特許第6478025号(P6478025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6478025
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】車両用収納装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20190225BHJP
   B60K 37/00 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   B60R7/04 C
   B60K37/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-8838(P2015-8838)
(22)【出願日】2015年1月20日
(65)【公開番号】特開2016-132379(P2016-132379A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】川村 耕司
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 裕一
(72)【発明者】
【氏名】石井 理裕
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−324632(JP,A)
【文献】 特開2001−063471(JP,A)
【文献】 特開2005−081970(JP,A)
【文献】 特開2005−262898(JP,A)
【文献】 実開平06−057743(JP,U)
【文献】 特開2013−220740(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0093205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
B60K 37/00
B60R 11/02
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に上方に開口する凹状に設けられて物品を収納可能な収納ボックスと、
前記収納ボックスに着脱可能に設けられ、当該収納ボックスの開口を覆う第1の状態で上部に物品が載置可能な蓋体と、
前記収納ボックスの上方に設けられ、前記蓋体を前記収納ボックスの前記開口の前縁部から車両後方斜め上方に傾斜させて前記収納ボックスを車両後方側に開放する第2の状態と、前記蓋体を前記収納ボックスの前記開口の後縁部から車両前方斜め上方に傾斜させて物品を車両後方側に向けて載置可能な第3の状態とに支持可能な支持部と、を備え
前記収納ボックスは、当該収納ボックスの前記開口の前縁部に設けられた第1の係止孔と、前記収納ボックスの前記開口の後縁部に設けられた第2の係止孔とを有し、
前記蓋体は、前記第1の状態において、前記第1の係止孔と係止される第1の係止部と、第2の係止孔に係止される第2の係止部とを有し、
前記蓋体は、前記第2の状態において、前記第1の係止部が前記第1の係止孔に係止されるとともに前記第2の係止部側が前記収納ボックスの上方で前記支持部に支持され、前記第3の状態において、前記第1の係止部が前記第2の係止孔に係止されるとともに前記第2の係止部側が前記収納ボックスの上方で前記支持部に支持される
ことを特徴とする車両用収納装置。
【請求項2】
請求項1に記載する車両用収納装置において、
前記支持部は、車両前方側を向くよう傾斜され、前記蓋体が前記第2の状態にある時に 前記蓋体と当接する第1の支持面と、車両後方側を向くよう傾斜され、前記蓋体が前記第3の状態にある時に前記蓋体と当接する第2の支持面を有する
ことを特徴とする車両用収納装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載する車両用収納装置において、
前記収納ボックスは、前記開口の周縁部に前記蓋体を支持する段部を有し、
前記第1の係止孔は、前記収納ボックスの前縁側の段部に車両前後方向に貫通して形成され、
前記第2の係止孔は、前記収納ボックスの後縁側の段部に上下方向に貫通して形成され、
前記第1の係止部は、前記蓋体が前記第1の状態にある時に、車両前方側に位置する端部から車両前方に向かって突設され、前記第2の係止部は、前記第1の係止部と反対側の端部において前記蓋体の裏面側に突設されるよう形成されている
ことを特徴とする車両用収納装置。
【請求項4】
請求項1から請求項の何れか一項に記載する車両用収納装置において、
前記収納ボックスは、車両のフロアに設置されるコンソール部材に設けられ、
前記収納ボックスの上方には、車室の前方に配置されたインストルメントパネルと前記コンソール部材とで区画され、車室後方側に開口する収容部が形成され、
前記支持部は、前記収容部の内側面に設けられている
ことを特徴とする車両用収納装置。
【請求項5】
請求項に記載する車両用収納装置において、
前記収容部内で前記インストルメントパネルに設けられ、前記蓋体が前記第3の状態にあるときに、前記第2の係止部が係止される第3の係止孔を有する
ことを特徴とする車両用収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用収納装置に関し、特に、収納する物品に適合した形状や容積、用途に合わせて構成を変更することができる車両用収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車室内の前部には、車幅方向中央にセンターコンソールが設置され、センターコンソールには、物品を収納するための収納ボックス(コンソールボックス)などを備える収納装置が設けられている。近年ではスマートフォン等の携帯電子端末が普及しており、スマートフォン等の保持に適した構成の保持装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような保持装置では、収納ボックスを封止する蓋体の裏面にスマートフォンが着脱可能となっている。スマートフォンの使用時には、当該裏面にスマートフォンを立てかけた状態で、スマートフォンの音楽再生機能等の諸機能を使用することができる。
【0004】
しかしながら、収納ボックスは、スマートフォンを立てかける目的で用いる場合のみならず、スマートフォンやその他の物品を収納する場合もある。また、物品の大きさによっては、収納ボックスは大きな容積を有することが好ましい場合もあれば、2つに区分されて物品を小分けに収納することが好ましい場合もある。従来技術は、このような目的に応じて収納ボックスを使い分けすることができないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−220740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、収納する物品の大きさや用途に合わせて構成を変更することができる車両用収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、車室内に上方に開口する凹状に設けられて物品を収納可能な収納ボックスと、前記収納ボックスに着脱可能に設けられ、当該収納ボックスの開口を覆う第1の状態で上部に物品が載置可能な蓋体と、前記収納ボックスの上方に設けられ、前記蓋体を前記収納ボックスの前記開口の前縁部から車両後方斜め上方に傾斜させて前記収納ボックスを車両後方側に開放する第2の状態と、前記蓋体を前記収納ボックスの前記開口の後縁部から車両前方斜め上方に傾斜させて物品を車両後方側に向けて載置可能な第3の状態とに支持可能な支持部と、を備え、前記収納ボックスは、当該収納ボックスの前記開口の前縁部に設けられた第1の係止孔と、前記収納ボックスの前記開口の後縁部に設けられた第2の係止孔とを有し、前記蓋体は、前記第1の状態において、前記第1の係止孔と係止される第1の係止部と、第2の係止孔に係止される第2の係止部とを有し、前記蓋体は、前記第2の状態において、前記第1の係止部が前記第1の係止孔に係止されるとともに前記第2の係止部側が前記収納ボックスの上方で前記支持部に支持され、前記第3の状態において、前記第1の係止部が前記第2の係止孔に係止されるとともに前記第2の係止部側が前記収納ボックスの上方で前記支持部に支持されることを特徴とする車両用収納装置にある。
【0008】
かかる第1の態様では、蓋体を、収納ボックスを塞いで上部に物品が載置可能な第1の状態と、収納ボックスの開口を車両後方側に開放する第2の状態と、物品を車両後方側に向けて載置可能な第3の状態の3つの状態に適宜変更することができるので、蓋体を利用して、収納ボックスに収納する物品の大きさや形状、また用途等に合わせて簡単に車両用収納装置の構成を変更することができ、利便性を向上させることができる。
また、蓋体を第1の状態に固定するための係止孔と係止部を利用して、蓋体を第2の状態、第3の状態に支持させることができるので、簡単な構成で、蓋体の設置状態を変更することができる。
【0011】
本発明の第の態様は、第1の態様に記載する車両用収納装置において、前記支持部は、車両前方側を向くよう傾斜され、前記蓋体が前記第2の状態にある時に前記蓋体と当接する第1の支持面と、車両後方側を向くよう傾斜され、前記蓋体が前記第3の状態にある時に前記蓋体と当接する第2の支持面を有することを特徴とする車両用収納装置にある。
【0012】
かかる第の態様では、第2の状態および第3の状態において、蓋体を安定した状態で支えることができる。
【0013】
本発明の第の態様は、第1又は第2の態様に記載する車両用収納装置において、前記収納ボックスは、前記開口の周縁部に前記蓋体を支持する段部を有し、前記第1の係止孔は、前記収納ボックスの前縁側の段部に前記第1の係止部が車両前後方向に貫通して形成され、前記第2の係止孔は、前記収納ボックスの後縁側の段部に前記第2の係止部が上下方向に貫通して形成され、前記第1の係止部は、前記蓋体が前記第1の状態にある時に、車両前方側に位置する端部から車両前方に向かって突設され、前記第2の係止部は、前記第1の係止部と反対側の端部において前記蓋体の裏面側に突設されるよう形成されていることを特徴とする車両用収納装置にある。
【0014】
かかる第の態様では、第1の状態において、蓋体を安定して支持するとともに、蓋体が収納ボックスから容易に外れないよう確実に固定することが可能となる。
【0015】
本発明の第の態様は、第1から第の何れか一つの態様に記載する車両用収納装置において、前記収納ボックスは、車両のフロアに設置されるコンソール部材に設けられ、前記収納ボックスの上方には、車室の前方に配置されたインストルメントパネルと前記コンソール部材とで区画され、車室後方側に開口する収容部が形成され、前記支持部は、前記収容部の内側面に設けられていることを特徴とする車両用収納装置にある。
【0016】
かかる第の態様では、収納ボックスの上方にインストルメントパネルで区画された収容部を別途形成することで、収納ボックスの周囲がインストルメントパネルで覆われた状態とされるので、蓋体上に載置された物品や収納ボックス内に収容された物品の脱落を抑制することができ、より利便性を向上することができる。また、収容部の内側面に支持部を設けることができるので、支持部を形成するための部材等を別途に設ける必要がない。
【0017】
本発明の第の態様は、第の態様に記載する車両用収納装置において、前記収容部内で前記インストルメントパネルに設けられ、前記蓋体が前記第3の状態にあるときに、前記第2の係止部が係止される第3の係止孔を有することを特徴とする車両用収納装置にある。
【0018】
かかる第の態様では、第3の状態において、蓋体をより確実に支持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、収納する物品の大きさや用途に合わせて構成を変更することができる車両用収納装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1に係る車両用収納装置の第1の状態を示す概略斜視図である。
図2】実施形態1に係る車両用収納装置の概略構成を示す断面図及びその要部を拡大した断面図である。
図3】リッドの斜視図である。
図4】車両用収納装置の第2の状態を示す概略斜視図である。
図5】車両用収納装置の第2の状態を示す概略断面図である。
図6】車両用収納装置の第3の状態を示す概略斜視図である。
図7】車両用収納装置の第3の状態を示す概略断面図である。
図8】実施形態2に係る支持部の変形例の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0022】
〈実施形態1〉
図1は本実施形態に係る車両用収納装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は本実施形態に係る車両用収納装置の概略構成を示す断面図及びその要部を拡大した断面図である。図面中の前方又は後方は車両の前後方向における前方又は後方であり、上方又は後方は車両の高さ方向における上方又は下方であり、左方又は右方は車両の幅方向における左方又は右方であることを意味する。以降の図面についても同様である。
【0023】
図1(a)及び図2(a)から(c)は、車両用収納装置1の収納ボックス63をリッド10で蓋をした第1の状態であり、図1(b)は、収納ボックス63からリッド10を取り外した状態である。
本実施形態の車両用収納装置1は、収納ボックス63を有するコンソールボックス2と、収納ボックス63の開口を覆うリッド10(蓋体)と、コンソールボックス2の上方に形成される収容部4と、リッド10を支持可能な支持部30とを備えている。
【0024】
コンソールボックス2は、車室内に上方に開口する凹状に設けられて物品を収納可能な形状を有するものである。本実施形態では、車室のフロア上で車幅方向の中央にセンターコンソール3(コンソール部材)が設置されており、センターコンソール3の前部側の上面にコンソールボックス2が設けられている。また、コンソールボックス2の上方には、車室の前方に配置されたインストルメントパネル5とセンターコンソール3とで区画され、車室後方側に開口する収容部4が形成されている。
【0025】
コンソールボックス2は、矩形状に開口した開口部61と、開口部61から内側に向けて掘り下げられた曲面状の第1段部62と、第1段部62の内側で開口部61よりも狭く開口した凹状の収納ボックス63を有している。そして、この収納ボックス63の開口66に同開口66を開閉可能に塞ぐリッド10が設けられている。収納ボックス63の前方側の側面を前方側面6、後方側の側面を後方側面7と称する。収納ボックス63の左方の側面を左方側面8、右方の側面を右方側面9と称する。
【0026】
前方側面6、後方側面7、左方側面8及び右方側面9には、第1段部62よりも下方側に低い第2段部64が形成されている。第2段部64は、リッド10の周縁部が載置される部位となっている。なお、この第2段部64は、請求項の蓋体を支持する段部の一例である。
【0027】
また、コンソールボックス2には、ケーブル挿通部60が形成されている。ケーブル挿通部60は、収納ボックス63内に連通し、図示しないケーブル等が挿通する部分である。ケーブル挿通部60は、収納ボックス63内に収納したケーブルを外部に引き出すために用いられる。
【0028】
例えば、スマートフォンなどの携帯端末に接続する充電用のケーブルなどを収納ボックス63内に収納しておき、そのケーブルのコネクタ部分を含む両端を、左右のケーブル挿通部60からそれぞれ外部に引き出す。そして、一方のコネクタ部分を後述する第1の状態又は第3の状態におけるリッド10の表面10aに載置した携帯端末に接続し、他方のコネクタ部分を車両に設けられた電源端子に接続する。そして、ケーブルの余剰部分を収納ボックス63内に纏めて保持しつつ、ケーブルの一部を必要な分だけケーブル挿通部から引き出して携帯端末に接続することができ、見た目もよく、ケーブルが引っかかるなど邪魔になることもない。
【0029】
本実施形態に係るケーブル挿通部60は、車幅方向における左右両方の第1段部62及び第2段部64(コンソールボックス2の周縁部)の一部を切り欠いた切欠き部65で構成されている。リッド10が収納ボックス63の蓋をすると、リッド10よりも外側に切欠き部65が位置し、リッド10と切欠き部65とでケーブルが挿通するケーブル挿通部60となる。
【0030】
なお、ケーブル挿通部60は、リッド10を開閉操作する際に、指を差し込むための操作部として兼用することができるよう構成されている。例えば、リッド10が収納ボックス63を閉じた状態で、指をケーブル挿通部60に入れて、リッド10の車幅方向の両側を指で掴むことで、容易に取り出すことができる。
【0031】
コンソールボックス2には、収納ボックス63の開口66の前縁部に設けられた第1の係止孔の一例である前方係止孔6aと、収納ボックス63の開口66の後縁部に設けられた第2の係止孔の一例である後方係止孔7aが設けられている。収納ボックス63の開口66の前縁部とは、収納ボックス63の開口66のうち前方側の縁部をいい、後縁部とは収納ボックス63の開口66のうち後方側の縁部をいう。
【0032】
本実施形態では、収納ボックス63の開口66の前縁部の一部として、前方側面6のうち第1段部62と第2段部64との間の一部に、車両の前後方向に貫通した前方係止孔6aが設けられている。また、収納ボックス63の開口66の後縁部の一部として、後方側面7のうち第2段部64の一部に、車両の高さ方向に貫通した後方係止孔7aが設けられている。前方係止孔6a及び後方係止孔7aは、車幅方向に離間して2つ設けられている。
【0033】
前方係止孔6aは、後述するリッド10の係止片11が挿入可能な形状とされている。また、後方係止孔7aは、係止片11及び後述する係止部40が挿入可能な形状とされている。
【0034】
なお、本実施形態では、コンソールボックス2(収納ボックス63)は、矩形状の開口を有する凹状であるが、このような形状に限定されない。また、前方係止孔6a及び後方係止孔7aは、それぞれ2個形成されているが、数に限定はない。
【0035】
収容部4を構成する側面のうち、車幅方向で互いに対向する内側面のそれぞれには、コンソールボックス2の上方に、一対の支持部30が設けられている。
支持部30は、コンソールボックス2の上方に設けられ、リッド10を第2の状態と第3の状態とに支持可能な部位である。第2の状態及び第3の状態については後述する。本実施形態では、支持部30は、収容部4の内側に向けて突出しており、ほぼ直方体状に形成されている。また、支持部30は、車両の前後方向において前方側が後方側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。
【0036】
また、支持部30は、支持部30の側面であって上方に向いた面のうち車両前方側を向くように傾斜した傾斜面を第1の支持面31とし、車両後方側を向くように傾斜した傾斜面を第2の支持面32とする。詳細は後述するが、これらの第1の支持面31及び第2の支持面32にリッド10が支持される。
【0037】
図3(a)はリッドの表面側から見た斜視図であり、図3(b)はリッドの裏面側から見た斜視図である。
リッド10は、コンソールボックス2に着脱可能に設けられ、コンソールボックス2の収納ボックス63の開口66を覆う蓋体である。リッド10は、収納ボックス63の開口を塞いだ第1の状態で、上部に携帯端末などの物品が載置可能とされている。なお、リッド10は、収納ボックス63を塞いだ状態で、周囲がコンソールボックス2の第1段部62で囲まれるので、リッド10上に載置された携帯端末などの物品がコンソールボックス2から脱落しにくくなっている。本実施形態のリッド10は、収納ボックス63の開口66の形状に合わせて矩形状の平面部13を有するが、リッド10の形状に特に限定はない。また、リッド10は、収納ボックス63の開口66全体を封止する形状であってもよいし、収納ボックス63の開口66との隙間があってもよい。
【0038】
以後、リッド10がコンソールボックス2、すなわち収納ボックス63に取り付けられて開口66を覆った第1の状態において、リッド10の収納ボックス63側の面を裏面10b、その反対面を表面10aとも称する。つまり、リッド10は、第1の状態で表面10a上に物品が載置可能とされている。
【0039】
リッド10には、第1の状態において前方係止孔6aに係止される第1の係止部の一例である係止片11と、第1の状態において後方係止孔7aに係止される第2の係止部の一例である係止部40が設けられている。
【0040】
係止片11は、コンソールボックス2(収納ボックス63)に設けられた前方係止孔6aに挿入されて係止される部位である。また、係止片11は、リッド10が第1の状態にあるときに、車両前方側に位置するリッド10の端部から車両前方に向かって突設されている。本実施形態では、係止片11は、リッド10の裏面10bとほぼ面一であり、平面部13から裏面10bに沿って前方に突出したほぼ台形状を有している。また、前方係止孔6aに対応して車幅方向に離間して2つ設けられている。もちろん、係止片11は、このような態様に限定されず、前方係止孔6aに挿入されるような形状、大きさ、配置であればよい。
【0041】
係止部40は、コンソールボックス2(収納ボックス63)に設けられた後方係止孔7aに係止される部位である。係止部40は、リッド10が第1の状態にあるときに、係止片11とは反対側の車両後方側の端部においてリッド10の裏面10b側から下方に向けて突設されている。本実施形態では、係止部40は、後方係止孔7aに対応して車幅方向に離間して2つ設けられている。
【0042】
係止部40は、リッド10の裏面10bに立設した固定部41と、固定部41に弾性支持された可動部42とを備えている。固定部41は、二つの脚部43を有し、脚部43の間に隙間が設けられている。脚部43の隙間に、可動部42の上端部42aが弾性支持されている。すなわち、可動部42は、上端部42aを中心として下端部42b側が前後方向に可動するようになっている。
【0043】
このような可動部42は、係止爪44を備えている。本実施形態の係止爪44は、裏面10bから離れる方向に向けて前後方向の幅が次第に狭くなるように傾斜面44bを有する楔状に形成され、裏面10bとほぼ平行な底面44aを有している。
【0044】
図1から2を用いて、上述したリッド10が収納ボックス63の開口66を覆う第1の状態について説明する。
リッド10は、裏面10bが収納ボックス63側に対向した状態で、第2段部64に載置されている。リッド10の係止片11は、前方係止孔6aに挿入されており、係止部40の係止爪44は、後方係止孔7aに挿入されて係止されている。
【0045】
リッド10が収納ボックス63の開口を覆う第1の状態では、収納ボックス63とリッド10とで区画された第1収納スペース51と、収容部4とリッド10とで区画されたコンソールボックス2上の第2収納スペース52とが形成される。すなわち、二つの収納スペースが形成される。
【0046】
リッド10により二つの収納スペースが形成されることで、物品の個数、大きさ、用途などに応じて二つの第1収納スペース51及び第2収納スペース52を使い分けることができる。
第2収納スペース52は、リッド10を取り外すなどの操作を伴わずに、収容部4からすぐに物品を取り出すことができる。したがって、例えば、すぐには取り出さない物品については第1収納スペース51に収納し、比較的頻繁によく使う物品については第2収納スペース52に収納するなどの使い分けをすることができる。
【0047】
このような第1の状態にするためのリッド10の設置方法は次のように行う。まず、特に図示しないが、リッド10が支持部30よりも下方側を通過するように、リッド10を収容部4に挿入する。そして、リッド10の前方側が下方となるように傾斜させ、図2(b)に示すように、リッド10の係止片11を前方係止孔6aにそれぞれ挿入する。
【0048】
次に、リッド10の後方側をコンソールボックス2(収納ボックス63)側に向けて移動させ、係止部40を後方係止孔7aに挿入する。このとき、係止爪44は、その傾斜面44bが後方係止孔7aに押圧されるので、係止爪44が引っかかることなく、係止部40全体が後方係止孔7aに挿通する。
【0049】
図2(c)に示すように、係止爪44の全体が後方係止孔7aを通過すると、係止爪44に掛かる荷重が解除され、係止爪44の底面44aが後方係止孔7aの周縁部に係止される。係止爪44が後方係止孔7aに係止されることで、リッド10が上方に移動することが規制され、リッド10がコンソールボックス2に固定される。すなわち、収納ボックス63がリッド10により蓋をされた第1の状態となる。
【0050】
なお、係止爪44と後方係止孔7aとの係止を解除する際には、特に図示しないが、後方係止孔7aに係止された係止爪44を、後方係止孔7aを挿通するように荷重をかけて係止爪44の係止を解く手段を設ければよい。
【0051】
図4から図5を用いて、リッド10が支持部30に支持された第2の状態について説明する。図4は車両用収納装置の第2の状態を示す概略斜視図であり、図5は車両用収納装置の第2の状態を示す概略断面図である。
第2の状態とは、リッド10を収納ボックス63の開口66の前縁部から車両後方斜め上方に傾斜させて収納ボックス63を車両後方側に開放した状態をいう。支持部30がリッド10を第2の状態に支持可能とは、リッド10が支持部30に支持されることで第2の状態が維持されるように支持部30が形成されていることをいう。本実施形態では、リッド10の係止片11を前方係止孔6aに係止し、係止部40側を車両後方斜め上方に傾斜させ、収納ボックス63が収容部4に連通して車両後方側に開放した状態とされる。
【0052】
そして、第2の状態に傾斜したリッド10は、その裏面10bが支持部30によって支持されている。本実施形態では、支持部30の第1の支持面31にリッド10の裏面10bが支持されている。換言すれば、リッド10は、第2の状態において、係止片11が前方係止孔6aに係止されるとともに、係止部40側がコンソールボックス2の上方で支持部30に支持されている。
【0053】
なお、支持部30が支持するリッド10の場所については特に限定はないが、リッド10の係止部40近傍を支持することが好ましい。リッド10がより安定して支持されるからである。
【0054】
リッド10が支持部30に支持された第2の状態では、収納ボックス63と、収容部4のうちリッド10よりも下方側の領域とからなる第3収納スペース53が形成される。
第3収納スペース53は、第1収納スペース51よりも大きな容積を有する。したがって、リッド10により第3収納スペース53が形成されることで、上述した第1収納スペース51には入りきらないような比較的大きな物品を第3収納スペース53に収納することができる。
【0055】
なお、リッド10を外して、収納ボックス63と収容部4とからなる領域を収納スペースとし、より大きな物品を配置することも考えられる。しかし、この場合では、取り外したリッド10の保管場所が別途に必要となってしまう上、リッド10を紛失してしまう虞もある。
しかしながら、第2の状態においては、リッド10は収容部4内に配置されているので、リッド10の保管場所を要することなく、また紛失するおそれもなく、比較的大きなスペースを確保することができる。
【0056】
このような第2の状態にするためのリッド10の設置方法は次のように行う。まず、特に図示しないが、リッド10が支持部30よりも上方側を通過するように、リッド10を収容部4に挿入する。そして、リッド10の前方側が下方となるように傾斜させ、リッド10の係止片11を前方係止孔6aにそれぞれ挿入する。
次に、リッド10の後方側をコンソールボックス2(収納ボックス63)側に向けて移動させ、リッド10の裏面10bを支持部30の第1の支持面31に支持させる。このようにして、リッド10を第2の状態とすることができる。
【0057】
図6から図7を用いて、リッド10が支持部30に支持された第3の状態について説明する。図6は車両用収納装置の第3の状態を示す概略斜視図であり、図7は車両用収納装置の第3の状態を示す概略断面図である。
第3の状態とは、リッド10を収納ボックス63の開口66の後縁部から車両前方斜め上方に傾斜させて物品を車両後方側に向けて載置可能となるように配置した状態をいう。支持部30がリッド10を第3の状態に支持可能とは、リッド10が支持部30に支持されることで第3の状態が維持されるように支持部30が形成されていることをいう。本実施形態では、リッド10の係止片11を後方係止孔7aに係止し、係止部40側を車両前方斜め上方に向かって傾斜させ、表面10aに物品が車両後方側に向いて載置可能な状態とされる。つまり、リッド10は、傾斜した表面10aに物品が立てかけられるようにして載置可能となっている。
【0058】
そして、第3の状態に傾斜したリッド10は、その裏面10bが支持部30によって支持されている。本実施形態では、支持部30の第2の支持面32にリッド10の裏面10bが支持されている。換言すれば、リッド10は、第3の状態において、係止片11が後方係止孔7aに係止されるとともに、係止部40側が収納ボックス63の上方で支持部30に支持されている。
【0059】
なお、支持部30が支持するリッド10の場所については特に限定はないが、リッド10の係止部40近傍を支持することが好ましい。リッド10がより安定して支持されるからである。
リッド10が支持部30に支持された第3の状態では、リッド10の表面10a側を物品の収納スペース、つまり、物品を立てかけて保持するスペースとして利用することができる。
【0060】
第3の状態においては、リッド10に物品、特にスマートフォンなどの情報携帯端末を立てかけ、車両後方側(すなわち、搭乗者側)に向けた状態で、スマートフォンの諸機能を使用することができる。このように、車両用収納装置1がスマートフォン等のスタンドとしても機能させることができる。
【0061】
第3の状態にするためのリッド10の設置方法は次のように行う。まず、特に図示しないが、リッド10の裏面10bを前方に向け、係止片11を後方係止孔7aに挿入する。
次に、リッド10の係止部40側を前方に傾け、リッド10の裏面10bを支持部30の第2の支持面32に支持させる。このようにして、リッド10を第3の状態とすることができる。
【0062】
以上に説明したように、本実施形態に係る車両用収納装置1は、リッド10を、収納ボックス63を塞いで表面10aに物品が載置可能な第1の状態と、収納ボックス63の開口66を車両後方側に開放する第2の状態と、物品を車両後方側に向けて載置可能な第3の状態の3つの状態に適宜変更することができるので、リッド10を利用して、収納ボックス63に収納する物品の大きさや形状、また用途等に合わせて簡単に車両用収納装置1の構成を変更することができ、利便性を向上させることができる。
【0063】
また、リッド10を第1の状態に固定するための前方係止孔6a及び後方係止孔7aと、係止片11及び係止部40とを利用して、リッド10を第2の状態、第3の状態に支持させることができるので、簡単な構成で、リッド10の設置状態を変更することができる。
【0064】
さらに、第1の状態において、前後方向に貫通した前方係止孔6aに係止片11を挿入し、上下方向に貫通した後方係止孔7aに係止部40が係止されているので、リッド10が収納ボックス63から容易に外れないよう確実に固定することが可能となる。
【0065】
支持部30は、第1の支持面31が第2の状態のリッド10を支持し、第2の支持面32が第3の状態のリッド10を支持するように形成されている。このような構成のリッド10とすることで、第2の状態および第3の状態において、リッド10を安定した状態で支えることができる。
【0066】
コンソールボックス2の上方にインストルメントパネル5で区画された収容部4を別途形成することで、コンソールボックス2の周囲がインストルメントパネル5で覆われた状態とされるので、リッド10上に載置された物品やコンソールボックス2(収納ボックス63)内に収容された物品の脱落を抑制することができ、より利便性を向上することができる。また、収容部4の内側面に支持部30を設けることができるので、支持部30を形成するための部材等を別途に設ける必要がない。
【0067】
〈実施形態2〉
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0068】
実施形態1に係る支持部30は、第3の状態のリッド10を支持していたが、さらに第3の状態のリッド10をより安定的に固定することができる第3の係止孔を設けてもよい。図8は、車両用収納装置の変形例の概略構成を示す断面図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
インストルメントパネル5の後方側に面した表面のうち収容部4内の表面5a、すなわち収容部4の内面となる表面5aには、第3の係止孔33が設けられている。第3の係止孔33は、係止部40が挿通する形状の貫通孔であり、リッド10が第3の状態にあるときに、係止部40の係止爪44が第3の係止孔33の周縁部で係止される。
【0070】
インストルメントパネル5の表面5a、すなわち、車両の後方側に向いた面に設けられた第3の係止孔33にリッド10の係止部40を差し込むことで、リッド10を第3の状態とすることができる。このようにインストルメントパネル5の正面からリッド10を前方に向けて押し込むことで、容易にリッド10を第3の状態とすることができるので、作業性がよい。
【0071】
また、本実施形態では、実施形態1と同様の支持部30がリッド10を支持している。したがって、第3の状態において、リッド10を支持部30で支持するとともに、第3の係止孔33にリッド10の係止部40を係止させることで、リッド10をより確実に支持することができ、リッド10を安定した第3の状態に維持することができる。
【0072】
〈他の実施形態〉
実施形態2においては、支持部30によりリッド10を支持し、第3の係止孔33でリッド10の係止部40を係止していたがこのような態様に限定されない。実施形態2の第3の係止孔33のみでリッド10を第3の状態で維持するようにしてもよい。この場合、第3の係止孔33が請求項の支持部に相当する。
【0073】
また、実施形態1及び実施形態2の支持部30はインストルメントパネル5に設けられていたが、このような態様に限定されず、支持部30は第2の状態及び第3の状態の何れかの状態でリッド10を支持できる配置であればよい。
【0074】
さらに、支持部30は、第2の状態及び第3の状態のリッド10に共通して支持可能となるように一体的に形成されているが、このような態様に限定されない。支持部30は、第2の状態又は第3の状態のそれぞれに対応して個別に配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、自動車の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 車両用収納装置
2 コンソールボックス
3 センターコンソール(コンソール部材)
4 収容部
5 インストルメントパネル
5a 表面
6a 前方係止孔(第1の係止孔)
7a 後方係止孔(第2の係止孔)
10 リッド(蓋体)
11 係止片(第1の係止部)
30 支持部
33 第3の係止孔
40 係止部(第2の係止部)
63 収納ボックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8