【実施例1】
【0016】
第1 逆流防止弁1の構成
図1は、実施例1に係る逆流防止弁1の断面図である。
図2は、逆流防止弁1の第一環状弁座15を第一フロート9A側から見た図である。
図3は、逆流防止弁1の仕切板7を第一フロート9A側から見た図である。
図4は、逆流防止弁1の第二環状弁座17を第二フロート9B側から見た図である。なお、
図2〜
図4では、説明の便宜上、フロート9A、9Bなどの一部構成の図示を省略する。
【0017】
図1に示すように、この実施例の逆流防止弁1は、建屋の床面2(上流)に発生する排水(流体)を河川や海など(下流)に排出する排水系統中に配設され、下流から床面2に逆流水(流体)が逆流してくるのを防止する(溢水防止)。排水系統は、床面2に形成された凹部H、凹部Hの底面から下方に延びる排水管3等から構成されている。逆流防止弁1は、この排水管3の上端部に配設されている。
【0018】
逆流防止弁1は、本体5、フロート収容部6、仕切板7、支持板8、第一フロート9A、第二フロート9B等を備えている。本体5は、上下方向に貫通した断面が円形状の上流口11を有する内面段付きの円環(穴あき円盤)形状を呈する。また、本体5(フランジ5A)は、溶接4によって凹部Hの底面に固定支持されている。
【0019】
フロート収容部6は、上面を有する円筒部材であり、上流口11と排水管3(下流口19)とを連通する。フロート収容部6は、2つの収容部(第一収容部20、第二収容部21)を有する。各収容部20、21には、フロート9A、9Bが収容される。フロート収容部6は、例えばステンレス鋼等の金属製である。また、フロート収容部6は、上面において4つのネジ12(
図2参照)によって本体5の下面に固定支持される。フロート収容部6の上面は、内面段付きの環状構造を有し、内面段付き部10と本体5の下面とで第一環状弁座15を挟持する。すなわち、フロート収容部6の上面は、弁座押えとして機能し、第一環状弁座15を本体5の下面に押圧固定する。
【0020】
第一環状弁座15は、例えばゴム製であり、
図2に示すように中央に連通開口15Aを有している。環状弁座15は、連通開口15Aを介して、上流口11と第一収容部20とを連通する。
【0021】
仕切板(仕切部材)7は、
図3に示すように円板形状を呈し、フロート収容部6の内部側面に溶接によって固定支持される。仕切板7は、例えばステンレス鋼等の金属製である。仕切板7は、フロート収容部6を第一収容部20及び第二収容部21の2つに仕切る。また、仕切板7は、上面から下面に貫通する複数の連通孔16を有し、連通孔16を介して第一収容部20と第二収容部21とを連通する。連通孔16は、第一フロート9Aによって閉栓されない位置である仕切板7の周面側に形成されている。また、連通孔16は、
図1に示すように、仕切板7の上面から下面に向かう貫通方向(孔方向)が、仕切板7の中心から離間する方向に傾斜している。
【0022】
支持板8は、
図4に示すように環状構造を有し、フロート収容部6の下端の内面に溶接によって固定支持される。支持板8は、上面で環状弁座17を支持する。第二環状弁座17は、弁座押え18によって支持板8に押圧固定される。第二環状弁座17は、例えばゴム製であり、中央に連通開口17Aを有している。第二環状弁座17は、連通開口17Aを介して、上流側の収容部21と下流側の排水管3とを連通する。弁座押え18は、
図4に示すように環状構造を有し、4つのネジ13によって支持板8に固定されている。
【0023】
フロート9A、9Bは、ステンレス鋼等の金属で形成され、
図1に示すように同一の中空の球形状を呈する。フロート9A、9Bは、排水よりも比重が軽く形成され、収容部20、21内(排水系統中)の水位変化に伴って収容部20、21内を上下方向に移動(浮上及び降下)する。第一フロート9Aは、浮上によって連通開口15Aに嵌合し、第一環状弁座15を閉栓する。第二フロート9Bは、降下によって連通開口17Aに嵌合し、第二環状弁座17を閉栓する。
【0024】
第2 フロート9A、9Bの動作
図5(A)は、平常時に上流から下流(順方向)に排水が流れてきた際の逆流防止弁1の動作状態を示す説明図であり、
図5(B)は、逆流時に下流から上流(逆方向)に逆流水が流れてきた際の逆流防止弁1の動作状態を示す説明図である。
図5(A)の点線で示す矢印は、順方向に流れる排水の流れを例示している。また、
図5(B)は、収容部20、21内が逆流水に満たされた状態を示している。
【0025】
平常時においては、排水管3内の水位は、一般的に支持板8の配置位置よりも低いので、排水が生じない場合、フロート9A、9Bは、自重などによって
図1に示すように降下した状態となる。すなわち、第一フロート9Aは、仕切板7に載った(着地した)状態にあり、第二フロート9Bは、連通開口17Aに嵌合した状態である。したがって、第一環状弁座15は開栓され、第二環状弁座17は閉栓される。
【0026】
平常時において、順方向の排水が生じた場合、排水は上流口11及び連通開口15Aを通過して第一収容部20に流入する。その後、排水は、連通孔16を通過して第二収容部21に流入する。第一フロート9Aは、
図5(A)に示すように仕切板7に着地した状態、又は、流入してきた排水の当接等によって動作する状態となる。なお、平常時において、第一収容部20の水位は、基本的に第一フロート9Aが第一環状弁座17を閉栓する程度に上昇しないため、第一フロート9Aは第一環状弁座17を閉栓しない。
【0027】
第二収容部21に流入した排水は、第二フロート9Bが第二環状弁座17を閉栓しているので、第二収容部21内に貯留される。そして、第二収容部21の水位が上昇していくので、第二フロート9Bは、例えば、
図5(A)に示すように下部略半分が水没した状態で浮力によって浮上する。これにより、第二環状弁座17が開栓され、第二収容部21に貯留されていた排水は、連通開口17Aを通過して下流口19に流出し、最終的に河川等に排出される。そして、第二収容部21の水位も低下して第二フロート9Bは再び第二環状弁座17に着座する。これにより、第二環状弁座17は再び閉栓される。このように、第二フロート9Bは、順方向の排水が生じた際に浮上して第二環状弁座17を開栓する。
【0028】
一方、逆流時において、排水管3内の水位は下流側からフロート収容部6に向かって上昇するので、逆流水は、下流口19から第二環状弁座17に到達する。そして、第二フロート9Bは、
図5(B)に示すように、上昇してきた排水に押し上げられる(浮上する)。これにより、第二環状弁座17は開栓され、逆流水が下流口19から連通開口17Aを通過して第二収容部21に流入する。そして、第二収容部21の水位が上昇していくことで、逆流水は、連通孔16を通過して第一収容部20に流入する。
【0029】
逆流水によって第一収容部20の水位が上昇していくことで、第一フロート9Aは、例えば、下部略半分が水没した状態で浮力によって浮上し始める。そして、第一収容部20の水位がさらに上昇していくと、第一フロート9Aは、さらに上昇して
図5(B)に示すように連通開口15Aと嵌合し、第一環状弁座15を閉栓する。
【0030】
これにより、逆流水が第一環状弁座15よりも上流の床面2などに溢れ出すことを確実に防止することができる。なお、フロート9A、9Bは、精密な球形状でなくてもよく、第一環状弁座15及び第二環状弁座17を閉栓できる程度の略球形状であればよい。また、フロート9A、9Bは、同一形状でなくてもよい。
【0031】
第3 連通孔16における排水及び逆流水の動作
図6は、仕切板7の拡大断面図である。連通孔16は、前述したように貫通方向が仕切板7の中心から離間する方向に傾斜している。そのため、平常時の順方向の排水は、連通孔16を通過する際、矢印W1に示すように第二収容部21の内部側面に当接する方向で第二収容部21に流入する。すなわち、排水は、第二フロート9B(第二環状弁座17)から離間する方向で第二収容部21に流入する。したがって、排水は直接的に第二フロート9Bに当接しないので、第二フロート9Bの浮上が、第二収容部21に流入する排水の当接によって妨げられることが防止される。
【0032】
また、逆流時の逆流方向の逆流水は、連通孔16を通過する際、矢印W2に示すように第一フロート9Aに近接する方向で第一収容部20に流入する。これにより、逆流水は、直接的に第一フロート9Aに当接し、第一フロート9Aを上方に押し上げる方向に付勢する。
【0033】
以上のように、上下に連結された2つの収容部20、21のそれぞれにフロート9A、9Bが収容される。排水系統の上流から下流への順方向の排水は、最初に上方の第一収容部20に流入し、その後に下方の第二収容部21に流入する。第二収容部21に収容された第二フロート9Bは、排水によって浮上して第二環状弁座を開栓する。そして、排水は、開栓された第二環状弁座の開口を通過して下流に流出する。上記排水は、第一収容部20に流入することで順方向(鉛直下方)の勢いが低減される。すなわち、第二フロート9Bに到達する前の第一収容部20で排水の順方向の勢いを低減させることができる。したがって、排水による第二フロート9Bの浮上の阻害を低減させることができ、排水効率を向上させることができる。
【0034】
また、前述したように、貫通孔16の貫通方向が仕切板7の中心から離間する方向に傾斜しているので、通常時、第二フロート9Bの浮上が、第二収容部21に流入する排水の当接によって妨げられることを防止できる。したがって、より効率的に排水の排出を行うことができる。さらに、逆流時、逆流水の第一フロート9Aへの当接によって、第一フロート9Aを上方に押し上げる方向に付勢するので、より素早く第一環状弁座15を閉栓することができる。
【実施例5】
【0042】
この実施例は、逆流防止弁が2つの排水管の間に設けられる構成において前述の実施例1と異なる。また、フランジを用いて2つの排水管の間に設けられる構成において前述の実施例3及び実施例4と異なる。この異なる構成について
図10を用いて説明する。その他の構成については実施例1と同様であるため説明は省略する。
【0043】
図10は、この発明の実施例5に係る逆流防止弁103の断面図である。逆流防止弁103の本体52は、上端にフランジ52bを有している。このフランジ52bが排水管32の端部の外周に設けられたフランジ32bにボルト450により固定されることで、逆流防止弁103が排水管32に取り付けられた状態となる。また、本体52の上端には、図示しない上流側の排水管が排水管32と同様にフランジ52bに固定される。
【0044】
[その他の実施例]
前述の各実施例では、仕切板に形成された連通孔の貫通方向が仕切板の中心から離間する方向に傾斜しているが、特にこれに限定されるものではない。第一収容部に流入することで排水の勢いは低減されるので、少なくとも第一収容部と第二収容部との間で流体が移動できる構成であれば、連通孔の貫通方向はいずれであってもよい。例えば、連通孔を
図11(A)〜(D)に示す形状としてもよい。
【0045】
図11(A)に示す連通孔161は、平面視が正方形で仕切板71の中心に形成されている。連通孔161は、正方形の一辺が第一フロートの径よりも短く、また第一フロートが着座した状態であっても隙間が形成される。排水は、上記隙間を通過することができる。
【0046】
図11(B)に示す連通孔162は、貫通方向が上下方向(鉛直方向)の貫通孔162Aと、仕切板72の中心から離間する方向に傾斜した貫通孔162Bとで形成されている。また、
図11(C)に示す連通孔163は、貫通方向が上下方向で仕切板73の円周面に沿って形成されている。これら連通孔162、163によっても、第一収容部からの排水を第二フロート(第二環状弁座)から離間する方向で第二収容部に流入させることができる。なお、連通孔の配置位置及び配置数も前述の実施例に限定されず、流量などを考慮して任意に設定可能である。
【0047】
また、前述の各実施例の仕切板は、上面及び下面が平面であるが、特にこれに限定されるものではない。例えば、
図12に示すような断面が円弧形状の凹部250、251を有する仕切板74であってもよい。凹部250では、降下した第一フロートが着座可能である。また、凹部251では、浮上した第二フロートが着座可能である。
【0048】
さらに、前述の各実施例の仕切板は、降下した第一フロートを支持する状態となるが、第一フロートを支持しなくてもよい。例えば、仕切板の上方に第一フロートを支持する支持部材を別途設けるようにしてもよい。
【0049】
また、前述の各実施例では、仕切板を用いて第一収容部と第二収容部とに仕切っているが、第一収容部と第二収容部とに仕切ることができる仕切部材であれば、いずれの構成であってもよい。