特許第6478699号(P6478699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6478699
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】水中燃焼式気化装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20190225BHJP
   F28D 1/06 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   F17C9/02
   F28D1/06 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-34831(P2015-34831)
(22)【出願日】2015年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-156455(P2016-156455A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 淳司
(72)【発明者】
【氏名】平山 敏弘
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−035057(JP,U)
【文献】 特開平02−093200(JP,A)
【文献】 特開2012−062747(JP,A)
【文献】 実開昭63−121800(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
F28D 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナーに接続されたダウンカマーと、前記ダウンカマーに接続されかつ、前記バーナーからの燃焼ガスを水中に噴出するよう構成されたスパージパイプと、前記スパージパイプの上方に配設されかつ、伝熱管内を通過する低温液化ガスを気化する熱交換器とを含む気化器本体が浸漬されるよう構成された水槽、
前記水槽に連通すると共に、前記水槽と同じ水位となるよう構成された中間槽、
前記中間槽に設けられかつ、前記気化器本体の運転中に、前記水槽の水位を所定の運転時水位以下に維持するよう、前記運転時水位の高さに設けられた越流堰、
前記越流堰を越えて中間槽から流れた水を排出するよう構成された排水路、及び、
前記気化器本体の停止中に、前記水槽の水位を前記運転時水位よりも低い停止時水位に維持するよう、前記停止時水位に対応する高さ位置に配設されかつ、前記越流堰をバイパスして前記中間槽と前記排水路とを連通する水位調整配管を備えている水中燃焼式気化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水中燃焼式気化装置において、
前記水位調整配管は、
前記停止時水位に対応する高さ位置に配置されると共に、下流端が前記排水路に接続された第1配管と、
前記停止時水位よりも低い高さ位置に配置されると共に、上流端が前記中間槽に接続されかつ、下流端が前記第1配管に接続された第2配管と、
下端が前記第1配管における前記停止時水位に対応する高さ位置に接続されかつ、上端が前記停止時水位よりも上方で大気に開放された第3配管と、を備えている水中燃焼式気化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水中燃焼式気化装置において、
前記中間槽、前記排水路及び前記越流堰は、前記水槽に隣接する第2水槽内に設けられ、
前記第2水槽を区画する区画壁には、前記停止時水位よりも低い位置で前記区画壁を貫通しかつ前記排水路に連通する第1連通管と、前記停止時水位よりも低い位置で前記区画壁を貫通しかつ前記中間槽に連通する第2連通管とが埋め込まれており、
前記第1配管は、前記第2水槽の外側で、前記停止時水位に対応する高さ位置に配置されていると共に、前記第1配管の下流端は、前記区画壁の外面に開口する前記第1連通管に接続され、
前記第2配管は、前記第2水槽の外側に配置されて前記第1配管に接続されていると共に、前記第2配管の上流端は、前記区画壁の外面に開口する前記第2連通管に接続されている水中燃焼式気化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、水中燃焼式気化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水中燃焼式気化装置(Submerged Combustion Vaporizer)が記載されている。水中燃焼式気化装置は、液化天然ガスといった低温液化ガスの気化装置の一つである。水中燃焼式気化装置は、バーナーに接続されたダウンカマーと、ダウンカマーに接続されかつ、バーナーからの燃焼ガスを水中に噴出するよう構成されたスパージパイプと、スパージパイプの上方に配設されかつ、伝熱管内を通過する低温液化ガスを気化する熱交換器とを含む気化器本体が、水槽内に浸漬されて構成されている。水中燃焼式気化装置は、水中に気泡として噴出された燃焼ガスによって水槽内の水を撹拌しつつ、伝熱管内を流れる低温液化ガスを加熱することによって、低温液化ガスを気化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−173689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にも記載されているように、水中燃焼式気化装置の運転中は、スパージパイプから大量の気泡が勢いよく噴き出すことによって、水面が盛り上がるようになる。さらに、バーナーの燃焼によって生成される水や、燃焼温度を低減させるために、バーナー内に噴射されるインジェクション水が、水槽内に流入するため、水中燃焼式気化装置の運転中は、水槽内の水量が増えることにもなる。
【0005】
このため、水中燃焼式気化装置には、水槽から水が溢れることを防止する排水構造が設けられている。排水構造は、例えば水槽に連通すると共に、水槽と同じ水位となるよう構成された中間槽と、中間槽に設けられかつ、気化器本体の運転中に、水槽の水位を所定の運転時水位以下に維持するよう、その運転時水位の高さに設けられた越流堰と、越流堰を越えて中間槽から流れた水を排出するよう構成された排水路とを備えて構成されている。この構成の排水構造は、水槽の水位が、越流堰の高さを超えると、中間槽の水が越流堰を越えて排水路に流れて排出される。こうして、水中燃焼式気化装置の運転中に、水槽の水位を所定の運転時水位以下に維持することが可能になる。
【0006】
ところで、水中燃焼式気化装置は、急激な需要増加をカバーするためのエマージェンシー用としても使用されるものであり、起動と停止とが繰り返される。水中燃焼式気化装置の停止中は、スパージパイプ内に水が充填している状態になるが、水中燃焼式気化装置を起動すると、燃焼ガスがスパージパイプに供給されることに共に、内部に充填されていた水がスパージパイプから噴き出す。これにより、水槽の水位は、大きく上昇する。
【0007】
一方で、水中燃焼式気化装置の停止中には、水温を、次の起動に備えて所定温度に維持するために、例えば蒸気が水槽内に導入される。これにより、水中燃焼式気化装置の停止中は、水槽内の水量が次第に増える。水槽の水位は、運転時水位を上限として、上昇する。
【0008】
ここで、水中燃焼式気化装置の停止中に、水槽の水位が運転時水位の近くにまで上昇をしていると、水中燃焼式気化装置を起動するに伴い、前述の通り、水槽の水位が大きく上昇したときに、水位が越流堰を大きく越えることになり、水が排水路から溢れてしまう虞がある。また、排水路の下流側には、酸性となった水槽内の水を中和する処理槽が接続されるが、排水量が増えすぎると、処理槽の処理能力を超えてしまう虞もある。
【0009】
ここに開示する技術はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水中燃焼式気化装置の起動時に、水槽からの排水量が過多になることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
具体的に、ここに開示する技術は、水中燃焼式気化装置に係り、この装置は、バーナーに接続されたダウンカマーと、前記ダウンカマーに接続されかつ、前記バーナーからの燃焼ガスを水中に噴出するよう構成されたスパージパイプと、前記スパージパイプの上方に配設されかつ、伝熱管内を通過する低温液化ガスを気化する熱交換器とを含む気化器本体が浸漬されるよう構成された水槽、前記水槽に連通すると共に、前記水槽と同じ水位となるよう構成された中間槽、前記中間槽に設けられかつ、前記気化器本体の運転中に、前記水槽の水位を所定の運転時水位以下に維持するよう、前記運転時水位の高さに設けられた越流堰、前記越流堰を越えて中間槽から流れた水を排出するよう構成された排水路、及び、前記気化器本体の停止中に、前記水槽の水位を前記運転時水位よりも低い停止時水位に維持するよう、前記停止時水位に対応する高さ位置に配設されかつ、前記越流堰をバイパスして前記中間槽と前記排水路とを連通する水位調整配管を備えている。
【0011】
この構成によると、気化器本体が浸漬する水槽には、排水構造として、水槽に連通する中間槽と、中間槽に設けられた越流堰と、越流堰を越えた水が流れる排水路と、を備えている。気化器本体の運転中に水槽の水位が上昇し、越流堰によって規定される運転時水位を超えたときには、中間槽内の水が越流堰を越えて排水路に流れる。これにより、気化器本体の運転中には、水槽の水位を運転時水位以下に維持することが可能になり、水槽内の水が溢れてしまうことが防止される。
【0012】
一方、気化器本体の停止中には、様々な理由(一例は、水槽内の水温を所定温度に維持するために、水槽内に蒸気を導入すること)で、水槽内の水量が増える。それに伴い、水槽の水位も高まる。
【0013】
気化器本体の停止中に、水槽の水位が運転時水位よりも低い停止時水位を超えたときには、中間槽内の水が越流堰を越えることがないものの、停止時水位に対応する高さ位置に設けられた水位調整配管を通じて、中間槽から排水路に水が流れる。換言すれば越流堰をバイパスして水が流れる。こうして、気化器本体の停止中には、運転時水位よりも低い停止時水位に、水槽の水位を維持することが可能になる。これにより、気化器本体を起動する際に、水槽の水位が大幅に上昇をしても、水位が運転時水位を超えない、又は、運転時水位を大きく超えることがなく、排水が過多になることが防止される。
【0014】
前記水位調整配管は、前記停止時水位に対応する高さ位置に配置されると共に、下流端が前記排水路に接続された第1配管と、前記停止時水位よりも低い高さ位置に配置されると共に、上流端が前記中間槽に接続されかつ、下流端が前記第1配管に接続された第2配管と、下端が前記第1配管における前記停止時水位に対応する高さ位置に接続されかつ、上端が前記停止時水位よりも上方で大気に開放された第3配管と、を備えている、としてもよい。
【0015】
中間槽と排水路とをつなぐ第1及び第2配管の内、相対的に高い位置に配置される第1配管が、停止時水位に対応する高さ位置に配置されることで、中間槽(及び水槽)の水位がこの停止時水位を超えたときには、第1及び第2配管を通じて、中間槽の水が排水槽に流れる。こうして、気化器本体の停止中に、水槽の水位が停止時水位を超えることが防止される。
【0016】
一方で、第1及び第2配管内が水で満たされていれば、中間槽の水位が停止時水位よりも低くなっても、サイフォンの原理により、中間槽から排水槽への水の排出が継続することになる。この場合、水槽の水位が停止時水位よりも低くなり過ぎる虞がある。
【0017】
これに対し、前記の構成は、第1配管における前記停止時水位に対応する高さ位置に、大気に開放された第3配管を接続している。中間槽の水位が停止時水位よりも低くなれば、第3配管を通じて、第1配管内に空気が入るため、中間槽から排水槽への水の流れが止まる。こうして、気化器本体の停止中に、水槽の水位を、停止時水位に自動的に維持することが可能になる。
【0018】
前記中間槽、前記排水路及び前記越流堰は、前記水槽に隣接する第2水槽内に設けられ、前記第2水槽を区画する区画壁には、前記停止時水位よりも低い位置で前記区画壁を貫通しかつ前記排水路に連通する第1連通管と、前記停止時水位よりも低い位置で前記区画壁を貫通しかつ前記中間槽に連通する第2連通管とが埋め込まれており、前記第1配管は、前記第2水槽の外側で、前記停止時水位に対応する高さ位置に配置されていると共に、前記第1配管の下流端は、前記区画壁の外面に開口する前記第1連通管に接続され、前記第2配管は、前記第2水槽の外側に配置されて前記第1配管に接続されていると共に、前記第2配管の上流端は、前記区画壁の外面に開口する前記第2連通管に接続されている、としてもよい。
【0019】
水中燃焼式気化装置の水槽及び第2水槽は、例えばコンクリート製である。第1連通管や第2連通管は、コンクリートの施工の際に、第2水槽の区画壁に埋め込むことが可能である。但し、第1及び第2連通管の高さの精度は、比較的低くなる。
【0020】
また、気化器本体の起動時に、水槽の水位がどの程度上昇するかは、例えばスパージパイプ内からどの程度の水が噴出され、どの程度の水がスパージパイプ内に残るか等に影響される。従って、水中燃焼式気化装置が完成し、実際に運転するまでは、起動時の水位の上昇量を正確に把握することができない。よって、停止時水位をどこに設定すべきかは、おおよそ予測できるものの、水中燃焼式気化装置が完成しなければ、停止時水位を正確に決定することができない。
【0021】
前記の構成は、このような状況において、停止時水位を、精度よく設定することを可能にする。つまり、第2水槽の区画壁には、第1及び第2連通管を予め埋め込んでおくが、その高さ位置は、停止時水位よりも低い位置にしておく。つまり、第1及び第2連通管は、後述の第1配管を配設する高さが調整可能となるように、調整代を設けて埋め込んでおく。
【0022】
第1及び第2配管はそれぞれ、第2水槽の区画壁の外側に配設される。第1配管は、前述の通り、水中燃焼式気化装置の完成後に、正確に設定された停止時水位となる高さ位置に配設される。第1配管の高さ位置は、埋め込まれた第1連通管よりも上方に位置している。第1配管の下流端は、区画壁の外面に開口する第1連通管に接続される。第1配管と第1連通管との接続は、現物合わせによって行えばよい。
【0023】
第2配管は、第1配管よりも低い高さ位置に配置される。第2連通管に接続される第2配管は、その第2連通管と同じ高さ位置に配置してもよい。第2配管の下流端は、第1配管に接続される。第1配管と第2配管との接続は、現物合わせによって行えばよい。
【0024】
こうして、第1連通管及び第2連通管をそれぞれ、コンクリートの施工時に、区画壁内に埋め込んでおいても、第1配管を、精度良く、停止時水位となる高さ位置に配置することが可能になる。また、第1配管に対して、第1連通管及び第2連通管は下方に位置するものの、前述したように、大気に開放された第3配管を設けることにより、サイフォンの原理を利用して、水の排出及び停止を、水槽の水位に応じて自動的に切り替えることが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、前記の水中燃焼式気化装置によると、越流堰をバイパスする水位調整配管を備えることによって、気化器本体の停止中に、水槽の水位を、運転時水位よりも低い停止時水位に維持することが可能になり、気化器本体の起動時に、水槽の水位が大幅に上昇しても、排水量が過多になることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】水中燃焼式気化装置の全体構成を示す概念図である。
図2】中間槽、排水路、及び越流堰が設けられた第2水槽の構成を示す断面図である。
図3】越流堰をバイパスする水位調整配管の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、水中燃焼式気化装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、水中燃焼式気化装置1全体の概略を示している。水中燃焼式気化装置1は、低温液化ガスの気化装置の1つであり、ここでは、液化天然ガス(LNG)を気化する。
【0028】
水中燃焼式気化装置1は、水槽11中に浸漬されると共に、LNGの流路となる多数の伝熱管31が多段に曲げ成形されて構成された熱交換器32を備えている。各伝熱管31の一端は、LNGの入口となるLNG流入管12bに連通し、他端が、気化した天然ガス(NG)を排出させるNG排出管12cに連通している。図1では、伝熱管31は簡易化して図示しているが、実際には、多数の伝熱管31が並んで配置されており、各伝熱管31は、LNG流入管12bに接続されるヘッダタンクと、NG排出管12cに接続されるヘッダタンクとのそれぞれに連通している。伝熱管31の本数やその配置は、水中燃焼式気化装置1の性能に応じて、適宜決定される。
【0029】
水槽11は、天板11aで覆われている。この天板11aは、作業員が歩くこともでき、その所定箇所に円筒状のダウンカマー13が水槽11内に浸漬するように配設されている。
【0030】
ダウンカマー13の上端には、図外の燃料供給源から燃料供給管6を介して供給された燃料ガスと、ブロワー14を通じて供給された空気と、を燃焼させるバーナー2が設けられている。
【0031】
水槽11の底部には、ダウンカマー13に連通すると共に、バーナー2の燃焼ガスが噴出する多数の気泡噴出孔が形成されたスパージパイプ15が配置されている。このスパージパイプ15も、図1では1本しか描いていないが、実際には多数並べられており、熱交換器32の全体に燃焼ガスを含む気泡Bが供給されるようになっている。スパージパイプ15の本数やその配置は特に限定されない。各スパージパイプ15の基端側は、ダウンカマー13に接続されている。各スパージパイプ15の先端は閉塞している。
【0032】
水槽11の天板11aには、水槽11内に噴出された燃焼ガスを排気する煙突状のスタック16が設けられ、その上端は大気に開放されている。
【0033】
水中燃焼式気化装置1は、バーナー2の燃焼ガスをスパージパイプ15の気泡噴出孔を通じて水槽11内に気泡Bとして噴出させることによって、水槽11内の水を撹拌しつつ、伝熱管31内を流れるLNGを加熱する。このことによって、LNGを気化させてNGとし、これをNG排出管12cの出口から送り出すように構成されている。水中燃焼式気化装置1は、燃焼ガスを気泡Bとして水槽11内に噴出して水槽11内の水を撹拌すること、及び、スタック16から排出する排気ガスの温度を、水槽11内の温水温度とほぼ同等に低くすることにより、燃焼ガス中の燃焼生成水を100%再凝縮させ、その潜熱を全て温水に与えることが可能であることから熱効率が極めて高いという特徴がある。
【0034】
水中燃焼式気化装置1の運転中は、燃焼生成水や、燃焼温度の低減のためにバーナー2内に噴射されるインジェクション水が、水槽11内に流入する。このため、水中燃焼式気化装置1の運転中には、水槽11内の水量が増える。また、スパージパイプ15から大量の気泡が勢いよく噴き出すことによって、水面が盛り上がるようになる。このため、水槽11から水が溢れないように、水中燃焼式気化装置1には、水位が高くなったときには、水を自動的に排出する排出構造が設けられている。排出構造は、水槽11に隣接する第2水槽4を備えて構成されている。水槽11と第2水槽4とは、連通路41を通じて互いに連通している。
【0035】
図2は、第2水槽4の構成を示す断面図である。第2水槽4は、連通路41を通じて水槽11に連通する中間槽42と、中間槽42に設けられかつ、水中燃焼式気化装置1の運転中に、水槽11の水位を所定の運転時水位以下に維持するよう構成された越流堰43と、越流堰43を越えて中間槽から流れた水を排出するよう構成された排水路44と、を備えている。
【0036】
中間槽42は、連通路41を通じて水槽11に連通しているため、中間槽42の水位は、水槽11の水位と同じになる。
【0037】
越流堰43は、中間槽42と排水路44との間に介在しており、第2水槽4内を中間槽42側と、排水路44側とに分けている。越流堰43の高さは、前述した運転時水位に対応する高さに設定されている(図3も参照)。これにより、水槽11内の水位が上昇して運転時水位を超えると、中間槽42の水位も同じく運転時水位を超えるため、中間槽42内の水が越流堰43を越えて流れるようになる。越流堰43の排水路44側は、排水路44につながる傾斜面に構成されており、越流堰43を越えた水は、傾斜面に沿って流れて排水路44に至る。
【0038】
排水路44は、第2水槽4内において、越流堰43によって分けられた、反中間槽側の部分である。排水路44には、第2水槽4の壁を貫通して配設された排水管45が接続されている。排水管45は、図外の処理槽に接続されている。処理槽では、燃焼ガスが噴出することに伴い、酸性となった水を中和する処理を行う。排水路44の水は、排水管45によって第2水槽4の外部に排出されて、処理槽に至る。
【0039】
ここで、水中燃焼式気化装置1は、急激な需要増加をカバーするためのエマージェンシー用としても使用されるものであり、起動と停止とが繰り返される。水中燃焼式気化装置1の停止中は、スパージパイプ15内に水が充填されているが、水中燃焼式気化装置1が起動するに伴い、燃焼ガスがスパージパイプ15内に供給されるため、スパージパイプ15内に充填されていた水が噴出し、それに伴い、水槽11の水位が、大幅に上昇する。
【0040】
また、水中燃焼式気化装置1の停止中には、水槽11内の水温が低くなり過ぎないように、例えば蒸気が水槽11内に導入される。これにより、水中燃焼式気化装置1の停止中には、水槽11内の水量が次第に増えて、その水位が高くなる。
【0041】
水中燃焼式気化装置1の停止中に、水槽11の水位が、運転時水位近くにまで高くなっていると、水中燃焼式気化装置1の起動時には、水槽11の水位が大幅に上昇するため、越流堰を超えて排出される水量が増大してしまう。これにより、排水路から水が溢れてしまう虞がある。また、排水路の下流側の処理槽における処理能力を超えてしまう虞がある。
【0042】
そこで、この水中燃焼式気化装置1は、その停止中に、水槽11の水位を、運転時水位よりも低い停止時水位に維持するための水位調整配管5を備えている。水位調整配管5は、図1に示すように、第2水槽4を区画する区画壁46の外面に取り付けられる。
【0043】
水位調整配管5は、図2においては仮想的に示すように、第1配管51と、第2配管52と、第3配管53とを備えて構成されている。
【0044】
図2及び図3に示すように、第1配管51は、停止時水位に対応する高さ位置において、水平に配置される配管であり、第1配管51の下流端は、排水路44に接続されている。
【0045】
第2配管52は、停止時水位よりも低い高さ位置において、水平に配置される配管である。第2配管52の上流端は中間槽42に接続されかつ、その下流端は第1配管51に接続されている。第2配管52の途中には、第2配管52を流れる水の流量を制限するオリフィス54が介設している。
【0046】
第3配管53は、上下方向に延びて配設される配管である。第3配管53の下端は、第1配管51と第2配管52との間に接続される。これにより、第3配管53の下端は、第1配管51において停止時水位に対応する高さ位置に接続されている。第3配管53の上端は、停止時水位よりも上方において大気に開放されている。
【0047】
ここで、水中燃焼式気化装置1の水槽11及び第2水槽4はそれぞれ、コンクリート製である。水位調整配管5は、第2水槽4の区画壁46の外面に取り付けられるため、第1配管51や第2配管52を第2水槽4内の中間槽42及び排水路44に接続するには、区画壁46を貫通する管が必要となる。図3に示す符号55〜57はそれぞれ、コンクリート施工時に、区画壁46内に埋め込まれた第1〜第3連通管を示している。後述するように、第1〜第3連通管55〜57には、第1〜第3配管51〜53が接続される。
【0048】
水中燃焼式気化装置1の起動時に、水槽11の水位がどの程度上昇するかは、例えばスパージパイプ15内からどの程度の水が噴出され、どの程度の水がスパージパイプ15内に残るか等に影響される。従って、水中燃焼式気化装置1が完成し、実際に運転するまでは、起動時の水位の上昇量を正確に把握することができない。よって、停止時水位をどこに設定すべきかは、おおよそ予測できるものの、水中燃焼式気化装置1が完成しなければ、停止時水位を正確に決定することができない。
【0049】
そこで、前記の水位調整配管5は、停止時水位を、精度よく設定することが可能となるように、次のように構成されている。つまり、前記の第1〜第3連通管55〜57はそれぞれ、区画壁46を貫通して配設されている。
【0050】
第1連通管55は、排水路44に連通するように、越流堰43よりも排水路側の位置において、予測される停止時水位よりも低い位置で、区画壁46に埋め込まれている。
【0051】
第2連通管56は、中間槽42に連通するように、越流堰43よりも中間槽側の位置において、予想される停止時水位よりも低い位置で、区画壁46に埋め込まれている。第1連通管55と第2連通管56との高さ位置は、同じにしてもよいし、異ならせてもよい。第1連通管55及び第2連通管56の高さを予め低くしておくことにより、第1配管51を配設する高さが調整可能となる調整代が設けられることになる。
【0052】
第3連通管57は、第1連通管55と第2連通管56との間の位置において、予想される停止時水位よりも高い位置で、区画壁46に埋め込まれている。第3連通管57は、好ましくは、第1連通管55と第2連通管56とのほぼ中央の位置において、越流堰43よりも高い位置で、区画壁46に埋め込む。こうすることで、第3連通管57は、確実に大気に開放させることが可能になる。
【0053】
第1連通管55には、第1配管51の下流端が接続される。第1配管51は、前述したように、水中燃焼式気化装置1の完成後に設定された停止時水位に対応する高さ位置となるように配置される。従って、第1配管51と第1連通管55とは、高さ方向にずれる。第1配管51と第1連通管55とは、現物合わせによって、互いに接続される。こうして、第1連通管55の高さ位置に拘わらず、第1配管51を、停止時水位に対応する高さ位置に、正確に位置づけることが可能になる。
【0054】
第2連通管56には、第2配管52の上流端が接続される。第2配管52は、第1配管51と同じ位置に配置してもよいし、それよりも低い位置に配置してもよい。ここでは、図2、3に示すように、第2配管52は、第2連通管56と同じ高さ位置に配置しており、第1配管51よりも低い位置に配置されている。前述したように、第1配管51と第2配管52とは互いに接続されるが、第1配管51と第2配管52とは、高さ方向にずれている。そのため、第1配管51と第2配管52とは、現物合わせによって、互いに接続される。
【0055】
第3連通管57には、第3配管53の上端が接続される。第3配管53の下端は、第1配管51と第2配管52との間に接続される。第3配管53は、現物合わせによって、第3連通管57と、第1及び第2配管51、52とに接続される。こうして、第3配管53及び第3連通管57は、大気に開放されるが、その開放端は、水平向きに開口するため、開放端を通じて水等が進入することが防止される。また、開放端は、第2水槽4内を向いているため、仮に水が第3配管53内を上昇したとしても、その水を第2水槽4内に戻すことが可能になる。
【0056】
こうして、第1、第2及び第3配管51、52、53を、互いに接続しつつ、第1、第2及び第3連通管55、56、57に接続して、水位調整配管5が完成する。第1配管51は、停止時水位に対応する高さ位置に、正確に位置づけることが可能になる。
【0057】
水中燃焼式気化装置1の停止中に、水槽11の水位が上昇して停止時水位を超えたときには、中間槽42の水位も停止時水位を超えるため、第1及び第2配管51、52内に水が満たされる。これにより、この第1及び第2配管51、52を通じて、中間槽42から排水路44に水が流れる。水槽11内の水位が、停止時水位を超えることが防止される。尚、水中燃焼式気化装置1の停止中は、水槽11の水位が急激に上昇することはなく、水位は、少しずつ上昇する。そのため、第1及び第2配管51、52を通じた水の排水量は、それほど多くない。
【0058】
また、水槽11の水位が停止時水位よりも低いときには、第3配管53を通じて、第1配管51内に空気が入る。これにより、第1及び第2配管51、52を通じた水の流れが止まる。つまり、第3配管53を設けない構成では、第1及び第2配管51、52内が水で満たされていると、水槽11の水位が停止時水位よりも低くなっても(換言すれば、第1配管51よりも低くなっても)、サイフォンの原理によって、第1及び第2配管51、52を通じて、水が流れるようになる。これに対し、第3配管53を設けた前記の構成では、水槽11の水位が停止時水位よりも低くなれば、第1及び第2配管51、52を通じた水の流れを、自動的に止めることが可能になる。こうして、水中燃焼式気化装置1の停止中に、水槽11の水位は、停止時水位よりも低くなることを防止して、その水位を停止時水位に維持することが可能になる。水槽11の水位が、低くなりすぎることが防止される。
【0059】
こうして、水中燃焼式気化装置1の停止中に、水槽11の水位が運転時水位の近くにまで上昇することが回避される。このため、水中燃焼式気化装置1の起動時に、水槽11の水位が大幅に上昇したとしても、越流堰43を越えて流れる水の量を無くす、又は、抑制することが可能になる。つまり、水中燃焼式気化装置1の起動時に排水量が過多になることが防止されるため、排水路44から水が溢れたり、処理槽における処理能力を超えたりすることが防止される。
【0060】
尚、水中燃焼式気化装置1の運転中に、水槽11の水位が停止時水位を超えると、第1及び第2配管51、52を通じて、中間槽42から排水路44に水が流れるが、第2配管52の途中に介設しているオリフィス54によって、その流量は少なく抑えられている。これによって、水中燃焼式気化装置1の運転中は、主に越流堰43によって、水槽11の水位が運転時水位以下になり、水槽11の水位が低くなり過ぎることが防止される。
【0061】
尚、第1配管51及び第2配管52を共に、停止時水位の高さ位置に、精度良く配設することが可能であれば、第3配管53は省略することが可能である。例えば、前記の構成とは異なり、第1及び第2連通管55、56を、コンクリート施工時に埋め込むのではなく、水中燃焼式気化装置1の完成後に、第2水槽4の区画壁46に貫通孔を開けて連通管を埋め込むようにすれば、第1及び第2連通管55、56自体を、停止時水位の高さ位置に精度良く設けることが可能になり、第1及び第2配管51、52もまた、停止時水位の高さ位置に、精度良く配置することが可能になる。こうして、越流堰43をバイパスする水平な水位調整配管を設ければ、水槽11の水位が停止時水位を超えたときには、第1及び第2配管51、52を通じて中間槽42から排水路44に水を流すことができる一方で、水槽11の水位が停止時水位よりも低下したときには、第1及び第2配管51、52を通じた水の流れを、自動的に止めることが可能になる。区画壁46に、貫通孔を開けて連通管を埋め込むようにすれば、水位調整配管5を、既存の水中燃焼式気化装置に対して、後付けで取り付けることも可能になる。
【0062】
第3配管53は、前記の構成では、区画壁46を貫通する第3連通管57に接続しているが、第3配管53の上端は、そのまま大気に開放させてもよい。第3配管53の上端は、第2水槽4内で開放させる必要はない。
【符号の説明】
【0063】
1 水中燃焼式気化装置(気化器本体)
11 水槽
13 ダウンカマー
15 スパージパイプ
2 バーナー
31 伝熱管
32 熱交換器
42 中間槽
43 越流堰
44 排水路
46 区画壁
5 水位調整配管
51 第1配管
52 第2配管
53 第3配管
55 第1連通管
56 第2連通管
図1
図2
図3