特許第6478833号(P6478833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6478833
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20190225BHJP
   F25B 43/02 20060101ALI20190225BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   F25B1/00 387G
   F25B1/00 387K
   F25B1/00 387A
   F25B43/02 E
   F25B43/02 A
   F25B49/02 570A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-127844(P2015-127844)
(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公開番号】特開2017-9248(P2017-9248A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】日野原 昌信
(72)【発明者】
【氏名】呉田 達
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−190545(JP,A)
【文献】 特開2003−279175(JP,A)
【文献】 特開2007−292426(JP,A)
【文献】 米国特許第06125648(US,A)
【文献】 特開2006−010175(JP,A)
【文献】 特開2000−274845(JP,A)
【文献】 特開平07−305921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00−49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、その圧縮機から吐出される気相冷媒を凝縮させる凝縮器とを備えるコンデンシングユニットを複数備え、
膨張弁と、その膨張弁を通過した液相冷媒を蒸発させる冷却用蒸発器とを直列に接続した蒸発器側の直列接続組に対して、複数の前記コンデンシングユニットを並列に接続した冷却装置であって、
前記コンデンシングユニットの並列接続組における冷媒入口部には、それら複数のコンデンシングユニットに対する共通のアキュムレータを設け、
この共通アキュムレータから前記コンデンシングユニットの各々における前記圧縮機に冷凍機油を戻す並列配置の返油路を設けるとともに、これら返油路の各々を開閉する返油弁を設け、
前記コンデンシングユニットの各々における冷凍機油の油溜まり部に、そこに溜まった冷凍機油の油位を検出するコンデンシングユニット側の油位センサを設け、
これらコンデンシングユニット側の油位センサの検出情報に基づいて前記返油弁の各々を開閉操作する返油制御手段を設け
前記共通アキュムレータに溜まった冷凍機油の油位を検出する共通アキュムレータ側の油位センサを設け、
前記返油制御手段は、前記コンデンシングユニット側の油位センサのうち少なくとも1つの油位センサによる検出油位が設定最低位以下になり、かつ、前記共通アキュムレータ側の油位センサによる検出油位が設定最低位以下になったとき、冷凍機油異常の警報を発信する又は装置運転を緊急停止する構成にしてある冷却装置。
【請求項2】
前記返油制御手段は、前記冷凍機油異常の警報を発信した後、又は、前記装置運転を緊急停止した後、復旧運転の開始指令を受けると、冷媒経路に介装した弁の開度を所定開度に固定するとともに圧縮機出力を所定出力に固定した状態で前記コンデンシングユニットにおける前記圧縮機を運転する復旧運転を実行する構成にしてある請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記返油路の夫々には、返油流量を調整する流量調整弁を前記返油弁と直列に並べて介装してある請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記返油路の夫々には、前記共通アキュムレータの側への冷凍機油の逆流を阻止する逆止弁を前記返油弁と直列に並べて介装してある請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記コンデンシングユニットの各々における前記圧縮機と前記凝縮器との間に、前記圧縮機から冷媒とともに吐出される冷凍機油を冷媒から分離した状態で捕集して、その捕集した冷凍機油を油戻し路を通じて前記圧縮機に戻す油分離器を介装してある請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記油分離器の各々における冷凍機油の油溜まり部に、前記コンデンシングユニット側の油位センサを配置してある請求項5記載の冷却装置。
【請求項7】
前記冷却用蒸発器の冷媒出口部は、最低部にトラップを備える大径立上管と、前記トラップよりも上流側で前記大径立上管から分岐した小径立上管とを備える2重立上管構造にしてある請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却装置に関し、詳しくは、圧縮機と、その圧縮機から吐出される気相冷媒を凝縮させる凝縮器とを備えるコンデンシングユニットを複数備え、膨張弁と、その膨張弁を通過した液相冷媒を蒸発させる冷却用蒸発器とを直列に接続した蒸発器側の直列接続組に対して、複数の前記コンデンシングユニットを並列に接続した冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境試験室など冷却負荷が大きい冷却対象室を冷却する直膨式の冷却装置を構成するには、図4に示すように、個別の膨張弁EVを備える複数の冷却用蒸発器1を冷却対象室Rに配備するとともに、圧縮機8及びその圧縮機8から吐出される気相冷媒rを凝縮させる凝縮器9を備えるコンデンシングユニット3を室外において複数配備し、そして、これらコンデンシングユニット3の各々に対して室内側の冷却用蒸発器1を冷媒配管6a,7aにより個別に接続することで、それらコンデンシングユニット3ごとに個別の冷凍回路Cを形成していた。
【0003】
なお、同図4において、2は冷却用蒸発器1に冷却対象室Rの室内空気Aを通風する通風ファン、MVは各冷凍回路Cごとの蒸圧力制御弁、4aは各冷凍回路Cごとのアキュムレータであり、10は各コンデンシングユニット3において圧縮機8と凝縮器9との間に装備した油分離器である。
【0004】
各アキュムレータ4aとそれに対応するコンデンシングユニット3とは吸入側の冷媒配管7aに加えて返油路12により接続してあり、各アキュムレータ4aに溜まる冷凍機油oは各返油路12を通じて対応のコンデンシングユニット3の圧縮機8に戻すようにしてある。
【0005】
また、各コンデンシングユニット3における油分離器10で捕集した冷凍機油oは、圧縮機摺動部の潤滑及び冷媒圧縮部のシール性向上と冷却のために、各コンデンシングユニット3内の油戻し路11を通じて各圧縮機8に戻すようにしてある。
【0006】
しかし、この冷却装置では、コンデンシングユニット3ごとに個別の冷凍回路Cを形成するため、冷媒配管の配管量が大きくなるとともに冷媒配管が複雑になり、そのことで、装置コストや施工コストが大きくなる問題があった。
【0007】
そこで、この問題を解消するのに、図5に示すように、複数のコンデンシングユニット3を互いに並列接続して、これらコンデンシングユニット3の並列接続組Pに対し室内側の各冷却用蒸発器1を共通冷媒配管6,7により並列に接続するようにし、これにより、複数のコンデンシングユニット3により形成する冷凍回路Cを共通化することで冷媒配管を簡素化することが考えられる。
【0008】
図5において、5は各コンデンシングユニット3から送出される液相冷媒rを合流させる冷媒液タンク、SVは冷凍回路Cの共通化とともに共通化した吸込圧力調整弁、4は同じく冷凍回路Cの共通化とともに共通化したアキュムレータである。
【0009】
なお、このように複数のコンデンシングユニット3により形成する冷凍回路Cを共通化した冷却装置であれば、冷媒配管の簡素化に加えて、コンデンシングユニット3の運転台数を変更するいわゆる台数制御を実行することで、冷却用蒸発器1夫々の冷却出力を均等に変化させる形態を採りながら装置全体としての冷却出力を大きな範囲にわたって調整することが可能になる。
【0010】
また、一部のコンデンシングユニット3を運転停止して点検補修している間にも、他のコンデンシングユニット3を運転することで冷却用蒸発器1の夫々を継続的に冷却作用させるバックアップ機能も備えさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
適当な先行技術文献が見当たらない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、このように冷凍回路Cを共通化した冷却装置(図5)では、冷媒配管の簡素化に加えて上記の如き種々の機能が得られるものの、各コンデンシングユニット3の圧縮機8から冷媒rとともに吐出される冷凍機油oのうち、各コンデンシングユニット3の油分離器10をすり抜けて冷却用蒸発器1の側に漏出した冷凍機油oが、配管抵抗差や各コンデンシングユニット3の運転状況などの影響を受けて、共通アキュムレータ4から並列配置の返油路12を通じて偏った不均等な状態で各コンデンシングユニット3に戻されるようになり、これが原因で、いずれかのコンデンシングユニット3において冷凍機油oの枯渇が生じて圧縮機8の破損に至る虞が生じる。
【0013】
即ち、この点で、図5に示すように冷凍回路Cを共通化した冷却装置は実用に供することが難しい問題があった。
【0014】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な返油構造を採用することで、冷凍回路を共通化した冷却装置を広く実用化できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1特徴構成は冷却装置に係り、その特徴は、
圧縮機と、その圧縮機から吐出される気相冷媒を凝縮させる凝縮器とを備えるコンデンシングユニットを複数備え、
膨張弁と、その膨張弁を通過した液相冷媒を蒸発させる冷却用蒸発器とを直列に接続した蒸発器側の直列接続組に対して、複数の前記コンデンシングユニットを並列に接続した冷却装置であって、
前記コンデンシングユニットの並列接続組における冷媒入口部には、それら複数のコンデンシングユニットに対する共通のアキュムレータを設け、
この共通アキュムレータから前記コンデンシングユニットの各々における前記圧縮機に冷凍機油を戻す並列配置の返油路を設けるとともに、これら返油路の各々を開閉する返油弁を設け、
前記コンデンシングユニットの各々における冷凍機油の油溜まり部に、そこに溜まった冷凍機油の油位を検出するコンデンシングユニット側の油位センサを設け、
これらコンデンシングユニット側の油位センサの検出情報に基づいて前記返油弁の各々を開閉操作する返油制御手段を設け
前記共通アキュムレータに溜まった冷凍機油の油位を検出する共通アキュムレータ側の油位センサを設け、
前記返油制御手段は、前記コンデンシングユニット側の油位センサのうち少なくとも1つの油位センサによる検出油位が設定最低位以下になり、かつ、前記共通アキュムレータ側の油位センサによる検出油位が設定最低位以下になったとき、冷凍機油異常の警報を発信する又は装置運転を緊急停止する構成にしてある点にある。
【0016】
この第1特徴構成の冷却装置であれば(図1参照)、全ての返油弁13が常開の場合では共通アキュムレータ4から冷凍機油oが並列配置の返油路12を通じて複数のコンデンシングユニット3に偏った状態で不均等に戻る状況にあるとしても、各コンデンシングユニット3に装備したコンデンシングユニット側の油位センサ16の検出情報に基づいて返油弁13の各々を開閉操作するから、共通アキュムレータ4における冷凍機油oを複数のコンデンシングユニット3に対して適切に戻すことができる。
【0017】
したがって、いずれかのコンデンシングユニット3で冷凍機油oの枯渇が生じて圧縮機8の破損を招くことを確実に防止することができる。
【0018】
そして、このことで、冷凍回路Cを共通化した冷却装置の実用化が可能になり、コンデンシングユニット3ごとに個別の冷凍回路Cを形成する図4に示す如き従来の冷却装置に比べ、冷媒配管を簡素にして、冷却装置の装置コストや施工コストを安価にすることができる。
【0019】
また、コンデンシングユニット3の運転台数を変更することで、冷却用蒸発器1夫々の冷却出力を均等に変化させる形態を採りながら装置全体としての冷却出力を大きな範囲にわたって調整することも可能な冷却装置にすることができる。
【0020】
さらに、一部のコンデンシングユニット3を運転停止して点検補修している間にも、他のコンデンシング3を運転することで冷却用蒸発器1の夫々を継続的に冷却作用させるバックアップ機能も備える冷却装置にすることができる。
【0021】
そして、上記の第1特徴構成では、
前記共通アキュムレータに溜まった冷凍機油の油位を検出する共通アキュムレータ側の油位センサを設け、
前記返油制御手段は、前記コンデンシングユニット側の油位センサのうち少なくとも1つの油位センサによる検出油位が設定最低位以下になり、かつ、前記共通アキュムレータ側の油位センサによる検出油位が設定最低位以下になったとき、冷凍機油異常の警報を発信する又は装置運転を緊急停止する構成にしてあるから、次の作用効果も奏する。
【0022】
つまり、図1参照)、コンデンシングユニット側の油位センサ16のうち少なくとも1つの油位センサ16による検出油位aが設定最低位ak以下になり、かつ、共通アキュムレータ側の油位センサ17による検出油位bが設定最低位bk以下になったとき、即ち、いずれかのコンデンシングユニット3において冷凍機油oの枯渇が生じる状況になったにもかかわらず、そのコンデンシングユニット3に対する共通アキュムレータ4からの冷凍機油oの返油もできない状態になったときには、冷凍機油異常の警報が発信されるから、又は、装置運転が緊急停止されるから、冷凍機油oの枯渇による圧縮機8の破損を一層確実に防止することができる。
【0023】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記返油制御手段は、前記冷凍機油異常の警報を発信した後、又は、前記装置運転を緊急停止した後、復旧運転の開始指令を受けると、冷媒経路に介装した弁の開度を所定開度に固定するとともに圧縮機出力を所定出力に固定した状態で前記コンデンシングユニットにおける前記圧縮機を運転する復旧運転を実行する構成にしてある点にある。
【0024】
この第2特徴構成によれば(図1参照)、冷却用蒸発器1などで滞留する冷凍機油oを上記復旧運転により強制的に共通アキュムレータ4や各コンデンシングユニット3に戻すことができ、これにより、冷却装置を通常運転へ容易に復帰させることができる。
【0025】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記返油路の夫々には、返油流量を調整する流量調整弁を前記返油弁と直列に並べて介装してある点にある。
この第3特徴構成よれば(図1参照)、返油弁13の夫々を開弁したときの各コンデンシングユニット3への冷凍機油oの返油流量が配管抵抗差などによりコンデンシングユニット3ごとに異なるような場合でも、上記流量調整弁14による流量調整により各コンデンシングユニット3に対する冷凍機油oの返油流量を均等化することができる。
【0026】
したがって、冷凍機油oの枯渇防止機能をコンデンシングユニット3の夫々について均一化することができ、これにより、冷凍機油oの枯渇による圧縮機8の破損を装置全体として一層確実に防止することができる。
【0027】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記返油路の夫々には、前記共通アキュムレータの側への冷凍機油の逆流を阻止する逆止弁を前記返油弁と直列に並べて介装してある点にある。
【0028】
この第4特徴構成によれば(図1参照)、各コンデンシングユニット3から共通アキュムレータ4の側への冷凍機油oの逆流を確実に阻止することができ、これにより、各コンデンシングユニット3での冷凍機油oの枯渇を一層確実に防止することができる。
【0029】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記コンデンシングユニットの各々における前記圧縮機と前記凝縮器との間に、前記圧縮機から冷媒とともに吐出される冷凍機油を冷媒から分離した状態で捕集して、その捕集した冷凍機油を油戻し路を通じて前記圧縮機に戻す油分離器を介装してある点にある。
【0030】
この第5特徴構成によれば(図1参照)、共通アキュムレータ4から各コンデンシングユニット3への返油路13を通じた冷凍機油oの返油と、各コンデンシングユニット3での油分離器10による冷凍機油oの捕集との協働により、各コンデンシングユニット3での冷凍機油oの枯渇をさらに確実に防止することができる。
【0031】
本発明の第6特徴構成は、第5特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記油分離器の各々における冷凍機油の油溜まり部に、前記コンデンシングユニット側の油位センサを配置してある点にある。
【0032】
この第6特徴構成によれば(図1参照)、各コンデンシングユニット3に対する油分離器10の取り付けに伴い、コンデンシングユニット側の油位センサ16を油分離器10とともに各コンデンシングユニット3に取り付けることができ、この点で、各コンデンシングユニット3に対するコンデンシングユニット側油位センサ16の取り付けを容易にすることができる。
本発明の第7特徴構成は、第1〜第6特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記冷却用蒸発器の冷媒出口部は、最低部にトラップを備える大径立上管と、前記トラップよりも上流側で前記大径立上管から分岐した小径立上管とを備える2重立上管構造にしてある点にある。
この構成によれば(図3参照)、冷媒流量が少ない低出力運転時にも冷媒流速を高く確保するようにして、冷却用蒸発器1での冷凍機油oの滞留が生じ難いようにすることができる。
即ち、冷媒流量が少ない低出力運転時には、冷凍機油oがトラップ21に溜まることで大径立上管19が閉じられて冷媒rが小径立上管20にのみ流れるようにして、冷媒rの流速を高く保つようにし、これにより、冷凍機油oがトラップ21への溜り以上に冷却用蒸発器1において滞留することがないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明による冷却装置の冷媒回路図
図2】返油制御のフローチャート
図3】冷却用蒸発器の冷媒出口部を示す図
図4】従来の冷却装置を示す冷媒回路図
図5】冷凍回路を共通化する冷却装置の概念図
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は本発明による冷却装置を示し、この冷却装置では、個別の電子膨張弁EVを冷媒入口側に備えるとともに個別の蒸発圧力制御弁MVを冷媒出口側に備える3器の冷却用蒸発器1を冷却対象室Rに装備してある。
【0035】
これら冷却用蒸発器1には、冷却対象室Rにおける室内空気Aを冷却用蒸発器1に対して通風する通風ファン2を装備してあり、この通風ファン2により通風される室内空気Aを冷却用蒸発器1での冷媒蒸発に伴う気化熱奪取により冷却することで、冷却対象室Rを冷却する。
【0036】
冷却対象室Rの側では、電子膨張弁EVと冷却用蒸発器1と蒸発圧力制御弁MVとを直列に接続した蒸発器側の3組の直列接続組Sを設けるのに対し、室外側では、3つのコンデンシングユニット3を設けてあり、これらコンデンシングユニット3は互いに並列に接続してある。
【0037】
コンデンシングユニット3の並列接続組Pにおける冷媒入口部には共通のアキュムレータ4を設け、また、コンデンシングユニット3の並列接続組Pにおける冷媒出口部には共通の液冷媒タンク5を設けてある。
【0038】
共通の液冷媒タンク5から延出させた共通の冷媒吐出路6は、蒸発器側の3組の直列接続組S夫々の冷媒入口部に対して分岐接続し、また、共通のアキュムレータ4から延出させた共通の冷媒吸入路7は、蒸発器側の3組の直列接続組S夫々の冷媒出口部に対して分岐接続してある。
【0039】
つまり、このようにコンデンシングユニット3の並列接続組Pに対して蒸発器側の3組の直列接続組Sを、共通の冷媒吐出路6及び共通の冷媒吸入路7を介して並列に接続することで、各コンデンシングユニット3により形成する冷凍回路Cを共通化してある。
【0040】
コンデンシングユニット3は夫々、圧縮機8と、その圧縮機8から吐出される気相冷媒rを外気OAなどの放熱用流体と熱交換させて凝縮させる凝縮器9との直列接続組からなり、本例のコンデンシングユニット3では、圧縮機8と凝縮器9との間に油分離器10を介装してある。
【0041】
この油分離器10は、圧縮機8から気相冷媒rとともに吐出される冷凍機油oを気相冷媒rから分離した状態で捕集して、その捕集冷凍機油oを各コンデンシングユニット3内の油戻し路11を通じて圧縮機8に戻すものである。
【0042】
また、コンデンシングユニット3の夫々に油分離器10を装備しても、これら油分離器10をすり抜けて冷却用蒸発器1の側に漏出する冷凍機油oが存在することに対し、この冷却装置では、冷却用蒸発器1の側に漏出して最終的に共通アキュムレータ4に溜まる冷凍機油oを各コンデンシングユニット3の圧縮機8に返油する並列配置の返油路12を設けてある。
【0043】
そして、各返油路12には、それら返油路12の夫々を開閉する常閉の返油弁13を介装するとともに、返油流量を調整する流量調整弁14、及び、共通アキュムレータ4の側への冷凍機油oの逆流を阻止する逆止弁15の夫々を、返油弁13と直列に並べて介装してある。
【0044】
なお、流量調整弁14は、その開度を初期設定的に調整する弁、あるいは、種々の検出情報に基づいて開度を自動調整する弁のいずれであってもよい。
【0045】
各コンデンシングユニット3の油分離器10には、その油分離器10における油溜まり部(例えば、油分離器10に対する接続配管部などでもよい)に溜まる冷凍機油oの油位aを検出するコンデンシングユニット側の油位センサ16を設けてある。
【0046】
また、共通アキュムレータ4には、その共通アキュムレータ4に溜まる冷凍機油o(即ち、各コンデンシングユニット3の油分離器10をすり抜けて共通アキュムレータ4に至った冷凍機油o)の油位bを検出する共通アキュムレータ側の油位センサ17を設けてある。
【0047】
18は、これら油位センサ16,17の検出油位a,bに基づいて制御動作する返油制御器(返油制御手段)であり、この返油制御器18は次の(イ)〜(ホ)の制御を実行する(図2参照)。
【0048】
(イ)いずれかのコンデンシングユニット3におけるコンデンシングユニット側油位センサ16の検出油位aが設定下限位aL以下に低下すると(a≦aL)、そのコンデンシングユニット3に対する返油弁13を開弁する。
【0049】
即ち、この返油弁13の開弁により、コンデンシングユニット側油位センサ16の検出油位aが設定下限位aL以下になったコンデンシングユニット3に対して共通アキュムレータ4における溜り冷凍機油oを返油路12を通じて返油する。
【0050】
(ロ)そして、この返油により、そのコンデンシングユニット3におけるコンデンシングユニット側油位センサ16の検出油位aが設定上限位aF以上に上昇すると(a≧aF)、そのコンデンシングユニット3に対する返油弁13を閉弁し、これにより、そのコンデンシングユニット3に対する冷凍機油oの返油を完了する。
【0051】
つまり、これら(イ),(ロ)の制御により、各コンデンシングユニット3の油分離器10について、それら油分離器10の油溜まり部における冷凍機油oの油位aを適正範囲(aL〜aF)に保つようにし、これにより、各コンデンシングユニット3について冷凍機油oの枯渇による圧縮機8の損傷を防止するようにしてある。
【0052】
(ハ)また、いずれかのコンデンシングユニット3におけるコンデンシングユニット側油位センサ16の検出油位aが設定最低位aK(<aL)以下に低下し(a≦aK)、かつ、共通アキュムレータ側油位センサ17の検出油位bが設定最低位bK以下に低下すると(b≦bK)、各コンデンシングユニット3の圧縮機8を停止して装置運転を緊急停止するとともに冷凍機油異常の警報を発信する。
【0053】
即ち、冷凍機油oが冷却用蒸発器1などで滞留する状態になって、いずれかのコンデンシングユニット3において冷凍機油oが枯渇に近い状態になるとともに、共通アキュムレータ4においても冷凍機油oの溜りがなくなる状態になると、装置運転が緊急停止されるとともに冷凍機油異常の警報が発信される。
【0054】
(ニ)この緊急停止の後、オペレータにより復旧運転の開始指令が付与されると、各電子膨張弁EVを所定開度(例えば10%開度)に固定するとともに、各蒸発圧力制御弁MVも所定開度(例えば50%開度)に固定し、さらに圧縮機出力も所定出力(例えば100%出力)に固定した状態で、各コンデンシングユニット3の圧縮機8を運転する復旧運転を所定時間T(例えば600秒)にわたって実施する。
【0055】
即ち、この復旧運転により、冷却用蒸発器1などで滞留していた冷凍機油oを共通冷媒吸入路7を通じて強制的に共通アキュムレータ4や各コンデンシングユニット3に戻す。
【0056】
(ホ)そして、この所定時間Tの復旧運転を完了すると、各コンデンシングユニット側の油位センサ16及び共通アキュムレータ側の油位センサ17による油位監視を伴う通常運転に復帰する。
【0057】
なお、冷却用蒸発器1などでの冷凍機油oの滞留が無い状態では、共通アキュムレータ側油位センサ17による検出油位bが設定最低位bKよりも高く維持されるようにするために、共通アキュムレータ4には予め適当量の冷凍機油oを投入してある。
【0058】
また、図3に示すように、各冷却用蒸発器1の冷媒出口部は、最低部にトラップ21を備える大径立上管19と、そのトラップ21よりも上流側で大径立上管19から分岐した小径立上管20とを備える二重立上管構造にしてあり、これにより、冷媒流量が少ない低出力運転時にも冷媒流速を高く確保するようにして、冷却用蒸発器1での冷凍機油oの滞留が生じ難いようにしてある。
【0059】
即ち、冷媒流量が少ない低出力運転時には、冷凍機油oがトラップ21に溜まることで大径立上管19が閉じられて冷媒rが小径立上管20にのみ流れるようにして、冷媒rの流速を高く保つようにし、これにより、冷凍機油oがトラップ21への溜り以上に冷却用蒸発器1において滞留することがないようにしてある。
【0060】
〔別実施形態〕
次に別の実施形態を列記する。
【0061】
コンデンシングユニット3の並列接続組Pに接続して冷凍回路Cを形成する蒸発器側の直列接続組Sは、複数組に限られるものではなく、1組のみであってもよい。
【0062】
蒸発器側の直列接続組Sにおいて蒸発圧力制御弁MVを省略してもよく、また、蒸発圧力制御弁MVを省略した蒸発器側直列接続組Sの複数をコンデンシングユニット3の並列接続組Pに対して並列に接続する構成において、共通の冷媒吸入路7に共通化した1つの吸込圧力調整弁SVないし共通化した1つの蒸発圧力制御弁MVを介装するようにしてもよい。
【0063】
コンデンシングユニット3における油分離器10を省略してもよく、その場合、コンデンシングユニット側の油位センサ16は、各コンデンシングユニット3における他の適当な油溜まり部に装備して、その油溜まり部に溜まる冷凍機油oの油位aを検出するようにしてもよい。
【0064】
コンデンシングユニット3における凝縮器9は、圧縮機8から吐出される気相冷媒rを外気OAなどの気体と熱交換させて凝縮させるものに限らず、圧縮機8から吐出される気相冷媒rを水などの液体と熱交換させて凝縮させるものにしてもよい。
【0065】
冷却対象室Rは、環境試験室に限らず、どのような目的の室空間であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明による冷却装置は、各種分野において種々の用途の室空間を冷却するのに用いることができ、また、種々の対象物の冷却にも用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
8 圧縮機
r 冷媒
9 凝縮器
3 コンデンシングユニット
EV 膨張弁
1 冷却用蒸発器
S 蒸発器側の直列接続組
P コンデンシングユニットの並列接続組
4 共通のアキュムレータ
o 冷凍機油
12 返油路
13 返油弁
16 コンデンシングユニット側の油位センサ
a 油位
18 返油制御手段(返油制御器)
17 共通アキュムレータ側の油位センサ
b 油位
aK 設定最低位
bK 設定最低位
14 流量調整弁
15 逆止弁
11 油戻し路
10 油分離器
21 トラップ
19 大径立上管部
20 小径立上管部
図1
図2
図3
図4
図5