(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1磁性粒子はヘキサフェライト(Hexa−ferrite)であり、前記第2磁性粒子はスピネルフェライト(spinel−ferrite)である、請求項1から3の何れか一項に記載のコモンモードフィルター。
前記第1磁性粒子はスピネルフェライト(spinel−ferrite)であり、前記第2磁性粒子はヘキサフェライト(Hexa−ferrite)である、請求項1から3の何れか一項に記載のコモンモードフィルター。
前記第1磁性粒子及び前記第2磁性粒子は、両方とも、ヘキサフェライト(Hexa−ferrite)であるか、又はスピネルフェライト(spinel−ferrite)である、請求項1から3の何れか一項に記載のコモンモードフィルター。
【背景技術】
【0002】
技術の発展に伴い、携帯電話、家電製品、PC、PDA、LCDなどの電子機器が、アナログ方式からデジタル方式に変化し、処理するデータ量の増加によって高速化する傾向にある。これに伴い、高速信号送信インターフェースとして、USB2.0、USB3.0及び高精細度マルチメディアインターフェース(high−definition multimedia interface;HDMI(登録商標))が広範に普及しており、これらのインターフェースは、現在、パーソナルコンピューター及びデジタル高精細度テレビのような様々なデジタルデバイスにおいて使用されている。
【0003】
これらの高速インターフェースは、長い間、一般的に用いられてきたシングルエンド(single−end)送信システムとは異なり、一対の信号ラインを使用して差動信号(差動モード信号)を送信する差動信号システムを採用している。しかし、デジタル化及び高速化する電子機器は、外部からの刺激に敏感であるため、時々、高周波ノイズによる信号歪みが生じている。
【0004】
かかる異常電圧とノイズの原因としては、回路内で発生するスイッチング電圧、電源電圧に含まれている電源ノイズ、不要な電磁信号又は電磁ノイズなどがあり、かかる異常電圧と高周波ノイズが回路に流入することを防止するための手段として、コモンモードフィルター(Common Mode Filter:CMF)を使用している。
【0005】
モバイル機器の高速化及び多機能化に伴い、高速データ(例えば、USB3.1:5〜10Gbps)の伝送のためのインターフェースの採用が増加している。そのため、差動伝送ライン(Differential Line)に取り付けられてコモンモードノイズを除去するコモンモードフィルターも伝送損失を減少させることができる方法が必要である。
【0006】
コモンモードフィルターの低損失伝送特性を実現するためには、磁性体をコモンモードフィルターの上下部だけでなく、内部にも充填して、閉磁路を形成する構造とする必要があり、必要な容量を実現するコイルのターン数及び長さをできるだけ小さくしなければならない。
【0007】
しかし、GHz周波数帯域で動作するコモンモードフィルターの場合、磁性体の透過率の低下と磁性損失(Tan δ)の増加によってノイズ減衰特性が低下し、コモンモードノイズを効果的に除去できないという問題がある。したがって、伝送損失を低減し、且つノイズを効果的に減衰することができるコモンモードフィルターが必要となっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)が誇張されることがある。
【0015】
本明細書で用いられる用語は、実施形態を説明するためのもので、本発明を制限するものではない。本明細書において、単数形は文言で特に言及しない限り、複数形も含む。明細書で用いられる「含む(comprise)」及び/又は「含んでいる(comprising)」は、記載された構成要素、段階、動作、及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、段階、動作、及び/又は素子の存在又は追加を排除しない。
【0016】
図1は本発明の第1実施形態によるコモンモードフィルター100の斜視図を概略的に示すものであり、
図2は
図1におけるI−I'による断面図を概略的に示すものである。
【0017】
図1及び
図2を参照して、本発明の第1実施形態によるコモンモードフィルター100の構成について説明すると、コモンモードフィルター100は、内部に少なくとも一つ以上の螺旋状のコイル電極層141、142を含むフィルター層120と、フィルター層120の上下部に配置されるカバー層110、130と、を含む。
【0018】
下部カバー層110、フィルター層120及び上部カバー層130の外側には、外部電極151、152、153、154が配置される。
【0019】
下部カバー層110及び上部カバー層130は、第1磁性粒子を含む。すなわち、下部カバー層110及び上部カバー層130は、第1磁性粒子と樹脂(Resin)を含む磁性体組成物を用いて、シート状に製作することで形成されることができる。
【0020】
フィルター層120は、複数のコイルを含むコイル部140と、コイル部140の周辺に配置されるコイル周辺部121と、を含む。
【0021】
コイル部140は、第1コイル141と、第2コイル142と、を含んでもよく、これに制限されず、必要に応じて、コイルの数を異ならせてもよい。
【0022】
例えば、
図4のように、コイル部140は、4層のコイルを含んでもよい。
【0023】
説明の明確性のために、コイル部140において4層のコイルを、下部層から第1−1コイル141a、第2−1コイル142a、第1−2コイル141b、第2−2コイル142bと定義してもよいが、これに制限されるものではない。
【0024】
第1外部電極151は、第1−1コイル141aと連結され、第1−1コイル141aは、上下層を貫通する第1導電性ビア141cを介して第1−2コイル141bと連結される。第1−2コイル141bは、第2外部電極152と連結されて螺旋状の第1コイル141を形成する。
【0025】
同様に、第3外部電極153は、第2−1コイル142aと連結され、第2−1コイル142aは、上下層を貫通する第2導電性ビア142cを介して第2−2コイル142bと連結される。第2−2コイル141bは、第4外部電極154と連結されて螺旋状の第2コイル142を形成する。
【0026】
このように連結されたそれぞれのコイルによりインダクタンスとキャパシタンスを有することになり、これを用いて、コモンモード信号のノイズを減衰することができる。
【0027】
コイル部140の周辺には、コイル周辺部121が配置される。
【0028】
コイル周辺部121は、フィルター層120内に配置され、コイル部140の中心に位置するコイル中心部121aと、コイル部140の外側に位置するコイル外側部121bと、を含む。
【0029】
下部カバー層110又は上部カバー層130が第1磁性粒子を含む場合、コイル周辺部121は、第2磁性粒子を含むことができる。
【0030】
第1及び第2磁性粒子は、互いに異なる材料を有するか、又は異なる粒径を有する磁性粒子を意味し得る。
【0031】
第1磁性粒子はスピネルフェライト(Spinel−ferrite)で、第2磁性粒子はヘキサフェライト(Hexa−ferrite)であってもよい。
【0032】
スピネルフェライトとヘキサフェライトの形状及び特性は、
図3及び
図4と、以下の表1のとおりである。
【0034】
すなわち、ヘキサフェライトが、スピネルフェライトに比べて磁性損失(Tan δ)が著しく小さいことが分かる。スピネルフェライトは、コモンモードフィルターが動作する1GHz領域で1.0以上の磁性損失(Tan δ)値を有し、ヘキサフェライトは、0.01〜0.1ほどの低い磁性損失(Tan δ)値を有する。かかる範囲は、各磁性材料の組成、粉末及び樹脂の含有量に応じて変更が可能である。
【0035】
コモンモードフィルターの低損失伝送特性を実現するためには、磁性体をコモンモードフィルターの上下部だけでなく、内部にも充填して、閉磁路を形成する構造とする必要があり、必要な容量を実現するコイルのターン数及び長さをできるだけ小さくしなければならない。
【0036】
GHz周波数帯域で動作するコモンモードフィルターの場合、磁性体の透過率の低下と磁性損失(Tan δ)の増加によってノイズ減衰特性が低下し、コモンモードノイズを効果的に除去できないという問題がある。
【0037】
スピネルフェライトは、低周波数では透磁率が大きいという利点があるが、GHzのような高周波数領域では透磁率が急激に減少し、磁性損失が大きくなるという欠点があり、減衰特性が低下するという問題点がある。ヘキサフェライトの場合には、高周波数領域(GHz)まで透磁率が維持され、磁性損失が小さいという利点がある。しかし、ヘキサフェライトは、低周波数領域(約100MHz)ではスピネルフェライトに比べて透磁率が低く、同一の容量を実現するために必要なコイルターン数を増加させなければならないため、伝送損失が増加するという問題点がある。
【0038】
しかし、本発明の第1実施形態によるコモンモードフィルターは、下部又は上部カバー部110、130を第1磁性粒子で形成し、コイル周辺部121を第2磁性粒子で形成することで、容量の実現に必要なコイルターン数を最小化して伝送損失を最小化し、且つ高周波領域で減衰特性を向上させることができる。
【0039】
例えば、第1磁性粒子がスピネルフェライトで、第2磁性粒子はヘキサフェライトである場合、下部及び上部カバー層110、130は、低周波数領域で高透磁率を有することになり、コイル周辺部121は、高周波数領域で低損失特性を有することになる。これにより、容量の実現に必要なコイルターン数を最小化して、伝送損失を最小化し、且つ高周波領域で減衰特性を向上させることができる。
【0040】
すなわち、
図5に示されているように、比較例(点線)のコモンモードフィルターの伝送特性及び減衰特性に比べて、本発明の一実施形態(実線)によるコモンモードフィルターの伝送特性及び減衰特性が向上したことが分かる。
【0041】
図5におけるグラフのx軸は周波数を、y軸は減衰特性を示している。1GHzの周波数において、比較例(点線)の減衰特性は−25dBであるが、本発明の実施形態(実線)によるコモンモードフィルターの減衰特性は−30dBであることから、−5dBほどより優れた減衰効果を示していることが分かる。
【0042】
若しくは、第1磁性粒子をヘキサフェライトとし、第2磁性粒子をスピネルフェライトとして、目標とする特性を調節することができる。この構造は、全体のチップ内で磁性損失が小さいヘキサフェライトの体積が、フィルター層のコイル中心部とコイル外側部に充填されるスピネルフェライトの体積より大きいことから、磁性損失をより小さくすることができる。したがって、第1磁性粒子がスピネルフェライトで、第2磁性粒子はヘキサフェライトである場合に比べて、コモンモードフィルターの減衰効果を向上させることができる。
【0043】
本発明の第2実施形態によるコモンモードフィルター100は、第1磁性粒子と第2磁性粒子が互いに異なる粒径を有してもよい。
【0044】
例えば、コイル周辺部121に含まれる第2磁性粒子の粒径は、下部及び上部カバー層110、130に含まれる第1磁性粒子の粒径より小さくてもよい。
【0045】
フィルター層120を製造する工程について説明すると、コイル中心部121a及びコイル外側部121bは、貫通構造を形成した後、貫通構造の内部に磁性粒子及び樹脂を含む磁性複合材シートを圧着し、充填を行う。
【0046】
この際、貫通構造は、直径が100μm以内と狭小であるため、コイル周辺部121の一部に充填されていない部分が形成されるか、又は樹脂のみ充填されて、透磁率が低下するという問題がある。
【0047】
しかし、本発明の第2実施形態によるコモンモードフィルター100は、コイル周辺部121に含まれる第2磁性粒子の粒径が、下部及び上部カバー層110、130に含まれる第1磁性粒子の粒径より小さいことから、上述の未充填領域が形成されるか、又は樹脂のみ形成された領域が発生するという問題を防止することができる。
【0048】
また、下部及び上部カバー層110、130に含まれる第1磁性粒子は、第2磁性粒子より大きい粒径を有することから、コイル周辺部121より相対的に高い透磁率を有し、下部及び上部カバー層110、130に含まれる第1磁性粒子が、コイル周辺部121の透磁率の減少を補償することができる。
【0049】
本発明の第2実施形態によるコモンモードフィルター100は、第1磁性粒子がスピネルフェライトで、第2磁性粒子がヘキサフェライトであるか、これとは逆に、第1磁性粒子がヘキサフェライトで、第2磁性粒子がスピネルフェライトであってもよい。
【0050】
若しくは、上記第1磁性粒子及び上記第2磁性粒子は、両方とも、ヘキサフェライトであるか、又はスピネルフェライトであってもよい。
【0051】
本発明の第3実施形態によるコモンモードフィルター100は、コイル中心部121aが第1磁性粒子を含み、コイル外側部121bが第2磁性粒子を含むことができる。
【0052】
また、下部及び上部カバー層110、130もコイル外側部121bと同一の第2磁性粒子を含むことも可能である。これと異なって、下部及び上部カバー層110、130は、コイル中心部121aと同一の第1磁性粒子を含むことができる。
【0053】
第1及び第2磁性粒子は、互いに異なる材料を有するか、又は異なる粒径を有する磁性粒子を意味し得る。
【0054】
第1磁性粒子はヘキサフェライトであり、第2磁性粒子はスピネルフェライトであってもよい。
【0055】
コモンモードフィルターの低損失伝送特性を実現するためには、磁性体をコモンモードフィルターの上下部だけでなく、内部にも充填して、閉磁路を形成する構造とする必要があり、必要な容量を実現するコイルのターン数及び長さをできるだけ小さくしなければならない。
【0056】
GHz周波数帯域で動作するコモンモードフィルターの場合、磁性体の透過率の低下と磁性損失(Tan δ)の増加によってノイズ減衰特性が低下し、コモンモードノイズを効果的に除去できないという問題がある。
【0057】
したがって、コイル部140のコア部分に相当するコイル中心部121aに第1磁性粒子としてヘキサフェライトを含む場合、高周波数領域で低損失特性を有することになり、容量の実現に必要なコイルターン数を最小化して、伝送損失を最小化し、且つ高周波領域で減衰特性を向上させることができる。また、コイル外側部121bに第2磁性粒子としてスピネルフェライトを含む場合、低周波数領域で高透磁率を有することができる。
【0058】
すなわち、本発明の第3実施形態によるコモンモードフィルター100は、容量の実現に必要なコイルターン数を最小化して、伝送損失を最小化し、且つ高周波領域で減衰特性を向上させることができる。
【0059】
若しくは、第1磁性粒子をスピネルフェライトとし、第2磁性粒子をヘキサフェライトとして、目標とする特性を調節することができる。
【0060】
本発明の第4実施形態によるコモンモードフィルター100は、第1磁性粒子と第2磁性粒子が互いに異なる粒径を有してもよい。
【0061】
例えば、コイル中心部121aに含まれる第1磁性粒子の粒径は、コイル外側部121bに含まれる第1磁性粒子の粒径より小さくてもよい。
【0062】
フィルター層120を製造する工程について説明すると、コイル中心部121a及びコイル外側部121bは、貫通構造を形成した後、貫通構造の内部に磁性粒子及び樹脂を含む磁性複合材シートを圧着し、充填を行う。
【0063】
この際、貫通構造は、直径が100μm以内と狭小であるため、コイル周辺部121の一部に充填されていない部分が形成されるか、又は樹脂のみ充填されて、透磁率が低下するという問題がある。特に、コイル中心部121aに一部が充填されていない部分が形成されるか、又は樹脂のみ充填される場合には、コモンモードフィルターの透磁率の減少に及ぼす影響がより大きい。
【0064】
しかし、本発明の第4実施形態によるコモンモードフィルター100は、コイル中心部121aに含まれる第1磁性粒子の粒径が、コイル外側部121bに含まれる第2磁性粒子の粒径より小さいことから、上述の未充填領域が形成されるか、又は樹脂のみ形成された領域が発生するという問題を防止することができる。
【0065】
また、コイル外側部121bに含まれる第2磁性粒子は、第1磁性粒子より大きい粒径を有することから、コイル中心部121aより相対的に高い透磁率を有し、コイル外側部121bに含まれる第2磁性粒子が、コイル周辺部121の透磁率の減少を補償することができる。
【0066】
本発明の第4実施形態によるコモンモードフィルター100は、第1磁性粒子がスピネルフェライトで、第2磁性粒子がヘキサフェライトであるか、これとは逆に、第1磁性粒子がヘキサフェライトで、第2磁性粒子がスピネルフェライトであってもよい。
【0067】
また、コイル中心部121aに含まれた上記第1磁性粒子の平均粒径は、コイル外側部121bに含まれた上記第2磁性粒子の平均粒径より大きくてもよい。
【0068】
若しくは、上記第1磁性粒子及び上記第2磁性粒子は、両方とも、ヘキサフェライトであるか、又はスピネルフェライトであってもよい。
【0069】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。