(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479377
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】上肢動作支援器具用カバー
(51)【国際特許分類】
B43L 15/00 20060101AFI20190225BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20190225BHJP
A61F 4/00 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
B43L15/00
A61H1/02 G
A61F4/00
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-186187(P2014-186187)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-55601(P2016-55601A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】三澤 秀樹
【審査官】
槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−176959(JP,A)
【文献】
特開2010−083076(JP,A)
【文献】
特開2011−000752(JP,A)
【文献】
特開2006−240028(JP,A)
【文献】
特開平08−034191(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3012863(JP,U)
【文献】
特開2011−194008(JP,A)
【文献】
特開2010−005112(JP,A)
【文献】
特開2005−111959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 15/00
B43K 23/004−23/012
A61F 2/54−2/58
A61F 2/68
A61F 4/00
A47G 21/00−21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作を支援するための上肢動作支援器具に装着するカバーであって、前記上肢動作支援器具用カバーのカバー本体の長手方向の一方の端部に保持部を設け、前記カバー本体と前記保持部によって被保持部材を保持可能とし、該保持部がベルト状で、保持部の厚さが0.1〜2.0mmであることを特徴とする上肢動作支援器具用カバー。
【請求項2】
前記保持部に挿入部を設け、該挿入部を該保持部の外部に設けることを特徴とする請求項1に記載の上肢動作支援器具用カバー。
【請求項3】
前記カバー本体の長手方向の他方の端部に滑り止め機能部を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の上肢動作支援器具用カバー。
【請求項4】
前記保持部が少なくとも弾性材料からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の上肢動作支援器具用カバー。
【請求項5】
前記弾性材料が合成皮革であることを特徴とする請求項4に記載の上肢動作支援器具用カバー。
【請求項6】
前記上肢動作支援器具用カバーに、少なくとも可逆熱変色性材料を用いること特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の上肢動作支援器具用カバー。
【請求項7】
前記上肢動作支援器具用カバーに、少なくとも蓄光性材料を用いることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の上肢動作支援器具用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作を支援するための上肢動作支援器具に装着する上肢動作支援器具用カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、介護や福祉分野などにおける介助者や被介護者双方の補助、労働作業や日常作業を補助することを目的とした装置の開発が積極的に進められている。このような、人体の動作を補助することを目的とした装置は、特許文献1のように、人体の肩甲−上腕機構の動きをスムーズに補助可能とした上肢装着型補助装置や、特許文献2のように、特許文献1よりも小型であり、被補助者の上肢の動作を補助して食事などの手作業を被補助者自らの意志で行うことを可能とした上肢動作補助装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5194213号公報
【特許文献2】特開平11−253504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では人体の肩甲−上腕機構の動きをスムーズにするためのもので、大きな装置であり、特許文献2では特許文献1よりも小型であるものの、手に震えがある人や握力が弱い人などの動作を支援するには、細かい動作を必要とするため不向きであった。そこで、近年では、手、指などの動作を支援するための上肢動作支援器具が開発され、大きさもコンパクトとなり、簡易的な上肢動作支援器具として、好適に用いられている。
【0005】
また、最近では、手などの上肢に震えがある人や握力が弱い人などでも、筆記具類や食事用具類などを脱落することなく、しっかりと保持して、日常生活に支障が出ないようにすることが、介護や福祉分野などにおける介助者や被介護者双方介護から、望まれている。特に、署名など筆記具を用いた筆記動作は、手などの上肢に震えがある人には、難しい動作であり、より安定して筆記できる方法が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、上肢動作支援器具に装着するカバーを用いて、手などの上肢に震えがある人や握力が弱い人などでも、筆記具類、文具類、食事用具類などの被保持部材を脱落することなく、しっかりと保持することが可能である上肢動作支援器具用カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.動作を支援するための上肢動作支援器具に装着するカバーであって、前記上肢動作支援器具用カバーのカバー本体の長手方向の一方の端部に保持部を設け、前記カバー本体と前記保持部によって被保持部材を保持可能とすることを特徴とする上肢動作支援器具用カバー。
2.前記保持部が少なくとも弾性材料からなることを特徴とする第1項に記載の上肢動作支援器具用カバー。
3.前記保持部がベルト状であることを特徴とする第1項または第2項に記載の上肢動作支援器具用カバー。
4.前記弾性材料が合成皮革であることを特徴とする
第2項に記載の上肢動作支援器具用カバー。
5.前記保持部に挿入部を設けることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の上肢動作支援器具用カバー。
6.前記上肢動作支援器具用カバーに、少なくとも可逆熱変色性材料を用いること特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の上肢動作支援器具用カバー。
7.前記上肢動作支援器具用カバーに、少なくとも蓄光性材料を用いることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の上肢動作支援器具用カバー」とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、手などの上肢に震えがある人や握力が弱い人などでも、ボールペン、鉛筆、マーカー、タッチペンなどの筆記具類、修正テープ、消しゴム、のり、カッター、ホチキスなどの文具類、スプーン、フォーク、ナイフなどの食事用具類などの被保持部材を脱落することなく、しっかりと保持し、安定して使用することが可能である上肢動作支援器具用カバーを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例の上肢動作支援器具に上肢動作支援器具用カバーを装着したものを、上部から見た外観図である。
【
図4】実施例の上肢動作支援器具用カバーとその保持部によって被保持部材を保持した状態を示す図である。
【
図5】実施例の上肢動作支援器具用カバーを使用した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴としては、動作を支援するための上肢動作支援器具に装着するカバーであって、前記上肢動作支援器具用カバーのカバー本体の長手方向の一方の端部に保持部を設け、前記カバー本体と前記保持部によって被保持部材を保持可能とすることを特徴とする上肢動作支援器具用カバーとすることで、筆記具類、文具類、食事用具類などの被保持部材を脱落することなく、しっかりと保持し、安定して使用することが可能である。
【0011】
本発明で用いる前記上肢動作支援器具用カバーは、手の動作を支援するための上肢動作支援器具を覆うものである。上肢動作支援器具は金属や樹脂などの硬質材料で作成されており、前記上肢動作支援器具用カバーで覆うことで、手などへのフィット性を向上して、動作しやすくし、さらに上肢動作支援器具の破損や汚れを防ぐため、好適に用いることができる。
【0012】
そこで、本発明の特徴としては、前記上肢動作支援器具用カバーの長手方向の一方の端部に保持部を設け、前記カバーと前記保持部によって被保持部材を保持可能とすることで、筆記具類、文具類、食事用具類などの前記被保持部材を脱落することなく、しっかりと保持することが可能となる。また、前記保持部は、前記上肢動作支援器具用カバーの外部に設けても、内部に設けても良いが、外部に設ける方が、前記被保持部材を握りやすく、さらに前記カバーに取り付けやすいためやすいため、好ましい。
【0013】
保持部は、保持部の厚さは、被保持部を保持するときの伸縮性や保持性を考慮すれば、0.1〜2.0mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、0.3〜1.5mmの範囲が好ましい。
【0014】
保持部については、前記被保持部材を脱落することなく、しっかりと保持できれば、特には限定されないが、強度と伸縮性を兼ね備え、どんな被保持部材でも保持できるようにするため、少なくとも弾性材料を用いることが好ましい。尚、カバー本体には、体に直接、触れる部分が多いため、触感や汗の吸収性などを考慮して、被保持部材と異なる材料、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタンなどの繊維やそれらの合成繊維とすることが好ましい。さらに、弱酸性の繊維やそれらの合成繊維がより好ましい、これは人の肌は弱酸性であり、汗や乾燥により肌のpHがアルカリ性に偏ることで、有害菌繁殖での臭いが発生してしまい、弱酸性の合成繊維を用いることで、肌のpHを弱酸性のまま維持しやくできるためである。
【0015】
本発明で用いる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、ゴム材料、合成皮革、人工皮革などが挙げられる。これらの弾性材料の中でも、強度と伸縮性を兼ね備え、より保持性が良い合成皮革を用いることが好ましく、より考慮すれば、合成皮革の中でもオレフィン系レザーを用いることがより好ましい。
【0016】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が挙げられ、ゴム材料としては、天然ゴムの他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが挙げられ、合成皮革は、ウレタン系レザー、オレフィン系レザー、アクリル系レザー、塩化ビニル系レザー等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0017】
前記保持部の形状については、前記被保持部材を保持しやすくするために、ベルト状の保持部とするのが好ましい、これは、ベルト状にすることで、前記被保持部材を差し込みやすく、さらに保持性が良いためである。さらに、前記ベルト状の保持部には、内部や外部に鉄線、銅線などの金属線などの金属材料を用いて強度を上げて、保持性を向上したり、ベルト状の保持部は長さを調整可能な調整ベルトを用いて、保持性を向上しても良い。さらに、形状記憶性の材料を用いて、使用しやすくしても良い。また、前記ベルト状の保持部は、上肢動作支援器具用カバーの長手方向に沿った形状とすることで被保持部材が、上肢の長手方向に対して、垂直状に保持することができ、被保持部材が使用し易くすることができるので好ましい。
【0018】
また、前記保持部には、被保持部材を挿入しやすくするために、挿入部を設けることが好ましい。挿入部については、複数設けることで、挿入箇所を選択することができ、使い勝手が良いため、好ましい。また、前記挿入部は、しっかりと保持できれば、前記保持部のどこに設けても良く、さらに構造や形状には限定されるものでもないが、両端を開口した略円筒状の挿入部を前記保持部の外部に設けることが好ましい。
【0019】
本発明での被保持部材は、特に限定されるものではなく、ボールペン、鉛筆、マーカー、タッチペンなどの筆記具類、修正テープ、消しゴム、のり、カッター、ホチキスなどの文具類、スプーン、フォーク、ナイフなどの食事用具類などが挙げられる。
【0020】
また、前記上肢動作支援器具用カバーには、被保持部材を用いて筆記時や食事時などの動作を安定して行えるように、上肢動作支援器具用カバーの他方の端部に滑り止め機能部を設けることが好ましい。これは、滑り止め機能部を設けることで、前記カバーと机などの台に接する時、滑りづらくすることで、安定して動作を行えるため好ましい。尚、滑り止め機能部には、他のカバー部よりも机などの台に接するときの接触抵抗の大きい弾性材料などの素材を用いること、凹凸部を設け、構造的に滑り止め機能を有すること、上肢動作支援器具に設けた滑り止め部を外部に露出するための窓部を設けること等が例示でき、これらを複合的に用いてもよい。
【0021】
また、前記上肢動作支援器具用カバーの一部に、少なくとも可逆熱変色性材料を用いることが好ましい。これは、前記カバーに可逆熱変色性材料を用いることで、気温や体温の変化によって前記カバーが変色し、特に、上肢に接触する部分に可逆熱変色性材料を用いることで、気温や体温変化によって前記上肢動作支援器具用カバーが、変色することで、一目で気温、体温管理をすることが可能となるためである。
【0022】
また、前記上肢動作支援器具用カバーの一部に、少なくとも蓄光性材料を用いることが好ましい。これは、前記カバーに蓄光性材料を用いることで、太陽や電灯等の光線を吸収・蓄積すれば、暗い場所や停電時でも、発光することで、前記上肢動作支援器具用カバーを装着しやすくなるためである。
【0023】
前記可逆熱変色性材料は、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含有した材料が有効である。
【0024】
また、前記蓄光性材料については、太陽や電灯等の光線を吸収、蓄積し、暗所において光を徐々に放出して発光する特性を有するものであれば汎用のものが用いられ、CaS/Bi系、CaSrS/Bi系、ZnS/Cu系、ZnCdS/Cu系、SrAl2O4/稀土類金属系等を含有した材料が有効である。
【0025】
次に、実施例を示して本発明を説明する。
図1、4に示す実施例の上肢動作支援器具用カバー(ポリエステル繊維)1は、上肢動作支援器具2の略全体を覆う、長さ30cm、厚さ3mmのカバーである。具体的には、上肢動作支援器具用カバー1のカバー本体1Aの一方の端部には、合成皮革(オレフィン系レザー、厚さ0.7mm)からなるベルト状の保持部1Bを屈曲可能に設けてあり、前記カバー本体1Aと保持部1B間に被保持部材(筆記具)3を挿入して保持できるように設けてある。
【0026】
また、上肢動作支援器具用カバー1のカバー本体1Aの他方の端部には、上肢動作支援器具2に設けた弾性材料からなる滑り止め部2Aを露出するための窓部1Cを設けてある。
【0027】
図5に示す実施例の上肢動作支援器具2を使用するには、先ず、上肢動作支援器具2を、カバー本体1Bの他方の端部に設けた窓部1Cから、上肢動作支援器具2の一方の端部を進入させ、窓部1Cが上肢動作支援器具2の滑り止め部2Aが露出するまで挿入して被覆する。
【0028】
その後、上肢動作支援器具用カバー1で被覆した上肢動作支援器具2を、手と腕に装着して固定する。具体的には、前記上肢動作支援器具用カバー1で被覆した上肢動作支援器具2の一方の端部を手の平に位置し、手の甲側に向かって手首から腕にかけて巻き付け、他方の端部が腕に位置する装着する。また、カバー本体1Aの一方の端部に設けた保持部4には、被保持部材(筆記具)3を挿入し、クリップによって、その後の進入を防止して保持してあり、この被保持部材を把持することで、安定した状態で、紙面(図示せず)に筆記を行うことができた。
【0029】
尚、実施例では便宜上、前記保持部には、筆記具を挿入したものを例示しているが、修正テープ、消しゴム、のり、カッター、ホチキスなどの文具、スプーン、フォーク、ナイフなどの食事用具などの被保持部材でも良く、また、それらを複数本挿入して用いることもできる。また、実施例では、便宜上、上肢動作支援器具用カバー1で被覆した上肢動作支援器具2を手と腕に装着しているが、腕のみに装着することもできるが、前記した被保持部材の使い勝手を鑑みると、手のひらに一方の端部、腕に他方の端部が位置するように装着することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
手などの上肢に震えがある人や握力が弱い人などでも、筆記具類、文具類、食事用具類などの被保持部材を脱落することなく、しっかりと保持し、安定して使用することが可能である上肢動作支援器具用カバーとして利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 上肢動作支援器具用カバー
1A カバー本体
1B 保持部
1C 窓部
2 上肢動作支援器具
2A 滑り止め部
3 被保持部材(筆記具)