(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6478633
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】エレベータシステム付属設備および付属設備を制御するサーバ
(51)【国際特許分類】
B66B 1/16 20060101AFI20190225BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
B66B1/16 L
B66B3/00 G
【請求項の数】23
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-520171(P2014-520171)
(86)(22)【出願日】2011年7月15日
(65)【公表番号】特表2014-520736(P2014-520736A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】US2011044143
(87)【国際公開番号】WO2013012406
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2014年3月11日
【審判番号】不服2017-10496(P2017-10496/J1)
【審判請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン,アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】坂井 修
(72)【発明者】
【氏名】セントルイス,ボードレール
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー,ジャンナ エー.
【合議体】
【審判長】
金澤 俊郎
【審判官】
鈴木 充
【審判官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−184777(JP,A)
【文献】
特開2008−50112(JP,A)
【文献】
特開2009−223793(JP,A)
【文献】
特開平10−182025(JP,A)
【文献】
特表2003−531792(JP,A)
【文献】
特開2009−143687(JP,A)
【文献】
特開2006−327810(JP,A)
【文献】
特開2006−321604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/16
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ乗客が少なくともエレベータサービス要求を指示するように入力を行うことを可能にするように、かつ少なくともエレベータサービス情報をエレベータ乗客に通信するように構成された複数のエレベータシステム乗客インターフェース装置付属設備と、
複数の乗客インターフェース装置付属設備と通信するサーバと、
を備える、エレベータ乗客と通信するシステムであって、
サーバは、乗客インターフェース装置付属設備のいずれかで入力があったかを判断するように構成され、
サーバは、入力の意味を判断するように構成され、
サーバは、対応する乗客インターフェース装置付属設備で提供する出力を判断し、判断された出力を対応する乗客インターフェース装置付属設備に通信するように構成され、判断された出力は、判断された入力の意味に応答し、
乗客インターフェース装置付属設備は、乗客インターフェース装置として機能し、建物内に配置され、複数の個人が使用するためにその建物内に留まる、エレベータシステムの付属設備であり、
乗客インターフェース装置において乗客の入力の意味を判断する処理がなく、
サーバは、対応する乗客インターフェース装置付属設備における入力のタイプを判断し、それに応答して、対応する乗客インターフェース装置付属設備にフィードバックを提供するように構成され、それに応答して、対応する乗客インターフェース装置付属設備は、乗客インターフェース装置付属設備において入力についてのフィードバックを提供することを特徴とする、エレベータ乗客と通信するシステム。
【請求項2】
サーバは、各乗客インターフェース装置付属設備の仮想インスタンスを維持するように構成され、
各乗客インターフェース装置付属設備の仮想インスタンスは、対応する乗客インターフェース装置付属設備におけるどのような入力の指示も提供するように構成され、
サーバは、対応する仮想インスタンスによって提供される指示から対応する乗客インターフェース装置付属設備における入力を判断することを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
各仮想インスタンスは、対応する乗客インターフェース装置付属設備の現在の状態の情報を提供することを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項4】
各乗客インターフェース装置付属設備は、
対応する乗客インターフェース装置付属設備における入力に応答してサーバに指示を提供し、指示は、サーバが入力の意味を判断することを可能にする情報をサーバに提供し、
サーバからの判断された出力に応答して乗客インターフェース装置付属設備によって提供される出力を制御する、
ように構成された装置アプリケーションを備えることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
入力は、対応する乗客インターフェース装置付属設備の入力部との接触を含み、フィードバックは、接触に対応する目に見える出力または耳に聞こえる出力のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
対応する乗客インターフェース装置付属設備の入力部は、タッチスクリーンを含み、入力は、タッチスクリーンの領域との接触を含み、フィードバックは、少なくともタッチスクリーンの領域における外観の変更を含むことを特徴とする請求項5記載のシステム。
【請求項7】
フィードバックは、タッチスクリーンの領域との接触に対応する耳に聞こえる出力を含むことを特徴とする請求項6記載のシステム。
【請求項8】
システムは、予め決められた内容を有する複数のファイルを備えており、ファイルは、サーバによってアクセス可能であり、サーバは、判断された入力の意味に応答して判断された出力としてファイルのうちの1つを選択することを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項9】
判断された出力は、目に見える内容を含み、選択された1つのファイルは、対応する乗客インターフェース装置付属設備の出力部に表示されるJPEGフォーマットファイルから成ることを特徴とする請求項8記載のシステム。
【請求項10】
判断された出力は、耳に聞こえる内容を含み、選択された1つのファイルは、対応する乗客インターフェース装置付属設備の出力部で再生される.wavフォーマットファイルから成ることを特徴とする請求項8記載のシステム。
【請求項11】
システムは、エレベータ制御装置を備えており、
サーバは、判断された入力の意味が乗客のエレベータサービス要求に相当する場合に入力の指示をエレベータ制御装置に提供するように構成され、
サーバは、エレベータ制御装置から乗客のエレベータサービス要求に対応するエレベータシステムサービス作動についての指示を受け取るように構成され、対応する乗客インターフェース装置付属設備に提供される判断された出力は、乗客のエレベータサービス要求に対応するエレベータシステムサービス作動についての情報を提供することを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項12】
乗客インターフェース装置付属設備はそれぞれ、エレベータ乗客がエレベータかごに乗車する前にエレベータ乗客が所望の行先を指示することが可能になるように構成された行先入力装置を備えることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項13】
複数のエレベータシステム乗客インターフェース装置付属設備のうちの1つでエレベータ乗客入力を受け取り、
受け取られた入力の指示を、複数の乗客インターフェース装置付属設備と通信するサーバに通信し、
サーバにおいて、入力の意味を判断し、
サーバにおいて、対応する乗客インターフェース装置付属設備で提供する出力を判断し、判断された出力は、判断された入力の意味に応答し、
判断された出力をサーバから対応する乗客インターフェース装置付属設備に通信し、
判断された出力を乗客インターフェース装置付属設備で乗客に提供する、
ことを含み、
乗客インターフェース装置付属設備は、乗客インターフェース装置として機能し、建物内に配置され、複数の個人が使用するためにその建物内に留まる、エレベータシステムの付属設備であり、
乗客インターフェース装置において乗客の入力の意味を判断する処理がなく、
対応する乗客インターフェース装置付属設備における入力のタイプを判断し、
それに応答して、サーバから対応する乗客インターフェース装置付属設備にフィードバックを提供し、
提供されたフィードバックに応答して乗客インターフェース装置付属設備において入力についてのフィードバックを提供する、
ことを含むことを特徴とする、エレベータ乗客と通信する方法。
【請求項14】
サーバにおいて、各乗客インターフェース装置付属設備の仮想インスタンスを維持し、
受け取られた入力の指示をサーバに提供するように、対応する乗客インターフェース装置付属設備の仮想インスタンスを使用し、
対応する乗客インターフェース装置付属設備の仮想インスタンスによって提供される指示から受け取られた入力の意味を判断する、
ことを含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
対応する乗客インターフェース装置付属設備の現在の状態の情報を、対応する乗客インターフェース装置付属設備の仮想インスタンスからサーバに提供することを含むことを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
入力は、対応する乗客インターフェース装置付属設備の入力部との接触を含み、フィードバックは、接触に対応する目に見える出力または耳に聞こえる出力のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項17】
対応する乗客インターフェース装置付属設備の入力部は、タッチスクリーンを含み、入力は、タッチスクリーンの領域との接触を含み、フィードバックは、少なくともタッチスクリーンの領域における外観の変更を含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
フィードバックは、タッチスクリーンの領域との接触に対応する耳に聞こえる出力を含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
サーバによって、判断された入力の意味に応答して判断された出力のために予め決められた内容を有する複数のファイルのうちの1つを選択することを含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項20】
判断された出力は、目に見える内容を含み、選択された1つのファイルは、JPEGフォーマットファイルから成り、方法は、
対応する乗客インターフェース装置付属設備にJPEGフォーマットファイルの内容を表示することを含むことを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
判断された出力は、耳に聞こえる内容を含み、選択された1つのファイルは、.wavフォーマットファイルから成り、方法は、
対応する乗客インターフェース装置付属設備で.wavフォーマットファイルの内容を再生することを含むことを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項22】
判断された入力の意味が乗客のエレベータサービス要求に相当する場合に入力の指示をエレベータ制御装置に提供し、
サーバにおいて、エレベータ制御装置から乗客のエレベータサービス要求に対応するエレベータシステムサービス作動についての指示を受け取り、
乗客のエレベータサービス要求に対応するエレベータシステムサービス作動についての情報を提供するように、判断された出力を対応する乗客インターフェース装置付属設備に提供する、
ことを含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項23】
乗客インターフェース装置付属設備はそれぞれ、エレベータ乗客がエレベータかごに乗車する前にエレベータ乗客が所望の行先を指示することが可能になるように構成された行先入力装置を備えることを特徴とする請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステム付属設備および付属設備を制御するサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムは、乗客が所望のエレベータサービス要求の指示を行うことを可能にするさまざまな種類の付属設備を備える。付属設備はまた、乗客の要求についてのフィードバックを乗客に行う。従来、エレベータシステムの付属設備には、乗場呼びボタンが含まれ、乗場呼びボタンは、乗客が乗場呼びボタンにアクセスする建物の階床から乗客が上方または下方へと運ばれることを要求することを可能にする。かご操作盤もまた従来、エレベータかご内に設けられており、乗客が運ばれて行くことを希望する行先の特定の階床について選択することを可能にする。
【0003】
つい最近、行先入力システムが利用されるようになってきた。このシステムは、乗客がエレベータかごに乗車する前に乗客が特定の行先に運ばれることを要求することを可能にする。行先入力付属設備は一般に、要求を入力する能力を乗客に与え、例えば適切なエレベータかごにそれらを向けるように乗客にフィードバックを行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
技術進歩に伴って、建物の所有者やエレベータの乗客は、より大きな能力をエレベータ付属設備に期待するようになってきた。さらに、技術進歩は、特定の構成のエレベータ付属設備を比較的短期間で時代遅れのように思わせる傾向がある。個々の各付属設備は、適切な最新情報を組み込む必要があるので、エレベータシステム付属設備を更新しようと試みる場合、大きな課題が生じる。多くの行先入力型付属設備のそれぞれは、それ自体のプロセッサや他の構成要素を備えており、これらの装置の大規模な交換が経済的に実行不可能なため、多くの行先入力型付属設備を単純に交換することは、一般に経済的に実行可能ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
エレベータ乗客と通信する例示的なシステムは、エレベータ乗客が少なくともエレベータサービス要求を指示することを可能にするように構成された複数のエレベータ乗客インターフェース装置を備える。インターフェース装置は、少なくともエレベータサービス情報をエレベータ乗客に通信するように構成される。サーバが複数のインターフェース装置と通信する。サーバは、いつインターフェース装置のいずれかで入力があるかを判断するように構成される。サーバは、そのような入力の意味を判断するように構成される。サーバはまた、対応するインターフェース装置で提供する出力を判断し、判断された出力を対応するインターフェース装置に通信するように構成される。判断された出力は、判断された入力の意味に応答する。
【0006】
エレベータ乗客と通信する例示的な方法は、複数のエレベータ乗客インターフェース装置のうちの1つでエレベータ乗客入力を受け取る。受け取られた入力の指示が、複数のインターフェース装置と通信するサーバに通信される。サーバは、入力の意味を判断する。サーバは、対応するインターフェース装置で提供する出力を判断する。判断された出力は、サーバから対応するインターフェース装置に通信され、対応するインターフェース装置は、判断された出力を提供する。
【0007】
開示の実施例のさまざまな特徴および利点は、当業者には以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。詳細な説明に付随する図面は、以下のように簡単に説明され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に従って設計されたエレベータシステムの選択された部分を示す概略図
【
図2】
図1の実施例の選択された特徴を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、エレベータ乗客と通信するのに有用なエレベータシステム20の選択された部分を概略的に示す。複数のエレベータ乗客インターフェース装置22、24、26が、エレベータ乗客がエレベータサービスを要求することを可能にし、そのような要求についての情報をそのような乗客に提供するように、構成される。
図1には3つのインターフェース装置が示されているとはいえ、システム20は、さらに多くのそのような装置を備えることができる。いくつかの実施例では、インターフェース装置は、乗客がエレベータかごに乗車する前に乗客が所望の行先の指示を行うことを可能にする行先入力装置を備える。このような実施例では、インターフェース装置は、エレベータかごの外部に配置される。他の実施例では、インターフェース装置は、エレベータかごの内部に配置される。この説明を考慮すれば、当業者は、彼らの特定の状況の必要を満たすように、さまざまなエレベータシステム付属設備(すなわち、乗客インターフェース装置)を有する開示の実施例の特徴をどのように実現するかを理解するであろう。
【0010】
図示されたインターフェース装置のそれぞれは、入力部30と出力部32とを備える。a、b、nなどの符号が、異なるインターフェース装置の入力部および出力部を区別するために、これらに付随する。入力部30は、乗客がエレベータサービス要求などのエレベータシステムとの乗客の所望の相互作用を指示する入力を行うことを可能にする。乗客の入力は、例えば、手動で(例えば、キーパッドまたはタッチスクリーンを用いて)入力され、証明書ホルダーから読み取られ、または、生体測定スキャンにより取得されることができる。乗客は、インターフェース装置により入手可能な情報の要求などの他の要求を行うことができる。出力部32は、乗客が入力した要求についての情報を乗客に提供する。乗客に提供される情報は、目に見えるもの、耳に聞こえるもの、またはこれらの組み合わせとすることができる。
【0011】
入力部30および出力部32は、
図1に概略的に別々に示されているとはいえ、インターフェース装置の同じ部分が、入力部および出力部として作動することも可能である。例えば、タッチスクリーンは、乗客がエレベータサービスを要求するために触れるものであるとともに、乗客が要求についての情報を受け取るために見るものであるので、入力部30および出力部32として機能することができる。
【0012】
図1の実施例は、複数のインターフェース装置22、24、26と通信するサーバ40を備える。サーバ40は、いくつかの実施例では、100台を超える乗客インターフェース装置と通信することができる。いくつかの実施例では、サーバ40は、何百台ものインターフェース装置と通信することができる。サーバ40は、各インターフェース装置における入力および出力の全てを処理する責任がある。インターフェース装置それら自体は、サーバ40から独立して作動するのに十分な処理能力を有する必要はない。従って、図示の実施例では、どのインターフェース装置においても乗客の入力を取り扱うとともにどのインターフェース装置においても乗客への情報を提供するのに必要とされる処理の全てを、サーバ40の位置に集中させる。
【0013】
いくつかの実施例では、サーバ40は、単一の建物内のインターフェース装置と関連する全ての情報を処理するのに専用される。いくつかの実施例では、サーバ40は、2つ以上の建物内のインターフェース装置についての情報を処理する。
【0014】
図1に概略的に示されるサーバ40とインターフェース装置の間の通信は、ローカルエリアネットワーク、イーサネット接続、無線リンク、または他の高速データ通信ネットワークを通じて行われることができる。サーバ40は、各インターフェース装置の作動を管理する責任があり、従って、対応するインターフェース装置において知覚される上で速やかに乗客の入力に適切に応答するのに十分な帯域幅で高速通信を行うのが望ましい。エレベータ乗客または建物の所有者の要求を満たすことになる結果を実現するように、サーバ40とインターフェース22、24、26の間の十分な通信を可能にするさまざまな既知の高速通信ネットワークがある。
【0015】
サーバ40は、インターフェース装置22、24、26のいずれか1つで何らかの入力があるかを判断するように構成される。入力があった場合、インターフェース装置は、サーバが入力の意味を判断することができるように、その入力の指示をサーバ40に提供する。この実施例では、インターフェース装置において、乗客の入力の意味を判断する処理はない。例えば、インターフェース装置が、一連の選択装置(例えば、キーパッドボタンまたはタッチスクリーン上のボタン表示)を提供する場合、インターフェース装置は、そのような選択装置の乗客の選択についての情報を処理しないが、むしろ、そのような入力についての情報をサーバ40に伝達する。サーバ40は次いで、その入力の意味(例えば、乗客が特定の階床に運ばれることを希望することを指示した)についての判断を行う。
【0016】
エレベータサービスの要求の場合、サーバ40は、既知の仕方で乗客の要求にサービスするようにかごを指定するなどといった適切な判断を行う情報をエレベータ制御装置42に提供する。エレベータ制御装置42は、関連するエレベータシステムがこの乗客の要求にサービスするためにどのように作動するかについての情報をサーバ40に提供する。例えば、エレベータ制御装置42は、この要求に指定されたエレベータかごについての情報をサーバ40に提供する。サーバ40は次いで、乗客の入力が最初に受け取られた対応するインターフェース装置で提供する適切な出力を判断する。この出力を乗客インターフェース装置に提供することで、この装置が次いで所望のやり方で乗客に出力を通信することが可能となる。出力は、例えば、指定されたかごの目に見える指示、指定されたかごの耳に聞こえる指示、または両方とすることができる。
【0017】
一実施例では、サーバ40によってアクセス可能な一組の予め決められた出力を有する複数のファイルが予め格納される。目に見える出力が望まれる場合、予め格納されたファイルは、インターフェース装置と互換性のある選択されたフォーマットを有する。一実施例では、予め格納されたファイルは、対応するインターフェース装置の出力部32に表示される表示情報を含むJPEGフォーマットファイルから成る。既知の.pngおよび.bmpフォーマットを含む他のファイルフォーマットが、目に見える情報のために有用である。予め格納されたイメージまたはビデオファイルを用いることで、乗客の要求やこの要求にエレベータシステムが応答することになるやり方に基づいてサーバ40が表示を生成する必要が解消されて、より速い応答が容易になる。さらに、予め格納されたファイルを用いることで、ファイルに含まれるものを単に表示する以外の、表示を生成するためのどのような処理もインターフェース装置で必要とせずに、インターフェース装置で出力を提供することが可能となる。
【0018】
それ自体のプロセッサを有するインターフェース装置に通信する多くのシステムは、プロセッサに画素データを送信し、次いでプロセッサに依拠して、次いでインターフェース装置で表示するための適切な表示内容を生成する。予め格納されたファイルを用いることで、データ伝送要求を最小限に抑えることが可能となり、いくつかの実施例では、75%と同じだけデータ伝送要求が低減される。従って、そのような実施例では、エレベータシステム内の乗客インターフェース装置を制御する能力が大幅に向上する。いくつかの実施例では、シリアルデータ伝達プロトコルまたはイーサネットプロトコルが、このような情報をインターフェース装置に通信するのに有用である。
【0019】
出力が耳に聞こえる内容を含む場合、予め格納されたファイルは、MP2、MP3または.wavフォーマットを有するものなどのオーディオファイルを含む。このような予め格納されたファイルを用いることで、与えられた状況にどのファイルが適切かをサーバ40が判断し、そのファイルを対応するインターフェース装置に提供することが可能となるとともに、インターフェース装置が、そのファイルのオーディオ内容を生成するどのような処理もインターフェース装置において必要とせずにそのファイルのオーディオ内容を容易に再生することが可能になる。
【0020】
この実施例で乗客インターフェース装置上に予め格納された出力ファイルを用いることでまた、サーバ40とインターフェース装置26の間で必要とされるデータ伝送が最小限に抑えられる。これによって、単一のサーバ40が、多数のインターフェース装置との通信を取り扱うこと、そして、極端に高速な仕方で乗客の入力に応答する情報をインターフェース装置に通信することが可能になる。
【0021】
他の実施例では、予め格納されたビデオ、画像またはオーディオファイルでない出力がサーバ40によってリアルタイムで生成される。このような実施例でさえ、サーバ40は乗客に提供される内容を提供する責任があるので、処理の負担がインターフェース装置に置かれる必要はない。
【0022】
いくつかの実施例では、サーバ40は、建物の所有者または居住者が表示をカスタマイズすることを可能にする。これは、新たなハードウェアの組み込みや既存のハードウェアの変更を必要としない経済的な仕方でインターフェース装置の外観を変更する能力を提供する。実施例の構成によって、表示装置またはサーバ40のソフトウェアを変更せずにインターフェースの外観をカスタマイズすることが可能となる。新たな画像ファイルを提供することで、外観は変更され得る。これによって、エレベータシステムの設計および乗客の知覚に対する従来の制限が克服される。エレベータ付属設備は一般に、カスタマイゼーションが制限されて提供されており、建築家や建物の所有者が所望の外観を実現することを可能にしない。しかしながら、乗客インターフェース装置の外観を制御する開示の実施例の方法では、設計者や建物の所有者には、彼らの希望または必要に従って、さまざまな外観を実現するとともに、時間が経つにつれてそれらを変更する大きな自由がある。例えば、出力は、異なる建物居住者または異なる乗客のために異なる外観を呈するようにカスタマイズされることができる。
【0023】
図2は、例えば、サーバ40がソフトウェアからなるサーバアプリケーション50を備える実施例を概略的に示す。サーバアプリケーション50は、サーバ40によって制御される複数の乗客インターフェース装置に対応する複数の仮想インスタンスを備える。この実施例では、インターフェース装置22の仮想インスタンス52がサーバアプリケーション50によって維持される。仮想インスタンス52は、インターフェース装置22において生じる全てを模擬し、それによって、サーバアプリケーション50およびサーバ40は、インターフェース装置22のステータスを絶えず認識している。例えば、入力がインターフェース装置22で受け取られるときはいつでも、その入力の対応する指示が、仮想インスタンス52において提供される。
【0024】
インターフェース装置24、26それぞれに対応する仮想インスタンス54、56が提供される。サーバ40によって制御されるインターフェース装置に対応する複数の仮想インスタンスを維持することで、インターフェース装置それら自体のハードウェア、ソフトウェアまたはファームウェアのいずれかに対するどのような特別な更新も必要とせずに、サーバアプリケーション50を更新することによってインターフェース装置の機能に対する更新またはアップグレードなどのどのような変更も行うことができる。この実施例では、エレベータに特定的なソフトウェア機能の実行の全てが、サーバアプリケーション50の仮想インスタンス52、54、56において行われる。従って、エレベータ乗客からの情報を処理しまたはエレベータ乗客へ情報を提供する仕方を変更することは、物理的なインターフェース装置に対する変更を必要とせずに、サーバアプリケーション50を更新することによって達成される。これによって、効率的でかつ信頼できる仕方で大量のインターフェース装置を更新することが可能となる。
【0025】
いくつかの実施例では、サーバ40は、異なる種類のインターフェース装置を制御する責任がある。いくつかは、入力部の一部として手動のキーパッドを有することができる。他のいくつかは、入力部の一部としてタッチスクリーンを有することができる。いくつかは、表示スクリーンを有することができ、他方、他のいくつかは、耳に聞こえる出力を提供するスピーカーを有するだけである。サーバアプリケーション50の各仮想インスタンスは、仮想インスタンスが表すインターフェース装置に相当するようにカスタマイズされる。サーバアプリケーション50は、さまざまな種類のインターフェース装置を取り扱うように構成される。
【0026】
図3は、サーバ40によって制御されるインターフェース装置を用いてエレベータ乗客と通信する実施例の方法を要約する流れ
図70である。
図3において、実線の四角形は、サーバ40によって実行される機能を示し、他方、破線で示した四角形は、乗客インターフェース装置における機能を示す。
【0027】
実施例の流れ
図70は、72において、いずれかのインターフェース装置において何らかの入力があるかの判断を含む。これは、例えば、サーバアプリケーション50においていずれかの仮想インスタンスにおけるどのような変更も監視するサーバ40によって達成される。74において、入力がインターフェース装置で受け取られる。その入力の指示がサーバ40に通信され、サーバ40は、76において、入力の意味を判断する。78に示すように、その入力がエレベータサービス要求であるとすれば、その入力の指示がエレベータ制御装置42に通信される。80において、サーバ40は、エレベータサービス要求に応答してエレベータシステム作動についての情報を受け取る。82において、サーバ40は、乗客がサービス要求についてのエレベータシステム作動の何らかの指示を受け取るように、対応するインターフェース装置で提供する出力を判断する。例えば、判断された出力は、意図した行先に運ばれるためにどのエレベータかごに乗客が乗車すべきかの指示を含む。
【0028】
84において、上述したように予め格納されたファイルを備えることができる、サーバ40によって判断された出力は、対応するインターフェース装置に通信される。
図3の86において、適切な出力が、対応するインターフェース装置で提供される。
【0029】
大抵の場合、84における通信は、乗客入力が受け取られたインターフェース装置へのものとなる。しかしながら、例えば、乗客の要求が建物の入口位置で受け取られ、建物のロビーの別の部分に配置された表示装置が、その要求にサービスすることになるエレベータかごについての案内を乗客に提供する場合などでは、別の位置で出力を提供することが可能である。後者の場合、インターフェース装置は、1つの位置にいくつかの構成要素を有し、別の位置に少なくとも1つの他の構成要素を有する。
【0030】
例示的な実施例の別の特徴が90において示されており、そこでは、サーバは、入力に応答して対応するインターフェース装置に更新を提供する。これは、乗客の入力がシステムによって受け取られたことを乗客が理解する経験を有するように、インターフェース装置を制御するのに有用である。例えば、個人が手動のキーパッド上のボタンを押すとき、更新は、個人にボタンが適切に押されたことを通信するカチッとなる音またはチャイムなどの耳に聞こえるフィードバックとすることができる。
【0031】
例えば、インターフェースがタッチスクリーンを備える場合、表示装置の外観は、入力に対応して更新される。例えば、サーバ40は、現在使用されているインターフェース装置に対応する仮想インスタンスによりタッチスクリーンのどの部分が触れられているかを判断する。タッチスクリーンのその部分が階床選択装置ボタンを示しているとすれば、サーバ40は、タッチスクリーンのその部分が個人によって適切に触れられたことを示すようにどのように表示装置が見えるべきかを判断する。例えば、90において提供される更新は、触れられたボタンがあたかもスクリーンに対して内部へと押されたかのようにそのボタンを示す、表示装置スクリーンの異なる外観に相当する。これによって、個人が彼らの意図をエレベータシステムに首尾よく通信したという速やかなフィードバックが彼らに行われる。
【0032】
もちろん、視覚的および聴覚的な効果の組み合わせなどのさらなる更新が提供されることができる。サーバ40は、効果的に速やかに入力に応答して乗客のために表示または再生されるものをインターフェース装置が更新することができるようにその更新がどのようにして提供されることになるかについての判断を行い、対応するインターフェース装置に適切な情報を通信する、システムの部分である。一実施例では、対応するインターフェース装置が92において更新される応答時間は、100ミリ秒以内に生じる。このような高速の応答時間が可能となるのは、サーバ40が、インターフェース装置おいて何が生じたかを判断するためにサーバアプリケーションの仮想インスタンスを使用するとともに、インターフェース装置に提供される更新として予め格納されまたは予めキャッシュに入れられたファイル情報を使用するからである。
【0033】
上記の説明から理解できるように、単一のサーバ装置が、エレベータ乗客との通信を管理する、エレベータシステム内の複数の乗客インターフェース装置を制御するのに、使用されることができる。開示の実施例は、どのような種類の乗客インターフェース装置にも限定されない。さらに、開示の実施例は、インターフェース装置それら自体へのどのような変更も必ずしも必要とせずにインターフェース装置が乗客と相互作用する仕方にどのような更新または変更も行うことを可能にする。
【0034】
さらに、開示の構成を用いると、サーバに接続することができる新しい装置のためにアプリケーションを作成することにより、1つまたは複数のエレベータシステムに乗客インターフェース装置を追加することが、かなり容易になる。これによって、1つのサーバプラットホームを用いて複数の装置プラットホームがサポートされることが可能となる。例えば、適切に構成された可搬装置は、サーバ40と接続することができるアプリケーションを有することができ、サーバ40は、そのような装置が乗客インターフェース装置として機能することをそのような装置が可能にするために、対応する仮想インスタンスを有する。
【0035】
開示の実施例は、より多くの実施例の構成を実現するために交換可能であるさまざまな特徴を有する。すなわち、1つの実施例の1つまたは複数の特徴は、他の開示の実施例の1つまたは複数の特徴と組み合わせて利用されることができる。
【0036】
開示の実施例は、供給業者の競争や装置要求の低減による費用低減、設置者や顧客によるインターフェース装置のカスタマイゼーションの簡単化、新しい装置の統合特徴の簡単さ、および複数の装置プラットホームをサポートする能力を含むさまざまな利点を提供する。
【0037】
上記の説明は、本質的に限定ではなく例示である。本発明の本質から必ずしも逸脱しない、開示の実施例に対する変更および修正が、当業者には明らかとなり得る。本発明に与えられる法的保護範囲は、添付の特許請求の範囲を検討することでのみ決定可能である。