特許第6478087号(P6478087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6478087
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】送受信システムおよび受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/34 20060101AFI20190225BHJP
   H04L 27/36 20060101ALI20190225BHJP
   G01N 29/02 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   H04L27/34
   H04L27/36
   G01N29/02
【請求項の数】7
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2014-121617(P2014-121617)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-1834(P2016-1834A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】對馬 肩吾
(72)【発明者】
【氏名】笠井 俊
(72)【発明者】
【氏名】吹野 幸治
【審査官】 北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/027092(WO,A1)
【文献】 特開2010−181178(JP,A)
【文献】 特開2015−087271(JP,A)
【文献】 特開平06−204992(JP,A)
【文献】 特開2007−013380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00−27/38
G01N 29/02
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相が互いにπ/2異なる2つの搬送波を交互に切り替えた時分割信号を送信する送信手段と、
受信された前記時分割信号を前記2つの搬送波と同一の周波数のローカル信号により周波数変換してベースバンド信号を生成する周波数変換手段と、
前記送信手段が前記2つの搬送波を交互に切り替えるタイミングに同期して、前記ベースバンド信号を2つの出力信号に振り分ける分離手段と、
を備えたことを特徴とする送受信システム。
【請求項2】
位相が(2π/p)ずつ異なる複数p(≧3)の搬送波をリサイクリックに切り替えた時分割信号を送信する送信手段と、
受信した前記時分割信号を前記複数pの搬送波と同一の周波数のローカル信号により周波数変換してベースバンド信号を生成する周波数変換手段と、
前記送信手段が前記複数pの搬送波をサイクリックに切り替えるタイミングに同期して、前記時分割信号に含まれる前記搬送波の前記位相と逆の位相シフトを前記ベースバンド信号に対して順次加え、前記逆の位相シフトが加えられた前記ベースバンド信号を位相がπ/2異なる2つの信号列に分けて出力する位相逆シフト手段と、
を備えたことを特徴とする送受信システム。
【請求項3】
受信した信号の搬送波と同一の周波数のローカル信号の位相を(2π/p)ずつ異なる複数p(≧3)通りの値にリサイクリックに位相シフトさせて時分割信号を生成する位相シフト手段と、
前記受信した信号を前記時分割信号により周波数変換してベースバンド信号を生成する周波数変換手段と、
前記位相シフト手段が前記ローカル信号の位相をサイクリックに変化させるタイミングに同期して、前記位相シフトにおいて前記ローカル信号の位相に対して加えられた値と逆の位相シフトを前記ベースバンド信号に対して順次加え、前記逆の位相シフトが加えられた前記ベースバンド信号を位相がπ/2異なる2つの信号列に分けて出力する位相逆シフト手段と、
を備えたことを特徴とする受信装置。
【請求項4】
請求項に記載の送受信システムにおいて、
前記送信手段は、
前記複数pの搬送波の位相の跳躍幅を(2π/p)に保つ
ことを特徴とする送受信システム。
【請求項5】
請求項に記載の受信装置において、
前記位相シフト手段は、
前記ローカル信号の位相に対する跳躍幅を(2π/p)に保つ
ことを特徴とする受信装置。
【請求項6】
請求項に記載の送受信システムにおいて、
前記送信手段は、
前記複数pの搬送波の位相の跳躍幅をランダムに設定する
ことを特徴とする送受信システム。
【請求項7】
請求項に記載の受信装置において、
前記位相シフト手段は、
前記ローカル信号の位相に対する跳躍幅をランダムに設定する
ことを特徴とする受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交変調方式またはQPSK方式の変調波とは異なる代替信号に応じてその変調波に対する所望の回路の応答を位相毎に時系列の順に得る送受信システムおよび受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル通信では、複素信号を送信する場合には、I(In−phase)チャネルとQ(Quadrature−phase)チャネルの信号を直交変調器により変調して送信している。そして、受信時に、直交復調器により、IチャネルとQチャネルの信号を直交復調し、この復調されたIチャネルとQチャネルの信号を、AD(Analog−To−Digital)変換して、出力している。また、レーダー装置において、DC(Direct Current;直流)オフセットを除去するために、送信信号に対して位相シフトを行い、受信側で逆の位相シフトを行うようにしたものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/024583号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、デジタル通信で複素信号を送信する場合には、直交変調器や直交復調器が必要になる。しかしながら、直交復調器を用いた場合には、DCオフセットや直交誤差が生じる。
【0005】
特許文献1に記載されているものでは、位相シフトを行った送信信号を直交変調して送信し、また、受信信号を直交復調し、AD変換した後、逆の位相シフトを行って、DCオフセットや直交誤差をキャンセルすることが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載されているものでは、回路規模の大きな直交復調器が必要であり、また、復調されたIQ信号のそれぞれに対して、1つずつ、計2つのAD変換器が必要になる。
【0006】
本発明は、構成の複雑化と大規模化とを伴うことなく、所望の回路の応答を精度よく安定に得る送受信システムおよび受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様としての送受信システムは、位相が互いにπ/2異なる2つの搬送波を交互に切り替えた時分割信号を送信する送信手段と、受信された前記時分割信号を前記2つの搬送波と同一の周波数のローカル信号により周波数変換してベースバンド信号を生成する周波数変換手段と、前記送信手段が前記2つの搬送波を交互に切り替えるタイミングに同期して、前記ベースバンド信号を2つの出力信号に振り分ける分離手段と、を備える。
すなわち、所定の回路の出力には、時系列の順に位相が互いにπ/2異なる2つの搬送波に対する定常的な応答が得られ、これらの応答は位相毎に交互に所望の処理の対象となる。
【0008】
また、本願発明の一態様としての受信装置は、受信した信号の搬送波と同一の周波数のローカル信号に対して、位相が互いにπ/2異なる2通りの位相シフトを交互に行って時分割信号を生成する位相シフト手段と、前記受信した信号を前記時分割信号により周波数変換してベースバンド信号を生成する周波数変換手段と、前記位相シフト手段が前記2通りの位相シフトを交互に切り替えるタイミングに同期して、前記ベースバンド信号を2つの出力信号に振り分ける分離手段と、を備える。
すなわち、直交変調方式またはQPSK方式の変調波が入力されていないにもかかわらず、その変調波に対する所定の回路の応答が得られる。
【0009】
また、本願発明の一態様としての送受信システムは、位相が(2π/p)ずつ異なる複数p(≧3)の搬送波をリサイクリックに切り替えた時分割信号を送信する送信手段と、受信した前記時分割信号を前記複数pの搬送波と同一の周波数のローカル信号により周波数変換してベースバンド信号を生成する周波数変換手段と、前記送信手段が前記複数pの搬送波をサイクリックに切り替えるタイミングに同期して、前記時分割信号に含まれる前記搬送波の前記位相と逆の位相シフトを前記ベースバンド信号に対して順次加え、前記逆の位相シフトが加えられた前記ベースバンド信号を位相がπ/2異なる2つの信号列に分けて出力する位相逆シフト手段と、を備える。
すなわち、所定の回路の出力には、時系列の順に位相が(2π/p)ずつ異なる搬送波に対する定常的な応答が得られ、これらの応答は位相毎に所望の処理の対象となる。
【0010】
また、本願発明の一態様としての受信装置は、受信した信号の搬送波と同一の周波数のローカル信号の位相を(2π/p)ずつ異なる複数p(≧3)通りの値にリサイクリックに位相シフトさせて時分割信号を生成する位相シフト手段と、前記受信した信号を前記時分割信号により周波数変換してベースバンド信号を生成する周波数変換手段と、前記位相シフト手段が前記ローカル信号の位相をサイクリックに変化させるタイミングに同期して、前記位相シフトにおいて前記ローカル信号の位相に対して加えられた値と逆の位相シフトを前記ベースバンド信号に対して順次加え、前記逆の位相シフトが加えられた前記ベースバンド信号を位相がπ/2異なる2つの信号列に分けて出力する位相逆シフト手段と、
を備える。
すなわち、直交変調方式またはQPSK方式の変調波が入力されていないにもかかわらず、その変調波に対する所定の回路の応答が得られる。
【0011】
また、本願発明の一態様としての送受信システムは、上記の送受信システムにおいて、前記送信手段は、前記複数pの搬送波の位相の跳躍幅を(2π/p)に保つ。
すなわち、既述の処理を行う系に入力される応答に伴い得る位相の跳躍が、一定の値(=(360/p))に維持される。
また、本願発明の一態様としての受信装置は、上記の受信装置において、前記位相シフト手段は、前記ローカル信号の位相に対する跳躍幅を(2π/p)に保つ。
すなわち、既述の処理を行う系に入力される応答に伴い得る位相の跳躍が、一定の値(=(360/p))に維持される。
【0012】
また、本願発明の一態様としての送受信システムは、上記の送受信システムにおいて、前記送信手段は、前記複数pの搬送波の位相の跳躍幅をランダムに設定する。
すなわち、既述の処理を行う系に入力される応答に伴い得る位相の跳躍分がランダムに変化するため、その応答の周波数スペクトルは周波軸上で広範に拡散される。
【0013】
また、本願発明の一態様としての受信装置は、上記の受信装置において、前記位相シフト手段は、前記ローカル信号の位相に対する跳躍幅をランダムに設定する。
すなわち、既述の処理を行う系に入力される応答に伴い得る位相の跳躍分がランダムに変化するため、その応答の周波数スペクトルは周波軸上で広範に拡散される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、直交変調やQPSK変調に伴い得る直交性の偏差と、位相毎に対応した回路の直流オフセット分の偏差との何れもが軽減され、変調波に応じた所望の回路の応答に施されるべき処理の精度が安定に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るSAWデバイスの概略的な模式図である。
図2】第1実施形態に係る送受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】第2実施形態に係る送受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】第3実施形態に係る送受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図5】第4実施形態に係る送受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図6】直交復調部が不要である理由を説明する図である。
図7】DCオフセット及び直交誤差の説明に用いるブロック図である。
図8】DCオフセット及び直交誤差の説明図である。
図9】DCオフセット及び直交誤差の説明図である。
図10】第5実施形態に係る送受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図11】第5実施形態における位相シフト部と送信利タイミング部の動作を示す波形図である。
図12】第5実施形態における位相選択の説明図である。
図13】第6実施形態に係る送受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図14】第7実施形態に係る送受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図15】第8実施形態に係る送受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図16】第8実施形態に係る送受信装置における位相シフトの切り替えの説明図である。
図17】第9実施形態に係る反射型のSAWデバイスの概略的な模式図である。
図18】第9実施形態に係る送受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図19】送信側または受信側で信号に対して2相の位相シフトする場合のタイミングを説明する図である。
図20】送信側で信号に対して4相の位相シフトする場合のタイミングを説明する図である。
図21】受信側で信号に対して4相の位相シフトする場合のタイミングを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の送受信装置は、位相や振幅の変化を利用したセンサデバイスに信号を供給、または受け取る。なお、以下に説明する実施形態において、センサデバイスの一例として、SAW(Surface Acoustic Wave;弾性表面波)デバイスを例に説明するが、センサデバイスはこれに限られず、位相や振幅の変化を利用したものであればよい。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係るSAWデバイス111の概略的な模式図である。図1(A)は、SAWデバイス111の概略的な上面図であり、図1(B)はSAWデバイス111を切断面Cから見た概略的な断面図である。
SAWデバイス111は、圧電素子基板10、送信電極11−1a、送信電極11−1b、受信電極11−2a、受信電極11−2b、反応領域薄膜12、封止構造14−1、及び封止構造14−2を含んで構成される。
圧電素子基板10は、SAWを伝播する基板である。圧電素子基板10は、水晶基板である。
【0018】
送信電極11−1a、及び送信電極11−1bは、送信側電極部を構成する櫛歯状のパターンにより形成された金属電極である。以下、送信電極11−1a、及び送信電極11−1bを総称してIDT11−1と呼ぶものとする。
また、受信電極11−2a、及び受信電極11−2bは、受信側電極部を構成する櫛歯状のパターンにより形成された金属電極である。以下、受信電極11−2a、及び受信電極11−2bを総称してIDT11−2と呼ぶものとする。
IDT11−1、及びIDT−11−2(総称してIDT11と呼ぶ)は、圧電素子基板10上に構成される電極である。IDT11は、対向した一対の電極である。IDT11は、例えばアルミニウム薄膜によって構成される。
【0019】
反応領域薄膜12は、金を蒸着して生成した薄膜である。反応領域薄膜12は、表面に抗体を担持した薄膜である。反応領域薄膜12は、圧電素子基板10上であって、圧電素子基板10上に対向して設けられた一対のIDT11の間の領域に形成される。
圧電素子基板10と反応領域薄膜12との重なる部分が、検体である液体が導入される検出領域(センサ表面となる領域)となる。
【0020】
SAWデバイス111では、滴下された溶液が、反応領域薄膜12の特定の領域を濡らす。
溶液中の抗原は、反応領域薄膜12上に担持された抗体と反応し、反応領域薄膜12上の特定領域に抗原抗体結合物を生成する。
すなわち、反応領域薄膜12では、その表面に抗原を含んだ液体試料を滴下することにより、反応領域薄膜12上に担持された抗体と、液体試料中の抗原との間で抗原抗体反応が起こる。その結果、反応領域薄膜12上には、反応領域薄膜12上に担持した抗体と抗原が結合した抗原抗体結合物が生成する。なお、反応領域薄膜12は、金以外であっても抗体を担持できるものであればいかなるものでもよい。
【0021】
送信電極部側の封止構造14−1は、封止壁15−1と封止天井16−1とを備えている。なお、封止壁15−1と封止天井16−1との間には両者を接着するための接着層が設けられるが、図1においては省略している。
封止壁15−1は、IDT11−1を覆う壁であり、圧電素子基板10上に矩形状に形成される。封止壁15−1は、例えば感光性樹脂により構成される。
また、封止天井16−1は、封止壁15−1の上側を塞ぎ、IDT11−1を外部から密閉するための天井である。封止天井16−1は、封止天井16−1の平面領域内に封止壁15−1が収まるように封止壁15−1の上側に配置される。封止天井16−1は、例えばガラス基板で構成される。なお、封止壁15−1と封止天井16−1との間には、不図示の接着層が設けられ、封止壁15−1と封止天井16−1との間を密封して接着する。
封止構造14−1は、IDT11−1を外部から密閉してIDT11−1上に空間を形成するように覆い、IDT11−1が液体と接触することを防ぐ封止構造である。
【0022】
また、受信電極部側の封止構造14−2は、封止構造14−1と同様に、封止壁15−2と封止天井16−2とを備え、IDT11−2を外部から密閉してIDT11−2上に空間を形成するように覆い、IDT11−2が液体と接触することを防ぐ封止構造である。
これら封止構造14−1、及び封止構造14−2により、検出領域における雰囲気(例えば湿度)の変化があったとしても、IDT11−1、及びIDT11−2は、その影響を受けにくくなる。
【0023】
図2は、本実施形態に係る送受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係る送受信装置100は、制御信号発生部101、位相シフト部102、送信電力増幅部103、受信電力増幅部104、受信周波数変換部105、LPF(ローパスフィルタ)部106、AD(Analog−To−Digital;アナログ信号−デジタル信号)変換部107、I/Q分離部108、遅延調整部153、及びセンサ部110を備えている。
【0024】
制御信号発生部101は、所定時間毎のタイミング信号を生成する。制御信号発生部101からのタイミング信号は、位相シフト部102に供給されると共に、遅延調整部153を介してI/Q分離部108に供給される。なお、所定時間については後述する。
遅延調整部153は、制御信号発生部101から入力されたタイミング信号に対して、送信信号に対する受信信号の遅延時間に応じた所定の時間だけ遅延させ、遅延させたタイミング信号をI/Q分離部108に供給する。
【0025】
位相シフト部102及び送信電力増幅部103は、送信部151を構成している。位相シフト部102は、制御信号発生部101からのタイミング信号に基づいて、入力信号に対して位相シフトを行う。この実施形態では、位相シフト部102は、制御信号発生部101からのタイミング信号に基づいて、入力信号に対して0、π/2(rad)の位相シフトを行い、位相の異なる2相の信号からなる時分割信号を生成する。すなわち、位相シフト部102は、位相が互いにπ/2異なる2つの搬送波を交互に生成することで、時分割信号を生成する。送信電力増幅部103は、位相シフト部102からの信号を電力増幅して、センサ部110に供給する。
【0026】
センサ部110は、SAWデバイス111を有している。このセンサ部110は、SAWデバイス111の溶液滴下による位相変化を検出して、溶液の種類や、溶液中の成分を検出するものである。
【0027】
受信電力増幅部104、受信周波数変換部105、LPF部106、AD変換部107、I/Q分離部108は、受信部152を構成している。
【0028】
受信電力増幅部104は、送信部151から、SAWデバイス111を介された信号を受信し、この受信信号を増幅する。受信周波数変換部105は、受信信号とローカル信号とを乗算して、周波数変換を行う。本実施形態では、ローカル信号として、入力信号と同一周波数かつ、位相同期した信号が用いられる。なお、位相シフト部102に供給される入力信号をそのままローカル信号としても良い。LPF部106は、受信周波数変換部105の出力信号から、低域成分だけを抽出する。AD変換部107は、LPF部106の出力信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換する。I/Q分離部108は、制御信号発生部101からのタイミング信号に従い、AD変換部107からの信号を振り分け、IチャネルとQチャネルの複素信号を生成する。
【0029】
上述のように、本実施形態では、位相シフト部102により、入力信号に対して、位相の異なる2相の信号からなる時分割信号が生成される。
【0030】
ここで、入力信号s(t)を、s(t)=cos(ωt)とすると、送信される時分割信号は、次式(1)のように表される。
【0031】
【数1】
【0032】
なお、式(1)及び他の式において、角括弧[]は相を示すインデックスである。式(1)で示される時分割信号は、送信電力増幅部103から出力され、SAWデバイス111を介して、受信電力増幅部104で受信される。ここで、SAWデバイス111では、溶液滴下による位相変化が生じる。この位相変化をφとし、振幅の変化を無視すると、受信電力増幅部104の受信信号は次式(2)のように表される。
【0033】
【数2】
【0034】
受信周波数変換部105は、受信信号それぞれとローカル信号とを乗算して、周波数変換を行う。ここで、ローカル信号としては、入力信号と同一の周波数かつ、位相同期した信号が用いられる。なお、ローカル信号は、入力信号を分岐させた信号であってもよい。受信信号それぞれとローカル信号sloc(t)=cos(ωt)とを乗算して得られる信号は、受信信号とローカル信号との和の周波数の信号と、受信信号とローカル信号との差の周波数の信号である。受信信号とローカル信号とは同一の周波数かつ、位相同期した信号なので、受信周波数変換部105の出力信号は、次式(3)のように表され、入力信号の2倍の周波数成分と、ベースバンド信号(ゼロIF信号)となる。
【0035】
【数3】
【0036】
LPF部106は、受信周波数変換部105で、式(3)のように表される受信信号それぞれとローカル信号とを乗算して得られた信号から、ベースバンド信号を抽出する。式(3)において、sc[0]tの第1項cos(2ωt+ψ)は周波数が高いため、LPF部106で除去され、同様に、sc[1]tの第1項sin(2ωt+ψ)は周波数が高いため、LPF部106で除去される。したがって、LPF部106の出力は、各式において2項目のみとなり、次式(4)のような2相の信号の時分割信号となる。
【0037】
【数4】
【0038】
このLPF部106の出力信号は、AD変換部107により、アナログ信号からデジタル信号に変換される。そして、I/Q分離部108は、制御信号発生部101から遅延調整部153を介して入力されるタイミング信号に基づいて、入力信号を時分割したのと同様のタイミングで、AD変換部107の出力信号を振り分けることで、π/2異なる位相の成分を個別に抽出して出力する。これにより、次式(5)のように、0相のIチャネル及びπ/2相のQチャネルの複素信号が得られる。
【0039】
【数5】
【0040】
式(5)に示すように、I/Q分離部108から得られる複素信号は、センサ部110のSAWデバイス111による、溶液滴下による位相変化の検出信号となる。このように、本実施形態によれば、直交復調器を用いずに、等価的に直交復調動作を実現してIチャネルとQチャネルの複素信号を生成することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の送受信装置100は、本実施形態では、送信時に、位相がπ/2(rad)互いに異なる信号を順次、時分割して送信する。そして、受信時に受信信号を振り分け、等価的に直交復調動作を実現してIチャネルとQチャネルの複素信号を生成している。
この構成により、本実施形態では、受信周波数変換部105として直交復調器を用いる必要がなく、回路規模を小さくすることができる。また、Iチャネル用とQチャネル用との2個のAD変換部を必要とせず、1つのAD変換部107で、受信信号を処理変換できる。また、AD変換部107はLow−IF方式と異なり、周波数の低いベースバンド信号を変換すればよいため、AD変換部107として、低速のものを用いることができる。そして、本実施形態では、直交誤差は、位相シフトの精度によって決まる。このため、送受信装置100に対して求められる直交誤差範囲であれば、位相のシフト量π/2(rad)に許容差があってもよい。
【0042】
<第2実施形態>
次に、本実施形態について説明する。図3は、本実施形態に係る送受信装置200の概略構成を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係る送受信装置200は、制御信号発生部201、送信電力増幅部203、受信電力増幅部204、受信周波数変換部205、LPF部206、AD変換部207、I/Q分離部208、及び位相シフト部209を備えている。
【0043】
制御信号発生部201は、所定時間毎のタイミング信号を生成する。制御信号発生部101からのタイミング信号は、位相シフト部209に供給されると共に、I/Q分離部208に供給される。なお、所定時間については後述する。
送信電力増幅部203は、送信部251を構成している。受信電力増幅部204、受信周波数変換部205、LPF部206、AD変換部207、I/Q分離部208、位相シフト部209は、受信部252を構成している。
センサ部210は、SAWデバイス211を有している。なお、SAWデバイス211の構成は、SAWデバイス111と同様であってもよい。
【0044】
本実施形態における、制御信号発生部201、送信電力増幅部203、受信電力増幅部204、受信周波数変換部205、LPF部206、AD変換部207、I/Q分離部208は、前述の第1実施形態における、制御信号発生部101、送信電力増幅部103、受信電力増幅部104、受信周波数変換部105、LPF部106、AD変換部107、I/Q分離部108と同様に構成される。
位相シフト部209は、制御信号発生部201からのタイミング信号に基づいて、入力信号に対して位相シフトを行う。この実施形態では、位相シフト部209は、制御信号発生部201からのタイミング信号に基づいて、入力信号に対して0、π/2(rad)の位相シフトを行い、互いに位相の異なる2相の信号を交互に設定し、時分割信号を生成する。
【0045】
第1実施形態では、位相シフト部102により、送信時に、入力信号に対して、0、π/2(rad)の位相シフトを行い、位相の異なる2相の信号を時分割で送信している。これに対して、本実施形態では、この時分割した信号を受信周波数変換部205で用いるローカル信号として供給する。この場合も、第1実施形態と同様に、位相シフトを行ったのと同様のタイミングで、I/Q分離部208で信号を分離することにより、直交復調器を用いずに、等価的に直交復調動作を実現して、0相のIチャネルとπ/2相のQチャネルの複素信号を取得できる。例えば、I/Q分離部208は、応答の位相が位相シフト部209によって設定されて、受信周波数変換部205によって変換された後の応答の列から、位相シフト部209の位相シフトのタイミングに同期して、π/2異なる位相の成分を個別に抽出することで、0相のIチャネルとπ/2相のQチャネルの複素信号を得る。なお、送受信装置200に対して求められる直交誤差範囲であれば、位相のシフト量π/2(rad)に許容差があってもよい。
【0046】
本実施形態によれば、送信信号を位相シフトさせていないため、第1実施形態の送信信号と比べて送信信号のスペクトルの幅が広がらない。この結果、本実施形態によれば、SAWデバイス211は、第1実施形態のSAWデバイス111と比べて狭帯域のものを用いることができる。また、本実施形態によれば、後述するようなタイミングで、受信側でローカル信号を位相シフトさせているため、送受信装置100で必要であった遅延調整部153が不要である。
【0047】
<第3実施形態>
次に、本実施形態について説明する。図4は、本実施形態に係る送受信装置300の概略構成を示すブロック図である。図4に示すように、本実施形態に係る送受信装置300は、制御信号発生部301、位相シフト部302、送信電力増幅部303、受信電力増幅部304、受信周波数変換部305、LPF部306、AD変換部307、位相逆シフト部308、相関部309、遅延調整部353、及びセンサ部310を備えている。
【0048】
制御信号発生部301は、所定時間毎のタイミング信号を生成する。制御信号発生部301からのタイミング信号は、位相シフト部302に供給されると共に、遅延調整部353を介して位相逆シフト部308及び相関部309に供給される。なお、所定時間については後述する。
遅延調整部353は、制御信号発生部301から入力されたタイミング信号に対して、送信信号に対する受信信号の遅延時間に応じた所定の時間だけ遅延させ、遅延させたタイミング信号を位相逆シフト部308及び相関部309に供給する。
【0049】
位相シフト部302及び送信電力増幅部303は、送信部351を構成している。位相シフト部302は、制御信号発生部301からのタイミング信号に基づいて、入力信号に対して時分割で位相シフトを行う。この実施形態では、位相シフト部302は、制御信号発生部301からのタイミング信号に基づいて、入力信号に対して、0、π/2、π、3π/2(rad)の位相シフトを行い、位相の異なる4相の信号をサイクリックに生成することで時分割信号を生成する。送信電力増幅部303は、位相シフト部302からの信号を電力増幅して、センサ部310に供給する。
【0050】
センサ部310は、SAWデバイス311を有している。このセンサ部310は、SAWデバイス311の溶液滴下による位相変化を検出して、溶液の種類や、溶液中の成分を検出するものである。なお、SAWデバイス311の構成は、SAWデバイス111と同様であってもよい。
【0051】
受信電力増幅部304、受信周波数変換部305、LPF部306、AD変換部307、位相逆シフト部308、相関部309は、受信部352を構成している。
【0052】
受信電力増幅部304は、SAWデバイス311を介された信号を受信し、この受信信号を増幅する。受信周波数変換部305は、受信信号それぞれとローカル信号とを乗算して、周波数変換を行う。ここで、ローカル信号としては、入力信号と同一周波数かつ、位相同期した信号が用いられる。なお、位相シフト部302に供給される入力信号をそのままローカル信号としても良い。LPF部306は、受信周波数変換部305の出力信号の低域成分を抽出する。AD変換部307は、LPF部306の出力をアナログ信号からデジタル信号に変換する。位相逆シフト部308は、送信側の位相シフト部302と逆の位相シフトを行う。相関部309は、相関演算を行うことにより、Iチャネル及びQチャネルの複素信号を生成する。なお、相関演算については、後述する。
【0053】
上述のように、本実施形態では、位相シフト部302により、入力信号に対して、位相の異なる4相の信号からなる時分割信号が生成される。
【0054】
ここで、入力信号s(t)を、s(t)=cos(ωt)とすると、送信される時分割信号は、次式(6)のように表される。
【0055】
【数6】
【0056】
式(6)で示される4相の信号は、時分割で、送信電力増幅部303から出力される。送信電力増幅部303からの信号は、SAWデバイス311を介して、受信電力増幅部304で受信される。SAWデバイス311では、溶液滴下による位相変化が生じる。この位相変化をφとし、振幅の変化を無視すると、受信電力増幅部304の受信信号は、次式(7)の4相の信号の時分割信号となる。
【0057】
【数7】
【0058】
受信周波数変換部305は、受信信号それぞれとローカル信号とを乗算して、周波数変換を行う。ここで、ローカル信号としては、受信信号と同一の周波数かつ、位相同期した信号が用いられる。この場合、受信周波数変換部305の出力信号は、入力信号の2倍の周波数成分と、ベースバンド信号(ゼロIF信号)となる。
【0059】
LPF部306は、受信周波数変換部305で、受信信号それぞれとローカル信号とを乗算して得られた信号から、ベースバンド信号を抽出する。したがって、LPF部306の出力は、次式(8)のような4相の信号の時分割信号となる。
【0060】
【数8】
【0061】
このLPF部306の出力信号は、AD変換部307により、アナログ信号からデジタル信号に変換される。そして、位相逆シフト部308及び相関部309は、次式(9)のように演算を行うことにより、位相シフト部302の位相シフトとは逆の位相シフトを行い、Iチャネル及びQチャネルの複素信号を取得する。
【0062】
【数9】
【0063】
なお、本実施形態では、位相シフト部302、位相逆シフト部308が、4相(2πを4等分)に位相シフトする例を説明したが、位相シフトは、3相以上であればよく、5相以上であってもよい。この場合、位相シフト部302は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相シフトし、位相逆シフト部308は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相を逆シフトする。また、位相シフト部302は、位相の跳躍幅として、2πをn等分(nは3以上)したn相を設定する場合、その跳躍幅を常に一定にしなくてもよく、例えば、ランダムに設定してもよい。この場合、位相逆シフト部308は、位相シフト部302が設定した位相跳躍幅に対応した跳躍幅に従って、逆の位相シフトを行う。
【0064】
以上のように、本実施形態では、n相(2πをn等分(nは3以上))に位相シフトした信号を順次送信し、受信側で受信した信号を周波数変換後に位相を逆シフトする。そして、本実施形態では、受信側で相関演算を行うことで、直交復調器を用いずに、等価的に直交復調動作を実現してIチャネルとQチャネルの複素信号を生成することができる。
この構成により、本実施形態によれば、直交復調器を用いる必要がなく、回路規模を小さくすることができる。また、Iチャネル用とQチャネル用との2個のAD変換部を必要とせず、1つのAD変換部307で、受信信号を処理変換できる。また、AD変換部307はLow−IF方式と異なり、周波数の低いベースバンド信号を変換すればよいため、AD変換部307として、低速のものを用いることができる。なお、送受信装置300に対して求められる精度に応じて、位相のシフト量に許容差があってもよい。
【0065】
また、本実施形態では、受信周波数変換部305におけるDCオフセットをキャンセルできる。また、直交誤差は位相シフトおよび位相逆シフトの精度で決まり、受信周波数変換部305では原理的に発生しない。なお、これらの理由については、後に説明する。
さらに、図4で説明した位相シフトが4相の場合は、位相逆シフト部308に回路規模の大きな乗算器が不要であり、位相逆シフト部308による位相逆シフト演算と相関部309による相関演算とを論理圧縮することができるので、さらに回路規模を削減することができる。
【0066】
<第4実施形態>
次に、本実施形態について説明する。図5は、本実施形態に係る送受信装置400の概略構成を示すブロック図である。図5に示すように、本実施形態に係る送受信装置400は、制御信号発生部401、送信電力増幅部403、受信電力増幅部404、受信周波数変換部405、LPF部406、AD変換部407、位相逆シフト部408、相関部409、センサ部410、位相シフト部412を備えている。
【0067】
送信電力増幅部403は、送信部451を構成している。受信電力増幅部404、受信周波数変換部405、LPF部406、AD変換部407、位相逆シフト部408、相関部409、位相シフト部412は、受信部452を構成している。センサ部410は、SAWデバイス411を有している。なお、SAWデバイス411の構成は、SAWデバイス111と同様であってもよい。
【0068】
制御信号発生部401、送信電力増幅部403、受信電力増幅部404、受信周波数変換部405、LPF部406、AD変換部407、位相逆シフト部408、相関部409は、前述の第3実施形態における、制御信号発生部301、送信電力増幅部303、受信電力増幅部304、受信周波数変換部305、LPF部306、AD変換部307、位相逆シフト部308、相関部309と同様に構成される。
【0069】
制御信号発生部401は、所定時間毎のタイミング信号を生成する。制御信号発生部401からのタイミング信号は、位相シフト部412に供給されると共に、位相逆シフト部408及び相関部409に供給される。なお、所定時間については後述する。
【0070】
第3実施形態では、位相シフト部302により、送信時に、入力信号に対して、0、π/2、π、3π/2(rad)の位相シフトを行い、π/2の位相差を有する4相の信号の時分割信号を生成している。これに対して、本実施形態では、位相シフト部412が、この時分割した信号を受信周波数変換部405で用いるローカル信号として供給する。従って、位相シフト部412は、搬送波に応じて受信周波数変換部405が出力する応答の位相を、π/2度ずつ異なる4通りの値にサイクリックに設定する。この位相シフトは、3相以上であればよく、5相以上であってもよい。この場合、位相シフト部412は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相シフトする。また、位相シフト部302は、位相の跳躍幅として、2πをn等分(nは3以上)したn相を設定する場合、その跳躍幅を常に一定にしなくてもよく、例えば、ランダムに設定してもよい。
また、この場合も、第3実施形態と同様に、位相逆シフト部408と相関部409とで信号を分離することにより、そして直交復調器を用いずに、等価的に直交復調動作を実現して0相のIチャネルの信号とπ/2相のQチャネルの信号を得ることができる。ここでは、相関部409は、受信周波数変換部405から出力された応答の列から、位相シフト部412の位相シフトのタイミングに同期して、π/2ずつ異なる位相の成分を個別に抽出する。ここで、位相逆シフト部408は、位相シフト部412がランダムに位相の跳躍幅を設定している場合、この跳躍幅に対応した跳躍幅に従って、逆の位相シフトを行う。なお、送受信装置400に対して求められる直交誤差範囲であれば、位相のシフト量に許容差があってもよい。
【0071】
本実施形態によれば、送信信号を位相シフトさせていないため、第3実施形態の送信信号と比べて送信信号のスペクトルの幅が広がらない。この結果、本実施形態によれば、SAWデバイス411は、第3実施形態のSAWデバイス311と比べて狭帯域のものを用いることができる。また、本実施形態によれば、後述するようなタイミングで、受信側でローカル信号を位相シフトさせているため、送受信装置300で必要であった遅延調整部353が不要である。
【0072】
<直交復調器が不要な理由の説明>
前述の第3実施形態では、入力信号に対して、0、π/2、π、3π/2の位相シフトを行い、π/2の位相差を有する4相の信号の時分割信号を生成し、受信時に、加減算で、受信周波数変換部に直交復調器を用いずにIチャネル及びQチャネルの複素信号を得ることができる。また、第3実施形態では、このような演算により、DCオフセットをキャンセルできる。また、直交誤差は位相シフトおよび位相逆シフトの精度で決まり、受信周波数変換部305では原理的に発生しない。第4の実施形態においても、ローカル信号に対して、0、π/2、π、3π/2の位相シフトを行うことで、第3実施形態と同様の処理が行える。
【0073】
図6は、直交復調部が不要である理由を説明する図である。第3実施形態では、受信周波数変換部305として、直交復調器を用いないと説明した。これに対して、ここでは、DCオフセット及び直交誤差を説明するために、周波数変換部として直交復調器を使うものとする。
【0074】
受信周波数変換部305として直交復調器315を用いたことから、直交復調器315の出力から、Iチャネルの信号とQチャネルの信号が得られる。このため、2つのLPF部306a及び306bと、2つのAD変換部307a及び307bが設けられる。これ以外の構成については、第3実施形態と同様である。
【0075】
図7は、直交復調器315の部分を示している。図7に示すように、直交復調器315は、2つの乗算器321a及び321bを有している。また、図7において、Δα及びΔβは、Iチャネル及びQチャネルの利得誤差であり、Δθは位相誤差であり、ΔVi及びΔVqは、Iチャネル及びQチャネルのDCオフセットである。なお、図7に示したLPF306a及び306bの後段に、AD変換部307a及び307bが接続される。
【0076】
n相の受信RF信号をcos(ω+2nπ/N+ψ)とすると、ミキサの出力信号は次式(10)で表される。
【0077】
【数10】
【0078】
式(10)において、ΔαとΔβは利得誤差、ψはセンシングによる位相回転、Δθは位相誤差、ΔViとΔVqはDCオフセットである。
加法定理で加法の形式に変形すると、式(10)は次式(11)のように表される。
【0079】
【数11】
【0080】
つぎに、LPF部306a及び306bにより、2倍波成分の項を除去すると、次式(12)のように表される。
【0081】
【数12】
【0082】
これらの信号をAD変換部307a及び307bで取り込み、位相逆シフト演算、相関処理すると、次式(13)のように表される。
【0083】
【数13】
【0084】
式(13)は、Nが2以上のとき、DCオフセットであるΔViとΔVqの項が0となるので、次式(14)のように表される。
【0085】
【数14】
【0086】
式(14)を加法定理で加法の形式に変形すると、次式(15)のように表される。
【0087】
【数15】
【0088】
式(15)において、Nが3以上のとき、4nπ/Nを含む項が0となるので、次式(16)のように表される。
【0089】
【数16】
【0090】
位相回転成分 は残留するが、i成分q成分に同レベルが混入しているため、コンスタレーション(信号空間ダイヤグラム)は真円であり、イメージ成分は発生せず、直交誤差のない理想的な直交復調器として機能する。
ここで、補償後の位相回転についてもう少しわかりやすくするため、Δα=Δβ=0という特殊条件で式を整理する。加算後の信号は、次式(17)のようにまとめることができる。
【0091】
【数17】
【0092】
これより、位相回転 は生じているものの、コンスタレーションは真円であり、イメージ成分は発生しないことがうかがえる。ただし、補償の代償としてレベル低下cos(Δθ/2)を伴う。Δθ=±πの極限条件では信号レベルはゼロとなり、もはや直交復調器として機能しない。
ところで、振幅誤差の極限状態は片側の系の利得が0の時である。例えばΔβ=−1とすると、加算後の信号は次式(18)のようになる。
【0093】
【数18】
【0094】
これより、片側の系の利得が0であっても、理想的な直交復調器として機能することがわかる。片側の系の利得が0であるとういことは、その系は不要であることを意味する。すなわち、図4に示したように、直交復調器を用いずに、受信周波数変換部305を構成できるということになる。
上述したように本発明によれば、直交復調器を用いずに、受信周波数変換部305のDCオフセットおよび直交誤差をキャンセルすることが可能であり、振幅誤差の極限状態として、片側の系のみでも理想的な直交復調が可能である。
この思考により、n相信号を利用することにより、簡易なミキサと1個のADCで直交復調の機能を実現可能であるという発明にいたった。ただし、信号レベルは1/2であるから、直交復調器と2個のADCを利用した一般的な構成に比べて、S/Nは3dB低い。
【0095】
また、N=4のとき、位相逆シフトに用いる回転演算子は次式(19)のように簡単なベクトルとなるため、回路規模の大きい乗算器が不要となる。
【0096】
【数19】
【0097】
同じような手順で、各相のIチャネル及びQチャネルのベースバンド信号を求めると、図8に示すようになる。
【0098】
図6に示すように、LPF部306a及び306bから抽出されたIチャネル及びQチャネルのベースバンド信号は、AD変換部307a及び307bでデジタル信号に変換され、位相逆シフト部308で、送信時とは逆に位相シフトされる。
【0099】
図8に示したような各相のIチャネル及びQチャネルのベースバンド信号に、位相逆シフトを与えると、図9に示すような信号となる。
【0100】
図9により、位相シフト後の4相の信号を加算すると、DCオフセットΔVi及びΔVqは、キャンセルされることが分かる。
【0101】
<第5実施形態>
図10は、本実施形態に係る送受信装置の構成を示すブロック図である。図10に示すように、本実施形態に係る送受信装置500は、制御信号発生部501、位相シフト部502、送信リタイミング部521、送信電力増幅部503、受信電力増幅部504、受信周波数変換部505、LPF部506、AD変換部507、位相逆シフト部508、相関部509、センサ部510、インバータ535、アイソレーションバッファ536、及び遅延調整部553を備えている。
【0102】
制御信号発生部501は、所定時間毎のタイミング信号を生成する。制御信号発生部501からのタイミング信号は、位相シフト部502に供給されると共に、遅延調整部553を介して位相逆シフト部508及び相関部509に供給される。なお、所定時間については後述する。
遅延調整部553は、制御信号発生部501から入力されたタイミング信号に対して、送信信号に対する受信信号の遅延時間に応じた所定の時間だけ遅延させ、遅延させたタイミング信号を位相逆シフト部508及び相関部509に供給する。
【0103】
位相シフト部502、送信リタイミング部521、送信電力増幅部503は、送信部551を構成している。位相シフト部502は、分周部531と選択部532とからなる。位相シフト部502は、制御信号発生部501からのタイミング信号に基づいて、0、π/2、π、3π/2(rad)の位相シフトを行い、位相の異なる4相の信号の時分割信号を生成する。送信リタイミング部521は、位相シフト部502からの信号を4相の信号を、エッジが揃うように、入力信号によりリタイミングする。送信電力増幅部503は、位相シフト部502からの信号を電力増幅して、センサ部510に供給する。なお、リタイミングに用いる信号は入力信号に同期した外部からの信号でもよい。また、SAWデバイス511の構成は、SAWデバイス111と同様であってもよい。
なお、本実施形態においても、位相シフトは、3相以上であればよく、5相以上であってもよい。この場合、位相シフト部502は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相シフトし、位相逆シフト部508は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相を逆シフトする。
【0104】
受信電力増幅部504、受信周波数変換部505、LPF部506、AD変換部507、位相逆シフト部508、相関部509は、受信部552を構成している。
【0105】
受信電力増幅部504は、SAWデバイス511を介された信号を受信し、この受信信号を増幅する。受信周波数変換部505は、受信信号それぞれとローカル信号とを乗算して、周波数変換を行う。ここで、ローカル信号としては、分周部531の何れかの出力が用いられる。すなわち、この例では、位相シフト部502を構成する分周部531から、4相の信号が出力され、この4相の信号の何れかがアイソレーションバッファ536を介して、ローカル信号として受信周波数変換部505に供給される。この位相シフト部502を構成する分周部531からの信号は、受信信号の周波数と同一の周波数である。なお、アイソレーションバッファ536は、ローカル信号に他の信号が混入して、精度が低下するのを防止するものである。また、アイソレーション向上のため、分周部を別に設けてもよい。また、受信周波数変換部505に供給されるローカル信号は、上述した分周部531によって分周された信号であってもよく、外部からの信号であってもよい。また、ローカル信号の位相は0相でなくてもよく、位相シフト部502から出力されるローカル信号(以後、受信ローカル信号ともいう)を位相シフトしてもよい。
【0106】
受信周波数変換部505の出力信号は、LPF部を介してAD変換部507に入力される。
AD変換部507は、LPF部506から入力された出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。位相逆シフト部508は、送信側の位相シフト部502と逆の位相シフトを行う。相関部509は、相関演算を行うことにより、Iチャネル及びQチャネルの複素信号を生成する。
なお、本実施形態でも位相シフトは、3相以上であればよく、5相以上であってもよい。この場合、位相シフト部502は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相シフトし、位相逆シフト部508は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相を逆シフトする。
【0107】
位相シフト部502には、入力信号として、送受信周波数の4倍の信号が供給される。位相シフト部502の分周部531は、例えばカウンタにより構成される。分周部531により、この入力信号が1/4分周され、分周部531からは、(π/2)ずつの位相差を有する4相の信号が出力される。すなわち、入力信号をs(t)=cos(4ωt)とすると、分周部531からは、次式(20)に示す4相の信号が出力される。
【0108】
【数20】
【0109】
選択部532は、分周部531からの4相の信号ps0〜ps3から1つの信号を、後述するタイミングの制御信号に基づき選択し、送信リタイミング部521に出力する。
【0110】
送信リタイミング部521は、DフリップフロップやJKフリップフロップのような、エッジトリガ型のフリップフロップ522から構成される。送信リタイミング部521には、インバータ535を介して、入力信号が供給される。選択部532からの信号は、送信リタイミング部521により、その変化点が入力信号の立ち下がりエッジと揃うように、リタイミングされる。
【0111】
図11は、本実施形態における位相シフト部502と送信リタイミング部521の動作を示す波形図である。
【0112】
分周部531には、図11(F)に示すような入力信号が供給される。分周部531で、この入力信号が1/4分周され、分周部531からは、図11(A)〜図11(D)に示すように、位相がπ/2ずつ異なる4相の信号ps0〜ps3が出力される。ここで、図11(A)〜図11(D)に示すように、分周部531からの信号中には、ゲートの遅延やゲート段数のバラツキ等による位相変動成分が含まれている。選択部532で、これら4相の信号ps0〜ps3の中から、1つの信号が選択される。ここでは、信号ps3(図11(D))が選択されたとする。この信号は、図11(F)に示す入力信号の立ち下がりエッジでリタイミングされる。これにより、図11(E)に示すように、送信電力増幅部503に送られる信号psnは、入力信号の立ち下がりエッジと揃ったものとなる。なお、図11(D)に示す信号ps3を、入力信号の立ち下がりでリタイミングしているので、送信電力増幅部503に送られる信号psnは、信号p3より0.5クロック遅れている。他の相の信号を選択した場合も、同様に、送信電力増幅部503に送られる信号psnは、入力信号の立ち下がりエッジと揃ったものとなる。
【0113】
ここで、図12に示すように、選択部532での4相の信号の選択方法としては、正転、反転、交番、ランダム等が考えられる。正転は、π/2位相を順に進めていく。反転は、π/2位相を反転方向に順に進めていく。交番は、4相の単位で正転と反転とを繰り返す。ランダムは、相関処理の単位内で各相の出現確率一定という条件で、位相をランダムに切り替えていく。交番では、4相信号の時変の影響をキャンセルできる。ランダムでは、スペクトルが拡散し、スプリアスレスポンスを軽減できる。
【0114】
以上のように、本実施形態の送受信装置500は、2πを4等分した4相の時分割した前記送信信号を送信する送信部と551、前記送信信号に基づく信号を受信信号として受信し、2πを4等分した4相の前記入力信号に基づく信号を用いて、前記受信した信号を周波数変換し、前記周波数変換された信号に対して位相を逆シフトさせることで複素信号を取得する受信部552と、を備え、前記送信部は、前記入力信号を分周する分周部531と、前記分周部の出力信号から位相の異なる信号を選択する選択部532とからなる位相シフト部502と、前記選択部532から出力された信号を、前記入力信号のタイミングでリタイミングするリタイミング部521と、を備える。
【0115】
位相シフト部502と選択部532によって、本実施形態では、時分割多重されるn相(nは3以上の整数)の信号のエッジが全て揃い、直交誤差の主要因である位相シフトの精度を向上することができる。また、選択部532で選択された信号を送信リタイミング部521でリタイミングしているため、直交誤差の主要因である位相シフトの精度を入力信号が有するジッタ成分と送信リタイミング部521が有するフリップフロップのランダムばらつきの範囲に低減することができる。このように、リタイミングを行うことで、位相シフトの精度をさらに向上することができる。
【0116】
なお、本実施形態で説明した位相シフト部502が分周部531と選択部532を有する構成を、第1〜第4実施形態に適用することも可能である。例えば、図2の位相シフト部102が、分周部と選択部とを有する場合、分周部は4分周、選択部は0相、π/2相を選択してもよい。また、送信信号リタイミング部を備え、送信信号リタイミング部は選択部が出力する信号をリタイミングするようにしてもよい。
【0117】
<第6実施形態>
次に、本実施形態について説明する。図13は、本実施形態に係る送受信装置600の概略構成を示すブロック図である。図13に示すように、本実施形態に係る送受信装置600は、制御信号発生部601、位相シフト部602、送信電力増幅部603、受信電力増幅部604、受信周波数変換部605、LPF部606、AD変換部607、位相逆シフト部608、相関部609、センサ部610、及び受信リタイミング部621を備えている。
【0118】
制御信号発生部601は、所定時間毎のタイミング信号を生成する。制御信号発生部601からのタイミング信号は、位相シフト部602に供給されると共に、位相逆シフト部608及び相関部609に供給される。なお、所定時間については後述する。
【0119】
送信電力増幅部603は、送信部651を構成している。受信電力増幅部604、受信周波数変換部605、LPF部606、AD変換部607、位相逆シフト部608、相関部609、位相シフト部602、受信リタイミング部621は、受信部652を構成している。センサ部610は、SAWデバイス611を有している。なお、SAWデバイス611の構成は、SAWデバイス111と同様であってもよい。
なお、本実施形態でも位相シフトは、3相以上であればよく、5相以上であってもよい。この場合、位相シフト部602は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相シフトし、位相逆シフト部608は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相を逆シフトする。
【0120】
分周部631により入力信号が分周され、分周部631からの4相の信号ps0〜ps4のうちの1つの信号が選択部632で選択され、受信リタイミング部621に出力される。そして、受信リタイミング部621は、位相シフト部602からの信号を4相の信号を、エッジが揃うように入力信号でリタイミングし、リタイミングした信号をローカル信号として受信周波数変換部605に送る。これにより、リタイミングされた信号を用いて周波数変換を行うため、時分割多重された各相の信号のエッジが全て揃い、位相精度を高くすることができる。
【0121】
すなわち、位相シフト部602には、入力信号として、送受信周波数の4倍の信号が供給される。位相シフト部602の分周部631により、この入力信号が1/4分周され、分周部631からは、(π/2)ずつの位相差を有する4相の信号が出力される。これら4相の信号のうちの1つが送信電力増幅部603に送られる。
【0122】
上述した第5実施形態では、位相シフト部502により、送信時に、0、π/2、π、3π/2(rad)の位相シフトを行い、π/2の位相差を有する4つ位相の時分割信号を生成し、送信リタイミング部521でリタイミングして、送信している。これに対して、本実施形態では、位相シフト部602により、π/2の位相差を有する4つ位相の時分割信号を生成し、受信リタイミング部621でリタイミングして、ローカル信号として、受信周波数変換部605に送っている。他の構成については、前述の第5実施形態と同様である。
【0123】
この構成により、本実施形態によれば、送信信号を位相シフトさせていないため、第5実施形態の送信信号と比べて送信信号のスペクトルの幅が広がらない。この結果、本実施形態によれば、SAWデバイス611は、第5実施形態のSAWデバイス511と比べて狭帯域のものを用いることができる。また、本実施形態によれば、受信側でローカル信号を位相シフトさせているため、送受信装置500で必要であった遅延調整部553が不要である。
【0124】
<第7実施形態>
次に、本実施形態について説明する。図14は、本実施形態に係る送受信装置700の概略構成を示すブロック図である。図14に示すように、本実施形態に係る送受信装置700は、制御信号発生部701、位相シフト部702、送信リタイミング部721、送信電力増幅部703、受信電力増幅部704、受信周波数変換部705、LPF部706a及び706b、AD変換部707a及び707b、位相逆シフト部708、相関部709、遅延調整部753、及びセンサ部710を備えている。
【0125】
制御信号発生部701は、所定時間毎のタイミング信号を生成する。制御信号発生部701からのタイミング信号は、位相シフト部702に供給されると共に、遅延調整部753を介して位相逆シフト部708及び相関部709に供給される。なお、所定時間については後述する。
遅延調整部753は、制御信号発生部701から入力されたタイミング信号に対して、送信信号に対する受信信号の遅延時間に応じた所定の時間だけ遅延させ、遅延させたタイミング信号を位相逆シフト部708及び相関部709に供給する。
【0126】
位相シフト部702、送信リタイミング部721、送信電力増幅部703は、送信部751を構成している。位相シフト部702は、分周部731と選択部732とから構成される。受信電力増幅部704、受信周波数変換部705、LPF部706a及び706b、AD変換部707a及び707b、位相逆シフト部708、相関部709は、受信部752を構成している。センサ部710は、SAWデバイス711を有している。なお、SAWデバイス711の構成は、SAWデバイス111と同様であってもよい。
位相シフト部702は、4相の信号の何れかをローカル信号として受信周波数変換部705に供給する。
なお、本実施形態においても、位相シフトは、3相以上であればよく、5相以上であってもよい。この場合、位相シフト部702は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相シフトし、位相逆シフト部708は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相を逆シフトする。
【0127】
また、受信周波数変換部705に供給されるローカル信号は、上述した分周部731によって分周された信号であってもよく、外部からの信号であってもよい。また、ローカル信号の位相は0相でなくてもよく、位相シフト部702から出力される受信ローカル信号を位相シフトしてもよい。
【0128】
本実施形態では、受信周波数変換部705として、直交復調器が用いられている。このため、受信周波数変換部705において、Iチャネルの信号とQチャネルの信号とが復調される。受信周波数変換部705で復調されたIチャネル及びQチャネルの信号は、AD変換部707a及び707bでアナログ信号からデジタル信号に変換され、位相逆シフト部708に供給される。位相逆シフト部708では、図15に示すような操作が行われる。そして、相関部709では、次式(21)に示すような演算により、Iチャネル及びQチャネルの複素信号が生成される。なお、分周部731から出力される4相の信号は、式(6)と同じである。
【0129】
【数21】
【0130】
式(21)から分かるように、本実施形態では、Iチャネル及びQチャネルの複素信号それぞれが、2cos(φ)及び2sin(φ)として求められる。受信周波数変換部に直交復調部を用いない場合のIチャネル及びQチャネルの複素信号は、式(6)に示したようになる。式(6)と式(19)を比べて分かるように信号レベルを2倍にできるので、本実施形態の構成によれば、Iチャネル及びQチャネルの複素信号それぞれのS/N比を3dB向上させることができる。他の構成については、前述の第5実施形態と同様である。
【0131】
<第8実施形態>
次に、本実施形態について説明する。図15は、本実施形態に係る送受信装置800の概略構成を示すブロック図である。図15に示すように、本実施形態に係る送受信装置800は、制御信号発生部801、位相シフト部802、送信リタイミング部821、送信周波数変換部841、DA(Digital−To−Analog;デジタル信号−アナログ信号)変換部842a及び842b、送信電力増幅部803、受信電力増幅部804、受信周波数変換部805、LPF部806、AD変換部807、位相逆シフト部808、相関部809、遅延調整部853、及びセンサ部810を備えている。
【0132】
制御信号発生部801は、所定時間毎のタイミング信号を生成する。制御信号発生部801からのタイミング信号は、位相シフト部802に供給されると共に、遅延調整部853を介して位相逆シフト部808及び相関部809に供給される。なお、所定時間については後述する。
遅延調整部853は、制御信号発生部801から入力されたタイミング信号に対して、送信信号に対する受信信号の遅延時間に応じた所定の時間だけ遅延させ、遅延させたタイミング信号を位相逆シフト部808及び相関部809に供給する。
【0133】
位相シフト部802、送信リタイミング部821、送信周波数変換部841,DA変換部842a、842b、送信電力増幅部803は、送信部851を構成している。受信電力増幅部804、受信周波数変換部805、AD変換部807、位相逆シフト部808、相関部809は、受信部852を構成している。センサ部810は、SAWデバイス811を有している。なお、SAWデバイス811の構成は、SAWデバイス111と同様であってもよい。
【0134】
位相シフト部802には、入力信号として、送受信周波数の4倍の信号がローカル信号として供給される。位相シフト部802は、分周部831と切り替え部832とから構成される。分周部831により、この入力信号が1/4分周され、分周部831からは、(π/2)ずつの位相差を有する4相の信号が出力される。切り替え部832は、各相において、分周部831の出力を切り替える。また、位相シフト部802は、4相の信号の何れかをローカル信号に基づく信号として受信周波数変換部805に供給する。
なお、本実施形態においても、位相シフトは、3相以上であればよく、5相以上であってもよい。この場合、位相シフト部802は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相シフトし、位相逆シフト部808は、2πをn等分(nは3以上)したn相に位相を逆シフトする。
【0135】
送信リタイミング部821は、4つのエッジトリガ型のフリップフロップ822a〜822dから構成される。送信リタイミング部821により、位相シフト部802からの信号は、ローカル信号でリタイミングされる。送信リタイミング部821からは、0相、π/2相、π相、3π/2相毎に、図16に示すように切り替えられて出力され、送信周波数変換部841に供給される。図16は、実施形態に係る送受信装置における位相シフトの切り替えの説明図である。
【0136】
また、Iチャネル及びQチャネルの入力信号は、DA変換部842a及び842bでデジタル信号からアナログ信号に変換された後、送信周波数変換部841に供給される。
送信周波数変換部841は直交変調器から構成される。送信周波数変換部841により、Iチャネル及びQチャネルの入力信号は、送信リタイミング部821からの信号をキャリアとして、直交変調される。送信周波数変換部841からの信号は、送信電力増幅部803で電力増幅された後、センサ部810に供給される。
【0137】
センサ部810は、SAWデバイス811を有している。このセンサ部810は、SAWデバイス811の溶液滴下による位相変化を検出して、溶液の種類や、溶液中の成分を検出するものである。
【0138】
SAWデバイス811を介された信号は、受信電力増幅部804で増幅された後、受信周波数変換部805に供給される。受信周波数変換部805には、ローカル信号として、分周部831中の1つの信号が供給される。
【0139】
受信周波数変換部805は、受信信号それぞれとローカル信号とを乗算して、周波数変換を行う。受信周波数変換部805の出力信号は、AD変換部807でアナログ信号からデジタル信号に変換された後、位相逆シフト部808に供給される。
また、受信周波数変換部805に供給されるローカル信号は、上述した分周部831によって分周された信号であってもよく、外部からの信号であってもよい。また、ローカル信号の位相は0相でなくてもよく、位相シフト部802から出力される受信ローカル信号を位相シフトしてもよい。
【0140】
位相逆シフト部808は、位相シフト部802での位相シフトと反対に、位相シフトを行う。位相逆シフト部808の出力は、相関部809に供給される。相関部809により、相関演算を行うことで、受信周波数変換部805のDCオフセットをキャンセルし、また、直交誤差は位相シフトおよび位相逆シフトの精度で決まり、受信周波数変換部805では原理的に発生しない。
この第8実施形態では、送信リタイミング部821が信号毎にフリップフロップを有するため、送信信号のタイミングの位相の精度を向上することができる。また、本実施形態では、送信周波数変換部841により、より自己相関特性の鋭い信号に変調を施して送信することができ、センサ部810を経由せずに送信部851から受信部852へ直接リークした信号の影響を、より高度な受信処理で軽減できる。
【0141】
<第9実施形態>
次に、本実施形態について説明する。
図17は、本実施形態に係る反射型のSAWデバイス111Aの概略的な模式図である。なお、図1に示したSAWデバイス111と同じ機能を有する機能部については、同じ符号を用いる。図17(A)は、SAWデバイス111Aの概略的な上面図であり、図17(B)はSAWデバイス111Aを切断面Cから見た概略的な断面図である。
【0142】
SAWデバイス111Aは、圧電素子基板10A、電極11A−1Aa、電極11A−1b、反応領域薄膜12A、反射器22、封止構造14−1、及び封止構造14−2を含んで構成される。なお、電極11A−1a、電極11A−1bを総称してIDT11A−1と呼ぶものとする。
図17に示すように、SAWデバイス111Aは、一方のIDTを無くして代わりに検出領域を挟んで送信用電極に対向する位置に反射器22を設けている。この構成では、1個のIDTを例えば時分割で切り替えることで送信用と受信用とで共用することができる。
【0143】
反応領域薄膜12Aの横方向の長さは、図1に示した送信電極11−1と受信電極11−2を有するトランスバース型のSAWデバイス111の反応領域薄膜12の横方向の長さの1/2である。なお、横方向とは、IDT11A−1から反射器22に向かう方向、IDT11−1からIDT11−2に向かう方向である。
【0144】
反射器22−1はIDT11A−1から送信されたSAWを反射する。この反射器22は、IDT11A−1と反応領域薄膜12を挟んで対向する位置に配置され、例えば、IDT11A−1と同様の電極材を使用するSAWの1波長の1/4の線幅を持ち2分の1波長の間隔で複数整列させた構造を有している。図17に示した例ではSAWを反射する構造物を、電極を用いて電気的に反射する反射器を用いて構成しているが、SAWの反射は機械的反射とすることもできる。例えば、圧電素子基板10Aの端面より弾性表面波を反射することも可能である。すなわち、SAWを反射する手法は、反射器を設置する以外のものであってもよい。
【0145】
図18は、本実施形態に係る送受信装置900の概略構成を示すブロック図である。図18に示すように、本実施形態に係る送受信装置900は、制御信号発生部901、位相シフト部902、送信電力増幅部903、受信電力増幅部904、受信周波数変換部905、LPF部906、AD変換部907、位相逆シフト部908、相関部909、方向性選択部920、遅延調整部953、及びセンサ部910を備えている。なお、第3実施形態において図4を用いて説明した送受信装置300と同様の機能を有する機能部には、同じ符号を用いて説明を省略する。
送受信装置900では、例えば電極11A−1bが接地され、送信電力増幅部903または受信電力増幅部904が方向性選択部920を介してSAWデバイス111Aの電極11A−1aに接続される。
【0146】
制御信号発生部901は、所定時間毎のタイミング信号を生成する。なお、所定時間については後述する。制御信号発生部901からのタイミング信号は、位相シフト部902に供給されると共に、遅延調整部953を介して位相逆シフト部908及び相関部909に供給される。また、制御信号発生部901は、予め定められた時間間隔で送信と受信とを切り替える切替信号を生成し、生成した切替信号を方向性選択部920に供給する。なお、制御信号発生部901は、SAWデバイス111Aに供給する送信波形や、SAWデバイス111Aの遅延特性に応じて、予め定められた時間間隔を決定してもよい。そして、制御信号発生部901は、少なくとも1つの相について受信した信号に含まれる受信波のリーク成分と希望波それぞれが受信される時間差を実測し、実測した結果に応じて予め定められた時間間隔を調整するようにしてもよい。なお、受信波のリーク成分及び希望波については後述する。
【0147】
方向性選択部920は、例えばスイッチであり、第1の端子Txが送信電力増幅部903に接続され、第2の端子がSAWデバイス111Aの電極11に接続され、第3の端子Rxが受信電力増幅部904に接続され、制御端子が制御信号発生部901に接続されている。方向性選択部920は、制御信号発生部901から供給される切替信号に応じて、SAW111Aと送信電力増幅部303とを接続、または、SAW111Aと受信電力増幅部904との接続を切り替える。方向性選択部920は、切替信号に応じて、第1の期間にSAW111Aと送信電力増幅部903とを接続するように切り替える。これにより、第1の期間、送信電力増幅部903からSAW111Aに送信信号が供給される。第1の期間終了後、方向性選択部920は、切替信号に応じて、第2の期間にSAW111Aと受信電力増幅部904とを接続するように切り替える。これにより、第2の期間、受信電力増幅部904には、SAW111Aから受信信号が供給される。なお、方向性選択部920は、例えば、電力分配・合成器、サーキュレータ、方向性結合器等でもよく、そのとき、方向性選択部は制御信号を必要としない。
【0148】
遅延調整部953は、制御信号発生部901から入力されたタイミング信号に対して、送信信号に対する受信信号の遅延時間に応じた所定の時間だけ遅延させ、遅延させたタイミング信号を位相逆シフト部908及び相関部909に供給する。
【0149】
送受信装置900において、SAWデバイス111Aに送信される時分割信号は、式(6)と同様である。そして、受信電力増幅部904の受信信号は、式(7)の4相の信号の時分割信号である。また、LPF部906の出力は、式(8)のような4相の信号の時分割信号である。そして、位相逆シフト部908及び相関部909は、式(9)のように演算を行うことにより、位相シフト部302において行われた位相シフトとは逆の位相シフトを行い、0相のIチャネル及びπ/2相のQチャネルの複素信号を取得する。
【0150】
以上のように、本実施形態の送受信装置900は、第3実施形態で説明した送受信装置300と同様に、受信周波数変換部905として、直交復調器を用いる必要がなく、回路規模を小さくすることができる。また、IチャネルとQチャネルのAD変換部を必要とせず、1つのAD変換部907で、受信信号をデジタル信号に変換できる。
また、本実施形態では、第3実施形態で説明した送受信装置300と同様に、位相逆シフト部908及び相関部909では、式に示したような加減算により、Iチャネル及びQチャネルからなる複素信号を得ることができ、乗算器が不要である。また、この場合には、受信周波数変換部905におけるDCオフセットをキャンセルできる。また、直交誤差は位相シフトおよび位相逆シフトの精度で決まり、受信周波数変換部905では原理的に発生しない。
【0151】
なお、本実施形態では、図4に示した送受信装置300において、SAWデバイス311が反射型のSAWデバイス111Aに接続される例を説明したが、これに限られない。SAWデバイス111Aは、送受信装置100(図1)、送受信装置200(図3)、送受信装置400(図5)、送受信装置500(図10)、送受信装置600(図13)、送受信装置700(図14)、送受信装置800(図15)のSAWデバイスに変えて接続するようにしてもよい。この場合、送受信装置900で説明したように、各送受信装置は、方向性選択部と遅延調整部を備えるようにしてもよい。
【0152】
<送信側で2相の位相シフトする場合のタイミングの説明>
上述した各実施形態において、制御信号発生部がタイミング信号を生成する所定時間について説明する。
まず、送信側で2相の位相シフトする場合の各信号のタイミングについて説明する。図19は、送信側または受信側で信号に対して2相の位相シフトする場合のタイミングを説明する図である。
図19(a)は、送信側で信号に対して位相シフトする場合のタイミングを説明する図である。図19(a)に示した例は、2相(n=2)の例である。図19(a)において、横軸は時間である。符号g901は制御信号発生部から位相シフト部への制御信号、符号g902は送信信号、符号g903は受信信号、符号g904はI/Q分離部への制御信号を示している。
【0153】
時刻t101からt103の期間及び時刻t105からt107の期間、符号g901の画像が示すように、位相シフト部への0相を出力する制御信号が入力され、符号g902の画像が示すように、0相の送信信号が送信される。
時刻t103からt105の期間、符号g901の画像が示すように、位相シフト部へπ/2相を出力する制御信号が入力され、符号g902の画像が示すように、π/2相の送信信号が送信される。
【0154】
時刻t102からt104の期間及び時刻t106からt108の期間、符号g903の画像が示すように、0相の受信信号が受信され、符号g904の画像が示すように、I/Q分離部へ0相を出力する制御信号が入力される。
時刻t104からt106の期間、符号g903の画像が示すように、π/2相の受信信号が受信され、符号g904の画像が示すように、I/Q分離部へπ/2相を出力する制御信号が入力される。
なお、図19(a)に示した例は、位相がπ分の例であり、時刻t105以後、時刻t101〜t105と同様のタイミングで制御信号が繰り返して入力される。
【0155】
<受信側で2相の位相シフトする場合のタイミングの説明>
次に、受信側で2相の位相シフトする場合の各信号のタイミングについて説明する。
図19(b)は、送信側で信号に対して位相シフトする場合のタイミングを説明する図である。図19(b)に示した例は、2相(n=2)の例である。図19(b)において、横軸は時間である。符号g911は制御信号発生部から位相シフト部への制御信号、符号g912は受信ローカル信号、符号g913は受信信号、符号g914は制御信号発生部からI/Q分離部への制御信号を示している。
【0156】
時刻t111からt113の期間及び時刻t113からt114の期間、符号g911の画像が示すように、位相シフト部への0相を出力する制御信号が入力され、符号g912の画像が示すように、0相の受信ローカル信号が位相シフト部から受信側に出力される。また、この期間、符号g913の画像が示すように、0相の受信信号が受信され、符号g914の画像が示すように、I/Q分離部へ0相を出力する制御信号が入力される。
時刻t112からt113の期間、符号g911の画像が示すように、位相シフト部へπ/2相を出力する制御信号が入力され、符号g912の画像が示すように、π/2相の受信ローカル信号が位相シフト部から受信側に出力される。また、この期間、符号g914の画像が示すように、π/2相の受信信号が受信され、符号g914の画像が示すように、I/Q分離部へπ/2相を出力する制御信号が入力される。
なお、図19(b)に示した例は、位相がπ分の例であり、時刻t113以後、時刻t111〜t113と同様のタイミングで制御信号が繰り返して入力される。
【0157】
<送信側で4相の位相シフトする場合のタイミングの説明>
次に、送信側で4相の位相シフトする場合の各信号のタイミングについて説明する。図20は、送信側で信号に対して4相の位相シフトする場合のタイミングを説明する図である。図20において、横軸は時間である。また、符号g923、g924、及びg925において、縦軸は振幅である。
符号g921は制御信号発生部から位相シフト部への制御信号、符号g922は制御信号発生部から方向選択部への制御信号、符号g923は送信信号を示している。また、符号g924は送信信号から直接リークした受信信号、符号g925はSAW遅延による受信信号(希望波)、符号g926は制御信号発生部から位相逆シフト部及び相関部への制御信号を示している。
【0158】
まず、位相シフト部に入力される制御信号のタイミングについて説明する。
符号g921の画像が示すように、時刻t201からt204の期間及び時刻t213からt216の期間には、0相を出力する制御信号が入力され、時刻t204からt207の期間には、π/2相を出力する制御信号が入力される。また、符号g921の画像が示すように、時刻t207からt210の期間には、π相を出力する制御信号が入力され、時刻t204からt207の期間には、3π/2相を出力する制御信号が入力される。
【0159】
次に、方向選択部へ入力される制御信号のタイミングと、送信信号の送信タイミングについて説明する。
符号g922の画像が示すように、時刻t201からt202の期間、時刻t204からt205の期間、時刻t207からt208の期間、時刻t210からt211の期間、及び時刻t213からt214の期間には、第1の端子Txに接続させる制御信号が入力される。これにより、上述した各期間には、符号g923の画像が示すように送信信号が送信される。
また、符号g922の画像が示すように、時刻t202からt204の期間、時刻t205からt207の期間、時刻t208からt210の期間、時刻t211からt213の期間、及び時刻t214からt216の期間には、第3の端子Rxに接続させる制御信号が入力される。
【0160】
次に、受信信号が受信されるタイミングと、位相逆シフト部及び相関部に入力される制御信号のタイミングについて説明する。
符号g924の画像が示すように、方向性選択部に第1の端子Txに接続させる制御信号が入力されている各期間、送信信号のリークによる受信信号が受信される。
一方、符号g925の画像が示すように、時刻t203、t206、t209、t212、及びt215のとき、SAW遅延した受信信号として受信される。
取得したい信号は、符号g925の画像に示すSAW遅延した受信信号であるため、このタイミングに合わせて、位相逆シフト部及び相関部へ制御信号が入力される。すなわち、符号g926の画像が示すように、時刻t203からt206の期間には、0相を出力する制御信号が入力され、時刻t206からt209の期間には、π/2相を出力する制御信号が入力される。また、符号g926の画像が示すように、時刻t209からt212の期間には、π相を出力する制御信号が入力され、時刻t212からt215の期間には、3π/2相を出力する制御信号が入力される。
なお、図20に示した例は、位相が2π分の例であり、時刻t213以後、時刻t201と同様のタイミングで制御信号が繰り返して入力される。
【0161】
<受信側で4相の位相シフトする場合のタイミングの説明>
次に、受信側で4相の位相シフトする場合の各信号のタイミングについて説明する。図21は、受信側で信号に対して4相の位相シフトする場合のタイミングを説明する図である。図21において、横軸は時間である。また、符号g933、g934、及びg935において、縦軸は振幅である。
符号g931は制御信号発生部から位相シフト部への制御信号、符号g932は制御信号発生部から方向選択部への制御信号、符号g933は送信信号を示している。また、符号g934は送信信号から直接リークした受信信号、符号g935はSAW遅延による受信信号(希望波)、符号g936は制御信号発生部から位相逆シフト部及び相関部への制御信号を示している。
【0162】
まず、位相シフト部に入力される制御信号のタイミングについて説明する。
符号g931の画像が示すように、時刻t303からt306の期間には、0相を出力する制御信号が入力され、時刻t306からt309の期間には、π/2相を出力する制御信号が入力される。また、符号g931の画像が示すように、時刻t309からt312の期間には、π相を出力する制御信号が入力され、時刻t312からt315の期間には、3π/2相を出力する制御信号が入力される。
【0163】
次に、方向選択部へ入力される制御信号のタイミングと、送信信号の送信タイミングについて説明する。
符号g932の画像が示すように、時刻t301からt302の期間、時刻t304からt305の期間、時刻t307からt308の期間、時刻t310からt311の期間、及び時刻t313からt314の期間には、第1の端子Txに接続させる制御信号が入力される。これにより、上述した各期間には、符号g933の画像が示すように送信信号が送信される。
また、符号g932の画像が示すように、時刻t302からt304の期間、時刻t305からt307の期間、時刻t308からt310の期間、時刻t311からt313の期間、及び時刻t314からt316の期間には、第3の端子Rxに接続させる制御信号が入力される。
【0164】
次に、受信信号が受信されるタイミングと、位相逆シフト部及び相関部に入力される制御信号のタイミングについて説明する。
符号g934の画像が示すように、方向性選択部に第1の端子Txに接続させる制御信号が入力されている各期間、送信信号のリークによる受信信号が受信される。
一方、符号g935の画像が示すように、時刻t303、t306、t309、t312、及びt315のとき、SAW遅延した受信信号として受信される。
取得したい信号は、符号g935の画像に示すSAW遅延した受信信号であるため、このタイミングに合わせて、位相逆シフト部及び相関部へ制御信号が入力される。すなわち、符号g936の画像が示すように、時刻t303からt306の期間には、0相を出力する制御信号が入力され、時刻t306からt309の期間には、π/2相を出力する制御信号が入力される。また、符号g936の画像が示すように、時刻t309からt312の期間には、π相を出力する制御信号が入力され、時刻t312からt315の期間には、3π/2相を出力する制御信号が入力される。
なお、図21に示した例は、位相が2π分の例であり、時刻t315以後、時刻t303と同様のタイミングで制御信号が繰り返して入力される。
【0165】
ここで、SAWデバイス111、111Aについて、さらに説明する。
SAWの伝搬速度は、電波の伝搬速度と比較すれば低速であり、所定の期間で見た場合、信号が変化していない(本発明では、この状態を時不変と定義する)。このようにSAWデバイス111または111Aが時不変であるため、本発明で説明した構成によって、位相をシフトさせ、順次時分割して送信または受信することで、等価的に直交復調動作を実現でき、時分割で複素信号を取得することができる。
【0166】
なお、上述した第1〜第7実施形態では、送信電力増幅部(103、203、303、403、503、603、703、803)が、SAWデバイス(111、211、311、411、511、611、711、811)の送信電極11−1a、送信電極11−1bに接続され、受信電力増幅部(104、204、304、404、504、604、704、804)が、SAWデバイス(111、211、311、411、511、611、711、811)の受信電極11−2a、受信電極11−2bに接続される例を説明したが、これに限られない。送信電力増幅部(103、203、303、403、503、603、703、803)が送信アンテナに接続され、受信電力増幅部(104、204、304、404、504、604、704、804)が受信アンテナに接続されていてもよい。
【0167】
また、送受信装置の一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
さらに、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0168】
さらに、上述した各実施形態では、時分割信号の振幅が一定となっている。
しかし、本発明は、このような時分割信号の振幅が位相毎に異なる所望の値に設定されることにより、QAM変調波に対するセンサ部110の応答に相当する複素信号を得るためにも同様に適用可能である。
また、上述した各実施形態では、センサ部110、210、310,410,510,610、710、810、910は、上記時分割信号に対する応答が位相毎に直列に得られ、あるいは推定されたり模擬されるべき回路や装置であれば、受動回路に限定されず、能動回路で代替されてもよい。
【0169】
さらに、上述した各実施形態は、図2図3図4図5図10図13図14図15図18に示す構成に限定されず、例えば、以下に列記する構成要素は、これらの全てまたは一部も、如何なる組み合わせで併合(一体化)され、あるいは、如何なる形態で機能分散や付加分散が図られてもよい。
(1) センサ部110、210、310、410、510、610、710、810、910
(2) 受信周波数変換部105、205、305、405、505、605、705、805、905
(3) LPF部106、206、306、306a、306b、406、506、606、706a、706b、806、906
(4) AD変換部107、207、307、307a、307b、407、507、607、707a、707b、807、907
(5) 位相逆シフト部308、408、508、608、708、808、908
(6) 相関部309、409、509、609、709、809、909
(7) 受信リタイミング部621
(8) I/Q分離部108、208
【0170】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0171】
100,200,300,400,500,600,700,800,900:送受信装置、
101,201,301,401,301,501,601,701,801,901:制御信号発生部、
102,209,302,412,302,502,602,702,802,902:位相シフト部、
103,203,303,403,303,503,603,703,803,903:送信電力増幅部、
104,204,304,404,304,504,604,704,804,904:受信電力増幅部、
105,205,305,315,321a,321b,405,505,605,705,805,905:受信周波数変換部、
106,206,306,306a,306b,406,506,606,706a,706b,806,906:LPF部、
107,207,307,307a,307b,407,507,607,707a,707b,807,907:AD変換部、
108,208:I/Q分離部、
110,210,310,410,310,510,610,710,810,910:センサ部、
111,111A,211,311,411,311,511,611,711,811:SAWデバイス、
151,251,351,451,351,551,651,751,851,951:送信部、
152,252,352,452,352,552,652,752,852,952:受信部、
153,353,353,553,753,853,953:遅延調整部、
308,408,308,508,608,708,808,908:位相逆シフト部、
309,409,309,509,609,709,809,909:相関部、
521,721,821:送信リタイミング部、
621:受信リタイミング部、
842a,842b:DA変換部、
841:送信周波数変換部、
920:方向性選択部
図1
図2
図3
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図5
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