(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るスラブアンカー折曲機100の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、
図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0014】
実施の形態.
図1は、本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100の全体図である。
図1(a)は、スラブアンカー折曲機100の上下方向の姿勢をスラブアンカー20を曲げるときに合わせた状態の全体図である。
図1(b)は、
図1(a)のスラブアンカー折曲機100の状態から上下方向を逆にした全体図である。
図1(c)は、
図1(a)の矢印ARcに示す側から見たスラブアンカー折曲機100の説明図である。
図1(d)は、
図1(a)の矢印ARdに示す方向から見たスラブアンカー折曲機100の説明図である。
【0015】
橋等の構造物の鋼桁には、溶接等によってスラブアンカーと呼ばれる鋼材が接続される。スラブアンカーは、鋼桁と、鋼桁の上に配置された床版(コンクリート等)との水平方向のずれを抑制している。なお、このずれをより抑制することができるように、スラブアンカーは、予め定められた形状に曲げ形成される(後述する
図8(d)参照)。具体的には、スラブアンカーは、中央部が引き起こされるように曲げ形成され(後述する
図8(b)参照)、当該引き起こされた部分の端部側についても曲げ形成される(後述する
図8(c)参照)。スラブアンカー折曲機100は、これらの曲げ形成を行うのに用いられる。
図1を参照してスラブアンカー折曲機100の概要構成について説明する。
【0016】
<構成説明>
スラブアンカー折曲機100は、作業者が握持する部分である握持部1と、スラブアンカー20が挿入され、スラブアンカー20を曲げ形成する曲げ構造体1Bとを含む。
握持部1は、長尺状である。握持部1は、てこの原理による作用を大きくし、鋼板であるスラブアンカー20を曲げる際に作業者が加える力を低減している。
曲げ構造体1Bは、握持部1を引き上げるように回動させる動作を1度行うことで、スラブアンカー20の折り曲げ加工を連続して2回実施することができるようになっている。なお、スラブアンカー20に折り曲げ加工が行われる部分は、異なる。1回目の折り曲げ加工では、スラブアンカー20の中心側に対応し、スラブアンカー20のうち曲げ構造体1Bの先端側に位置する部分が曲げられる。2回目の折曲げ加工では、スラブアンカー20の端部側に対応し、スラブアンカー20のうち曲げ構造体1Bの奥側に位置する部分が曲げられる。
【0017】
図2は、本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100の先端側部分の拡大図である。
図2(a)は
図1(a)に示すスラブアンカー折曲機100に対応する拡大図であり、
図2(b)は
図1(b)に示すスラブアンカー折曲機100に対応する拡大図である。
図3は、本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100の先端側部分の拡大図であり、
図2(a)及び
図2(b)とは異なる方向から見た図である。
図3(a)は
図1(c)に示すスラブアンカー折曲機100に対応する拡大図であり、
図3(b)は
図1(d)に示すスラブアンカー折曲機100に対応する拡大図である。
図4は、
図3に示す点線A−A断面図である。
図2〜
図4を参照して、スラブアンカー折曲機100の詳細構成について説明する。
【0018】
曲げ構造体1Bは、先端側に設けられた第1の構造体1B1と、握持部1の先端に接続された第2の構造体1B2と、第1の構造体1B1と第2の構造体1B2とを回転自在に連結するヒンジ部5(軸)とを備えている。
第1の構造体1B1は、後述する接続部2の第2の面部2Bよりも先端側に設けられた第1の引上部4と、ヒンジ部5に設けられた入口側曲げ部7とを備えている。この第1の構造体1B1には、スラブアンカー20が挿入される隙間6(第1の隙間6A)が形成されている。
第2の構造体1B2は、握持部1の先端に設けられた接続部2と、接続部2の第1の面部2Aに設けられた奥側曲げ部3と、接続部2の第2の面部2Bよりも先端側に設けられた第2の引上部8とを備えている。この第2の構造体1B2には、スラブアンカー20が挿入される隙間(第2の隙間6B)が形成されている。
【0019】
(握持部1)
握持部1は、スラブアンカー20を折り曲げる作業者が手で持つ部分である。握持部1は、長手方向に垂直な断面形状が、たとえば円形状となるように構成することができる。握持部1には、その先端に接続部2が接続されている。握持部1と接続部2との接続手段は、特に限定されるものではなく、たとえば溶接で接続することもできるし、両者に嵌合機構を設けて接続することもできる。握持部1を構成する材料については、特に限定されるものではないが、握持部1が曲がってしまわないように剛性が高く、また、作業者が扱いやすいように比較的軽い金属等を採用するとよい。
【0020】
(接続部2)
接続部2は、たとえば直方体状の鋼材で構成されるものである。接続部2は、奥側曲げ部3が設けられている第1の面部2Aと、第2の引上部8が設けられている第2の面部2Bと、握持部1の先端が設けられている第3の面部2Cとを有している。第1の面部2Aと第3の面部2Cとは直交しており、第2の面部2Bと第1の面部2Aとは直交しており、第2の面部2Bと第3の面部2Cとは向かい合っている。
接続部2の第2の面部2Bには、奥側曲げ部3との間に隙間6が形成されるように、奥側曲げ部3が設けられている側からずれた位置に、第2の引上部8が設けられている。
ここで、対向面S1と対向面S2との間には、予め設定された第1の隙間6Aが形成されている。対向面S1は入口側曲げ部7に形成されており、対向面S2は第1の引上部4に形成されている。また、対向面S3と対向面S4との間には、予め設定された第2の隙間6Bが形成されている。対向面S3は奥側曲げ部3に形成され、対向面S4は第2の引上部8に形成されている。なお、隙間6は、第1の隙間6A及び第2の隙間6Bを含む。また、本実施の形態では、第1の隙間6A及び第2の隙間6Bは同じとしているが、それに限定されるものではなく、第1の隙間6Aが第2の隙間6Bよりも大きくてもよいし、その逆でもよい。
【0021】
(奥側曲げ部3)
奥側曲げ部3は、一方が接続部2の第1の面部2Aに接続されて固定され、他方がヒンジ部5に回転自在に連結している。奥側曲げ部3は、たとえば、平板状の金属材料で構成することができる。奥側曲げ部3は、たとえば、接続部2の第1の面部2Aにボルト等で固定されていてもよいし、溶接等で固定されていてもよい。
奥側曲げ部3の他方の部分は、第2の面部2Bから突出するように設けられている。この奥側曲げ部3の他方の部分は対向面S3を有しており、隙間6が形成された状態で第1の引上部4に対向している。
奥側曲げ部3の先端は、ヒンジ部5が回転自在に連結している。したがって、奥側曲げ部3は、ヒンジ部5を軸とし、入口側曲げ部7に対して回転自在である。より詳細には、握持部1、接続部2、奥側曲げ部3及び第2の引上部8は、お互いが動かないように接続されている。したがって、握持部1、接続部2、奥側曲げ部3及び第2の引上部8は、ヒンジ部5を軸とし、入口側曲げ部7に対して回転自在である。
【0022】
(第1の引上部4)
第1の引上部4は、スラブアンカー折曲機100の長手方向に直交する面で断面視したときに、L字形状となっている。第1の引上部4は、入口側曲げ部7に固定されている。第1の引上部4は、入口側曲げ部7に形成された対向面S1との間に第1の隙間6Aが形成されている。スラブアンカー折曲機100の初期状態では、第1の引上部4は、第2の引上部8と平行である。なお、初期状態とは、スラブアンカー20を曲げていないときにおけるスラブアンカー折曲機100の状態を指す。第1の引上部4は、たとえば、平板状の金属材料をL字に曲げ形成することで構成することができる。第1の引上部4と入口側曲げ部7とは、たとえば、溶接で接合することができる。
第1の引上部4は、スラブアンカー20の1回目の折曲げの際に、後述する入口側曲げ部7の角部7Aを中心として回動する。このとき、第1の引上部4は、第2の引上部8とともに、角部7Aの頂点部分を中心として回動する。つまり、第1の引上部4と第2の引上部8との相対的な位置関係は変化しない。第1の引上部4は、スラブアンカー20の2回目の折曲げの際には回動しない。
【0023】
(第2の引上部8)
第2の引上部8は、一端側が第2の面部2Bに接続され、他端側がヒンジ部5の軸の下方に位置するように設けられているものである。第2の引上部8は、奥側曲げ部3に形成された対向面S3に対向するように設けられている。第2の引上部8は、たとえば、平板状の金属材料で構成することができる。第2の引上部8は、スラブアンカー20の端部側と当接する部分である。第2の引上部8は、入口側曲げ部7よりも先端側に突出していない。すなわち、第2の引上部8は、先端側が、入口側曲げ部7の先端側よりもヒンジ部5寄りに設けられている。
第2の引上部8は、スラブアンカー20の1回目の折曲げの際に、角部7Aを中心として回動する。すなわち、作業者が、握持部1を回動させてスラブアンカー20を曲げると、第2の引上部8は、角部7Aを中心として回動する。また、第2の引上部8は、スラブアンカー20の2回目の折曲げの際に、ヒンジ部5を軸として回動する。すなわち、作業者が、握持部1を回動させてスラブアンカー20をさらに曲げると、第2の引上部8は、ヒンジ部5の周りを回動する。
【0024】
(ヒンジ部5)
ヒンジ部5は、奥側曲げ部3に接続されるとともに、入口側曲げ部7に接続されているものである。ヒンジ部5には、スラブアンカー20の1回目の折曲げの際に、第1の構造体1B1と第2の構造体1B2とを回転自在に連結する軸を含む。ヒンジ部5の軸は、スラブアンカー折曲機100の長手方向に直交し、第1の引上部4に平行な軸である。
【0025】
(隙間6)
隙間6には、スラブアンカー20が挿入される。隙間6は、接続部2の第2の面部2B、入口側曲げ部7に形成された対向面S1、第1の引上部4に形成された対向面S2、奥側曲げ部3に形成された対向面S3、及び第2の引上部8に形成された対向面S4によって形成されている。隙間6は、対向面S1と対向面S2との間に形成される第1の隙間6Aと、対向面S3と対向面S4との間に形成される第2の隙間6Bとを含む。
【0026】
(入口側曲げ部7)
入口側曲げ部7は、対向面S2に対向する対向面S1と、スラブアンカー20を折り曲げているときにスラブアンカー20に当接する先端面7Bと、先端面7Bと45度程度の角度をなす側面7Cとを含む。また、入口側曲げ部7は、対向面S1と先端面7Bとの接続位置に形成され、スラブアンカー20の1回目の折曲げの際に回転支点となる角部7Aを含む。入口側曲げ部7は、角部7Aの形成位置の角度が135度程度になるように形成されている。すなわち、対向面S1と先端面7Bとのなす角度は、135度程度である。
なお、入口側曲げ部7は、先端面7Bと側面7Cとが45度程度の角度をなし、対向面S1と先端面7Bとが135度程度の角度をなすものとして説明したが、これに限定されるものではない。得ようとしているスラブアンカー20の形状に応じて、適宜、これらの角度を設定することができる。
【0027】
<スラブアンカー折曲機100の動作説明>
図5は、本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100のヒンジ部5を軸とする動作前後の説明図である。
図6は、本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100がスラブアンカー20を折り曲げている様子の説明図である。
図5(a)は、ヒンジ部5を軸とする動作前の説明図であり、
図5(b)は、ヒンジ部5を軸とする動作後の説明図である。
図5を参照してスラブアンカー折曲機100の動作について説明する。
【0028】
スラブアンカー折曲機100は、
図5(a)に示す状態において、角部7Aをスラブアンカー20上に配置し、角部7Aを軸(支点)として握持部1を上側に引き上げるように回動させる。これにより、
図6(a)に示すように、スラブアンカー20は、角部7Aに対応する部分が、曲げられる。なお、角部7Aの角度は、135度程度に設定されている。したがって、スラブアンカー20は、135度程度の角度に曲げられることになる。
【0029】
スラブアンカー折曲機100は、
図5(b)に示す状態において、ヒンジ部5を軸(支点)として握持部1を入口側曲げ部7側に寄せるように回動させる。これにより、
図6(b)に示すように、スラブアンカー20は、ヒンジ部5の軸に対応する部分が曲げられる。
ここで、
図5(b)に示すように、握持部1とともに回動する構成は、接続部2、奥側曲げ部3、及び第2の引上部8(第2の構造体1B2)である。
一方、回動しない構成は、第1の引上部4及び入口側曲げ部7(第1の構造体1B1)である。また、ヒンジ部5は、軸部分の機構が動くだけである。したがって、ヒンジ部5も、回動しない。
【0030】
<スラブアンカー折曲機100の折曲げ原理説明>
図7は、本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100がスラブアンカー20の予め定められた2箇所を順次、折り曲げることができることを説明する図である。
図7(a)は、板材(スラブアンカー20)をスラブアンカー折曲機100の隙間6に挿入した状態を示す図である。
図7(b)は、角部7Aに発生する曲げモーメントを模式的に示す図である。
図7(c)は、ヒンジ部5に発生する曲げモーメントを模式的に示す図である。
図7を参照して、スラブアンカー20が、角部7Aの部分が曲がってから、ヒンジ部5の軸の部分が曲がることについて説明する。
【0031】
スラブアンカー20等に鋼材は、予め設定された力(曲げモーメント)が加えられると折れ曲がる。なお、スラブアンカー折曲機100の曲げモーメントは、スラブアンカー20の端部から軸までの長さと、握持部1に加える力との積に比例する。
ここで、スラブアンカー20の端部から角部7Aまでの長さをL1とし、スラブアンカー20の端部からヒンジ部5の軸までの長さをL2とする。
図7(a)に示すように、L1の方がL2よりも大きい。
【0032】
説明の便宜上、スラブアンカー20は均質な金属部材であり、どの位置においても、曲げるのに必要となるモーメントMは同じであるとする。
作業者は、握持部1に加える力を徐々に大きくしていく。作業者の加える力が大きくなっていき、力F1を与えているとする。そして、長さL1と力F1との積がモーメントMに到達したとする。つまり、スラブアンカー20は、角部7Aの部分で曲がり始める状況にある。
【0033】
ここで、長さL1と力F1との積はモーメントMに到達しているが、長さL2は長さL1よりも小さいため、長さL2と力F2との積はモーメントMに到達していない。したがって、スラブアンカー20は、ヒンジ部5の軸の部分で曲がることはない。
このように、スラブアンカー20は、作業者によって力F1が与えられると、まず角部7Aの部分で曲がることになる。なお、作業者が力F1を与え続けると、スラブアンカー20は、予め定められた角度(135度程度)となるまで曲げられる。
【0034】
作業者の加える力がさらに大きくなっていき、力F2が与えられているとする。長さL2と力F2との積がモーメントMに到達している。この状況では、スラブアンカー20は、ヒンジ部5の軸の部分で曲がり始める。
なお、作業者は力F1と力F2を与えるにあたって、握持部1の持つ位置を変えるとよい。たとえば、力F1より大きい力F2を与えるときには、握持部1のうちのより手前側を持って作業することで、てこの原理が大きく作用し、作業者の負担を抑制することができる。
【0035】
<スラブアンカー20の折曲げ工程説明>
図8は、本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100でスラブアンカー20を折り曲げる工程説明図である。なお、
図8において、スラブアンカー20の中央部分が鋼桁21上に溶接等で接続されている。
図8(a)は、スラブアンカー折曲機100をスラブアンカー20に挿入した状態を示す図である。
図8(b)は、角部7Aの頂部を支点としてスラブアンカー20を折り曲げた状態を示す図である。
図8(c)は、ヒンジ部5の軸部分を支点としてスラブアンカー20を折り曲げた状態を示す図ある。
図8(d)は、スラブアンカー20の折曲げが完了した状態を示す図である。
【0036】
なお、
図8において、スラブアンカー20は、一方側(
図8の紙面の右側)及び他方側(
図8の紙面の左側)の両方を曲げ形成するが、一方側の曲げ形成は完了している。
図8を参照して、スラブアンカー20の他方側の折曲げ工程について説明する。なお、スラブアンカー20の一方側の曲げ形成についても、以下に説明する他方側の曲げ形成と同様の作業で実施することができる。
【0037】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、作業者は、スラブアンカー折曲機100の隙間6(
図2参照)にスラブアンカー20を挿入した状態で、握持部1を上側に引き上げるように回動させる。このとき、作業者は、上述した力F1を加えているとする。
【0038】
図8(b)に示すように、スラブアンカー20は、角部7Aの頂部を支点として折れ曲がる。スラブアンカー20の設置面PLとスラブアンカー20の第1の構造体1B1及び第2の構造体1B2とのなす角度が、45度程度になるまで握持部1を引き上げると、第1の構造体1B1の先端面7Bとスラブアンカー20の上面とが当接する。
図8(b)に示す状態において作業者が力F1を加えている状況では、先端面7Bとスラブアンカー20の上面とが当接しているため、これ以上、スラブアンカー20が角部7Aの部分で曲がることはない。
【0039】
図8(c)に示すように、作業者が加える力を増やし、握持部1に力F2を加えると、スラブアンカー20は、ヒンジ部5の軸部分を支点として折れ曲がる。すなわち、作業者は、握持部1を
図8(b)に示す位置から、
図8(c)に示す位置まで回動させる。
握持部1を
図8(b)に示す位置から、
図8(c)に示す位置まで回動させると、第2の構造体1B2は、握持部1とともに、第1の構造体1B1に対して回動する。これにより、作業者は、ヒンジ部5の軸部分を支点として90度程度、スラブアンカー20を折り曲げる。これにより、
図8(d)のように、予め定められた形状のスラブアンカー20を得ることができる。
【0040】
<本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100の有する効果>
本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100は、長尺状の握持部1と、先端側に設けられた第1の構造体1B1、握持部1と第1の構造体1B1との間に接続された第2の構造体1B2、及び、第1の構造体1B1と第2の構造体1B2とを回転自在に連結する軸(ヒンジ部5の軸)を含む曲げ構造体1Bと、を備え、第1の構造体1B1は、先端側から第2の構造体1B2側に向かって形成された第1の隙間6Aと、第1の隙間6Aの形成方向に対して予め設定された角度をなしている先端面7Bとを含み、第2の構造体1B2は、第1の構造体1B1との位置関係が平行であるときに第1の隙間6Aに連通する第2の隙間6Bを含むものである。
本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100は、スラブアンカー20を隙間6(第1の隙間6A及び第2の隙間6B)に挿入して、握持部1を回動させるという簡素な動作で、スラブアンカー20のうちの隙間6への挿入口の部分(角部7Aの位置)を曲げ形成する第1の曲げ形成と、スラブアンカー20のうちの軸(ヒンジ部5の軸)の部分を曲げ形成する第2の曲げ形成との両方を順次実施することができる。このため、スラブアンカー20を曲げる際の作業者の負担を抑制することができる。
【0041】
本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100の軸(ヒンジ部5の軸)は、握持部1の長手方向に直交するように設けられ、曲げ構造体1Bは、第1の隙間6Aと第2の隙間6Bとの位置関係が平行であり、第1の隙間6Aと第2の隙間6Bとが連通する第1の状態と、第2の構造体1B2が第1の構造体1B1に対して回動し、第1の隙間6Aと第2の隙間6Bとのなす角度が交差する第2の状態とを含むものである。
作業者は、握持部1を予め定められた方向に回動させる動作を実施することで、スラブアンカー折曲機100の曲げ構造体1Bについて第1の状態と第2の状態とを変えることができる。これにより、作業者は、握持部1を予め定められた方向に回動させる動作を実施することで、入口側曲げ形成から連続して第2の曲げ形成を実施することができる。
【0042】
本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100の第1の隙間6Aは、対向配置されている、板状の第1の引上部4と先端面7Bが形成された入口側曲げ部7との間に形成されているものである。
また、本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100の第2の隙間6Bは、対向配置されている、板状の第2の引上部8と軸(ヒンジ部5の軸)を介して入口側曲げ部7に接続された奥側曲げ部3との間に形成されているものである。
作業者は、握持部1を予め定められた方向に回動させる動作を実施することで、第1の引上部4、第2の引上部8及び入口側曲げ部7及び奥側曲げ部3が回動し、第1の引上部4及び第2の引上部8によってスラブアンカー20が引き上げられて入口側曲げ形成を実施することができる。
作業者は、さらに握持部1を回動させると、軸(ヒンジ部5の軸)を境に第2の引上部8及び奥側曲げ部3が回動し、第2の引上部8によってスラブアンカー20がさらに引き上げられて第2の曲げ形成を実施することができる。
【0043】
本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100の第1の構造体1B1は、先端面7Bが第1の隙間6Aの形成位置よりも先端側に形成されているものである。
これにより、作業者が握持部1を回動していくと、先端面7Bとスラブアンカー20の上面とが当接することになる。したがって、必要以上に、スラブアンカー20が角部7Aの部分で曲がってしまうことを回避することができる。
【0044】
本実施の形態に係るスラブアンカー20の折曲方法は、鋼桁21に接続されるスラブアンカー20の折曲方法であって、長尺状の握持部1の先端に接続された曲げ構造体1Bの隙間6に、スラブアンカー20の端部側からスラブアンカー20を挿入する第1の工程と、曲げ構造体1Bの先端面7Bとスラブアンカー20の上面とが当接するまで握持部1を回動させ、スラブアンカー20に第1の曲げ形成を実施する第2の工程と、第2の工程の状態の握持部1を、曲げ構造体1Bに設けられた軸(ヒンジ部5の軸)を支点としてさらに回動させ、第1の曲げ形成を実施した位置よりもスラブアンカー20の端部側を曲げる第2の曲げ形成を実施する第3の工程と、を備えている。
これにより、作業者は、握持部1を予め定められた方向に回動させる第2の工程を実施することで、握持部1とともに曲げ構造体1B全体が回動し、スラブアンカー20が引き上げられて入口側曲げ形成を実施することができる。なお、第2の工程の回動動作は、先端面7Bとスラブアンカー20の上面とが接触するまで実施し、必要以上にスラブアンカー20が曲げられることを回避することができる。
作業者は、さらに握持部1を回動させる第3の工程を実施することで、軸(ヒンジ部5の軸)を境にして曲げ構造体1Bの一部が握持部1とともに回動し、スラブアンカー20の端部側がさらに引き上げられて第2の曲げ形成を実施することができる。
【0045】
従来は、たとえば万力等のような締め付け構造を備えた治具を利用して、スラブアンカーを曲げ形成することも行われていた。しかし、スラブアンカーを締め付ける治具は、スラブアンカーを締め付けた状態で曲げている作業中に破損してしまうことがあった。
本実施の形態に係るスラブアンカー折曲機100は、スラブアンカー20を締め付けるような構造ではなく、隙間6及びヒンジ部5を有する曲げ構造体1Bを備えた構造を採用しているものであり、作業中に破損してしまうことを回避することができる。