(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6478829
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】回転トルクの伝達機構および回転トルクの伝達方法、並びに摩擦振動の抑制方法
(51)【国際特許分類】
F16H 37/06 20060101AFI20190225BHJP
F16H 37/02 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
F16H37/06 D
F16H37/02 Z
【請求項の数】23
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-122466(P2015-122466)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-8973(P2017-8973A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】中野 健
(72)【発明者】
【氏名】角 直広
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 厚
【審査官】
川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−074843(JP,A)
【文献】
特開2004−257550(JP,A)
【文献】
特公昭45−026762(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 37/06
F16H 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面に垂直な第1軸線を中心に回転可能な駆動面と、
該駆動面に対向して配置され、面に垂直な第2軸線を中心に回転可能な従動面と、
該従動面または該駆動面に対する滑り摩擦力の回転方向に対する接線方向成分である有効摩擦力を調整する有効摩擦力調整手段とを有し、
該有効摩擦力調整手段は、回転体をなし、その回転軸線が該駆動面または該従動面に沿って回転可能に設けられ、該駆動面または該従動面に対して突出して、該従動面または該駆動面に対して、所定の押付力で押付けられ、
前記駆動面を一方の面に具備する駆動ディスクと、前記従動面を一方の面に具備する従動ディスクとが設けられ、
前記有効摩擦力調整手段は、該従動面または該駆動面に対する滑り摩擦を介して該第1軸線を中心とする回転トルクを該従動ディスクに伝達する回転トルク伝達体を形成し、
さらに、前記回転トルク伝達体の回転軸線を中心とする回転速度を調整する回転速度調整手段が設けられ、
前記回転速度調整手段により、前記回転トルク伝達体の前記回転軸線を中心とする回転速度を調整することにより、前記回転トルク伝達体に対する該従動面または該駆動面の相対速度の向きを変動させ、それにより、有効摩擦力を調整し、
前記有効摩擦力調整手段を前記駆動ディスクまたは前記従動ディスクのどちらか一方に設け、
前記有効摩擦力調整手段を前記回転軸線を中心に回転するための駆動モーターを、該回転トルク伝達体を設けたディスク側に設ける、ことを特徴とする回転トルク伝達機構。
【請求項2】
面に垂直な第1軸線を中心に回転可能な駆動面と、
該駆動面に対向して配置され、面に垂直な第2軸線を中心に回転可能な従動面と、
該従動面または該駆動面に対する滑り摩擦力の回転方向に対する接線方向成分である有効摩擦力を調整する有効摩擦力調整手段とを有し、
該有効摩擦力調整手段は、回転体をなし、その回転軸線が該駆動面または該従動面に沿って回転可能に設けられ、該駆動面または該従動面に対して突出して、該従動面または該駆動面に対して、所定の押付力で押付けられ、
前記駆動面を一方の面に具備する駆動ディスクと、前記従動面を一方の面に具備する従動ディスクとが設けられ、
前記有効摩擦力調整手段は、該従動面または該駆動面に対する滑り摩擦を介して該第1軸線を中心とする回転トルクを該従動ディスクに伝達する回転トルク伝達体を形成し、
さらに、前記回転トルク伝達体の回転軸線を中心とする回転速度を調整する回転速度調整手段が設けられ、
前記回転速度調整手段により、前記回転トルク伝達体の前記回転軸線を中心とする回転速度を調整することにより、前記回転トルク伝達体に対する該従動面または該駆動面の相対速度の向きを変動させ、それにより、有効摩擦力を調整し、
前記有効摩擦力調整手段を前記駆動ディスクと前記従動ディスクの両方に設け、
前記有効摩擦力調整手段を前記回転軸線を中心に回転するための駆動モーターを、該回転トルク伝達体を設けたディスク側に設ける、ことを特徴とする回転トルク伝達機構。
【請求項3】
面に垂直な第1軸線を中心に回転可能な駆動面と、
該駆動面に対向して配置され、面に垂直な第2軸線を中心に回転可能な従動面と、
該従動面または該駆動面に対する滑り摩擦力の回転方向に対する接線方向成分である有効摩擦力を調整する有効摩擦力調整手段とを有し、
該有効摩擦力調整手段は、回転体をなし、その回転軸線が該駆動面または該従動面に沿って回転可能に設けられ、該駆動面または該従動面に対して突出して、該従動面または該駆動面に対して、所定の押付力で押付けられ、
前記駆動面を一方の面に具備する駆動ディスクと、前記従動面を一方の面に具備する従動ディスクとが設けられ、
前記有効摩擦力調整手段は、前記駆動ディスクまたは従動ディスクの摩擦振動を抑制する摩擦振動抑制体を形成し、
さらに、前記摩擦振動抑制体をその回転軸線を中心として回転駆動する回転駆動手段が設けられ、
前記回転駆動手段により、前記摩擦振動抑制体をその回転軸線を中心として回転駆動することにより、前記摩擦振動抑制体に対する該従動面または該駆動面の相対速度の向きおよび大きさを変動させ、それにより、前記駆動面または従動面の摩擦振動を抑制し、
前記有効摩擦力調整手段を前記駆動ディスクまたは前記従動ディスクのどちらか一方に設け、
前記有効摩擦力調整手段を前記回転軸線を中心に回転するための駆動モーターを、該摩擦振動抑制体を設けたディスク側に設ける、ことを特徴とする回転トルク伝達機構。
【請求項4】
面に垂直な第1軸線を中心に回転可能な駆動面と、
該駆動面に対向して配置され、面に垂直な第2軸線を中心に回転可能な従動面と、
該従動面または該駆動面に対する滑り摩擦力の回転方向に対する接線方向成分である有効摩擦力を調整する有効摩擦力調整手段とを有し、
該有効摩擦力調整手段は、回転体をなし、その回転軸線が該駆動面または該従動面に沿って回転可能に設けられ、該駆動面または該従動面に対して突出して、該従動面または該駆動面に対して、所定の押付力で押付けられ、
前記駆動面を一方の面に具備する駆動ディスクと、前記従動面を一方の面に具備する従動ディスクとが設けられ、
前記有効摩擦力調整手段は、前記駆動ディスクまたは従動ディスクの摩擦振動を抑制する摩擦振動抑制体を形成し、
さらに、前記摩擦振動抑制体をその回転軸線を中心として回転駆動する回転駆動手段が設けられ、
前記回転駆動手段により、前記摩擦振動抑制体をその回転軸線を中心として回転駆動することにより、前記摩擦振動抑制体に対する該従動面または該駆動面の相対速度の向きおよび大きさを変動させ、それにより、前記駆動面または従動面の摩擦振動を抑制し、
前記有効摩擦力調整手段を前記駆動ディスクと前記従動ディスクの両方に設け、
前記有効摩擦力調整手段を前記回転軸線を中心に回転するための駆動モーターを、該摩擦振動抑制体を設けたディスク側に設ける、ことを特徴とする回転トルク伝達機構。
【請求項5】
前記有効摩擦力調整手段は、円柱体であり、該従動面または該駆動面に対して前記回転軸線に沿って線接触する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項6】
前記円柱体は、クラウン部を有し、該クラウン部が前記従動面または前記駆動面に接触する、請求項5に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項7】
前記有効摩擦力調整手段は、球体であり、該従動面または該駆動面に対して点接触する、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項8】
前記有効摩擦力調整手段は、少なくとも一対設けられ、前記第1軸線または前記第2軸線を中心とする直径方向の反対側にそれぞれ設けられ、前記回転速度調整手段または前記回転駆動手段により、互いに逆方向に回転する、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項9】
前記第1軸線と前記第2軸線とは、1直線上に位置決めされる、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項10】
前記回転軸線は、前記有効摩擦力調整手段が前記駆動面の回転により前記回転軸線を中心に自己回転駆動可能なように、前記駆動面の回転に対する接線方向に対して、所定傾斜角度を以って配置される、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項11】
前記所定傾斜角度は、調整可能である、請求項10に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項12】
前記回転トルク伝達機構は、前記駆動面をフライホイール面とし、前記従動面をクラッチディスク面とするクラッチ機構である、請求項1ないし請求項11いずれか1項に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項13】
前記回転トルク伝達機構は、前記駆動面をブレーキローター面とし、前記従動面をブレーキパッド面とするブレーキ機構である、請求項1ないし請求項11いずれか1項に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項14】
前記有効摩擦力調整手段は複数設けられ、前記第1軸線または前記第2軸線のまわりに等角度間隔を隔てて同心円状に配置される、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項15】
前記駆動ディスクまたは前記従動ディスクに、前記回転体を収容する凹部が設けられ、前記回転体は、その最拡径部が該駆動面または該従動面から突出するように、該凹部の縁部より回転可能に支持される、請求項1ないし請求項4いずれか1項に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項16】
前記駆動ディスクまたは前記従動ディスクに開口が設けられ、前記回転体は、その最拡径部が該駆動面または該従動面から突出するように、該開口内で回転可能に支持される、請求項1ないし請求項4いずれか1項に記載の回転トルク伝達機構。
【請求項17】
面に垂直な第1軸線を中心に回転可能な駆動面から、該駆動面に対向して配置され、面に垂直な第2軸線を中心に回転可能な従動面へ、滑り摩擦を介して回転トルクを伝達する方法において、
前記従動面または前記駆動面に対する滑り摩擦を介して、前記第1軸線を中心とする回転トルクを前記従動面に伝達する回転トルク伝達体を設けるとともに、該回転トルク伝達体をその回転軸線を中心に回転するための駆動モーターを、該回転トルク伝達体を設けた前記駆動面または前記従動面側に設け、該回転トルク伝達体の前記従動面または前記駆動面に対する接触部位における前記回転トルク伝達体の周速を変動させることにより、摩擦力の回転方向に対する接線方向成分を調整し、それにより、前記従動面に回転トルクを伝達する有効摩擦力を摩擦力の0%ないし100%の間で連続的に変化可能に回転トルクを伝達することを特徴とする回転トルク伝達方法。
【請求項18】
前記回転トルク伝達体の前記従動面または前記駆動面に対する接触部における前記回転トルク伝達体の周速を変動させつつ、前記回転トルク伝達体の該従動面または該駆動面に対する押付力を調整する、請求項17に記載の回転トルク伝達方法。
【請求項19】
面に垂直な第1軸線を中心に回転可能な駆動面と、
該駆動面に対向して配置され、面に垂直な第2軸線を中心に回転可能な従動面と、
該従動面または該駆動面に対する滑り摩擦力の回転方向に対する接線方向成分である有効摩擦力を調整する有効摩擦力調整手段とを有し、
該有効摩擦力調整手段は、回転体をなし、その回転軸線が該駆動面または該従動面に沿って回転可能に設けられ、該駆動面または該従動面に対して突出して、該従動面または該駆動面に対して、所定の押付力で押付けられ、
前記駆動面を一方の面に具備する駆動ディスクと、前記従動面を一方の面に具備する従動ディスクとが設けられ、
前記有効摩擦力調整手段は、前記駆動ディスクまたは従動ディスクの摩擦振動を抑制する摩擦振動抑制体を形成し、
さらに、前記摩擦振動抑制体をその回転軸線を中心として回転駆動する回転駆動手段が設けられ、
前記回転駆動手段により、前記摩擦振動抑制体をその回転軸線を中心として回転駆動することにより、前記摩擦振動抑制体に対する該従動面または該駆動面の相対速度の向きおよび大きさを変動させ、それにより、前記駆動面または従動面の摩擦振動を抑制し、該摩擦振動抑制体をその回転軸線を中心に回転するための駆動モーターを、該摩擦振動抑制体を設けた前記駆動ディスク側または前記従動ディスク側に設ける、回転トルク伝達機構を用いて、前記従動面または前記駆動面と前記回転トルク伝達体との間のすべり摩擦を介して前記駆動ディスクから前記従動ディスクへ回転トルクを伝達する際、前記駆動面または前記従動面と前記回転トルク伝達体との間で発生する摩擦力が速度弱化特性を示す場合において、前記摩擦振動抑制体を前記駆動モーターによりその回転軸線を中心に回転させることにより、摩擦力の増大を打ち消すように摩擦力の方向を調整して、前記従動面に回転トルクを伝達する有効摩擦力を減じる、ことを特徴とする摩擦振動の抑制方法。
【請求項20】
静止従動ディスクを前記回転トルク伝達体を介して、回転中の駆動面に所定の押付力で押し付けることにより、前記駆動ディスクから前記従動ディスクへ所望回転トルクを伝達するまでに摩擦振動が発生し始めたら、前記回転トルク伝達体の従動面または駆動面に対する接触部における前記回転トルク伝達体の周速を増大させることにより、摩擦力の増大を打ち消すように摩擦力の方向を調整して、前記従動面に回転トルクを伝達する有効摩擦力を減じる、請求項19に記載の摩擦振動の抑制方法。
【請求項21】
静止従動ディスクを前記回転トルク伝達体を介して、回転中の駆動面に所定の押付力で押し付けることにより、前記駆動ディスクから前記従動ディスクへ所望回転トルクを伝達するまでに摩擦振動が発生し始めたら、前記回転トルク伝達体の駆動面または従動面に対する接触部における前記回転トルク伝達体の周速を増大するとともに、所定の押付力を調整することにより、摩擦力の増大を打ち消すように摩擦力の方向を調整して、前記従動ディスクに回転トルクを伝達する有効摩擦力を減じる、請求項19に記載の摩擦振動の抑制方法。
【請求項22】
所望回転トルクが前記駆動ディスクから前記従動ディスクへ伝達されるまで、前記回転トルク伝達体の駆動面または従動面に対する接触部における前記回転トルク伝達体の周速を漸次増大するとともに、所定の押付力を漸次増大する、請求項21に記載の摩擦振動の抑制方法。
【請求項23】
所望回転トルクが前記駆動ディスクから前記従動ディスクへ伝達されるまで、前記回転トルク伝達体の駆動面または従動面に対する接触部における前記回転トルク伝達体の周速を漸次低減するとともに、所定の押付力を漸次低減する、請求項21に記載の摩擦振動の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転トルクの伝達機構および回転トルクの伝達方法、並びに摩擦振動の抑制方法に関し、より詳細には、単純な構成を用いて簡易なやり方により、滑らかかつ連続的な回転トルクの伝達を可能とする回転トルクの伝達機構および回転トルクの伝達方法、並びに単純な構成を用いて簡易なやり方により、摩擦振動を抑制することが可能な摩擦振動の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、すべり摩擦を利用してトルク伝達や制動を行う回転機械が用いられており、クラッチおよびブレーキはその例である。
クラッチは、エンジンのトルクを無駄なくタイヤに伝えるために設けられている自動変速機(Automatic Transmission) に不可欠な機械要素であり、トルクの伝達と遮断を行う。自動車に採用されている湿式クラッチでは、環状プレートの摩擦板と相手鋼板に垂直荷重を加えることで生じる摩擦力を利用している。トルクの伝達を開始する係合の際、振動が発生する場合があり、その振動はジャダ(摩擦振動)と呼ばれている。ジャダはトルクを遮断するすべり状態への遷移際や定常すべり中に外乱が加わった場合にも発生することが知られている。
【0003】
湿式クラッチ内はAT フルード(ATF)によって潤滑されており、係合の際の潤滑状態は、係合初期では流体潤滑、 荷重の増大と相対速度の低下をともない混合潤滑となり、係合完了間際には境界潤滑となる。
ジャダの発生原因は、
図7に示すように、混合潤滑における動摩擦係数の速度弱化(μ―V 特性が負勾配)の特性であるとされている。振動の発生原因とされている摩擦特性は、ペーパ摩擦材の組成、 気孔性、材料物性、表面性状、ATF 添加剤とクラッチ摺動材との相互作用に依存する。 振動の抑制のために、境界潤滑における摩擦係数μc を低下させることで動摩擦係数の速度強化の特性を得ようと上記のインターフェースの改良が試行錯誤されている。ただし、μc の低下はクラッチの1次性能であるトルク伝達の能力の低下につながる。トルク伝達能力を高めるための高摩擦係数化と、ジャダを抑制するための摩擦特性の適正化の両立が求められている。 高摩擦係数化する方法としては、ペーパ摩擦材の低弾性化や接触部の平坦化によって真実接触面積を増大させ、固体摩擦成分の占める割合を大きくすることが有効との指針が示されている。
【0004】
一方、ブレーキは制動のための機械要素であり、自動車に代表される輸送機械には必要不可欠である。 自動車用のブレーキには、ドラムブレーキとディスクブレーキとがあるが、放熱性が優れることからディスクブレーキが主流となっている。ディスクブレーキに生じる振動については、様々な振動がこれまでに観測されている。ディスクブレーキの振動は、ロータの面内振動と面外振動に大別される。前者は主に動摩擦力の速度弱化の特性に起因した振動であり、 後者はモードカップリング不安定性(構造不安定性)に起因した振動である。動摩擦力の速度弱化の特性に起因する振動に対しては、摩擦材の改良によって振動の発生原因となっている摩擦特性を改善する研究が主に取り組まれている。
【0005】
また、モードカップリング不安定性に起因した振動に対しては、有限要素法等により数値的に固有値解析を行い、系の平衡点を安定化させるために必要な構造の調整を行うことで振動を抑制する研究が主に取り組まれている。
【0006】
機械製品のすべり摩擦に現れる振動は、いまだに抜本的な解決策が得られていない問題である。また、機械が人にとって身近な存在となった現代において、人に不安感や不快感を与える機械の振動や音を問題とする意識が高まっている。特に自動車業界の場合、近年普及が著しいハイブリット自動車や次世代自動車ではエンジンの振動や音が少ないことから、 これまで陰に隠れていた振動や音が明るみに曝されている状況となり、問題解決への要求は強まる一方である。
【0007】
すべり摩擦に現れる振動に対する現状の抑制方法について、振動の発生原因となる摩擦特性を摩擦材や潤滑剤といったインターフェースの変更により改善することが主流である。他の方法には、機械システムの振動特性に注目して系の平衡点が安定となるように機械システムの設計を変更する方法もある。
インターフェースの変更による対処に頼る要因として、(1)機械システムの構成を改める対処法に明確な指針がないこと、(2)設計の変更による構造の複雑化やコストの増大が見込まれること、(3)機械製品における設計の細分化と縦割りの設計フローが柔軟な設計変更を妨げていること、が挙げられる。もちろん、インターフェースの変更で対応が可能であれば問題はない。
しかしながら、「振動を抑制する(機械製品の2次性能を向上する)ための摩擦特性の改善」と「機械製品の1次性能を向上するための摩擦特性の改善」は、トレードオフの関係にあることが多い。例えば、トルク伝達や制動の場面では、高摩擦係数の材質は1次性能を向上させるが、μ-V 特性が負勾配となりやすいことから敬遠されがちである。本来、 機械製品の1次性能として理想とされる摩擦特性があり、それを実現することが望ましい。すなわち、製品性能として、理想的な摩擦特性を実現させた上で、そこに生じうる振動は機械システム(系)の構成要素を利用して抑制することが問題の解決方法として望ましい。機械システムの構成要素によって振動が抑制できれば、優れた摩擦摩耗特性を示す材料を選択できるので、1次と2次の両性能を高い次元で両立した製品の実現が可能となる。なお、速度弱化特性は、材料および摺動面の潤滑剤により影響を受けることは判明しているが、現状、このような材料、潤滑剤の選択により、所望の速度弱化特性、さらには速度強化特性を得るには至っていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、単純な構成を用いて簡易なやり方により、滑らかかつ連続的な回転トルクの伝達を可能とする回転トルク伝達機構および回転トルク伝達方法を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、単純な構成を用いて簡易なやり方により、摩擦振動を抑制することが可能な摩擦振動の抑制方法を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、単純な構成を用いて簡易なやり方により、摩擦振動を抑制しつつ所望の回転トルクの伝達を可能とする摩擦振動の抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明の回転トルク伝達機構は、面に垂直な第1軸線を中心に回転可能な駆動面と、該駆動面に対向して配置され、面に垂直な第2軸線を中心に回転可能な従動面と、該従動面または該駆動面に対する滑り摩擦力の回転方向に対する接線方向成分である有効摩擦力を調整する有効摩擦力調整手段とを有し、
該有効摩擦力調整手段は、回転体をなし、その回転軸線が該駆動面または該従動面に沿って回転可能に設けられ、該駆動面または該従動面に対して突出して、該従動面または該駆動面に対して、所定の押付力で押付けられる、構成としている。
【0010】
以上の構成を有する回転トルク伝達機構によれば、駆動面が面に垂直な第1軸線を中心に回転することにより発生する回転トルクは、回転体が駆動面または従動面に対して突出して該従動面または駆動面に対して、所定の押付力で押付けられた状態で、回転体と該駆動面または該従動面との間のすべり摩擦を介して、駆動面に対向して配置される従動面に伝達され、従動面は、面に垂直な第2軸線を中心に回転する。
その際、回転体が、所定の押付力で押付けられた状態で、駆動面または該従動面に沿う回転軸線を中心に回転することにより、それに応じて、回転体に対する従動面または駆動面の相対速度が変動し、それにより、従動面または駆動面に対する滑り摩擦力の回転方向に対する接線方向成分である有効摩擦力が変動する。
このような有効摩擦力の変動に応じて、駆動面から従動面への回転トルクの伝達は円滑に変動し、特に、回転体と従動面または駆動面との関係が速度弱化特性を示す場合には、有効摩擦力が低減するように変動すれば、摩擦振動を抑制することが可能である。
【0011】
また、前記駆動面を一方の面に具備する駆動ディスクと、前記従動面を一方の面に具備する従動ディスクとが設けられ、
前記有効摩擦力調整手段は、該従動面または該駆動面に対する滑り摩擦を介して該第1軸線を中心とする回転トルクを該従動ディスクに伝達する回転トルク伝達体を形成し、
さらに、前記回転トルク伝達体の回転軸線を中心とする回転速度を調整する回転速度調整手段が設けられ、
前記回転速度調整手段により、前記回転トルク伝達体の前記回転軸線を中心とする回転速度を調整することにより、前記回転トルク伝達体に対する該従動面または該駆動面の相対速度の向きを変動させ、それにより、有効摩擦力を調整するのがよい。
【0012】
以上の構成を有する回転トルク伝達機構によれば、第1軸線を中心に回転する駆動ディスクから回転トルク伝達体を介して従動ディスクへ回転トルクを伝達し、従動ディスクが第2軸線を中心に回転することが可能である。
より詳細には、回転トルク伝達体が回転体として、たとえば、その回転軸線が従動面に沿って、従動ディスクに回転可能に設けられ、駆動面に対して、所定の押付力で押付けられる場合、回転トルク伝達体と駆動面との間のすべり摩擦を通じて、所定の押付力、回転トルク伝達体と駆動面との間の動摩擦係数、および回転トルク伝達体の駆動面への接触部位の第1軸線からの距離に応じて、従動ディスクへ回転トルクが伝達される。
その際、回転速度調整手段により、回転トルク伝達体の回転軸線を中心とする回転速度を調整することにより、駆動面の回転トルク伝達体に対する相対速度差の変動が引き起こされ、それにより、回転トルク伝達体の駆動面に対する摩擦力の回転方向接線成分(回転トルク伝達体に回転トルクを伝達する有効摩擦力)が調整され、以って、駆動面と回転トルク伝達体との間の押付力が一定の状態で、回転トルク伝達体と駆動面とを非接触とする必要なく、有効摩擦力を摩擦力の0%から100%の範囲で可変制御して、単純な構成を用いて簡易なやり方により、滑らかかつ連続的な回転トルクの伝達が可能となる。
この場合、回転トルク伝達体の回転速度の調整のみで回転トルクの円滑かつ連続的な伝達が可能となるので、駆動面と従動面との間で係合関係と非係合関係とを繰り返すことにより、回転トルクを伝達する場合には、係合のたびに駆動面と従動面との間に衝撃力が引き起こされるのに対して、このような衝撃力を生じることなく、回転トルクの円滑かつ連続的な伝達が可能である。
【0013】
さらに、前記駆動面を一方の面に具備する駆動ディスクと、前記従動面を一方の面に具備する従動ディスクとが設けられ、
前記有効摩擦力調整手段は、前記駆動ディスクまたは従動ディスクの摩擦振動を抑制する摩擦振動抑制体を形成し、
さらに、前記摩擦振動抑制体をその回転軸線を中心として回転駆動する回転駆動手段が設けられ、
前記回転駆動手段により、前記摩擦振動抑制体をその回転軸線を中心として回転駆動することにより、前記摩擦振動抑制体に対する該従動面または該駆動面の相対速度の向きおよび大きさを変動させ、それにより、前記駆動面または従動面の摩擦振動を抑制するのがよい。
【0014】
また、前記有効摩擦力調整手段は、円柱体であり、該従動面または該駆動面に対して前記回転軸線に沿って線接触するのでもよい。
さらに、前記円柱体は、クラウン部を有し、該クラウン部が前記従動面または前記駆動面に接触するのでもよい。
さらにまた、前記有効摩擦力調整手段は、球体であり、該従動面または該駆動面に対して点接触するのでもよい。
加えて、前記有効摩擦力調整手段は、少なくとも一対設けられ、前記第1軸線または前記第2軸線を中心とする直径方向の反対側にそれぞれ設けられ、前記回転速度調整手段または前記回転駆動手段により、互いに逆方向に回転するのでもよい。
【0015】
さらに、前記第1軸線と前記第2軸線とは、1直線上に位置決めされるのでもよい。
また、前記回転軸線は、前記有効摩擦力調整手段が前記駆動面の回転により前記回転軸線を中心に自己回転駆動可能なように、前記駆動面の回転に対する接線方向に対して、所定傾斜角度を以って配置されるのがよい。
さらにまた、前記所定傾斜角度は、調整可能であるのがよい。
加えて、前記回転トルク伝達機構は、前記駆動面をフライホイール面とし、前記従動面をクラッチディスク面とするクラッチ機構でもよい。
【0016】
さらに、前記回転トルク伝達機構は、前記駆動面をブレーキローター面とし、前記従動面をブレーキパッド面とするブレーキ機構でもよい。
さらにまた、前記有効摩擦力調整手段を前記駆動ディスクまたは前記従動ディスクのどちらか一方に設けるのでもよい。
また、前記有効摩擦力調整手段を前記駆動ディスクと前記従動ディスクの両方に設けるのでもよい。
加えて、前記有効摩擦力調整手段を前記回転軸線を中心に回転するための駆動モーターを、該回転トルク伝達体を設けたディスク側に設けるのでもよい。
また、前記有効摩擦力調整手段は複数設けられ、前記第1軸線または前記第2軸線のまわりに等角度間隔を隔てて同心円状に配置されるのでもよい。
【0017】
さらに、前記駆動ディスクまたは前記従動ディスクに、前記回転体を収容する凹部が設けられ、前記回転体は、その最拡径部が該駆動面または該従動面から突出するように、該凹部の縁部より回転可能に支持されるのでもよい。
さらにまた、前記駆動ディスクまたは前記従動ディスクに開口が設けられ、前記回転体は、その最拡径部が該駆動面または該従動面から突出するように、該開口内で回転可能に支持されるのでもよい。
【0018】
上記課題を達成するために、本発明の回転トルク伝達方法は、
面に垂直な第1軸線を中心に回転可能な駆動面から、該駆動面に対向して配置され、面に垂直な第2軸線を中心に回転可能な従動面へ、滑り摩擦を介して回転トルクを伝達する方法において、
前記従動面または前記駆動面に対する滑り摩擦を介して、前記第1軸線を中心とする回転トルクを前記従動面に伝達する回転トルク伝達体を設け、該回転トルク伝達体の前記従動面または前記駆動面に対する接触部位における前記回転トルク伝達体の周速を変動させることにより、摩擦力の回転方向に対する接線方向成分を調整し、それにより、前記従動面に回転トルクを伝達する有効摩擦力を摩擦力の0%ないし100%の間で連続的に変化可能に回転トルクを伝達する、構成としている。
また、前記回転トルク伝達体の前記従動面または前記駆動面に対する接触部における前記回転トルク伝達体の周速を変動させつつ、前記回転トルク伝達体の該従動面または該駆動面に対する押付力を調整するのがよい。
【0019】
上記課題を達成するために、本発明の摩擦振動の抑制方法は、
上記回転トルク伝達機構を用いて、前記従動面または前記駆動面と前記回転トルク伝達体との間のすべり摩擦を介して前記駆動ディスクから前記従動ディスクへ回転トルクを伝達する際、前記駆動面または前記従動面と前記回転トルク伝達体との間で発生する摩擦力が速度弱化特性を示す場合において、前記摩擦振動抑制体をその回転軸線を中心に回転させることにより、摩擦力の増大を打ち消すように摩擦力の方向を調整して、前記従動面に回転トルクを伝達する有効摩擦力を減じる、構成としている。
【0020】
以上の構成を有する摩擦振動の抑制方法によれば、たとえば、従動軸である第2軸線が正方向にねじられたとき、回転トルク伝達体は上向きの擾乱速度が加わるところ、回転トルク伝達体に対する駆動面または従動面の相対速度は、絶対値が減少するだけではなく、回転トルク伝達体の回転速度の影響を受けて、方向が変化する。ここで、相対速度の絶対値の減少は、回転トルク伝達体の駆動面または従動面に対する摩擦力の絶対値を増加させるので、これが有効摩擦力の増加(ひいては摩擦トルクの増加)を招き、平衡点を不安定化させる。それに対して、回転トルク伝達体に対する駆動面または従動面の相対速度の方向の変化は、摩擦力の方向の変化を引き起こし、有効摩擦力を減少(ひいては摩擦トルクを減少)させるので、平衡点を安定させる。よって、相対速度の絶対値の減少による摩擦力の増大を打ち消すように摩擦力の方向を調整することにより、ジャダ(摩擦振動)を抑制することが可能となる。
以上のように、回転トルク伝達体の回転によって、相対速度と擾乱速度の間にヨー軸まわりのミスアライメントを与え、摩擦力の方向の変化が生み出す見掛け上の粘性減衰効果を利用できるようにすることにより、単純な構成を用いて簡易なやり方により、摩擦振動の抑制による摺動面の省エネルギー化を達成しつつ回転トルクの伝達が可能となる。
【0021】
さらにまた、静止従動ディスクを前記回転トルク伝達体を介して、回転中の駆動ディスクに所定の押付力で押し付けることにより、前記駆動ディスクから前記従動ディスクへ所望回転トルクを伝達するまでに摩擦振動が発生し始めたら、前記回転トルク伝達体の従動面または駆動面に対する接触部における前記回転トルク伝達体の周速を増大させることにより、摩擦力の増大を打ち消すように摩擦力の方向を調整して、前記従動面に回転トルクを伝達する有効摩擦力を減じるのでもよい。
【0022】
加えて、静止従動ディスクを前記回転トルク伝達体を介して、回転中の駆動面に所定の押付力で押し付けることにより、前記駆動ディスクから前記従動ディスクへ所望回転トルクを伝達するまでに摩擦振動が発生し始めたら、前記回転トルク伝達体の駆動面または従動面に対する接触部における前記回転トルク伝達体の周速を増大するとともに、所定の押付力を調整することにより、摩擦力の増大を打ち消すように摩擦力の方向を調整して、前記従動ディスクに回転トルクを伝達する有効摩擦力を減じるのでもよい。
さらに、所望回転トルクが前記駆動ディスクから前記従動ディスクへ伝達されるまで、前記回転トルク伝達体の駆動面または従動面に対する接触部における前記回転トルク伝達体の周速を漸次増大するとともに、所定の押付力を漸次増大するのでもよい。
さらにまた、所望回転トルクが前記駆動ディスクから前記従動ディスクへ伝達されるまで、前記回転トルク伝達体の駆動面または従動面に対する接触部における前記回転トルク伝達体の周速を漸次低減するとともに、所定の押付力を漸次低減するのでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明に係るトルク伝達機構の実施形態における部分断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るトルク伝達機構の実施形態における平面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るトルク伝達機構の実施形態におけるトルク伝達の原理を示す図であり、
図3(a)から
図3(d)まで、回転トルク伝達部の回転速度が増大する状況を示す。
【
図4】
図4は、本発明に係るトルク伝達機構の実施形態における摩擦振動の発生原理を示す
図3と同様な図である。
【
図5】
図5は、本発明に係るトルク伝達機構の実施形態における摩擦振動の抑制原理を示す
図4と同様な図である。
【
図6】
図6は、本発明に係るトルク伝達機構の変形例を示す
図2と同様な平面図である。
【
図7】
図7は、縦軸を摩擦力、横軸を相対速度とする速度弱化特性を示す概念グラフである。
【
図8】
図8は、本発明に係るトルク伝達機構において、回転トルク伝達体の回転速度および押付力の調整により、摩擦振動の抑制と回転トルクの伝達とを行うやり方を示す表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係るトルク伝達機構の第1実施形態を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0025】
トルク伝達機構10の基本構成を
図1および
図2に示す。トルク伝達機構10は、駆動軸18まわりに回転する駆動ディスク15と、従動軸14で支持された従動ディスク13からなる。駆動ディスク15はトルク伝達面である駆動面16を備えている。従動ディスク13はトルク伝達面である従動面17を備えている。駆動軸18の回転軸線(第1軸線)X1と従動軸14の回転軸線(第2軸線)X2は1直線状に位置決めされている。従動ディスク13には、回転トルク伝達体を構成する自転する2個のローラ22がそれぞれ、回転軸線X2のまわりの直径方向反対側に組み込まれており、駆動面16と従動ディスク13のローラ22の接触部に作用する摩擦力でトルクを伝達する。ローラ22の自転の回転数は、外部の駆動装置(図示せず)により可変とする。それぞれのローラ22は、クラウン部を有する円柱体であり、円柱体の中心軸線がローラ22の回転軸線X3を構成する。駆動ディスク15、従動ディスク13およびローラ22それぞれの材質は、ローラ22が摺動する駆動面16を有する駆動ディスク15の摩耗 の観点から定めればよく、たとえば、ディスク側がポリマー製であるのに対して、ローラ22は、金属製である。
【0026】
たとえば、従動ディスク13には、矩形開口20が設けられ、ローラ22の端面28から突出する支持シャフト29がベアリング(図示せず)を介して支持され、回転駆動モーター(図示せず)に連結しているのでもよい。この場合、回転駆動モーターは、ローラ22が設置される従動ディスク13上に設けられ、ローラ22と一体で第2軸線X2を中心に回転するのがよい。
ローラ22の個数は任意であり、すべてのローラ22を駆動ディスク15に組み込んでもよい。また、摩擦力の速度弱化特性(相対速度の増加により摩擦力が減少する特性)により生じるジャダは、細い従動軸14のねじり振動として現れるものとする。ローラ22の回転軸線X2からの距離は、駆動面16から従動ディスク13へ伝達すべき回転トルクに応じて、適宜設定すればよい。回転トルクの円滑かつ連続的な伝達、および摩擦振動の抑制にとって、駆動ディスクの回転軸線X1を中心とする回転方向と、ローラの回転軸線X3を中心とする回転方向とに技術的関連性はなく、それぞれ任意に定めればよい。
なお、変形例として、駆動ディスク15に、ローラ22を収容する凹部が設けられ、ローラ22は、その最拡径部(クラウン部)が駆動面16から突出するように、凹部の縁部より回転可能に支持されるのでもよい。
【0027】
従動ディスク13に組み込まれたローラ22の自転のことを、以後「スピン」と呼ぶ。
図1および
図2のトルク伝達機構は、ローラ22のスピンの作用により、(1)伝達トルクの可変制御機能、および、(2)ジャダの抑制機能を有する。
以後、両者の原理を図式的に解説する。
【0028】
まず、ローラ22のスピンによる伝達トルクの可変制御について、説明する。伝達トルクの可変制御の原理を
図3に示す。上段は、
図1および
図2の右側のローラ22に作用する摩擦力Fを示したもの、下段は、接触部における速度の関係を示したものである。ただし、簡単のために、接触部における駆動面の速度Vdriveは上向きで一定、従動ディスク13は静止しており、Fの絶対値は相対速度によらず一定とする。(この仮定のもとでは、ジャダは発生しない。)
まず、スピンなしの状況を描いた
図3(a)では、ローラ22に対する駆動面の相対速度VrelはVdrive と一致する。従って、Fの方向は上向きとなり、従動ディスク13にトルクを伝達する有効摩擦力Feff(Fのcos成分)はFの絶対値と一致する。(これらの状況は、一般的なトルク伝達機構と同じである。)
【0029】
次に、
図3(a)のローラ22に低速なスピンを加えると、
図3(b)のように、速度の関係に変化が生じる。
すなわち、接触部におけるローラ22のスピンの周速Vspinが左向きに加わることにより、Vrelの方向が右斜め上に変化する。ここで、摩擦力Fの方向は常に相対速度Vrelの方向と一致することに注意すると、Fの方向も右斜め上となるので、Fのcos成分として与えられるFeffは、
図3(a)よりも減少することがわかる。さらに、
図3(b)よりもスピンの速度を増加させると、
図3(c)および(d)のように状況が変化する。いずれも接触部に作用するFの絶対値に変化はないが、Vspinの増加にともないFの方向が右回りに変化することにより、Feffが連続的に減少する。
【0030】
ここで、従動ディスク13への伝達トルクは、Feffに比例する。また、Feffは理論上、最大値F(スピンなしの場合)から最小値0(十分高速なスピンを加えた場合)の間を連続的に変化する。従って、
図1および
図2の機構では、駆動面16と従動ディスク13のローラ22の接触荷重が一定であっても、ローラ22のスピンの速度を変えることにより、伝達トルクを最大値から零までなめらかに可変制御することができる。
【0031】
次に、ローラ22のスピンによるジャダの抑制について説明する。
図1および
図3の機構において、ローラ22のスピンがなければ、駆動面16と従動ディスク13のローラ22の接触部に作用する摩擦力が速度弱化特性(相対速度の増加により摩擦力が減少する特性)を示すとき、平衡点が不安定となり、従動軸14のねじり振動(ジャダ)が発生する。このメカニズムを図解したものが
図4である。平衡状態を描いた
図4(a)を基準として、(何らかの理由で)従動軸14が正方向にねじられたとき、
図4(b)に示すように、ローラ22には上向きの擾乱速度Vdistが加わる。
【0032】
このとき、
図4(b)の相対速度Vrelの絶対値は(a)よりも減少するので、速度弱化特性により摩擦力Fは増加する。従って、従動軸14が正方向にねじれると、正方向の摩擦トルクが増加するので、摩擦トルクが従動軸14のねじれを増幅する関係となり、平衡点が不安定化して、ジャダが発生する。
【0033】
しかし、接触部に作用する摩擦力が
図4と同じ速度弱化特性であっても、ローラ22にスピンを加えると、ジャダを抑制することができる。この制振原理を図解したものが
図5である。スピンが加えられた状態での平衡状態を描いた
図5(a)を基準として、(やはり何らかの理由で)従動軸14が正方向にねじられたとき、
図5(b)が示すように、ローラ22には上向きの擾乱速度Vdistが加わる。
このとき、
図5下段に示した速度の関係によると、相対速度Vrelは、絶対値が減少するだけではなく、ローラ22のスピンの周速Vspinの影響を受けて、方向が右回りに変化する。ここで、Vrelの絶対値の減少は、
図5の場合と同様に、摩擦力Fの絶対値を増加させるので、これが有効摩擦力Feffの増加(ひいては摩擦トルクの増加)を招き、平衡点を不安定化させる。しかし、Vrelの方向の右回りの変化は、Fの方向の右回りの変化を招き、Feffを減少(ひいては摩擦トルクを減少)させるので、平衡点を安定させる。
図5では、両者の競合の結果として、(b)のFeffが(a)よりも(わずかながら)下回っている様子が描かれている。この場合、従動軸14が正方向にねじれると、正方向の摩擦トルクが減少するので、平衡点はむしろ安定化され、ジャダは発生しない。
【0034】
以上を要するに、
図1および
図2の機構では、接触部に作用する摩擦力が速度弱化特性を示したとしても、ローラ22にスピンを加えることによりジャダを回避して、トルクを滑らかに伝達することができる。その本質は、ローラ22のスピン(Vspin) によって相対速度( Vrel) と擾乱速度(Vdist) の間にヨー軸まわりのミスアライメント(YAM) を与え、摩擦力の方向の変化が生み出す見掛け上の粘性減衰効果を利用できる形にした点にある。
この場合の見掛け上の粘性減衰効果は、すべり摩擦を利用するトルク伝達であるが、線形的な摩擦減衰でなく、指数関数的な大きな粘性減衰効果となる。
【0035】
以上の構成を有する回転トルク伝達機構によれば、第1軸線X1を中心に回転する駆動面16からローラ22を介して従動ディスク13へ回転トルクを伝達し、従動ディスク13が第2軸線X2を中心に回転することが可能である。
より詳細には、ローラ22が回転体として、たとえば、その回転軸線X3が従動面17に沿って、従動ディスク13に回転可能に設けられ、駆動面16に対して、所定の押付力で押付けられる場合、ローラ22と駆動面16との間のすべり摩擦を通じて、所定の押付力、ローラ22と駆動面16との間の動摩擦係数、およびローラ22の駆動面16への接触部位の第2軸線X2からの距離に応じて、従動ディスク13へ回転トルクが伝達される。
その際、回転速度調整手段により、ローラ22の回転軸線X3を中心とする回転速度を調整することにより、駆動面16のローラ22に対する相対速度差の変動が引き起こされ、それにより、ローラ22の駆動面16に対する摩擦力の回転方向接線成分(従動ディスク13に回転トルクを伝達する有効摩擦力)が調整され、以って、駆動面16と従動ディスク13のローラ22との間の押付力が一定の状態で、ローラ22と駆動面16とを非接触とする必要なく、有効摩擦力を摩擦力の0%から100%の範囲で可変制御して、単純な構成を用いて簡易なやり方により、滑らかかつ連続的な回転トルクの伝達が可能となる。
【0036】
以上の構成を有する摩擦振動の抑制方法によれば、たとえば、従動軸である第2軸線X2が正方向にねじられたとき、ローラ22は上向きの擾乱速度が加わるところ、ローラ22に対する駆動面16の相対速度は、絶対値が減少するだけではなく、ローラ22の回転速度の影響を受けて、方向が変化する。ここで、相対速度の絶対値の減少は、ローラ22の駆動面16に対する摩擦力の絶対値を増加させるので、これが有効摩擦力の増加(ひいては摩擦トルクの増加)を招き、平衡点を不安定化させる。それに対して、ローラ22に対する駆動面16の相対速度の方向の変化は、摩擦力の方向の変化を引き起こし、有効摩擦力を減少(ひいては摩擦トルクを減少)させるので、平衡点を安定させる。よって、相対速度の絶対値の減少による摩擦力の増大を打ち消すように摩擦力の方向を調整することにより、ジャダ(摩擦振動)を抑制することが可能となる。
以上のように、ローラ22の回転によって、相対速度と擾乱速度の間にヨー軸まわりのミスアライメントを与え、摩擦力の方向の変化が生み出す見掛け上の粘性減衰効果を利用できるようにすることにより、単純な構成を用いて簡易なやり方により、摩擦振動の抑制による摺動面の省エネルギー化を達成しつつ回転トルクの伝達が可能となる。
【0037】
以下に、すべり摩擦力が速度弱化特性を示す場合において、駆動ディスク15 より所望回転トルクを従動ディスク13に伝達しつつ、摩擦振動を抑制する方法について、説明する。
ローラ22を回転軸線X3を中心に回転させずに、ローラ22と駆動面16との間の押付力一定のもとで、駆動面16の回転軸線X1を中心とする回転により、すべり摩擦を介して従動ディスク13に回転トルクを伝達し、従動ディスク13を回転軸線X2を中心として回転させる際に、従動側に摩擦振動が発生した場合において、伝達される回転トルク値よりも摩擦振動の抑制を優先するのであれば、ローラ22を回転軸線X3を中心に回転させることにより、摩擦力の増大を打ち消すように摩擦力の方向を調整し、有効摩擦力を低減することにより、伝達される回転トルクは減少するが、少なくとも摩擦振動の抑制効果を奏することが可能である。
特に、静止従動ディスク13をローラ22を介して、回転中の駆動ディスク15 に所定の押付力で押し付けることにより、駆動ディスク15 から従動ディスク13へ所望回転トルクを伝達するまでに摩擦振動が発生し始めたら、ローラ22の駆動面16に対する接触部におけるローラ22の周速(回転速度)を増大させることにより、摩擦力の増大を打ち消すように摩擦力の方向を調整して、従動面17に回転トルクを伝達する有効摩擦力を減じるのがよい。
【0038】
次に、押付力一定のもとで、駆動側から従動側へ回転トルクを零と目標最大回転トルクとの間で連続的に伝達するのに、その間において摩擦振動を抑制する場合には、目標最大回転トルクにおけるローラ22を回転軸線X3を中心とする最小回転速度を押付力の設定値との関係で設定すればよい。すなわち、押付力の設定値によりすべり摩擦力が定まり、すべり摩擦力の回転方向に対する接線方向成分である有効摩擦力がローラ22の回転速度により定まるところ、有効摩擦力の低減により、摩擦振動の抑制効果が生じる一方、回転トルクの低減が起こることから、摩擦振動が発生しないで目標最大回転トルクを達成するように、最小回転速度および押付力を定めて、目標最大回転トルクから零までの間で、押付力一定のもとで、ローラ22の回転速度を最小回転速度より上げて、さらに有効摩擦力の低減をすることにより、回転トルクを連続的に低減すればよい。
【0039】
次に、ローラ22を回転軸線X3を中心に回転させながら、駆動側から従動側へ回転トルクを伝達している最中に摩擦振動が発生した場合において、ローラ22の回転速度および押付力の調整の仕方について、
図8を参照しながら説明する。
ケース1は、ローラ22の回転速度を上げるとともに、押付力を減少する場合である。
ケース2は、ローラ22の回転速度を上げるとともに、押付力を増大する場合である。
ケース3は、ローラ22の回転速度を下げるとともに、押付力を減少する場合である。
ケース4は、ローラ22の回転速度を下げるとともに、押付力を増大する場合である。
なお、
図8において、右上がりの矢印および右下がりの矢印それぞれは、増大および減少を意味し、右上がりの矢印においては、その傾きが大きい場合、小さい場合があり、前者のほうが後者より増大が大きいことを定性的に示す。
【0040】
ケース1および4が示すように、駆動側から従動側へ伝達される回転トルクを低減しないように摩擦振動の抑制効果を達成するのは、困難であり、ケース1のように、摩擦振動抑制効果は奏するが、伝達される回転トルクの伝達が低減したり、ケース4のように、伝達される回転トルクは増大するが、摩擦振動抑制効果が減じる。
ケース2は、ケース1に比べ、摩擦振動の抑制効果は低いが伝達される回転トルクが増大する場合である。
ケース3は、ケース4に比べ、伝達される回転トルクは低いが、摩擦振動の抑制効果が奏される場合である。
ケース2およびケース3について、以下に示すように、摩擦力の速度弱化特性曲線の負の傾きのどの部分に係わるかによって、使い分けることが考えられる。
【0041】
より詳細には、
図7に示すように、摩擦振動発生の原因である速度弱化特性について、ローラ22と駆動面16との間の押付力が小さいA曲線と押付力が大きいB曲線との比較で理解可能なように、押付力が大きいほど、相対速度が小さくなるにつれて速度弱化特性曲線の負の傾きが急となることから、相対速度V1からV2に低減する場合に、それに伴う摩擦力の増分ΔFの増分割合は、押付力が大きいほど、押付力の比以上に大きくなる。よって、ローラ22がある回転速度で回転している状態で摩擦振動が発生した場合において、押付力を低減することにより、摩擦振動を抑制することも可能である。この場合、押付力の調整は、たとえば、駆動ディスク15 に対して従動ディスク13をバネ付勢力により押付けている場合には、バネ付勢力を調整すればよい。
一方において、有効摩擦力は、上述のように、ローラ22の回転速度に対して三角関数的に定まるのに対して、押付力に対しては、線形的に定まるので、ローラ22の回転速度の増大に対する有効摩擦力の低減割合と、押付力の低減に対する有効摩擦力の低減割合とは異なる。
よって、
図7に示すように、速度弱化特性の負の傾きが緩やかである相対速度が比較的大きい領域では、ケース2のように、ローラ22の回転速度の増大とともに押付力の増大を行って、ケース3に比べて、回転トルクの増大を図り、一方、速度弱化特性の負の傾きが急である相対速度が比較的小さい領域では、ケース3のように、ローラ22の回転速度の低減とともに押付力の低減を行って、ケース2に比べて、摩擦振動抑制効果を奏するのが好ましい。
【0042】
以下に、本発明の第2実施形態について、
図6を参照しながら説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
本発明の第2実施形態の特徴は、ローラ22の駆動方式にある。すなわち、第1実施形態においては、機能の発現に必要不可欠なローラ22のスピンは、外部の駆動装置により与えるとの設定で議論を進めたが、
図6(B)のように、ローラ22を斜めに設置しておけば、駆動面16から受ける摩擦力により、ローラ22を自己駆動させることもできる。
より詳細には、
図6(A)に示すように、ローラ22が4つ、互いに第1軸線X1のまわりに90度の等角度間隔を隔てて、同心円状に配置され、駆動面16の回転に対する接線方向に対して、90度を以って配置されている場合には、
図1および
図2と同様に、それぞれのローラ22が駆動面16の回転により第3軸線X3を中心に自己回転駆動可能とならないが、
図6(B)に示すように、ローラ22が4つ、互いに第1軸線X1のまわりに90度の等角度間隔を隔てて、同心円状に配置され、駆動面16の回転に対する接線方向に対して、所定傾斜角度θを以って配置されている場合には、それぞれのローラ22が駆動面16の回転により第3軸線X3を中心に自己回転駆動可能となる。所定傾斜角度θは、たとえば、ローラ22の第3軸線X3を中心とする要求回転速度に応じて、調整可能としてもよい。なお、ローラ22ごとに所定傾斜角度θを変えてもよい。
【0043】
第2実施形態において、回転トルク伝達体を駆動面の回転を利用して、自己回転駆動させる場合において、自己回転駆動可能な条件として、駆動面の回転軸線X1を中心とする回転速度と、従動面の回転軸線X2を中心とする回転速度とに相対速度差が必要であり、たとえば、回転中の駆動面により静止従動面が回転し始めて、駆動面の回転速度となるまでの間となるが、自己回転駆動であることから、オートマチック式のクラッチへの適用にふさわしい。
このように、システム全体のデザインとオペレーション次第では、ローラ22のスピンのための駆動装置を用いることなく、なめらかなトルク伝達を実現する自律的な機構が可能である。
【0044】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、回転トルク伝達体は、従動ディスク13側に設けるものとして説明したが、それに限定されることなく、回転トルク伝達体がすべり摩擦を利用して駆動ディスク15から従動ディスク13へ回転トルクを伝達することが可能である限り、駆動ディスク15側に設けてもよいし、回転トルク伝達体を複数設ける場合において、一部を従動ディスク13側、残りを駆動ディスク15側に設けてもよい。
たとえば、本実施形態において、複数の回転トルク伝達体を回転軸線のまわりに同心状に等角度間隔を隔てて配置するものとして説明したが、それに限定されることなく、回転トルク伝達体がすべり摩擦を利用して駆動ディスク15から従動ディスク13へ回転トルクを伝達することが可能である限り、複数の回転トルク伝達体を回転軸線のまわりに非同心状に非等角度間隔を隔てて配置してもよい。回転トルク伝達体の数は、回転トルク伝達体が接触する駆動面または従動面の摩耗の観点から定めればよく、押圧力一定のもとで、数を増やせば面圧が低減するので、摩耗の観点から有利である。
【0045】
たとえば、本実施形態において、偶数の回転トルク伝達体について、一対の回転トルク伝達体を駆動面の回転軸線の直径方向反対側にそれぞれ配置し、一対の回転トルク伝達体それぞれの回転方向を互いに逆方向のものとして説明したが、それに限定されることなく、一対の回転トルク伝達体それぞれの回転方向を互いに同方向としてもよい。ただし、第2実施形態のように、回転トルク伝達体をその回転軸線を中心として、駆動面の回転を利用して自己回転駆動させる場合には、自己回転駆動させるために、一対の回転トルク伝達体それぞれの回転方向を互いに逆方向にするのがよい。
たとえば、第1実施形態において、回転トルク伝達体は、回転トルク伝達体を設ける駆動ディスク15または従動ディスク13上の回転駆動モーターにより回転駆動させるものとして説明したが、それに限定されることなく、別途回転駆動モーターを設けることなく、駆動ディスク15の回転力を利用して回転トルク伝達体を回転させてもよい。
【0046】
たとえば、本実施形態において、回転トルク伝達体をクラウン部を有する円柱体とし、駆動面16と線接触するものと説明したが、それに限定されることなく、回転トルク伝達体がすべり摩擦を利用して駆動面16から従動ディスク13へ回転トルクを伝達することが可能である限り、球体とし駆動面16と点接触させてもよい。ただし、特に駆動面16の摩耗抑制の観点、あるいは回転トルク伝達体をその回転軸線を中心として、駆動面16の回転を利用して自己回転駆動させる場合には、回転トルク伝達体と線接触が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、クラッチ機構、ブレーキ機構等の車両運搬機械、さらには、回転動力機械に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
X1 第1軸線
X2 第2軸線
X3 第3軸線
θ 傾斜角度
F 摩擦力
C 摩擦力ベクトルFにより描いた円
F
eff 従動面17にトルクを伝達する有効摩擦力
V
drive 接触部における駆動面の周速
V
spin 接触部におけるローラ22のスピンの周速
V
rel ローラ22に対する駆動面の相対速度
V
dist 従動軸14のねじりによるローラ22に加わる擾乱速度
10 トルク伝達機構
13 従動ディスク13
14 従動軸
15 駆動ディスク15
16 駆動面
17 従動面
18 駆動軸
20 開口
22 ローラ
24 下端
26 側周面
28 端面
29 支持シャフト