(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)は、本発明の保持シール材の一例を模式的に示す斜視図であり、
図1(b)はそのA−A線断面図である。
【
図2】
図2(a)は、隆起部の形態が異なる本発明の保持シール材の一例を模式的に示す斜視図であり、
図2(b)はそのB−B線断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の保持シール材の別の形態の一例を模式的に示す上面図である。
【
図4】
図4は、本発明の保持シール材の別の形態の一例を模式的に示す上面図である。
【
図5】
図5(a)は、無機繊維集合体の打ち抜きに使用するトムソン刃の一例を模式的に示す斜視図であり、
図5(b)はそのC−C線断面図である。
【
図6】
図6(a)は、トムソン刃を用いて無機繊維集合体を打ち抜く前の様子の一例を模式的に示した断面図であり、
図6(b)は、トムソン刃を用いて無質繊維集合体を打ち抜く瞬間の様子の一例を示す断面図であり、
図6(c)は、トムソン刃を用いて無機繊維集合体を打ち抜いた後の様子を模式的に示した断面図である。
【
図7】
図7は、
図1(a)及び
図1(b)に示す保持シール材を排ガス処理体の側面に巻きつけてなる、本発明の巻付体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の巻付体を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の巻付体をケーシング内に圧入する様子を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図11は、排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
【0022】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の保持シール材、巻付体及び保持シール材の製造方法について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0023】
はじめに、本発明の保持シール材について説明する。
本発明の保持シール材は、
排ガス処理体の長手方向の長さが排ガス処理体の直径の10〜60%である柱状の排ガス処理体の側面に、保持シール材の長手方向を巻き付け方向として巻きつけて使用される保持シール材であって、
平面視形状において、保持シール材の長手方向に伸びる第1の長辺及び第2の長辺、並びに、上記第1の長辺と上記第2の長辺をそれぞれ接続して幅方向に伸びる第1の短辺及び第2の短辺を有する、平面視略矩形状の厚みを有するマットからなり、
上記マットの第1面には、上記第1の長辺及び上記第2の長辺に沿って他の部位に比べて厚くなっている隆起部が設けられており、
上記マットの上記第1面を排ガス処理体側に向けて、上記隆起部が排ガス処理体の端面より外側に突出して、上記隆起部の側面が上記排ガス処理体の端面の外周を覆うようにするとともに、上記隆起部以外の部位が排ガス処理体の側面に接触するように排ガス処理体に巻き付けて使用することを特徴とする。
【0024】
図1(a)は、本発明の保持シール材の一例を模式的に示す斜視図であり、
図1(b)はそのA−A線断面図である。
保持シール材1は、第1面11及び第2面12を備えるマットであり、長手方向(
図1(a)中、両矢印aで示す方向)に伸びる第1の長辺21及び第2の長辺22、並びに、第1の長辺21と第2の長辺22をそれぞれ接続する第1の短辺31及び第2の短辺32を有する平面視略矩形状のマットである。
第1の長辺21及び第2の長辺22は、共に保持シール材1の長手方向に平行である。
【0025】
第1の短辺31は、第1の長辺21と第2の長辺22を接続する辺であるが、複数の辺の集合体として定められる辺であり、参照符号31a、31b及び31cをつなげた辺を第1の短辺31とする。また、第2の短辺32は、第1の長辺21と第2の長辺22を接続する辺であるが、複数の辺の集合体として定められる辺であり、参照符号32a、32b及び32cをつなげた辺を第1の短辺32とする。
【0026】
保持シール材1は、排ガス処理体に保持シール材1を巻き付けた際に、第1の短辺31と第2の短辺32がちょうど互いに嵌合するような形状となっている。
なお、本発明の保持シール材は、平面視略矩形状のマットであるが、「平面視略矩形」とは、第1の短辺31と第2の短辺32が嵌合する部分を含む概念である。
【0027】
マットの第1面11には、第1の長辺21に沿って隆起部41が設けられ、第2の長辺22に沿って隆起部42が設けられている。
隆起部は他の部位に比べて厚くなっている部位である。
図1(a)及び
図1(b)に示す隆起部は、第1の長辺及び第2の長辺に沿って幅を有する帯状領域において、隆起部以外の部位に比べて一段厚くなっている段差状である。
図1(b)に示すように、隆起部の厚さTとすると、隆起部以外の部位の厚さtに対してT>tとなっている。
【0028】
図2(a)は、隆起部の形態が異なる本発明の保持シール材の一例を模式的に示す斜視図であり、
図2(b)はそのB−B線断面図である。
図2(a)及び
図2(b)に示す保持シール材2では、隆起部51、52は、第1の長辺21又は第2の長辺22を最も厚い位置として、第1の長辺21又は第2の長辺22から遠ざかる方向に向けて薄くなる傾斜状である。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、隆起部51は第1の長辺21を最も厚い位置として第1の長辺21から遠ざかる方向に向けて薄くなる傾斜状となっており、隆起部52は第2の長辺22を最も厚い位置として第2の長辺22から遠ざかる方向に向けて薄くなる傾斜状となっている。
【0029】
本発明の保持シール材において、隆起部の厚さは、隆起部以外の部位の厚さよりも1〜5mm厚くなっていることが好ましい。
隆起部の厚さが隆起部以外の部位よりも1mm未満しか厚くなっていないと、隆起部が排ガス処理体の端面に充分に引っ掛からずに、隆起部を設けた効果が得られにくくなることがある。
一方、隆起部の厚さが隆起部以外の部位よりも5mmを超えて厚くなっていると、隆起部が排ガス処理体の端面を塞いでしまうことになり、排ガス処理体の外周付近での排ガス処理効率が低下するため好ましくない。
隆起部の厚さは、
図1(b)に示すような段差状の隆起部の場合は両矢印Tで示される厚さ(一定値)である。
図2(b)に示すような傾斜状の隆起部の場合は、第1の長辺での厚さ又は第2の長辺での厚さ(両矢印Tで示される厚さ)として定める。
隆起部以外の部位の厚さは、
図1(b)及び
図2(b)において両矢印tで示される厚さであり、どちらの場合でも一定値である。
すなわち、
図1(b)及び
図2(b)において“T−t”で定められる厚さが1〜5mmであることが好ましい。
また、隆起部以外の部位の厚さtは5〜15mmであることが望ましい。
【0030】
隆起部の幅は、1〜5mmであることが好ましい。
隆起部の幅は、
図1(b)及び
図2(b)において、第1の長辺又は第2の長辺からマットの内側へ向けた両矢印Dで表される長さである。
図2(b)のような傾斜状の隆起部の場合は、傾斜の立ち上がり位置から第1の長辺又は第2の長辺までの長さ(
図2(b)で両矢印Dで表される長さ)を隆起部の幅として定める。
隆起部の幅が1mm未満であると隆起部が排ガス処理体の端面に引っ掛かった際に隆起部が容易に欠損してしまうため、隆起部を設けた効果が得られない。
また、隆起部の幅を5mmを超えて長くしても隆起部を設けた効果は変わらず、ケーシング内で無駄なスペースを要することになる。そして、隆起部は排ガス処理体によって押さえつけられていないため、排ガスが衝突した際は容易に飛散してしまう。したがって、無駄に隆起部の幅が大きいと、排ガスの衝突による繊維の飛散量が多く、排ガス処理体の中へ飛散繊維が入り、排ガス処理体の効果を低下させてしまう。
【0031】
隆起部は、第1の長辺に沿って、及び、第2の長辺に沿って、保持シール材の長手方向の全体にわたって形成されていることが好ましい。隆起部が設けられていない部位があると、隆起部が設けられている部位との境界に強い力が加わる可能性がある。但し、排ガス処理体が倒れることを抑制できるようにするために支障の無い範囲で、保持シール材の長手方向の一部に隆起部が設けられていない部位を有していてもよい。この場合、巻き付けの際に隆起部にしわが生じることが防止されるので、巻き付けの作業性が向上する。
【0032】
保持シール材は、その幅が30〜100mmであることが好ましい。
保持シール材の幅は
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)及び
図2(b)において両矢印Wで示される幅である。この幅は巻き付ける対象の排ガス処理体の長手方向の長さに対応しており、通常よりも長手方向の長さが短い排ガス処理体を巻き付ける対象物として想定している。
また、後述するように保持シール材を排ガス処理体に巻き付けた際に隆起部が排ガス処理体の端面より外側に突出するようにすることが好ましいので、保持シール材の幅から隆起部の幅(隆起部の幅2つ分)を除いた幅(W−D×2)が巻き付ける対象の排ガス処理体の長手方向の長さと一致することが好ましい。
【0033】
本発明の保持シール材は、無機繊維を含むマットからなることが好ましい。マットを構成する無機繊維としては、特に限定されず、アルミナ−シリカ繊維であってもよく、アルミナ繊維、シリカ繊維等であってもよい。また、ガラス繊維や生体溶解性繊維であってもよい。耐熱性や耐風蝕性等、マットに要求される特性等に応じて変更すればよく、各国の環境規制に適合できるような太径繊維や繊維長のものを使用するのが好ましい。
【0034】
この中でも、低結晶性アルミナ質の無機繊維が好ましく、ムライト組成の低結晶性アルミナ質の無機繊維がより好ましい。加えて、スピネル型化合物を含む無機繊維がさらに好ましい。高結晶性アルミナ質であると、硬く脆いため、クッション材として用いられるマットには不向きである。
また、クッション性が乏しいため、排ガス処理体端部を繊維によって傷を与え、欠損させてしまう可能性がある。
【0035】
さらに低結晶性アルミナ質かつスピネル型化合物を含む無機繊維の場合、結晶化比率は0.1〜30%の範囲が望ましく、さらには結晶化率0.4〜20%の範囲がさらに好ましい。この範囲の無機繊維で製作されたマットの反発力および耐久試験後の復元面圧は高く、性能が良い。しかし、結晶化比率が0.1%未満または30%を超えると、急激に反発力や復元面圧は急激に低下してしまう。結晶化率の測定方法は、ムライト回析線(2θ=26.4°)とγアルミナ回析線(2θ=45.4°)の積分強度比より算出することができる。
【0036】
保持シール材を構成するマットは、種々の方法により得ることができるが、例えば、ニードリング法又は抄造法により製造することができる。特に、抄造法により得られたマットであることが好ましい。
【0037】
抄造法により得られるマットを構成する無機繊維の平均繊維長は、0.1〜20mmであることが好ましく、0.2〜10mmがさらに好ましく、0.3〜3.0mmがより好ましい。
無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、マット状繊維集合体にしたときに繊維同士に好適な絡み合いが起こらず、充分な面圧を得ることが困難になる。また、無機繊維の平均繊維長が20mmを超えると、無機繊維の繊維長が長すぎるため、抄造工程で水に繊維を分散したスラリー溶液中の繊維同士の絡み合いが強くなりすぎるため、マット状繊維集合体としたときに繊維が不均一に集積しやすくなる。
繊維長の測定は、ピンセットを使用して、マットから繊維が破断しないように抜き取り、光学顕微鏡を使用して繊維長を測定する。ここでは、繊維300本を抜き取り、繊維長を計測した平均を平均繊維長とする。マットから繊維を破断せずに抜き取れない場合、マットを脱脂処理して、脱脂済みマットを水の中へ投入し、繊維同士の絡みをほぐしながら繊維破断しないように採取すると良い。
【0038】
また、保持シール材の目付量(単位面積当たりの重量)は、特に限定されないが、200〜4000g/m
2であることが望ましく、1000〜3000g/m
2であることがより望ましい。保持シール材の目付量が200g/m
2未満であると、保持力が充分ではなく、保持シール材の目付量が4000g/m
2を超えると、保持シール材の嵩が低くなりにくい。そのため、このような保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、排ガス処理体が脱落しやすくなる。
【0039】
図3は、本発明の保持シール材の別の形態の一例を模式的に示す上面図である。
図3に示す保持シール材3では、排ガス処理体に巻き付けた際に、ちょうど互いに嵌合する凸部13及び凹部14が設けられている。
第1の長辺21に沿って隆起部61が、第2の長辺22に沿って隆起部62がそれぞれ設けられている。
【0040】
図4は、本発明の保持シール材の別の形態の一例を模式的に示す上面図である。
図4に示す保持シール材4では、第1の長辺21に沿った隆起部71、第2の長辺22に沿った隆起部72に加えて、第1の短辺31に沿った隆起部73及び第2の短辺32に沿った隆起部74が形成されており、保持シール材4を構成するマットの外周の全てに隆起部が設けられていることとなる。隆起部が短辺に沿って設けられている場合、排ガス処理体との抵抗が短辺の凹凸によって増加するため、配設作業時に排ガス処理体を倒れにくくすることができる。
【0041】
図3及び
図4に示す形態の保持シール材においても、隆起部の形態は
図1(a)及び
図1(b)に示した段差状であってもよいし、
図2(a)及び
図2(b)に示した傾斜状であってもよい。また、好ましい隆起部の厚さ及び幅等もこれまで説明したものと同様にすることができる。
【0042】
次に、本発明の保持シール材の製造方法について説明する。
本発明の保持シール材の製造方法は、シート状の無機繊維集合体をトムソン刃により厚さ方向に打ち抜くことにより本発明の保持シール材を製造する方法であって、
上記トムソン刃は、打ち抜き刃と打ち抜き刃の内周形状に沿って配置された弾性部材とを備えており、上記打ち抜き刃と上記弾性部材の間には無機繊維集合体が入り込むことができる隙間があることを特徴とする。
【0043】
シート状の無機繊維集合体としては、上述した無機繊維からなる、従来公知の無機繊維集合体を好適に用いることができ、抄造法により得られた無機繊維集合体を好適に使用することができる。
【0044】
抄造法の場合、紡糸液を紡糸し、焼成して繊維化することにより無機繊維を製造した後、この無機繊維を、有機バインダと、水と原料液中の無機繊維の含有量が所定の値となるように混合し、攪拌機で攪拌することで混合液を調製する。混合液には、必要に応じて、高分子化合物や樹脂からなるコロイド溶液が含まれていてもよい。続いて、底面にろ過用のメッシュが形成された成形器に混合液を流し込んだ後に、混合液中の水を、メッシュを介して脱水することにより原料シートを作製する。その後、原料シートを所定の条件で加熱圧縮、乾燥することにより無機繊維集合体を作製する。
混合液には、必要に応じて、無機バインダ等を添加してもよい。
有機バインダとしては、特に限定されず、アクリル系樹脂、アクリレート系ラテックス、ゴム系ラテックス、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
無機バインダとしては、特に限定されず、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。
【0045】
図5(a)は、無機繊維集合体の打ち抜きに使用するトムソン刃の一例を模式的に示す斜視図であり、
図5(b)はそのC−C線断面図である。
図5(a)に示すトムソン刃200は、打ち抜きにより製造する保持シール材の形状に対応した形状の打ち抜き刃220と、打ち抜き刃220の外周形状に沿って配置された外側弾性部材230、打ち抜き刃220の内周形状に沿って配置された内側弾性部材240を備えており、基板210に打ち抜き刃220、外側弾性部材230及び内側弾性部材240がそれぞれ固定されてなる。
【0046】
打ち抜き刃の高さは、弾性部材の高さより低いことが好ましい。打ち抜きを行わないときには打ち抜き刃の刃先が弾性部材から飛び出していないので、刃先が破損したり、作業者が刃先に接触して怪我をすることが防止されるようになっている。
打ち抜きを行う際には弾性部材が圧縮されて厚さが薄くなることにより刃先が飛び出して切断対象の無機繊維接合体に接触して切断する。
【0047】
打ち抜き刃220の刃先が無機繊維集合体と接触する側の面(基板210と反対側の面)では、打ち抜き刃220と内側弾性部材240の間には隙間がある。
図5(b)ではこの隙間を両矢印dで示している。
打ち抜き刃と弾性部材の間の隙間の幅は2〜10mmであることが好ましい。このような幅の隙間が設けられていると、打ち抜きにより好ましい幅の隆起部を形成することができる。
なお、ここでいう打ち抜き刃と弾性部材の間の隙間の幅は、打ち抜き刃と内側弾性部材の間の隙間の幅のことを意味する。
【0048】
トムソン刃を構成する部材として、基材はベニヤ板等の板材とすることが好ましい。弾性部材としては天然ゴム、ウレタンゴム、ゴムスポンジ等の弾性を有する部材とすることが好ましい。
打ち抜き刃としては、炭素鋼、ステンレス鋼、モリブデン鋼、特殊鋼(合金鋼)等の鋼類、コバルト合金(ステライト)、チタン合金等の合金類、ジルコニア、アルミナ等のファインセラミックス類を使用することができる。また、トムソン刃は片刃であることが望ましく、両刃と比較して無機繊維集合体の裁断面をストレート状にできる。
【0049】
図6(a)は、トムソン刃を用いて無機繊維集合体を打ち抜く前の様子の一例を模式的に示した断面図であり、
図6(b)は、トムソン刃を用いて無質繊維集合体を打ち抜く瞬間の様子の一例を示す断面図であり、
図6(c)は、トムソン刃を用いて無機繊維集合体を打ち抜いた後の様子を模式的に示した断面図である。
【0050】
図6(a)に示すように、トムソン刃200の下面(基板210と反対側の面)を無機繊維集合体80に向けて配置し、無機繊維集合体80にトムソン刃200を押し付けると、弾性部材(内側弾性部材240及び外側弾性部材230)が圧縮されて厚さが薄くなる。そして打ち抜き刃220の刃先が無機繊維集合体80に接触し、さらにトムソン刃200を押し付けると、
図6(b)に示すように打ち抜き刃220が無機繊維集合体80を貫通して無機繊維集合体80を切断する。その結果、
図6(c)に示すように所定形状の保持シール材1が製造される。
ここで、打ち抜き刃220と内側弾性部材240の間には隙間があるため、打ち抜きの際に無機繊維集合体80の一部がこの隙間に入り込む。
隙間に入り込んだ無機繊維集合体は、打ち抜き時に弾性部材との間で加圧されないので打ち抜きにより厚さが薄くならないため、打ち抜き時に弾性部材と接して加圧された他の部位に比べて厚さの厚い部位となる。そして、この部分が隆起部41、42となって、隆起部を有する保持シール材が製造されることになる。
この際、トムソン刃の側面(刃先が無機繊維集合体を貫通した際、無機繊維集合体の裁断面がトムソン刃と接している面)の表面粗さRzが10〜50の範囲であることが望ましい。さらに表面粗さRzが20〜40の範囲が望ましく、25〜35の範囲がさらに望ましい。無機繊維集合体とトムソン刃の側面との摩擦抵抗が大きいと、無機繊維集合体の切断面をめくれ上がらせて、隆起部を形成しやすくする。ここで、Rzが10よりも小さいと、無機繊維集合体との摩擦抵抗が小さいため、隆起部を容易に形成できない。また、Rzが50よりも大きいと、トムソン刃自体の強度が小さくなり、屈曲をして折れてしまう。トムソン刃の表面粗さは酸処理やブラスト処理によって調整することができる。
【0051】
次に、本発明の巻付体について説明する。
本発明の巻付体は、排ガス処理体の長手方向の長さが排ガス処理体の直径の10〜60%である柱状の排ガス処理体と、
上記排ガス処理体の側面に巻きつけられた、本発明の保持シール材とから構成された巻付体であって、
上記保持シール材は、上記マットの上記第1面を上記排ガス処理体側に向けて、上記隆起部が上記排ガス処理体の端面より外側に突出して、上記隆起部の側面が上記排ガス処理体の端面の外周を覆うようにするとともに、上記隆起部以外の部位が排ガス処理体の側面に接触するように上記排ガス処理体に巻き付けられていることを特徴とする。
【0052】
図7は、
図1(a)及び
図1(b)に示す保持シール材を排ガス処理体の側面に巻きつけてなる、本発明の巻付体の一例を模式的に示す斜視図である。
図8は、
図7に示す巻付体のD−D線断面図である。
図7に示す巻付体140は、排ガス処理体120の側面に、
図1(a)及び
図1(b)に示す保持シール材1を巻きつけてなり、巻き付けられた保持シール材1の第1の短辺31と第2の短辺32がちょうど互いに嵌合するようになっている。
【0053】
保持シール材1の隆起部41、42は排ガス処理体120の排ガス流入側端面120a、排ガス流出側端面120bより外側に突出している。そして、隆起部41の側面41aが、排ガス処理体120の排ガス流入側端面120aの外周を覆っているとともに、隆起部42の側面42aが、排ガス処理体120の排ガス流出側端面120bの外周を覆っている。
そして、保持シール材1の隆起部41、42以外の部位、すなわち保持シール材1の第1面11が排ガス処理体120の側面129(
図9参照)に接触するように巻き付けられている。
【0054】
このように、保持シール材1の隆起部41の側面41a、隆起部42の側面42aが、排ガス処理体の排ガス流入側端面120a、排ガス流出側端面120bの外周をそれぞれ覆っているので、ケーシング内への巻付体140の配設時に排ガス処理体120が倒れることが防止される。
【0055】
また、無機繊維集合体の切断によって保持シール材1が製造されている場合、保持シール材1の隆起部の側面41a、42aとそれぞれ反対に位置する側面41b、42bは、無機繊維集合体の切断時に無機繊維集合体の表面がめくれて表面よりも内側の部分が露出した面である。
無機繊維集合体の切断により露出した面は、裁断時に無機繊維表面に添着しているバインダ(無機バインダ、有機バインダ)を部分的に削り落とされてしまうため、バインダの添着量が、切断により露出した面ではない面(マットの第1面、第2面)よりも相対的に少なく、曲げやすい面になる。そのため、隆起部が排ガス処理体の端面の外周を覆うように保持シール材を巻き付ける際に、隆起部にしわが生じることが防止される。
【0056】
図9は、本発明の巻付体を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
図9に示す排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に併設される柱状のセラミック質からなるハニカム構造体である。また、セル125のいずれかの端部は、封止材128で封止されている。また、ハニカム構造体の外周には、ハニカム構造体の外周部を補強したり、形状を整えたり、ハニカム構造体の断熱性を向上させたりする目的で、外周コート層127が設けられている。
なお、外周コート層127が設けられた面が、ハニカム構造体の側面129である。
【0057】
排ガス処理体の寸法として、排ガス処理体の長手方向の長さ(
図9中、両矢印bで示す長さ)は、排ガス処理体の直径(
図9中、両矢印cで示す長さ)の10〜60%である。直径の20〜50%であることが好ましく、直径の25〜45%であることがより好ましい。長手方向の長さが直径の10%未満の場合、排ガス処理体をケーシング内へ配設する際に、座屈して排ガス処理体が破壊される可能性がある。また、長手方向の長さが直径の60%を超えて大きい場合、排ガス処理体をケーシング内へ配設する際に、排ガス処理体が倒れる可能性が小さく、隆起部を設ける効果が得られにくい。
【0058】
セル125のいずれかの端部が封止されている場合、排ガス処理体120の一方の端部からみたときに、端部が封止されたセルと封止されていないセルとが交互に配置されていることが望ましい。
【0059】
排ガス処理体を長手方向に垂直な方向に切断した断面形状は、特に限定されず、略円形、略楕円形でもよく、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形であってもよい。
【0060】
排ガス処理体を構成するセル125の断面形状は、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形でもよく、また、略円形、略楕円形であってもよい。また、排ガス処理体120は、複数の断面形状のセルが組み合わされたものであってもよい。
【0061】
排ガス処理体を構成する素材は特に限定されないが、炭化ケイ素質及び窒化ケイ素質等の非酸化物、並びに、コージェライト及びチタン酸アルミニウム等の酸化物を用いることができる。これらのうち、特に、炭化ケイ素質又は窒化ケイ素質等の非酸化物多孔質焼成体であることが望ましい。
これら多孔質焼成体は、脆性材料であるので、機械的な衝撃等により破壊されやすい。しかし、排ガス処理体の側面の周囲に保持シール材を巻き付けることにより、衝撃が吸収されやすくなるので、機械的な衝撃や熱衝撃により排ガス処理体にクラック等が発生するのを防止することができる。
【0062】
排ガス処理体には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が望ましく、この中では、白金がより望ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いる事もできる。これらの触媒は、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0063】
排ガス処理体としては、コージェライト等からなり、一体的に形成された一体型ハニカム構造体であってもよく、あるいは、炭化ケイ素等からなり、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含むペーストを介して複数個結束してなる集合型ハニカム構造体であってもよい。
【0064】
排ガス処理体は、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、排ガス処理体は、白金等の触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
【0065】
図10は、本発明の巻付体をケーシング内に圧入する様子を模式的に示す斜視図である。
図10では、ケーシング130に巻付体140を圧入する様子を模式的に示している。
本発明の巻付体をケーシングに圧入する際には、圧入治具を用いてもよい。圧入治具を用いる場合、その内部が短径側端部から長径側端部に向かってテーパー状に広がった圧入治具を準備し、圧入治具の短径側端部をケーシングの一端にはめ込んで固定し、巻付体を、圧入治具の長径側端部側から押し込むことにより圧入を行うことができる。
【0066】
ケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
また、ケーシングの形状は、略円筒型形状の他、クラムシェル型形状、ケーシング断面において略楕円型形状、略多角形型形状等を好適に用いることができる。
【0067】
本発明の巻付体は、隆起部が排ガス処理体の端面に引っ掛かっているため、ケーシング内への巻付体の配設時に排ガス処理体が倒れることが抑制される。そのため、ケーシング内への巻付体の配設作業の作業性を向上させることができる。
また、ケーシング内に巻付体を配設した後においても排ガス処理体がケーシング内で倒れにくくなる。
【0068】
次に、本発明の巻付体を使用して製造される排ガス浄化装置について説明する。
図11は、排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図11に示すように、排ガス浄化装置100は、金属ケーシング130と、金属ケーシング130に収容された排ガス処理体120と、排ガス処理体120及び金属ケーシング130の間に配設された保持シール材1とを備えている。
図11に示す排ガス浄化装置100では、保持シール材1は本発明の保持シール材である。
排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に並設された柱状のものである。なお、金属ケーシング130の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
【0069】
上述した構成を有する排ガス浄化装置100を排ガスが通過する場合について、
図11を参照して以下に説明する。
図11に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置100に流入した排ガス(
図11中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)120の排ガス流入側端面120aに開口した一のセル125に流入し、セル125を隔てるセル壁126を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁126で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面120bに開口した他のセル125から流出し、外部に排出される。
【0070】
以下に、本発明の保持シール材、巻付体及び保持シール材の製造方法の作用効果について説明する。
【0071】
(1)本発明の保持シール材には、マットの第1面に第1の長辺及び上記第2の長辺に沿って隆起部が設けられている。
この隆起部が設けられた面である第1面を排ガス処理体側に向けて排ガス処理体に巻き付けると、隆起部が排ガス処理体の端面より外側に突出して、隆起部の側面が上記排ガス処理体の端面の外周を覆った巻付体とすることができる。
このような巻付体では、隆起部が排ガス処理体の端面に引っ掛かるため、ケーシング内への巻付体の配設時に排ガス処理体が倒れることが抑制される。そのため、ケーシング内への巻付体の配設作業の作業性を向上させることができる。
また、ケーシング内に巻付体を配設した後においても排ガス処理体がケーシング内で倒れにくくなる。
【0072】
(2)本発明の保持シール材の製造方法では、シート状の無機繊維集合体をトムソン刃により厚さ方向に打ち抜く。そして、トムソン刃は、打ち抜き刃と打ち抜き刃の内周形状に沿って配置された弾性部材とを備えており、打ち抜き刃と上記弾性部材の間には無機繊維集合体が入り込むことができる隙間が形成されている。
上記方法であると、無機繊維集合体を打ち抜く際に打ち抜き刃と弾性部材の隙間に無機繊維集合体が入り込む。そして、上記隙間に入り込んだ無機繊維集合体は、打ち抜き時に弾性体との間で加圧されないので打ち抜きにより厚さが薄くならないため、打ち抜き時に弾性部材と接して加圧された他の部位に比べて厚さの厚い部位となる。そして、この部分が隆起部となって、隆起部を有する保持シール材が製造される。
【0073】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
(無機繊維準備工程)
まず、開繊工程において開繊する無機繊維を作製した。
塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al
2O
3:SiO
2=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して無機繊維前駆体を作製した。続いてこの無機繊維前駆体を焼成し、無機繊維を作製した。
【0075】
(a)開繊工程
次に、上記無機繊維を水中へ投入し、パルパーを用いて撹拌することで、無機繊維を撹拌し、短繊維化した。
【0076】
(b)スラリー調製工程
上記(a)開繊工程により得た上記無機繊維の溶液に対して、アクリル系樹脂を水に分散させた一般的に市販されているアクリルラテックス溶液を投入し、撹拌することにより、スラリーを調製した。
【0077】
(c)抄造工程
□500mmのタッピ式抄造機を用いて、上記スラリーを抄造することにより、目付量(単位面積当たりの重量)が1605g/m
2の無機繊維集合体を得た。
【0078】
(d)乾燥工程
プレス式乾燥機を用いて、得られた無機繊維集合体を圧縮した状態で熱処理することにより、厚さ10mmになるように無機繊維集合体を乾燥させた。
【0079】
(e)打ち抜き工程
トムソン刃として、
図5(a)に示す形態のトムソン刃を準備した。これはベニヤ板に天然ゴム製の弾性部材を貼り付け、炭素鋼製の打ち抜き刃を固定したものである。打ち抜き刃と内側弾性部材の間には5mmの隙間が設けられている。また、打ち抜き刃の高さは17mmであり、弾性部材(内側弾性部材及び外側弾性部材とも)の厚さは20mmとなっているので、打ち抜きを行わないときには打ち抜き刃の刃先が弾性部材から飛び出していない。
このトムソン刃を用いて、無機繊維集合体を打ち抜いて保持シール材を作製したところ、第1の長辺及び第2の長辺に沿った部分に幅5mmの隆起部が形成されていた。隆起部は、隆起部以外の部位に比べて1段厚くなっている段差状の隆起部であり、隆起部の厚さは隆起部以外の部分よりも1〜2mm厚くなっていた。