(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付の図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1乃至
図8は本発明による乳母車の一実施の形態を説明するための図である。このうち、
図1及び
図2には、乳母車の全体構成が示されている。
図1に示すように、乳母車1は、折り畳み可能な乳母車本体2と、乳母車本体2に装着された幌3と、乳母車本体2に装着されたシート4と、を備えている。シート4は、クッション性を有した既知のものを用いることができ、好ましくは、乳母車本体2に対して着脱可能となっている。このシート4上に乳幼児が座る又は寝ることになる。
【0019】
図2に示すように、乳母車本体2は、本体フレーム10と、本体フレーム10に取り付けられ、リクライニング可能にシート4を支持するシート支持枠20と、本体フレーム10に揺動可能に接続されたハンドル30と、を有している。このうち、本体フレーム10は、それぞれ左右に配置された一対の前脚11と、それぞれ左右に配置された一対の後脚12と、それぞれ左右に配置された一対のアームレスト13と、を有している。
図1及び
図2に示す乳母車1では、前脚11の上方端部及び後脚12の上方端部は、対応する側(左側または右側)に配置されたアームレスト13の前方部分に接続され、アームレスト13に対して揺動可能になっている。本体フレーム10の各前脚11の下端には、前輪14が保持され、本体フレーム10の各後脚12の下端には、後輪15が保持されている。
【0020】
さらに、アームレスト13の後方部分は、第1連結材16及び第2連結材17を介して、対応する側(左側または右側)に配置された後脚12の中間部分に接続されている。本実施の形態では、アームレスト13の後方部分及び第1連結材16の上方部分を、第1軸部材18が貫通している。第1軸部材18を介して、アームレスト13及び第1連結材16が相対揺動可能(回動可能)に接続されている。さらに、第1軸部材18は、後述するシート支持枠20のフレーム要素25も貫通している。一方、第1連結材16の下方部分及び第2連結材17の上方部分を、第2軸部材19が貫通している。第2軸部材19を介して、第1連結材16及び第2連結材17が相対揺動可能(回動可能)に接続されている。さらに、第2軸部材19は、シート支持枠20も貫通している。第2軸部材19がシート支持枠20をも貫通することから、第1連結材16及び第2連結材17は、シート支持枠20とも相対揺動可能(回動可能)となっている。また、第2連結材17の下方部分は、後脚12の中間部分に枢着されている。これにより、第2連結材17が後脚12と接続され、後脚12に対して揺動可能となっている。
【0021】
このような本体フレーム10に対し、ハンドル30が揺動可能に接続されている。
図1に示すように、ハンドル30は、全体として略U字状の形状をもつ。ハンドル30は、
図1及び
図2に示す背面押し位置と、不図示の対面押し位置と、に固定され得る。ハンドル30を本体フレーム10に対して揺動可能とする構成は、既知の構成、例えば、JP2008−254688Aに開示された構成を、採用することができる。したがって、本明細書においては、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0022】
また、
図1及び
図2に示す乳母車1は、広く普及しているように、折り畳み可能に構成されている。折り畳み可能な乳母車1の構成も、既知の構成、例えば、上述したJP2008−254688Aに開示された構成を、採用することができる。したがって、本明細書においては、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0023】
なお、本明細書中において、乳母車1、乳母車本体2及び幌3に対する「前」、「後」、「上」および「下」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にある乳母車1に乗車する乳幼児を基準とした「前」、「後」、「上」および「下」を意味する。したがって、乳母車1、乳母車本体2および幌3に関して用いる「前後方向」とは、
図1における紙面の概ね左と右とを結ぶ方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、乗車した乳幼児が向く側であり、
図2における紙面の左側が乳母車1、乳母車本体2および幌3の前後方向における前側となる。一方、乳母車1、乳母車本体2および幌3に関して用いる「上下方向」とは前後方向に直交するとともに乳母車1の接地面に直交する方向である。したがって、乳母車1の接地面が水平面である場合、「上下方向」とは鉛直方向をさす。また、乳母車1、乳母車本体2および幌3に関して用いる「幅方向」とは、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する横方向である。
【0024】
本実施の形態において、幌3は、本体フレーム10ではなくシート支持枠20に取り付けられている。その上、幌3は、シート支持枠20に対する取付位置が変更可能になっている。このような形態によれば、乳幼児がシートに座った状態では、乳幼児の頭から離れた位置で幌3をシート支持枠20に取り付けることができる。一方、乳幼児がシート上で寝ころんだ状態では、乳幼児がシート4上で寝ころんだ状態において、乳幼児に対して比較的近い位置で幌3をシート支持枠20に取り付けることができる。このため、幌3を大型にしなくても、乳幼児に到達し得る日差しを効果的に遮ることが可能となる。以下、幌3及び当該幌3が取り付けられるシート支持枠20について説明していく。先ず、幌3が取り付けられるシート支持枠20について、
図3を参照して説明する。
図3は、シート支持枠20及び幌3の一部を拡大して示す斜視図である。
【0025】
図3に示すように、シート支持枠20は、座部支持要素21と、座部支持要素21と接続された背部支持要素22と、を有している。座部支持要素21は、乳母車1に乗車した乳幼児の臀部の下方から位置するようになり、背部支持要素22は、乳母車1に乗車した乳幼児の背中の背後に位置するようになる。また、背部支持要素22は、座部支持要素21に対して揺動可能(傾倒可能)となっている。これにより、シート4のリクライニング動作が可能となっている。
【0026】
本実施の形態の座部支持要素21は、全体としてコの字状乃至やや角張った略U字状に形成され、背部支持要素22も、全体としてコの字状乃至やや角張った略U字状に形成されている。これらコの字状の座部支持要素21とコの字状の背部支持要素22とが互いの開放部を向かい合わせるようにして、対応する端部同士が枢着されている。すなわち、背部支持要素22は、座部支持要素21と接続され、座部支持要素21に対して揺動可能となっている。
【0027】
座部支持要素21は、コの字状に形成された軸状の座部フレーム材21aと、座部フレーム材21aがなすU字の端部にそれぞれ取り付けられたベース基材21bと、を有している。座部フレーム材21aは、単一の材料(例えばアルミニウムからなる金属製のパイプ)を曲げることによって形成された一体物の部品(部材)とすることができる。一方、ベース基材21bは、座部フレーム材21aの端部を覆うキャップ状の部材として、例えば樹脂を用いて形成され得る。
【0028】
背部支持要素22は、コの字状に形成された軸状の背部フレーム材22aと、背部フレーム材22aがなすコの字の端部にそれぞれ取り付けられた端部材22bと、を有している。背部フレーム材22aは、単一の材料(例えばアルミニウムからなる金属製のパイプ)を曲げることによって形成された一体物の部品(部材)とすることができる。一方、端部材22bは、背部フレーム材22aの端部を覆うキャップ状の部材として構成されている。
【0029】
図2によく示されているように、第1連結材16及び第2連結材17を貫通する前述の第2軸部材19は、背部支持要素22の端部材22b及び座部支持要素21のベース基材21bをも貫通している。これにより、上述したように、背部支持要素22が、座部支持要素21と接続され、座部支持要素21に対して揺動可能となっている。
【0030】
また、
図2に二点鎖線で示されているように、座部支持要素21および背部支持要素22に囲まれた部分に、シート4を背面から支持するようになる布材31が張設、言い換えると張った状態で保持されている。布材31は、座部フレーム材21a並びに背部フレーム材22aにその端部を取り付けられている。この結果、布材31は、前後方向および幅方向に緊張状態、言い換えると張った状態に維持される。座部支持要素21および背部支持要素22によって支持された布材31が或る程度の剛性を有するようになるので、シート4を支持する座部支持要素21および背部支持要素22を板状の部材として作製する必要がなく、また、シート4に板状部材を設ける必要もない。これにより、乳母車1を軽量化することが可能となり、また、乗り心地の面でも優れる。
【0031】
また、好ましくは、座部支持要素21の両端部の間または背部支持要素22の両端部の間に連結補強要素23が設けられてもよい。図示された実施の形態において、連結補強要素23は、例えばアルミニウム等からなる金属製のパイプからなり、その両端を座部支持要素21のベース基材21bに固着されている。
【0032】
さらに、
図3に示すように、シート支持枠20は、背部支持要素22に接続され背部支持要素22に対して揺動可能な上部支持要素24と、上部支持要素24および
図2に示す乳母車本体2に接続されたフレーム要素25と、を有している。
【0033】
上部支持要素24は、U字状乃至コの字状に形成された軸状の上部フレーム材24aを有している。上部フレーム材24aは、単一の材料(例えば樹脂製のパイプ)をU字状に形成した一体物の部品(部材)とすることができる。上部フレーム材24aは、背部フレーム材22aに枢着されている。これにより、上述したように、上部支持要素24が、背部支持要素22と接続され、背部支持要素22に対して揺動可能となっている。
【0034】
一方、背部支持要素22の両側方に、軸状に延びる一対のフレーム要素25が設けられている。各フレーム要素25は、単一の材料(例えば樹脂製の角材)にて成形された一体物の部品(部材)とすることができる。各フレーム要素25の後方部分は、上部フレーム材24aに枢着されている。これにより、上述したように、フレーム要素25が、上部支持要素24と接続され、上部支持要素24に対して揺動可能となっている。一方、各フレーム要素25の前方部分は、対応する側のアームレスト13の後方部分及び第1連結材16の上方部分を貫通する第1軸部材18に貫通されている(
図2参照)。これにより、フレーム要素25が、本体フレーム10と第1軸部材18を介して接続され、本体フレーム10に対して揺動可能となっている。
【0035】
本実施の形態において、フレーム要素25は、リンクとして機能し、座部支持要素21に対する背部支持要素22の揺動に連動して、上部支持要素24を背部支持要素22に対して揺動させるように構成される。
図3から理解されるように、フレーム要素25は、背部支持要素22が座部支持要素21に対して倒れるように揺動するときに、上部支持要素24を背部支持要素22に対して立ち上がるように揺動させるようになっている。言い換えると、乳母車1の幅方向からみたときに、フレーム要素25は、背部支持要素22が座部支持要素21に対してなす角度が小さくなるように揺動するときに、上部支持要素24を背部支持要素22に対してなす角度が大きくなるように揺動させる。上部支持要素24が背部支持要素22に対して倒れた状態において(
図3に示す状態)、シート4上で寝ころんだ状態の乳幼児を、一対のフレーム要素25によって側方から保護すると共に、上部支持要素24によって後方から保護することもできる。
【0036】
また、フレーム要素25は、背部支持要素22が座部支持要素21に対して立ち上がるように揺動するときに、上部支持要素24を背部支持要素22に対して倒れるように揺動させるようになっている(
図9に示す状態参照)。言い換えると、乳母車1の幅方向からみたときに、フレーム要素25は、背部支持要素22が座部支持要素21に対してなす角度が大きくなるように揺動するときに、上部支持要素24を背部支持要素22に対してなす角度が小さくなるように揺動させる。背部支持要素22が座部支持要素21に対して立ち上がった状態において、シート4上に座った状態の乳幼児を、一対のフレーム要素25によって側方から保護することができるとともに、上部支持要素24がヘッドレストとして機能する(
図9に示す状態参照)。なお、背部支持要素22が座部支持要素21に対して立ち上がった状態において、上部支持要素24は背部支持要素22に対して前方に僅かに傾斜した状態となっている(
図9に示す状態参照)。
【0037】
ただし、図示されたシート支持枠20は、一例にすぎず、種々の態様からなるシート支持枠20が想定され得る。例えば、背部支持要素22が、他の部材を介して、座部支持要素21と間接的に接続されていてもよいし、上部支持要素24が、他の部材を介して、背部支持要素22と間接的に接続されていてもよい。あるいは、フレーム要素25は、上部支持要素24および本体フレーム10の少なくとも一方に対して、さらに別の部材を介して接続されていてもよい。また、座部支持要素21及び背部支持要素22は、軸状のフレーム部材にて構成される例に限定されず、板状のプレート部材にて構成されていてもよい。
【0038】
このようなシート支持枠20に対して、幌3が取付位置を変更可能に取り付けられている。
図4は、幌3の全体構成を示す斜視図である。ただし、理解を容易にすべく
図1に示す幌布53を省略して示している。
図4に示す幌3は、折り畳み可能に構成されている。
図4に示すように、幌3は、相対移動可能な複数の幌骨51と、複数の幌骨51によって支持された幌布53(
図1参照)と、複数の幌骨51を相対移動可能に支持する取付部材54と、を備えている。このうち取付部材54は、シート支持枠20のフレーム要素25に摺動可能に取り付けられている。幌3の取付部材54がシート支持枠20のフレーム要素25に摺動可能に取り付けられることにより、幌3は、シート支持枠20のフレーム要素25に対する取付位置が変更可能となっている。
【0039】
先ず、幌3を構成する幌骨51について説明する。本実施の形態では、幌骨51は、第1の幌骨51aと、当該第1の幌骨51aより後方側にある第2の幌骨51bと、当該第2の幌骨51bより後方側にある第3の幌骨51cと、を含んでいる。各幌骨51は、逆U字状に曲げられ、その各基端部が直接または間接的に取付部材54に支持されている。本実施の形態において、第1の幌骨51a及び第2の幌骨51bは、互いに異なる位置で取付部材54に枢着され、これにより、取付部材54に対して揺動可能となっている。一方、第3の幌骨51cは、取付部材54に固定され、取付部材54に対して相対運動不能となっている。また、
図1によく示されるように、第1の幌骨51aと第2の幌骨51bとの間には、リンク機構からなる開度規制具52が枢着されている。この開度規制具52によって、第1の幌骨51aの第2の幌骨51bに対する開度が規制される。
【0040】
このような幌骨51の開閉状態に応じて幌布53が広げられる。幌布53は、広げられるほど乳幼児の頭上のより広い範囲を覆い、より広い範囲から降り注ぐ日差しから乗車中の乳幼児を保護することができる。幌布53として、例えば従来より用いられてきた布材を用いることができる。
【0041】
次に、複数の幌骨51を支持する取付部材54について
図5を参照して説明する。
図5は、幌3の取付部材54を拡大して示す斜視図である。
図5に示すように、取付部材54は、シート支持枠20のフレーム要素25に取り付けられる摺動部55と、摺動部55に回動可能に取り付けられた回動部56と、を有している。このうち、回動部56は、その基端部において摺動部55に回動可能に接続され、基端部から概ねくの字状に延び出している。回動部56の先端部には、上述の第1の幌骨51aが枢着されている。また、回動部56のうちの基端部と先端部との間となる中間部分に、上述の第2の幌骨51bが固定されている。一方、第3の幌骨51cは、回動部56ではなく摺動部55に固定されている。かかる構成によれば、回動部56が摺動部55に対して回動すると、回動部56に取り付けられた第1の幌骨51a及び第2の幌骨51bが、摺動部55に固定された第3の幌骨51cに対して相対的に回動する。また、第1の幌骨51aを回動部56に対して回動させることにより、第1の幌骨51aが第2の幌骨51bさらには第3の幌骨51cに対して相対的に回動する。
【0042】
図5に示すように、取付部材54の摺動部55は、中空空間55aをもつ軸状の形状からなる。摺動部55の中空空間55aを、当該摺動部55の軸方向d1に沿ってシート支持枠20のフレーム要素25が貫通している。摺動部55と、摺動部55の中空空間55a内に挿入されたフレーム要素25と、の間には、いくらか遊びが設けられている。したがって、摺動部55は、フレーム要素25に固定されていない状態において、フレーム要素25上で摺動可能になっている。とりわけ、摺動部55の中空空間55aがシート支持枠20によって貫通されることから、摺動部55がシート支持枠20上でバランスよく摺動する。
【0043】
図6は、取付部材54をフレーム要素25に取り付ける方法について説明するための断面図である。
図6に示すように、摺動部55の上側を向く面に、軸方向d1に延びる開口55bが設けられており、当該開口55bは中空空間55aに繋がっている。この開口55b内にロック部材57が挿入されている。ロック部材57は、摺動部55をシート支持枠20のフレーム要素25に対して固定するためのものである。
図6に示す例では、ロック部材57は、摺動部55から突出した押圧部57aと、摺動部55の中空空間55a内に配置された規制部57bと、開口55bを通るようにして押圧部57aから規制部57bまで延びる接続部57cと、を有している。
【0044】
このうち、押圧部57aは、乳母車1の使用者によって指で操作される部分を構成する。
図5に示す押圧部57aは、直方体状の形状を有し、開口55bを通過不能な大きさをもつ。すなわち、摺動部55の軸方向d1に直交する方向において、押圧部57aの長さは、摺動部5の開口55bの長さよりも大きくなっており、押圧部57aの開口55bからはみ出した部分が、摺動部55の上側の面と対面している。接続部57cは、押圧部57aと規制部57bとを連結する部分である。
図6に示す接続部57cは、押圧部57aから摺動部55の開口55bを通り抜けて規制部57bまで延びている。
【0045】
一方、規制部57bは、摺動部55をフレーム要素25に対して固定するための部分を構成する。規制部57bは、摺動部55の内面とフレーム要素25との間に挿入されている。
図6に示す規制部57bは、長尺状に形成され、摺動部55の軸方向d1に沿って延びている。とりわけ、規制部57bは、軸方向d1に沿って前方側から後方側に向かうにつれて、厚みが薄くなっている。したがって、規制部57bを軸方向d1に沿って後方に移動させることにより、摺動部55の内面とフレーム要素25との間の隙間を規制部57bで埋めることができる。摺動部55の内面とフレーム要素25との間の隙間を規制部57bで埋めることで、規制部57bが摺動部55の内面とフレーム要素25とに嵌合し、摺動部55をフレーム要素25に対して固定することができる。とりわけ、本実施の形態のロック部材57は、多少弾性をもち変形可能な材料にて構成されている。このため、規制部57bを軸方向d1に沿って後方に移動させたときに、規制部57bが摺動部55の内面とフレーム要素25との間で押し潰される。これにより、規制部57bが摺動部55の内面とフレーム要素25とに効果的に嵌合し、摺動部55をフレーム要素25に対してより確実に固定することができる。
【0046】
なお、ロック部材57の形態は、
図6に示す例に限定されない。ロック部材57の他の例として、摺動部55に設けられた孔を貫通するボルトにて構成され、ボルトによって摺動部55をフレーム要素25に対して固定してもよい。
【0047】
次に、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は、シート4を倒した状態での幌3の取付状態の一例を示す側面図であり、
図8は、シート4を立ち上がらせた状態での幌3の取付状態の一例を示す側面図である。
【0048】
図7に示すように、乳母車1に月齢の低い乳幼児を乗車させるときには、シート4をリクライニングさせて、乳幼児をシート4上で寝ころばせる。具体的には、シート支持枠20の背部支持要素22を座部支持要素21に対して倒す。背部支持要素22が座部支持要素21に対して倒れることに伴い、フレーム要素25が上部支持要素24を背部支持要素22に対して立ち上がるように揺動させる。このとき、フレーム要素25自身は、アームレスト13に対して倒れる方向に揺動していく。リクライニング状態では、乳幼児に到達する日差しをできるだけ遮るべく、幌3が乳幼児に接近した位置で乳幼児の上方の広範な範囲を覆うことが望まれる。このため、幌3が乳幼児に接近した位置で乳幼児の上方の広範な範囲を覆うように、幌3のシート支持枠20に対する取付位置を変更する。
図7に示す例では、幌3の摺動部55をフレーム要素25に対して摺動させてアームレスト13に比較的接近した位置まで摺動部55を移動させる。続いて、ロック部材57を操作して、摺動部55をシート支持枠20のフレーム要素25に対して固定する。その後、各幌骨51a〜51c間の角度を大きくして幌骨51を広げ、乳幼児の上方の広範な範囲を幌3で覆い、乳幼児に到達する日差しを遮る。
【0049】
一方、
図8に示すように、ある程度の月齢の乳幼児を乗車させるときには、シート4を起こして、乳幼児を起立したシート4上に座らせる。具体的には、シート支持枠20の背部支持要素22を座部支持要素21に対して立ち上げる。背部支持要素22が座部支持要素21に対して立ち上がることに伴い、フレーム要素25が上部支持要素24を背部支持要素22に対して倒れるように揺動させる。このとき、フレーム要素25自身は、アームレスト13に対して立ち上がる方向に揺動していく。シート4が立ち上がった状態では、乗車する乳幼児と接触することがないよう、幌3が乳幼児の頭から離れた位置に配置されることが望まれる。このため、幌3が乳幼児の頭から離れた位置に位置するように、幌3のシート支持枠20に対する取付位置を変更する。
図8に示す例では、幌3の摺動部55をフレーム要素25に対して摺動させて上部支持要素24に比較的接近した位置まで摺動部55を移動させる。続いて、ロック部材57を操作して、摺動部55をシート支持枠20のフレーム要素25に対して固定する。
【0050】
以上のように、本実施の形態によれば、本体フレーム10と、本体フレーム10に取り付けられ、リクライニング可能にシート4を支持するシート支持枠20と、シート支持枠20に対する取付位置が変更可能となるように当該シート支持枠20に取り付けられた幌3と、を備える。このような形態によれば、幌3のシート支持枠20に対する取付位置を変更することができるため、乳幼児がシート4に座った状態では、乳幼児の頭から離れた位置で幌3をシート支持枠20に取り付けることができる。これにより、幌3が乗車する乳幼児と接触するおそれを低減することができる。一方、乳幼児がシート4上で寝ころんだ状態では、乳幼児に対して比較的近い位置で幌3をシート支持枠20に取り付けることができる。この状態で幌3を広げれば、幌3で乳幼児の上方の広範な範囲を覆うことができる。このため、幌3を大型にしなくても、シート4を倒した状態において乳幼児に到達し得る日差しを効果的に遮ることが可能となる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、幌3は、シート支持枠20に対して摺動することにより当該シート支持枠20に対する取付位置を変更可能になっている。この場合、幌3のシート支持枠20に対する取付位置を容易に変更することができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、幌3は、上部支持要素24と本体フレーム10とに対して揺動可能なフレーム要素25に取り付けられている。
図7から理解されるように、フレーム要素25は、本体フレーム10と上部支持要素24との間を延びることから、シート4を倒したときに、乗車する乳幼児の側方上部を通過していく。このため、フレーム要素25が乳幼児に接近した適度な位置で幌3を支持することができるため、幌3の大型化を回避する点で有利である。加えて、
図8から理解されるように、フレーム要素25は、本体フレーム10と上部支持要素24との間を延びることから、シート4を起こしたときに、上下方向とのなす角度が小さくなる。このため、幌3のフレーム要素25に対する取付位置を上部支持要素24寄りに変更することにより、幌3を上方寄りに移動させ乳幼児の頭から有効に離間させることができる。このような傾向をより強化する観点から、フレーム要素25は、アームレスト13の後方部分及び第1連結材16を貫通する第1軸部材18を介して本体フレーム10に接続され、本体フレーム10に対して揺動可能になっていることが好ましい。
【0053】
また、本実施の形態によれば、幌3は、互いに相対揺動可能な複数の幌骨51と、複数の幌骨51を支持し、シート支持枠20に摺動可能に取り付けられる取付部材54と、を有している。取付部材54がシート支持枠20に摺動可能に取り付けられるため、幌3のシート支持枠20に対する取付位置を容易に変更することができる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、取付部材54は、シート支持枠20が貫通する中空空間55aをもつ摺動部55を有し、摺動部55が、シート支持枠20上で摺動するようになっている。この場合、シート支持枠20が摺動部55の中空空間55aを貫通することにより、摺動部55がシート支持枠20上でバランスよく摺動する。
【0055】
また、本実施の形態によれば、幌3は、取付部材54をシート支持枠20に対して固定するロック部材57をさらに有している。この場合、ロック部材57を操作することにより、幌3をシート支持枠20に対して固定することができるため、幌3の取付位置が安定する。
【0056】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0057】
上述した実施の形態では、
図2に示すように、利用者が手動で幌3のフレーム要素25に対する取付位置を変更する例を示している。しかしながら、例えば、幌3のフレーム要素25に対する取付位置を変更する形態は、上述の例に限定されない。
図9乃至
図11に、幌3のフレーム要素25に対する取付位置を変更する他の例を示す。
図9乃至
図11に示す例では、乳母車1は、取付部材54と背部支持要素22とに接続された第1リンク要素60をさらに備える。その一方で、幌3にロック部材57が設けられていない。
【0058】
図9に示すように、背部支持要素22の両側方に、軸状に延びる一対の第1リンク要素60が設けられている。各第1リンク要素60は、単一の材料(例えば樹脂製の角材)にて成形された一体物の部品(部材)とすることができる。各第1リンク要素60の下方部分は、対応する側の背部支持要素22の中間部分に枢着されている。これにより、第1リンク要素60が、背部支持要素22と接続され、背部支持要素22に対して揺動可能となる。一方、各第1リンク要素60の上方部分は、対応する側の取付部材54の摺動部55に枢着されている。これにより、第1リンク要素60が、摺動部55と接続され、摺動部55に対して揺動可能となる。とりわけ、
図9に示す例では、第1リンク要素60の上方部分は、摺動部55の幅方向内側の面に枢着されている。
【0059】
本実施の形態において、第1リンク要素60は、リンクとして機能し、座部支持要素21に対する背部支持要素22の揺動に連動して、摺動部55をフレーム要素25上で揺動させるように構成される。
図10に示すように、第1リンク要素60は、背部支持要素22が座部支持要素21に対して倒れるように揺動するときに、摺動部55をアームレスト13に近づけるようにフレーム要素25上で摺動させる。これにより、
図10に示すシート4のリクライニング状態において、幌3を乳幼児に接近した位置に位置させることができる。
【0060】
一方、
図11に示すように、第1リンク要素60は、背部支持要素22が座部支持要素21に対して立ち上がるように揺動するときに、摺動部55を上部支持要素24に近づけるようにフレーム要素25上で摺動させる。背部支持要素22が座部支持要素21に対して立ち上がった状態において、フレーム要素25は、上下方向とのなす角度が小さくなる。このため、幌3のフレーム要素25に対する取付位置を上部支持要素24寄りに変更することにより、幌3を上方寄りに移動させ乳幼児の頭から離間させることができる。
【0061】
図9乃至
図11に示す変形例によれば、幌3と背部支持要素22とに接続され、座部支持要素21に対する背部支持要素22の揺動に連動して、幌3をフレーム要素25上で摺動させる第1リンク要素60をさらに備える。このような形態によれば、乳幼児をシート4上に座らせて乳母車1を走行するときには、背部支持要素22が座部支持要素21に対して立ち上がるように揺動し、この揺動に連動して第1リンク要素60が摺動部55を上部支持要素24に近づける。これにより、幌3を乳幼児の頭から自動で離間させることができ、幌3が乗車する乳幼児と接触することを妨げることができる。一方、乳幼児をシート4上で寝ころばせて乳母車1を走行するときには、背部支持要素22が座部支持要素21に対して倒れるように揺動し、この揺動に連動して第1リンク要素60が摺動部55をアームレスト13に近づける。これにより、幌3を乳幼児に接近したフレーム要素25上の位置に自動で位置させることができる。この状態で幌3を広げると、幌3で乳幼児の上方の広範な範囲を覆うことができる。これらのことから、幌3を大型にしなくても、乳幼児に到達し得る日差しを効果的に遮ることが可能となる。
【0062】
また、上述した実施の形態では、
図2に示すように、フレーム要素25が上部支持要素24と本体フレーム10とにそれぞれ接続され、上部支持要素24と本体フレーム10とに対して揺動可能な例を示したが、このような例に限定されない。例えば、フレーム要素25が上部支持要素24と座部支持要素21とに接続され、上部支持要素24と座部支持要素21との両方に対して揺動可能になっていてもよい。
【0063】
また、上述した実施の形態では、
図4に示すように、幌3が相対移動可能な3つの幌骨51を備える例を示したが、幌骨51の数は、上述した例に限定されない。幌は、相対移動可能な任意の数の幌骨を備えることができる。一例として、幌は、相対移動可能な2つの幌骨を備えていてもよい。