【実施例】
【0202】
実施例1
糖転移酵素およびそのコード遺伝子の分離
発表されたトチバニンジン属の植物の発現プロファイルのデータから100本以上の糖転移酵素を予測するcDNA配列をピックアップし、その中から60本のcDNA全長配列をクローニングして発現および糖転移反応の分析を行ったところ、その中では11種類の発現産物がギンセノシドのサポゲニンおよびサポニンに対して糖転移活性を有する。
【0203】
オタネニンジンのRNAを抽出して逆転写を行い、オタネニンジンのcDNAを得た。このcDNAを鋳型としてPCR増幅を行い、プライマー対1(配列番号:7、8)、プライマー対2(配列番号:9、10)、プライマー対3(配列番号:11、12)、プライマー対5(配列番号:34、35)、プライマー対7(配列番号:46、47)、プライマー対8(配列番号:62、63)、プライマー対9(配列番号:64、65)を使用し、全て増幅産物を得た。DNAポリメラーゼは、タカラバイオ株式会社の高正確性のKOD DNAポリメラーゼを使用した。PCR産物は、アガロースゲル電気泳動によって検出した(
図1、19(c)および31)。紫外線の照射で、標的DNAバンドを切り取った。さらに、Axygen Gel Extraction Kit(AEYGEN社)でアガロースゲルから、DNA、すなわち増幅されたDNA断片を回収した。このDNA断片をタカラバイオ株式会社のrTaq DNAポリメラーゼで末端にAを付加した後、市販のクローンベクターpMD18-Tに連結し、連結産物を市販の大腸菌EPI300感受性細胞に形質転換し、形質転換した大腸菌液をアンピシリン50μg/mL、IPTG 0.5mM、X-Gal 25μg/mLを入れたLBプレートに塗布し、さらにPCRおよび酵素切断によって組換えクローンを検証した。それぞれその中の一つのクローンから組換えプラスミドを抽出して配列決定した。ソフトBESTORFによって読み枠(ORF)を探した。配列アラインメントしたところ、ORFは糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域をコードするので、糖転移酵素の遺伝子であると証明された。
【0204】
プライマー対1(配列番号:7、8)で得られた遺伝子は、配列番号:1、15、17および19で表されるヌクレオチド配列を有し、それぞれgGT25,gGT25-1,gGT25-3およびgGT25-5とした。配列表における配列番号:1の5’末端から1〜1425番目のヌクレオチドはgGT25のタンパク質コード配列(CDS)で、配列表における配列番号:1の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT25遺伝子の開始コドンATGである。配列表における配列番号:15の5’末端から1〜1428番目のヌクレオチドはgGT25-1の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:15の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT25-1遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:15の5’末端から1426〜1428番目のヌクレオチドはgGT25-1遺伝子の終止コドンTAAである。配列表における配列番号:17の5’末端から1〜1428番目のヌクレオチドはgGT25-3の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:17の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT25-3遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:17の5’末端から1426〜1428番目のヌクレオチドはgGT25-3遺伝子の終止コドンTAAである。配列表における配列番号:19の5’末端から1〜1419番目のヌクレオチドはgGT25-5の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:19の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT25-5遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:19の5’末端から1426〜1428番目のヌクレオチドはgGT25-5遺伝子の終止コドンTAAである。
【0205】
プライマー対2(配列番号:9、10)で得られた遺伝子は、配列番号:3で表されるヌクレオチド配列を有し、gGT13とした。配列表における配列番号:3の5’末端から1〜1431番目のヌクレオチドはgGT13の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:3の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT13遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:1の5’末端から1429〜1431番目のヌクレオチドはgGT13遺伝子の終止コドンTAAである。
【0206】
プライマー対3(配列番号:11、12)で得られた遺伝子は、配列番号:5で表されるヌクレオチド配列を有し、gGT30とした。配列表における配列番号:5の5’末端から1〜1353番目のヌクレオチドはgGT30の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:5の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT30遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:5の5’末端から1351〜1353番目のヌクレオチドはgGT30遺伝子の終止コドンTAAである。
【0207】
プライマー対5(配列番号:34、35)で得られた遺伝子は、配列番号:25、27で表されるヌクレオチド配列を有し、それぞれgGT29およびgGT29-3とした。配列表における配列番号:25の5’末端から1〜1329番目のヌクレオチドはgGT29の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:25の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT29遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:25の5’末端から1327〜1329番目のヌクレオチドはgGT29遺伝子の終止コドンTAGである。配列表における配列番号:27の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT29-3遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:27の5’末端から1327〜1329番目のヌクレオチドはgGT29-3遺伝子の終止コドンTAGである。
【0208】
プライマー対6(配列番号:46、47)で得られた遺伝子は、配列番号:42で表されるヌクレオチド配列を有し、3GT4とした。配列表における配列番号:42の5’末端から1〜1374番目のヌクレオチドは3GT4の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:42の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドは3GT4遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:42の5’末端から1372〜1374番目のヌクレオチドは3GT4遺伝子の終止コドンTAGである。
【0209】
プライマー対7(配列番号:62、63)で得られた遺伝子は、配列番号:54、56、58で表されるヌクレオチド配列を有し、それぞれgGT29-4、gGT29-5およびgGT29-6とした。配列表における配列番号:54の5’末端から1〜1341番目のヌクレオチドはgGT29-4の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:54の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT29-4遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:54の5’末端から1339〜1341番目のヌクレオチドはgGT29-4遺伝子の終止コドンTAGである。配列表における配列番号:56の5’末端から1〜1341番目のヌクレオチドはgGT29-5の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:56の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT29-5遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:56の5’末端から1339〜1341番目のヌクレオチドはgGT29-5遺伝子の終止コドンTAGである。配列表における配列番号:58の5’末端から1〜1341番目のヌクレオチドはgGT29-6の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:58の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT29-6遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:58の5’末端から1339〜1341番目のヌクレオチドはgGT29-6遺伝子の終止コドンTAGである。
【0210】
プライマー対8(配列番号:64、65)で得られた遺伝子は、配列番号:60で表されるヌクレオチド配列を有し、gGT29-7とした。配列表における配列番号:60の5’末端から1〜1341番目のヌクレオチドはgGT29-7の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:60の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドはgGT29-7遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:60の5’末端から1339〜1341番目のヌクレオチドはgGT29-7遺伝子の終止コドンTAGである。配列番号:21、23および40で表されるヌクレオチド配列を有するものを人工合成し、それぞれ3GT1、3GT2および3GT3とした。配列表における配列番号:21の5’末端から1〜1488番目のヌクレオチドは3GT1の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:21の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドは3GT1遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:21の5’末端から1486〜1488番目のヌクレオチドは3GT1遺伝子の終止コドンTAAである。配列表における配列番号:23の5’末端から1〜1488番目のヌクレオチドは3GT2の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:23の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドは3GT2遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:23の5’末端から1486〜1488番目のヌクレオチドは3GT2遺伝子の終止コドンTAAである。配列表における配列番号:40の5’末端から1〜1494番目のヌクレオチドは3GT3の読み枠(ORF)で、配列表における配列番号:40の5’末端から1〜3番目のヌクレオチドは3GT3遺伝子の開始コドンATGで、配列表における配列番号:40の5’末端から1492〜1494番目のヌクレオチドは3GT3遺伝子の終止コドンTAAである。プライマー対4(配列番号:29、30)でその中の2本の人工合成の遺伝子(配列番号:21および配列番号:23)をPCR増幅し、得られたPCR産物は、配列番号:21および配列番号:23で表されるヌクレオチド配列を有する(
図19(a))。プライマー対6(配列番号:44、45)でもう1本の人工合成の遺伝子(配列番号:40)をPCR増幅し、得られたPCR産物は、配列番号:40で表されるヌクレオチド配列を有する(
図19(b))。
【0211】
糖転移酵素遺伝子gGT25は、475個のアミノ酸を含むタンパク質gGT25をコードし、配列表における配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、53kDaで、等電点pIが5.14である。配列番号:2のアミノ末端から344〜387番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、オタネニンジンのトランスクリプトームで予測したサポニンの糖転移酵素遺伝子のアミノ酸配列との同一性が52%未満である。
【0212】
糖転移酵素遺伝子gGT25-1は、475個のアミノ酸を含むタンパク質gGT25-1をコードし、配列表における配列番号:16で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、53kDaで、等電点pIが4.91である。配列番号:16のアミノ末端から344〜387番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、オタネニンジンのトランスクリプトームで予測したサポニンの糖転移酵素遺伝子のアミノ酸配列との同一性が52%未満である。
【0213】
糖転移酵素遺伝子gGT25-3は、475個のアミノ酸を含むタンパク質gGT25-3をコードし、配列表における配列番号:18で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、53kDaで、等電点pIが5.05である。配列番号:18のアミノ末端から344〜387番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、オタネニンジンのトランスクリプトームで予測したサポニンの糖転移酵素遺伝子のアミノ酸配列との同一性が52%未満である。
【0214】
糖転移酵素遺伝子gGT25-5は、472個のアミノ酸を含むタンパク質gGT25-5をコードし、配列表における配列番号:20で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、53kDaで、等電点pIが4.98である。配列番号:20のアミノ末端から343〜386番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、オタネニンジンのトランスクリプトームで予測したサポニンの糖転移酵素遺伝子のアミノ酸配列との同一性が52%未満である。
【0215】
糖転移酵素遺伝子gGT13は、476個のアミノ酸を含むタンパク質gGT13をコードし、配列表における配列番号:4で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、53kDaで、等電点pIが4.91である。配列番号:4のアミノ末端から343〜386番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、オタネニンジンのトランスクリプトームで予測したサポニンの糖転移酵素遺伝子のアミノ酸配列との同一性が99.5%と最高である。
【0216】
糖転移酵素遺伝子gGT30は、451個のアミノ酸を含むタンパク質gGT30をコードし、配列表における配列番号:6で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、51kDaで、等電点pIが6.79である。配列番号:6のアミノ末端から318〜361番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)の糖転移酵素(XP_002271587)との類似性が最高(53%)、新しい酵素であることが示された。
【0217】
糖転移酵素遺伝子3GT1は、495個のアミノ酸を含むタンパク質3GT1をコードし、配列表における配列番号:22で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、56kDaで、等電点pIが5.52である。配列番号:22のアミノ末端から355〜398番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、ハルザキヤマガラシ(Barbarea vulgaris)由来の糖転移酵素UGT73C10との相同性が>99%である。
【0218】
糖転移酵素遺伝子3GT2は、495個のアミノ酸を含むタンパク質3GT2をコードし、配列表における配列番号:24で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、56kDaで、等電点pIが5.62である。配列番号:24のアミノ末端から355〜398番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、ハルザキヤマガラシ(Barbarea vulgaris)由来の糖転移酵素UGT73C12との相同性が>99%である。
【0219】
糖転移酵素遺伝子gGT29は、442個のアミノ酸を含むタンパク質gGT29をコードし、配列表における配列番号:26で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、49kDaで、等電点pIが5.93である。配列番号:26のアミノ末端から317〜360番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)由来の糖転移酵素との配列類似性が56%未満である。
【0220】
糖転移酵素遺伝子gGT29-3は、442個のアミノ酸を含むタンパク質gGT29-3をコードし、配列表における配列番号:28で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、49kDaで、等電点pIが5.48である。配列番号:28のアミノ末端から317〜360番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)由来の糖転移酵素との配列類似性が56%未満である。
【0221】
糖転移酵素遺伝子3GT3は、497個のアミノ酸を含むタンパク質3GT3をコードし、配列表における配列番号:41で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、55kDaで、等電点pIが5.50である。配列番号:41のアミノ末端から350〜393番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、タルウマゴヤシ(Medicago truncatula)由来の糖転移酵素との相同性が>99%である。
【0222】
糖転移酵素遺伝子3GT4は、458個のアミノ酸を含むタンパク質3GT4をコードし、配列表における配列番号:43で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、51kDaで、等電点pIが5.10である。配列番号:43のアミノ末端から333〜376番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)由来の糖転移酵素との配列相同性が50%未満である。
【0223】
糖転移酵素遺伝子gGT29-4は、446個のアミノ酸を含むタンパク質gGT29-4をコードし、配列表における配列番号:55で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、50kDaで、等電点pIが5.78である。配列番号:55のアミノ末端から321〜364番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、ミシマサイコ(Bupleurum chinense)由来の糖転移酵素との配列類似性が57%未満である。
【0224】
糖転移酵素遺伝子gGT29-5は、446個のアミノ酸を含むタンパク質gGT29-5をコードし、配列表における配列番号:57で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、50kDaで、等電点pIが5.93である。配列番号:57のアミノ末端から321〜364番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、ミシマサイコ(Bupleurum chinense)由来の糖転移酵素との配列類似性が58%未満である。
【0225】
糖転移酵素遺伝子gGT29-6は、446個のアミノ酸を含むタンパク質gGT29-6をコードし、配列表における配列番号:59で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、50kDaで、等電点pIが6.03である。配列番号:59のアミノ末端から321〜364番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、ミシマサイコ(Bupleurum chinense)由来の糖転移酵素との配列類似性が59%未満である。
【0226】
糖転移酵素遺伝子gGT29-7は、446個のアミノ酸を含むタンパク質gGT29-7をコードし、配列表における配列番号:61で表されるアミノ酸配列を有する。ソフトでこのタンパク質の理論分子量を予測したところ、50kDaで、等電点pIが5.80である。配列番号:61のアミノ末端から321〜364番目は糖転移酵素の第一ファミリーの保存的な機能領域である。この糖転移酵素は、ミシマサイコ(Bupleurum chinense)由来の糖転移酵素との配列類似性が57%未満である。
【0227】
【表2】
【0228】
実施例2
糖転移酵素遺伝子gGT25、gGT25-1、gGT25-3およびgGT25-5の酵母組換え発現ベクターの構築
実施例1で構築されたgGT25、gGT25-1、gGT25-3およびgGT25-5遺伝子を含むプラスミドgGT25-pMD18T、gGT25-1-pMD18T、gGT25-3-pMD18TおよびgGT25-5-pMD18Tを鋳型として標的遺伝子を増幅した。
【0229】
使用されたフォワードプライマーはいずれも
5’- GCCGGAGCTCATGAAGTCAGAATTGATATTC - 3’(配列番号:13)で、その5’末端にSacI識別部位:GAGCTCが加えられ、
使用されたリバースプライマーはいずれも
5’-GCCGCTCGAGTTAATGATGATGATGATGATGCATAATTTCCTCAAATAGCTTC-3’(配列番号:14)で、その5’末端にXholI識別部位:CTCGAGが加えられ、Western Blotによる発現および精製の検出のために、リバースプライマーに6×His Tagが導入された。
【0230】
上記プライマーおよび鋳型を使用してPCR法によってgGT25、gGT25-1、gGT25-3およびgGT25-5遺伝子を増幅した。DNAポリメラーゼはToyobo社の高正確性DNAポリメラーゼkodを使用し、その説明書を参照してPCRプログラムを94℃ 2 min;94℃ 15s、58℃ 30s、68℃ 1.5min、計30サイクル;68℃ 10min;10℃保温と設定した。PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって検出し、紫外線の照射で、大きさが標的DNAと一致するバンドを切り取った。さらに、AEYGEN社のAxyPrep DNA Gel Extraction KitでアガロースゲルからDNA断片を回収した。Takara社のQuickCut制限酵素Kpn IおよびXba Iで回収したDNA断片を30min切断し、AXYGEN社のAxyPrep PCR Cleanup Kitで酵素切断産物を洗浄して回収した。NEB社のT4 DNAリガーゼで酵素切断産物を出芽酵母発現プラスミドpYES2(同様にKpn IおよびXba Iで切断してゲルから切り取って回収したもの)と25℃で2h連結した。連結産物でE. coli TOP 10感受性細胞を形質転換し、かつ100μg/mLのアンピシリンを入れたLBプレートに塗布した。集落PCRで陽性形質転換体を検証し、かつ配列決定でさらに検証したところ、発現プラスミドgt25-pYES2、gt25-1-pYES2、gt25-3-pYES2およびgt25-5-pYES2の構築に成功したことがわかった。
【0231】
実施例3
糖転移酵素遺伝子gGT25、gGT25-1、gGT25-3およびgGT25-5の出芽酵母における発現
電気的形質転換法によって構築した発現プラスミドgt25-pYES2を出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)に形質転換し、スクリーニングプレートSC-Ura(0.67%酵母無アミノ酸基本窒素源、2%グルコース)に塗布した。集落PCRで酵母の組換え体を検証した。酵母の組換え体を10 mLのSC-Ura(2%グルコース)培地に取り、30℃、200rpmで20h培養した。4℃で3500gで遠心して菌体を収集し、無菌脱イオン水で菌体を2回洗浄し、誘導培地SC-Ura(2%ガラクトース)で菌体を再懸濁させ、かつ50 mLの誘導培地に接種し、OD
600が約0.4になるようにし、30℃、200rpmで誘導発現を開始した。4℃で3500gで遠心して12h誘導発現させた菌体を収集し、無菌脱イオン水で菌体を2回洗浄し、酵母分解緩衝液に菌体を再懸濁させ、OD
600が50〜100になるようにした。Fastprep細胞破砕装置で酵母細胞を振とう破砕し、4℃で12000 gで10min遠心して細胞の破片を除去し、細胞分裂液の上清を収集した。適量の分解液の上清を取ってSDS-PAGE電気泳動検出を行ったところ、pYES2ブランクベクターの組換え体と比較すると、gt25-pYES2、gt25-1-pYES2、gt25-3-pYES2、gt25-5-pYES2の組換え体は、
図2のように、顕著なバンド特徴がなかった。anti-6×His Tag Western Blotで発現の状況を検出したところ、
図3に示すように、gGT25、gGT25-1、gGT25-3およびgGT25-5を発現する出芽酵母組換え体は強いWestern Blot信号を示し、gGT25、gGT25-1、gGT25-3およびgGT25-5が酵母において溶解可能に発現されたことが示され、pYES2ブランクベクターの組換え体ではanti-6×His Tag Western Blot信号がなかった。
【0232】
実施例4
酵母発現産物gGT25、gGT25-1、gGT25-3およびgGT25-5の糖転移反応および産物の同定
gGT25、gGT25-1、gGT25-3およびgGT25-5を発現する組換え酵母の分解液の上清を酵素液として基質であるプロトパナキサジオール(Protopanoxadiol PPD)、プロトパナキサトリオール(Protopanaxatriol PPT)およびダンマレンジオール(Dammarenediol II,DM)の糖転移反応を触媒し、発現ブランクベクターの組換え酵母の分解液の上清を対照とした。100μL反応系は表3に示す。
【0233】
【表3】
【0234】
反応は35℃で12h行い、さらに100μLブタノールを入れて反応を中止させ、かつ産物を抽出した。産物を真空乾燥した後、メタノールで溶解させた。
反応産物は、まず薄層クロマトグラフィー(TLC)で検出したところ、gGT25またはgGT25-1またはgGT25-3を発現する組換え酵母の分解上清の酵素液は、プロトパナキサジオールおよびプロトパナキサトリオールの20位の水酸基をグリコシル化し、それぞれ希少ギンセノシドCKおよびF1に転化させることができた(
図6および
図7)。3位の水酸基が六炭糖基化されたプロトパナキサジオール型サポニン(Rh2およびRg3)は、gGT25、gGT25-1およびgGT25-3の触媒で、20位の水酸基をさらにグリコシル化し、それぞれF2およびRdを生成することができた(
図6)。gGT25、gGT25-1およびgGT25-3は、PPTの20位の水酸基をグリコシル化してF1を生成することだけでなく、さらに6位の水酸基ををグリコシル化してRg1を生成することもできた(
図7)。gGT25、gGT25-1およびgGT25-3は、さらに、PPDの前駆体であるダンマレンジオールの20位の水酸基ををグリコシル化し、報告されていなかったサポニンである20-O-β-(D-グルコピラノシル)-ダンマレンジオールを得ることができた(
図8)。しかし、6位の水酸基が既にグリコシル化されたプロトパナキサトリオール型サポニン(Rh1、Rg2およびRf)はgGT25、gGT25-1およびgGT25-3の触媒で20位の水酸基をグリコシル化することができない。同時に、gGT25、gGT25-1およびgGT25-3は、糖鎖の伸長も触媒することができない。gGT25-5は、gGT25、gGT25-1およびgGT25-3と触媒活性が違い、gGT25、gGT25-1およびgGT25-3のように、PPD、PPTまたはダンマレンジオールの20位の水酸基をグリコシル化することができず、PPTの6位の水酸基をグリコシル化して希少ギンセノシドRh1に転化させることしかできなかった(
図7)。
【0235】
さらにgGT25の転化産物をHPLCで同定した(
図10および
図11)。
図10では、3つのピークが現れ、中では、ピーク2はサンプルにおけるCKの保持時間と、ピーク3はプロトパナキサジオールのピークと一致した。ピーク3はかなり小さくなったことは、プロトパナキサジオールがほとんどCKに転化されたことを示した。ピーク1は、陰性対照のグラフにも現れたため、プロトパナキサジオールの転化とは無関係のはずである。
図11でも、3つのピークが現れ、ピーク1はサンプルにおけるF1の保持時間と、ピーク3はプロトパナキサトリオールのピークと一致した。ピーク3はかなり小さくなったことは、プロトパナキサトリオールがほとんどF1に転化されたことを示した。ピーク2は、陰性対照のグラフにも現れたため、プロトパナキサトリオールの転化とは無関係のはずである。
【0236】
最後に、LC/MSで産物に対してさらなる同定を行った(
図12および
図13)。
図12はプロトパナキサジオールの転化産物におけるCKピーク(
図10におけるピーク2)に対する質量分析グラフで、標準CKサンプルの質量分析グラフと完全に一致した。
図13はプロトパナキサトリオールの転化産物におけるF1ピーク(
図11におけるピーク1)に対する質量分析グラフで、標準サンプルF1の質量分析グラフと完全に一致した。これらの結果から、プロトパナキサジオールおよびプロトパナキサトリオールのgGT25転化産物がそれぞれCKおよびF1であることがさらに実証された。
【0237】
実施例5
糖転移酵素遺伝子gGT13およびgGT30のクローニング、発現およびその発現産物の糖転移反応
実施例2と同じ方法で、gGT13およびgGT30のクローンを得、これらの酵母組換え発現ベクターを構築して出芽酵母を形質転化した。実施例3と同じ工程で糖転移酵素の発現を誘導したところ、SDS-PAGEゲルには顕著な標的タンパク質のバンドがなかったが(
図4)、Western Blotで顕著なハイブリダイズの信号が検出されたため、gGT13およびgGT30はいずれも酵母において発現されたことが示された(
図5)。
【0238】
実施例4と同じ方法で、gGT13およびgGT30を発現する組換え酵母細胞分解液でそれぞれプロトパナキサジオール(PPD)およびプロトパナキサトリオール(PPT)を触媒した。
【0239】
結果、gGT13およびgGT30のタンパク質発現産物はいずれもPPDまたはPPTを転換させることができず(
図9)、かつgGT13およびgGT30はプロトパナキサジオール型サポニンRh2、CK、F2およびRg3ならびにプロトパナキサトリオール型のF1、Rh1およびRg1も転化することができなかったことがわかった。
以上の結果から、gGT13はオタネニンジンのトランスクリプトームで予測したギンセノシドの糖転移酵素のアミノ酸配列との一致性が高いが(99.5%)、gGT13およびgGT30は上記の基質のいずれにも糖転移作用がないことが示された。
【0240】
実施例6
糖転移酵素遺伝子gGT25の大腸菌における発現およびその発現産物の糖転移反応
実施例1で構築されたgGT25遺伝子を含むプラスミドgGT25-pMD18Tを鋳型として標的遺伝子gGT25を増幅し、かつそれを大腸菌発現ベクターpet28a(Merck社から購入)にクローニングし、大腸菌発現ベクターgt25-pet28aを構築し、市販のE. coli BL21を形質転換した。組換え体をLB培地に接種し、30℃、200rpmでOD
600が約0.6〜0.8になるまで培養し、菌液の温度を4℃に下げ、最終濃度が50 μMになるようにIPTGを入れ、18℃、200rpmで15 h誘導発現させた。4℃で遠心して菌体を収集し、超音波で細胞を破砕し、4℃、12000 gで遠心して細胞分解液の上清を収集し、サンプルを取ってSDS-PAGE電気泳動を行った。
【0241】
Western Blot(
図14)では、50 μMのIPTGの誘導条件で、糖転移酵素gGT25は大腸菌においても発現することができることが示された。この組換え大腸菌の細胞分解液の上清を粗製酵素液として糖転移反応を行い、反応の条件は実施例4におけるものと同じであった。
反応は35℃で12h行い、さらに100μLブタノールを入れて反応を中止させ、かつ産物を抽出した。産物を真空乾燥した後、メタノールで溶解させた。反応産物は、まず薄層クロマトグラフィー(TLC)で検出したところ、
図15ではgGT25粗製酵素液はPPDをCKに転化させることができたことがわかる。
【0242】
実施例7
CK生産酵母工学菌の構築および産物の同定
pESC-HISプラスミド((Stratagene,Agilent)には、同時にダンマレンジオール合成酵素(Dammarenediol synthase)(ACZ71036.1)(GAL1/GAL10 GAL10側プロモーター、ADH1ターミネーター)、シトクロムP450 CYP716A47(AEY75213.1)(FBA1プロモーター、CYC1ターミネーター)および糖転移酵素GT25(GAL1/GAL10 GAL1側プロモーター、TDH2ターミネーター)を取り付け、遊離型プラスミドを構成し、出芽酵母BY4742を形質転換し、かつシロイヌナズナ由来のシトクロムP450還元酵素ATR2-1(NP_849472.2)を出芽酵母BY4742染色体における染色体trp1遺伝子部位(GAL1プロモーター、trp1本来のターミネーターを利用する)に取り込み、組換え酵母Aを構築した。同じ方法で組換え酵母Bを構築し、その違いは、シロイヌナズナ由来の還元酵素ATR2-1をダンマレンジオール合成酵素、シトクロムP450 CYP716A47および糖転移酵素GT25を含む組換えプラスミドに取り込み、ATR2-1のプロモーターおよびターミネーターはそれぞれTEF2プロモーターおよびTPI1ターミネーターとし、ほかの3つの遺伝子のプロモーターおよびターミネーターは組換え菌Aの相応の遺伝子と同様である。
【0243】
組換え酵母Bと同じ方法で組換え酵母菌Cを構築したが、表4のように各遺伝子のプロモーターおよびターミネーターを変更した。
【0244】
【表4】
【0245】
組換え酵母菌株A、B、CをSC-Ura(0.67%酵母無アミノ酸基本窒素源、2%ガラクトース)培地で発酵させ、各組換え菌の別途に添加する必要のあるアミノ酸またはウラシルを表5に示し、50mLの組換え酵母の発酵液を取り、遠心して沈殿した菌体を5mLNo酵母分解緩衝液(50mM Tris-Hcl、1mM EDTA、1mM PMSF、5%グリセリン、pH 7.5)で再懸濁させた後、Fastprepで分解酵母を振とうし、出力を6M/Sとし、7〜8回振とうして酵母を十分に分解した。分解液を2mLのEP管に1mLずつ移し、等体積(1mL)のn-ブタノールを入れて30min抽出した後、12000gで10min遠心した。上清を吸い取って新しいEP管に移した。45℃かつ真空の条件で、n-ブタノールを蒸発させて乾燥した。100μLのメタノールで溶解させた後、HPLCで検出した。
【0246】
HPLC分析の結果、組換え酵母Aの細胞分解液にダンマレンジオール、プロトパナキサジオール(PPD)およびギンセノシド活性代謝物CKが含まれ(
図16)、酵母Aで合成されたCKの収量が0.6mg/Lに達した。HPLC分析によって組換え酵母BおよびCの細胞分解液にも微量のCKが見られた。
【0247】
【表5】
【0248】
実施例8
Rh1生産酵母工学菌の構築および産物の同定
pESC-HISプラスミド((Stratagene,Agilent)には、同時にダンマレンジオール合成酵素(Dammarenediol synthase)(ACZ71036.1)(GAL1/GAL10 GAL10側プロモーター、ADH1ターミネーター)、シトクロムP450 CYP716A47(AEY75213.1)(FBA1プロモーター、CYC1ターミネーター)、シトクロムP450 CYP716A53V2基因(ENO2プロモーター、CYC1ターミネーター)および糖転移酵素gGT25-5(GAL1/GAL10 GAL1側プロモーター、TDH2ターミネーター)を取り付け、遊離型プラスミドを構成し、出芽酵母BY4742を形質転換し、かつシロイヌナズナ由来のシトクロムP450還元酵素ATR2-1(NP_849472.2)を出芽酵母BY4742染色体における染色体trp1遺伝子部位(GAL1プロモーター、trp1本来のターミネーターを利用する)に取り込み、組換え酵母A3を構築した。組換え酵母菌に別途に添加する相応のアミノ酸またはウラシルを表5に示す。
【0249】
組換え酵母A3の分解液を2mLのEP管に1mLずつ移し、等体積(1mL)のn-ブタノールを入れて30min抽出した後、12000gで10min遠心した。上清を吸い取って新しいEP管に移した。45℃かつ真空の条件で、n-ブタノールを蒸発させて乾燥した。100μLのメタノールで溶解させた後、HPLCで検出した。
HPLC分析の結果、組換え酵母A3の細胞分解液にプロトパナキサトリオール(PPT)およびギンセノシド活性代謝物Rh1が含まれた(
図41)。
【0250】
実施例9
糖転移酵素遺伝子3GT1、3GT2、3GT3および3GT4の大腸菌組換え発現ベクターの構築
実施例1で構築された3GT1および3GT2遺伝子を含むプラスミド3GT1-pMD18T、3GT2-pMD18Tを鋳型として標的遺伝子を増幅した。
3GT1および3GT2に使用されたフォワードプライマーはいずれも配列番号:31で、その5’末端にBamH I識別部位:GGATCCが付加され、3GT1に使用されたリバースプライマーは配列番号:32で、その5’末端にSal I識別部位:CTCGAGが付加され、3GT2に使用されたリバースプライマーは配列番号:33で、その5’末端にSal I識別部位:CTCGAGが付加された。
【0251】
上記プライマーおよび鋳型を使用してPCR法によって3GT1および3GT2遺伝子を増幅した。DNAポリメラーゼはToyobo社の高正確性DNAポリメラーゼKODを使用し、その説明書を参照してPCRプログラムを94℃ 2 min;94℃ 15s、58℃ 30s、68℃ 1.5min、計35サイクル;68℃ 10min;10℃保温と設定した。PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって検出し、紫外線の照射で、大きさが標的DNAと一致するバンドを切り取った。さらに、AEYGEN社のAxyPrep DNA Gel Extraction KitでアガロースゲルからDNA断片を回収した。Takara社のQuickCut制限酵素Kpn IおよびXba Iで回収したDNA断片を30min切断し、AXYGEN社のAxyPrep PCR Cleanup Kitで酵素切断産物を洗浄して回収した。NEB社のT4 DNAリガーゼで酵素切断産物を大腸菌発現プラスミドpET28a(同様にBamH IおよびSal Iで切断してゲルから切り取って回収したもの)と16℃で4h連結した。連結産物でE. coli EPI300感受性細胞を形質転換し、かつ50μg/mLのカナマイシンを入れたLBプレートに塗布した。集落PCRで陽性形質転換体を検証し、かつ配列決定でさらに検証したところ、発現プラスミド3GT1-pET28aおよび3GT2-pET28aの構築に成功したことがわかった。
【0252】
実施例1で構築された3GT3および3GT4遺伝子を含むプラスミド3GT3-pMD18T、3GT4-pMD18Tを鋳型として標的遺伝子を増幅した。
3GT3に使用されたフォワードプライマーは配列番号:48で表され、その5’末端にベクターpET28aと相同の配列:ACTTTAAGAAGGAGATATACCが付加され、3GT3に使用されたリバースプライマーは配列番号:49で表され、その5’末端にベクターpET28aと相同の配列:CTCGAGTGCGGCCGCAAGCTTが付加された。
【0253】
3GT4に使用されたフォワードプライマーは配列番号:50で、その5’末端にベクターpET28aと相同の配列:ACTTTAAGAAGGAGATATACCが付加され、3GT4に使用されたリバースプライマーは配列番号:51で、その5’末端にベクターpET28aと相同の塩基18個の断片:CTCGAGTGCGGCCGCAAGCTTが付加された。
【0254】
上記プライマーおよび鋳型を使用してPCR法によって3GT3および3GT4遺伝子を増幅した。遺伝子の増幅はNEB社のQ5高正確性DNAポリメラーゼを使用し、その説明書を参照してPCRプログラムを98℃ 30s;98℃ 15s、58℃ 30s、72℃ 1min、計35サイクル;72℃ 2min;10℃保温と設定した。
【0255】
同時に、配列番号:52および配列番号:53をそれぞれフォワードプライマーおよびリバースプライマーとして使用してベクターpET28aを増幅し、線状化したベクターpET28aを得た。pET28a線状化ベクターの増幅もNEB社のQ5高正確性DNAポリメラーゼを使用し、その説明書を参照してPCRプログラムを98℃ 30s;98℃ 15s、58℃ 30s、72℃ 3min、計35サイクル;72℃ 2min;10℃保温と設定した。
【0256】
上記3GT3および3GT4遺伝子のPCR産物および線状化したベクターpET28aをアガロースゲル電気泳動によって検出した後、紫外線の照射で、大きさが標的DNAと一致するバンドを切り取った。さらに、AEYGEN社のAxyPrep DNA Gel Extraction KitでアガロースゲルからDNA断片を回収した。諾晶生物科技有限公司のBGclonartシームレスクローニングキットの説明書を参照し、回収した線状化したpET28aベクター断片、回収した3GT3または3GT4遺伝子断片および諾晶生物科技有限公司のBGclonartシームレスクローニング反応液を適切な比率で混合し、計20μlとした。均一に混合した後、50℃で30分間インキュベートし、さらに混合反応液を氷の上に移した。5μlの反応液でE. coli EPI300感受性細胞を形質転換し、かつ50μg/mLのカナマイシンを入れたLBプレートに塗布した。集落PCRで陽性形質転換体を検証し、かつ配列決定でさらに検証したところ、発現プラスミド3GT3-pET28aおよび3GT4-pET28aの構築に成功したことがわかった。
【0257】
実施例10
糖転移酵素遺伝子3GT1、3GT2、3GT3および3GT4の大腸菌における発現
実施例9で構築された大腸菌発現ベクター3GT1-pET28a、3GT2-pET28a、3GT3-pET28aおよび3GT4-pET28aで、市販のE. coli BL21を形質転換した。組換え体をLB培地に接種し、30℃、200rpmでOD
600が約0.6〜0.8になるまで培養し、菌液の温度を4℃に下げ、最終濃度が50 μMになるようにIPTGを入れ、18℃、200rpmで15 h誘導発現させた。4℃で遠心して菌体を収集し、超音波で細胞を破砕し、4℃、12000 gで遠心して細胞分解液の上清を収集し、サンプルを取ってSDS-PAGE電気泳動を行った(
図20)。pet28aブランクベクターの組換え体と比較すると、3GT1-pET28a、3GT2-pET28a、3GT3-pET28aおよび3GT4-pET28aの組換え体に顕著なバンドがあって(約55KD)3GT1、3GT2、3GT3および3GT4を特徴づける。Western Blotの結果からも(
図21)、標的タンパク質3GT1、3GT2、3GT3および3GT4は宿主において溶解可能に発現が実現したことが証明された。
【0258】
実施例11
大腸菌発現産物3GT1、3GT2、3GT3および3GT4の糖転移反応および産物の同定
3GT1、3GT2、3GT3および3GT4を発現する組換え大腸菌分解上清を粗製酵素液としてギンセノシドおよびサポゲニンの糖転移反応を触媒し、発現ブランクベクターの組換え大腸菌分解上清を対照とした。100μL反応系は表3に示す。反応は35℃で12h行い、さらに100μLブタノールを入れて反応を中止させ、かつ産物を抽出した。産物を真空乾燥した後、メタノールで溶解させた。
【0259】
反応産物は、まず薄層クロマトグラフィー(TLC)で検出したところ(
図22〜28)、3GT1、3GT2、3GT3および3GT4の粗製酵素液は、プロトパナキサジオール(PPD)のC3位の水酸基をグリコシル化し、それぞれ希少ギンセノシドRh2に転化させることができた(
図22、27(a)および
図28(a))。20位の水酸基が六炭糖基化されたプロトパナキサジオール型サポニン(CK)は、3GT1、3GT2および3GT4の触媒で、3位の水酸基をさらにグリコシル化し、それぞれF2を生成することができた(
図22および
図28(b))。糖転移酵素3GT1および3GT2gは、さらに、それぞれダンマレンジオールDMのC3位の水酸基をグリコシル化し、新たな化合物である3-O-β-(D-グルコピラノシル)-ダンマレンジオールに転化させることができた(
図23)。糖転移酵素3GT1、3GT2、3GT3および3GT4は、25-OH-PPDのC3位の水酸基をグリコシル化し、新たな化合物である3-O-β-(D-グルコピラノシル)-25-OH-PPDに転化させることができた(
図23、
図27(c)および
図28(c))。3GT1、3GT2および3GT3は、さらに、ダンマレントリオール(PPT)のC3位の水酸基をグリコシル化し、報告されていなかった新たなサポニンである3-O-β-(D-グルコピラノシル)-PPTに転化させることができた(
図24および
図27(b))。3GT1および3GT2は、さらに、F1のC3位の水酸基をグリコシル化し、報告されていなかった新たなサポニンである3-O-β-(D-グルコピラノシル)-F1に転化させることができた(
図24)。3GT1および3GT2は、さらに、ラノステロール(lanosterol)のC3位の水酸基をグリコシル化し、新たな化合物である3-O-β-(D-グルコピラノシル)-ラノステロールに転化させることができた(
図26)。同時に、3GT1および3GT2の触媒活性は、20位の水酸基またはグリコシル基の空間配置の影響を受けず、例えば、20(S)-PPDを触媒するだけでなく、20(R)-PPDを触媒して希少ギンセノシドである20(R)-ギンセノシドRh2を生成することもできた(
図25)。3GT1、3GT2、3GT3および3GT4の4種類の糖転移酵素はいずれもテトラシクロトリテルペンのサポゲニンの3位にグリコシル基を導入することができたが、触媒できる基質の種類は大きく異なる。表6に示すように、3GT1および3GT2が触媒できる基質は最も多く、3GT3が触媒できる基質は最も少ないが、3GT4の特異性が最も良く、プロトパナキサジオールおよびプロトパナキサジオール型(CK)サポニンしか触媒することができない。
【0260】
さらにHPLCで3GT1、3GT3および3GT4によってPPDが触媒されて生成した産物を検出した(
図29)。
図29では、糖転移酵素3GT1、3GT3および3GT4によってPPDが触媒されて生成した産物にはいずれも同じ保持時間のピーク(P1、P2およびP3)が現れ、サンプルにおけるギンセノシドRh2の保持時間と一致し、糖転移酵素3GT1、3GT3および3GT4によってPPDが触媒されてギンセノシドRh2が生成したことが示された。最後に、LC/MSで
図29におけるP1、P2およびP3の3つのサンプルピークを質量分析した(
図30)ところ、標準サンプルのギンセノシドRh2の質量分析グラフと完全に一致し、さらに糖転移酵素3GT1、3GT3および3GT4によってPPDが触媒されて生成した産物はRh2であったことが示された。
【0261】
糖転移酵素3GT1、3GT2、3GT3および3GT4が触媒できる基質の比較は表6に示す。
【表6】
【0262】
実施例12
Rh2生産酵母工学菌の構築および産物の同定
12.1 pESC-HISプラスミド((Stratagene,Agilent)には、同時にダンマレンジオール合成酵素(Dammarenediol synthase)(ACZ71036.1)(GAL1/GAL10 GAL10側プロモーター、ADH1ターミネーター)、シトクロムP450 CYP716A47(AEY75213.1)(FBA1プロモーター、CYC1ターミネーター)および糖転移酵素3GT4(GAL1/GAL10 GAL1側プロモーター、TDH2ターミネーター)を取り付け、遊離型プラスミドを構成し、出芽酵母BY4742を形質転換し、かつシロイヌナズナ由来のシトクロムP450還元酵素ATR2-1(NP_849472.2)を出芽酵母BY4742染色体における染色体trp1遺伝子部位(GAL1プロモーター、trp1本来のターミネーターを利用する)に取り込み、組換え酵母A1を構築した。組換え酵母菌に別途に添加する相応のアミノ酸またはウラシルを表5に示す。
【0263】
組換え酵母A1の分解液を2mLのEP管に1mLずつ移し、等体積(1mL)のn-ブタノールを入れて30min抽出した後、12000gで10min遠心した。上清を吸い取って新しいEP管に移した。45℃かつ真空の条件で、n-ブタノールを蒸発させて乾燥した。100μLのメタノールで溶解させた後、HPLCで検出した。
HPLC分析の結果(
図39)、組換え酵母Aの細胞分解液にダンマレンジオール、プロトパナキサジオール(PPD)およびギンセノシド活性代謝物Rh2が含まれた。
【0264】
12.2 方法は12.1と同様で、その違いは3GT4の代わりに糖転移酵素3GT1を使用し、組換え酵母A5を得た。
結果は、
図43のように、HPLC分析によって、組換え酵母A5の細胞分解液にダンマレンジオール、プロトパナキサジオール(PPD)およびギンセノシド活性代謝物Rh2が含まれた。
【0265】
実施例13
糖転移酵素遺伝子gGT29およびgGT29-3の酵母組換え発現ベクターの構築
それぞれ実施例1で構築されたgGT29およびgGT29-3遺伝子を含むプラスミドgGT29-pMD18TおよびgGT29-3-pMD18Tを鋳型として標的遺伝子を増幅した。
gGT29に使用されたフォワードプライマーはいずれも配列番号:36で、その5’末端にKpn I識別部位:GGATCCが加えられ、使用されたリバースプライマーはいずれも配列番号:37で、その5’末端にXho I識別部位:CTCGAGが加えられ、Western Blotによる発現および精製の検出のために、リバースプライマーに6×His Tagが導入された。
【0266】
gGT29-3に使用されたフォワードプライマーはいずれも配列番号:38で、その5’末端にKpn I識別部位:GGATCCが加えられ、使用されたリバースプライマーはいずれも配列番号:39で、その5’末端にXho I識別部位:CTCGAGが加えられ、Western Blotによる発現および精製の検出のために、リバースプライマーに6×His Tagが導入された。
【0267】
プラスミドgGT29-pMD18TおよびgGT29-3-pMD18Tを鋳型とし、上記プライマーでPCR方法によってgGT29およびgGT29-3の遺伝子を増幅した。DNAポリメラーゼはToyobo社の高正確性DNAポリメラーゼkodを使用し、その説明書を参照してPCRプログラムを94℃ 2 min;94℃ 15s、58℃ 30s、68℃ 1.5min、計30サイクル;68℃ 10min;10℃保温と設定した。PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって検出し、紫外線の照射で、大きさが標的DNAと一致するバンドを切り取った。さらに、AEYGEN社のAxyPrep DNA Gel Extraction KitでアガロースゲルからDNA断片を回収した。Takara社のQuickCut制限酵素Kpn IおよびXba Iで回収したDNA断片を30min切断し、AXYGEN社のAxyPrep PCR Cleanup Kitで酵素切断産物を洗浄して回収した。NEB社のT4 DNAリガーゼで酵素切断産物を出芽酵母発現プラスミドpYES2(同様にKpn IおよびXba Iで切断してゲルから切り取って回収したもの)と25℃で2h連結した。連結産物でE. coli TOP 10感受性細胞を形質転換し、かつ100μg/mLのアンピシリンを入れたLBプレートに塗布した。集落PCRで陽性形質転換体を検証し、かつ配列決定でさらに検証したところ、発現プラスミドgGT29-pYES2およびgGT29-3-pYES2の構築に成功したことがわかった。
【0268】
実施例14
糖転移酵素遺伝子gGT29およびgGT29-3の出芽酵母における発現
電気的形質転換法によって構築した発現プラスミドgGT29-pYES2およびgGT29-3-pYES2を出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)に形質転換し、スクリーニングプレートSC-Ura(0.67%酵母無アミノ酸基本窒素源、2%グルコース)に塗布した。集落PCRで酵母の組換え体を検証した。酵母の組換え体を10 mLのSC-Ura(2%グルコース)培地に取り、30℃、200rpmで20h培養した。4℃で3500gで遠心して菌体を収集し、無菌脱イオン水で菌体を2回洗浄し、誘導培地SC-Ura(2%ガラクトース)で菌体を再懸濁させ、かつ50 mLの誘導培地に接種し、OD
600が約0.4になるようにし、30℃、200rpmで誘導発現を開始した。4℃で3500gで遠心して12h誘導発現させた菌体を収集し、無菌脱イオン水で菌体を2回洗浄し、酵母分解緩衝液に菌体を再懸濁させ、OD
600が50〜100になるようにした。Fastprep細胞破砕装置で酵母細胞を振とう破砕し、4℃で12000 gで10min遠心して細胞の破片を除去し、細胞分裂液の上清を収集した。適量の分解液の上清を取ってSDS-PAGE電気泳動検出を行ったところ、pYES2ブランクベクターの組換え体と比較すると、gGT29-pYES2およびgGT29-3-pYES2の組換え体は、顕著なバンド特徴がなかった(
図32)。anti-6×His Tag Western Blotで発現の状況を検出したところ、gGT29およびgGT29-3を発現する出芽酵母組換え体は強いWestern Blot信号を示し、gGT29およびgGT29-3がいずれも酵母において溶解可能に発現されたことが示され、pYES2ブランクベクターの組換え体ではanti-6×His Tag Western Blot信号がなかった(
図33)。
【0269】
実施例15
酵母発現産物gGT29およびgGT29-3の糖転移反応および産物の同定
gGT29およびgGT29-3を発現する組換え酵母分解上清を酵素液としてギンセノシドRh2およびF2の糖転移反応を触媒し、発現ブランクベクターの組換え酵母分解上清を対照とした。100μL反応系は表3に示す。反応は35℃で12h行い、さらに100μLブタノールを入れて反応を中止させ、かつ産物を抽出した。産物を真空乾燥した後、メタノールで溶解させた。
【0270】
反応産物は、まず薄層クロマトグラフィー(TLC)で検出したところ、gGT29およびgGT29-3を発現する酵母宿主の分解上清の酵素液は、ギンセノシドRh2およびF2の3位のグリコシル基をさらに1個のグリコシル基で伸長させ、ギンセノシドRg3およびRdに転化させた(
図34)。gGT29およびgGT29-3の触媒活性は、ギンセノシドの20位のグリコシル基または水酸基の配置の影響を受けず、20(R)-Rh2を20(R)-Rg3に転化させることができた(
図36)。
【0271】
実施例16
糖転移酵素3GT1/3GT4およびgGT29の共同糖転移反応および産物の同定
3GT1または3GT4を発現する大腸菌宿主の分解上清およびgGT29を発言する酵母宿主の分解上清を酵素液として共同にプロトパナキサジオール(PPD)を触媒した。100μL反応系は表3に示す。73.4μLの酵素液には、40μLは3GT1の大腸菌宿主の分解上清で、残りの33.4μLはgGT29を発現する酵母宿主の分解上清であった。反応は35℃で12h行い、さらに100μLブタノールを入れて反応を中止させ、かつ産物を抽出した。産物を真空乾燥した後、メタノールで溶解させた。反応産物は、まず薄層クロマトグラフィー(TLC)で検出した(
図35)ところ、糖転移酵素3GT1およびgGT29あるいは3GT4およびgGT29を併用するといずれもPPDをRg3に転化させることができたことがわかる。
【0272】
糖転移酵素3GT1およびgGT29あるいは3GT4およびgGT29を併用すると、いずれも20(R)-PPDを触媒して20(R)-Rg3を生成した(
図36)。
【0273】
実施例17
Rg3生産酵母工学菌の構築および産物の同定
17.1 pESC-HISプラスミド((Stratagene,Agilent)には、同時にダンマレンジオール合成酵素(Dammarenediol synthase)(ACZ71036.1)(GAL1/GAL10 GAL10側プロモーター、ADH1ターミネーター)、シトクロムP450 CYP716A47(AEY75213.1)(FBA1プロモーター、CYC1ターミネーター)および糖転移酵素3GT4およびgGT29(GAL1/GAL10 GAL1側プロモーター、TDH2ターミネーター)を取り付け、遊離型プラスミドを構成し、出芽酵母BY4742を形質転換し、かつシロイヌナズナ由来のシトクロムP450還元酵素ATR2-1(NP_849472.2)を出芽酵母BY4742染色体における染色体trp1遺伝子部位(GAL1プロモーター、trp1本来のターミネーターを利用する)に取り込み、組換え酵母A2を構築した。組換え酵母菌に別途に添加する相応のアミノ酸またはウラシルを表5に示す。
【0274】
組換え酵母A2の分解液を2mLのEP管に1mLずつ移し、等体積(1mL)のn-ブタノールを入れて30min抽出した後、12000gで10min遠心した。上清を吸い取って新しいEP管に移した。45℃かつ真空の条件で、n-ブタノールを蒸発させて乾燥した。100μLのメタノールで溶解させた後、HPLCで検出した。
HPLC分析の結果、組換え酵母A2の細胞分解液にダンマレンジオール、プロトパナキサジオール(PPD)およびギンセノシド活性代謝物Rg3が含まれた(
図40)。
【0275】
17.2 方法は17.1と同様で、その違いは3GT4の代わりに糖転移酵素3GT1を使用し、組換え酵母A6を得た。HPLC分析の結果、組換え酵母A6の細胞分解液にもダンマレンジオール、プロトパナキサジオール(PPD)およびギンセノシド活性代謝物Rg3が含まれた。
【0276】
実施例18
F1生産酵母工学菌の構築および産物の同定
pESC-HISプラスミド((Stratagene,Agilent)には、同時にダンマレンジオール合成酵素(Dammarenediol synthase)(ACZ71036.1)(GAL1/GAL10 GAL10側プロモーター、ADH1ターミネーター)、糖転移酵素gGT25(GAL1/GAL10 GAL1側プロモーター、TDH2ターミネーター)、シトクロムP450 CYP716A47(AEY75213.1)(FBA1プロモーター、FBA1ターミネーター)、シトクロムP450 CYP716A53V2(ENO2プロモーター、CYC1ターミネーター)を取り付けて遊離型プラスミドを構成し、出芽酵母BY4742を形質転換し、かつシロイヌナズナ由来のシトクロムP450還元酵素ATR2-1(NP_849472.2)を出芽酵母BY4742染色体における染色体trp1遺伝子部位(GAL1プロモーター、trp1本来のターミネーターを利用する)に取り込み、組換え酵母A4を構築した。組換え酵母菌に別途に添加する相応のアミノ酸またはウラシルを表5に示す。
【0277】
組換え酵母A4の分解液を2mLのEP管に1mLずつ移し、等体積(1mL)のn-ブタノールを入れて30min抽出した後、12000gで10min遠心した。上清を吸い取って新しいEP管に移した。45℃かつ真空の条件で、n-ブタノールを蒸発させて乾燥した。100μLのメタノールで溶解させた後、HPLCで検出した。
HPLC分析の結果、組換え酵母A4の細胞分解液にプロトパナキサトリオール(PPT)およびギンセノシド活性代謝物F1が含まれた(
図42)。
【0278】
実施例19
糖転移酵素遺伝子gGT29-4、gGT29-5、gGT29-6およびgGT29-7の大腸菌組換え発現ベクターの構築
実施例1で構築されたgGT29-4、gGT29-5、gGT29-6およびgGT29-7遺伝子を含むプラスミドgGT29-4-pMD18T、gGT29-5-pMD18T、gGT29-6-pMD18TおよびgGT29-7-pMD18Tを鋳型として標的遺伝子を増幅した。
【0279】
gGT29-5およびgGT29-6遺伝子に使用されたフォワードプライマーは配列番号:66で表され、その5’末端にベクターpET28aと相同の配列:CTGGTGCCGCGCGGCAGCが付加され、使用されたリバースプライマーは配列番号:68で表され、その5’末端にベクターpET28aと相同の配列:TGCGGCCGCAAGCTTGTCが付加された。
gGT29-4およびgGT29-7遺伝子に使用されたフォワードプライマーは配列番号:67で、その5’末端にベクターpET28aと相同の配列:CTGGTGCCGCGCGGCAGCが付加され、使用されたリバースプライマーは配列番号:68で、その5’末端にベクターpET28aと相同の塩基18個の断片:TGCGGCCGCAAGCTTGTCが付加された。
【0280】
上記プライマーおよび鋳型を使用してPCR法によってgGT29-4、gGT29-5、gGT29-6およびgGT29-7遺伝子を増幅した。遺伝子の増幅はNEB社のQ5高正確性DNAポリメラーゼを使用し、その説明書を参照してPCRプログラムを98℃ 30s;98℃ 15s、58℃ 30s、72℃ 1min、計35サイクル;72℃ 2min;10℃保温と設定した。
【0281】
同時に、配列番号:69および配列番号:70をそれぞれフォワードプライマーおよびリバースプライマーとして使用してベクターpET28aを増幅し、線状化したベクターpET28aを得た。pET28a線状化ベクターの増幅もNEB社のQ5高正確性DNAポリメラーゼを使用し、その説明書を参照してPCRプログラムを98℃ 30s;98℃ 15s、58℃ 30s、72℃ 3min、計35サイクル;72℃ 2min;10℃保温と設定した。
【0282】
上記gGT29-4、gGT29-5、gGT29-6およびgGT29-7遺伝子のPCR産物および線状化したベクターpET28aをアガロースゲル電気泳動によって検出した後、紫外線の照射で、大きさが標的DNAと一致するバンドを切り取った。さらに、AEYGEN社のAxyPrep DNA Gel Extraction KitでアガロースゲルからDNA断片を回収した。諾晶生物科技有限公司のBGclonartシームレスクローニングキットの説明書を参照し、回収した線状化したpET28aベクター断片、回収したgGT29-4、gGT29-5、gGT29-6およびgGT29-7遺伝子断片および諾晶生物科技有限公司のBGclonartシームレスクローニング反応液を適切な比率で混合し、計20μlとした。均一に混合した後、50℃で30分間インキュベートし、さらに混合反応液を氷の上に移した。5μlの反応液でE. coli EPI300感受性細胞を形質転換し、かつ50μg/mLのカナマイシンを入れたLBプレートに塗布した。集落PCRで陽性形質転換体を検証し、かつ配列決定でさらに検証したところ、発現プラスミドgGT29-4-pET28a,gGT29-5-pET28a,gGT29-6-pET28a和gGT29-7-pET28aの構築に成功したことがわかった。
【0283】
実施例20
糖転移酵素遺伝子gGT29-4、gGT29-5、gGT29-6およびgGT29-7の大腸菌における発現
実施例19で構築された大腸菌発現ベクターgGT29-4-pET28a、gGT29-5-pET28a、gGT29-6-pET28aおよびgGT29-7-pET28aで、市販のE. coli BL21を形質転換した。組換え体をLB培地に接種し、30℃、200rpmでOD
600が約0.6〜0.8になるまで培養し、菌液の温度を4℃に下げ、最終濃度が50 μMになるようにIPTGを入れ、18℃、200rpmで15 h誘導発現させた。4℃で遠心して菌体を収集し、超音波で細胞を破砕し、4℃、12000 gで遠心して細胞分解液の上清を収集し、サンプルを取ってSDS-PAGE電気泳動を行った(
図44)。gGT29-4-pET28a、gGT29-5-pET28a、gGT29-6-pET28aおよびgGT29-7-pET28a組換え体の分解液および全タンパク質および上清のいずれにも顕著な目標タンパク質のバンド(約50KD)があり、それぞれ糖転移酵素gGT29-4、gGT29-5、gGT29-6およびgGT29-7を特徴づけた。Western Blotの結果からも(
図45)、標的タンパク質gGT29-4、gGT29-5、gGT29-6およびgGT29-7は宿主において溶解可能に発現が実現したことが証明された。
【0284】
実施例21
大腸菌発現産物gGT29-4、gGT29-5、gGT29-6およびgGT29-7の糖転移反応および産物の同定
gGT29-4、gGT29-5、gGT29-6およびgGT29-7を発現する組換え酵母分解上清を酵素液としてギンセノシドRh2およびF2の糖転移反応を触媒した。100μL反応系は表3に示す。反応は35℃で12h行い、さらに100μLブタノールを入れて反応を中止させ、かつ産物を抽出した。産物を真空乾燥した後、メタノールで溶解させた。
【0285】
反応産物は、薄層クロマトグラフィー(TLC)で検出したところ、gGT29-6を発現する粗製酵素液は、ギンセノシドRh2およびF2の3位のグリコシル基をさらに1個のグリコシル基で伸長させ、それぞれギンセノシドRg3およびRdを生成することができた(
図46)。gGT29-4、gGT29-5およびgGT29-7を発現する粗製酵素液は、ギンセノシドF2の3位のグリコシル基をさらに1個のグリコシル基で伸長させてギンセノシドRdを生成することができたが、サポニンRh2を触媒することができなかった(
図46)。
【0286】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。