特許第6478866号(P6478866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6478866
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】水中電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/08 20060101AFI20190225BHJP
   F04D 29/08 20060101ALI20190225BHJP
   F16J 15/34 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   F04D13/08 C
   F04D13/08 B
   F04D29/08 C
   F16J15/34 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-153810(P2015-153810)
(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-31904(P2017-31904A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】福森 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】西村 武幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 早登士
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−092406(JP,U)
【文献】 特開昭58−113660(JP,A)
【文献】 特開昭53−036701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/08
F04D 29/08
F16J 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータにより駆動される羽根車が配置されたポンプ室と、
摺動部を有するメカニカルシールが設けられ、前記モータと前記ポンプ室との間に配置されたオイル室と、
前記モータと前記オイル室との間に配置され、流体を前記オイル室側に加圧する流体加圧部と
前記流体加圧部と前記オイル室とを連通する流体返送路と、を備える、水中電動ポンプ。
【請求項2】
前記流体加圧部は、前記モータの駆動を前記羽根車に伝達する回転軸に取り付けられている、請求項1に記載の水中電動ポンプ。
【請求項3】
前記流体加圧部は、水平面に対して傾斜した溝部または凸部の少なくとも一方が外周部分に形成された環状の筒体により形成されている、請求項1または2に記載の水中電動ポンプ。
【請求項4】
前記流体加圧部と前記モータとを連通するオイル昇り流路をさらに備える、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【請求項5】
前記モータの内部における下部には、流体貯留部が設けられている、請求項1ないしのいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【請求項6】
前記流体貯留部には、浸水検知部が配置されている、請求項に記載の水中電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中電動ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ室の圧力水がモータ内へ侵入することのないように、ポンプ室とモータとの間にメカニカルシールが設けられたオイル室を備えた小型の水中電動ポンプが知られている。しかし、この水中電動ポンプでは、メカニカルシールの摺動部の摩耗や面荒れにより、摺動部からオイル室に入った圧力水やオイル等がモータ内へ流入することがあるという不都合がある。
【0003】
そこで、圧力水やオイル等がモータ内へ流入するのを防止するため、オイル室内に浸水検出センサを設置して、オイル室内への浸水を検知することにより、モータへの通電を遮断する水中ポンプ(水中電動ポンプ)が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、ポンプ室の圧力水やオイル室内のオイルをモータ内へ浸入させないようにオイル室とモータとの間に浸水溜り室をさらに設けることによって、浸水溜り室内での浸水検知器による浸水の検知に基づいてモータへの通電を遮断するまでの時間を長く確保する構成を有する水中ポンプ(水中電動ポンプ)も提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−310091号公報
【特許文献2】特開2007−332825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の水中ポンプ(水中電動ポンプ)では、ポンプ室の圧力水がオイル室内に浸水したことを、浸水検知センサにより検知した場合に、圧力水やオイル等がモータ内へ流入するのを最小限に抑えるために、水中ポンプを強制的に停止させて水中から引き上げて、ポンプケーシングやオイルケーシング等を取外して、メンテナンス作業を行なった上で復旧させる必要がある。この場合、運転を継続するためには、予備の水中ポンプを保有して、予備の水中ポンプにより緊急対応をしなければならない。このため、維持管理に多くの労力が必要になるという問題点がある。
【0006】
また、上記特許文献2の水中ポンプ(水中電動ポンプ)では、オイル室とモータとの間に浸水溜まり室を設けているため、モータへの通電を遮断するまでの時間を長く確保することができるものの、浸水溜まり室を設ける分、構造が複雑化してしまうと同時に、ポンプの全高が高くなり大型化する。また、浸水検知器により浸水溜まり室への浸水を検知した場合には、上記特許文献1の水中ポンプと同様に、水中ポンプを強制的に停止させて水中から引き上げて、メンテナンス作業を行なった上で復旧させる必要がある。この場合、運転を継続するためには、予備の水中ポンプにより緊急対応をしなければならない。このため、維持管理に多くの労力が必要になるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、維持管理を容易に行うことが可能な水中電動ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一の局面による水中電動ポンプは、モータと、モータにより駆動される羽根車が配置されたポンプ室と、摺動部を有するメカニカルシールが設けられ、モータとポンプ室との間に配置されたオイル室と、モータとオイル室との間に配置され、流体をオイル室側に加圧する流体加圧部と、流体加圧部とオイル室とを連通する流体返送路と、を備える。
【0009】
この発明の一の局面による水中電動ポンプでは、上記のように、モータとオイル室との間に、流体をオイル室側に加圧する流体加圧部を設ける。これにより、オイル室からモータ側に流入しようとする流体に対して圧力を加えることができるので、オイル室からのオイル昇りを抑制することができる。その結果、ポンプケーシングやオイルケーシング等を取外して、メンテナンス作業を行う必要がない。また、運転を継続するために、予備の水中ポンプを保有する必要もない。その結果、維持管理に多くの労力および費用を必要とせず、水中電動ポンプの維持管理を容易に行うことができる。また、オイル室から流体加圧部側に昇ってきた流体を流体返送路を介してオイル室に返送することができる。
【0010】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、流体加圧部は、モータの駆動を羽根車に伝達する回転軸に取り付けられている。このように構成すれば、モータの駆動による回転軸の回転に伴って、流体加圧部を回転駆動させることができるので、流体加圧部を駆動させるための動力を別途設ける必要がない。これにより、水中電動ポンプの構成が複雑になるのを抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、流体加圧部は、水平面に対して傾斜した溝部または凸部の少なくとも一方が外周部分に形成された環状の筒体により形成されている。このように構成すれば、水平面に対して傾斜した溝部または凸部の少なくとも一方を含む環状の筒体を回転させることにより、オイル室からモータ側に流入しようとする流体に対して容易に圧力を加えることができるので、オイル室からのオイル昇りを効果的に抑制することができる。
【0012】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、流体加圧部とモータとを連通するオイル昇り流路をさらに備える。このように構成すれば、オイル室の上方にオイル、または、オイルおよび水の混合流体が流出する(漏れ出る)などした場合でも、オイル、または、オイルおよび水の混合流体をオイル昇り流路に逃がすことができるので、オイル、または、オイルおよび水の混合流体が直接モータのベアリングや動力部に接触するのを抑制することができる。
【0014】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、モータの内部における下部には、流体貯留部が設けられている。このように構成すれば、オイル室の上方に、オイル、または、オイルおよび水の混合流体が流出などした場合でも、オイル、または、オイルおよび水の混合流体を流体貯留部に貯留させることができるので、オイル、または、オイルおよび水の混合流体が直接モータのベアリングや動力部に接触するのを効果的に抑制することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、流体貯留部には、浸水検知部が配置されている。このように構成すれば、流体貯留部に含水率の大きいオイルおよび水の混合流体が侵入したことをユーザに報知することができるので、オイルおよび水の混合流体がモータに到達する前に、ユーザに対応させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、維持管理を容易に行うことが可能な水中電動ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態による水中電動ポンプを示した概略図である。
図2】本発明の第1実施形態による水中電動ポンプの流体加圧部を示した図である。
図3】本発明の第2実施形態による水中電動ポンプを示した概略図である。
図4】本発明の第1実施形態の第1変形例による水中電動ポンプの流体加圧部を示した図である。
図5】本発明の第1実施形態の第2変形例による水中電動ポンプの流体加圧部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
[第1実施形態]
(水中電動ポンプの構成)
図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態による水中電動ポンプ100は、図1に示すように、モータ1と、回転軸2と、羽根車3と、ポンプ室4と、オイル室5と、摺動部6aおよび6bを有するメカニカルシール6と、環状体7と、流体加圧部8と、浸水検知部9とを備えている。また、水中電動ポンプ100は、回転軸2が上下方向に延びる縦型の水中電動ポンプである。
【0020】
モータ1は、固定子11と、回転子12とを含んでいる。モータ1は、外部からの水が浸入しないように、密閉されている。また、モータ1は、羽根車3(回転軸2)を回転駆動させるように構成されている。
【0021】
固定子11は、コイルを有する。また、固定子11は、モータ1の外周部に配置されている。また、ケーブル13より固定子11のコイルに電力が供給されることにより、磁界を発生させるように構成されている。回転子12は、固定子11と対向するようにモータ1の内側に配置されている。また、回転子12は、回転軸2に取り付けられている。また、回転子12は、固定子11からの磁界により回転するように構成されている。
【0022】
また、モータ1の内部における下部には、流体貯留部14が設けられている。流体貯留部14は、オイルを含む流体が昇ってきた場合に、流体が貯留されるために設けられている。流体貯留部14には、浸水検知部9が配置されている。
【0023】
回転軸2は、モータ1の駆動により回転するように構成されている。また、回転軸2は、モータ1の駆動を羽根車3に伝達するように構成されている。また、回転軸2は、平面視において(上方から見た場合に)、時計回り(右回り)に回転するように構成されている。また、回転軸2は、ベアリング21および22により回転可能に支持されている。ベアリング21は、モータ1の反負荷側(ポンプ室4に対して反対側)に設けられている。ベアリング22は、モータ1の負荷側(ポンプ室4側)に設けられている。また、回転軸2は、モータ1からオイル室5を貫通してポンプ室4まで延びるように配置されている。また、回転軸2のポンプ室4側端部には、羽根車3が取り付けられている。
【0024】
羽根車3は、ポンプ室4内に配置されている。また、羽根車3は、回転駆動することにより、水に速度エネルギーを与える。そして、ポンプ室4内にて水の速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されることによって、水に圧力が作用されて送られるように構成されている。つまり、羽根車3の回転駆動により、ポンプ室4の吸水口41から水が吸い上げられて、吐出口42から吸い上げられた水が吐出される。
【0025】
オイル室5は、モータ1およびポンプ室4の間に配置されており、オイル室5には、オイルが充填されている。オイル室5のモータ1側は、壁51が配置されている。また、オイル室5の回転軸2の周りには、オイルリフター52が設けられている。また、オイル室5内には、摺動部6aおよび6bを有するメカニカルシール6が設けられており、オイル室5に充填されたオイルによって摺動部6aおよび6bが潤滑されるとともに、摺動部6aおよび6bが焼きつかないように冷却されるように構成されている。具体的には、メカニカルシール6の負荷側(ポンプ室4側)の摺動部6aは、オイル室5のポンプ室4側に設けられている。つまり、メカニカルシール6の負荷側(ポンプ室4側)の摺動部6aは、ポンプ室4の圧力水がオイル室5に入らないように設けられている。また、メカニカルシール6の反負荷側(ポンプ室4に対して反対側)の摺動部6bは、オイル室5のモータ1側に設けられている。つまり、メカニカルシール6の反負荷側(ポンプ室4に対して反対側)の摺動部6bは、オイル室5のオイルを含む流体がモータ1側に入らないように設けられている。
【0026】
オイルリフター52は、回転軸2の周りに筒状に設けられている。オイルリフター52は、回転軸2の回転に伴い移動するオイルを上方向に持ち上げるように構成されている。つまり、オイルリフター52は、摺動部6bにオイルを供給するように構成されている。オイルリフター52の下部には、貫通孔521が設けられている。貫通孔521からオイルリフター52の内周側にオイルが導かれるように構成されている。
【0027】
メカニカルシール6は、固定部材61と、回転部材62と、バネ63とを含んでいる。固定部材61は、摺動面611を有している。回転部材62は、摺動面621を有している。固定部材61は、オイル室5のハウジングに固定されている。また、固定部材61は、回転軸2を囲むように円環状に形成されている。回転部材62は、回転軸2に取り付けられている。つまり、回転部材62は、回転軸2とともに回転するように構成されている。また、回転部材62は、回転軸2を囲むように円環状に形成されている。また、回転部材62は、バネ63により、固定部材61側に付勢されている。
【0028】
固定部材61および回転部材62は、回転軸2の軸方向に対向するように配置されている。摺動部6aおよび6bでは、固定部材61の摺動面611と、回転部材62の摺動面621とが、互いに摺動するように構成されている。また、摺動面611および621の間には、オイル室5内のオイルがわずかに入るように構成されている。これにより、摺動面611および621が潤滑されるとともに、摺動面611および621が焼きつかないようにオイルにより冷却され、摺動部6aおよび6b(オイル室5)がシールされるように構成されている。
【0029】
環状体7は、オイル室5の反負荷側(ポンプ室4に対して反対側)の壁51からモータ1側に突出するように設けられている。また、環状体7は、回転軸2と所定の間隔を隔てて回転軸2を取り囲むように円環状に設けられている。また、環状体7のモータ1側端には、シール71が設けられている。シール71は、たとえば、オイルシールやシールリップまたは回転軸2と摺動するリップ部に傾斜リブや溝などの負荷側に推力発生する機構を有したシールが用いられる。また、シール71は、環状体7と回転軸2との間に配置されている。
【0030】
また、環状体7には、シール71に対してモータ1側にオイル昇り流路72が形成されている。オイル昇り流路72は、流体加圧部8(環状体7の内部)とモータ1(流体貯留部14)とを連通するように設けられている。オイル昇り流路72は、オイル室5側からシール71を介して流出するオイルを含む流体を流体貯留部14に導くように構成されている。オイル昇り流路72は、パイプや、チューブなどの管部材により構成されることが望ましいが、一体造形や溝状に造形した開口部を蓋で封止するように構成してもよい。オイル昇り流路72は、流体貯留部14の上方位置に配置されている。
【0031】
流体貯留部14の底面近傍には、浸水検知部9が配置されている。浸水検知部9は、たとえば、センサにより構成されている。浸水検知部9は、水を検出可能であり、流体貯留部14に含水率の大きいオイルおよび水の混合流体が侵入したことを検出することが可能である。また、浸水検知部9は、浸水を検知した場合、ケーブル13を介して浸水を検知した信号を送信するように構成されている。
【0032】
ここで、第1実施形態では、流体加圧部8は、環状体7の内側の空間に配置されている。また、流体加圧部8は、モータ1とオイル室5との間に配置されている。また、流体加圧部8は、流体をオイル室5側に加圧するように構成されている。また、流体加圧部8は、水平面に対して傾斜した溝部81が外周部分に形成された環状の筒体により形成されている。
【0033】
また、流体加圧部8は、モータ1とオイル室5との間に配置され、モータ1とオイル室5との間を封止している。また、流体加圧部8は、モータ1の駆動を羽根車3に伝達する回転軸2に取り付けられている。これにより、流体加圧部8は、回転軸2とともに回転されるように構成されている。図2に示すように、流体加圧部8は、概略的には、円筒形に形成されている。また、流体加圧部8は、内周面の直径が回転軸2の外周面の直径と略等しくなるように形成されている。流体加圧部8は、耐腐食性が高い材料により形成されている。流体加圧部8は、たとえば、ゴム材料により形成されている。ゴム材料としては、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)などを採用することができる。
【0034】
流体加圧部8の溝部81は、図2に示すように、側面から見て、右下がりの傾斜を有するように形成されている。つまり、流体加圧部8は、右下がりの傾斜する溝部81が、回転軸2の回転とともに上方から見て時計回りに回転することにより、下方向に圧力を加えるように構成されている。また、流体加圧部8は、水平面に対して、たとえば、30度傾斜した溝部81を含んでいる。なお、溝部81は、水平面に対して、30度以上60度以下の範囲で傾斜していることが好ましい。流体加圧部8の溝部81は、複数(たとえば、2つ)設けられている。2つの溝部81は、平面視において、流体加圧部8の中心(回転軸2の中心)に対して点対称の位置に配置されている。
【0035】
また、第1実施形態では、環状体7の流体加圧部8よりもオイル室5側には、図1に示すように、流体返送路82が形成されている。流体返送路82は、流体加圧部8(環状体7の内部)とオイル室5とを連通するように設けられている。つまり、流体返送路82は、環状体7の内部に昇ってきたオイルを含む流体をオイル室5に返送するように構成されている。また、流体返送路82は、パイプや、チューブなどの管部材により構成されることが望ましいが、一体造形や溝状に造形した開口部を蓋で封止するように構成してもよい。つまり、流体返送路82は、流体加圧部8(環状体7の内部)とオイル室5とが連通されるよう構成されていればよい。
【0036】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0037】
第1実施形態では、上記のように、モータ1とオイル室5との間に、流体をオイル室5側に加圧する流体加圧部8を設ける。これにより、オイル室5からモータ1側に流入しようとする流体に対して圧力を加えることができるので、オイル室5からのオイル昇りを抑制することができる。その結果、ポンプケーシングやオイルケーシング等を取外して、メンテナンス作業を行う必要がない。また、運転を継続するために、予備の水中ポンプを保有する必要もない。その結果、維持管理に多くの労力および費用を必要とせず、水中電動ポンプ100の維持管理を容易に行うことができる。
【0038】
また、第1実施形態では、上記のように、流体加圧部8を、モータ1の駆動を羽根車3に伝達する回転軸2に取り付ける。これにより、モータ1の駆動による回転軸2の回転に伴って、流体加圧部8を回転駆動させることができるので、流体加圧部8を駆動させるための動力を別途設ける必要がない。その結果、水中電動ポンプ100の構成が複雑になるのを抑制することができる。
【0039】
また、第1実施形態では、上記のように、流体加圧部8を、水平面に対して傾斜した溝部81が外周部分に形成された環状の筒体により形成する。これにより、水平面に対して傾斜した溝部81を含む環状の筒体を回転させることによって、オイル室5からモータ1側に流入しようとする流体に対して容易に圧力を加えることができるので、オイル室5からのオイル昇りを効果的に抑制することができる。
【0040】
また、第1実施形態では、上記のように、流体加圧部8とモータ1とを連通するオイル昇り流路72を設ける。これにより、オイル室5の上方にオイル、または、オイルおよび水の混合流体が流出する(漏れ出る)などした場合でも、オイル、または、オイルおよび水の混合流体をオイル昇り流路72に逃がすことができるので、オイル、または、オイルおよび水の混合流体が直接モータ1のベアリング22や動力部(固定子11および回転子12)に接触するのを抑制することができる。
【0041】
また、第1実施形態では、上記のように、流体加圧部8とオイル室5とを連通する流体返送路82を設ける。これにより、オイル室5から流体加圧部8側に昇ってきた流体を流体返送路82を介してオイル室5に返送することができる。
【0042】
また、第1実施形態では、上記のように、モータ1の内部における下部に、流体貯留部14を設ける。これにより、オイル室5の上方に、オイル、または、オイルおよび水の混合流体が流出などした場合でも、オイル、または、オイルおよび水の混合流体を流体貯留部14に貯留させることができるので、オイル、または、オイルおよび水の混合流体が直接モータ1のベアリング22や動力部(固定子11および回転子12)に接触するのを効果的に抑制することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、上記のように、流体貯留部14に、浸水検知部9を配置する。これにより、流体貯留部14に含水率の大きいオイルおよび水の混合流体が侵入したことをユーザに報知することができるので、オイルおよび水の混合流体がモータ1に到達する前に、ユーザに対応させることができる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、オイル室5のポンプ室4側およびモータ1側の両方にメカニカルシール6を設けた上記第1実施形態とは異なり、オイル室5のポンプ室4側にメカニカルシール6を設けた構成について説明する。
【0045】
図3に示すように、第2実施形態による水中電動ポンプ200は、モータ1と、回転軸2と、羽根車3と、ポンプ室4と、オイル室5と、摺動部6aを有するメカニカルシール6と、環状体7と、流体加圧部8と、浸水検知部9とを備えている。また、水中電動ポンプ200は、回転軸2が上下方向に延びる縦型の水中電動ポンプである。
【0046】
ここで、第2実施形態では、オイル室5は、モータ1およびポンプ室4の間に配置されており、オイル室5には、オイルが充填されている。オイル室5のモータ1側は、壁51が配置されている。また、オイル室5内には、摺動部6aを有するメカニカルシール6が設けられており、オイル室5に充填されたオイルによって摺動部6aが潤滑されるとともに、摺動部6aが焼きつかないように冷却されるように構成されている。具体的には、メカニカルシール6は、オイル室5のポンプ室4側に設けらている。つまり、メカニカルシール6の摺動部6aは、負荷側(ポンプ室4側)に設けられている。また、メカニカルシール6の負荷側(ポンプ室4側)の摺動部6aは、ポンプ室4の圧力水がオイル室5に入らないように設けられている。
【0047】
メカニカルシール6は、固定部材61と、回転部材62と、バネ63と、支持部材64とを含んでいる。回転部材62は、バネ63により、固定部材61側に付勢されている。バネ63は、ポンプ室4側が回転部材62に当接するとともに、モータ1側が支持部材64に当接している。支持部材64は、バネ63の上側を押さえるように支持するように構成されている。また、支持部材64は、回転軸2に取り付けられている。また、支持部材64は、円環状に形成されている。
【0048】
また、第2実施形態では、流体加圧部8は、環状体7の内側の空間に配置されている。また、流体加圧部8は、モータ1とオイル室5との間に配置されている。また、流体加圧部8は、流体をオイル室5側に加圧するように構成されている。
【0049】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0050】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0051】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、モータ1とオイル室5との間に、流体をオイル室5側に加圧する流体加圧部8を設ける。これにより、維持管理に多くの労力および費用を必要とせず、水中電動ポンプ200の維持管理を容易に行うことができる。
【0052】
また、第2実施形態では、上記のように、メカニカルシール6を、オイル室5のポンプ室4側に設ける。これにより、ポンプ室4からオイル室5への浸水を効果的に抑制することができる。また、オイル室5のポンプ室4側にメカニカルシール6を設けて、オイル室5のモータ1側にメカニカルシール6を設けないので、メカニカルシール6の構成を簡素化することができるとともに、モータ1側にメカニカルシール6を設けない分、水中電動ポンプ200の高さ寸法を小さくすることができるとともに、オイル室5内に充填されるオイルの量を減らすことができる。
【0053】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0054】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0055】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、回転軸が垂直方向に延びるように配置された縦型の水中電動ポンプに本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限らない。回転軸が水平方向に延びるように配置された横型の水中電動ポンプに本発明を適用してもよい。
【0056】
また、上記第1および第2実施形態では、流体加圧部は、水平面に対して傾斜した溝部を含む構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、流体加圧部は、水平面に対して傾斜した溝部または凸部の少なくとも一方を含んでいればよい。たとえば、図4に示す第1変形例のように、流体加圧部8は、水平面に対して傾斜した凸部81aが外周部分に形成された環状の筒体により形成されていてもよい。
【0057】
また、上記第1および第2実施形態では、流体加圧部の溝部は、1周未満のらせん形状に形成されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、たとえば、図5に示す第2変形例のように、流体加圧部8の溝部81bは、1周以上のらせん形状に形成されていてもよい。また、流体加圧部8の凸部が、1周以上のらせん形状に形成されていてもよい。
【0058】
また、上記第1および第2実施形態では、流体加圧部に溝部が2本設けられている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、流体加圧部に、溝部または凸部が1本設けられていてもよいし、溝部または凸部が3本以上設けられていてもよい。
【0059】
また、上記第1および第2実施形態では、流体加圧部が回転軸と別部材である例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、流体加圧部が回転軸と一体的に構成されていてもよい。
【0060】
また、上記第1および第2実施形態では、流体加圧部がゴム材料により形成されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、流体加圧部がステンレスなどの金属材料により形成されていてもよいし、プラスチックなどの樹脂材料により形成されていてもよい。
【0061】
また、上記第1および第2実施形態では、流体返送路およびオイル昇り流路が、パイプや、チューブなどの管部材により構成されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、流体返送路およびオイル昇り流路は、ハウジングなどに溝を形成して、蓋をすることにより設けてもよい。また、ハウジングに流路を掘って流体返送路およびオイル昇り流路を形成してもよい。
【0062】
また、上記第1および第2実施形態では、流体加圧部は水平面に対して傾斜した溝部を含む構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、流体加圧部は、翼形状のブレードや遠心式の羽根を含み、流体を加圧するように構成してもよい。
【0063】
また、上記第1実施形態では、オイル室にオイルを持ち上げるためのオイルリフターを設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、オイル室にオイルリフターを設けていなくてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 モータ
2 回転軸
3 羽根車
4 ポンプ室
5 オイル室
6 メカニカルシール
6a、6b 摺動部
8 流体加圧部
9 浸水検知部
14 流体貯留部
72 オイル昇り流路
81、81b 溝部
81a 凸部
82 流体返送路
100、200 水中電動ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5