(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プローブがX軸方向に1ライン分走査された後にY軸方向に走査位置に走査される場合、前記反射波減衰手段は、前記突起物のうちの少なくとも一つが映像取得対象である被検体のY軸方向の始点位置より外側にあり、前記突起物のうちの少なくとも一つが前記被検体のY軸方向の終点位置より外側にある
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波映像システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、反射波減衰手段30を有する超音波映像システム100の構成を示す外観図である。
図1において、符号1はX,Y,Zの直交3軸の座標系を示している。超音波映像システム100は、超音波映像装置90と、水槽10とを含んで構成されている。
【0012】
超音波映像装置90は、超音波の送受信を行う超音波プローブ20と、当該超音波映像装置90を統括制御して超音波映像を表示する映像表示装置50と、超音波プローブ20との間で電気信号を入出力する送受信装置60(
図4参照)と、超音波プローブ20を機械的に走査するX軸スキャナ71及びY軸スキャナ72と、X軸スキャナ71及びY軸スキャナ72を制御するメカ制御装置77(
図4参照)とを備えている。超音波プローブ20は、X軸スキャナ71及びY軸スキャナ72に支えられて、水槽10に満たされた水11に浸漬され、被検体15に対向するように配置される。なお、超音波プローブ20のZ軸スキャナは省略してある。
【0013】
水槽10内には水11が注入されており、当該水11中に被検体15が水没状態で置かれている。水槽10内の水11は、超音波プローブ20(超音波探触子)の下端の開口面から放射された超音波を、被検体15の内部に効率良く伝播させるために必要な伝播媒体である液状物質である。被検体15は、例えばウエハ、多層構造(または積層構造)等を含む半導体パッケージである。
【0014】
超音波プローブ20はホルダ73で支持されて設置されている。ホルダ73はX軸スキャナ71に取り付けられている。超音波プローブ20は、水槽10に満たされた水11に浸漬され、被検体120の上部Z方向に所定の距離を於いて対向するように配置されている。
【0015】
アーム状のX軸スキャナ71はホルダ18をX軸方向に移動させ、Y軸スキャナ72はX軸スキャナ71をY軸方向に移動させる機能を有している。X軸スキャナ71とY軸スキャナ72によってスキャナ装置70が構成される。当該スキャナ装置70によって超音波プローブ20をXY方向に自在に移動させることができる。この移動動作に基づいて、超音波プローブ20は被検体15の表面における予め定められた測定範囲を走査し、超音波を送信し、測定範囲内において予め設定された複数の測定点で反射エコー波を受信し、当該測定範囲に含まれる内部構造の欠陥を映像化して検査することができる。超音波プローブ20はケーブル23を介して送受信装置60(
図4参照)と接続されている。
【0016】
本実施形態の超音波映像システム100は、水槽10のX軸方向の両端に、超音波映像装置90の超音波プローブ20を走査した際に生じる水11(液状物質)の波が、水槽10の端部で反射する反射波を減衰させる反射波減衰手段30が配設されているのが特徴である。反射波減衰手段30は、空隙位置変更手段40により、水槽10のX軸方向の量異端に配設されている。空隙位置変更手段40は、
図2を参照して後記する。反射波減衰手段30の詳細については、
図5〜
図14を参照して後記する。
【0017】
本発明者らは、昨今のパネルレベルパッケージング(PLP)のように、被検体15として約600mm角の大きな被検体15について検討した。このような大型の被検体15を、例えば、2000mm/秒の高速で超音波プローブ20をX軸方向に往復スキャンした際に、水の波打ちの課題があることをわかった。本実施形態の反射波減衰手段30は、このように大きな被検体であっても波の合成波の影響を抑制するという課題を解決するためになされたものである。なお、PLPは、シリコン基板ではなく、液晶製造で使いなれたガラスパネルを用いて低コスト化を図るものである。
【0018】
図2は、空隙位置変更手段40の構成を示す説明図であり、(a)は、反射波減衰手段の配設する方法を示す図であり、(b)空隙位置変更手段の側面図である。
図2(a)に示す反射波減衰手段30は、多数の突起32を有する方形状かつ格子状であるベース31で形成されている。水槽10のX方向の端部には、反射波減衰手段30をX軸方向の両側内壁面との空隙位置を変化して配設する挿入溝41を有する空隙位置変更手段40が配設される。
図2(a)の場合、挿入溝41は、例えば、5か所ある。この挿入溝41への挿入位置を変更することにより、反射波減衰手段30と水槽の壁面との位置を変更することができる。また、空隙位置変更手段40の下端は、Z軸方向に位置決めすることができる下端部45を有している。反射波減衰手段30Aは、
図2(a)に示すように下端部45で係止される。また、空隙位置変更手段40は、
図2(b)に示すように、水槽の端部に係止できるように、逆U字型の係止部42を有する。
【0019】
図2に示す例では、反射波減衰手段30は、空隙位置変更手段40の挿入溝41に対し1枚挿入した例を示したが、これに限定されるわけではない。例えば、挿入溝41の左側から3番目と、5番目にそれぞれ反射波減衰手段30を挿入してもよい。これにより、より、超音波プローブ20の移動速度が高速のときに発生する波打ちを効果的に抑制できる。
【0020】
図2の要点をまとめると、本実施形態の水槽10の端部には、反射波減衰手段30をX軸方向の両側内壁面との空隙位置を変化して配設する挿入溝41を有する空隙位置変更手段40が配設されている。また、挿入溝41は、反射波減衰手段30のベース31を挿入する幅を有し、空隙位置変更手段40は、挿入溝41を複数有することが特徴である。この挿入溝41への反射波減衰手段30の挿入位置を変更することにより、反射波減衰手段30と水槽の壁面との位置を変更することができる。
【0021】
図3は、水槽10内の反射波減衰手段40の配設位置を示す上面図である。水槽10は、4つの側面部と底面部で構成されている。水槽10内の試料載置台12の上に被検体15が配設されている。水槽10のX軸方向の左側の側面部10L、右側の側面部10Rには、空隙位置変更手段40が係止されている。
図3に示すように、左側の空隙位置変更手段40において、反射波減衰手段30が水槽10の左側の側面部10Lから3番目の挿入溝41に挿入されている。同様に、右側の空隙位置変更手段40において、反射波減衰手段30が水槽10の右側の側面部10Rから3番目の挿入溝41に挿入されている。
【0022】
超音波プローブ20(
図1参照)がX軸方向に1ライン分走査された後にY軸方向に走査位置に走査される場合、反射波減衰手段30は、突起32(突起物)のうちの少なくとも一つが映像取得対象である被検体15のY軸方向の始点位置16sより外側にあり、突起32(突起物)のうちの少なくとも一つが被検体15のY軸方向の終点位置16eより外側にあることが好ましい。これにより、被検体15のY軸方向の始点位置16sより外側およびY軸方向の終点位置16eより外側において、波打ちを抑制できる。
【0023】
反射波減衰手段30は、Y軸方向には、その一方端辺が少なくとも映像取得対象である被検体15のY軸方向の始点位置16sより外側にあり、かつ、他方端辺が少なくとも被検体15のY軸方向の終点位置16eより外側にあることが好ましい。これにより、被検体15のY軸方向の始点位置16sより外側およびY軸方向の終点位置16eより外側において、波打ちを抑制できる。
【0024】
図4は、超音波映像システムの制御系及び信号処理系の構成を示すブロック図である。超音波プローブ20は、当該超音波プローブ20の走査位置を検知するエンコーダ21と、電気信号と超音波信号とを相互に変換する圧電素子22とを備えている。圧電素子22は、単一焦点型の超音波センサである。
【0025】
映像表示装置50は、超音波プローブ20の走査位置を制御する走査制御部51と、超音波の周波数を制御する周波数制御部52と、超音波の送受信タイミングを制御するタイミング制御部53と、超音波画像を生成する画像生成部54とを備えている。
【0026】
送受信装置60は、バースト波の電気信号を生成するバースト波発信器61と、インパルス波の電気信号を生成するインパルス波発信器62と、スイッチ63と、超音波プローブ20が受信した受信信号を増幅するアンプ64と、当該受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するA/D変換器65と、当該受信信号を信号処理する信号処理部66とを備えている。
【0027】
走査制御部51は、メカ制御装置77と入出力可能に接続されている。走査制御部51は、メカ制御装置77とX軸スキャナ71とY軸スキャナ72によって超音波プローブ20の走査位置を制御すると共に、メカ制御装置77から超音波プローブ20の現在の走査位置情報を受信する。
【0028】
メカ制御装置77の出力側は、X軸スキャナ71及びY軸スキャナ72に接続されている。メカ制御装置77には、超音波プローブ20のエンコーダ21の出力側が接続されている。メカ制御装置77は、エンコーダ21の出力信号によって、超音波プローブ20の走査位置を検知し、X軸スキャナ71及びY軸スキャナ72によって、超音波プローブ20が指示された走査位置になるように制御する。メカ制御装置77は、走査制御部51から超音波プローブ20の制御指示を受けると共に、超音波プローブ20の走査位置情報を応答する。
【0029】
タイミング制御部53は、走査制御部51から取得した超音波プローブ20の走査位置情報に基づいて、送受信装置60に超音波の送受信タイミング信号(情報)を出力し、周波数制御部52に超音波の周波数情報を出力する。
【0030】
周波数制御部52は、タイミング制御部53が出力した超音波の周波数情報に基づいて、バースト波発信器61に所定の周波数のバースト波を所定パルス数だけ出力するように指示する。
【0031】
バースト波発信器61は、周波数制御部52が出力した信号に基づいて、圧電素子22に所定の周波数のバースト波を所定パルス数だけ出力するものである。インパルス波発信器62は、タイミング制御部53が出力したタイミング信号に基づいて、圧電素子22にインパルス波を出力するものである。スイッチ63は、タイミング制御部53の出力信号に基づいて、バースト波とインパルス波のいずれを圧電素子22に出力するかを切り替えるものである。
【0032】
圧電素子22は、圧電膜の両面にそれぞれ電極が取り付けられているものであり、酸化亜鉛(ZnO)、セラミックス、フッ素系共重合体等で構成される。圧電素子22は、両電極間に電圧が印加されることにより、当該圧電膜から超音波を送信する。さらに圧電素子22は、当該圧電膜が受信したエコー波(受信波)を、前記両電極間に発生する電圧である受信信号に変換する。アンプ64は、当該受信信号を増幅して出力信号Voutとして出力するものである。A/D変換器65は、増幅された当該受信信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換するものである。
【0033】
信号処理部66は、受信信号を信号処理するものである。信号処理部66は、タイミング制御部53が出力するゲートパルスVgateによって、受信信号の所定期間のみを切り出す。信号処理部66は、所定期間の受信信号の振幅情報、または、所定期間の受信信号の時間情報を、画像生成部54に出力する。画像生成部54は、信号処理部66の出力信号に基づいて、所定周波数に於ける超音波画像を生成するものである。
【0034】
(超音波映像装置の動作)
図4を参照しつつ、超音波映像装置90の一連の動作について説明する。
走査制御部51は、超音波プローブ20を+X方向にスキャンして1ライン分の画素を取得する。走査制御部51は、超音波プローブ20がX方向の端に位置していることを検知したならば、超音波プローブ20を+Y方向に所定ピッチだけ移動させたのち、−X方向にスキャンして、1ライン分の画像を取得する。これを繰り返して、走査制御部51は、所定範囲の走査を行う。
【0035】
映像表示装置50のタイミング制御部53は、走査制御部51から超音波プローブ20のX方向とY方向の走査位置情報を受け取り、Y方向の走査位置情報に基づいて周波数制御部52に周波数を指示し、X方向の走査位置情報に基づいて送受信装置60に超音波の送信を指示すると共に、受信信号を信号処理するためのゲートパルスVgateを出力する。
【0036】
送受信装置60は、バースト波発信器61が出力したバースト信号とインパルス波発信器62が出力したインパルス信号のいずれかをスイッチ63により切り替えて、超音波プローブ20に信号を出力する。さらに、送受信装置60は、超音波プローブ20が受信したエコー波(受信波)の受信信号を、アンプ64で増幅したのち、A/D変換器65によってデジタル信号に変換する。信号処理部66は、タイミング制御部53から入力されたゲートパルスVgateに基づいて、受信信号(デジタル信号)を信号処理し、映像表示装置50に出力する。
【0037】
映像表示装置50は、走査制御部51が取得した走査位置の情報を画素位置とし、送受信装置60が信号処理した受信信号の情報を画素の輝度情報として、被検体15の内部構造を画像化して表示する。被検体120の内部を示す超音波画像は、受信信号の振幅情報によるものでも、受信信号が所定振幅以上になる時間の情報によるものでもよい。
【0038】
以下、各種の反射波減衰手段30について説明する。
(実施例1)
図5は、実施例1に係る反射波減衰手段30Aを示す構造模式図であり、(a)は水槽10に配設した際の側面図であり、(b)は反射波減衰手段30Aの水槽10の壁に接する(向き合う)側からみた斜視図である。即ち、
図5(b)は、
図5(a)の側面部10R側(右側)の斜視図である。
図5(a)に示すように、水槽10の側面部10L,10Rから所定距離の位置に反射波減衰手段30Aが配設されている。
図5(b)に示すように、反射波減衰手段30Aは、多数の突起32を有する方形状かつ格子状であるベース31で形成されている。突起32は、樹脂材料等の柔らかい材料であり、例えば、PP(ポリプロピレン)、EPDM(エチレン-プロピレンゴム)、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)等の樹脂が好ましい。なお、突起32は、細線等の金属材料であってもよい。
【0039】
水槽10に貯めた液状物質11Aの中に試料載置台12を設置し、被検体15の上方で超音波プローブ20を高速で移動させると、水槽10中の液状物質表面に進行波が生じ、進行波は水槽内壁(例えば、側面部10L,10Rの内壁)に当たって反射波を生じる。超音波プローブ20をX軸方向に繰り返し往復動作させることにより、進行波と反射波が合成され、より大きな合成波を生じさせる。これにより、液状物質11Aの表面の変位が大きくなり、超音波プローブ20の先端が液状物質11Aから露出すると、超音波による被検体15の画像が取得できなくなる。また、水槽10の側面部の高さを超える合成波になると液状物質11Aが水槽10から溢れ、被検体15を静置させることも難しくなる。さらには、液状物質11A中に気泡を巻き込むことにより、超音波による画像取得を阻害する。
【0040】
このため、本実施例では、水槽10の側壁に反射波減衰手段30Aを配設することにより、超音波の伝播媒体である液状物質11Aの波の側面部10L,10R(端部)での反射波を抑制することができる。反射波減衰手段30Aは、貫通口を有したベース(例えば、格子状のベース31)に、先端が少し曲がった細い突起32を複数設けた構造とする。突起32を水槽10の側壁側に向け配設することにより、進行波が貫通口を設けたベースを通り、突起32で拡散させられることにより、反射波を抑制することができる。
【0041】
反射波減衰手段30Aは、鉛直方向(Z軸方向)に、突起32(突起物)のうちの少なくとも一つが水槽10内の液状物質11Aの表面より上側の高さ位置にあることが好ましい。また、反射波減衰手段30Aは、鉛直方向に、上方端辺30Auが少なくとも水槽10内の液状物質11Aの表面より上側の高さ位置であることが好ましい。これにより、液状物質11Aの表面より上側において、波打ちを抑制できる。
【0042】
反射波減衰手段30Aは、鉛直方向(Z軸方向)において、突起32(突起物)のうちの少なくとも一つが被検体の載置台の下側表面12dより下側の高さ位置であることが好ましい。また、反射波減衰手段30Aは、鉛直方向において、下方端辺30Adが少なくとも被検体15の試料載置台12の下側表面12dより下側の高さ位置であることが好ましい。これにより、液状物質11A内の被検体の載置台の下側表面12d付近での波打ちを抑制できる。
【0043】
実施例1の反射波減衰手段30Aは、方形状かつ板状であるベース(例えば、ベース31)と該ベースの片面に配設された複数の突起物(例えば、突起32)とを含んでおり、ベースには流路となる複数の開口を有し、突起物を水槽10の端部側(側面部側)に向けて配設されていることが特徴である。
【0044】
(実施例2)
図6は、実施例2に係る反射波減衰手段30Bを示す構造模式図であり、(a)は水槽10に配設した際の側面図であり、(b)は反射波減衰手段30Bの水槽10の壁に接する(向き合う)側からみた分解斜視図である。即ち、
図6(b)は、
図6(a)の側面部10R側(右側)の分解斜視図である。
図6(a)に示すように、水槽10の側面部10L,10Rから間隔dだけ離した位置に反射波減衰手段30Bが配設されている。反射波減衰手段30Bは、方形状かつ板状の第1ベース30B1と、方形状かつ板状の第2ベース30B2とを貼り合わせた構造である。
図6(b)に示すように、第1ベース10B1は、貫通口33を複数有し、第2ベース30B2は、第1ベース30B1の貫通口33の開口率より小さい貫通口34を複数有する。
【0045】
言い換えると、反射波減衰手段30Bは、貫通口を設けた板(第1ベース30B1)に開口率の異なる板(第2ベース30B2)を貼り合せた構造である。水槽10内の超音波プローブ20を中心とした内側には、開口率の大きな貫通口33を設けた板を配し、その外側には開口率の小さな貫通口34を設けた板を配するものとする。被検体15の上方で超音波プローブ20を高速で移動させると、水槽10中の液状物質表面に進行波が生じる。進行波は開口率の大きな貫通口33を設けた板を通り、開口率の小さな貫通口34を設けた板で進行波が減衰させられる。また、開口率の小さな貫通口34を設けた板を通り抜けた進行波は、水槽10の側壁で反射するが、波のエネルギーが減衰しているため、開口率の小さな貫通口34を設けた板を通ることができない。なお、この形態の反射波減衰手段30Bは、水槽10の側壁から間隔dを設けて設置すると効果が高いが、進行波の大きさや開口率等により決める必要があり、一義的に決定できる寸法ではない。
【0046】
実施例2の反射波減衰手段30Bは、方形状かつ板状の第1ベース及び第2ベースとが接合されており、第1ベースには、流路となる貫通口33(第1開口)が複数有し、第2ベースには、流路となる貫通口34(第2開口)が複数有する。第2開口の開口率は、第1開口の開口率より小さく、第2ベース側を、前記水槽の端部側に向けて配設されていることが特徴である。
【0047】
(実施例3)
図7は、実施例3に係る反射波減衰手段30Cを示す構造模式図であり、(a)は水槽10に配設した際の側面図であり、(b)は反射波減衰手段30Cの水槽10の壁に接する(向き合う)側とは反対方向からみた斜視図である。即ち、
図7(b)は、
図7(a)の側面部10L側(左側)の斜視図である。
図7(a)に示すように、水槽10の側面部10L,10Rに、複数の突起32Cを有する反射波減衰手段30Cが配設されている。
図7(b)に示すように、反射波減衰手段30Cは、方形状かつ板状のベース31Cに、断面(XZ平面上の断面)が三角状でY軸方向に長い突起32Cを複数有する。
【0048】
被検体15の上方で超音波プローブ20を高速で移動させると、水槽10中の液状物質11Aの表面に進行波が生じる。進行波は、反射波減衰手段30Cの突起32Cにより、反射波の方向を変更させられる。これにより、進行波と反射波が合成し、より大きな進行波となることを抑制することができる。
【0049】
実施例3の反射波減衰手段30Cは、方形状かつ板状のベース(例えば、ベース31C)と該ベースの片面に配設された複数の突起物(例えば、突起32C)とを含んでおり、突起物を超音波プローブ20側に向けて配設されていることが特徴である。なお、突起32Cの断面は三角状となっているが、半円状、半楕円状等であってもよい。
【0050】
(実施例4)
図8は、実施例4に係る反射波減衰手段30Dを示す構造模式図であり、(a)は水槽10に配設した際の側面図であり、(b)は反射波減衰手段30Dの水槽10の壁に接する(向き合う)側とは反対方向からみた斜視図である。即ち、
図8(b)は、
図8(a)の側面部10L側(左側)の斜視図である。
図8(a)に示すように、水槽10の側面部10L,10Rに、複数の突起32Dを有する反射波減衰手段30Dが配設されている。
図8(b)に示すように、反射波減衰手段30Dは、方形状かつ板状のベース31Dに、断面(XZ平面上の断面)が三角状でY軸方向に長い突起32Dを複数有する。実施例4は、実施例3と異なり、突起32Dが上方(Z軸の負側の方向)に向かって、大きくなっている。
【0051】
即ち、反射波減衰手段30Dは、突起32Dを、上方に向けて徐々に大きくなるように配設した構造としている。被検体15の上方で超音波プローブ20を高速で移動させると、水槽10中の液状物質11Aの表面に進行波が生じる。進行波の振幅は、進行波の大きさに比例するため、上方に向けて突起物を大きくすることにより、効果的に反射波の方向を変更することができる。
【0052】
実施例4の反射波減衰手段30Dは、方形状かつ板状のベース(例えば、ベース31D)と該ベースの片面に配設された複数の突起物(例えば、突起32D)とを含んでおり、突起物を超音波プローブ20側に向けて配設されている。突起物は、上方に向けて徐々に大きくなることが特徴である。なお、突起32Cの断面は三角状となっているが、半円状、半楕円状等であってもよい。
【0053】
(実施例5)
図9は、実施例5に係る反射波減衰手段30Eを示す構造模式図であり、(a)は水槽10に配設した際の側面図であり、(b)は反射波減衰手段30Eの水槽10の壁に接する(向き合う)側とは反対方向からみた斜視図である。即ち、
図9(b)は、
図9(a)の側面部10L側(左側)の斜視図である。
図9(a)に示すように、水槽10の側面部10L,10Rに、複数の突起32Eを有する反射波減衰手段30Eが配設されている。
図9(b)に示すように、反射波減衰手段30Eは、方形状かつ格子状のベース31Eに、断面(XZ平面上の断面)が三角状でY軸方向に長い突起32Eを複数有する。突起32Eは、上下方向(Z軸の正負方向)において所定の間隔をおいてベース31Eに配設されており、その所定の間隔が波の貫通口となる。
【0054】
即ち、反射波減衰手段30Eは、貫通口を設けた板(例えば、ベース31E)は超音波プローブ20を中心とした内側に向け、突起32Eは水槽10の側壁面に向け、間隔dで配設する構造とする。被検体15の上方で超音波プローブ20を高速で移動させると、水槽10中の液状物質11Aの表面に進行波が生じる。進行波が貫通口を設けた板を通り、水槽10の側壁で反射した後、突起32Eにより反射波の方向が変更させられることにより、反射波を抑制することができる。
【0055】
実施例5の反射波減衰手段30Eは、方形状かつ板状であるベース(例えば、ベース31E)と該ベースの片面に配設された複数の突起物(例えば、突起32E)とを含んでおり、ベースには流路となる複数の開口を有し、突起物を水槽10の端部側に向けて配設されている。なお、突起32Eの断面は三角状となっているが、半円状、半楕円状等であってもよい。
【0056】
(実施例6)
図10は、実施例6に係る反射波減衰手段30Fを示す構造模式図であり、(a)は水槽10に配設した際の側面図であり、(b)は反射波減衰手段30Fの水槽10の壁に接する(向き合う)側とは反対方向からみた斜視図である。即ち、
図10(b)は、
図10(a)の側面部10L側(左側)の斜視図である。
図10(a)に示すように、水槽10の側面部10L,10Rに、複数の平板状の突起32Fを有する反射波減衰手段30Fが配設されている。
図10(b)に示すように、反射波減衰手段30Fは、方形状かつ板状のベース31Fに、断面(XZ平面上の断面)が方形状でY軸方向に長い突起32Fを複数有する。平板状の突起32Fには、小さな穴35が複数有している。
【0057】
被検体15の上方で超音波プローブ20を高速で移動させると、水槽10中の液状物質11Aの表面に進行波が生じる。進行波は、反射波減衰手段30Fの突起32Fにより、反射波の方向を変更させられる。これにより、進行波と反射波が合成し、より大きな進行波となることを抑制することができる。また、上下方向(Z軸の正負方向)に変更された波は、平板に開けられた小さな穴35を通過することにより、波のエネルギーを減衰させることができる。
【0058】
実施例6の反射波減衰手段30Fは、方形状かつ板状のベース(例えば、ベース31F)と該ベースの片面に配設された複数の突起物(例えば、突起32F)とを含んでおり、突起物を超音波プローブ20側に向けて配設されている。突起32Fは、Y軸方向に対し平板状となっているのが特徴である。
【0059】
(実施例7)
図11は、実施例7に係る反射波減衰手段30Gを示す構造模式図であり、(a)は水槽10に配設した際の側面図であり、(b)は反射波減衰手段30Gの水槽10の壁に接する(向き合う)側とは反対方向からみた斜視図である。即ち、
図11(b)は、
図11(a)の側面部10L側(左側)の斜視図である。
図11(a)に示すように、水槽10の側面部10L,10Rに、複数の平板状の突起32Gを有する反射波減衰手段30Gが配設されている。
図11(b)に示すように、反射波減衰手段30Gは、方形状かつ板状のベース31Gに、断面(XZ平面上の断面)が方形状でY軸方向に長い突起32Gを複数有する。平板状の突起32Gには、小さな穴35が複数有している。
【0060】
即ち、反射波減衰手段30Gは、突起32Gを、上方に向けて徐々に大きくなるように配設した構造としている。被検体15の上方で超音波プローブ20を高速で移動させると、水槽10中の液状物質11Aの表面に進行波が生じる。進行波の振幅は、進行波の大きさに比例するため、上方に向けて突起物を大きくすることにより、効果的に反射波の方向を変更することができる。
【0061】
実施例7の反射波減衰手段30Gは、方形状かつ板状のベース(例えば、ベース31G)と該ベースの片面に配設された複数の突起物(例えば、突起32G)とを含んでおり、突起物を超音波プローブ20側に向けて配設されている。突起物は、上方に向けて徐々に大きくなることが特徴である。
【0062】
(実施例8)
図12は、実施例8に係る水槽側壁頂部返し手段37を示す構造模式図であり、(a)は水槽10に配設した際の側面図であり、(b)は水槽側壁頂部返し手段37の水槽10の壁に接する(向き合う)側とは反対方向からみた斜視図である。即ち、
図12(b)は、
図12(a)の側面部10L側(左側)の斜視図である。
図12(a)に示すように、水槽10の側面部10L,10Rに、水槽側壁頂部返し手段37が配設されている。水槽側壁頂部返し手段37は、断面(XZ平面上の断面)がL字形状の頂部返し部37aと、頂部返し部37aを側面部に係合させる係合部37bとを含んで構成される。
図12(b)に示すように、水槽側壁頂部返し手段37は、Y軸方向に長い形状である。なお、頂部返し部37aと係合部37bとは、一体成形してもよい。
【0063】
水槽10に貯めた液状物質11Aの中に試料載置台12を設置し、被検体15の上方で超音波プローブ20を高速で移動させると、水槽10中の液状物質表面に進行波が生じ、進行波は水槽内壁(例えば、側面部10L,10Rの内壁)に当たって反射波を生じる。超音波プローブ20をX軸方向に繰り返し往復動作させることにより、進行波と反射波が合成され、より大きな合成波を生じさせる。これにより、液状物質11Aの表面の変位が大きくなり、超音波プローブ20の先端が液状物質11Aから露出すると、超音波による被検体15の画像が取得できなくなる。また、水槽10の側面部の高さを超える合成波になると液状物質11Aが水槽10から溢れ、被検体15を静置させることも難しくなる。さらには、液状物質11A中に気泡を巻き込むことにより、超音波による画像取得を阻害する。
【0064】
このため、本実施例では、水槽10の側壁に、水槽側壁頂部返し手段37を配設することにより、超音波の伝播媒体である液状物質11Aの波の側面部10L,10R(端部)での反射波を抑制することができる。水槽側壁頂部返し手段37は、断面がL字形状の頂部返し部37aを有しているため、反射波が頂部返し部37aが障害となり、反射波を抑制することができる。
【0065】
以上実施例1〜8において、超音波映像装置90が反射法である場合について説明したが、これに限定されるわけではない。例えば、超音波映像装置90が透過法であってもよい。
【0066】
図13は、透過法の超音波映像装置の構成を示す図である。被検体15は、検査対象ホルダ17に載置され、第1超音波探触部81(上方プローブ)と第2超音波探触部82(下方プローブ)との間に配置される。検査対象ホルダ17は、超音波を透過する材料、例えば、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のプラスチック材料、アクリル樹脂、等により構成される。
【0067】
取り付け部品85は、X軸走査部80及び第1のZ軸走査部83を固定し、取り付け部品86は、X軸走査部80及び第2のZ軸走査部84を固定する。取り付け部品85と取り付け部品86とは、互いにネジ等の締結具により一体化されている。プローブホルダ87は、第1超音波探触部81を固定するためのホルダであり、第1のZ軸走査部83を介して±Z軸方向に駆動可能である。L字金具88は、第2超音波探触部82を固定するための金具であり、第2のZ軸走査部84を介して±Z軸方向に駆動可能である。
【0068】
X軸走査部80が、X方向に駆動することで、第1超音波探触部81及び第2超音波探触部82は共に±X方向に駆動する。Y軸走査部(図示せず)が、Y軸方向に駆動することで、第1超音波探触部81及び第2超音波探触部82は共に±Y方向に駆動する。つまり、±X方向、±Y方向において、第2超音波探触部82は、第1超音波探触部81に追従して駆動する。
【0069】
一方、第1のZ軸走査部83が、Z軸方向に駆動することで、第1超音波探触部81は±Z方向に駆動し、第2のZ軸走査部84が、Z軸方向に駆動することで、第2超音波探触部2は±Z方向に駆動する。つまり、±Z方向において、第1超音波探触部81と第2超音波探触部82とは、独立して駆動可能である。
【0070】
図14は、透過法の超音波映像装置に、実施例1に係る反射波減衰手段を適用した場合を示す説明図である。実施例1と同様に、水槽10の側面部10L,10Rから所定距離の位置に反射波減衰手段30Aが配設されている。反射波減衰手段30Aは、多数の突起32を有する方形状かつ格子状であるベース31で形成されている。突起32は、樹脂材料等の柔らかい材料であり、例えば、PP(ポリプロピレン)、EPDM(エチレン-プロピレンゴム)、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)等の樹脂が好ましい。
【0071】
反射波減衰手段30Aは、鉛直方向(Z軸方向)において、突起32(突起物)のうちの少なくとも一つが第2超音波探触部82(下側プローブ部)の下端部82Lより下側の高さ位置まであることが好ましい。これにより、液状物質11A内の、下端部82L付近の波打ちを抑制できる。
【0072】
反射波減衰手段30Aは、鉛直方向(Z軸方向)において、下方端辺30Adが少なくとも第2超音波探触部82(下側プローブ)の下端部82Lより下側の高さ位置であることが好ましい。これにより、液状物質11A内の、下端部82L付近の波打ちを抑制できる。
【0073】
水槽10に貯めた液状物質11Aの中に検査対象ホルダ17を設置し、被検体15の上方及び下方で、第1超音波探触部81(上方プローブ)と第2超音波探触部82(下方プローブ)を高速で移動させると、水槽10中の液状物質11Aの表面に進行波が生じるとともに、液状物質11A内においても進行波が生じる。
【0074】
このため、
図14に示す実施例では、水槽10の側壁に反射波減衰手段30Aを配設することにより、超音波の伝播媒体である液状物質11Aの波の側面部10L,10R(端部)での反射波を抑制することができる。反射波減衰手段30Aは、貫通口を有したベース(例えば、格子状のベース31)に、先端が少し曲がった細い突起32を複数設けた構造とする。突起32を水槽10の側壁側に向け配設することにより、進行波が貫通口を設けたベースを通り、突起32で拡散させられることにより、反射波を抑制することができる。
【0075】
なお、
図14においては、実施例1の反射波減衰手段30A(
図5参照)の例について説明したが、これに限定されない。実施例2〜7の反射波減衰手段30、及び、実施例8の水槽側壁頂部返し手段37についても適用することができる。
【0076】
本実施形態の超音波映像システム100は、超音波映像装置90と、水槽10とを備え、水槽10の端部において、超音波映像装置90の超音波プローブ20を走査した場合に生じる超音波の伝播媒体である液状物質の波の端部での反射波を減衰させる反射波減衰手段30が配設されている。反射波減衰手段30は、複数の突起32(突起物)を有し、超音波映像装置90の超音波プローブ20をX軸方向に走査した際に、X軸方向の水槽10の両端部に、反射波減衰手段30が配設されている。これにより、超音波プローブ20を高速に移動したときであっても波打ちを抑制することができる。
【0077】
また、他の効果として、試料載置台12を水の中に沈めるときに流入する水の勢いを軽減することができる。
【0078】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、突起32を樹脂であることが好ましいとしたが、ステンレス等の金属であってもよい。ステンレスは、耐水性を有している。また、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【解決手段】超音波映像システムは、超音波映像装置と、水槽10とを備え、水槽10の端部において、超音波映像装置の超音波プローブ20を走査した際に生じる超音波の伝播媒体である液状物質の波の端部での反射波を減衰させる反射波減衰手段30が配設されている。反射波減衰手段30は、複数の突起32を有し、超音波映像装置の超音波プローブ20をX軸方向に走査した際に、X軸方向の水槽10の両端部に、反射波減衰手段30が配設されている。