(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479257
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】CVT型トランスミッション、およびCVT型トランスミッションを備える車両
(51)【国際特許分類】
F16H 9/18 20060101AFI20190225BHJP
F16H 61/32 20060101ALI20190225BHJP
B60K 17/06 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
F16H9/18 Z
F16H61/32
B60K17/06 A
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-505644(P2018-505644)
(86)(22)【出願日】2016年6月13日
(65)【公表番号】特表2018-523075(P2018-523075A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016063503
(87)【国際公開番号】WO2017021037
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2018年2月2日
(31)【優先権主張番号】102015214840.8
(32)【優先日】2015年8月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イアニスラフ クラステフ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シュヴァーツ
(72)【発明者】
【氏名】インゴ ドレーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ アイダム
(72)【発明者】
【氏名】ミハイロ クリメンコ
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0100944(US,A1)
【文献】
実開平2−85063(JP,U)
【文献】
特開2014−196775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/18
B60K 17/06
F16H 61/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CVT型トランスミッションであって、
軸方向で不動の円錐シーブ(20)と、軸方向で可動の円錐シーブ(21)とを有する円錐シーブ対(2)と、
前記軸方向で可動の円錐シーブ(21)に回動不能にかつ並進に関して連結された状態で結合された、軸方向で移動可能なインナスリーブ(53)と、
前記インナスリーブ(53)に対して同軸に配置され、前記インナスリーブ(53)に並進に関して連結され、かつ前記インナスリーブ(53)から回転に関して連結解除された、軸方向で移動可能なアウタスリーブ(54)と、
を備え、
前記アウタスリーブ(54)は、収容マンドレル(8)を有し、前記収容マンドレル(8)は、前記軸方向で可動の円錐シーブ(21)の軸方向の位置を調節する、回動不能であって並進するねじ山付きスピンドル(7)の端部(7a)を、前記アウタスリーブ(54)に回動不能に並進に関して連結すべく収容するように構成されている、
CVT型トランスミッション。
【請求項2】
前記アウタスリーブ(54)は、前記円錐シーブ対(2)の回転軸線(X−X)に関して略回転対称に形成されており、かつ
前記収容マンドレル(8)は、前記回転軸線(X−X)上に配置されている、
請求項1記載のCVT型トランスミッション。
【請求項3】
前記アウタスリーブ(54)は、ハウジングジャケット(54a)と、少なくとも第1のハウジング端面(54b)とを有し、かつ
前記収容マンドレル(8)は、前記第1のハウジング端面(54b)から一体の形態で延在している、
請求項1または2記載のCVT型トランスミッション。
【請求項4】
前記収容マンドレル(8)は、前記第1のハウジング端面(54b)から、材料について一体の形態で延在している、
請求項3記載のCVT型トランスミッション。
【請求項5】
前記ハウジングジャケット(54a)は、少なくとも1つの貫通部(57,58)を有し、かつ
前記少なくとも1つの貫通部(57,58)は、前記CVT型トランスミッション(1)が組み立てられた状態において、キックスタータ(60)の少なくとも1つの要素を収容し、前記収容マンドレル(8)に支持および/または保持するように構成されている、
請求項3または4記載のCVT型トランスミッション。
【請求項6】
前記要素は、キックスタータ伝動機構(62)の双歯車(67)である、
請求項5記載のCVT型トランスミッション。
【請求項7】
前記ハウジングジャケット(54a)は、大径の直径(d1)の第1の領域(54−1)と、小径の直径(d2)の第2の領域(54−2)とを有するベル形状を有する、
請求項3から6までのいずれか1項記載のCVT型トランスミッション。
【請求項8】
前記第1の領域(54−1)は、前記インナスリーブ(53)側にあり、前記インナスリーブ(53)と連結すべく構成されており、かつ/または前記第2の領域は、前記収容マンドレル(8)を有する前記第1のハウジング端面(54b)を有する、
請求項7記載のCVT型トランスミッション。
【請求項9】
前記アウタスリーブ(54)、前記収容マンドレル(8)および前記ねじ山付きスピンドル(7)は、互いに材料について一体に形成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載のCVT型トランスミッション。
【請求項10】
前記軸方向で可動の円錐シーブ(21)の軸方向の位置を調節する作動装置(5)を備え、
前記作動装置(5)は、前記ねじ山付きスピンドル(7)を介して前記アウタスリーブ(54)に接続されており、
前記作動装置(5)は、スピンドルナットを有し、前記スピンドルナットは、並進に関して不動であり、前記ねじ山付きスピンドル(7)と係合し、回転駆動可能であり、かつ
前記作動装置(5)は、作動駆動装置(50)を有し、運転中、前記スピンドルナット、前記ねじ山付きスピンドル(7)および前記収容マンドレル(8)の協働を介して前記作動駆動装置(50)内の回転が、前記ねじ山付きスピンドル(7)および前記軸方向で可動の円錐シーブ(21)の並進的な軸方向運動に変換可能であるように構成されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載のCVT型トランスミッション。
【請求項11】
前記円錐シーブ対(2)における変速比変更を達成すべく、前記作動装置(5)を操作するように構成された制御ユニット(6)を備える、
請求項10記載のCVT型トランスミッション。
【請求項12】
前記アウタスリーブ(54)を支持し、回動不能に保持するように構成されたトルク支持部(9)を備える、
請求項1から11までのいずれか1項記載のCVT型トランスミッション。
【請求項13】
収容部(14b)を有する伝動機構ハウジング(14)を備え、
前記アウタスリーブ(54)は、前記アウタスリーブ(54)の第1のハウジング端面(54b)でもって前記伝動機構ハウジング(14)の前記収容部(14b)内に収容されており、かつ
前記第1のハウジング端面(54b)の形状と、前記収容部(14b)の形状とは、回転対称でなく、少なくとも部分的に互いに相補的であるので、
前記第1のハウジング端面(54b)と、前記伝動機構ハウジング(14)の前記収容部(14b)とが、周方向で互いに係合することによって、前記トルク支持部(9)が実現される、
請求項12記載のCVT型トランスミッション。
【請求項14】
前記軸方向で可動の円錐シーブ(21)に可動に配置された少なくとも1つの遠心要素(3)と、
前記軸方向で可動の円錐シーブ(21)に配置され、駆動軸またはクランク軸(11)に結合された支持要素(4)と、
を備え、
前記遠心要素(3)は、前記支持要素(4)と、前記軸方向で可動の円錐シーブ(21)の背壁(22)との間に配置されている、
請求項1から13までのいずれか1項記載のCVT型トランスミッション。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載のCVT型トランスミッション(1)を備える、車両(100)。
【請求項16】
前記車両(100)は、小型車両である、請求項15記載の車両(100)。
【請求項17】
前記車両(100)は、二輪、三輪、スノーモービル、またはクアッドである、請求項15記載の車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、CVT型トランスミッション(CVT−Getriebe)、およびCVT型トランスミッションを備える車両に関する。本発明は、特に、能動的にかつ遠心力によらずにCVT型トランスミッションのトランスミッション変速比を調節する装置に関する。
【0002】
CVT型トランスミッション(CVT:(英)Continuously variable transmission/(独)Getriebe mit stufenlos variabler Uebersetzung)は、従来技術において様々な構成で公知である。この連続可変トランスミッションに基づき、車両において、固定されたギヤ段を備えるトランスミッションと比較して、そのときそのときで好適な変速比が、達成され得る。この種のCVT型トランスミッション、特に遠心制御式のCVT型トランスミッションの特別な適用分野は、小型車両、例えば二輪、三輪、いわゆるトゥクトゥク、スノーモービル、クアッドまたはスクータである。
【0003】
この種のCVT型トランスミッションでは、一方の円錐シーブ対における駆動ベルトの位置を調節するのに、機械式の遠心制御器が使用されることがよくある。この種の機械式の遠心制御器は、CVT型トランスミッションの一次側に存在する。一次側は、直接クランク軸上にある。二次側は、一次側とモーメントおよび力の均衡関係にある。一次側および二次側は、例えば出力伝達手段としての駆動ベルトにより連結されている。負荷および回転数に応じて、機械式の遠心制御器の遠心ウェイトは、その半径方向の位置を変え、これにより、円錐形に設計され、対向する2つのベルトシーブ(円錐シーブともいう)の軸方向の間隔を変更する。これにより駆動ベルトは、シーブ間隔によって決まる半径上を走行するように強制される。
【0004】
つまり、回転数に依存して、遠心制御器の遠心ウェイトは、その半径方向の位置を変え、これにより円錐シーブ間の軸方向の間隔は、変更される。これによりトランスミッションの変速比は、変更される。
【0005】
しかし、この種のアッセンブリの1つの欠点は、CVT型トランスミッションの一次のトランスミッション変速比に開ループ制御あるいは閉ループ制御により介入することが不可能であることである。これにより、遠心制御器を備えるCVT型トランスミッションは、従来技術では、一般に最適な点で運転されないため、車両の燃費および/またはエミッションは悪化してしまう。ゆえに、遠心制御式のCVT型トランスミッションにおけるこの潜在的可能性を利用し、燃料削減およびエミッション削減の可能性を得ることが望まれる。
【0006】
さらに、遠心制御式のCVT型トランスミッションは、車両動特性についても最適な構成を有しない。特に停止状態からの車両の加速時や、走行中、例えば第1の速度から第2の速度への弾性中の車両の加速時、遠心制御式のCVT型トランスミッションの変速比が最適に選択されていないことに基づいて、なおもかなりの改善の余地がある。
【0007】
さらに、運転者と、制御ユニットと、トランスミッション変速比との間に、直接的な結び付きが存在しない。つまり、運転者による能動的な変速比選択は、不可能である。変速比の変更は、これまで、CVT型トランスミッションの機械的な構造および特徴によって決まっていた。
【0008】
発明の開示
これに対し、請求項1の特徴を備える本発明に係るCVT型トランスミッションは、本発明により、CVT型トランスミッションの変速比を能動的にかつ遠心力によらずに調節することが可能であるという利点を有する。この利点は、本発明により、CVT型トランスミッションであって、軸方向で不動の円錐シーブと、軸方向で可動の円錐シーブとを有する円錐シーブ対と、軸方向で可動の円錐シーブに回動不能にかつ並進に関して連結された状態で結合された、軸方向で移動可能なインナスリーブと、インナスリーブに対して同軸に配置され、インナスリーブに並進に関して連結され、かつインナスリーブから回転に関して連結解除された、軸方向で移動可能なアウタスリーブと、を備え、アウタスリーブは、収容マンドレルを有し、収容マンドレルは、軸方向で可動の円錐シーブの軸方向の位置を調節する、回動不能であって並進するねじ山付きスピンドルの端部を、アウタスリーブに回動不能に並進に関して連結すべく収容するように構成されている、CVT型トランスミッションを提案することによって、達成される。
【0009】
この手段により、CVT型トランスミッションのトランスミッション変速比の能動的かつ遠心力によらない変更および調節が可能である。このことは、互いに並進に関して連結され、かつ回転に関して連結解除されたインナスリーブおよびアウタスリーブが、回動不能であって並進するねじ山付きスピンドルであって、アウタスリーブに回動不能にかつ並進に関して連結されたねじ山付きスピンドルを介して、共通の回転軸線に沿ってその軸方向の位置を調節できることによって、達成される。軸方向で可動の円錐シーブとの連結を介して、この円錐シーブの、回転軸線上の位置も、能動的にかつ遠心力によらずに調節可能である。
【0010】
従属請求項は、本発明の好ましい形態を示している。
【0011】
好ましくは、アウタスリーブは、円錐シーブ対の回転軸線に関して略回転対称に形成されており、かつ収容マンドレルは、この回転軸線上に配置されている。アウタスリーブの回転対称性と、円錐シーブ対の回転軸線上での収容マンドレルの配置とは、本発明に係るCVT型トランスミッションの特にコンパクトな構造形式を実現する。
【0012】
別の好ましい一実施の形態では、アウタスリーブは、ハウジングジャケットと、少なくとも第1のハウジング端面とを有し、かつ収容マンドレルは、第1のハウジング端面から、特に材料について一体の形態で延在している。この手段により、互いに組み合わされ、互いに取り付けられねばならない構成要素が特に少数で済むため、生産および組み立てに関する利点が生じる。
【0013】
本発明に係るCVT型トランスミッションの別の有利な一実施の形態において、ハウジングジャケットは、少なくとも1つの貫通部を有する。この少なくとも1つの貫通部は、CVT型トランスミッションが組み立てられた状態において、キックスタータ、すなわち、足で操作可能なスタート装置の少なくとも1つの要素、特にキックスタータ伝動機構の双歯車を収容し、収容マンドレルに支持および/または保持するように構成されている。この手段により、一般的なキックスタート機構が特に簡単に本発明に係るCVT型トランスミッションに統合される。
【0014】
別の一実施の形態において、ハウジングジャケットは、大径の直径の第1の領域と、小径の直径の第2の領域とを有するベル形状を有し、特に第1の領域は、インナスリーブ側にあり、インナスリーブと連結すべく構成されており、かつ/または第2の領域は、収容マンドレルを有するハウジング端面を有する。アウタスリーブのハウジングジャケットのベル形状により、アウタスリーブの第1の領域がインナスリーブの一部を取り囲む可能性が生じ、その結果、インナスリーブとアウタスリーブとの入れ子式の構造により、占有されるスペースが特に小さく済むため、この手段も、特にコンパクトな構造形態を可能にする。
【0015】
本発明に係るCVT型トランスミッションは、ねじ山付きスピンドルを構成要素として備えることができ、ねじ山付きスピンドルは、特に材料について一体化して構成することが可能である。この手段により、CVT型トランスミッションの製造時および組み立て時の手間が減じられるので、さらなる生産技術的かつ組み立て技術的な利点が得られる。
【0016】
CVT型トランスミッションの別の一実施の形態によれば、CVT型トランスミッションは、軸方向で可動の円錐シーブの軸方向の位置を調節する作動装置を備えて形成されており、作動装置は、ねじ山付きスピンドルを介してアウタスリーブに接続されており、作動装置は、スピンドルナットを有し、スピンドルナットは、並進に関して不動であり、ねじ山付きスピンドルと係合し、回転駆動可能であり、かつ作動装置は、作動駆動装置を有し、運転中、スピンドルナット、ねじ山付きスピンドルおよび収容マンドレルの協働を介して作動駆動装置内の回転が、ねじ山付きスピンドルおよび軸方向で可動の円錐シーブの並進的な軸方向運動に変換可能であるように構成されている。作動駆動装置を有する作動装置を設けたことで、円錐シーブ対のシーブの間隔を調節すべく、ねじ山付きスピンドルと収容マンドレルとに能動的に影響を及ぼすことが、制御された形で高い信頼性をもって可能となる。
【0017】
本発明に係るCVT型トランスミッションの別の一実施の形態において、アウタスリーブを支持し、回動不能に保持するように形成され、構成されたトルク支持部(Drehmomentstuetze)が設けられている。この手段により、本発明に係るCVT型トランスミッションの特に高い機能信頼性が得られる。
【0018】
別の有利な一実施の形態において、CVT型トランスミッションが、収容部を有する伝動機構ハウジングを備えて形成されており、アウタスリーブが、アウタスリーブの第1のハウジング端面でもって伝動機構ハウジングの収容部内に収容されており、かつ第1のハウジング端面の形状と、収容部の形状とが、回転対称でなく、少なくとも部分的に互いに相補的であるので、第1のハウジング端面と、伝動機構ハウジングの収容部とが、周方向で互いに係合することによって、トルク支持部が実現されるようになっていると、生産技術的かつ組み立て技術的な手間が特に少ないトルク支持部の特に簡単な設計が得られる。
【0019】
別の有利な一実施の形態において、CVT型トランスミッションが、円錐シーブ対における変速比変更を達成すべく、作動装置を操作するように構成された制御ユニットを備えて形成されていることにより、本発明に係るCVT型トランスミッションの運転信頼性は、さらに向上する。
【0020】
本発明により採られる手段は、それ自体は従来慣用の形式で構成されるCVT型トランスミッションであって、特に、軸方向で可動の円錐シーブに可動に配置された少なくとも1つの遠心要素と、軸方向で可動の円錐シーブに配置され、駆動軸またはクランク軸に結合された支持要素と、を備えて形成されており、遠心要素が、支持要素と、軸方向で可動の円錐シーブの背壁との間に配置されているCVT型トランスミッションにおいて講じられてもよい。
【0021】
さらに本発明は、本発明に係るCVT型トランスミッションを備え、特に小型車両、特に二輪、三輪、スノーモービル、クアッドまたはこれに類するものである車両に関する。
【0022】
添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係るCVT型トランスミッションの一実施の形態をスケルトン図の形で示す概略図である。
【
図2】本発明に係るCVT型トランスミッションの一実施の形態の断面図である。
【
図3】本発明に係るCVT型トランスミッションの一実施の形態の断面図である。
【
図4】本発明に係るCVT型トランスミッションの一実施の形態の断面図である。
【
図5】本発明に係るCVT型トランスミッションの別の一実施の形態の詳細、具体的にはアウタスリーブ、ねじ山付きスピンドルおよびキックスタータに関する詳細を、斜視的に、かつ一部断面して側方より見た図である。
【
図6】端部に設けられた軸受ジャーナルと、ねじ山とを有するねじ山付きスピンドルが、収容マンドレルの孔内に導入され、取り付けられていることを示す図である。
【
図7】端部に設けられた軸受ジャーナルと、ねじ山とを有するねじ山付きスピンドルが、収容マンドレルの孔内に導入され、取り付けられていることを示す図である。
【
図8】端部に設けられた軸受ジャーナルと、ねじ山とを有するねじ山付きスピンドルが、収容マンドレルの孔内に導入され、取り付けられていることを示す図である。
【
図9】端部に設けられた軸受ジャーナルと、ねじ山とを有するねじ山付きスピンドルが、収容マンドレルの孔内に導入され、取り付けられていることを示す図である。
【
図10】本発明に係るCVT型トランスミッションの別の一実施の形態の詳細を、トルク支持部に焦点をおいて示す斜視図である。
【
図11】本発明に係るCVT型トランスミッションの別の一実施の形態の詳細を、トルク支持部に焦点をおいて示す斜視図である。
【
図12】本発明に係るCVT型トランスミッションの別の一実施の形態の詳細を、トルク支持部に焦点をおいて示す斜視図である。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態
以下に、
図1ないし12を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。説明に際し、同一、同様または機能同一の構成要素には、個々の例において説明を繰り返さずとも、同一の符号を付した。
【0025】
概して、本発明の一態様は、特に従来慣用の遠心制御式のシステムに統合されているか、または統合される、CVT型トランスミッションの目標変速比を調整するために用いられる特に電子制御式の装置の可能性を提供することである。
【0026】
これにより、燃費および車両動特性に関するパワートレーンの最適な運転点を達成することができる。
【0027】
さらに本発明により、オーバードライブ方向でのレンジの拡大、ベルト張力の最適化およびその他の、CVT型トランスミッションの効率改善をもたらす手段に関する、CVT型トランスミッションの最適な設計を達成することができる。
【0028】
本発明によれば、これにより、任意選択的に遠心ウェイト3を省略することもできる。既存の遠心機構を維持した場合、電子制御式の装置のコストおよび作動出力が、減じられる。
【0029】
つまり、この装置は、大きな構造的変更を行わずに、従来慣用の遠心制御式のシステムに統合される。
【0030】
そこで、本発明の別の一般的な態様および実施の形態について、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0031】
図1は、概略的な形で、一部においてはスケルトン図の形で、本発明に係るCVT型トランスミッション1の第1の実施の形態を示している。
【0032】
内燃機関10により駆動される駆動軸11またはクランク軸に、クランプスリーブ41その他の取り付け手段を介してインナスリーブ53が取り付けられている。インナスリーブ53には、軸方向で可動の円錐シーブ21(第2の円錐シーブ21ともいう)が、相対回動不能に取り付けられている。インナスリーブ53とクランプスリーブ41とは、互いに同軸に、特に、1つの共通の回転軸線および軸方向で移動可能な円錐シーブ21の回転軸線Xと合致する1つの共通の対称軸線Xに関して同軸に、配置されている。インナスリーブ53とクランプスリーブ41とは、特に少なくとも部分的に入れ子に差し合わされており、インナスリーブ53は、クランプスリーブ41を包囲している。インナスリーブ53は、回転軸線Xに沿ってインナスリーブ53の位置を軸方向で調節すべく、クランプスリーブ41に沿って滑動可能である。
【0033】
軸方向で可動の円錐シーブ21に対向して、軸方向で不動の円錐シーブ20(第1の円錐シーブ20ともいう)が配置されており、軸方向で不動の円錐シーブ20は、軸方向で可動の円錐シーブ21に回転に関して連結されているが、並進に関しては連結解除されている。
【0034】
運転中、内燃機関10により駆動される駆動軸またはクランク軸11の回転により、円錐シーブ対2の第1および第2の円錐シーブ20および21からなるアッセンブリは、円錐シーブ20,21の所定の半径上を走行する巻き掛け手段12、例えばベルトまたはこれに類するものを動かし、これにより、駆動側に存在する駆動手段13、例えば対応する第2の円錐シーブ対を駆動することができる。第2の円錐シーブ対自体は、その後、例えば駆動軸に、特に車輪等を駆動すべく、結合されている。
【0035】
クランプスリーブ41には、支持要素4が取り付けられており、これにより、第2の円錐シーブ21の背面とともに、単数または複数の球の形態の遠心要素3用の収容室を形成することができる。しかし、クランプスリーブ41に設けられた支持要素4と関連した、この種の遠心要素3を介した遠心制御は、必須ではなく、CVT型トランスミッションの遠心制御式の変速比調整の、従来頻繁に使用される1つの可能な手段である。
【0036】
図1の図示は、本発明に係る手段が、この種の従来慣用の遠心制御と組み合わされてもよいが、それ自体でも有利に使用可能であることを示している。
【0037】
インナスリーブ53には、並進に関して連結され、回転に関して連結解除された形で、アウタスリーブ54が形成されている。回転に関する連結解除は、ラジアル軸受55によって実現される。この手段により、アウタスリーブ54の移動が、インナスリーブの相応の移動へと伝動される一方、インナスリーブ53とアウタスリーブ54とが、互いに相対的に回転可能であることが達成される。
【0038】
アウタスリーブ54は、ハウジングジャケット54aと、インナスリーブ53とは反対側でジャケット54aに設けられた第1のハウジング端面54bと、インナスリーブ53側にあって、そこにラジアル軸受55が形成されている第2のハウジング端面54cとを有する。
【0039】
インナスリーブ53とアウタスリーブ54とは、円錐シーブ対2の回転軸線Xに関して回転対称に形成されており、アウタスリーブ54、特にそのジャケット54aは、インナスリーブ53の少なくとも一部を同心または同軸に包囲している。
【0040】
第1のハウジング端面54bからは、収容マンドレル8が延在しており、収容マンドレル8は、アウタスリーブ54の内部54iに突入している。収容マンドレル8は、中央の孔8aを有し、孔8a内には、ねじ山付きスピンドル7が一方の端部7aでもって係合している。アウタスリーブ54と、ねじ山付きスピンドル7とは、確かに、別体の要素として設けられ、マンドレル8の孔8a内に係合したスピンドル7の端部7aは、スピンドルジャーナルまたは軸受ジャーナルとして、孔8aを介してアウタスリーブ54に取り付けられていてもよい。しかし、好ましい一実施の形態では、アウタスリーブ54とスピンドル7とからなるアッセンブリは、材料について一体に形成されている。
【0041】
図1の実施の形態では、収容マンドレル8と、孔8aと、ねじ山付きスピンドル7と、その端部7aとが、互いにかつ対称軸線としての回転軸線Xに関して同軸に配置されている。
【0042】
ねじ山付きスピンドル7は、外周面にねじ山7bを、少なくとも、ねじ山付きスピンドル7の端部7aの、マンドレル8の孔8a内に導入される領域外に有する。
【0043】
ねじ山付きスピンドル7のねじ山7bは、作動装置5の作動伝動機構または駆動伝動機構52のスピンドルナットと噛み合うように形成されているため、スピンドル7は、回転不能な要素として、回転するスピンドルナットにより作動伝動機構52内で並進、特に回転軸線Xに沿って並進するように制御され、駆動され得る。
【0044】
制御は、第1および第2の測定線路および/または制御線路6−1および6−2を介して制御ユニット6により行われることができ、第2の制御線路6−2は、作動装置5および作動駆動装置50に作用している。作動駆動装置50は、駆動軸51を介して作動伝動機構52と、作動伝動機構52内に存在するスピンドルナットとを駆動し、回転させる。回転は、その後、回転不能かつ並進可動なねじ山付きスピンドル7のねじ山7bを介して、上述の並進、ここでは回転軸線Xに沿った同軸的な並進に変換される。こうしてねじ山付きスピンドル7と、ねじ山付きスピンドル7に並進に関して連結されたアウタスリーブ54およびインナスリーブ53とは、例えば位置AあるいはA’と位置BあるいはB’との間で回転軸線Xに沿って移動されることができ、これにより、円錐シーブ20および21の間隔D、したがって円錐シーブ対2上のベルト12の変速比を変更することができる。
【0045】
本発明の主要な一態様は、軸方向で不動の第1の円錐シーブ20に対する軸方向可動の第2の円錐シーブ21の位置の、インナスリーブ53およびアウタスリーブ54ならびに並進可動かつ回転不能なスピンドル7への連結を介した能動的な、場合によっては遠心力によらない調節可能性、ひいては、円錐シーブ対2の、軸方向で不動の第1の円錐シーブ20に対する軸方向可動の第2の円錐シーブ21の間隔の、制御可能な変更である。このとき、特に使用者、例えば車両の運転者による制御ユニット6を用いた制御が可能である。
【0046】
CVT型トランスミッションの従来慣用の駆動制御は、例えば一次側の遠心制御器と、二次側のモーメントランプを有する圧着ばねとからなる。
【0047】
本発明によれば、アクチュエータ、すなわち作動駆動装置5により運転されるインナスリーブ53、アウタスリーブ54およびねじ山付きスピンドル7からなる組み合わせによる付加的な力の印加は、CVT変速比を変更すること、具体的にはエンジン回転数および二次側の圧着力とは無関係にCVT変速比を変更することを可能にする。
【0048】
このことから結果として生じる本発明の別の利点は、二次側の圧着力を減じることができる点にある。これにより、ばねおよびモーメントランプについての設計にとって重要な唯一の基準は、CVT型トランスミッションの滑りなしの運転、具体的にはマクロスリップの意味での滑りなしの運転の実現である。
【0049】
既に上述したように、支持要素4に支持される遠心要素3による遠心制御の存在は、必須ではない。この場合、インナスリーブ53は、動かされるベルトシーブ20に取り付けられていなければならない。
【0050】
しかし、遠心制御が存在している場合は、滑動ブシュと解してもよいインナスリーブ53が、3つのフィンガにより堅固に、可動のベルトシーブ21に、例えば圧入、かしめ等により結合されているか、または結合されることができる。可動のベルトシーブ21が取り付けられるインナスリーブ53は、クランプスリーブ41上を滑動する。キックスタータナット66を介して、固定のベルトシーブ20、クランプスリーブ41および支持要素4が、堅固にクランク軸11に結合されている。
【0051】
キックスタータナット66の別の役割は、始動装置なしにエンジンスタートを行うべく、キックスタート装置60のキックスタータ伝動機構62からクランク軸11へ、回転運動を導入することである。
【0052】
インナスリーブまたは滑動ブシュ53の3つのフィンガは、固定のベルトシーブ20に設けられた切欠きを貫通する。保持ナットにより、特に
図4に示すようなフランジリング70が、ストッパリングに押し付けられ、而して堅固にインナスリーブ53に結合されている。
【0053】
作動駆動装置50としての電動ギヤードモータは、スピンドルシステムを回転運動させる。この回転運動は、伝動機構52内のスピンドル/スピンドルナットシステムにより並進運動に変換され、ベル状の形状を有していることができるアウタスリーブ54に導入される。
【0054】
他方のスピンドル端部7aは、堅固にアウタスリーブ54に結合されている。回転運動および直線運動を特にラジアル軸受55によりアウタスリーブ54内で連結解除する軸受55を介して、調節運動がインナスリーブ53に導入され、これにより可動のベルトシーブ21にも伝達される。
【0055】
両ベルトシーブ20および21の間隔は、変化し、これにより、ベルトシーブ20,21間を走行するベルト12は、ベルトシーブ20および21およびその間隔により定まるそれぞれの直径上を走行しなければならない。
【0056】
第1の窓または第1の切欠きと解してもよい、ベルまたはアウタスリーブ54に設けられた第1の貫通部57を通して、キックスタータ60の歯車駆動装置62が係合する。キックスタータ双歯車67は、アウタスリーブ54の収容マンドレル8上に直接支持されている。キックスタータ駆動装置62の回転は、駆動歯車64によりキックスタータ双歯車67に伝達される。はす歯列は、キックスタータ双歯車67を、キックスタータ双歯車67のクラウン歯列がキックスタータナット66のクラウン歯列に係合するまで移動させる。
【0057】
内燃機関10が自ら回転するようになると、第1のキックスタータ歯車67は、制動ばね65により軽く制動される。クラウン歯列の歯形と、キックスタータ駆動装置の逆回転とは、キックスタータ双歯車67を初期位置に戻す。すなわち、キックスタータナット66との係合から離脱する。
【0058】
ベルの形態のアウタスリーブ54の特別な幾何学形状と、ハウジング14の相補的な形状または協働する形状とは、軸受内の摩擦による意図しない回転を阻止する。これにより、特にベルに設けられた貫通部57,58と、キックスタータ駆動車64の歯とが衝突することは、阻止される。さらに、これにより、正しい位置での組み立てが可能となるか、あるいは容易となる。
【0059】
図2は、本発明に係るCVT型トランスミッション1の別の実施の形態を一部断面した概略側面図である。
【0060】
図1に示した要素に加え、
図2には、一方では、スピンドルジャーナルまたは軸受ジャーナルとしての端部7aによる収容マンドレル8の孔8a内へのねじ山付きスピンドル7の係合をより明りょうに示した。
【0061】
さらに、
図2からは、アウタスリーブ54のハウジングジャケット54aが、第1の窓または第1の空所と解してもよい第1の貫通部57を有し、この第1の貫通部57を通してキックスタータ機構60の一部が、中空体として形成されるアウタスリーブ54内に係合し、これにより、例えば双歯車67として形成されている第1のキックスタータ歯車67を、第2のキックスタータ歯車66、本実施の形態ではキックスタータナット66に接近させ、第2のキックスタータ歯車66と噛み合わせることができることが、看取可能である。
【0062】
第1のキックスタータ歯車67としての双歯車は、収容マンドレル8の外周面に支持されている。回転軸線Xに沿った軸方向での移動により、第1のキックスタータ歯車67は、キックスタータナット66と係合することができ、これにより、キックスタート装置60を操作したとき、キックスタート動作を起こすことができる。
【0063】
さらに、アウタスリーブ54のハウジングジャケット54aは、第2の窓または第2の空所と解してもよい第2の貫通部58を有し、第2の貫通部58を通して、キックスタート装置60用の制動ばね65が、アウタスリーブ54の内部54iに通されている。
【0064】
図2からは、ハウジングジャケット54aが、大径の直径d1を有する第1の領域54−1と、小径の直径d2を有する第2の領域54−2とを有し、第1の領域54−1にラジアル軸受55が、第2の領域54−2に収容マンドレル8が形成されていることも看取可能である。
【0065】
図3および4は、
図2の実施例を、第1および第2の円錐シーブ20および21が、相互の軸方向の間隔に関して2つの異なる位置を占めた状態で示しており、
図3では、円錐シーブ20および21間の間隔が大きくなっていて、
図4に示した状態では小さくなっている。
【0066】
図5ないし9の一連の図は、本発明の一実施の形態におけるアウタスリーブ54を詳細に、具体的には一部斜視図で示しており、
図8は、側方から見た断面図である。
【0067】
本実施の形態のアウタスリーブ54は、大径の直径d1の第1の領域または部分54−1と、小径の直径d2の第2の領域または部分54−2とを有するハウジングジャケット54aを有する。
【0068】
第2のハウジング部分54−2は、第1のハウジング端面54bを有し、第1のハウジング端面54bは、ハウジングジャケット54aの開口を実質的に閉鎖している。ハウジング端面54bからは、内部54iに向かって収容マンドレル8が延在しており、収容マンドレル8は、ねじ山付きスピンドル7をその端部7aに設けられたスピンドルジャーナルまたは軸受ジャーナルでもって収容する、外側からアクセス可能な孔8aを有する。
【0069】
キックスタータ機構60に連結するために、ハウジングジャケット54aは、第1の窓を第1の貫通部57として有する。さらに第2の窓が第2の貫通部58として設けられており、第2の貫通部58は、制動ばね65を収容するために用いられる。
【0070】
図5では、端部7aに軸受ジャーナルを有するねじ山付きスピンドル7が、まだ組み付けられていない。
【0071】
図6ないし9では、端部7aに設けられた軸受ジャーナルと、ねじ山7bとを有するねじ山付きスピンドル7が、既に収容マンドレル8の孔8a内に導入され、そこに取り付けられている。
【0072】
図7ないし9には、加えて、キックスタート装置60の要素が看取可能である。キックスタート伝動機構62は、双歯車67の形態の第1のキックスタータ歯車を有し、第1のキックスタータ歯車には、キックスタート装置60のキックスタート伝動機構62の駆動歯車64が外側から噛み合わされ、これにより、第1のキックスタータ歯車は、駆動される。双歯車67自体は、収容マンドレル8上に支持されている。
【0073】
図10ないし12は、伝動機構ハウジング14と、アウタスリーブ54を収容するように伝動機構ハウジング14内に設けられた収容部14bとを示す斜視図である。
【0074】
アウタスリーブ54は、その第1のハウジング端面54bに、特に断面で見て、伝動機構ハウジング14の収容部14bの形状に対して相補的に形成された形状を有する。特に第1のハウジング端面54bは、収容マンドレル8用の孔8aの他に、外周面に空所54dを有しており、空所54dがあることにより、第1のハウジング端面54bの外周面は、もはや回転対称とはいえない。つまり、断面で見て厳密な円形から逸脱している。これにより、トルク支持部9と、正しい位置での組み立てのための組み立て補助手段とが実現されている。
【0075】
ハウジング14内に設けられた収容部14bは、その内周面に、ノーズまたはショルダと解してもよい対応する逆位部14cを有するので、
図12に示すように、収容部14bを第1のハウジング端面54bと差し合わせたとき、伝動機構ハウジング14におけるアウタスリーブ54の回り止めされた保持が行われる。すなわち、空所54dと逆位部14cとを介して形状結合(Formschluss:形状による束縛)が形成される。組み立てられた状態では、貫通穴14dを介してねじ山付きスピンドル7が、伝動機構ハウジング14内の駆動部と係合する。