特許第6479303号(P6479303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479303
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】適応走査を有する走査顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/147 20060101AFI20190225BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20190225BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20190225BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20190225BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   H01J37/147 B
   G02B21/36
   H01J37/22 502B
   H01J37/22 502H
   H01J37/317 D
   H01J37/305 A
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-97243(P2013-97243)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2013-243128(P2013-243128A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2016年5月1日
(31)【優先権主張番号】13/474,176
(32)【優先日】2012年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501419107
【氏名又は名称】エフ・イ−・アイ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】クリフ・バッジ
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン・ヴァン リール
【審査官】 橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−037804(JP,A)
【文献】 特開2001−304842(JP,A)
【文献】 特開平03−040351(JP,A)
【文献】 特開2009−277536(JP,A)
【文献】 特開平06−196117(JP,A)
【文献】 特開2011−233466(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/029846(WO,A1)
【文献】 特開2011−204570(JP,A)
【文献】 特開2011−086606(JP,A)
【文献】 特開2004−118375(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0057015(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0141563(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0296073(US,A1)
【文献】 特開平10−092367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/147
G02B 21/36
H01J 37/22
H01J 37/305
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査顕微鏡を使用して試料内の対象の構造体の画像を迅速に形成する方法であって、
前記試料の第1のエリアの最初の走査または最初の走査セットを実行して、前記第1のエリアに対応する一組の画素のそれぞれの画素の第1のグレー・レベル値を決定するステップと、
前記第1のグレー・レベル値を解析して、前記対象の構造体を表す前記第1のエリア内の第1の領域に対応する前記画素のサブセットを識別するステップと、
前記第1の領域に対応する前記画素のサブセットの画素についてのみ第2のグレー・レベル値を決定するために前記第1の領域の追加の走査を実行することによって、前記第1の領域に対応する画素のグレー・レベル測定値をより正確に決定するステップであり、前記第2のグレー・レベル値が、前記第1のグレー・レベル値を決定するのに使用した走査の回数よりも多くの回数の走査を統合することによって決定され、前記追加の走査は、前記最初の走査または最初の走査セットで収集された画素数よりも少ない画素についてグレー・レベルのデータを集める、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の領域に対応する前記画素のサブセットを識別するステップが、前記第1のグレー・レベル値を第1のしきい値と比較することを含み、前記第1のしきい値が、前記第1のグレー・レベル値を決定するのに使用した走査の回数に依存し、
前記第1の領域に対応する画素のグレー・レベル測定値をより正確に決定するステップが、前記第2のグレー・レベルを複数の第2のしきい値と比較するステップを含み、複数の前記第2のしきい値が、前記追加の走査から除外する複数の画素を選択するのに用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の領域に対応する前記画素のサブセットを識別するステップが、前記第1のグレー・レベル値を複数のしきい値と比較することを含み、複数の前記しきい値が、複数の画素のグレー・レベルの確率密度関数に依存する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記追加の走査を実行するステップが、前記第2のグレー・レベル値を解析して、前記対象の構造体を表す前記第1のエリア内の第2の領域に対応する前記画素のサブセットを識別するステップを含み、前記追加の走査を実行するステップがさらに、前記第2の領域の追加の走査を実行して、前記第2の領域に対応する前記画素のサブセットについてのみ第3のグレー・レベル値を決定するステップを含み、前記第3のグレー・レベル値が、前記第2のグレー・レベル値を決定するのに使用した走査の回数よりも多い回数の走査を統合することによって決定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のエリアを含む材料の層を前記試料から除去することによって第2のエリアを露出させるステップと、
前記第2のエリアの第2の領域を走査するステップであり、前記第2のエリアの第2の領域が、前記第2のエリア内において前記第1の領域に対応するステップ
をさらに含む、請求項1から4のいずれかに一項に記載の方法。
【請求項6】
材料を漸進的に除去して新たなエリアを露出させるステップと、
新たなエリアが露出するたびに、それぞれの新たなエリアの限定された領域を走査するステップであり、前記限定された領域が、以前のエリア内の対応する領域に対応する複数の画素のグレー・レベル値を解析することによって決定されるステップと
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
走査荷電粒子ビーム・システムであって、
荷電粒子源と、
荷電粒子ビームで試料を走査する偏向器と、
前記荷電粒子ビームを前記試料の表面に集束させるレンズと、
前記荷電粒子の衝突に反応した前記試料からの放出を検出する検出器と、
前記走査荷電粒子ビーム・システムの動作を制御するコンピュータと、
請求項1に記載の方法を実行するための命令を記憶したコンピュータ可読記憶装置と
を備える走査荷電粒子ビーム・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査顕微鏡での適応走査の方法およびこの方法が組み込まれた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡(SEM)/集束イオン・ビーム(FIB)デュアル・ビーム装置によるある体積の高分解能ディジタル画像の形成は、生物学(組織の調査)および天然資源開発(コア試料の調査)の分野においてますます有用性を増しているツールである。この技法では、FIBが、画像化する体積を反復的にスライスし、それによって複数の表面を漸進的に露出させ、SEMが、露出したそれぞれの表面の画像を生成する。このプロセスは、莫大な量のデータ、一般にギガ画素の範囲のデータの収集を必要とすることがある。このデータ収集は、4時間から60時間を要する非常に時間のかかる作業になることがある。このような長い時間待たなければならないことは、ある課題の本質についてより多くのことをできるだけ速やかに知ろうとしている研究者にとって大きな障害となりうる。また、このことは装置の処理能力を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,851,413号明細書
【特許文献2】米国特許第5,435,850号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、試料を走査してディジタル画像を形成する方法および装置の実施形態が提供される。この方法および装置では、最初に一組のガイド・データを集め、そのデータを使用して、その試料の対象の領域ではないと判定された領域をさらに走査することを排除する。対象の領域でない領域の走査を排除することにより、走査速度が高まり、プロセスがより効率的になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
独立した第1の態様では、本発明が、あるエリアのディジタル画像を走査顕微鏡を使用して迅速に形成する方法の形態をとる。この方法は、最初の走査セットを実行して、そのエリアに対するガイド画素セットを形成するステップと、そのガイド画素セットを使用して、エリア内の対象の構造体を表す領域を識別するステップとを含む。次いで、この領域内の画素をさらに評価するために、対象の構造体を表す領域の追加の走査を実行して更なるデータを集め、そのエリア内の他の領域は走査しない。
【0006】
独立した第2の態様では、本発明が、あるエリアの走査を実行するように適合され、そのエリアの走査を実行する一部として、最初の走査セットを実行して、そのエリアに対するガイド画素セットを形成し、次いでそのガイド画素セットを使用して、エリア内の対象の構造体を表す領域を識別するように適合された走査顕微鏡アセンブリの形態をとる。次いで、この顕微鏡は、この領域内の画素をさらに評価するために、対象の構造体を表す領域の追加の走査を実行して更なるデータを集め、そのエリア内の他の領域は走査しない。
【0007】
独立した第3の態様では、本発明が、対象の領域と対象の領域でない領域とを含むあるエリアの画像を走査画像化装置を使用して形成する方法の形態をとる。この方法は、短時間の走査を実行し、それにより、可能な正確さよりも劣る正確さを有する情報を、より短い時間で集めるステップと、この短時間の走査によるデータを使用して、対象の領域でない領域を表す画素を決定するステップとを含む。次いで、より低速で走査を実行するが、対象の領域でない領域を表すと判定された画素は走査せず、それによってこの走査をより速やかに完了させる。
【0008】
独立した第4の態様では、本発明が、走査する試料中の対象の構造体の寸法特性をユーザが入力することを可能にするように適合されたデータ入力サブアセンブリを含む走査電子顕微鏡アセンブリの形態をとり、この寸法特性が試料の走査に影響を及ぼす。
【0009】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり広く概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するために他の構造を変更しまたは設計するベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造は、添付の特許請求の趣旨および範囲に記載された本発明の範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0010】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】エポキシ中に固定された酵母細胞の顕微鏡写真である。
図2】他の鉱物が散在する頁岩の顕微鏡写真である。
図3】ある画素サンプル・グレースケール値が与えられた場合の実際の画素グレースケールの確率密度関数、および低い画素グレースケールを誤って見つけ出す確率が低くなるように設定されたしきい値を示す図である。
図4】ある平均された画素サンプル・グレースケール値セットが与えられた場合の実際の画素グレースケールの確率密度関数、および低い画素グレースケールを誤って見つけ出す確率が低くなるように設定されたしきい値を示す図である。
図5図4のセットよりも多くのサンプル値を含む平均された画素サンプル・グレースケール値セットが与えられた場合の実際の画素グレースケールの確率密度関数、および低い画素グレースケールを誤って見つけ出す確率が低くなるように設定されたしきい値を示す図である。
図6】固体培地中に固定された4つの酵母細胞の断面を示す図である。
図7】透明な外膜を有し、そのため細胞器官が見える、酵母細胞の上面図である。
図8図7の線8−8に沿って切った図7の酵母細胞の横断面図である。
図9図7の線9−9に沿って切った図7の酵母細胞の横断面図である。
図10】本発明の好ましい実施形態を実現する目的に使用することができる例示的なデュアル・ビームFIB/SEMシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、ある体積の画像を形成する際に取得しなければならないデータ・サンプルの数を減らす方法および該方法が組み込まれた装置を対象とする。好ましい一実施形態は、画像化された体積には一般に対象の構造体を表す特定の部分が存在し、画像データの残りの部分には価値がほとんどまたは全くないことに依拠している。例えば、図1では、細胞10が対象の構造体であり、画像中に明灰色のフィールドとして現われているエポキシ封入剤12は対象の構造体ではない。同様に、図2では、頁岩20が対象の構造体であり、白色のフィールドとして現われている間隙物質22は対象の構造体ではない。
【0013】
画素データを収集するための走査を、対象のエリアでないエリアで実行することを回避するため、あるエリアを完全に走査する前に、典型的には走査画像形成装置の一部を構成するデータ処理装置によって、どのエリアが対象の構造体を表し、どのエリアがそうでないのかについての判定を実施しなければならない。図1および2に示した2つの例では、対象の領域でない領域の方が対象の領域よりも明るい。そうであるときに、それよりも暗いグレー・シェード(gray shade)を選択するしきい値を設定し、そこまでは暗くない(リターン・レベルが十分に高い)画素を排除する方法は、対象の領域と対象の領域でない領域とを区別する1つの方法となる。
【0014】
ある画素がさらなる走査に値するかどうかを判断するのに足る、グレー・シェード値の予備的な推定値を得るため、3つの技法を使用することができる。以下の段落ではそれらの3つの技法をより詳細に説明する。第1に、一連の走査を足し合わせて統合された走査を形成するシステムにおいて、第1の走査または第1の走査セットのそれぞれの画素のグレースケールをあるしきい値と比較して、上記の判断を実施することができ、次いでその判断を、この統合された走査の後続の走査に対して使用する。第2に、FIB/SEMデュアル・ビーム・システムによってある体積を画像化すると、以前に画像化した表面が、同じ対象の構造体の範囲に含まれるエリアを有することがある。例えば、生物構造体は、漸進的に露出させた多くの表面にまたがって広がっていることがある。したがって、直前の表面において対象の構造体の位置を決定し、その情報を、統合された走査の最初の走査データとともに使用して、そのときに画像化している表面内においてその対象の構造体を見つけることができる。最後に、同じ単一の走査内において、以前に走査した画素と将来に走査する画素とを相互に関係づけることができる。
【0015】
前述のとおり、走査電子顕微鏡は、電子ビームを使用してある試料エリアを複数回(例えば20回)走査し、その間に、2次電子検出器によって2次電子を集めてその試料エリアの画像を形成することによって、画像を形成する。このようにするのは、電子ビームが試料上のいずれかの位置に入射しているときに、その位置に電荷が蓄積することを防ぐためである。走査ごとに、それぞれの画素のビームに対する反応性、すなわち集められた2次電子の数(すなわち真の画素グレースケール)を測定する。最初の走査で、それらの画素グレースケール測定値をあるしきい値と比較して、それらの測定値が、対象の領域でない領域からの測定値であるとはっきりとみなすことができる十分に低い値を有するかどうかを判定することができる。しかしながら、図3を参照すると、(一連の走査のうちの)単一の走査の後、(真の画素グレースケールの理論上のしきい値に正確に一致する測定値の)このような測定110はそれぞれ、かなり幅の広い誤り確率密度関数(PDF)112を有する。このことは、実際の画素グレースケールが画素グレースケール測定値よりもかなり高い可能性が相当にあることを示す。その結果、将来の走査でその画素を走査しないと誤って判断してしまうことを避けるために、控え目なしきい値114を設定することが必要となる。図4を参照すると、走査を統合することにより、統合されたそれぞれの画素測定110について、誤りPDF112の幅は狭まり、しきい値114を低くすることができ、それによってより多くの画素を将来の走査から排除することができる。走査の回数をさらに増やすと、PDFの幅は図5に示すようにさらに狭まり、最初の走査によって示された強度よりも高い強度を実際に有する画素を排除してしまう可能性をあまり高めることなく、よりぴったりしたしきい値114を使用することができる。
【0016】
好ましい一実施形態では、所定の回数の走査を実行するまで、またはこのプロセスによって排除される追加の画素数が所定のレベルよりも少なくなるまで、このプロセスを続ける。しかしながら、画素排除の終りは必ずしも走査の終りではない。これは、対象の領域の画素グレースケールをより正確に評価するために、データを集め続けることが望ましいことがあるためである。好ましい一実施形態では、特に変化に富む走査応答を有する領域については、よりいっそう正確な画素グレースケールを形成することができるように、統合された走査の標準走査回数よりも走査回数を増やして走査する。好ましい代替実施形態では、統合された走査プロセスの最初の走査の後にだけ、画素を将来の走査から排除する。好ましい追加の代替実施形態では、閉じた形状を検出し、その形状については将来の走査に含め、閉じた形状の内側にない画素については将来の走査から排除する。
【0017】
集束イオン・ビーム(FIB)/走査電子顕微鏡(SEM)では、FIBが、材料の部分層を切削により除去し、SEMが、露出した表面を画像化する。最初の表面を画像化した後、その画像を、次の走査における対象の構造体の位置の予備的な指示を与えるガイドとして使用することができる。多くの試料は、規則的な形状を有し(例えば生物試料中の細胞)、画像化平面間の間隔よりも大きい、対象の構造体を含む。したがって、ある画素が、画像化された第1の平面内の対象の構造体の外側にあることは、近隣の平面内の対応する画素も対象の構造体の外側にあることを都合よく指示する。この情報は、統合された走査のうちの最初の1回または数回の走査による情報と結合されて、ある画素を後続の走査に含めるべきか否かに関する改良された指標を提供する。
【0018】
図6〜9はこの点を示しており、図6は、エポキシ中に固定された4つの酵母細胞を示し、図7は、これらの細胞のうちの左上の細胞の上面図を示し、図8および9は、図7に画定された平面8−8および9−9に沿って切った、図7の細胞の狭い間隔で離隔した2つの断面を示す。好ましい一実施形態は、図8に示した第1の画像平面からの細胞12についてのデータと図9に示した第2の画像平面からの細胞12についてのデータの間の相互関係に依拠する。これらの2つのスライスは互いに近接しているため、図から分かるように、これらのスライスは全体的に類似している。図8の断面からの画素を、次のフレーム(図9)内の近くの画素の将来の評価と相互に関係づけることによって、この類似性の利益を得ることができる。第1にすべきことは、どの画素が細胞物質12ではなく単なるエポキシを表すのかの判定を支援し、統合された走査の最初の走査以降、それらのエリアを走査することを回避することである。好ましい一実施形態では、細胞12の縁の近くの画素に対してもこの相関因子を継続する。これは、細胞の縁が、直前に走査した平面内の同様の位置にある画素の対象の領域の値(真かまたは偽か)を反映しない可能性がより高いエリアであるためである。好ましい一実施形態では、細胞の境界の内側にある画素に、次の平面における対象の領域の値について非常に高い相関値(0.85)を与え、この値を、細胞の境界から20画素分の距離に達するまで直線的に小さくする。より進んだ実施形態では、画素グレースケールを使用して、例えば両方の走査に細胞器官30が出現し、細胞器官30が概ね同じ材料であるときに、次の走査において画素グレースケールのより迅速な評価を得ることができる。
【0019】
さらに、走査を始めた後、近隣の画素からの情報を、これから走査しようとしている画素に関係づけ、その情報を使用して、その画素を走査すべきかどうかを判定するためのしきい値設定の確実性を高めることができる。好ましい一実施形態では、この判断を実施するために、まっすぐなラスタ走査ではない走査を実施する。例えば、10行おきおよび10列おきに画素を走査することは、より詳細な走査を実行する前に、対象の領域がどこにあるのかを決定するのに役立つことがある。
【0020】
さらに、統合された走査プロセスのうちの最初の走査または最初の走査セットからの対象の画素の周囲のエリアの画素分散(variance)、または同じ走査内の以前に走査した画素からの対象の画素の周囲のエリアの画素分散を使用して、対象の領域の存在を判定することができる。これは、対象の領域の方が、ある体積の一様なエポキシなどの背景エリアが有するよりも多くの特徴部分を有する傾向があるためである。
【0021】
対象の領域の方が対象の領域でない領域よりも高い値の画素を有し、より高い画素分散を有するエリアの方が、より低い画素分散を有する領域よりも対象の領域を表す可能性が高いある体積を走査する際に使用する好ましい一実施形態では、上で論じた全ての因子をひとまとめにし、以下のしきい値設定不等式を使用して、どの画素を走査すべきかを判定する。
【0022】
T<CR*R+CPSF*(前表面係数)+*ΣCSP(SP.Px−R)+CV*(局所画素分散)−ε (1)
上式で、
T=しきい値
R=統合された走査の以前の走査における同じ画素に対する重みづけ定数
R=以前の走査における画素のビーム反応性の示数
PSF=前表面係数(Provious Surface Factor)に対する重みづけ定数
前表面係数は、画素が、以前に走査した近隣の表面内の対象の領域内にある場合には=1、#ofpix<20の場合には=1/#ofpix、そのほかの場合には=0であり、#ofpixは、以前に走査した近隣の平面における対象の領域からの距離を画素数で表したものである。
【0023】
SP=既に走査した同じ走査、同じ平面の相互に関係づけられたそれぞれの画素に対する重みづけ定数
SP.Px=既に走査した同じ平面の相互に関係づけられた画素
V=局所画素分散に対する重みづけ定数
局所画素分散(Regionl Pixel Variance)=対象の画素の周囲のある画定されたエリア内、例えば100×100画素のエリア内の画素の分散
ε=ある画素を対象の画素ではないと誤って分類する所定の誤り率を与えるように設定された誤りマージン
さらに、好ましい一実施形態では、画素に対する測定誤差があるしきい値よりも低いときには、たとえ対象の構造体に対するものであっても、それぞれの画素のさらなる走査を停止する。すなわち、以前の表面からの情報、統合された走査の以前の走査からの情報および同じ平面内の以前に走査した画素からの情報を考慮することによって、その画素の値が所定の許容値よりも小さいと判定されたことをシステムが確信することができるときには、その画素を再び走査することはしない。
【0024】
状況によっては、式(1)の情報の一部が使用できないことがある。例えば、統合された走査を使用しない場合には最初の項「R」を得ることができず、どの画素の走査を回避するのかについての判定は、以前に走査した表面との相互関係または相互に関係づけられた同じ平面内の既に走査した画素との相互関係だけに基づいて実施しなければならない。画像形成の所要時間は体積画像化だけの問題ではなく、モザイク画像化にも関連する。例えば、モザイク画像の形成では、1ギガバイト以上の画素を集める必要があることがある。この場合、走査すべきでないエリアの判定に、以前の平面からの情報は使用できず、統合された走査からのデータおよび同じ走査からのデータだけが使用可能である。最後に、同じ走査であっても、走査したばかりの画素を遅れずに十分に評価して、次に走査する予定の画素を走査すべきか否かついての判断を下すことができないことがありうる。これらの場合にはそれぞれ、式1から1つの項を除き、εを大きくして、対象の画素を走査しないと誤って判断してしまわないようにする。
【0025】
好ましい一実施形態では、CR、CPSF、CSP、CVおよびが、ユーザが入力することができる画像化する材料のタイプおよび内部特徴部分の方向に従って設定される。例えば、画像平面を貫いて走る多くの長い特徴部分を有する材料を画像化する場合には、CPSFを比較的に高く設定し、εを比較的に低く設定する。ユーザは、(必要に応じて)材料のタイプおよび内部特徴部分の方向を、ユーザ・インタフェース、例えばドロップ・ダウン・メニューによって入力することができる。このドロップ・ダウン・メニューは例えば組織のタイプ、コア試料のタイプなどのリストを示す。別のドロップ・ダウン・メニューは方向の選択を可能にする。
【0026】
前述のとおり、好ましい一実施形態では、統合された走査の初期の走査、以前の表面からの情報および/または同じ走査からの情報を使用して、対象の構造体(例えば細胞)の境界を検出する。境界内のエリアはさらに走査し、境界の外側のエリアは走査しない。
【0027】
図10は、本発明の好ましい実施形態を実現する目的に使用することができる典型的なデュアル・ビームFIB/SEMシステム1010を示す。デュアル・ビーム・システムを参照するが、本発明の態様はデュアル・ビーム・システムだけに限定されず、単一ビーム・システムなどの他の荷電粒子ビーム・システムで実現することもできる。本発明の一実施形態は、試料表面の平面に対して垂直なまたは試料表面の平面に対して数度傾いたイオン・ビームと、イオン・ビームの軸から例えば52度傾いた軸を有する電子ビームとを使用するデュアル・ビームFIB/SEMシステム1010を利用する。いくつかの実施形態では、イオン・ビームの視野と電子ビームの視野が互いから数ミクロン以内に位置するように、これらの両方のビームが互いに整列することができる。イオン・ビームは一般に加工物を画像化する目的および加工する目的に使用され、電子ビームは主に画像を形成する目的に使用されるが、加工物を改変する目的に電子ビームを使用することもできる。電子ビームは一般に、イオン・ビーム画像よりも高分解能の画像を生成し、イオン・ビームとは違い、入射した表面を傷つけない。これらの2つのビームによって形成される画像は異なって見えることがあり、したがってこれらの2つのビームは、単一のビームよりも多くの情報を提供することができる。
【0028】
このようなデュアル・ビーム・システムは、別個の構成要素から製作することができ、あるいはFEI Company(米オレゴン州Hillsboro)から販売されているAltura(商標)またはExpida(商標)システムなどの従来の装置を基にして構成することもできる。本発明は、例えばFIBだけのシステム、SEMだけのシステムなどの単一ビーム・システム、または2つのFIBカラムを有するデュアル・ビーム・システムを含む、他の粒子ビーム・システムを使用して実現することもできる。
【0029】
集束イオン・ビーム・システム1010は、上部ネック部分1012を有する排気された囲い1011を含み、上部ネック部分1012内にはイオン源1014および集束カラム1016が位置し、集束カラム1016は、引出し電極および静電光学系を含む。イオン源1014を出たイオン・ビーム1018は、カラム1016を通過し、1020に概略的に示されている静電偏向手段間を通り抜けて、下室1026内の可動X−Y−Zステージ1024上に配置された試料1022に向かって進む。イオン・ポンプまたは他のポンピング・システム(図示せず)を使用してネック部分1012を排気することができる。室1026は、真空コントローラ1032の制御の下、ターボ分子および機械ポンピング・システム1030によって排気される。この真空システムは、室1026に、約1×10-7トルから5×10-4トルの間の真空を提供する。エッチング支援ガス、エッチング遅延ガスまたは付着前駆体ガスを使用する場合、室のバックグラウンド圧力は典型的には約1×10-5トルまで上昇することがある。
【0030】
イオン源1014と、イオン・ビーム1018を形成し下方へ導く集束カラム1016内の適当な電極とに高圧電源1034が接続される。パターン発生器1038によって提供される所定のパターンに従って動作する偏向コントローラおよび増幅器1036が偏向板1020に結合され、それによって対応するパターンを試料1022の上面に描くようにビーム1018を制御することができる。いくつかのシステムでは、当技術分野ではよく知られているように、偏向板が、最後のレンズの前に配置される。
【0031】
イオン源1014は一般にガリウムの金属イオン・ビームを提供するが、マルチカスプ(multicusp)イオン源、他のプラズマ・イオン源など、他のイオン源を使用することもできる。イオン・ミリング、強化されたエッチングもしくは材料付着によって試料1022を改変するため、または試料1022を画像化するために、イオン源1014を一般に、試料1022の位置における幅が1/10ミクロン未満のビームに集束させることができる。画像化のために2次イオンまたは2次電子の放出を検出する目的に使用される荷電粒子増倍器1040が信号処理装置1042に接続されており、荷電粒子増倍器1040からの信号は信号処理装置1042で増幅され、ディジタル信号に変換され、信号処理にかけられる。その結果生成されるディジタル信号は、試料1022の画像をモニタ1044に表示する。
【0032】
FIB/SEMシステム1010はさらに、走査電子顕微鏡1041と電源および制御ユニット1045を備える。陰極1052と陽極1054の間に電圧を印加することによって、陰極1052から電子ビーム1043が放出される。電子ビーム1043は、集光レンズ1056および対物レンズ1058によって微細なスポットに集束する。電子ビーム1043は、偏向コイル1060によって試料の表面を2次元的に走査する。集光レンズ1056、対物レンズ1058および偏向コイル1060の動作は電源および制御ユニット1045によって制御される。
【0033】
電子ビーム1043を、下室1026内の可動X−Y−Zステージ1024上にある試料1022の表面に集束させることができる。走査電子顕微鏡1041は、微細な集束電子ビーム1043を生成し、微細な集束電子ビーム1043は構造体の表面にわたって、好ましくはあるラスタ・パターンに従って走査する。電子ビーム1043中の電子が加工物1022の表面に衝突すると、2次電子および後方散乱電子が放出される。この2次電子および後方散乱電子はそれぞれ、2次電子検出器1040または後方散乱電子検出器1062によって検出される。2次電子検出器1140または後方散乱電子検出器1062によって生成されたアナログ信号は、信号処理ユニット1042によって増幅され、ディジタル輝度値に変換される。その結果生成されるディジタル信号を、試料1022の画像としてモニタ1044に表示することができる。
【0034】
ステージ1024上に試料1022を挿入するため、および内部ガス供給リザーバが使用される場合には内部ガス供給リザーバを使用可能とするために、扉1070が開かれる。ステージ1024は加熱または冷却されていることがある。システムが真空状態にある場合に開かないように、この扉はインタロックされる。イオン・ビーム1018にエネルギーを与え集束させるため、高電圧電源は、イオン・ビーム・カラム1016内の電極に適当な加速電圧を印加する。
【0035】
ガス蒸気を導入し試料1122に向かって導くためにガス送達システム1046が下室1026内へ延びている。本発明の譲受人に譲渡されたCasella他の「Gas Delivery Systems for Particle Beam Processing」という名称の米国特許第5,851,413号は適当なガス送達システム1046を記載している。別のガス送達システムが、やはり本発明の譲受人に譲渡されたRasmussenの「Gas Injection System」という名称の米国特許第5,435,850号に記載されている。例えば、ヨウ素を送達してエッチングを強化することができ、または金属有機化合物を送達して金属を付着させることができる。
【0036】
システム・コントローラ1019は、デュアル・ビーム・システム1010のさまざまな部分の動作を制御する。従来のユーザ・インタフェース(図示せず)にコマンドを入力することによって、ユーザは、システム・コントローラ1019を介してイオン・ビーム1018または電子ビーム1043を思い通りに走査することができる。システム・コントローラ1019は、コンピュータ可読の記憶装置1021をさらに備えることができ、記憶装置1021に記憶されたデータまたはプログラムされた命令に従ってデュアル・ビーム・システム1010を制御することができる。試料に関するCADデータまたは記憶装置1021に記憶されたCADデータを使用して、前述のように対象の特徴部分および位置合せ点または転写基準点の位置を決定する目的に使用されるCAD多角形オーバレイまたは他の位置データを生み出すことができる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、あるエリアのディジタル画像を走査顕微鏡を使用して迅速に形成する方法は、試料のそのエリアを繰り返し走査するステップと、それらの複数の走査によるそれぞれの画素の検出器信号を統合して、そのエリアの画像を生成するステップとを含み、これらのステップは、最初の走査または最初の走査セットを実行して、前記エリアに対するガイド画素セットを形成するステップであり、このガイド画素セットが、最初の走査または最初の走査セットの画素のサブセットであり、最初の走査または最初の走査セットの画素のグレー・レベルに基づいて選択されるステップと、前記ガイド画素セットを使用して、前記エリア内の対象の構造体を表す領域を識別するステップと、前記領域内の画素をさらに評価するために、対象の構造体を表す前記領域の追加の走査を実行して追加のデータを集め、そのエリア内の他の領域は走査しないステップとを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記走査または走査セットが単一の走査だけを含む。いくつかの実施形態では、前記最初の走査または最初の走査セットが、対象の構造体を取得するように適合された走査パターンに従った前記エリアの部分走査を含む。いくつかの実施形態では、前記エリアが、材料を漸進的に除去して新たな表面を露出させ、新たな表面が露出するたびに前記新たな表面を走査することによって走査している体積の一部分であり、前記最初の走査または最初の走査セットが、前記体積内の以前に露出させた表面の走査を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、対象の領域が、少なくとも部分的には、画素強度を評価することによって識別される。いくつかの実施形態では、対象の領域が、部分的には、局所画素分散を評価することによって識別される。
【0040】
あるエリアの走査を実行するように適合された走査顕微鏡アセンブリは、前記エリアの前記走査を実行する部分として、荷電粒子源と、荷電粒子ビームで加工物を走査する偏向器と、荷電粒子ビームを加工物の表面に集束させるレンズと、荷電粒子ビームの衝突に反応した加工物からの放出を検出する検出器と、走査荷電粒子ビーム・アセンブリの動作を制御するコンピュータと、コンピュータ可読記憶装置とを備え、このコンピュータ可読記憶装置は、最初の走査または最初の走査セットを実行して、前記エリアに対するガイド画素セットを形成するステップであり、このガイド画素セットが、最初の走査または最初の走査セットの画素のサブセットであり、最初の走査または最初の走査セットの画素のグレー・レベルに基づいて選択されるステップと、前記ガイド画素セットを使用して、前記エリア内の対象の構造体を表す領域を識別するステップと、前記領域内の画素をさらに評価するために、対象の構造体を表す前記領域の追加の走査を実行して追加のデータを集め、そのエリア内の他の領域は走査しないステップとを実行するための命令を記憶している。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記最初の走査または最初の走査セットが単一の走査だけを含む。いくつかの実施形態では、前記最初の走査または最初の走査セットが、対象の構造体を取得するように適合された走査パターンに従った前記エリアの部分走査である。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記エリアが、材料を漸進的に除去して新たな表面を露出させ、新たな表面が露出するたびに前記新たな表面を走査することによって走査している体積の一部分であり、前記最初の走査または最初の走査セットが、前記体積内の以前に露出させた表面の走査を含む。いくつかの実施形態では、対象の領域が、少なくとも部分的には、画素強度を評価することによって識別される。いくつかの実施形態では、対象の領域が、少なくとも部分的には、局所画素分散を評価することによって識別される。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、対象の領域と対象の領域でない領域とを含むあるエリアの画像を走査画像化装置を使用して形成する方法は、短時間の走査を実行し、それにより、可能な正確さよりも劣る正確さを有する情報を、より短い時間で集めるステップと、前記短時間の走査によるデータを使用して、対象の領域でない領域を表す画素を決定するステップと、より低速で走査を実行するが、対象の領域でない領域を表すと判定された画素は走査せず、それによって前記走査をより速やかに完了させるステップとを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記走査装置が走査電子顕微鏡である。いくつかの実施形態では、前記エリアが、1つに組み合わされて組み合わされた画像を形成する一組のエリアのうちの1つのエリアである。いくつかの実施形態では、前記エリアが、その平面次元に対して垂直に積み重なってある体積を形成する一組のエリアのうちの1つのエリアである。いくつかの実施形態では、前記エリアが、モザイク状に集合した一組のエリアのうちの1つのエリアである。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記短時間の走査が、統合された走査プロセス中に実行される第1の走査セットである。いくつかの実施形態では、前記第1の走査セットが単一の走査だけを含む。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、走査電子顕微鏡アセンブリは、走査する試料中の対象の構造体の寸法特性をユーザが入力することを可能にするように適合されたデータ入力サブアセンブリを含み、前記寸法特性が前記試料の走査に影響を及ぼす。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記寸法特性が、走査のどの部分が対象の領域でない領域であり、スキップすべきなのかを判定するアルゴリズムに影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、前記データ入力サブアセンブリがドロップ・ダウン・メニューを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、走査顕微鏡を使用して試料の画像を迅速に形成する方法は、画素の第1のセットからなる第1のエリアの最初の走査または最初の走査セットを実行して、第1のセット中のそれぞれの画素の第1のグレー・レベル値を決定するステップと、第1のセット中の画素の第1のグレー・レベルを解析して、前記エリア内の対象の構造体を表す第1の領域を識別するステップであり、この第1の領域が、第1のセットの画素数よりも少ない数の画素を含むステップと、前記領域の追加の走査を実行して、前記領域の画素についてのみ第2のグレー・レベル値を決定するステップであり、第2のグレー・レベル値が、第1のグレー・レベルを決定するのに使用した走査の回数よりも多くの回数の走査を統合することによって決定され、それによって、前記領域内の画素のグレー・レベル測定値の正確さを向上させ、一方で、前記追加の走査に含める画素を減らすステップとを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、第1のセット中の画素の第1のグレー・レベルを解析して第1の領域を識別するステップが、画素の第1のグレー・レベルをしきい値と比較するステップを含み、このしきい値が、画素の第1のグレー・レベルを決定するのに使用した統合された走査の回数に依存する。いくつかの実施形態では、第1のセット中の画素の第1のグレー・レベルを解析して第1の領域を識別するステップが、画素の第1のグレー・レベルをしきい値と比較するステップを含み、このしきい値が、隣接する画素のグレー・レベルに依存する。
【0049】
いくつかの実施形態では、追加の走査を実行するステップが、第2のセット中の画素の第2のグレー・レベルを解析して、前記エリア内の対象の構造体を表す第2の領域を識別するステップを含み、前記第2の領域が、第1のセットのサブセットであり、第1のセットよりも少ない数の画素を含み、追加の走査を実行するステップがさらに、前記領域の追加の走査を実行して、前記第2の領域の画素についてのみ第3のグレー・レベル値を決定するステップを含み、この第3のグレー・レベル値が、第2のグレー・レベルを決定するのに使用した走査の回数よりも多い回数の走査を統合することによって決定される。
【0050】
いくつかの実施形態では、この方法が、第1のエリアを含む材料の層を試料から除去することによって第2のエリアを露出させるステップと、第2のエリアの第2の領域を走査するステップであり、この第2の領域が、第2のエリア内の画素のサブセットを含み、第1の領域によって決定されるステップとをさらに含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、この方法が、材料を漸進的に除去して新たな表面を露出させるステップと、新たな表面が露出するたびに、それぞれの新たな表面の限定された領域を走査するステップであり、この限定された領域が、以前の走査における画素のグレー・レベルによって決定されるステップとをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記しきい値が、近隣の画素のグレー・レベルおよび以前の層の同じ位置の画素のグレー・レベルによって決定される。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、走査荷電粒子ビーム・アセンブリは、荷電粒子源と、荷電粒子ビームで試料を走査する偏向器と、荷電粒子ビームを試料の表面に集束させるレンズと、荷電粒子の衝突に反応した試料からの放出を検出する検出器と、走査荷電粒子ビーム・アセンブリの動作を制御するコンピュータと、上記方法の実施形態を実行するための命令を記憶したコンピュータ可読記憶装置とを備える。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、走査ビームを使用して画像を形成する方法は、ある視野を走査して、その視野の中の画素値を決定するステップと、この画素値を解析して、対象の特徴部分を表す画素のサブセットを決定するステップと、この画素のサブセットだけに対して追加の走査を実行して、対象の特徴部分の画像を生成するステップとを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、画素を解析するステップが、画素のグレー・レベルをしきい値と比較するステップを含む。いくつかの実施形態では、このしきい値が、画素値を決定するのに使用した走査の回数に依存する。いくつかの実施形態では、このしきい値が、隣接する画素のグレー・レベルに依存する。いくつかの実施形態では、追加の走査を実行するステップが、材料の層を除去するステップと、新たに露出した表面を走査するステップであり、この新たに露出した表面の走査される画素が、直前の表面の対応する画素のグレー・レベルによって決定されるステップとを含む。いくつかの実施形態では、材料の層を除去するステップと、新たに露出した表面を走査するステップであり、この新たに露出した表面の走査される画素が、直前の表面の対応する画素のグレー・レベルによって決定されるステップとを繰り返して、3次元画像を形成する。
【0055】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0056】
1010 デュアル・ビームFIB/SEMシステム
1014 イオン源
1016 集束カラム
1018 イオン・ビーム
1019 システム・コントローラ
1021 記憶装置
1022 試料
1024 可動X−Y−Zステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10