(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6478981
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】射出成形用プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20190225BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20190225BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20190225BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20190225BHJP
C09D 109/02 20060101ALN20190225BHJP
C09D 129/14 20060101ALN20190225BHJP
C09D 151/04 20060101ALN20190225BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D5/00 D
C09D7/65
B29C45/14
!C09D109/02
!C09D129/14
!C09D151/04
【請求項の数】24
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-516757(P2016-516757)
(86)(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公表番号】特表2016-522290(P2016-522290A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】US2014039693
(87)【国際公開番号】WO2014193903
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年5月26日
(31)【優先権主張番号】61/828,827
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】コナースキ、 マーク エム.
(72)【発明者】
【氏名】ペンローズ、 ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ノーラン、 ダレン
(72)【発明者】
【氏名】ディーガン、 ブライアン
【審査官】
佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭53−006336(JP,A)
【文献】
特開平10−212431(JP,A)
【文献】
特表平08−511577(JP,A)
【文献】
特表2007−532739(JP,A)
【文献】
特開2013−052562(JP,A)
【文献】
特開2010−070586(JP,A)
【文献】
特開平06−240209(JP,A)
【文献】
特開2003−119207(JP,A)
【文献】
特開平02−003434(JP,A)
【文献】
特開平07−124995(JP,A)
【文献】
特表2009−538747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B29C45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレートモノマー成分;
光開始剤成分;および
(a)(i)120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと、(b)100から300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムとを含む、ゴム成分
を含む、光硬化性プライマー組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂射出成形オーバーモールディングプロセスに用いる物品の光硬化性プライマー組成物であって、(メタ)アクリレートモノマー成分;
光開始剤成分;および
(a)(i)120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと、(b)任意選択で、100から300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムとを含む、ゴム成分
を含む、光硬化性プライマー組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリレートモノマー成分が、N,N−ジメチルアクリルアミド、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの1種以上から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリレートモノマー成分が、40から80重量パーセントの量で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
光開始剤成分が、2,4,6トリメチルベンゾイルジホスフィンオキシド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンを含むまたは含まない2,4,6トリメチルベンゾイルジホスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、アセトフェノンおよび置換アセトフェノン、ベンゾインおよびそのアルキルエステル、キサントンおよび置換キサントン、ジエトキシ−アセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシキサントン、クロロ−チオキサントン、N−メチルジエタノール−アミン−ベンゾフェノン、1−ベンゾイルシクロヘキサノール、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン;アミノケトン、ベンジルジメチル−ケタール、ビスアシルホスフィンオキシド、メタロセンならびにベンゾフェノンから選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
光開始剤成分が、1から5重量パーセントの量で存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
コアシェルゴムが、スチレン−ブタジエンゴムから構成されるコアと、ポリアクリレートから構成されるシェルとを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ゴム成分が15から35重量パーセントの量で存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
(メタ)アクリレートモノマー成分;
光開始剤成分;
(a)(i)120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと、(b)任意選択で、100から300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムとを含む、ゴム成分;
シアン酸エステル成分および
アミノ化ジフェニルスルホン
を含む組成物。
【請求項10】
シアン酸エステル成分が、ビスフェノールEジシアン酸エステル、ビスフェノールFジシアン酸エステル、ジシクロペンタンジオールジシアン酸エステル、1,1’−ビス(4−シアナトフェニル)エタン)、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂、ヘキサフルオロビスフェノールAシアン酸エステル樹脂、テトラメチルビスフェノールFシアン酸エステル樹脂、ビスフェノールCシアン酸エステル樹脂、ビスフェノールMシアン酸エステル樹脂、フェノールノボラックシアン酸エステル樹脂およびジシクロペンタジエニル−ビスフェノールシアン酸エステル樹脂の1種以上から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
シアン酸エステル成分が1から20重量パーセントの量で存在する、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
アミノ化ジフェニルスルホンが0.25から5重量パーセントの量で存在する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
(メタ)アクリレートモノマー成分が20から80重量パーセントの量で存在し;光開始剤成分が1から5重量パーセントの量で存在し;ゴム成分が15から35重量パーセントの量で存在し;シアン酸エステル成分が1から10重量パーセントの量で存在する、請求項9〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1、2または9に記載の組成物の熱可塑性樹脂射出成形オーバーモールディングプロセスに用いる物品の光硬化性プライマー組成物としての使用。
【請求項15】
組成物が、シアン酸エステル成分およびアミノ化ジフェニルスルホンの1種以上をさらに含む、請求項14(ただし、請求項1および2を引用する部分に限る)に記載の使用。
【請求項16】
(a)少なくともその表面に、Bステージ化型の請求項1、2または9に記載の組成物が層としてコーティングされた物品;および
(b)Bステージ化型の組成物に接触した熱可塑性樹脂
を含む組合せ。
【請求項17】
組成物が、シアン酸エステル成分およびアミノ化ジフェニルスルホンの1種以上をさらに含む、請求項16(ただし、請求項1および2を引用する部分に限る)に記載の組合せ。
【請求項18】
物品がアルミニウムから構成される、請求項16に記載の組合せ。
【請求項19】
物品が陽極処理アルミニウムから構成される、請求項16に記載の組合せ。
【請求項20】
物品の周囲に射出成形物を形成する方法であって、
(a)周囲に熱可塑性材料をある形状に成形しようとする物品を、射出成形用キャビティ内に配置するステップ;ならびに
(a)熱可塑性材料を、物品が配置された射出成形用キャビティ内に、金型内の物品の周辺に材料が流動できる温度および圧力で射出し、熱可塑性材料を固化させるのに適した温度および圧力下に金型を維持するステップ
を含み、
物品を配置する前に、物品が、請求項1、2または9に記載の組成物で下塗りされ、組成物を硬化させるのに適した電磁スペクトルの放射線に曝露される、
方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法から形成された射出成形物品。
【請求項22】
物品がガラスから構成される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
物品がアルミニウムから構成される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
物品が陽極処理アルミニウムから構成される、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
射出成形用途用のプライマー組成物として使用するための、例えば電磁スペクトルの放射線への曝露などによって硬化可能な組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在、数多くの市場で製造プロセスを効率化しようとする動きがあるが、特に携帯型家庭用電化製品に関してそうした動きがある。この目的を達成するために、オーバーモールディングプロセスと呼ばれるプロセスにおいて、時間がかかることが多く経費がかさむこともある、プラスチック部品を従来の接着剤で金属製フレームおよびガラスディスプレイに接合するプロセスを排除することが望ましいと考えられる。
【0003】
当業者は、そのようなオーバーモールディングアセンブリプロセスのために、水性接着剤、溶剤を適用した接着剤、および/または二液型接着剤の使用を通して、結合層コーティングの提供が試みられてきた。これらの手法はそれぞれ批判を浴びてきた。
【0004】
例えば、水性接着剤および溶剤を適用した接着剤は、ほとんど短い時間、空気に曝露したときに薄膜を形成する性質があるために、多くの応用技法に支障を来すことが多い。加えて、水または溶剤担体を除去するために、延々と続く乾燥プロセス(それらは複雑であるおよび/または経費がかさむ場合がある)を使用することが必要である。二液型接着剤は使用前に混合することが必要であり、通常、延々と続く硬化プロセスを経るが、それは経費のかさむ加熱ステップを伴うことも多い。
【0005】
これらのタイプの接着剤技術を使用する別の欠点は、オーバーモールディング前の部品上での可使時間(on−part worklife)が短く、そのために主たるオーバーモールディングアセンブリプロセスから切り離したオフラインプロセスには向かないことである。言い換えれば、オーバーモールディングアセンブリプロセスで使用する前に、オーバーモールドしようとする部品にこれらの従来の接着剤を用いてBステージプロセスを行うことは非現実的となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、オーバーモールディングアセンブリプロセスで使用するための、担体を含まず、長いおよび/または経費のかさむ加工時間を必要とせず、部品上での可使時間が改善されたプライマー組成物に対する要求があり、それは市場で話題を呼ぶと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その要求がここで満たされた。
【0008】
本明細書において一態様で提供されるのは、
(メタ)アクリレートモノマー成分;
光開始剤成分;および
(a)(i)約120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと、(b)任意選択で、約100から約300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムとを含む、ゴム成分
を含む、光硬化性プライマー組成物である。
【0009】
別の態様では、
(メタ)アクリレートモノマー成分;
光開始剤成分;
(a)(i)約120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと、(b)任意選択で、約100から約300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムとを含む、ゴム成分;および
シアン酸エステル成分
を含む組成物が提供される。
【0010】
さらに別の態様では、
(メタ)アクリレートモノマー成分;
光開始剤成分;
(a)(i)約120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと、(b)任意選択で、約100から約300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムとを含む、ゴム成分;および
芳香族アミン成分、例えばアミノ化ジフェニルスルホン成分
を含む組成物が提供される。
【0011】
さらにまた別の態様では、
(メタ)アクリレートモノマー成分;
光開始剤成分;
(a)(i)約120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと、(b)任意選択で、約100から約300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムとを含む、ゴム成分;
シアン酸エステル成分;および
アミン成分、例えば、アミノ化ジフェニルスルホン成分のような芳香族アミン成分、またはジアミノジシクロヘキシルメタンのような脂環式ジアミン成分
を含む組成物が提供される。
【0012】
さらなる態様では、
前述の態様の何れかの組成物;および
熱可塑性樹脂
を含む組合せが提供される。
【0013】
またさらなる態様では、
少なくともその表面に、Bステージ化型の前述の態様の何れかの組成物が層としてコーティングされた物品;および
Bステージ化型の組成物に接触した熱可塑性樹脂
を含む組合せが提供される。
【0014】
追加的な態様では、物品の周囲に射出成形物を形成する方法であって、
周囲に熱可塑性材料をある形状に成形しようとする物品を、射出成形用キャビティ内に配置するステップ;ならびに
熱可塑性材料を、物品が配置された射出成形用キャビティ内に、金型内の物品の周辺に該材料が流動できる温度および圧力で射出し、熱可塑性材料を固化させるのに適した温度および圧力下に金型を維持するステップ
を含み、
物品を配置する前に、物品が、前述の態様の何れかの組成物で下塗りされ、組成物を硬化させるのに適した電磁スペクトルの放射線に曝露される、
方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】構成部品層にその接合部分としてオーバーモールディングを使用することができる、携帯型家庭用電化製品のディスプレイデバイスの種々の構成部品層の分解組立図を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上で述べた通りに、本明細書では概して本発明の幾つかの態様が提供される。より具体的には、それらは以下に示すものである。
【0017】
一態様では、
(a)(メタ)アクリレートモノマー成分;
(b)光開始剤成分;および
(c)(a)(i)約120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと、(b)任意選択で、約100から約300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムとを含む、ゴム成分
を含む、光硬化性プライマー組成物である。
【0018】
別の態様では、
(a)(メタ)アクリレートモノマー成分;
(b)光開始剤成分;
(c)(a)(i)約120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと、(b)任意選択で、約100から約300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムとを含む、ゴム成分;および
(d)シアン酸エステル成分
を含む組成物が提供される。
【0019】
さらに別の態様では、
(a)(メタ)アクリレートモノマー成分;
(b)光開始剤成分;
(c)(a)(i)約120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと、(b)任意選択で、約100から約300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムとを含む、ゴム成分;および
(d)アミン成分、例えば、アミノ化ジフェニルスルホン成分のような芳香族アミン成分、またはジアミノジシクロヘキシルメタンのような脂環式ジアミン成分
を含む組成物が提供される。
【0020】
さらにまた別の態様では、
(a)(メタ)アクリレートモノマー成分;
(b)光開始剤成分;
(c)(a)(i)約120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと、(b)任意選択で、約100から約300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムとを含む、ゴム成分;
(d)シアン酸エステル成分;および
(e)アミン成分、例えば、アミノ化ジフェニルスルホン成分のような芳香族アミン成分、またはジアミノジシクロヘキシルメタンのような脂環式ジアミン成分
を含む組成物が提供される。
【0021】
さらなる態様では、
前述の態様の何れかの組成物;および
熱可塑性樹脂、例えば、ガラス繊維を含むまたは含まない、ポリカーボネート、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンまたはポリアミド
を含む組合せが提供される。
【0022】
またさらなる態様では、
(a)少なくともその表面に、Bステージ化型の前述の態様の何れかの組成物が層としてコーティングされた物品;および
(b)Bステージ化型の組成物に接触した熱可塑性樹脂
を含む組合せが提供される。
【0023】
追加的な態様では、物品の周囲に射出成形物を形成する方法であって、
周囲に熱可塑性材料をある形状に成形しようとする物品を、射出成形用キャビティ内に配置するステップ;ならびに
熱可塑性材料を、物品が配置された射出成形用キャビティ内に、金型内の物品の周辺に材料が流動できる温度および圧力で射出し、熱可塑性材料を固化させるのに適した温度および圧力下に金型を維持するステップ
を含み、
物品を配置する前に、物品が、前述の態様の何れかの組成物で下塗りされ、組成物を硬化させるのに適した電磁スペクトルの放射線に曝露される、
方法が提供される。
【0024】
これらの態様すべてに共通しているのは(メタ)アクリレート成分である。(メタ)アクリレートは、H
2C=CGCO
2R
1(式中、Gは、水素または1から約4個の炭素原子を有するアルキル基であってもよく、R
1は、1から約16個の炭素原子を有する、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルカリル、アラルキルまたはアリール基から選択されてもよく、これらのうちの何れも、場合によって、シラン、ケイ素、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カーボネート、アミン、アミド、硫黄、スルホネート、スルホンなどによって任意選択で置換されていても割り込まれていてもよい)によって表されるものなどの、多種多様の材料の1種以上から選択されてもよい。例として、N,N−ジメチルアクリルアミド、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリラル(tetrahydrofuryral)(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0025】
本明細書での使用に適切な追加的な(メタ)アクリレートモノマーとして、多官能性(メタ)アクリレートモノマー、例えば、二または三官能性(メタ)アクリレート、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(「HPMA」)、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(「TMPTMA」)、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(「TRIEGMA」)、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジ(ペンタメチレングリコール)ジメタクリレート、テトラエチレンジグリコールジアクリレート、ジクリセロールテトラメタクリレート、テトラメチレンジメタクリレート、エチレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ならびにビスフェノールAモノおよびジ(メタ)アクリレート、例えばエトキシル化ビスフェノールA(メタ)アクリレート(「EBIPMA」)、ならびにビスフェノールFモノおよびジ(メタ)アクリレート、例えばエトキシル化ビスフェノールF(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で使用されてもよい、さらに別の(メタ)アクリレートモノマーとして、シリコーン(メタ)アクリレート部分(「SiMA」)、例えば米国特許第5,605,999号(Chu)(この特許の開示内容は、参照により本明細書に明示的に組込まれる)において教示および特許請求されているものが挙げられる。
【0027】
当然のことながら、これらの(メタ)アクリレートモノマーの組合せも使用してもよい。しかし望ましくは、(メタ)アクリレートモノマー成分は、N,N−ジメチルアクリルアミド、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリラル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの1種以上から選択される。
【0028】
(メタ)アクリレート成分は、総重量に基づいて約10から約90重量パーセント、例えば約40から約80重量パーセントを構成するべきである。
【0029】
光開始剤は、電磁スペクトルの紫外領域、電磁スペクトルの可視領域、またはその両方の放射によって作動する光開始剤の1種以上の開始剤から選択されてもよい。
【0030】
光開始剤は、ベンゾフェノン、または例えばα−ヒドロキシケトンなどの置換ベンゾフェノンであってもよい。1つの特に適切なα−ヒドロキシケトンは、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(IRGACURE 184としてCiba Specialty Chemicals,Inc.から市販されている)である。他の適切なα−ヒドロキシケトンおよびそれらのブレンドとして、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(DAROCUR 1173);2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(IRGACURE 2959);ならびにブレンド、例えば、IRGACURE 1000およびIRGACURE 500(すべてCiba Specialty Chemicals,Inc.から市販されている)が挙げられる。他の適切なUV光開始剤として、アセトフェノンおよび置換アセトフェノン;ベンゾインおよびそのアルキルエステル;キサントンおよび置換キサントン;ジエトキシ−アセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル;ベンゾインエチルエーテル;ベンゾインイソプロピルエーテル;ジエトキシキサントン;クロロ−チオキサントン;N−メチルジエタノール−アミン−ベンゾフェノン;1−ベンゾイルシクロヘキサノール;2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン;アミノケトン、例えば、IRGACURE 907、IRGACURE 369およびIRGACURE 1300(すべてCiba Specialty Chemicals,Inc.から市販されている);ベンジルジメチル−ケタール、例えばIRGACURE 651(Ciba Specialty Chemicals,Inc.から市販されている);BAPO(ビスアシルホスフィンオキシド)およびそのブレンド、例えば、IRGACURE 819、IRGACURE 1700、IRGACURE 1800、IRGACURE 1850、およびDAROCUR 4265(すべてCiba Specialty Chemicals,Inc.から市販されている);1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンを含むまたは含まない2,4,6トリメチルベンゾイルジホスフィンオキシド、メタロセン、例えば、IRGACURE 784およびIRGACURE 261(両方ともCiba Specialty Chemicals,Inc.から市販されている);ベンゾフェノン、例えばDAROCUR BP(Ciba Specialty Chemicals,Inc.から市販されている);ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
米国特許第5,399,770号は、そのような光開始剤として機能するある種の化合物を開示し、特許請求している。よって、’770の特許の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組込まれる。’770の特許に採用されている特に望ましい光開始剤は、Ciba Specialty ChemicalsからIRGACURE 819という商標名で市販されている。IRGACURE 819は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドである。
【0032】
カンファーキノンペルオキシエステル開始剤;9−フルオレンカルボン酸ペルオキシエステル;dl−カンファーキノン;IRGACURE 784DC(置換チタノセンに基づく光開始剤);色素および電子供与体を含む二成分開始剤;色素、電子供与体および酸化剤を含む三成分開始剤;ならびにそれらの組合せも使用してもよい。これらの可視光光開始剤をビスアシルホスフィンオキシド光開始剤とともに使用して、所望の効果を得てもよい。
【0033】
二成分開始剤に関して、適切な色素として、カンファーキノン、5,7−ジヨード−3−ブトキシ−6−フルオロン、ローズベンガル、リボフラビン、エオシンY、ベンジル、フルオロン色素、ベンジル誘導体、ケトクマリン、アクリジン色素、ベンゾフラビンおよびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されず、適切な電子供与体として、メチルジエタノールアミン、ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルおよびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
三成分開始剤に関しては、上で述べた二成分に加えて、第三の成分として適切な酸化剤として、ビス(トリクロロメチル)トリアジン、オニウム塩およびそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。オニウム塩の例として、スルホニウム塩およびヨードニウム塩が挙げられる。
【0035】
他の適切な可視光開始剤系として、以下の特許または出願公開(これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組込まれる)のそれぞれに開示されているものが挙げられる。米国特許第4,505,793号(これは本明細書に参照により組込まれる)は、3−ケト−置換クマリン化合物と活性なハロゲノ化合物との組合せを含む光重合開始剤を開示している。幾つもの例示的な化合物が開示されている。そのような光重合開始剤は、約180nmから600nmの間の範囲の波長を有する光への曝露によって硬化する。米国特許第4,258,123号(これは本明細書に参照により組込まれる)は、活性光線を照射するとフリーラジカルを発生する開始剤成分を含む感光性樹脂組成物を開示している。そのような成分として、そこにさらに詳しく記載されている通りの種々のトリアジン化合物が挙げられる。
【0036】
欧州特許出願公開第0369645A1号は三成分光開始剤系を開示しており、それは、トリハロメチル置換−s−トリアジン、約300〜1000nmの範囲内の放射線を吸収することができる増感化合物および電子供与体を含む。例示的な増感化合物が開示されており、それらとして、ケトン;クマリン色素;キサンテン色素;3H−キサンテン−3−オン色素;アクリジン色素;チアゾール色素;チアジン色素;オキサジン色素;アジン色素;アミノケトン色素;メタンおよびポリメチン色素;ポルフィリン;芳香族多環式炭化水素;p−置換アミノスチリルケトン化合物;アミノトリアリールメタン;メロシアニン;スクアリリウム色素;ならびにピリジニウム色素が挙げられる。例示的な供与体も開示されており、それらとして、アミン;アミド;エーテル;尿素;フェロセン;スルフィン酸およびそれらの塩;フェロシアニドの塩;アスコルビン酸およびその塩;ジチオカルバミン酸およびその塩;キサントゲン酸の塩;エチレンジアミン四酢酸の塩;ならびにテトラフェニルボロン酸の塩が挙げられる。そのような開始剤は、UV光と可視光の両方に感受性がある。
【0037】
欧州特許出願公開第0563925A1号は、約250〜1000nmの範囲内の放射線を吸収することができる増感化合物および2−アリール−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンを含む光重合開始剤を開示している。開示されている例示的な増感化合物として、色素、例えば、シアニン、メロシアニン、クマリン、ケトクマリン、(チオ)キサンテン、アクリジン、チアゾール、チアジン、オキサジン、アジン、アミノケトン、スクアリリウム、ピリジニウム、(チア)ピリリウム、ポルフィリン、トリアリールメタン、(ポリ)メタン、アミノスチリル化合物および芳香族多環式炭化水素が挙げられる。これらの光重合開始剤は、UV光と可視光の両方に感受性がある。
【0038】
米国特許第5,395,862号(これは参照により本明細書に明示的に組込まれる)は、フルオロン光開始剤を開示しており、これは可視光に感受性がある。そのようなフルオロン開始剤系は共開始剤も含み、これは励起したフルオロン種から電子を受け取ることができる。例示的な共開始剤が開示されており、それらとして、オニウム塩、ニトロハロメタンおよびジアゾスルホンが挙げられる。米国特許第5,451,343号(これは参照により本明細書に組込まれる)は、350nmより大きい波長の光を吸収する開始剤としてフルオロンおよびピロニン−Y誘導体を開示している。米国特許第5,545,676号(これは参照により本明細書に組込まれる)は、UV光または可視光の下で硬化する、三成分光開始剤系を開示している。三成分系は、アリールヨードニウム塩、増感化合物および電子供与体を含む。例示的なヨードニウム塩として、ジフェニルヨードニウム塩が挙げられる。
【0039】
2,4,6トリメチルベンゾイルジホスフィンオキシドおよび1−ヒドロシクロヘキシル−フェニルケトンは、組成物での使用に特に望ましい2つの光重合開始剤である。
【0040】
光開始剤成分は、約1から約5重量パーセントの量で存在するべきである。
【0041】
ゴム成分は、100から約300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムと、約120,000Mw未満、例えば約40,000から約70,000Mwの範囲内の分子量を有するポリビニルブチラール成分との組合せを含む。
【0042】
ゴム成分は、約15から約35重量パーセント、例えば約20から約30重量パーセントの量で存在するべきである。
【0043】
コアシェルゴムは、望ましくは、スチレン−ブタジエンゴムから構成されるコアと、ポリアクリレートから構成されるシェルとを有する。コアシェルゴムには多くの商業的供給元が存在するが、その中でもこの技術に関して最たるものはKaneka North America LLC(ヒューストン、TX)であり、そこではそのようなゴムを、Kane Ace MXなど、Kane Aceという商標名で供給している。Kane Aceという商標で製品提供されるものの中でも特に望ましいものは、(メタ)アクリレート担体中に分散したものである。そのような一つの例はKane Ace MX 920であり、それは、製造業者の報告によれば、フェノキシエチルアクリレートを担体として使用しており、分散体中に約15重量パーセントの量で存在するコアシェルゴムを有している。
【0044】
ゴム成分のうちコアシェルゴム部分が使用されるとき、それはポリビニルブチラールまたはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン成分に対して、最大約50重量パーセントの量で存在するべきである。
【0045】
ある態様では、シアン酸エステル成分も組成物中に存在する。シアン酸エステル成分の代表的な例として、ビスフェノールAジシアン酸エステル(およびそのフッ素化類似体)、フェノールノボラックポリシアン酸エステル、ビスフェノールEジシアン酸エステル、ビスフェノールFジシアン酸エステル、ジシクロペンタジエンジオールジシアン酸エステル、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−または2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4’−ジシアナト−ビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタンおよび3,3’,5,5’−テトラメチル,ビス(4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ジシアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、トリス(4−シアナトフェニル)−ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、ビス(3−クロロ−4−シアナトフェニル)メタン、シアノ化ノボラック、1,3−ビス[4−シアナトフェニル−1−(メチルエチリデン)]ベンゼンならびにシアノ化ビスフェノール末端のポリカーボネートまたは他の熱可塑性オリゴマーの1種以上が挙げられる。
【0046】
本明細書での使用に適切なシアン酸エステルは、幾つもの供給元から市販されている。例えば、ビスフェノールEシアン酸エステル樹脂(すなわち1,1’−ビス(4−シアナトフェニル)エタン)は、HuntsmanからAroCy L−10という商標名で市販されている。ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂、ヘキサフルオロビスフェノールAシアン酸エステル樹脂およびテトラメチルビスフェノールFシアン酸エステル樹脂[すなわちビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン]も、HuntsmanからそれぞれAroCy B−10、AroCy F−10およびAroCy M−10という商標名で市販されている。ビスフェノールCシアン酸エステル樹脂、ビスフェノールMシアン酸エステル樹脂、フェノールノボラックシアン酸エステル樹脂およびジシクロペンタジエニル−ビスフェノールシアン酸エステル樹脂(すなわちシアノ化フェノール−ジシクロペンタジエン付加体)は、HuntsmanからAroCy RD98−228、AroCy XU−366、AroCy XU−371およびXU−71787.02Lという商標名で市販されている。
【0047】
シアン酸エステル成分が使用されるとき、それは約1から約20重量パーセントの量で存在するべきである。
【0048】
ある態様では、アミン成分も組成物中に存在する。アミン成分は、芳香族アミン成分でも脂環式ジアミン成分でもよい。芳香族アミン成分の例は、アミノ化ジフェニルスルホン、例えば、3,3’ジアミノジフェニルスルホン、4,4’ジアミノジフェニルスルホン、3,3’ジアミノジフェニルエーテル、4,4’ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフィド、およびジアミノジフェニルオキシドである。
【0049】
芳香族アミン成分の代わりにまたはそれに加えて、脂環式ジアミン成分を使用してもよい。そのような成分の例は、ジアミノジシクロヘキシルメタンである。
【0050】
アミン成分が使用されるとき、それは約0.25から約5重量パーセントの量で存在するべきである。
【0051】
特に望ましい態様では、組成物は、約20から約80重量パーセントの量で存在する(メタ)アクリレートモノマー成分(例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、フェノキシエチルアクリレートおよびテトラヒドロフルフラールアクリレートの1種以上);約1から約5重量パーセントの量で存在する光開始剤成分(例えば、2,4,6トリメチルベンゾイルジホスフィンオキシドおよび1−ヒドロシクロヘキシル−フェニルケトンの1種以上);および15から約35重量パーセントの量で存在するゴム成分(例えば、(a)(i)約120,000Mw未満の分子量を有するポリビニルブチラール成分または(a)(ii)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、および(b)任意選択で、約100から約300nmの範囲内の平均径を有するコアシェルゴムを含む、ゴム成分)を含む。
【0052】
使用されるとき、シアン酸エステル成分(例えば、Huntsman Advanced Materialsから市販されているAroCy XU 366)は約1から約20重量パーセントの量で存在し、アミノ化ジフェニルスルホン成分(例えば、3,3’ジアミノジフェニルスルホン)は約0.25から約5重量パーセントの量で存在する。
【0053】
本発明の組成物は、オーバーモールディングプロセスにかけようとする物品のプライマーとして使用することができ、そのプロセスにおいては物品の周囲に射出成形物が形成されることとなる。物品は、種々の基材から構成されていてもよいが、ガラスおよびアルミニウムは好ましい選択肢であり、陽極処理アルミニウムは特に望ましい選択肢である。他の金属、例えば、マグネシウムおよび酸化マグネシウムも、基材を構成することができる金属の選択肢であり得る。
【0054】
本発明の組成物は、オーバーモールドしようとする物品に塗布し、次いで物品の表面の少なくとも一部分に組成物を固定するために電磁スペクトルの放射線に曝露することができる。
【0055】
組成物は、幾つかの方式、例えば、吹付け、スクリーン印刷、接触転写(touch transfer)などの何れかで物品に塗布されてもよい。塗布した後に、電磁スペクトルのエネルギー、例えばUVまたはUV/可視放射線に曝露することによって、表面が指触乾燥状態(または半硬化乾燥)になるまで硬化させる(すなわちBステージ化する)。
【0056】
このようにBステージ化すれば、プライマーでコーティングされた物品を後でオーバーモールディングプロセスに使用するために保存できるようになる。
【0057】
その後、オーバーモールディングプロセスにおいて、プライマーでコーティングされた物品は射出成形用キャビティ内に配置され、キャビティは、高くした温度および/または圧力条件下で熱可塑性樹脂をその中に受け入れるために密閉される。
【0058】
熱可塑性樹脂は、エンジニアリングサーモプラスチック、例えば、ガラス繊維入りポリカーボネートおよびPC/ABSアロイから通常選択される。
【0059】
熱硬化性樹脂は、エンジニアリングサーモプラスチック、例えば、ポリカーボネート、ガラス繊維入りポリカーボネート、IXEFなどのポリアリールアミド、およびPC/ABSアロイから通常選択される。熱可塑性樹脂は、最終的なアセンブリに0.5〜5秒で完全に成形するのに適切な、高くした温度および圧力で、成形用キャビティ内に射出されるべきである。金型温度自体は、通常、少なくとも最初は50から120℃の範囲内である。温度、時間および圧力は、個々の熱可塑性物質に依存するとともに、金型キャビティの大きさ、外形および経路長にも依存することとなる。射出時の熱可塑性樹脂の典型的な温度は、約180℃から325℃の範囲内、例えば260℃となろう。例えば、PBTは240から260℃、PC−ABSは250から270℃、PCおよびPAは290から310℃であるべきである。使用する圧力は、多くの要因、例えば、樹脂化学、充填剤の担持、樹脂温度、金型温度、部品の厚さ、および流動長によって影響を受けることとなる。しかし、通常、射出時および成形中は、50から5000psi、例えば500psiであるべきである。流量は、熱可塑性物質が流動しない状態に達する前に、金型キャビティ全体を充填するのに適したものでなければならない。
【0060】
斯く記載したオーバーモールディングプロセスによって形成することができる1種以上の物品の例は、
図1を参照すれば見ることができる。そこでは、斯く開示したオーバーモールディング技術から利益を受けるものとして、携帯型家庭用電化製品デバイスのアセンブリに使用される幾つかの物品を強調している。より具体的には、斯く開示したオーバーモールディング技術で4つの物品を調製することができる。すなわち、1.タッチパネルウィンドウ11およびカバー12、2.スピーカー21およびカメラレンズ22、3.カバー31、金属製トリム32およびサブフレーム33、ならびに4.タッチパネル41、プラスチックベゼル42および金属製トリム43である。
【実施例】
【0061】
斯く記載した通りの組成物は、以下の表に一覧表示する構成要素を溶解に至るまで共に混合することによって調製することができる。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
陽極処理アルミニウム基板(MIL−A−8625、Type II、1.8から2.5ミクロンの厚さを有する)に組成物を塗工用バーによって塗布し、分光反射率によると実質的に均一に見える、厚さ約25〜50ミクロンの層を生成した。組成物をコーティングした基材を、次いで100mW/cm
2の強度のUV放射線に約5秒間曝露して、その物品上に半硬化乾燥状態に硬化した表面を生成した。
【0069】
プライマーでコーティングした物品を次にオーバーモールドして、成形したプラスチックとコーティングした物品の間に優れた強度を有する一体化部品を生成することができる。より具体的には、プライマーでコーティングした物品を適切な射出成形用キャビティ内に入れた。射出成形装置内でPC/ABSプラスチックを固体から溶融状態への変化状態まで約260℃の温度で加熱し、次いで約50〜100psiの射出圧力で金型内に射出した。プラスチックは、金型の容量および外形に応じて射出から数秒以内で固まって、容易に金型から外れる一体化部品が生成する。
【0070】
引き離し強さに関する性能である、試料A〜Cをコーティングした陽極処理アルミニウムからのピン引張力(pin−pull)は、それぞれ以下の通りである:6.1Mpa、7.7Mpaおよび8.4Mpa。
【0071】
引き離し強さに関する性能である、試料D〜Fをコーティングした陽極処理アルミニウムからのピン引張力は、それぞれ以下の通りである:_Mpa、_Mpaおよび_Mpa。
【0072】
試料G〜Lについては、ABSをポリビニルブチラールの代わりに使用した。ABSは、密度が1.03から1.07g/cm
3、例えば1.04から1.05g/cm
3、引張り降伏応力が33〜50Mpa、例えば35から40Mpa、引張り係数が1500から2500Mpa、例えば1900から2100Mpa、およびメルトマスフローが220℃/10kgで2.0から28.0g/10分、例えば、4.0から8.5g/10分であるべきである。
【0073】
引き離し強さに関する性能である、試料G〜Iをコーティングした陽極処理アルミニウムからのピン引張力は、それぞれ以下の通りである:0Mpa、0.7Mpaおよび2.1Mpa。
【0074】
引き離し強さに関する性能である、試料J〜Lをコーティングした陽極処理アルミニウムからのピン引張力は、それぞれ以下の通りである:7.1Mpa、7.9Mpaおよび8.9Mpa。
【0075】
引き離し強さに関する性能である、試料M〜Oをコーティングした陽極処理アルミニウムからのピン引張力は、それぞれ以下の通りである:8.6Mpa、8.5Mpaおよび8.6Mpa。
【0076】
引き離し強さに関する性能である、試料P〜Rをコーティングした陽極処理アルミニウムからのピン引張力は、それぞれ以下の通りである:8.5Mpa、9.2Mpaおよび4.3Mpa。