特許第6479319号(P6479319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479319
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】ゴムクローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20190225BHJP
【FI】
   B62D55/253 C
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-27383(P2014-27383)
(22)【出願日】2014年2月17日
(65)【公開番号】特開2015-151037(P2015-151037A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000239127
【氏名又は名称】福山ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 宏司
(72)【発明者】
【氏名】石川 格
(72)【発明者】
【氏名】今田 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】木曽 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 啓隆
(72)【発明者】
【氏名】乗藤 達哉
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2007/126116(JP,A1)
【文献】 国際公開第2006/043616(WO,A1)
【文献】 特開2006−151021(JP,A)
【文献】 特許第4540608(JP,B2)
【文献】 実開平02−149387(JP,U)
【文献】 特開2009−029206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/24−55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のゴム弾性体と、
前記ゴム弾性体の内周面の幅方向中央部に設けられた、走行装置の転輪の脱輪を防止するためのガイド突起と、
前記ゴム弾性体の前記内周面の幅方向両側に設けられた、前記走行装置のスプロケットに歯合する一対の駆動突起と、を備えるゴムクローラであって、
前記ゴム弾性体内に設けられた、前記ゴム弾性体の周方向に沿って延在する複数のスチールコードからなるスチールコード列と、
前記ゴム弾性体内に設けられた、前記ゴム弾性体の前記周方向に対して傾斜して延在する複数のバイアスコードからなるバイアスコード列と、を含み、
前記スチールコード列は、少なくとも、前記ガイド突起よりも外周面側の前記ゴム弾性体内、及び、前記内周面における前記転輪の転動する転輪幅域よりも外周面側の前記ゴム弾性体内、に設けられ、
前記バイアスコード列は、少なくとも、前記内周面における前記転輪幅域よりも外周面側の前記ゴム弾性体内に設けられるとともに、
前記バイアスコード列は、前記一対の駆動突起よりも外周面側の前記ゴム弾性体内には設けられていない
ことを特徴とするゴムクローラ。
【請求項2】
前記スチールコード列は、前記一対の駆動突起よりも外周面側の前記ゴム弾性体内には設けられていない
ことを特徴とする請求項1に記載のゴムクローラ。
【請求項3】
前記バイアスコード列は、
前記スチールコード列に対して前記ゴム弾性体の内周面側に設けられた第1バイアスコード列と、
前記スチールコード列に対して前記ゴム弾性体の外周面側に設けられた第2バイアスコード列と、を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴムクローラ。
【請求項4】
無端状のゴム弾性体と、
前記ゴム弾性体の内周面の幅方向中央部に設けられた、走行装置の転輪の脱輪を防止するためのガイド突起と、を備えるゴムクローラであって、
前記ゴム弾性体は、
前記ゴム弾性体内に設けられた、前記ゴム弾性体の周方向に沿って延在する複数のスチールコードからなるスチールコード列と、
前記ゴム弾性体内に設けられた、前記ゴム弾性体の前記周方向に対して傾斜して延在する複数のバイアスコードからなるバイアスコード列と、を含み、
前記スチールコード列は、少なくとも、前記ガイド突起よりも外周面側の前記ゴム弾性体内、及び、前記内周面における前記転輪の転動する転輪幅域よりも外周面側の前記ゴム弾性体内、に設けられ、
前記バイアスコード列は、少なくとも、前記内周面における前記転輪幅域よりも外周面側の前記ゴム弾性体内に設けられるとともに、
前記バイアスコード列は、前記ガイド突起よりも外周面側の前記ゴム弾性体内には設けられていない
ことを特徴とするゴムクローラ。
【請求項5】
前記ゴム弾性体の前記内周面の幅方向両側に設けられた、前駆走行装置のスプロケットに歯合する一対の駆動突起をさらに備え、
前記バイアスコード列は、前記一対の駆動突起よりも外周面側の前記ゴム弾性体内には設けられていない
ことを特徴とする請求項4に記載のゴムクローラ。
【請求項6】
前記スチールコード列は、前記一対の駆動突起よりも外周面側の前記ゴム弾性体内には設けられていない
ことを特徴とする請求項5に記載のゴムクローラ。
【請求項7】
前記スチールコード列よりも内周面側における前記ゴム弾性体のゴム硬度は、前記スチールコード列よりも外周面側における前記ゴム弾性体のゴム硬度よりも高い硬度を有している
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のゴムクローラ。
【請求項8】
前記バイアスコード列は、前記内周面における前記ガイド突起と前記一対の駆動突起の各々との間の領域よりも外周面側の前記ゴム弾性体内に設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至3、5、6の何れか1項に記載のゴムクローラ。
【請求項9】
前記バイアスコード列は、前記ガイド突起よりも外周面側の前記ゴム弾性体内に設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のゴムクローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無端状のゴム弾性体の内周面に周方向に間隔を有して設けられた駆動突起と、ゴム弾性体の内部に周方向に延在されたスチールコードと、ゴム弾性体の内部に設けられ、スチールコードの少なくとも下方に配置されたバイアスコードと備えるゴムクローラに係る。
【背景技術】
【0002】
ゴムクローラは、金属製クローラと比較して、軽量であり、走行抵抗や振動が小さいことから、一般的に高速走行用の車両に使用されている。このようなゴムクローラは、一般的に、無端状のゴム弾性体の幅方向中央部の内周面に間隔を有して設けられ、転輪の離脱を防止するガイド突起と、ゴム弾性体の幅方向両側部の内周面に一定の間隔を有して設けられスプロケットに歯合する駆動突起とを有してなる。このゴムクローラは、内部に金属性の金型が存在しないので、金属製クローラと比較して、剛性は弱い。
【0003】
そこで、ゴムクローラの内部に、ゴム弾性体の周方向に延在されたスチールコードや、スチールコードの少なくとも下方のゴム弾性体内に配置されてゴム弾性体の周方向に対して斜めに傾いて延びるバイアスコードを設けられたもの提案されている(特許文献1参照)。スチールコードによってゴム弾性体の周方向に作用する引っ張り力が補強され、バイアスコードによってゴム弾性体の横方向に作用する力(例えば、ねじり)が補強される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−191089号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このゴムクローラは、走行時には、駆動輪となるスプロケットと従動輪との間を循環しながら移動し、ゴムクローラがスプロケットや従動輪の回りを回転移動する際には、ゴムクローラは大きく屈曲する。ここで、ゴムクローラの屈曲時には、ガイド突起や駆動突起は剛性が高く屈曲し難いので、周方向に隣接するガイド突起間や駆動突起間で大きく屈曲する。従って、ゴム弾性体内に設けられたスチールコードやバイアスコードが破断する虞れが生じる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、内部にスチールコードやバイアスコードが設けられたゴムクローラにおいて、スチールコードやバイアスコードが破断等する虞が低いゴムクローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態に係わるゴムクローラは、
無端状のゴム弾性体の内周面の幅方向中央部に転輪の脱輪を防止するガイド突起が設けられ、
前記無端状のゴム弾性体内に、前記転輪の転動する域内に沿って前記ゴム弾性体の周方向に延在させた複数列のスチールコード列が配設され、
前記スチールコード列と前記転輪が転動する前記ゴム弾性体の内周面との間の少なくとも前記ゴム弾性体内に配置されて前記スチールコード列とオフセット角を有するバイアスコード列が設けられ、
前記バイアスコード列は、前記スチールコード列と前記転輪が転動する前記内周面との間の前記ゴム弾性体内部に所定角度を有して複数のオフセット位置に配設されたバイアスコードよりなるように構成される。
【0008】
上記ゴムクローラによれば、無端状のゴム弾性体内に、転輪の転動する域内に沿ってゴム弾性体の周方向に延在させた複数列のスチールコード列が配設され、スチールコード列と転輪が転動するゴム弾性体の内周面との間の少なくともゴム弾性体内に配置されて前チールコード列とオフセット角を有するバイアスコード列が設けられている。このため、スチールコード列及びバイアスコード列がゴム弾性体の幅方向の略全体に亘って配設されたゴムクローラと比較して、ゴムクローラの剛性を低くすることができる。このため、ゴムクローラは柔らかくなり、ゴムクローラの屈曲時に発生する応力も小さくなる。よって、ゴム弾性体内のスチールコード及びバイアスコードが破断する虞を抑制可能なゴムクローラを実現できる。また、転輪が転動するゴム弾性体の内周面よりも外側のゴム弾性体内には、スチールコード列及びバイアスコード列が存在するので、転輪から作用する負荷に対して十分な剛性を確保することができる。
【0009】
また、幾つかの実施形態では、
前記バイアスコード列は、
前記スチールコード列を挟んで、該スチールコード列の前記ゴム弾性体の内周面側と外周側に設けた第1バイアスコード列と第2バイアスコード列とが存在するとともに、前記スチールコード列の幅域よりも小さい幅域に形成されて前記転輪が転動する転輪幅と対面する位置に配置されているように構成される。
【0010】
この場合には、スチールコード列の前記ゴム弾性体の内周面側と外周側に設けた第1バイアスコード列と第2バイアスコード列とが存在するので、転輪から作用する負荷に対してより十分な剛性を確保することができる。また、スチールコード列の外周側に第2バイアスコード列が配設されているので、下からの衝撃等に対して第2バイアスコード列によってスチールコード列を保護することができる。また、バイアスコード列は、前記スチールコード列の幅域よりも小さい幅域に形成されているので、ゴム弾性体を柔らかくすることができ、バイアスコード列が存在しない領域において、ゴムクローラの屈曲時にスチールコードが破断する虞を低減することができる。
【0011】
また、幾つかの実施形態では、
前記転輪が転動する前記ゴム弾性体内に配設された前記バイアスコード列の幅域は、少なくとも前記転輪幅と同等又はそれよりも大に設定されているように構成される。
【0012】
この場合には、バイアスコード列の幅域は、少なくとも転輪幅と同等又はそれよりも大に設定されているので、転輪がゴム弾性体に作用する負荷に対するゴムクローラの剛性を確実に確保することができる。
【0013】
また、幾つかの実施形態では、
前記ガイド突起よりも外周面側の前記ゴム弾性体内には、前記バイアスコード列が配設されていないように構成される。
【0014】
この場合、ガイド突起よりも外周面側ゴム弾性体内の下方にはバイアスコード列が存在しないので、周方向に隣接するガイド突起間のゴム弾性体を柔らかくすることができる。このため、周方向に隣接するガイド突起間のスチールコードの破断を抑制することができる。
【0015】
また、幾つかの実施形態では、
前記ゴム弾性体の前記内周面の幅方向両側には、スプロケットに歯合する駆動突起が設けられ、
前記駆動突起よりも外周面側の前記ゴム弾性体内には、前記スチールコード列が配設されていないように構成される。
【0016】
この場合には、駆動突起よりも外周面側のゴム弾性体内にスチールコードが存在しないので、周方向に隣接する駆動突起間のゴム弾性体を柔らかくすることができる。このため、ゴムクローラ全体の硬度を低くすることができ、ゴム弾性体に存在するスチールコードやバイアスコードが破断する虞を抑制することができる。
【0017】
また、幾つかの実施形態では、
前記ゴム弾性体内のスチールコード列よりも前記内周面側のゴム硬度は、前記スチールコード列よりも前記ゴム弾性体の外周面側のゴム硬度よりも高い硬度を有しているように構成される。
【0018】
この場合、ゴム弾性体内のスチールコード列よりも内周面側のゴム硬度は、スチールコード列よりもゴム弾性体の外周面側のゴム硬度よりも高い硬度を有しているので、転輪の負荷に対するゴム弾性体の剛性を向上させることができる。このため、ガイド突起の下方のゴム弾性体内にバイアスコード列が存在しない場合のねじり剛性の低下を補うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、内部にスチールコードやバイアスコードが設けられたゴムクローラにおいて、スチールコードやバイアスコードが破断等する虞の 低いゴムクローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一端側にスプロケットが配設され、他端側に従動輪が配設され、これらに掛け回されたゴムクローラの内周面上を転動する複数の転輪が設けられた走行装置の部分斜視図である。
図2】スプロケットの斜視図である。
図3】転輪の斜視図である。
図4】同図(a)は、ゴム弾性体の内周面上を転輪が転動する側のゴムクローラの部分平面図であり、同図(b)は、同図(a)のIVa−IVa矢視に相当する部分のゴムクローラの断面図である。
図5】同図(a)は、図4(b)のIVb-IVb矢視に相当する部分(1)、(2)、(3)のゴム弾性体の断面図であり、同図(b)は、図4(b)のIVc−IVc矢視に相当する部分のゴムクローラの断面図である。
図6】同図(a)は駆動輪に掛け回されたゴムクローラの部分側面図であり、同図(b)は同図(a)のスプロケットの歯部の部分拡大図である。
図7】他の実施形態に係るゴムクローラの図4(a)のIVa−IVa矢視に相当する部分(1)、(2)、(3)のゴム弾性体の断面図である。
図8】同図(a)は、図7のVIIb−VIIb矢視に相当する部分(1)、(2)、(3)のゴム弾性体の断面図であり、同図(b)は、図7(b)のVIIc−VIIc矢視に相当する部分のゴムクローラの断面図である。
図9】他の実施形態に係るゴムクローラの図4(a)のIVa−IVa矢視に相当する部分のゴム弾性体の断面図である。
図10】同図(a)は、図9のIXa−IXa矢視に相当する部分(1)、(2)、(3)のゴム弾性体の断面図であり、同図(b)は、図9のIXb−IXb矢視に相当する部分のゴムクローラの断面図であり、同図(c)は、図9のIXc−IXc矢視に相当する部分のゴムクローラの断面図であり、同図(d)は、図9のIXd−IXd矢視に相当する部分のゴムクローラの断面図である。
図11】他の実施形態に係るゴムクローラの図4(a)のIVa−IVa矢視に相当する部分のゴム弾性体の断面図である。
図12】同図(a)は、図11のXIa−XIa矢視に相当する部分(1)、(2)、(3)のゴム弾性体の断面図であり、同図(b)は、図11のXIb−XIb矢視に相当する部分のゴムクローラの断面図であり、同図(c)は、図11のXIc−XIc矢視に相当する部分のゴムクローラの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明のゴムクローラの実施形態について、図1図12を参照しながら説明する。本実施形態では、車両に設けられた走行装置を例にして説明する。先ず、本発明のゴムクローラを説明する前に、ゴムクローラを備える走行装置について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成部品の材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0022】
走行装置1は、図1(部分斜視図)に示すように、図示しない車両の車体の側部の前後方向一端部に回転駆動可能に支持された駆動輪10と、車体の側部の前後方向他端部に回転自在に支持された従動輪(図示せず)と、駆動輪10及び従動輪間に掛け回されたゴムクローラ20と、ゴムクローラ20の下側の内周面上を転動する複数の転輪60とを有してなる。
【0023】
駆動輪10は、図2(斜視図)に示すように、車両に設けられたエンジン等からの駆動力を受けて回転可能である。駆動輪10は、幅方向に一定の間隔を有して対向配置され一対のスプロケット11を備え、これら一対のスプロケット11が車両から延びる駆動軸の先端部に取り付けられて、駆動輪10を形成している。スプロケット11の外周縁には、周方向に一定の間隔を有して設けられた複数の歯部12が形成されている。この歯部12がゴムクローラ20の駆動突起40と歯合してゴムクローラ20に回転力を伝達する。スプロケット11の内側には、スプロケット11と同心軸上に配置されてゴムクローラ20から脱輪するのを防止するためのガイドローラ13が設けられている。一対のスプロケット11のガイドローラ13間には、ゴムクローラ20の幅方向中央部に設けられたガイド突起30が通過可能な隙間15が設けられている。このため、駆動輪10は、一対のガイドローラ13によってゴムクローラ20から脱輪することなく、駆動輪10の回転力をゴムクローラ20に伝達可能である。
【0024】
転輪60は、図3(斜視図)に示すように、幅方向に一定の間隔を有して対向配置され一対の転輪本体61を備え、これら一対の転輪本体61が車両の車体から延びる支持軸(図示せず)の先端部に回転自在に取り付けられている。この支持軸は車両の車体に対して上下方向に移動自在に支持されている。転輪本体61の外周面には、ゴム製の環状体63が装着されている。この環状体63によって路面から受ける衝撃を吸収可能である。一対の転輪本体61間には、一対のスプロケット11と同様に、ゴムクローラ20のガイド突起30が通過可能な隙間65が設けられている。
【0025】
次に、本発明に係わるゴムクローラ20について説明する。ゴムクローラ20は、図4(a)(部分平面図)及び図4(b)(断面図)に示すように、無端状のゴム弾性体21と、ゴム弾性体21の内周面21aの幅方向中央部に周方向に一定の間隔を有して設けられて転輪60の脱輪を防止するガイド突起30と、ゴム弾性体21の内周面21aの幅方向両外側部に周方向に一定のピッチを有して設けられてスプロケット11と歯合される駆動突起40と、を備えてなる。
【0026】
ゴム弾性体21は、ゴム製であり、無端状であって帯状に形成されている。ゴム弾性体21の外周面21bには、径方向外側へ突出してゴム弾性体21の周方向に間隔を有して設けられたラグ22が複数形成されている。
【0027】
一方、ゴム弾性体21の内周面21aに設けられたガイド突起30は、内周面21aに対して略直交する方向に延びる略直方体状に形成されている。ガイド突起30は、側面視において、ゴム弾性体21の内周面21aから離反するに従って漸次先細になるように形成されている。このため、ゴムクローラ20がスプロケット11に屈曲しながら回転する際に、ゴムクローラ20の周方向に隣接するガイド突起30同士が接触するのを防止している。
【0028】
ガイド突起30は、一対のスプロケット11間の隙間15内及び、転輪60の一対の転輪本体61間の隙間65内を通過可能な大きさを有するとともに、転輪60がゴムクローラ20から脱輪するのを規制可能な高さを有している。
【0029】
ゴム弾性体21の内周面21aの幅方向両側に設けられた駆動突起40は、側面視においてゴム弾性体21の内周面21aから離反するに従って漸次先細になるように略半円状に形成され、平面視において横長の矩形状に形成されている。また、駆動突起40はスプロケット11の歯部12と同一ピッチを有して内周面21aに設けられている。このため、駆動突起40はスプロケット11の歯部12と良好に歯合して、スプロケット11の駆動力が駆動突起40を介してゴム弾性体21に伝達される。
【0030】
このゴム弾性体21の内周面21aの幅方向両側に設けられた一対の駆動突起40は、内周面21aの幅方向中央部に設けられたガイド突起30とともに、ゴム弾性体21の周方向に対して直交する方向に直線状に配置されている。
【0031】
ゴム弾性体21は、その厚さ方向の中間部に周方向に連続的に延びる複数列のスチールコード列45が設けられている(図4(b)参照)。スチールコード列45は、図4(b)、図5(a)(断面図)、図5(b)(断面図)に示すように、一対の駆動突起40の下方のゴム弾性体21内、ガイド突起30の下方のゴム弾性体21内、転輪60が転動するゴム弾性体21の内周面21aよりも外側のゴム弾性体21内に、転輪60の転動する域内に沿ってゴム弾性体21の幅方向に複数列に配設されている。即ち、スチールコード列45は、ゴム弾性体21の幅方向の一端側の駆動突起40の下方部位から他端側の駆動突起40の下方部位まで隙間なく配設されている。スチールコード列45を構成するスチールコード46は、例えば、φ5mmの鉄製の線状部材の表面に真鍮メッキをしたものである。
【0032】
また、スチールコード列45の上方の近接位置及び下方の近接位置であって、ゴム弾性体21の幅方向両側に設けられた駆動突起40間には、バイアスコード列47が設けられている。バイアスコード列47は、スチールコード列45の上方に配設され、ゴム弾性体21の周方向に対して幅方向一方側に約60度傾斜してオフセットさせたバイアスコード48を複数の位置に配設してなる第1バイアスコード列49と、スチールコード列45の下方に配設され、ゴム弾性体21の周方向に対して幅方向他方側に約60度傾斜してオフセットさせたバイアスコード48を複数の位置に配設してなる第2バイアスコード列50とが存在する。バイアスコード48は、例えば、φ1mmの金属製(鋼、真鍮、合成繊維)の線状部材である。スチールコード列45によってゴムクローラ20の周方向の剛性が高められ、バイアスコード列47によってゴムクローラ20の幅方向の剛性(ねじり剛性)が高められる。
【0033】
次に、ゴムクローラ20の作動について、図4(a)、図4(b)、図6(a)、図6(b)を参照しながら説明する。図6(a)に示すように、駆動輪10が回転すると、駆動輪10の回転に伴ってゴムクローラ20が回転する。ゴムクローラ20の回転時に、ゴムクローラ20のゴム弾性体21の一部分がスプロケット11に掛け回されると、周方向に隣接する駆動突起40間や周方向に隣接するガイド突起30(図4(a)参照)間が屈曲する。そして、ゴム弾性体21の一部分がスプロケット11から離れると、周方向に真っ直ぐ延びた状態に戻る。そして、さらなるゴムクローラ20の回転に伴って、ゴムクローラ20の一部分は、複数の転輪60(図1参照)を通過した後に、図示しない従動輪に掛け回される。従動輪に掛け回されたゴムクローラ20の一部分は、スプロケット11の場合と同様に、周方向に隣接する駆動突起40間や周方向に隣接するガイド突起(図4(a)参照)間が屈曲する。そして、ゴムクローラ20の一部分は、以下、同様にして、スプロケット11と従動輪との間を循環する。
【0034】
ここで、ゴムクローラ20の一部分が駆動輪10に掛け回されると、図6(b)に示すように、ゴム弾性体21の一部分のうち駆動突起40やガイド突起30がある部位は剛性が高いので屈曲し難い。このため、周方向に隣接する駆動突起40間の内側部位Puや周方向に隣接するガイド突起30間は小さな曲率半径(大きい曲率)を有して屈曲する。このため、スチールコード列45やバイアスコード列47が延在するゴム弾性体21内に大きな応力が発生し、これらのコードが破断する虞が生じる。
【0035】
しかしながら、ゴムクローラ20の駆動突起40の下方のゴム弾性体21内には、図4(b)に示すように、バイアスコード列47が存在しない。即ち、バイアスコード列47は、スチールコード列45の幅域よりも小さい幅域を有している。このため、周方向に隣接する駆動突起40間の剛性を低下させることができる。よって、駆動突起40間のスチールコード列45が破断する虞を抑制することができる。なお、バイアスコード列47は、一対の駆動輪40間に連続的に延在するので、ゴムクローラ20全体のねじり剛性を確保することができる。また、転輪60が転動するゴム弾性体21内に配設されたバイアスコード列47の幅域は、転輪60が転動する転輪幅よりも大であるので、転輪60がゴム弾性体21に作用する負荷に対するゴムクローラ20の剛性を確実に確保することができる。
【0036】
また、図7に示すように、図4(b)に示すゴムクローラ20の内部構造において、一対の駆動突起40の下方にスチールコード列45が存在しないようにしてもよい。即ち、このゴムクローラ20は、図7図8(a)、図8(b)に示すように、一対の駆動突起40間の転輪60が通過するゴム弾性体21内、ガイド突起30の下方のゴム弾性体21内に、スチールコード列45がゴム弾性体21の幅方向に連続して配設されるとともに、スチールコード列45の上下位置のそれぞれにバイアスコード列47が設けられている。
【0037】
このようにすると、図4(b)に示すゴムクローラ20と比較して、ゴムクローラ20の屈曲時の剛性を低くすることができるので、ゴムクローラ20の屈曲時にゴム弾性体21内に発生する応力を小さくすることができる。このため、周方向に隣接するガイド突起30間のスチールコード列45やバイアスコード列47(第1バイアスコード列49、第2バイアスコード列50)の破断を抑制することができる。
【0038】
また、図9に示すように、図4(b)に示すゴムクローラ20の内部構造において、ガイド突起30の下方にバイアスコード列47が存在しないようにしてもよい。即ち、このゴムクローラ20は、図9図10(a)、図10(b)、図10(c)、図10(d)に示すように、一対の駆動突起40の下方、一対の駆動突起40間の下方にスチールコード列45がゴム弾性体21の幅方向に連続して配設され、一対の駆動突起40間の転輪60が通過するゴム弾性体21内のそれぞれにバイアスコード列47(第1バイアスコード列49、第2バイアスコード列50)が設けられている。また、転輪60が転動するゴム弾性体21内に配設されたバイアスコード列47(第1バイアスコード列49、第2バイアスコード列50)の幅域は、転輪60が転動する転輪幅と略同じ幅を有している。
【0039】
このようにすると、周方向に隣接するガイド突起30間のゴム弾性体21を柔らかくすることができる。このため、周方向に隣接するガイド突起21間のスチールコード列45の破断を抑制することができる。また、転輪60が転動するゴム弾性体21内に配設されたバイアスコード列47の幅域は、転輪幅と略同じ幅を有しているので、転輪60がゴム弾性体21に作用する負荷に対するゴムクローラ20の剛性を確実に確保することができる。なお、ガイド突起30の下方のバイアスコード列47が無くなると、一対の駆動突起40間に存在したバイアスコード列47の連続性がなくなり、ゴムクローラ20全体のねじり剛性が低下する虞が生じる。
【0040】
そこで、このねじり剛性の低下を防止するため、ゴム弾性体21内のスチールコード列45よりも内周面21a側の内側部分21cのゴム硬度は、スチールコード列45よりもゴム弾性体21の外周面21b側の外側部分21dのゴム硬度(55度以上75度以下)よりも高い硬度(80度以上100度未満)を有するように構成する(図9参照)。低硬度と高硬度の相対差は、例えば、5度以上あればよい。このようにすると、ゴム弾性体21の横方向に対する負荷の剛性を高めることができる。従って、ゴムクローラ20全体のねじり剛性を高めることができる。また、転輪60が接触するゴム弾性21体の内周面21aの剛性も向上するので、内周面21aの摩耗を低減することができる。
【0041】
また、図11に示すように、図9に示すゴムクローラ20の内部構造において、一対の駆動突起40の下方にスチールコード列45が存在しないようにしてもよい。即ち、このゴムクローラ20は、図11図12(a)、図12(b)、図12(c)に示すように、一対の駆動突起40間の下方にスチールコード列45がゴム弾性体21の幅方向に連続して配設され、一対の駆動突起40間の転輪が通過するゴム弾性体21内のそれぞれにバイアスコード列47(第1バイアスコード列49、第2バイアスコード列50)が設けられている。
【0042】
このようにすると、周方向に隣接する駆動突起40間のゴム弾性体21を柔らかくすることができる。このため、周方向に隣接するガイド突起30間のスチールコード列45の破断を抑制することができる。但し、ガイド突起30の下方にバイアスコード列47が無いので、図7の場合と同様に、一対の駆動突起40間に存在したバイアスコード列47の連続性がないので、ゴムクローラ20のねじり剛性が低下する虞が生じる。
【0043】
この場合も、ゴム弾性体21内のスチールコード列45よりも内周面21a側の内側部分21cのゴム硬度が、スチールコード列45よりもゴム弾性体21の外周面21b側の外側部分21dのゴム硬度よりも高い硬度を有するように構成する。このようにすると、ゴム弾性体21の横方向に対する負荷の剛性を高めることができ、従って、ゴムクローラ20全体のねじり剛性を高めることができる。また、転輪60が接触するゴム弾性体21の内周面21aの剛性も向上するので、内周面21aの摩耗を低減することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。例えば、上述した各種実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 走行装置
10 駆動輪
11 スプロケット
12 歯部
13 ガイドローラ
15、65 隙間
20 ゴムローラ
21 ゴム弾性体
21a 内周面
21b 外周面
21c 内側部分
21d 外側部分
22 ラグ
30 ガイド突起
40 駆動突起
45 スチールコード列
46 スチールコード
47 バイアスコード列
48 バイアスコード
49 第1バイアスコード列
50 第2バイアスコード列
60 転輪
61 転輪本体
63 環状体
Pu 内側部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12