(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479013
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】適応的自己同調型アンテナシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/04 20060101AFI20190225BHJP
H01Q 9/14 20060101ALI20190225BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
H04B1/04 Z
H01Q9/14
H01Q21/06
【請求項の数】28
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-537528(P2016-537528)
(86)(22)【出願日】2014年12月9日
(65)【公表番号】特表2017-506442(P2017-506442A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】US2014069238
(87)【国際公開番号】WO2015089017
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年12月5日
(31)【優先権主張番号】14/100,716
(32)【優先日】2013年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504189151
【氏名又は名称】シュアー アクイジッション ホールディングス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SHURE ACQUISITION HOLDINGS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ザハラ クリストファー
【審査官】
浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0285326(US,A1)
【文献】
特開2013−118659(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/001650(WO,A1)
【文献】
特開平10−209736(JP,A)
【文献】
特表2006−523426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/00−11/20
H01Q 21/00−25/04
H04B 1/02− 1/04
H04B 1/38− 1/58
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応的自己同調型アンテナシステムであって、
送信アンテナから送信された、アナログ変調信号又はデジタル変調信号のうちの一方又は両方を含むRF信号の近接場無線周波数(RF)信号を検出する検知アンテナと、
前記検知アンテナと通信し、前記近接場RF信号からフィルタ処理済みの近接場RF信号を生成する帯域通過フィルタと、
前記帯域通過フィルタと通信し、前記フィルタ処理済みの近接場RF信号の電力を検出し、該フィルタ処理済みの近接場RF信号の強度を表すRF強度制御信号を出力するRF検出器と、
前記RF検出器と通信し、前記RF強度制御信号を受け取り、該RF強度制御信号に基づいてアンテナ同調制御信号を生成するように構成されたプロセッサと、
を備え、前記アンテナ同調制御信号は、前記送信アンテナによって送信される前記RF信号の強度が最大になるように前記送信アンテナの電気長を制御し、前記プロセッサは、前記アンテナ同調制御信号を、
前記RF強度制御信号に基づいて、現在の周波数における前記RF信号の前記強度を記憶し、
前記RF信号の前記現在の周波数よりも同調状態が1つ低い第1の周波数に前記送信アンテナが同調されるように第1の較正アンテナ同調制御信号を生成し、
前記RF強度制御信号を受け取り、
前記RF強度制御信号に基づいて、前記RF信号の第1の較正強度を記憶し、
前記RF信号の前記現在の周波数よりも同調状態が1つ高い第2の周波数に前記送信アンテナが同調されるように第2の較正同調制御信号を生成し、
前記RF強度制御信号を受け取り、
前記RF強度制御信号に基づいて前記RF信号の第2の較正強度を記憶し、
前記送信アンテナが、前記第1の較正強度、前記第2の較正強度、及び前記RF信号の前記強度のうちの大きい方に基づいて、前記第1の周波数、前記第2の周波数又は前記現在の周波数の1つにおける共振に同調されるように前記アンテナ同調制御信号を生成する、
ことによって、生成するように構成された
ことを特徴とする適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項2】
前記RF信号を送信する前記送信アンテナと、
前記プロセッサ及び前記送信アンテナと通信し、前記アンテナ同調制御信号に基づいて前記送信アンテナの前記電気長を制御するように構成されたアンテナチューナと、
前記アナログ変調信号又は前記デジタル変調信号のうちの一方又は両方を含む初期RF信号を生成するRF送信機と、
前記RF送信機及び前記アンテナチューナと通信し、前記初期RF信号を前記RF信号に増幅して、該RF信号を前記アンテナチューナに送信するRF電力増幅器と、
をさらに備える請求項1に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項3】
前記アンテナチューナは、移相器を含む、
請求項2に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項4】
前記移相器は、少なくとも1つのコンデンサ及び前記送信アンテナと直列に存在する少なくとも1つのインダクタを含み、
前記少なくとも1つのコンデンサの容量値は、前記アンテナ同調制御信号に基づいて選択され、該選択された容量値は、前記送信アンテナの前記電気長を制御する、
請求項3に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコンデンサは、少なくとも1つのデジタルチューナブルコンデンサ、又は少なくとも1つの微小電気機械コンデンサのうちの一方又は両方を含む、
請求項4に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項6】
前記移相器は、少なくとも1つのバラクタダイオード及び前記送信アンテナと直列に存在する少なくとも1つのインダクタを含み、
前記少なくとも1つバラクタダイオードの容量値は、前記アンテナ同調制御信号に基づいて決定され、前記選択された容量値は、前記送信アンテナの前記電気長を制御する、
請求項3に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項7】
前記移相器は、前記送信アンテナと通信する少なくとも1つのPINダイオードを含み、
前記少なくとも1つのPINダイオードは、前記アンテナ同調制御信号に基づいてバイアス処理され、前記少なくとも1つのPINダイオードの前記バイアス処理は、前記送信アンテナの前記電気長を制御する、
請求項3に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項8】
前記移相器は、平衡移相器又はシングルエンド移相器のうちの一方又は両方を含む、
請求項3に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項9】
前記送信アンテナは、互いに平行に配置されて互いに電気的に接続されない第1の螺旋ブランチ及び第2の螺旋ブランチを含む、
請求項2に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項10】
前記第1の螺旋ブランチは、第1の長さを有し、
前記第2の螺旋ブランチは、前記第1の長さと異なる第2の長さを有する、
請求項9に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項11】
前記第1の螺旋ブランチは、第1の形状を有し、
前記第2の螺旋ブランチは、前記第1の形状と異なる第2の形状を有する、
請求項9に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項12】
前記送信アンテナは、単一の螺旋ブランチを含む、
請求項2に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項13】
前記検知アンテナは、プリント基板上のトレース又は広帯域アンテナのうちの一方又は両方を含む、
請求項1に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項14】
前記RF信号は、オーディオ信号又はデータ信号のうちの一方又は両方を含む、
請求項1に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項15】
送信アンテナを適応的に自己同調させる方法であって、
送信アンテナから送信された、アナログ変調信号又はデジタル変調信号のうちの一方又は両方を含むRF信号の近接場無線周波数(RF)信号を検出するステップと、
前記近接場RF信号を帯域通過フィルタ処理して、前記近接場RF信号からフィルタ処理済みの近接場RF信号を生成するステップと、
前記フィルタ処理済みの近接場RF信号の電力を検出し、該フィルタ処理済みの近接場RF信号の強度を表すRF強度制御信号を出力するステップと、
前記RF強度制御信号に基づいてアンテナ同調制御信号を生成するステップと、
を含み、前記アンテナ同調制御信号は、前記送信アンテナによって送信される前記RF信号の強度が最大になるように前記送信アンテナの電気長を制御し、前記アンテナ同調制御信号を生成するステップは、
前記RF強度制御信号に基づいて、現在の周波数における前記RF信号の前記強度を記憶するステップと、
前記RF信号の前記現在の周波数よりも同調段階が1つ低い第1の周波数に前記送信アンテナが同調されるように第1の較正同調制御信号を生成するステップと、
前記RF強度制御信号を受け取るステップと、
前記RF強度制御信号に基づいて、前記RF信号の第1の較正強度を記憶するステップと、
前記RF信号の前記現在の周波数よりも同調段階が1つ高い第2の周波数に前記送信アンテナが同調されるように第2の較正同調制御信号を生成するステップと、
前記RF強度制御信号を受け取るステップと、
前記RF強度制御信号に基づいて前記RF信号の第2の較正強度を記憶するステップと、
前記送信アンテナが、前記第1の較正強度、前記第2の較正強度のうちの大きい方と、
前記RF信号の前記強度とに基づいて、前記第1の周波数、前記第2の周波数又は前記現在の周波数の1つにおける共振に同調されるように前記アンテナ同調制御信号を生成するステップと、
を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記アナログ変調信号又は前記デジタル変調信号のうちの一方又は両方を含む初期RF信号を生成するステップと、
前記初期RF信号を前記RF信号に増幅するステップと、
前記RF信号を前記送信アンテナから送信するステップと、
前記アンテナ同調制御信号に基づいて、前記送信アンテナの前記電気長を制御するステップと、
をさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記送信アンテナの前記電気長を制御するステップは、前記アンテナ同調制御信号に基づいて少なくとも1つのコンデンサの容量値を選択するステップを含み、前記選択された容量値は、前記送信アンテナの前記電気長を制御し、前記少なくとも1つのコンデンサは、少なくとも1つのインダクタ及び前記送信アンテナと直列に存在する、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのコンデンサは、少なくとも1つのデジタルチューナブルコンデンサ、又は少なくとも1つの微小電気機械コンデンサのうちの一方又は両方を含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記送信アンテナの前記電気長を制御するステップは、前記アンテナ同調制御信号に基づいて少なくとも1つのバラクタダイオードの容量値を決定するステップを含み、前記選択された容量値は、前記送信アンテナの前記電気長を制御し、前記少なくとも1つのバラクタダイオードは、少なくとも1つのインダクタ及び前記送信アンテナと直列に存在する、
請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記送信アンテナの前記電気長を制御するステップは、前記アンテナ同調制御信号に基づいて少なくとも1つのPINダイオードをバイアス処理するステップを含み、前記少なくとも1つのPINダイオードの前記バイアス処理は、前記送信アンテナの前記電気長を制御し、前記少なくとも1つのPINダイオードは、前記送信アンテナと通信する、
請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記送信アンテナは、互いに平行に配置されて互いに電気的に接続されない第1の螺旋ブランチ及び第2の螺旋ブランチを含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の螺旋ブランチは、第1の長さを有し、
前記第2の螺旋ブランチは、前記第1の長さと異なる第2の長さを有する、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の螺旋ブランチは、第1の形状を有し、
前記第2の螺旋ブランチは、前記第1の形状と異なる第2の形状を有する、
請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記送信アンテナは、単一の螺旋ブランチを含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項25】
適応的自己同調型アンテナシステムであって、
第1の送信アンテナから送信された、第1の周波数の第1のRF信号の第1の近接場無線周波数(RF)信号と、第2の送信アンテナから送信された、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の第2のRF信号の第2の近接場RF信号とを検出する検知アンテナと、
前記検知アンテナと通信し、前記第1のRF信号を送信すべきか、それとも前記第2のRF信号を送信すべきかに基づいて、前記第1の近接場RF信号又は前記第2の近接場RF信号から選択された近接場RF信号を変換する第1のRFスイッチと、
前記第1のRFスイッチと通信し、前記第1の近接場RF信号から第1のフィルタ処理済みの近接場RF信号を生成する第1の帯域通過フィルタと、
前記第1のRFスイッチと通信し、前記第2の近接場RF信号から第2のフィルタ処理済みの近接場RF信号を生成する第2の帯域通過フィルタと、
前記第1及び第2の帯域通過フィルタと通信し、前記第1のRF信号を送信すべきか、それとも前記第2のRF信号を送信すべきかに基づいて、前記第1のフィルタ処理済みの近接場RF信号又は前記第2のフィルタ処理済みの近接場RF信号から選択されたフィルタ処理済みの近接場RF信号を伝える第2のRFスイッチと、
前記第2のRFスイッチと通信し、前記選択されたフィルタ処理済みの近接場RF信号の電力を検出し、該選択されたフィルタ処理済みの近接場RF信号の強度を表すRF強度制御信号を出力するRF検出器と、
前記RF検出器と通信し、前記RF強度制御信号を受け取り、該RF強度制御信号に基づいてアンテナ同調制御信号を生成するように構成されたプロセッサと、
を備え、前記アンテナ同調制御信号は、前記第1又は第2の送信アンテナによって送信される前記第1又は第2のRF信号の強度が最大になるように前記第1又は第2の送信アンテナのそれぞれの電気長を制御し、前記プロセッサは、前記アンテナ同調制御信号を、
前記RF強度制御信号に基づいて、現在の周波数における送信されたRF信号の前記強度を記憶し、ここで前記送信されたRF信号は、(1)前記第1のRF信号が送信されるものである場合は前記第1のRF信号を、(2)前記第2のRF信号が送信されるものである場合は前記第2のRF信号を含むものであり、
前記送信されたRF信号の前記現在の周波数よりも同調状態が1つ低い第1の周波数に前記送信アンテナが同調されるように第1の較正アンテナ同調制御信号を生成し、ここで前記送信アンテナは、(1)前記第1のRF信号が送信されるものである場合は前記第1の送信アンテナを、(2)前記第2のRF信号が送信されるものである場合は前記第2の送信アンテナを含むものであり、
前記RF強度制御信号を受け取り、
前記RF強度制御信号に基づいて、前記送信されたRF信号の第1の較正強度を記憶し、
前記送信されたRF信号の前記現在の周波数よりも同調状態が1つ高い第2の周波数に前記送信アンテナが同調されるように第2の較正同調制御信号を生成し、
前記RF強度制御信号を受け取り、
前記RF強度制御信号に基づいて前記送信されたRF信号の第2の較正強度を記憶し、
前記送信アンテナが、前記第1の較正強度、前記第2の較正強度、及び前記送信されたRF信号の前記強度のうちの大きい方に基づいて、前記第1の周波数、前記第2の周波数又は前記現在の周波数の1つにおける共振に同調されるように前記アンテナ同調制御信号を生成する、
ことによって、生成するように構成された
ことを特徴とする適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項26】
前記プロセッサ及び前記第1の送信アンテナと通信し、前記アンテナ同調制御信号に基づいて前記第1の送信アンテナの前記電気長を制御するように構成された第1のアンテナチューナと、
前記プロセッサ及び前記第2の送信アンテナと通信し、前記アンテナ同調制御信号に基づいて前記第2の送信アンテナの前記電気長を制御するように構成された第2のアンテナチューナと、
をさらに備える請求項25に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項27】
前記第1の周波数は、高周波帯域に存在し、
前記第1のRF信号は、第1のデジタル変調信号であり、
前記第2の周波数は、低周波帯域に存在し、
前記第2のRF信号は、アナログ変調信号又は第2のデジタル変調信号のうちの一方又は両方である、
請求項25に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【請求項28】
前記第1のデジタル変調信号のプリアンブルが送信されている場合、
前記第1のRFスイッチによって伝えられる前記選択された近接場RF信号は、前記第1の近接場RF信号であり、
前記第2のRFスイッチによって伝えられる前記選択されたフィルタ処理済みの近接場RF信号は、前記第1のフィルタ処理済みの近接場RF信号であり、
前記第1のデジタル変調信号の前記プリアンブルが送信されていない場合、
前記第1のRFスイッチによって伝えられる前記選択された近接場RF信号は、前記第2の近接場RF信号であり、
前記第2のRFスイッチによって伝えられる前記選択されたフィルタ処理済みの近接場RF信号は、前記第2のフィルタ処理済みの近接場RF信号である、
請求項27に記載の適応的自己同調型アンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、適応的自己同調型アンテナシステム及び方法に関する。具体的には、本出願は、検知アンテナと、RF検出器と、プロセッサと、アンテナチューナとを含む閉ループシステムを用いてアンテナを適応的に同調させるシステム及び方法、並びに同調型アンテナのためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ制作は、テレビ番組、ニュース放送、映画、ライブイベント及びその他のタイプの製作物などの音を取り込んで記録するために、マイク、無線オーディオ送信機、無線オーディオ受信機、録音機及び/又ミキサを含む多くのコンポーネントの使用を伴うことができる。通常は、マイクによって製作物の音を取り込み、この音がマイク及び/又は無線オーディオ送信機から無線オーディオ受信機に無線で送信される。無線オーディオ受信機は、プロダクションサウンドミキサなどのクルーメンバにより、録音及び/又はミキシングのための録音機及び/又はミキサに接続することができる。録音機及び/又はミキサには、クルーメンバがオーディオレベル及びタイムコードをモニタできるように、コンピュータ及びスマートフォンなどの電子機器を接続することができる。
【0003】
無線オーディオ送信機、無線オーディオ受信機及びその他のポータブル無線通信装置は、変調オーディオ信号、データ信号及び/又は制御信号などのデジタル又はアナログ信号を含む無線周波数(RF)信号を送信するためのアンテナを含む。ポータブル無線通信装置のユーザとしては、舞台出演者、歌手、俳優、ニュースリポータなどが挙げられる。1つの一般的なタイプのポータブル無線通信装置に、通常はベルトクリップ、ストラップ、テープなどでユーザの体に固定される無線ボディパック送信機がある。
【0004】
通常、ポータブル無線通信装置に含まれる電気的微小アンテナは、装置を小型化し、アンテナとの物理的相互作用を最小化し、観衆から装置を隠しやすくするように、薄型かつ小型である。アンテナは、利用するアンテナのタイプに応じて、装置から延びることも、或いは装置に含めることもできる。しかしながら、アンテナのサイズが減少すると、基本的な物理的制約に起因して、アンテナの使用帯域幅及び効率も低下する。さらに、電気的微小アンテナは、人体に近いという離調効果を受ける可能性が高い。例えば、状況によっては、人体がアンテナに近付くことによってRF信号伝送が20dB劣化することもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポータブル無線通信装置において使用される典型的なアンテナタイプとしては、1/4波長ホイップアンテナ、部分的又は完全螺旋アンテナ、セラミックチップアンテナ及びその他のタイプのアンテナが挙げられる。これらの各アンテナタイプには欠点がある。1/4波長ホイップアンテナは装置から延びることができ、従って過度に長く、隠すのが難しく、損傷を受けやすい。部分的又は完全螺旋アンテナも装置から延びることができ、動作帯域幅が限られ、放射効率が低く、人体に近付くと離調の影響を受けやすい。セラミックチップアンテナは装置に含めることができ、他のアンテナタイプよりも物理的に小型であるが、放射効率が非常に低く、動作帯域幅が極端に限られ、やはり人体に近付くと離調の影響を受けやすい。
【0006】
従って、これらの問題に対処するシステム及び方法のための機会が存在する。具体的には、改善された自動同調可能な動作周波数、低い離調感受性、装置内への一体化能力のために、アンテナの放射抵抗を高め、放射効率を改善し、非近接場強度を最大化することができる閉ループシステムを用いてアンテナを同調させる適応的自己同調型アンテナシステム及び方法のための機会が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、とりわけ、(1)アンテナから送信されたRF信号から近接場無線周波数(RF)信号を検出する検知アンテナを利用し、(2)近接場RF信号の強度に基づいて近接場RF信号をRF強度制御信号に変換し、(3)RF強度制御信号に基づいてアンテナ同調制御信号を生成し、(4)アンテナ同調制御信号に基づいて、アンテナから送信されるRF信号の強度が最大になるようにアンテナチューナを用いてアンテナの電気長を制御し、(5)同調ネットワークと通信して放射抵抗及び放射効率を改善する電気的微小アンテナを提供する、ように設計された適応的自己同調型アンテナシステム及び方法を提供することによって上述の問題点を解決するものである。アンテナは、電子的に同調可能なアンテナとすることができ、あらゆるタイプの物理的構成を有することができる。
【0008】
ある実施形態では、適応的自己同調型アンテナシステムが、送信アンテナから送信されたRF信号の近接場RF信号を検出する検知アンテナを含むことができる。このシステムは、近接場RF信号からフィルタ処理済みの近接場RF信号を生成する帯域通過フィルタと、フィルタ処理済みの近接場RF信号を、フィルタ処理済みの近接場RF信号の強度を表すRF強度制御信号に変換するRF検出器とをさらに含むことができる。このRF強度制御信号をプロセッサが受け取り、RF強度制御信号に基づいてアンテナ同調制御信号を生成することができる。このアンテナ同調制御信号に基づいて、送信アンテナによって送信されるRF信号の強度が最大になるようにアンテナの電気長を制御するようアンテナチューナを構成することができる。
【0009】
別の実施形態では、送信アンテナを適応的に自己同調させる方法が、送信アンテナから送信されたRF信号の近接場RF信号を検出するステップを含む。この近接場RF信号を帯域通過フィルタ処理して、フィルタ処理済みの近接場RF信号を生成することができる。このフィルタ処理済みの近接場RF信号を、フィルタ処理済みの近接場RF信号の強度を表すRF強度制御信号に変換し、このRF強度制御信号に基づいて、アンテナ同調制御信号を生成することができる。このアンテナ同調制御信号に基づいて、送信アンテナによって送信されるRF信号の強度が最大になるように送信アンテナの電気長を制御することができる。
【0010】
さらなる実施形態では、適応的自己同調型アンテナシステムが、第1の周波数の第1のRF信号の第1の近接場RF信号と、第1の周波数とは異なる第2の周波数の第2のRF信号の第2の近接場RF信号とを検出する検知アンテナを含むことができる。第1のRF信号は、第1の送信アンテナから送信されたものとすることができ、第2のRF信号は、第2の送信アンテナから送信されたものとすることができる。第1のRFスイッチが、第1のRF信号が送信されているか、それとも第2のRF信号が送信されているかに基づいて、第1又は第2の近接場RF信号から選択された近接場RF信号を伝えることができる。第1及び第2の帯域通過フィルタが、第1及び第2の近接場RF信号から、第1及び第2のフィルタ処理済みの近接場RF信号をそれぞれ生成することができる。第2のRFスイッチが、第1のRF信号が送信されているか、それとも第2のRF信号が送信されているかに基づいて、第1又は第2のフィルタ処理済みの近接場RF信号から選択されたフィルタ処理済みの近接場RF信号を伝えることができる。RF検出器が、選択されたフィルタ処理済みの近接場RF信号を、選択されたフィルタ処理済みの近接場RF信号の強度を表すRF強度制御信号に変換することができる。このRF強度制御信号をプロセッサが受け取り、RF強度制御信号に基づいてアンテナ同調制御信号を生成することができる。第1のアンテナチューナを、アンテナ同調制御信号に基づいて、第1の送信アンテナによって送信される第1のRF信号の強度が最大になるように第1の送信アンテナの電気長を制御するよう構成することができる。第2のアンテナチューナを、同調制御信号に基づいて、第2の送信アンテナによって送信される第2のRF信号の強度が最大になるように第2の送信アンテナの電気長を制御するよう構成することができる。いくつかの実施形態では、第2の送信アンテナが、例えばダイバーシティ構成などの複数の送信アンテナを含むことができる。これらの実施形態では、第2のアンテナチューナを、RF信号を送信する所与の時点における最も効率的な送信アンテナを選択するように構成することができる。
【0011】
別の実施形態では、RF信号を送信するアンテナ構造が、基板上に配置された第1の螺旋ブランチ及び第2の螺旋ブランチを含む。第1の螺旋ブランチ及び第2の螺旋ブランチは、互いに平行に配置されて互いに電気的に接続されない。アンテナは、第1及び第2の螺旋ブランチと通信する同調ネットワークを含むこともでき、第1の螺旋ブランチの第1の電気長及び第2の螺旋ブランチの第2の電気長を、アンテナの放射抵抗が最大になるように制御するよう構成することができる。アンテナの第1及び第2の螺旋ブランチの各々は、RF信号を送信する。
【0012】
本発明の原理を採用できる様々な方法を示す例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明及び添付図面から、これらの及びその他の実施形態、並びに様々な置換及び態様が明らかになり、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】いくつかの実施形態による、シングルバンド式適応的自己同調型アンテナシステムのブロック図である。
【
図1B】いくつかの実施形態による、シングルバンド式適応的自己同調型アンテナシステムのブロック図である。
【
図2A】いくつかの実施形態による、デュアルバンド式適応的自己同調型アンテナシステムのブロック図である。
【
図2B】いくつかの実施形態による、デュアルバンド式適応的自己同調型アンテナシステムのブロック図である。
【
図3】いくつかの実施形態による、
図1A〜
図1Bのシステムを用いて、RF強度制御信号及びアンテナ同調制御信号に基づいて送信アンテナの電気長を制御する動作を示すフローチャートである。
【
図4A】いくつかの実施形態による、
図2Aのシステムを用いて、RF強度制御信号及びアンテナ同調制御信号に基づいて送信アンテナの電気長を制御する動作を示すフローチャートである。
【
図4B】いくつかの実施形態による、
図2Bのシステムを用いて、RF強度制御信号及びアンテナ同調制御信号に基づいて送信アンテナの電気長を制御する動作を示すフローチャートである。
【
図5】いくつかの実施形態による、
図3及び
図4A〜
図4Bの動作に関連してアンテナ同調制御信号を生成する動作を示すフローチャートである。
【
図6】いくつかの実施形態によるアンテナチューナの例示的な概略図である。
【
図7】いくつかの実施形態によるアンテナチューナの例示的な別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、本発明の原理に従う本発明の1又はそれ以上の特定の実施形態について説明し、図示し、例示するものである。この説明は、本明細書で説明する実施形態に本発明を限定するためではなく、むしろ当業者が本発明の原理を理解した上でこれらの原理を適用し、本明細書で説明する実施形態のみならず、これらの原理に基づいて想起される他の実施形態も実施できるように、本発明の原理の説明及び教示のために行うものである。本発明の範囲は、文言上、又は均等論の下で添付の特許請求の範囲に含まれる可能性のある全ての実施形態を対象とすることが意図されている。
【0015】
なお、説明及び図面では、同じ又は実質的に同様の要素には同じ参照数字を付している。しかしながら、例えば異なる数字を付した方が説明が明確になる場合には、これらの要素に異なる数字を付すこともある。また、本明細書に示す図面は必ずしも縮尺通りではなく、場合によっては、特定の特徴をより明確に示すために比率を誇張していることもある。このような表示及び作図手法は、必ずしも根底にある本質的な目的に関与するものではない。上述したように、本明細書は、本明細書で教示され当業者に理解される本発明の原理に従って全体として受け取られ解釈されるように意図されている。
【0016】
以下で説明する適応的自己同調型アンテナシステム及び方法は、他のタイプのアンテナよりも、特に電気的に微小なコンフォーマルアンテナよりもアンテナの性能を向上させることができる。システム及び方法の閉ループ同調は、帯域幅が限られた電気的微小アンテナが、1/4波長アンテナの帯域幅に近い動作帯域幅を効果的に有しながら、アンテナのコンフォーマルな側面に起因して物理的に小型であって装置に内包されるようにする。さらに、このアンテナは、高い放射抵抗及び改善された放射効率を有し、適応的閉ループアンテナ同調システムは、人体又は他の干渉物との相互作用に起因するアンテナの離調を動的に補償して最小化することができる。具体的には、装置を保持している人物などの人体に起因するアンテナ離調の影響としてアンテナの導体電流の変化が挙げられるが、この影響を適応的自己同調型アンテナシステム及び方法によって補償することができる。
【0017】
図1Aは、無線周波数(RF)信号を最適に送信するシングルバンド式適応的自己同調型アンテナシステム100の1つの実施形態のブロック図である。システム100は、アンテナ102が、近接場検知アンテナ104、帯域通過フィルタ106、RF検出器108、プロセッサ110及びアンテナチューナ112を用いて最大強度及び高放射効率のRF信号を送信できるようにする閉ループシステムとすることができる。帯域幅が限られた同調型アンテナ102は、システム100を使用することにより、UHF/VHFバンド又は他の周波数帯域などの特定の周波数のRF信号を最大放射電力で送信することができる。アンテナ102は、例えば以下で説明するような二重並列螺旋ブランチを含むことも、又は別の構成とすることもできる。アンテナ102によって送信されるRF信号は、例えばアナログ及び/又はデジタル変調スキームによって変調されたオーディオ信号又はデータ信号を含むことができる。これらの信号は、アナログ又はデジタルRF送受信機/送信機116によって変調され、(RF送受信機/送信機116が送信機構成である時には)正しく適合された電力増幅器114によって、或いは(RF送受信機/送信機116が送受信機構成である時には)電力増幅器/低雑音増幅器114によって増幅されたものとすることができる。RF送受信機/送信機116は、デジタルデータ信号、制御信号などを用いてマイク又は再生装置などの他のコンポーネント(図示せず)と通信することができる。例えば、システム100を無線オーディオ送信機に含め、アンテナ102からRF信号を送信して、さらなる処理のために無線オーディオ受信機、録音機及び/又はその他のコンポーネントによって受け取られるようにすることができる。
【0018】
システム100は、アンテナ102と電力増幅器114の出力との整合を動的に改善することもできる。通常、ポータブル無線システムの文脈では、人体又はその他の物体との相互作用によって生じるアンテナインピーダンスのばらつきに起因してこのような整合は劣化する。従って、システム100によって実現できる自己同調及び整合は、電力増幅器114の設計上の制約を低減し、安定性及び電力効率を改善し、消費電力を減少させることができる。電力増幅器114及び/又はRF送受信機/送信機116などのシステム100のコンポーネントの全体的な複雑性及びコストも、現行のシステムに比べて低減することができる。
【0019】
検知アンテナ104は、アンテナ102から送信されたRF信号の近接場RF信号を検出することができる。放射近接場RF信号は、アンテナ102に物理的に最も近いRF信号であり、一般にアンテナからのRF信号のほんのわずかな波長内に存在する。近接場RF信号の強度と、関連する非近接場RF信号の強度との間には強い相関性があるため、検知アンテナ104を用いて近接場RF信号を検出することにより、システム100がアンテナ102の同調を決定できるようになる。非近接場RF信号は、アンテナから離れて位置する受信機によって受け取られる「実際の放射電力」信号としてのRF信号である。従って、システム100は、近接場RF信号を検知した後に、アンテナ102によって送信されるRF信号の強度を最大化するようにアンテナチューナ112を制御することができる。検知アンテナ104は、例えばプリント基板上のトレース、ワイヤ、又は広帯域アンテナとすることができ、近接場負荷効果が最小になるようにRF検出器108に高入力インピーダンスを提供することができる。
【0020】
近接場RF信号は、検知アンテナ104から帯域通過フィルタ106に提供することができる。帯域通過フィルタ106は、アンテナ同調の歪みを避けるために、検知アンテナ104によって検出されたRF信号のうち、アンテナ102によって送信される周波数帯域外のRF信号を除去する。例えば、検知アンテナ104が、システム100に物理的に近い装置からの近接周波数のRF信号を検出した場合、帯域通過フィルタ106は、アンテナ102によって送信されたRF信号をさらに処理できるように他のRF信号をフィルタ除去することができる。帯域通過フィルタ106は、離散帯域通過フィルタ、マイクロ波帯域通過フィルタ、SAW帯域通過フィルタ、螺旋帯域通過フィルタ、誘電帯域通過フィルタ、又は他のタイプのフィルタとすることができる。特定のタイプの帯域通過フィルタ106は、帯域外除去要件に依存することができる。RF検出器108は、帯域通過フィルタ106からのフィルタ処理済みの近接場RF信号を、フィルタ処理済みの近接場RF信号の強度を表すRF強度制御信号に変換することができる。RF強度制御信号は、例えばDC電圧又はデジタル信号(例えば、SPI、I
2Cなど)とすることができる。RF検出器108は、例えば5〜15dBのみに制限されたアンテナ102の最低限必要な動的同調範囲のみを検知するように較正することができる。このようにして、周波数帯域内の高出力信号によって引き起こされる干渉を最小化することができる。RF検出器108は、例えば Analog Devices社製のAD8361集積回路とすることができる。
【0021】
プロセッサ110は、RF検出器108からRF強度制御信号を受け取り、このRF強度制御信号に基づいてアンテナ同調制御信号を生成することができる。プロセッサ110は、システム100に含まれて他の機能を実行することも、又は独立コンポーネントとすることもできる。プロセッサ110上で実行されるルーチンの結果、アンテナ同調制御信号の生成を通じてアンテナ102をアンテナチューナ112に同調させることができる。具体的には、アンテナチューナ112が、送信されるRF信号の強度が最大になるようにアンテナ同調制御信号に基づいてアンテナ102の電気長を制御することができる。プロセッサ110は、現在の周波数、同調状態が現在の周波数よりも1つ高い周波数、及び同調状態が現在の周波数よりも1つ低い周波数における近接場RF信号の強度を定期的にサンプリングすることができる。その後、同調制御信号を生成して、アンテナ102が近接場RF信号の最も高い測定強度を有する同調状態に同調されるようにすることができる。同調制御信号の生成方法の実施形態については、以下で
図5を参照しながら説明する。
【0022】
アンテナチューナ112は、送信されるRF信号の強度が最大になるようにアンテナ同調制御信号に基づいてアンテナ102の電気長を制御できる平衡移相器とすることができる。具体的には、アンテナ同調制御信号を用いてアンテナチューナ112の純リアクタンスを制御し、送信されている特定の周波数のアンテナ共振を有するようにアンテナ102を同調させることができる。
図6に示す1つの実施形態では、アンテナ601の2つのブランチが、直列に接続されたインダクタ602及びコンデンサ604を含む同調ネットワーク600にそれぞれ接続されている。同調ネットワーク600内のインダクタ602は、同調ネットワーク600において信号損失が最小になるように高品質係数Q(及びコンデンサ604を含む対応する低い直列抵抗値)を有することができる。低帯域端周波数におけるアンテナ共振では、インダクタ602の正しく選択されたインダクタンスに関連して、特定の帯域(例えば、VHF、UHF、L帯域、S帯域、C帯域など)内の動作周波数に応じてコンデンサ604を10〜1000pFなどの高い値に調整することができる。アンテナ共振を必要な動作周波数に移行させるには、このコンデンサ604の値を減少させることができる。コンデンサ604の最小値は、アンテナ共振の高帯域端周波数で生じる。
図6は、単一の導体螺旋アンテナ603と、インダクタ602と、コンデンサ604とが直列に接続された実施形態も含む。適応的自己同調型システム100を使用すると、ユーザの取り扱い、並びに人体及び他の物体との近さに起因する、アンテナに対する動的に変化する負荷効果を継続的に補償することができる。例えば、コンデンサ604は、デジタルチューナブルコンデンサ(DTC)、微小電気機械(MEMS)コンデンサ、又はバラクタダイオードとすることができる。具体的には、同調制御信号は、アンテナ601の電気長が適切に制御されるようにコンデンサ又はバラクタダイオードの容量値を制御することができる。
【0023】
図7に示す別の実施形態では、アンテナ102の2つのブランチが、PINダイオードで構成された平衡同調ネットワーク700に接続されている。PINダイオードを用いて、ネットワーク700に提示される入力ポート702上の同調制御信号に基づいて、同調ネットワーク700内の特定のセグメントの短絡又は開放を行うことができる。具体的には、アンテナ同調制御信号に基づいて、アンテナ102が所望の周波数で共振するようアンテナ102の電気長が制御されるように、適切なPINダイオードをバイアス処理することができる。平衡同調ネットワーク700の動作は、
図6に示す同調ネットワーク600といくつかの類似点を有する。いくつかの実施形態では、入力ポート702上のPINダイオードの同調制御信号を、マイクロコントローラ又はプロセッサの汎用入力/出力ポートに接続することができる。この構成では、マイクロコントローラ又はプロセッサが、アンテナ同調制御信号生成アルゴリズムに基づいて適切なPINダイオードをオン及びオフにすることができる。二重螺旋ブランチを含むアンテナ構成は、平衡同調ネットワーク700から最適な効果を受けることができるのに対し、単一の導体を含むアンテナ構成は、同調ネットワーク600から最適な効果を受けることができる。
【0024】
図1Bは、無線周波数(RF)信号を最適に送信するシングルバンド式適応的自己同調型アンテナシステム150の別の実施形態のブロック図である。システム150は、アンテナ151、152が、近接場検知アンテナ104、帯域通過フィルタ106、RF検出器108、プロセッサ110及びRFスイッチ162を用いて最大強度及び高放射効率のRF信号を送信できるようにする閉ループシステムとすることができる。アンテナ151、152は、固定ダイバーシティアンテナとすることができ、RFスイッチ162は、RF信号を送信するアンテナ151、152のうちの最良のアンテナを選択することができる。アンテナ151、152によって送信されるRF信号は、例えばアナログ及び/又はデジタル変調スキームによって変調されたオーディオ信号又はデータ信号を含むことができる。システム150内の近接場検知アンテナ104、帯域通過フィルタ106、RF検出器108及びプロセッサ110は、各々が
図1Aのシステム100に関して上述したものと同じ機能を有することができる。プロセッサ110は、人体によるアンテナの離調効果を考慮して、最も高い電力を放射している特定のアンテナ151、152が送信に選択されるように、アンテナ同調制御信号に基づいてRFスイッチ162を制御することもできる。
【0025】
図2Aは、RF信号を最適に送信するデュアルバンド式適応的自己同調型アンテナシステム200のブロック図である。システム200は、アンテナ202及び252が、検知アンテナ204、RFスイッチ205及び207、帯域通過フィルタ206及び256、RF検出器208、プロセッサ210、並びにアンテナチューナ212及び262を用いて最大強度及び高放射効率のRF信号を送信できるようにする閉ループシステムとすることができる。システム200を使用することにより、アンテナ202は、高周波帯域(例えば、2.4GHz又は5.7GHz)などの特定の周波数のRF信号を最大放射電力で送信することができ、アンテナ252は、低周波帯域(例えば、UHF/VHF)などの別の周波数のRF信号を最大放射電力で送信することができる。いくつかの実施形態では、アンテナ202を、デジタル伝送パケットのプリアンブル期間中にRF信号を送信するように同調させることができ、アンテナ252を、送信中のデジタル伝送パケットのプリアンブル期間中を除いてRF信号(例えば、アナログ変調RF信号)を送信するように連続同調させることができる。
【0026】
アンテナ202は、例えば、より大きなシステム内のコンポーネントの管理を可能にすることができるモニタリング及び制御信号を含むRF信号を高周波帯域で送信することができる。これらのモニタリング及び制御信号は、無線オーディオ送信機の利得調整、オーディオレベルのモニタリング、及び/又はより大きなシステムのRF性能、統計値などの無線面のモニタリング及び制御を含むことができる。このモニタリング及び制御信号には、(例えば、Shure Inc社から入手可能なShowLink Remote ControlなどのIEEE802.15.4/ZigBeeベースのプロトコルを介した)無線リンクを利用することができる。これらのモニタリング及び制御信号は、RF送受信機/送信機216によって生成され、(RF送受信機/送信機216が送信機構成である時には)正しく適合された電力増幅器214によって、或いは(RF送受信機/送信機216が送受信機構成である時には)電力増幅器/低雑音増幅器214によって増幅されたものとすることができる。RF送受信機/送信機216は、他のコンポーネント(図示せず)と通信することができる。いくつかの実施形態では、アンテナ202が、2.4GHzでの送信時に、空間ダイバーシティ構成の2つのチップアンテナを含む。2.4GHzでの送信時には、検知アンテナ204が、デジタル伝送パケットのプリアンブル期間中に両チップアンテナからの近接場RF信号の強度をモニタした後、残りのデジタル伝送パケット継続時間(例えば、ペイロード期間)にわたってより多くのRF電力を放射するチップアンテナに切り替わることができる。
【0027】
アンテナ252は、例えば以下で説明するような二重並列螺旋ブランチを含むことも、又は別の構成とすることもできる。アンテナ252によって送信されるRF信号は、例えばアナログ及び/又はデジタル変調スキームによって変調されたオーディオ信号又はデータ信号を含むことができる。これらの信号は、アナログ又はデジタルRF送受信機/送信機266によって変調され、(RF送受信機/送信機266が送信機構成である時には)正しく適合された電力増幅器264によって、或いは(RF送受信機/送信機266が送受信機構成である時には)電力増幅器/低雑音増幅器264によって増幅されたものとすることができる。RF送受信機/送信機266は、デジタルデータ信号、制御信号などを用いてマイク又は再生装置などの他のコンポーネント(図示せず)と通信することができる。例えば、システム200を無線オーディオ送信機に含め、アンテナ202及び252によってRF信号を送信して、さらなる処理のために無線オーディオ受信機、録音機及び/又はその他のコンポーネントによって受け取られるようにすることができる。
【0028】
検知アンテナ204は、アンテナ202及び252から送信されたRF信号の近接場RF信号を検出することができる。近接場RF信号の強度と、関連する非近接場RF信号の強度との間には強い相関性があるため、検知アンテナ204を用いて近接場RF信号を検出することにより、システム200がアンテナ202及び252の同調を決定できるようになる。システム200は、近接場RF信号を検知した後に、アンテナ202及び252によって送信されるRF信号の強度を最大化するようにアンテナチューナ212及び262を制御することができる。検知アンテナ204は、例えばプリント基板上のトレース、ワイヤ、又は広帯域アンテナとすることができ、近接場負荷効果が最小になるようにRF検出器208に高入力インピーダンスを提供することができる。
【0029】
検出された近接場RF信号は、検知アンテナ204からRFスイッチ205に提供することができる。RFスイッチ205は、高周波帯RF信号が送信されているか、それとも低周波帯RF信号が送信されているかを示す選択信号に応じて、検出された近接場RF信号を帯域通過フィルタ206及び256の一方にルーティングすることができる。例えば、伝送パケットのプリアンブル部分が高周波帯RF信号で送信されている場合、RFスイッチ205は、近接場RF信号を高周波帯用帯域通過フィルタ206にルーティングすることができる。伝送パケットのプリアンブル部分が高周波帯RF信号で送信されていない場合、RFスイッチ205は、近接場RF信号を低周波帯用帯域通過フィルタ256にルーティングすることができる。例えば、選択信号は、伝送パケットのプリアンブル部分の開始時にトリガすることができる。
【0030】
帯域通過フィルタ206及び256の各々は、アンテナ同調の歪みを避けるために、検知アンテナ204によって検出されたRF信号のうち、アンテナ202及び252によって送信される周波数帯域外のRF信号を除去することができる。例えば、検知アンテナ204が、システム200に物理的に近い装置からの近接周波数のRF信号を検出した場合、帯域通過フィルタ206及び256は、アンテナ202又は252によって送信されたRF信号をさらに処理できるように他のRF信号をフィルタ除去することができる。具体的には、アンテナ202及び252は、いずれもそれぞれのRF信号を同時に送信することができるので、帯域通過フィルタ206及び256は、他の周波数帯域で送信されたRF信号、又は存在し得る他の妨害信号をそれぞれ除去する。帯域通過フィルタ206及び256は、離散帯域通過フィルタ、マイクロ波帯域通過フィルタ、SAW帯域通過フィルタ、螺旋帯域通過フィルタ、誘電帯域通過フィルタ、又は他のタイプのフィルタとすることができる。特定のタイプの帯域通過フィルタ206及び256は、帯域外除去要件に依存することができる。
【0031】
RFスイッチ205及び207は、選択信号に応じて、フィルタ処理済みの近接場RF信号を帯域通過フィルタ206及び256からRF検出器208にルーティングすることができる。伝送パケットのプリアンブル部分が高周波帯RF信号で送信されている場合、RFスイッチ207は、フィルタ処理済みの近接場RF信号を高周波帯用帯域通過フィルタ206からRF検出器208にルーティングすることができる。伝送パケットのプリアンブル部分が高周波帯RF信号で送信されていない場合、RFスイッチ207は、フィルタ処理済みの近接場RF信号を低周波帯用帯域通過フィルタ256からRF検出器208にルーティングすることができる。
【0032】
RF検出器208は、帯域通過フィルタ206又は256からの選択されたフィルタ処理済みの近接場RF信号を、選択されたフィルタ処理済みの近接場RF信号の強度を表すRF強度制御信号に変換することができる。RF強度制御信号は、例えばDC電圧又はデジタル信号(例えば、SPI、I
2Cなど)とすることができる。RF検出器208は、アンテナ202及び252に必要な、15〜25dBなどの最小動的同調範囲を検知するように較正することができる。このようにして、周波数帯域内の高出力信号によって引き起こされる干渉を最小化することができる。RF検出器108は、例えば Analog Devices社製のAD8361集積回路とすることができる。
【0033】
プロセッサ210は、RF検出器208からRF強度制御信号を受け取り、このRF強度制御信号に基づいてアンテナ同調制御信号を生成することができる。プロセッサ210は、システム200に含まれて他の機能を実行することも、又は独立コンポーネントとすることもできる。プロセッサ210上で実行されるルーチンの結果、どちらのアンテナ202又は252が同調されているかに応じて、アンテナ同調制御信号の生成を通じてアンテナ202及び252をアンテナチューナ212又は262に同調させることができる。具体的には、アンテナチューナ212及び262が、送信されるRF信号の強度が最大になるようにアンテナ同調制御信号に基づいてアンテナ202及び252の電気長をそれぞれ制御することができる。プロセッサ210は、現在の周波数、同調状態が現在の周波数よりも1つ高い周波数、及び同調状態が現在の周波数よりも1つ低い周波数における近接場RF信号の強度を定期的にサンプリングすることができる。その後、アンテナ同調制御信号を生成して、同調されているアンテナ202又は252が近接場RF信号の最も高い測定強度を有する同調状態に同調されるようにすることができる。同調制御信号の生成方法の実施形態については、以下で
図5を参照しながら説明する。
【0034】
アンテナチューナ262は、送信されるRF信号の強度が最大になるようにアンテナ同調制御信号に基づいてアンテナ252の電気長を制御できる平衡移相器とすることができる。具体的には、アンテナ同調制御信号を用いてアンテナチューナ262の純リアクタンスを制御し、送信されている特定の周波数のアンテナ共振を有するようにアンテナ252を同調させることができる。
図1Aを参照しながら上述したように、アンテナチューナ262の実施形態は、
図6及び
図7に図示し説明したような様々なものが存在することができる。
【0035】
図2Bは、RF信号を最適に送信するデュアルバンド式適応的自己同調型アンテナシステム270のブロック図である。システム270は、アンテナ252及び271、272が、検知アンテナ204、RFスイッチ205及び207、帯域通過フィルタ206及び256、RF検出器208、プロセッサ210、アンテナチューナ262、並びにRFスイッチ282を用いて最大強度及び高放射効率のRF信号を送信できるようにする閉ループシステムとすることができる。アンテナ271、272は、高周波帯域(例えば、2.4GHz又は5.7GHz)などの特定の周波数のRF信号を送信することができる。RFスイッチ282は、高周波RF信号を送信するアンテナ271、272のうちの最良なアンテナを選択することができる。アンテナ271、272によって送信されるRF信号は、例えば、より大きなシステム内のコンポーネントの管理を可能にすることができるモニタリング及び制御信号を含むことができる。検知アンテナ204、RFスイッチ205及び207、帯域通過フィルタ206及び256、RF検出器208、プロセッサ210、並びにアンテナチューナ262は、各々が
図2Aのシステム200に関して上述したものと同じ機能を有することができる。プロセッサ210は、最も高い電力を放射している特定のアンテナ271、272が高周波RF信号の送信に選択されるようにアンテナ同調制御信号に基づいてRFスイッチ282を制御することもできる。
【0036】
図3に、アンテナ同調制御信号に基づいてアンテナの電気長を制御するプロセス300の実施形態を示す。プロセス300では、RF信号が最大強度及び高放射効率で送信されるようにアンテナの電気長を制御するアンテナ同調制御信号を生成することができる。ステップ302において、RF送受信機又は送信機などによって初期RF信号を生成することができる。初期RF信号は、例えばアナログ及び/又はデジタル変調スキームによって変調されたオーディオ又はデータ信号を含むことができる。ステップ304において、電力増幅器などを用いて初期RF信号をRF信号に増幅することができる。ステップ306において、RF信号を、受信機コンポーネントによって受信できるようにアンテナから送信することができる。
【0037】
ステップ308において、送信されたRF信号の近接場RF信号を検知アンテナなどによって検出することができる。近接場RF信号は、アンテナに物理的に最も近いRF信号であり、一般にアンテナからのRF信号のほんのわずかな波長内に存在する。近接場RF信号の強度と、関連する非近接場RF信号の強度との間には強い相関性があるため、近接場RF信号を検出することは、アンテナの同調を決定する役に立つ。非近接場RF信号は、アンテナから離れて位置する受信機によって受け取られる「実際の放射電力」信号としてのRF信号である。
【0038】
ステップ310において、ステップ308で検出された近接場RF信号からフィルタ処理済みの近接場RF信号を生成することができる。フィルタ処理済みの近接場RF信号は、例えば送信されている周波数帯域外のRF信号を除去できるように、帯域通過フィルタによって生成することができる。ステップ312において、フィルタ処理済みの近接場RF信号をRF検出器などによってRF強度制御信号に変換することができる。RF強度制御信号は、フィルタ処理済みの近接場RF信号の強度を表すことができ、例えばDC電圧又はデジタル信号(例えば、SPI、I
2Cなど)とすることができる。ステップ314において、RF強度制御信号に基づいてアンテナ同調制御信号を生成することができる。例えば、アンテナ同調制御信号は、プロセッサ上で実行されるルーチンによって生成することができる。ステップ316において、アンテナ同調制御信号は、送信されるRF信号の強度が最大になるように送信アンテナの電気長を制御するようアンテナチューナを制御することができる。いくつかの実施形態では、ステップ316において、同調されているアンテナが複数のチップ構成を有する場合などには、アンテナ同調制御信号が、最大放射電力を得られる最良のアンテナを選択するようにアンテナチューナを制御することができる。アンテナ同調制御信号の生成については、以下で
図5に関してさらに説明する。
【0039】
図4A〜
図4Bに、アンテナ同調制御信号に基づいてアンテナの電気長を制御するプロセス400及び450の実施形態をそれぞれ示す。プロセス400及び450では、RF信号が最大強度及び高放射効率で送信されるように異なる周波数で送信を行うアンテナの電気長を制御するアンテナ同調制御信号を生成することができる。例えば、
図2Aのシステム200に関しては、プロセス400を利用することができ、
図2Aのシステム270に関しては、プロセス450を利用することができる。プロセス400及び450を使用することにより、1つのアンテナは、高周波帯域(例えば、2.4GHz又は5.7GHz)などの特定の周波数のRF信号を最大放射電力で送信することができ、別のアンテナは、低周波帯域(例えば、UHF/VHF)などの別の周波数のRF信号を最大放射電力で送信することができる。いくつかの実施形態では、高周波帯RF信号を送信するアンテナを、デジタル伝送パケットのプリアンブル期間中にRF信号を送信するように同調させることができ、低周波帯RF信号を送信するアンテナを、デジタル伝送パケットのプリアンブル期間中を除いてRF信号(例えば、アナログ変調RF信号)を送信するように連続同調させることができる。他の実施形態では、低周波帯アンテナが、デジタル変調RF信号であるRF信号を送信することができ、高周波帯アンテナも、デジタル変調RF信号であるRF信号を送信することができる。この場合、高周波帯RF信号のデジタル変調RF信号のプリアンブル期間と同期したデジタル変調RF信号のプリアンブル期間中に、低周波帯RF信号を同調させることができる。
【0040】
ステップ402において、RF送受信機又は送信機などによって初期高周波帯RF信号を生成することができる。初期高周波帯RF信号は、例えばモニタリング及び制御信号を含むことができる。ステップ404において、電力増幅器などを用いて初期高周波帯RF信号を高周波帯RF信号に増幅することができる。ステップ406において、高周波帯RF信号を、受信機コンポーネントによって受信できるようにアンテナから送信することができる。ステップ402〜406と同時に、又は異なる時点で、ステップ408において、RF送受信機又は送信機などによって初期低周波帯RF信号を生成することができる。初期低周波帯RF信号は、例えばアナログ及び/又はデジタル変調スキームによって変調されたオーディオ又はデータ信号を含むことができる。ステップ410において、電力増幅器などを用いて初期低周波帯RF信号を低周波帯RF信号に増幅することができる。ステップ412において、低周波帯RF信号を、受信機コンポーネントによって受信できるようにアンテナから送信することができる。
【0041】
ステップ414において、例えば検知アンテナにより、送信された高周波帯RF信号及び/又は低周波帯RF信号の近接場RF信号を検出することができる。近接場RF信号の強度と、関連する非近接場RF信号の強度との間には強い相関性があるため、近接場RF信号を検出することは、アンテナの同調を決定する役に立つ。ステップ416において、高周波帯RF信号上でデジタル伝送パケットのプリアンブル部分が送信されているかどうかを判定することができる。ステップ416においてプリアンブル部分が送信されている場合、プロセス400及び450はステップ418に進む。ステップ418において、ステップ414で検出された高周波帯近接場RF信号から、フィルタ処理済みの高周波帯近接場RF信号を生成することができる。フィルタ処理済みの高周波帯近接場RF信号は、例えば送信されているこの周波数帯域外のRF信号を除去できるように、高周波帯用帯域通過フィルタによって生成することができる。
【0042】
ステップ420において、フィルタ処理済みの高周波帯近接場RF信号をRF検出器などによってRF強度制御信号に変換することができる。RF強度制御信号は、フィルタ処理済みの高周波帯近接場RF信号の強度を表すことができ、例えばDC電圧又はデジタル信号(例えば、SPI、I
2Cなど)とすることができる。ステップ422において、RF強度制御信号に基づいてアンテナ同調制御信号を生成することができる。例えば、アンテナ同調制御信号は、プロセッサ上で実行されるルーチンによって生成することができる。
図4Aに示すプロセス400では、ステップ424において、アンテナ同調制御信号が、送信される高周波帯RF信号の強度が最大になるように送信アンテナの電気長を制御するようアンテナチューナを制御することができる。高周波帯アンテナがマルチアンテナ構成を有している場合、この制御は、アンテナの同調又はアンテナの選択によって行うことができる。同調制御信号の生成については、以下で
図5に関してさらに説明する。
図4Bに示すプロセス450では、ステップ422の後に、ステップ454において、アンテナ同調制御信号により、プリアンブル部分中に最も高い電力を放射している最良の固定アンテナが送信に選択されるようにRFスイッチを制御することができる。
【0043】
ステップ416において、高周波帯RF信号上でデジタル伝送パケットのプリアンブル部分が送信されていない場合、プロセス400及び450はステップ426に進む。ステップ426において、ステップ414で検出された低周波帯近接場RF信号から、フィルタ処理済みの低周波帯近接場RF信号を生成することができる。フィルタ処理済みの低周波帯近接場RF信号は、例えば送信されているこの周波数帯域外のRF信号を除去できるように、低周波帯用帯域通過フィルタによって生成することができる。ステップ428において、フィルタ処理済みの低周波帯近接場RF信号をRF検出器などによってRF強度制御信号に変換することができる。RF強度制御信号は、フィルタ処理済みの低周波帯近接場RF信号の強度を表すことができ、例えばDC電圧又はデジタル信号(例えば、SPI、I
2Cなど)とすることができる。ステップ430において、RF強度制御信号に基づいてアンテナ同調制御信号を生成することができる。例えば、アンテナ同調制御信号は、プロセッサ上で実行されるルーチンによって生成することができる。ステップ432において、アンテナ同調制御信号は、送信される低周波帯RF信号の強度が最大になるように送信アンテナの電気長を制御するようアンテナチューナを制御することができる。同調制御信号の生成については、以下で
図5に関してさらに説明する。
【0044】
図5に、アンテナ同調制御信号を生成するプロセス500の実施形態を示す。プロセス500は、例えば上述したステップ314、422及び/又は430の実施形態とすることができる。アンテナ同調制御信号は、特定のアンテナが、このアンテナによって送信されるRF信号の強度が最大になるように同調されるよう、検出された近接場RF信号の測定強度に基づいて生成することができる。プロセス500は、例えばプロセッサによって実行することができる。ステップ502において、例えば、現在の送信周波数における近接場RF信号の強度をメモリに記憶することができる。例えば、上述したように、近接場RF信号の強度は、RF検出器によって生成されたRF強度制御信号に基づくことができる。ステップ504において、現在の周波数よりも同調状態が1つ低い周波数にアンテナが同調されるように第1の較正アンテナ同調制御信号を生成することができる。ステップ506において、この状態における近接場RF信号の強度を示すRF強度制御信号を受け取ることができる。ステップ508において、第1の較正強度をメモリに記憶することができる。第1の較正強度は、ステップ506で受け取ったRF強度制御信号に基づくことができる。
【0045】
ステップ510において、現在の周波数よりも同調状態が1つ高い周波数にアンテナが同調されるように第2の較正アンテナ同調制御信号を生成することができる。ステップ512において、この状態における近接場RF信号の強度を示すRF強度制御信号を受け取ることができる。ステップ514において、第2の較正強度をメモリに記憶することができる。第2の較正強度は、ステップ512で受け取ったRF強度制御信号に基づくことができる。ステップ516において、近接場RF信号の最も高い測定強度を有する同調状態にアンテナが同調されるようにアンテナ同調制御信号を生成することができる。ステップ502で記憶された強度、ステップ508で記憶された第1の較正強度、及びステップ514で記憶された第2の較正強度を互いに比較して、最も高い測定強度を決定することができる。その後、ステップ516において、(3つの同調状態のうちの)測定された最も高い近接場強度に対応するアンテナ較正同調状態に同調することができる。このようにして、アンテナを最大電力で送信を行うように連続して適応及び自己同調させることができる。較正状態の繰り返し周期及びステップサイズは、無線システムの特定のプロトコル及び伝搬プロファイルに応じて構成し、最適化することができる。
【0046】
図8に、二重螺旋ブランチを有するアンテナを含むアンテナの例示的な表現を示す。
図8に示すアンテナは、例えばアナログ及び/又はデジタル変調スキームによって変調されたオーディオ又はデータ信号を含むRF信号を送信することができる。いくつかの実施形態では、これらの信号を、RF送受信機/送信機によって変調され、電力増幅器によって増幅されたものとすることができる。RF送受信機/送信機は、デジタルデータ信号、制御信号などを用いてマイク又は再生装置などの他のコンポーネント(図示せず)と通信することができる。
図8に示すアンテナは、上述したシステム100及び200において使用できるアンテナの例示的な実施形態である。例えば、アンテナの接地面は、装置の電子及び機械部品(例えば、プリント基板の銅接地、RF遮蔽物、バッテリなど)、及び/又は装置を保持している人物を含むことができる。
【0047】
図8に示すアンテナ802、804、806、808、810及び812は、二重螺旋ブランチを含むことができる。螺旋ブランチは、無線オーディオ送信機又はその他のポータブル無線通信装置などの装置のプラスチック製の筐体上などの基板上に適合的に構築することができる。例えば、射出成形されたプラスチック部品に対するレーザーダイレクトストラクチャリングを利用して、プラスチック製の筐体上に螺旋ブランチを印刷することができる。このようにして、アンテナ802、804、806、808、810及び812を装置内に一体化し、ユーザ又はその他の物体との物理的相互作用に起因する潜在的損傷から保護することができる。
【0048】
螺旋ブランチは、ワイヤ又はメッキ導体などの導体で構成することができる。
図8では、各アンテナ802、804、806、808、810及び812の一部を3次元ビューで示しており、導体の空間的位置を示すように、各アンテナの左側には各アンテナの断面も示している。具体的には、アンテナ802及び804は、螺旋ブランチが導体ストリップ及びワイヤを含んでいることを示す。アンテナ802及び804のワイヤは、それぞれ下部配向及び中央配向である。アンテナ806及び808は、螺旋ブランチが幅の広い導体ストリップと幅の狭い導体ストリップとを含んでいることを示す。アンテナ806及び808の狭い導体ストリップは、それぞれ下部配向及び中央配向である。アンテナ810は、螺旋ブランチが2つの導体ストリップを含んでいることを示す。アンテナ812は、螺旋ブランチが2つのワイヤを含んでいることを示す。これらの螺旋ブランチは、互いに電気的に接続されておらず、異なる形状及び/又は物理的長さを有することができる。
【0049】
アンテナ814及び816は、導体ストリップ又はワイヤとすることができる単一の3次元螺旋を含む。アンテナ814では、ポート1に供給されるRF信号を受信又は送信するための単一のポートフィードを含めることができる。アンテナ816に示すように、ポート2に供給されるRF信号を受信又は送信するための二重ポートフィードを含め、ポート1を接地に接続することもできる。アンテナ814及び816は、装置のプラスチック製の筐体上などの基板上に適合的に構築することができ、異なる形状及びフォームファクタを有することができる。アンテナ814及び816は、装置内に一体化して、ユーザ又は他の物体との物理的相互作用に起因する潜在的損傷から保護することができる。
【0050】
アンテナ、又はアンテナの各ブランチは、アンテナを共振に同調させてアンテナの放射効率を改善する同調ネットワークに接続することができる。上述したように、同調ネットワークは、アンテナがその電気長を制御してRF信号の送信強度を最大化するように同調されるよう、インダクタ、デジタルチューナブルコンデンサ、微小電気機械(MEMS)コンデンサ及び/又はPINダイオードを含むことができる。
【0051】
本開示は、様々な実施形態の形成方法及び使用方法を技術に従って説明するためのものであり、その真の意図する公正な範囲及び思想を限定するものではない。上述の説明は、包括的であることや、又は開示した正確な形に限定されることを意図するものではない。上記の教示に照らして修正例及び変形例が可能である。(単複の)実施形態は、説明する技術の原理及びその実施可能な応用を示すとともに、様々な実施形態の技術、及び想定される特定の用途に適した様々な修正例を当業者が利用できるように選択して説明したものである。このような全ての修正例及び変形例は、これらの権利を公正に、法的に、かつ公平に認める外延に従って解釈した場合、本出願の係属中に補正される可能性もある添付の特許請求の範囲によって定められる実施形態及びその全ての同等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
100:適応的自己同調型アンテナシステム
102:アンテナ
104:検知アンテナ
106:帯域通過フィルタ
108:RF検出器
110:プロセッサ
112:アンテナチューナ
114:電力増幅器/低雑音増幅器
116:RF送受信機/送信機