特許第6478867号(P6478867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6478867
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/797 20060101AFI20190225BHJP
【FI】
   H02M7/797
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-154338(P2015-154338)
(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-34904(P2017-34904A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】野村 英児
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−104076(JP,A)
【文献】 特開2013−252005(JP,A)
【文献】 特開2008−295253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/797
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の正極側にアノード側が接続されたダイオードと、前記ダイオードに逆並列接続されたスイッチング素子と、前記ダイオードのカソード側に接続された第1のリアクトルと、前記直流電源の負極側に接続された第2のリアクトルと、前記第1のリアクトルの入力側及び前記第2のリアクトルの出力側の間に接続された第1のコンデンサと、前記第1のリアクトルの出力側及び前記第2のリアクトルの入力側の間に接続された第2のコンデンサと、を有するZソース昇圧回路と、
複数のスイッチング素子を有し、前記Zソース昇圧回路の出力に接続されたインバータ回路と、
前記第1のコンデンサ又は前記第2のコンデンサに印加されるコンデンサ印加電圧に基づき、前記インバータ回路の前記複数のスイッチング素子、及び前記Zソース昇圧回路の前記スイッチング素子を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
キャリア信号、前記インバータ回路に接続された負荷に印加する電圧の指令値、及び前記インバータ回路の直流リンク電圧に基づき、基本ゲート信号を生成する基本ゲート信号生成部と、
力行時コンデンサ電圧指令及び前記コンデンサ印加電圧の偏差に基づき短絡指令を演算する短絡指令演算部と、
前記短絡指令を制限して制限短絡指令を生成する短絡指令制限部と、
1から前記制限短絡指令を減算して最終短絡指令を生成する減算部と、
前記キャリア信号及び前記最終短絡指令に基づき短絡用ゲート信号を生成する短絡用ゲート信号生成部と、
前記基本ゲート信号及び前記短絡用ゲート信号を論理和したゲート信号を前記インバータ回路の前記複数のスイッチング素子に出力する論理和部と、
回生時コンデンサ電圧指令及び前記コンデンサ印加電圧の偏差に基づき回生指令を演算する回生指令演算部と、
前記回生指令を制限して制限回生指令を生成する回生指令制限部と、
前記制限回生指令の値を最終短絡指令の値以下に制限して最終回生指令を生成する最終回生指令生成部と、
前記キャリア信号及び前記最終回生指令に基づき回生用ゲート反転信号を生成し、該回生用ゲート反転信号を反転した回生用ゲート信号を前記Zソース昇圧回路の前記スイッチング素子に出力する回生用ゲート信号生成部と、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記短絡指令制限部は、前記短絡指令を0以上且つ0.5以下に制限し、
前記回生指令制限部は、前記回生指令を0以上且つ1以下に制限することを特徴とする、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Zソース昇圧回路を有する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、Zソース昇圧回路を有する電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。図6は、従来のZソース昇圧回路を有する電力変換装置の構成例を示す図である。
【0003】
図6に示す電力変換装置2は、直流電源10と、Zソース昇圧回路20と、インバータ回路30と、制御部40と、電圧センサ51及び52と、電流センサ53及び54とを備える。電力変換装置2は、モータ50に電力を供給し、モータ50には回転角度センサ55が接続される。
【0004】
Zソース昇圧回路20は、ダイオード25と、リアクトル21及び22と、コンデンサ23及び24とを有し、出力に直流リンク部を介してインバータ回路30に接続される。
【0005】
インバータ回路30は、各相の位相が互いに120度ずつずれるようにスイッチング素子31〜36をオン・オフして制御することにより、インバータ回路30の出力に接続されたモータ50を駆動する。
【0006】
Zソース昇圧回路20は、インバータ回路30のU相、V相、W相のいずれかの相の上下スイッチング素子が同時にオンし短絡動作になると、コンデンサ23及び24の放電と、リアクトル21及び22の充電とが行われる。次に同時にオンしたスイッチング素子の一方がオフすると、リアクトル21及び22の放電と、コンデンサ23及び24の充電とが行われる。この結果、直流電源10の電圧が昇圧され、インバータ回路30に出力される。
【0007】
図7は、図6に示したような従来の電力変換装置2におる制御部40として想定される構成例を示す図である。上述の短絡動作をさせるための短絡用ゲート信号Gzは、コンデンサ23に印加される電圧Vcとコンデンサ電圧指令Vc*との偏差を元に、例えばPID制御により短絡指令Nを生成し、キャリア信号aとの比較をすることで生成される。
【0008】
一方、ダイオード25があるため、インバータ回路30から直流電源10へ電力を回生することができない。そこで、ダイオード25と逆並列にスイッチング素子を接続し、スイッチングを行うことで、インバータ回路30から直流電源10へ電力を回生できることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−160617号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Haiping Xu, “Analysis and Design of Bi-directional Z-source Inverter for Electrical Vehicles", Applied Power Electronics Conference and Exposition, 2008. APEC 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のZソース昇圧回路を有する電力変換装置において、回生動作をする際のスイッチング素子の制御方法は明確にされていない。また、インバータ回路の同一レグ内の上下アームを同時にオンする短絡動作と、Zソース昇圧回路のスイッチング素子のオン動作とが同時に起こると、コンデンサの放電電流の一部が直流電源側に流れてしまい、指令どおりに昇圧できないという問題があった。
【0012】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、直流電源の出力電圧の昇圧、及び直流電源側への電力の回生を指令どおりに制御することが可能な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る電力変換装置は、直流電源の正極側にアノード側が接続されたダイオードと、前記ダイオードに逆並列接続されたスイッチング素子と、前記ダイオードのカソード側に接続された第1のリアクトルと、前記直流電源の負極側に接続された第2のリアクトルと、前記第1のリアクトルの入力側及び前記第2のリアクトルの出力側の間に接続された第1のコンデンサと、前記第1のリアクトルの出力側及び前記第2のリアクトルの入力側の間に接続された第2のコンデンサと、を有するZソース昇圧回路と、複数のスイッチング素子を有し、前記Zソース昇圧回路の出力に接続されたインバータ回路と、前記第1のコンデンサ又は前記第2のコンデンサに印加されるコンデンサ印加電圧に基づき、前記インバータ回路の前記複数のスイッチング素子、及び前記Zソース昇圧回路の前記スイッチング素子を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、キャリア信号、前記インバータ回路に接続された負荷に印加する電圧の指令値、及び前記インバータ回路の直流リンク電圧に基づき、基本ゲート信号を生成する基本ゲート信号生成部と、力行時コンデンサ電圧指令及び前記コンデンサ印加電圧の偏差に基づき短絡指令を演算する短絡指令演算部と、前記短絡指令を制限して制限短絡指令を生成する短絡指令制限部と、1から前記制限短絡指令を減算して最終短絡指令を生成する減算部と、前記キャリア信号及び前記最終短絡指令に基づき短絡用ゲート信号を生成する短絡用ゲート信号生成部と、前記基本ゲート信号及び前記短絡用ゲート信号を論理和したゲート信号を前記インバータ回路の前記複数のスイッチング素子に出力する論理和部と、回生時コンデンサ電圧指令及び前記コンデンサ印加電圧の偏差に基づき回生指令を演算する回生指令演算部と、前記回生指令を制限して制限回生指令を生成する回生指令制限部と、前記制限回生指令の値を最終短絡指令の値以下に制限して最終回生指令を生成する最終回生指令生成部と、前記キャリア信号及び前記最終回生指令に基づき回生用ゲート反転信号を生成し、該回生用ゲート反転信号を反転した回生用ゲート信号を前記Zソース昇圧回路の前記スイッチング素子に出力する回生用ゲート信号生成部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る電力変換装置において、前記短絡指令制限部は、前記短絡指令を0以上且つ0.5以下に制限し、前記回生指令制限部は、前記回生指令を0以上且つ1以下に制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インバータ回路の同一レグ内の上下アームを同時にオンする期間と回生スイッチのオン期間とが重複することを避け、直流電源の出力電圧の昇圧、及び直流電源側への電力の回生を指令どおりに制御することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電力変換装置における制御部の構成例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電力変換装置における制御部の主要な信号のタイムチャートを示す第1の図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電力変換装置における制御部の主要な信号のタイムチャートを示す第2の図である。
図5図4において、1キャリア周期内で、短絡ゲート信号及び回生ゲート信号がともにオンしている時のタイムチャートを時間軸に拡大して示す図である。
図6】従来のZソース昇圧回路を有する電力変換装置の構成例を示す図である。
図7】従来の電力変換装置におる制御部として想定される構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。図1に示す例では、電力変換装置1は、直流電源10と、Zソース昇圧回路20と、インバータ回路30と、制御部60と、電圧センサ51及び52と、電流センサ53及び54とを備える。電力変換装置1は、モータ(負荷)50に電力を供給し、モータ50には回転角度センサ55が接続される。
【0019】
Zソース昇圧回路20は、直流電源10の正極側にアノード側が接続されたダイオード25と、ダイオード25に逆並列接続されたスイッチング素子26と、ダイオード25のカソード側に接続されたリアクトル(第1のリアクトル)21と、直流電源10の負極側に接続されたリアクトル(第2のリアクトル)22と、リアクトル21の入力側及びリアクトル22の出力側の間に接続されたコンデンサ(第1のコンデンサ)23と、リアクトル21の出力側及びリアクトル22の入力側の間に接続されたコンデンサ(第2のコンデンサ)24とを有する。
【0020】
インバータ回路30は、複数のスイッチング素子31〜36と、それぞれのスイッチング素子31〜36に逆並列接続されたフリーホイールダイオード41〜46とを備える。スイッチング素子31及び32は直列接続され、インバータ回路30のU相アームを構成する。スイッチング素子33及び34は直列接続され、インバータ回路30のV相アームを構成する。スイッチング素子35及び36は直列接続され、インバータ回路30のW相アームを構成する。インバータ回路30は、各相の位相が互いに120度ずつずれるように、制御部60によりスイッチング素子31〜36がオン・オフ制御されることにより、出力に接続されたモータ50を駆動する。
【0021】
Zソース昇圧回路20は、インバータ回路30のU相、V相、W相のいずれかの相の上下スイッチング素子が同時にオンし短絡動作になると、コンデンサ23及び24の放電と、リアクトル21及び22の充電とが行われる。次に同時にオンしたスイッチング素子の一方がオフすると、リアクトル21及び22の放電と、コンデンサ23及び24の充電とが行われる。この結果、直流電源10の電圧が昇圧され、インバータ回路30に出力される。
【0022】
電圧センサ51は、直流電源10が出力する電圧(直流電源電圧)Eを検出し、制御部60に出力する。
【0023】
電圧センサ52は、コンデンサ23又は24に印加されている電圧(コンデンサ印加電圧)Vcを検出し、制御部60に出力する。図1に示す例では、コンデンサ23のコンデンサ印加電圧Vcを検出する。
【0024】
電流センサ53は、モータ50のU相に流れる電流Iuを検出し、制御部60に出力する。また、電流センサ54は、モータ50のW相に流れる電流Iwを検出し、制御部60に出力する。
【0025】
回転角度センサ55は、モータ50の回転角度θを検出し、制御部60に出力する。
【0026】
制御部60は、電圧センサ51及び52により検出される値と、電流センサ53及び54により検出される値と、回転角度センサ55により検出される値とを入力する。そして、スイッチング素子31にゲート信号Gup、スイッチング素子32にゲート信号Gun、スイッチング素子33にゲート信号Gvp、スイッチング素子34にゲート信号Gvn、スイッチング素子35にゲート信号Gwp、スイッチング素子36にゲート信号Gwnを出力してスイッチング素子31〜36を制御する。また、スイッチング素子26に回生用ゲート信号Grを出力し、スイッチング素子26を制御する。
【0027】
図2は、制御部60の構成例を示す図である。図2に示す例では、制御部60は、3相電圧指令演算部61と、直流リンク電圧演算部62と、基本ゲート信号生成部63と、減算部64,67及び70と、短絡指令演算部65と、短絡指令制限部66と、短絡用ゲート信号生成部68と、論理和部69と、回生指令演算部71と、回生指令制限部72と、最終回生指令生成部73と、回生用ゲート反転信号生成部74と、論理反転部75とを備える。
【0028】
3相電圧指令演算部61は、電流センサ53により検出されたモータ電流Iuと、電流センサ54により検出されたモータ電流Iwと、回転角度センサ55により検出されたモータ回転角度θと、外部から入力されるモータトルク指令とに基づき、モータ50に印加する3相電圧の指令値である3相電圧指令Vu*,Vv*及びVw*を演算し、基本ゲート信号生成部63に出力する。
【0029】
直流リンク電圧演算部62は、電圧センサ52により検出されたコンデンサ印加電圧Vcと、電圧センサ51により検出された直流電源電圧Eとに基づき、式(1)に従って、インバータ回路30に印加される直流リンク電圧Vdcを演算し、基本ゲート信号生成部63に出力する。
【0030】
【数1】
【0031】
基本ゲート信号生成部63は、キャリア信号aと、直流リンク電圧演算部62により演算された3相電圧指令Vu*,Vv*及びVw*と、直流リンク電圧演算部62により演算された直流リンク電圧Vdcとに基づき、基本ゲート信号Gup0,Gun0,Gvp0,Gvn0,Gwp0及びGwn0を生成し、論理和部69に出力する。例えば、キャリア信号aを三角波とし、キャリア信号aと3相電圧指令Vu*,Vv*及びVw*とを比較する三角波比較方式を使用する。
【0032】
減算部64は、力行時コンデンサ電圧指令Vcp*及びコンデンサ印加電圧Vc偏差である力行時偏差電圧ΔVcpを算出し、短絡指令演算部65に出力する。
【0033】
短絡指令演算部65は、力行時偏差電圧ΔVcpが0になるようにフィードバック制御(例えばPI制御)して短絡指令Nを演算し、短絡指令制限部66に出力する。
【0034】
短絡指令制限部66は、短絡指令演算部65により演算された短絡指令Nを式(2)に従って制限し、その結果の制限短絡指令N’を減算部67に出力する。
【0035】
【数2】
【0036】
減算部67は、数値1から、短絡指令制限部66により制限された制限短絡指令N’を減算して最終短絡指令N’’を算出し、短絡用ゲート信号生成部68及び最終回生指令生成部73に出力する。
【0037】
短絡用ゲート信号生成部68は、キャリア信号a及び最終短絡指令N’’に基づき、短絡用ゲート信号Gzを生成し、論理和部69に出力する。例えば、キャリア信号aを三角波とし、キャリア信号aと最終短絡指令N’’とを比較する三角波比較方式を使用する。
【0038】
論理和部69は、基本ゲート信号生成部63により生成された基本ゲート信号Gup0,Gun0,Gvp0,Gvn0,Gwp0及びGwn0と、短絡用ゲート信号生成部68により生成された短絡用ゲート信号Gzとをそれぞれ論理和してゲート信号Gup,Gun,Gvp,Gvn,Gwp及びGwnを生成し、スイッチング素子31〜36に出力する。これらのゲート信号Gup,Gun,Gvp,Gvn,Gwp及びGwnは、それぞれインバータ回路30のスイッチング素子31〜36をオン・オフする。
【0039】
力行時コンデンサ電圧指令Vcp*と回生時コンデンサ電圧指令Vcb*は、式(3)の関係を有する。
【0040】
【数3】
【0041】
減算部70は、コンデンサ印加電圧Vc及び回生時コンデンサ電圧指令Vcb*の偏差である回生時偏差電圧ΔVcbを算出し、回生指令演算部71に出力する。
【0042】
回生指令演算部71は、回生時偏差電圧ΔVcbが0になるようにフィードバック制御(例えばPI制御)して回生指令Rを演算し、回生指令制限部72に出力する。
【0043】
回生指令制限部72は、回生指令演算部71により演算された回生指令Rを式(4)に従って制限し、その結果の制限回生指令R’を最終回生指令生成部73に出力する。
【0044】
【数4】
【0045】
最終回生指令生成部73は、回生指令制限部72により生成された制限回生指令R’と減算部67により算出された最終短絡指令N’’とに基づき、式(5)に従って、最終回生指令R’’を回生用ゲート反転信号生成部74に出力する。
【0046】
【数5】
【0047】
回生用ゲート反転信号生成部74は、キャリア信号a及び回生指令R’’に基づき、回生用ゲート反転信号Gr0を生成し、論理反転部75に出力する。例えば、キャリア信号aを三角波とし、キャリア信号aと回生指令R’’とを比較する三角波比較方式を使用する。
【0048】
論理反転部75は、回生用ゲート反転信号Gr0を論理反転した回生用ゲート信号Grをスイッチング素子26に出力する。この回生用ゲート信号Grは、Zソース昇圧回路20のスイッチング素子26をオン・オフする。
【0049】
図3は、制御部60の主要な信号であるモータトルク指令、コンデンサ印加電圧Vc、最終短絡指令N''、最終回生指令R’’、短絡用ゲート信号Gz、及び回生用ゲート信号Grのタイムチャートを示す図である。
【0050】
図3に示すように、コンデンサ印加電圧Vcが力行時コンデンサ電圧指令Vcp*より低い場合は、指令に追随させるためにインバータ回路30のスイッチング素子31〜36の短絡動作を行い、コンデンサ印加電圧Vcを上昇させて、直流電源電圧Eよりも昇圧させることができる。短絡指令制限部66の動作により、コンデンサ印加電圧Vcが、力行時コンデンサ電圧指令Vcp*より高い場合は、短絡動作は行わない。
【0051】
また、コンデンサ印加電圧Vcが回生時コンデンサ電圧指令Vcb*より高い場合は、指令に追随させるためにZソース昇圧回路20のスイッチング素子26をオンして回生動作を行い、コンデンサ印加電圧Vcを下降させて、直流電源10に電力を回生することができる。回生指令制限部72の動作により、コンデンサ印加電圧Vcが、回生時コンデンサ電圧指令Vcb*より低い場合は、回生動作は行わない。
【0052】
図4は、力行時コンデンサ電圧指令Vcp*と回生時コンデンサ電圧指令Vcb*とが等しい場合のモータトルク指令、コンデンサ印加電圧Vc、最終短絡指令N''、最終回生指令R’’、短絡用ゲート信号Gz、及び回生用ゲート信号Grのタイムチャートを示す図である。図5は、図4において、1キャリア周期内で、短絡ゲート信号及び回生ゲート信号がともにオンしている時のタイムチャートを時間軸に拡大して示す図である。
【0053】
図4に示すように、Vcp*=Vcb*とした場合であっても、最終回生指令R’’を最終短絡指令N’’以下にすることで、インバータ回路30のスイッチング素子31〜36、及びZソース昇圧回路20のスイッチング素子26が同時にオンすることを回避することができる。
【0054】
上述したように、電力変換装置1は、コンデンサ印加電圧Vcが力行時コンデンサ電圧指令Vcp*より低い場合は、インバータ回路30のスイッチング素子31〜36の短絡動作を行い、コンデンサ印加電圧Vcが回生時コンデンサ電圧指令Vcb*より高い場合はZソース昇圧回路20のスイッチング素子26をオンさせて回生動作を行う。そのため、本発明によれば、短絡スイッチングと回生スイッチングが同時に動作せずに、昇圧用の短絡動作にも影響を与えることなく、インバータ回路30から直流電源10へ電力を回生することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、電力変換及び電力回生を行う用途に有用である。例えば電気自動車などのモータ駆動システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 電力変換装置
10 直流電源
20 Zソース昇圧回路
21,22 リアクトル
23,24 コンデンサ
25 ダイオード
26 スイッチング素子
30 インバータ回路
31〜36 スイッチング素子
41〜46 フリーホイールダイオード
51,52 電圧センサ
53,54 電流センサ
55 回転角度センサ
60 制御部
61 3相電圧指令演算部
62 直流リンク電圧演算部
63 基本ゲート信号生成部
64,67,70 減算部
65 短絡指令演算部
66 短絡指令制限部
68 短絡用ゲート信号生成部
69 論理和部
71 回生指令演算部
72 回生指令制限部
73 最終回生指令生成部
74 回生用ゲート反転信号生成部
75 論理反転部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7