(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。以下、
図1は、眼鏡レンズ加工装置の加工機構の概略構成図である。
【0009】
眼鏡レンズ加工装置本体1のベース170上にはキャリッジ部100が搭載されている。キャリッジ101が持つレンズチャック軸(レンズ回転軸)102L,102Rに挟持された被加工レンズLEの周縁は、加工具スピンドル(加工具回転軸)161aに同軸に取り付けられた円柱状の砥石群162の各砥石に圧接されて加工される。砥石群162は、プラスチック用の粗砥石163、ヤゲン形成用の溝及び平加工面を持つ仕上げ砥石164、ヤゲン形成用の溝及び平加工面を持つ鏡面砥石165から構成される。加工具スピンドル(本実施形態においては、砥石スピンドル)161aは、モータ160により回転される。これらにより、砥石回転ユニットが構成される。
【0010】
鏡面砥石165は仕上げ砥石164により仕上げ加工されたレンズコバの摺り面に対して、さらに光沢を出し、透明化するために使用される。例えば、仕上げ砥石164の粒度が400番であり、鏡面砥石165の粒度は4000番程度のものが適用される。なお、粗加工具及び仕上げ加工具としては、砥石に限られず、別の加工具(例えば、カッター等)が使用されても良い。また、レンズのコバ面の鏡面加工具としては砥石を用いる構成を例に挙げているが、別の加工具(例えば、カッター等)が使用されても良い。
【0011】
キャリッジ101の左腕101Lにレンズチャック軸102Lが、右腕101Rにレンズチャック軸102Rが、それぞれ回転可能に同軸に保持されている。レンズチャック軸102Rは、右腕101Rに取り付けられたモータ110によりレンズチャック軸102L側に移動される。また、レンズチャック軸102R,102Lは、左腕101Lに取り付けられたモータ120により、ギヤ等の回転伝達機構を介して同期して回転される。これらによりレンズ回転手段(レンズ回転ユニット)が構成される。
【0012】
キャリッジ101は、X軸方向に延びるシャフト103,104に沿って移動可能な支基140に搭載され、モータ145の回転によりX軸方向(レンズチャック軸の軸方向)に直線移動される。これらによりX軸方向移動手段が構成される。また、支基140には、Y軸方向(レンズチャック軸102L、102Rと砥石スピンドル161aの軸間距離が変動される方向)に延びるシャフト156,157が固定されている。キャリッジ101はシャフト156,157に沿ってY軸方向に移動可能に支基140に搭載されている。支基140にはY軸移動用モータ150が固定されている。モータ150の回転はY軸方向に延びるボールネジ155に伝達され、ボールネジ155の回転によりキャリッジ101はY軸方向に移動される。これらにより、Y軸方向移動手段(軸間距離変動ユニット)が構成される。
【0013】
図1において、キャリッジ101の上方には、レンズコバ位置測定部(レンズコバ位置検知ユニット)200F、200Rが設けられている。レンズコバ位置測定部200Fは、レンズLEの前面に接触される測定子を持ち、レンズコバ位置測定部200RはレンズLEの後面に当接される測定子を持つ。両測定子がそれぞれレンズLEの前面及び後面に接触された状態で、玉型データに基づいてキャリッジ101がY軸方向に移動され、レンズLEが回転されることにより、レンズ周縁加工のためのレンズ前面及びレンズ後面のコバ位置が同時に測定される。レンズコバ位置測定部200F、200Rの構成は、特開2003−145328号公報に記載されたものを使用できる。
【0014】
また、加工装置本体1の手前側に面取り機構部(面取りユニット)300が配置されている。面取り機構部300の詳細は略すが、面取り機構部300は、モータにより回転される加工具回転軸を備え、加工具回転軸にはレンズ前面及びレンズ後面用の仕上げ面取り砥石及び鏡面面取り砥石が取り付けられている。面取り機構部300の加工具回転軸は、面取り加工時に退避位置から所定の加工位置に移動される。
【0015】
<制御部>
図2は、眼鏡レンズ加工装置1に関する制御ブロック図である。制御部50には、不揮発性メモリ(記憶手段)51、キャリッジ部100、レンズコバ位置測定部200F、200R、面取り機構部300、ディスプレイ5、等が接続されている。
【0016】
例えば、制御部50は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。制御部50のCPUは、各部及び各ユニットの駆動手段(例えば、各モータ110,120,145,150,160)等、装置全体の制御を司る。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部50のROMには、装置全体の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。なお、制御部50は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。不揮発性メモリ(記憶手段)51は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、レンズ周縁加工装置1に着脱可能に装着されるUSBメモリ等を不揮発性メモリ(メモリ)51として使用することができる。
【0017】
例えば、本実施形態において、ディスプレイ5は、タッチパネル式のディスプレイが用いられる。なお、ディスプレイ5がタッチパネルである場合に、ディスプレイ5が操作部(操作ユニット)として機能する。この場合、制御部50はディスプレイ5が持つタッチパネル機能により入力信号を受け、ディスプレイ5の図形及び情報の表示等を制御する。もちろん、眼鏡レンズ加工装置1に操作部が設けられる構成としてもよい。この場合、例えば、操作部には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかを用いればよい。なお、本実施形態においては、ディスプレイ5が操作部として機能する構成を例に挙げて説明する。
【0018】
また、本実施形態において、眼鏡レンズ加工装置1は、眼鏡枠形状測定装置2(例えば、特開2012−185490号公報参照)と接続されている。レンズ周縁加工装置1は、眼鏡枠形状測定装置2によって取得された各種データを受信する(詳細は後述する)。もちろん、眼鏡レンズ加工装置1と眼鏡枠形状測定装置2は、一体的に構成されていてもよい。この場合、例えば、眼鏡枠形状測定装置2の測定機構が眼鏡レンズ装置1に設けられる。
【0019】
例えば、本実施形態において、メモリ51には、粗加工、仕上げ加工及び鏡面加工の各加工段階におけるレンズ回転速度及び砥石回転速度の条件が記憶されている。
【0020】
また、例えば、本実施形態において、種々の品質(仕上がり状態)の鏡面加工を行うために、眼鏡レンズの鏡面の透明度を設定するための機能として、鏡面加工モードが設けられている。例えば、本実施形態において、眼鏡レンズの鏡面が第1の透明度となるように鏡面加工する第1鏡面加工モードと、眼鏡レンズの鏡面が第1の透明度とは異なる第2の透明度となるように鏡面加工する第2鏡面加工モードと、を切り換えて使用することができる。例えば、各鏡面加工モードには、鏡面加工後の仕上がり状態が、鏡面加工モード毎に設定されている透明度となるように、それぞれ加工条件が設定されている。
【0021】
例えば、本実施形態において、第1鏡面加工モードにおいては、透明度が高い鏡面加工を行うことができる。すなわち、第1鏡面加工モードを設定して、鏡面加工を行った場合には、鏡面加工後における鏡面加工面の仕上がり状態が透明な状態となる。また、例えば、第2鏡面加工モードにおいては、透明度が低い鏡面加工を行うことができる。すなわち、第2鏡面加工モードを設定して、鏡面加工を行った場合には、鏡面加工後における鏡面加工面の仕上がり状態が曇っている状態となる。
【0022】
例えば、メモリ51には、第1鏡面加工モードとして、第1の透明度となるように鏡面加工を行うための、レンズ回転手段(レンズ回転速度)及び砥石回転手段(砥石回転速度)の少なくとも一方の回転速度が加工条件として記憶されている。すなわち、第1鏡面加工モードの加工条件として、第1の透明度となるように鏡面加工を行うための、レンズ回転速度及び砥石回転速度の少なくとも一方がメモリ51に記憶されている。また、例えば、メモリ51には、第2鏡面加工モードとして、第2の透明度となるように鏡面加工を行うための、レンズ回転手段(レンズ回転速度)及び砥石回転手段(砥石回転速度)の少なくとも一方の回転速度が加工条件として記憶されている。すなわち、第2鏡面加工モードの加工条件として、第2の透明度となるように鏡面加工を行うための、レンズ回転速度及び砥石回転速度の少なくとも一方がメモリ51に記憶されている。なお、本実施形態においては、レンズ回転手段及び砥石回転手段の回転速度が加工条件として設定され、記憶されている場合を例に挙げて説明をする。もちろん、上記記載のように、レンズ回転速度及び砥石回転速度の少なくとも一方が加工条件として、鏡面加工モード毎に関連付けされて記憶されている構成であってもよい。
【0023】
例えば、第1鏡面加工モードのように、透明度が高い鏡面加工を行う場合には、砥石の加工性能が高くなるようにする。砥石の加工性能が高い場合、鏡面加工面に対して砥石の性能を十分に発揮した状態での切削を行うことができる。これによって、鏡面加工面は、透明度の高い仕上がり状態となる。また、例えば、第2鏡面加工モードのように、透明度が低い鏡面加工を行う場合には、砥石の加工性能が低くなるようにする。砥石の加工性能が低い場合、鏡面加工面に対して砥石の性能を十分に発揮した状態での切削を行うことができない。これによって、鏡面加工面が荒れた状態となり、鏡面加工面は、透明度の低い仕上がり状態となる。なお、例えば、砥石の加工性能とは、砥石の砥石面が回転する間にレンズを十分な量(加工量)で加工できるか否かの性能を示している。例えば、加工性能が高いとは、砥石にてレンズを十分な量を加工できる(例えば、砥石1回転において、砥石の備える加工量が確保されている)ことを示している。また、加工性能が低いとは、砥石にてレンズを十分な量を加工できない(例えば、砥石1回転において、砥石の備える加工量が確保されていない)ことを示している。
【0024】
例えば、砥石の加工性能を高くするためには、砥石の回転速度を速く(高速)設定する、及び、レンズの回転速度を遅く(低速)設定する、の少なくとも一方を行う。このような設定を行うことで、レンズの所定領域に対して、より多くの砥石面によって加工を行うことができるため、加工性能が高くなる。また、例えば、加工性能を低くするためには、砥石の回転速度を遅く設定する、及び、レンズの回転速度を速く設定する、の少なくとも一方を行う。このような設定を行うことで、レンズの所定領域に対して、複数の砥石面による加工ができなくなり、加工性能が低くなる。
【0025】
本実施形態においては、第1鏡面加工モードの方が第2鏡面加工モードよりも、透明度が高く設定されている。このため、第1鏡面加工モードにおける砥石の回転速度は、第2鏡面加工モードにおける砥石の回転速度よりも高速に設定されている。また、第1鏡面加工モードにおけるレンズの回転速度は、第2鏡面加工モードにおけるレンズの回転速度よりも低速に設定されている。このように、砥石の回転速度とレンズの回転速度が設定されることで、第1鏡面加工モードにおける鏡面加工の透明度は、第2鏡面加工モードの鏡面加工の透明度よりも高くなる。なお、本実施形態においては、第1鏡面加工モードは、第2鏡面加工モードの加工条件に対して、砥石の回転速度を高速に設定するとともに、レンズの回転速度を低速で設定する場合を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、第1鏡面加工モードは、第2鏡面加工モードの加工条件に対して、砥石の回転速度、及び、レンズの回転速度の少なくとも一方が設定される構成であればよい。この場合、レンズと砥石の接触点における移動速度が所定の速度となるように、レンズの回転速度又は砥石の回転速度の一方が調整されればよい。なお、透明度に応じた加工条件の設定は、予め、加工条件を変更させながら透明度を確認していくような、シミュレーション、演算等によって求められる。
【0026】
<制御動作>
以上のような構成を持つ装置の動作を説明する。なお、以下の説明においては、平仕上げ加工及び鏡面加工を行う場合を例に挙げて説明する。例えば、仕上げ加工としては、平仕上げ加工(平加工)、ヤゲン加工、面取り加工等が挙げられる。なお、本実施形態においては、仕上げ加工として、平加工を実施する場合を例に挙げて説明する。本実施形態において、レンズに対して平加工が行われた後に、鏡面加工が行われる。
【0027】
<玉型データの取得>
例えば、玉型データは、眼鏡枠形状測定装置2によって取得される。例えば、眼鏡枠形状測定装置2によって眼鏡フレームを測定することで、レンズ枠の玉型データ(rn,ρn)(n=1,2,3,…,N)が測定される。眼鏡枠形状測定装置2の図示無きデータ送信スイッチを操作することによって、眼鏡形状測定装置2から玉型データを眼鏡レンズ加工装置1に送信し、眼鏡レンズ加工装置1のメモリ51に記憶させる。
【0028】
なお、本実施形態において、玉型データは、眼鏡枠形状測定装置2によって取得される構成を例に挙げたがこれに限定されない。例えば、操作者は、眼鏡フレームに取り付けられたデモレンズを取り外した後、そのデモレンズの輪郭を輪郭読み取り装置等で読み取ることによって、玉型データを測定する構成してもよい。また、本実施形態においては、眼鏡枠形状測定装置2の図示無きデータ送信スイッチが操作されることによって、玉型データが眼鏡枠形状測定装置2から送信される構成としたがこれに限定されない。例えば、操作者が眼鏡レンズ加工装置1のディスプレイ5を操作することによって、玉型データを入力する構成としてもよい。
【0029】
<レイアウトデータの設定>
玉型データが取得されると、制御部50は、玉型データに対するレイアウトデータを設定するためのレイアウトデータ設定画面を表示する。
図3は、レイアウトデータ設定画面の一例を示す図である。例えば、本実施形態において、玉型データである、rnは動径長であり、ρnは動径角を示している。ディスプレイ5の画面500aには、入力された玉型データに基づく玉型図形FTが表示される。装用者の瞳孔間距離(PD値)、眼鏡フレームFの枠中心間距離(FPD値)、玉型の幾何中心FCに対する光学中心OCの高さ等のレイアウトデータが設定可能な状態とされる。例えば、レイアウトデータは、画面500bに表示される所定のタッチキーを操作することにより設定される。例えば、タッチキー510,511,512、513等により、レンズの材質、フレームの種類、加工モード(ヤゲン加工、平仕上げ加工等)の加工条件が設定される。例えば、レンズの材質は、プラスチックレンズ及びポリカーボネイトレンズ等が選択できる。また、例えば、レンズの周縁の仕上げを、鏡面仕上げにするか否かが選択できる。
【0030】
本実施形態において、操作者は、レンズに対して平加工を行った後に、鏡面加工を行うための設定を行う。操作者は、ディスプレイ5の画面を操作して、加工モードとして、平加工モードを設定する。また、操作者は、ディスプレイ5の画面を操作して、鏡面加工を実施するモードに設定する。鏡面加工を行う設定がされると、制御部50は、眼鏡レンズの鏡面の透明度を設定するための機能として、鏡面加工モードを設定するための設定画面を表示する。例えば、本実施形態において、設定画面には、第1鏡面加工モードと、第2鏡面加工モードが切り換え可能(選択可能)に表示される。操作者は、ディスプレイ5の画面を操作して、所望する鏡面加工モードを選択する。操作者によって、鏡面加工モードが選択されると、制御部50は、鏡面加工の際の加工条件を選択された鏡面加工モードに応じた加工条件に切り換える。このようにして、鏡面加工面を、操作者が所望する透明度とするための鏡面加工モードが設定される。
【0031】
なお、本実施形態においては、レンズ周縁加工装置1において、ディスプレイ5を操作することによって、レイアウトデータが設定される構成としたがこれに限定されない。例えば、別の装置やPC(パーソナルコンピュータ)等でレイアウトデータを設定し、レンズ周縁加工装置1(本実施形態においては制御部50)が設定されたレイアウトデータを受信することによって、レイアウトデータを取得する構成であってもよい。
【0032】
<レンズ形状測定>
以上のように、レンズ加工に必要なデータが取得されたら、操作者は、レンズLEをレンズチャック軸102R、102Lにより挟持させる。操作者によって、ディスプレイ5に表示されている図示無き加工スタートスイッチを選択されると、制御部50は、レンズLEの周縁の加工を開始する。
初めに、スタートスイッチが押されると、制御部50は、レンズコバ位置測定部200F、200Rを作動させ、玉型データに基づくレンズ前面及び後面のコバ位置を測定する。レンズのコバ位置測定によって、玉型に対して未加工のレンズLEの径が不足しているか否かが確認される。ヤゲン加工が設定されている場合、レンズ前面及び後面のコバ位置データに基づいて、コバに形成するヤゲン軌跡が演算される。
【0033】
<粗加工>
レンズ形状測定が完了すると、制御部50は、粗加工を開始する。制御部50は、玉型データ及びレイアウトデータに基づいて、レンズLE周縁を粗加工するために、各部材を駆動するための加工制御データ(制御データ)を求める。例えば、レンズLE周縁の粗加工制御データは、最終的な玉型に対して、仕上げ砥石165による仕上げ代(例えば、1.0mm)と鏡面砥石165による鏡面仕上げ代(例えば、0.1mm)を残すように演算される。粗加工制御データが取得されると、制御部50は、X軸移動用モータ145の駆動を制御し、レンズLEを粗砥石163上に位置させる。その後、制御部50は、粗加工制御データに基づいて、レンズLEをモータ120により回転しながら、Y軸移動用モータ150の駆動を制御する。レンズLEの周縁は、レンズLEの複数回の回転により粗加工される。粗加工時のレンズの回転速度は、例えば、8秒/1回転にて設定されている。また、粗加工時の粗砥石163は、粗砥石163の加工性能を充分に活かすように、モータ160が安定して回転可能な最も速い速度に設定されている。本実施形態における眼鏡レンズ加工装置1では、例えば、粗砥石163は6000rpmの回転速度で回転される。なお、本実施形態において、粗加工制御データは、眼鏡レンズ加工装置1によって演算される構成としたがこれに限定されない。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は、別の装置によって演算された、粗加工制御データを受信することによって、粗加工制御データを取得するようにしてもよい。
【0034】
<仕上げ加工(平加工)>
粗加工が完了すると、仕上げ加工(本実施形態においては、平加工)に移行される。制御部50は、玉型データ及びレイアウトデータに基づいて、レンズ周縁を平加工するための平加工制御データを求める。例えば、平加工制御データは、鏡面加工の所定の仕上げ代(0.1mm)を残すように演算される。制御部50は、X軸移動用モータ145の駆動を制御し、レンズLEを仕上げ砥石164の平加工面上に位置させる。その後、平加工制御データに基づき、Y軸移動用モータ150を制御し、仕上げ砥石164により平加工を行う。平加工時も、レンズの回転速度は8秒/1回転にて設定されている。また、仕上げ砥石164の回転速度は、例えば、粗加工時と同様に、モータ160が安定して回転可能な最も速い速度である6000rpmに設定されている。なお、粗加工時及び平加工時のレンズLEの回転速度及び各砥石の回転速度の条件は、メモリ51に予め記憶されている。なお、本実施形態において、平加工制御データは、レンズ周縁加工装置1によって演算される構成としたがこれに限定されない。例えば、レンズ周辺加工装置1は、別の装置によって演算された、平加工制御データを受信することによって、平加工制御データを取得するようにしてもよい。
【0035】
<鏡面加工>
仕上げ加工が完了すると、鏡面加工に移行される。制御部50は、玉型データ及びレイアウトデータに基づいて、レンズ周縁を鏡面加工するための鏡面加工制御データを求める。
図4は、鏡面加工制御について説明する図である。例えば、鏡面加工制御データは、最終形状の玉型データと鏡面砥石165の半径Rとに基づき、レンズLEを微小な回転角θi(i=1,2,3,…,N)毎に回転させ、各回転角θiで玉型が鏡面砥石165の加工面に接するときのレンズチャック軸102R,102Lの中心LOと砥石スピンドル(砥石回転軸)161aの中心DCとの軸間距離YDiを求めることにより演算され、(YDi,θi)(i=1,2,3,…,N)として得られる(
図4参照)。ここでは、仕上げ加工として、平仕上げ加工を例に挙げて説明しているが、仕上げ加工として、ヤゲン加工が設定されている場合の鏡面加工制御データは、さらにヤゲン軌跡データに基づいて、図示無きX軸方向成分の移動データXDi(i=1,2,3,…,N)が加えられ、(YDi,XDi,θi)(i=1,2,3,…,N)として得られる。
制御部50は、X軸移動用モータ145の駆動を制御し、レンズLEを鏡面砥石165の平加工面上に位置させる。その後、鏡面加工の仕上げ代(0.1mm)を研削するように演算された鏡面加工データに基づき、Y軸移動用モータ150を制御し、レンズLEの周縁を鏡面砥石165により鏡面加工する。
【0036】
ここで、本実施形態において、鏡面加工は、レンズの回転速度(レンズ回転手段の回転速度)及び鏡面砥石165の回転速度(砥石回転手段の回転速度)を段階的に変更して行う。例えば、本実施形態においては、第2段階の回転速度の変更によって、鏡面加工が行われる。もちろん、段階的な回転速度変更としては、第2段階の回転速度変更に限定されない。少なくとも回転速度が変更される各段階の内の最終段階において、鏡面加工モード毎に設定された加工条件によって、鏡面加工が行われる構成であればよい。
【0037】
本実施形態において、例えば、第1段階においては、主に、鏡面加工代(0.1mm)の大部分を効率的に研削するように設定されたレンズ回転速度と砥石回転速度により各モータ120及び160の駆動が制御される。なお、第1段階における加工条件は、メモリ51に記憶されている。すなわち、第1段階の鏡面加工を行う際、制御部50は、メモリ51より、第1段階の鏡面加工に応じた加工条件を取得し、取得した加工条件に基づいて、各モータ120及び160の駆動を制御する。例えば、第2段階においては、鏡面加工モード毎に設定された加工条件(レンズ回転速度と砥石回転速度)に基づいて、各モータ120及び160の駆動が制御される。すなわち、制御部50は、メモリ51より、鏡面加工モードに応じた加工条件を取得し、取得した加工条件に基づいて、各モータ120及び160の駆動を制御する。
【0038】
例えば、第1段階における加工条件は、鏡面砥石(例えば、粒度が4000番)165で、レンズLEの被加工面に焼けを生じさせずに、加工効率が高くなるように設定された条件である。例えば、砥石回転速度が2000rpmであり、レンズ回転速度が15秒/1回転である。この第1段階の加工条件にて、レンズLEが回転されることにより、鏡面加工代(0.1mm)の大部分が研削される。もちろん、砥石回転速度及びレンズ回転速度はこれに限定されない。種々の回転速度を設定することができる。
【0039】
また、第2段階では、設定された鏡面加工モードに応じた加工条件にレンズ回転速度と砥石回転速度が変更されて鏡面加工が行われる。例えば、第1鏡面加工モードに設定されていた場合、加工条件としては、レンズ回転速度を15秒/1回転、砥石回転速度を3000rpmとされている。また、例えば、第2鏡面加工モードに設定されていた場合、レンズ回転速度を5秒/1回転、砥石回転速度を300prmとされている。なお、例えば、第1段階から第2段階のレンズ回転速度及び砥石回転速度に変更される際、急激な変更が難しい場合には、レンズの1/2又は1/4回転で、速度が徐々に変えられる変遷領域として設けておけば良い。なお、第1鏡面加工モード及び第2鏡面加工モードにおける砥石回転速度及びレンズ回転速度はこれに限定されない。種々の回転速度を設定することができる。
【0040】
以上のように、例えば、設定された透明度に応じた加工条件に基づいて鏡面加工を行うことによって、透明度の異なる鏡面加工が可能となり、種々の品質(仕上がり状態)の鏡面加工を提供することができる。これによって、加工者は、目的に応じて、眼鏡レンズにおける鏡面の仕上がり変更することができ、所望する鏡面加工を行うことができる。また、例えば、透明度毎に鏡面加工モードを設け、鏡面加工モードの切り換えによって、透明度が設定できる構成とすることによって、操作者は、複雑な操作が必要なく、容易に透明度の設定を行うことができる。また、例えば、レンズ回転手段と砥石回転手段の少なくとも一方の制御によって、鏡面加工を行うことによって、複雑な制御や構成が必要なく、容易に鏡面加工における透明度の調整を行うことができる。
【0041】
<変容例>
なお、本実施形態において、鏡面加工の制御を行う際に、鏡面砥石165とレンズLEとの接触点Piの移動速度が、略一定となるように、玉型データ、鏡面砥石165の半径R、レンズ回転速度及び砥石回転速度に基づいて、回転角θi毎のレンズ回転速度及び砥石回転速度が演算され、モータ120及び160の駆動が制御されるようにしてもよい。これによって、鏡面砥石165とレンズLEとの摩擦等よって生じる接触点Piの移動速度の変化を抑制することができるため、設定した加工条件にて均一に鏡面加工を行うことができる。これによって、より鏡面の品質を向上させることができる。このような制御は、特に、玉型が円形で無い場合等に有用である。
【0042】
なお、例えば、接触点Pi(
図4参照)の移動速度を略一定とする回転角θi毎の回転速度データは、次のように求めることができる。まず、レンズ回転速度に基づいて、レンズの回転角θi(i=1,2,3,…,N)毎の回転速度を等速とした場合の平均速度を求める。また、レンズLEの最終形状である玉型データに基づいてレンズの全周の周長を求め、回転角θiのトータル分割数に基づいて回転角θiの平均移動距離を求める。平均移動距離に対して、回転角θi毎に隣合う接触点Pi間の移動距離の変化率を求める。なお、回転角θi毎の接触点Piの位置は、玉型データと鏡面砥石の半径Rとに基づき、周知の方法で求めることができる。そして、求めた変化率に応じて、各回転角θiでの平均速度を変化させることにより、各回転角θiでの回転速度を決定する。ただし、各回転角θiで回転速度を急激に変化できないところでは、徐々に回転速度を変化させる。このようにして、鏡面砥石165とレンズLEとの接触点Piの移動速度が、略一定となるような回転速度データを求めることができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、段階的に加工条件が変更されて、鏡面加工が行われる場合を例に挙げて説明したがこれに限定されない。鏡面加工モード毎に設定された加工条件にて、鏡面加工の初期段階から加工を行うようにしてもよい。
【0044】
なお、本実施形態においては、鏡面加工モードとして、第1鏡面加工モードと、第2鏡面加工モードと、を切り換えて用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。鏡面加工モードの構成としては、少なくとも透明度の異なる2つ以上の鏡面加工モードが設けられる構成であればよい。例えば、眼鏡レンズの鏡面が第1の透明度と及び第2の透明度と異なる第3の透明度となるように鏡面加工する第3鏡面加工モードを、第1鏡面加工モードと、第2鏡面加工モードと、の他に、さらに設ける構成してもよい。そして、これらの鏡面加工モードを切り換えることで、透明度の異なる鏡面加工を行う。この場合は、第1鏡面加工モードと、第2鏡面加工モードと、第3鏡面加工モードと、を切り換えることで、3つの透明度の異なる鏡面加工を行うことができる。このような構成とすることによって、より多くの透明度の異なる鏡面加工を行うことが可能となり、仕上がり状態の異なる鏡面を提供することができる。
【0045】
なお、本実施形態においては、鏡面砥石を用いて、鏡面加工を行う場合を例に挙げて説明したがこれに限定されない。鏡面加工用の砥石とは異なる砥石によって鏡面加工を行う構成としてもよい。例えば、仕上げ砥石によって鏡面加工を行う構成としてもよい。
【0046】
なお、本実施形態においては、レンズ回転手段及び砥石回転手段の少なくとも一方を制御することによって、鏡面加工の透明度を調整する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、鏡面加工の透明度を変更させるために、透明度に応じた砥石を設けて、鏡面加工を行うようにしてもよい。例えば、粒度が4000番の鏡面砥石と、粒度が6000番の砥石をそれぞれ設け、鏡面加工を行う際に切り換えて使用をするようにしてもよい。
【0047】
なお、本実施形態において、操作者によって、ディスプレイ5の画面が操作され、モードが選択される構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。所定の条件に基づいて、モードを切り換える構成としてもよい。例えば、眼鏡情報(例えば、レンズの種類、フレームの種類、設定された加工の種類等)に基づいて、制御部50が、適切な鏡面加工モードに切り換えを行い、鏡面加工の透明度を設定する構成としてもよい。また、例えば、制御部50は、眼鏡情報に基づいて、適切なモードに誘導するためのガイド情報を表示する構成としてもよい。この場合、操作者は、ガイド情報を確認して、適切な鏡面加工モードを選択することができる。
【0048】
なお、本実施形態において、鏡面の透明度を設定する手段として、モード切換手段による透明度の設定を例に挙げて説明したがこれに限定されない。自動的に透明度が設定される構成、及び、操作者による操作によって透明度が設定される構成、であればよい。例えば、操作者による操作によって透明度が設定される構成としては、操作者がパラメータを直接入力することによって鏡面加工の透明度を設定する構成、操作者が透明度のパラメータを変更可能なカーソル等を操作することによって鏡面加工の透明度を設定する構成、等が挙げられる。また、例えば、自動的に透明度が設定される構成としては、制御部50が、眼鏡情報(例えば、レンズの種類、フレームの種類、設定された加工の種類等)に基づいて、透明度を設定する構成等が挙げられる。この場合、予め、眼鏡情報と透明度が関連付けされているとよい。
【0049】
なお、本実施形態に開示の技術は、レンズの周縁の角部を加工する面取り加工後における面取りの面に対して鏡面加工を実施するようにしてもよい。
【0050】
なお、本実施形態においては、所定の透明度となるように鏡面加工を行う構成としたがこれに限定されない。例えば、複数の透明度(少なくとも2つ以上の透明度)をもつように、鏡面加工を行うようにしてもよい。この場合、例えば、眼鏡レンズの鏡面の第1の透明度を設定し、レンズの周縁において、設定した第1の透明度で鏡面加工を行う領域を設定する。また、設定した第1の透明度とは異なる第2の透明度にて、鏡面加工を行う領域を設定する。もちろん、第1の透明度が設定されると、残りの領域が自動的に第2の透明度で鏡面加工を行うように設定されてもよい。また、少なくとも2つ以上の透明度(例えば、第1の透明度、第2の透明度、第3の透明度の3つの透明度等)で設定できるようにしてもよい。そして、鏡面加工を行う際に、設定された領域毎に鏡面加工制御をして種々の透明度の鏡面加工を行うようにする構成が挙げられる。