄電装置においては、蓄電素子の正極端子・負極端子間の電圧をOCVとみなすことができる。
【0115】
監視装置100又はBMU6が推定装置である場合を例示した。代替的に、CMU(Cell Monitoring Unit)が推定装置でよい。推定装置は、監視装置100等が組み込まれた電池モジュールの一部であってもよい。推定装置は、蓄電素子や電池モジュールとは別個に構成されて、劣化状態の推定対象の蓄電素子を含む電池モジュールに、劣化状態の推定時に接続されてもよい。推定装置は、蓄電素子や電池モジュールを遠隔監視してもよい。
蓄電素子は、リチウムイオン二次電池に限定されるものではなく、VF及びヒステリシス特性を有する他の二次電池や電気化学セルであってもよい。