(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
複数枚のティシュペーパーからなる束を収納箱内に収納し、その収納箱(カートン箱或いはカートンとも称される)の上面に設けられた取出口からティシュペーパーを順次一枚(一組とされたものも含む)ずつ引き出して使用するティシュペーパー製品はよく知られる。その取り出し方法は、一枚を取り出すとそれに連続して次ぎの一枚が取出し口から引き出されるポップアップ式となっている。
【0003】
このティシュペーパー製品の中には、薬液を封入したマイクロカプセルをバインダーや保湿剤等の他の薬液に混合して収納箱内に収納するティシュペーパーにロール転写等によって付与しておき、ティシュペーパーを収納箱から取り出す際にティシュペーパーに加わる物理的な刺激や使用者が手などによってティシュペーパーに与える物理的な刺激によって、マイクロカプセルを崩壊させて薬液による機能を発揮させるようにしたものがある。
【0004】
係る薬液としては、香料が代表的であり、かかる香料によって香りが発せられるようにしたティシュペーパーは良く知られる。
【0005】
しかし、このような香料等を封入したマイクロカプセルをティシュペーパーに付与したティシュペーパー製品は、製造の際にマイクロカプセルが崩壊し、歩留まりの悪化や、マイクロカプセル崩壊に伴う製造設備に付着した香料等の洗浄作業などの問題があった。例えば、係るティシュペーパーは、香料等を封入したマイクロカプセルをバインダーや保湿剤等に混合して塗布液を調整し、これを印刷設備にてティシュペーパー原紙にロール転写して巻き取って原反ロールを製造し、さらに、これを折畳み設備に移送してセットし、係る原反ロールから繰出してティシュペーパー原紙を折り畳むなどして製造されており、印刷設備の巻き取りや折畳み設備におけるセットや原紙の繰り出しの際にマイクロカプセルが崩壊し、これが歩留まり悪化等の要因となっている。
【0006】
そこで、かかるティシュペーパー製品においては、製造時におけるマイクロカプセルの崩壊を極力発生させないようにことが求められている。例えば、マイクロカプセルの付与から折畳みまでの間に、巻き取り、移送、繰り出しなどの工程を省いて、マイクロカプセルの付与から折畳みまでを一連に行なうようにすれば、マイクロカプセルの崩壊の機会を減少し、歩留まりが向上する。
【0007】
しかし、マイクロカプセルの付与から折畳みまでを一連に行なうようにするなど、マイクロカプセルの崩壊が極力ないようにティシュペーパーに付与すると、歩留まりの問題は改善されるものの、マイクロカプセルにヒビ、傷などがはいった完全に崩壊しないまでも崩壊しやすい状態のマイクロカプセルの存在も低下し、また、製造時の崩壊によって意図せずともティシュペーパーに付着する香料等の量も低下する。そして、このような製造時における崩壊しやすい状態のマイクロカプセルの発生は、例えば、香料等のティシュペーパーの付着によってティシュペーパーに香りを付与することを補助する効果がある。
【0008】
したがって、マイクロカプセルの付与から折畳みまでを一連に行なうようにするなどして、マイクロカプセルの崩壊が極力ないようにティシュペーパーに付与すると、使用者が収納箱からティシュペーパーを取り出しても、香りが十分に発せられなくなる等の新たな問題が生じてくる。特に、香料の場合、この問題は、メントール系、ミント系等の揮発性の高い香料において顕著となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次いで、本発明の実施の形態を
図1〜9を参照しながら以下に詳述する。
本実施形態に係るティシュペーパー製品100は、
図1〜
図5に示されるように、薬液を封入したマイクロカプセルが付与された複数枚のティシュペーパー2t,2t…が、折り畳まれ積層されてなるティシュペーパー束2が、上面11に環状に閉じた部分を有する取出口形成用ミシン目線20が形成された収納箱1に収納され、使用時に取出口形成用ミシン目線20の裂開により形成される取出口20Xからティシュペーパー2tを取り出すと、隣接して積層されている下層のティシュペーパー2tの一部が取出し口20Xから露出される、所謂ポップアップ形式のものである。
【0020】
ティシュペーパー束2が収納される収納箱1は、カートン箱やカートンとも呼ばれる例えば直六面体形状であり、製品外観をなすものである。この収納箱1は、上面11に取出口20Xを形成するための取出口形成用ミシン目線20を有する箱体10を有し、前記取出口形成用ミシン目線20により囲まれる範囲20aが紙箱内側から第一シート材31と第二シート材32とによって覆われている。
【0021】
箱体10の素材、大きさ、形状、展開形状等は既知の収納箱の箱体の構成を採用することができる。素材としては、例えば、バージンパルプ、古紙パルプ等の各種のパルプを主原料とする既知の紙素材や、プラスチック素材、樹脂素材が採用できる。好適な紙箱10の素材は、坪量250〜500g/m
2のコートボール紙である。また、この種の一般的な収納箱の大きさは、長手縁の長さL1が110〜320mm、短手縁の長さL2が70〜200mm、高さL3が40〜150mm程度であり、本実施形態に係る収納箱1もこの大きさとすることができる。
【0022】
本実施形態の箱体10の構造は、
図2、
図3に示すように、底面12と一方の長側面13を糊代部12Aで糊付けして筒状とした後、上面11、底面12及びこれらを連接する長側面13から延出する各フラップF,F…を箱内面側に折り返し、各フラップF,F…の当接部分をホットメルト接着剤等により接着して短側面14を構成した構造となっている。但し、本発明の箱体10は、この構造に限定されるわけではない。
【0023】
他方、箱体10の上面に形成される取出口形成用ミシン目線20は環状をなし、適宜のカットタイ比で構成されている。取出口形成用ミシン目線20は、通常のミシン目線の他、二重ミシン目線、ジッパーミシン目線等で構成することができる。一部分のみ二重ミシン目線としてもよい。
【0024】
本実施形態に係る取出口形成用ミシン目線20は、箱体長手方向に延在する長辺21,21とこの長辺21,21の端同士を繋ぐ短手縁に平行な短辺22,22とを有し、取出口形成用ミシン目線20に囲まれる範囲20aの形状は、収納箱1の長手方向に沿う方向が長い適宜の形状である。一般的には、収納箱1の長手方向に沿うやや細長い角取り矩形、或いはその矩形の長辺21,21の中央部を外方に向かってやや膨張させてアーチ状とし、楕円に近い形状としたものである。図示の形態は後者の例を示している。
【0025】
他方、本実施形態に係るティシュペーパー製品100では、上記のとおり取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲20aが収納箱内面に貼付された第一シート材31と第二シート材32とによって被覆されている。そして、それら第一シート材31及び第二シート材32は、紙箱上面11の内側面11iにおいて、特に取出口形成用ミシン目線20の切り剥がしに影響がないように、取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲の外方において接着剤40により箱体10に接着されているとともに、特に、それらの縁部31E,32Eが前記取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの短手方向中央部において、収納箱外面側からこの順でかつ自由な状態で積層されている。したがって、収納箱内のティシュペーパー2t,2tは、第一シート材31と第二シート材32との積層された縁部間30aを通って取出口20Xを介して収納箱外に取り出されるようになっている。このように第一シート材31と第二シート材32とを配置することで、取出口20Xから露出するティシュペーパー2tの一部が各シート材31,32によって支持されて収納箱内部に落ち込むことが防止される。それとともに、第一シート材31と第二シート材32との積層部分30aをティシュペーパー2tが通る際に、ティシュペーパー2tが第一シート材31の縁部31Eと第二シート材32の縁部32Eとに挟まれるようにして接し、それら縁部31E,32Eによって擦られることになるため、ティシュペーパー2tが取り出される際に、各シート材31,32の縁部31E,32Eによってティシュペーパー2tに適度な物理的な刺激が加わり、付与されたマイクロカプセルの崩壊の発現や、崩壊の助長がなされ、この時点で薬液の機能が発揮されるものとなる。例えば、薬液が香料であれば香気が発せられるようになる。これについて従来の一般的なティシュペーパー製品との対比で説明すると、従来の一般的なティシュペーパー製品では、周知のとおり、取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲が一枚の単一のシート材で被覆されており、そのシート材の取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲にスリットを形成して、このスリットからティシュペーパーを取り出すようにして、スリット間にティシュペーパーを支持するようになっている。しかし、この従来構成のティシュペーパー製品では、ティシュペーパーの取出時にティシュペーパーがスリットの縁若しくはその極近傍にしか接しないため、取出時にティシュペーパーに対して与える物理的刺激が弱く、マイクロカプセルが崩壊し難い。本実施形態のティシュペーパー製品100では、このような従来製品に比して、ティシュペーパー2tが取り出される際にシート材31,32が与える物理的な刺激が高められており、ティシュペーパー2tに付与されたマイクロカプセルの崩壊が助長され、もって薬液による機能がこの時点で確実に発揮される状態となるのである。
【0026】
他方で、図示のティシュペーパー製品100では、第一シート材31と第二シート材32の積層部分30aは、収納箱1の長手方向に沿って、またティシュペーパー束2の折畳み縁2Eに沿って、取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの長手方向の端20eまで延在されている。このような積層部分30aの配置形態は、箱体10に対して二枚のシート材をその縁部が重なるようにして貼付するだけで容易に形成することができるとともに、ティシュペーパー束2の収納態様との関係で取出時におけるティシュペーパー2tと当該縁部30aが擦れやすくなるため望ましい。なお、図示の形態では、第一シート材31及び第二シート材32の当該各縁31e,32eは、収納箱1の長手方向に沿って直線に形成されているが、例えば、山形や波形の縁であってもよい。
【0027】
第一シート材31と第二シート材32の縁部31E,32Eの重なり幅L4としては、3〜30mm、より好適には10〜20mmであるのが望ましい。3mm未満であると、ティシュペーパー2tと縁部31E,32Eとの擦れが十分ではなく、マイクロカプセルの崩壊を助長する効果が十分に発揮されないおそれがある。また、30mmを超えると、収納箱内のティシュペーパー2tを取り出し難くなる、特に、未使用の状態からティシュペーパー束2の最上部のティシュペーパー2tを取り出す際の取出しがし難くなる。
【0028】
他方、本発明に係るティシュペーパー製品100では、
図6に示すように、第一シート材31及び第二シート材32に加えて、さらに、第二シート材32よりも収納箱内面側に第三シート材33を設けてもよい。この場合、第一シート材31、第二シート材32及び第三シート材33が、その各縁31e,32e,33eが互い違いに位置するように、また、前記第一シート材31と第三シート材33の縁部31E,33Eとの間に、第2シート材32の縁部32Eが介在されるようにして、各シート材31,32、33の縁部31E,32E,33Eが自由な状態となるように積層する。また、第二シート材32と第三シート材33の縁部32E,33Eの重なり幅は、第一シート材31と第二シート材32の縁部31E,32EのL4と同等であるのが望ましい。この形態では、収納箱内のティシュペーパー2が、第三シート材33と第二シート材32との縁部間30b及び第一シート材31と第二シート材32との縁部間30aをこの順に通り、その過程で特に第二シート材32の縁32eを巻き込むようにして、ティシュペーパー2tが折り返されるようにして、収納箱外に取り出されるようになる。この際、ティシュペーパー2tは、第三シート材33と第二シート材32との縁部間30b及び第一シート材31と第二シート材32と縁部間30aにおいて各シート材31,32、33の各縁部31E,32E,33Eで擦られるため、ティシュペーパー2が取り出される際にシート材が与える物理的な刺激がより高められ、ティシュペーパー2に付与されたマイクロカプセルの崩壊の発現や崩壊の助長がより高められ、もって薬液による機能がこの時点で確実に発揮されるようになる。
【0029】
他方で、本発明に係るティシュペーパー製品100では、さらに、
図7〜
図9に示すように、特に、第一シート材31の縁部31Eに、その縁31eに対して非平行な複数の切り込み31Sを入れて、その縁部31Eを複数の縁片31pからなるのれん状に形成してもよい。なお、
図7〜
図9に示す形態は、第一シート材31と第二シート材32のみを有する形態であるが、
図6に示す第三シート材33を有する形態においても、同様に第一シート材31の縁部31Eをのれん状にする構成を採用できる。この第一シート材31の縁部31Eがのれん状になっている形態では、特に、
図8及び
図9に示されるように、第一シート材31の縁部31Eを構成する各縁片31p,31p…が、互いに自由に動くようになるため、収納箱1から取り出されるティシュペーパー2の紙面に各縁片31p,31p…が追従して接するようになり、よりティシュペーパー2が、特に第一シート材31の縁部31Eによって擦られることになり、ティシュペーパー2の引き出し時にシート材31,32がティシュペーパーに与える物理的な刺激がより一層高められ、ティシュペーパー2tに付与されたマイクロカプセルの崩壊及び助長がより一層高められる。
【0030】
ここで、第一シート材31をのれん状に形成する切り込み31Sの最奥基端31xの位置としては、第二シート材32の縁32eを越える位置であってもよいし、当該縁32eを越えない位置であってもよい。但し、第二シート材32の縁32eを越える位置とする場合には、過度に奥深く切り込みを入れると、取出口20Xから一部露出するティシュペーパーの支持性が低下するので、過度に奥深く切り込みを入れる、すなわち、縁片31p,31p…が過度に長くするようにしないようにする。特に、この形態では、第二シート材32の縁32eから±1mmの位置に第一シート材31の縁部31Eの切り込み31Sの最奥基端31xが位置するようにするのが望ましい。第二シート材32の縁32eからこの範囲に最奥基端31xが位置するようにして、第一シート材31の縁部31Eをのれん状にすると、ティシュペーパー2tの支持性と、各シート材31,32の縁部31E,32Eがティシュペーパー2tに与える物理的な刺激とのバランスが良好となる。
【0031】
各シート材31、32、33の具体的な素材としては、ティシュペーパー製品100の取出口に設けられる公知の樹脂製フィルム、紙、樹脂層と紙層とを有する複合シート(ラミネートシート)などを用いることができる。但し、特に、本発明において好適な各シート材31,32、33の素材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートである。これらの素材は、適度な柔軟性を有し、特に各シート材31,32,33の縁部31E,32E,33Eが重なるように本発明特有の積層構造をとる場合に、ティシュペーパー2tの紙面に適度に追従して、ティシュペーパー2tを擦ってマイクロカプセルの崩壊を効果的に発現・助長するとともに、ティシュペーパー2tの支持性にも優れる。なお、各シート材31,32,33の素材は、全て同じとしてもよいし、異ならしめてもよい。
【0032】
また、各シート材31,32,33の厚みは、取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲を被覆するようにして設けられる公知のシート材の素材であれば、10〜150μmである。特に、本発明に係る好適な各シート材31,32,33の素材と厚みとの組み合わせは、上述の本発明の特有の効果の観点から、ポリエチレンであれば30〜150μm、ポリプロピレンであれば10〜100μm、ポリエチレンテレフタレートであれば5〜60μmである。したがって、本発明は、このシート材と厚みとの組み合わせの中から選択するのが特に望ましい。
【0033】
また、特に、第一シート材31、第二シート材32とでは、収納箱内面側に位置する第二シート材32を、第一シート材31よりも硬度の高いものとするのがよい。収納箱内面側に位置する第二シート材32を、第一シート材31より硬度の高いものとすると、ティシュペーパー2tと各シート材31,32との擦れがより効果的になり、また、ポップアップ性もより良好になるので望ましい。第三シート材33を設ける場合においても同様である
のが望ましい。なお、ここでの硬度とはJIS K7202−2にて測定されるロックウェル硬度を意味する。その具体的な数値までは限定されない。ティシュペーパー2tの組成・物性によって適宜に調整することができる。硬度の差異は、各シート材31,32,33を異種素材の組み合わせとする、又はシート材31,32,33の厚みに差を設けることにより、達成することが可能である。
【0034】
他方、本実施形態に係るティシュペーパー束2の構成をより具体的に説明すると、本実施形態に係るティシュペーパー束2は、方形のティシュペーパー2tが実質的に二つ折りされ、その折り返し片の縁が上下に隣接するティシュペーパーの折り返し内面に位置するようにして、互い違いに重なり合いつつ積層されているものである。なお、ここで実質的にとは、製造上形成される縁部の若干の折り返しを許容する意味である。
【0035】
この積層構造のティシュペーパー束2は、最上位に位置する一枚の折り返し片を上方に引き上げると、その直下で隣接する他の一枚の折り返し片が、摩擦により上方に引きずられて持ち上げられる。
【0036】
そして、本実施形態のティシュペーパー製品100では、かかる構造のティシュペーパー束2は、その最上面が上述の上面11に取出口20Xを有する収納箱1の当該上面に向かいあって収納され、前記取出口20Xから最初の一組(最上面に位置する一組)が引き出されたときに、その直近下方に位置する他の一組の一部が露出される。なお、本実施形態におけるティシュペーパー2tの積層枚数が限定されないが、この種の製品の一般的な積層枚数を例示すれば、120〜240組である。このティシュペーパー束2は、マルチスタンド式、ロータリ式の既知のインターフォルダにより製造することができる。
【0037】
ティシュペーパー束2を構成するティシュペーパー2tは、2枚〜3枚の薄葉紙が積層されたプライ構造を有し、特に、薬液を封入したマイクロカプセルが付与されたものとなっている。ティシュペーパーへのマイクロカプセルの付与方法は、例えば、マイクロカプセルをバインダーや保湿剤等の機能性薬液など公知の他の薬液に混合して、グラビア印刷等の適宜の印刷機によりロール転写する方法や、マイクロカプセルのスラリーや、マイクロカプセルをバインダーや保湿剤等の他の薬液と混合した薬液をスプレー装置によってスプレー塗布する方法とすることができる。特に、スプレー塗布の場合、ティシュペーパーに直接、設備の付与面が接触しないため物理的刺激が少なく、マイクロカプセルへのヒビ、傷などがはいりにくく、また、崩壊し難いため歩留まりが高まり好ましい。バインダーとしては、でんぷん、PVA、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が例示でき、保湿剤としては、グリセリンなどのポリオール類、ソルビトールなどの糖アルコール類等が例示できる。
【0038】
また、薬液を封入したマイクロカプセルの膜材は、物理刺激で破壊する材質であれば使用可能であり、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン、寒天、各種天然ゲル化剤、グリセリン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースが利用できる。特に、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂が取り扱いの点において優れる。また、保湿剤と併用する場合には、保湿剤の吸湿作用による水分によって適度に経時劣化しやすい、尿素樹脂、メラミン樹脂が好適であり、尿素樹脂が膜材として特に好適である。すなわち、係る膜材のマイクロカプセルと保湿剤と併用する場合には、ティシュペーパー製品が製造されてから使用者がティシュペーパーを実際に使用するまでの輸送・保管期間中に保湿剤の吸湿作用による水分によって膜材が適度に劣化して崩壊しやすくなり、ティシュペーパーを引き出す際の各シート材との擦れによってマイクロカプセルが崩壊やすくなる。マイクロカプセルの平均粒子径は、1〜40μm、好ましくは5〜30μm、より好ましくは10〜20μmである。この範囲であると取り扱い性、とりわけティシュペーパーへの付与時に印刷版の目詰まりや、噴霧機のノズル詰まりが生じがたい。なお、ここでの平均粒子径は、メジアン径で定義される平均粒子径を意味する。より具体的には、粒度分布計を用いて、レーザー回折・光散乱法により測定されるストークス径を指す。
【0039】
マイクロカプセルの製造方法としては、コアセルベーション法、インサイチュ法、界面重合法等の化学的方法から適宜選択された方法により形成されたものとすることができる。また、マイクロカプセルとこれを分散する薬液の比率等は、所望の香りの強さなどによって適宜に設計すればよい。
【0040】
一方、マイクロカプセルに封入される薬液としては、代表的また好適には香料であるが、その他に上記保湿剤と同種の又は油性の保湿成分を有する保湿助剤、コラーゲン、コエンザイムQ10、セラミドなどの肌補修成分などが挙げられる。
【0041】
香料の具体例としては、ミント香、柑橘香、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然香料、メントール、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料あるいはこれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。市販品を使用することもできる。特に、マイクロカプセルに封入する薬液を香料或いはこれを含むものとするのであれば、その香料を揮発性の高いメントール、ミント香、柑橘香等とすると、マイクロカプセルが崩壊した際に瞬間的に周辺に香気が拡散することになり、もって収納箱からティシュペーパーを引きだした際に、瞬間的に香気が感じられ、特に爽快感やフレッシュさが強く感じられるものとなる利点がある。
【0042】
他方、本実施形態に係るティシュペーパー2tを構成する薄葉紙の原料パルプとしては、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹クラフトパルプ)とを配合したものであり、適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。その場合配合割合としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
【0043】
本発明に係るティシュペーパー2tの各プライを構成する薄葉紙1枚あたりの米坪は、好ましくは10〜25g/m
2、より好ましくは11〜16g/m
2である。米坪が10g/m
2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となる。逆に米坪が25g/m
2を超えると紙全体が硬くなるとともに、ゴワ付き感が生じてしまい肌触りが悪くなる。なお、米坪は、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法による。
【0044】
他方、本発明に係るティシュペーパー2tの紙厚は、100〜180μm、より好ましくは120〜140μmであるのが望ましい。なお、ティシュペーパー2tが複数プライの場合は、複数プライで測定する。紙厚が100μm未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、ティシュペーパー2tとしての強度を適正に確保することが困難となる。また、180μm超では、ティシュペーパー2tの肌触りが悪化するとともに、使用時にゴワツキ感が生じるようになる。
【0045】
なお、紙厚及びシート材31,32,33の厚みの測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、厚みは測定を10回行って得られる平均値とする。
【0046】
以上の本実施形態は、スプレー塗布装置によるマイクロカプセルの付与や、背景技術の欄において示したマイクロカプセルの付与から折畳みまでを一連で行なうような、製造時にマイクロカプセルが崩壊し難い方法の場合に、特に本発明の課題が顕在化し、その作用効果が顕著に発揮される。
【実施例】
【0047】
本願発明の実施例1〜7と、比較例1〜5に係るティシュペーパー製品を作成し、各例についてティシュペーパーの取出し性とティシュペーパーの取り出しにともなう香りの発現具合(表中、「取出しによる香り立ち」と表記)を官能評価にして試験した。
【0048】
各例に係る構成は、表1中に示すとおりであり、ティシュペーパーの収納箱の寸法、取出口(取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲の形状及び大きさ)、ティシュペーパーの枚数、スリット長さ(シート材縁の長さ)、香料種等については、各例において同一とした。なお、比較例は、単一のシート材で、スリットについては、従来一般液構成の直線切り込みによって形成している。
【0049】
また、ティシュペーパーは、汎用品として広く普及している薄手のタイプと、薬液等が付与される等した高級品の厚手のタイプのものが市販されているため、それを想定した二種類のティシュペーパーを用いた。表中Aが薄手タイプ、Bが厚手タイプである。Aの物性は、坪量14.1g/m
2、紙厚135μm、乾燥引張強度(縦)215cN/25mm、乾燥引張強度(横)84cN/25mm、湿潤引張強度(縦)109cN/25mm、湿潤引張強度(横)39cN/25mm、MMD7.3、ソフトネス0.68cNであり、Bの物性は、坪量16.7g/m
2、紙厚157μm、乾燥引張強度(縦)234cN/25mm、乾燥引張強度(横)66cN/25mm、湿潤引張強度(縦)108cN/25mm、湿潤引張強度(横)41cN/25mm、MMD6.5、ソフトネス0.77cNである。
【0050】
香料は揮発性が高く、マイクロカプセルの崩壊により放出されやすいメントール香料とした。また、ティシュペーパーへのマイクロカプセルの付与は、スプレー装置を用いてスプレー塗布により付与し、マイクロカプセルの崩壊が極力生じないように、操業速度などを試験的生産の範囲に落とすなど管理して製造した。
【0051】
官能評価の取出し性については、収納箱からティシュペーパーを一枚ずつ取り出した際に、スムーズに取り出せるか否か、引っかかりがあるか否か、ティシュペーパーが破れるか否か等の点を評価して、総合的に次記のとおり5段階で評価した。5=良い、4=やや良い、3=どちらでもない、2=やや悪い、1=悪い。香り立ちについては、ティシュペーパーを引きだした際に香りが発生するか否かの観点から評価した。評価は次記のとおり4段階で評価した。4=強く香る、3=はっきりと香る、2=やや香る、1=殆ど香らない又は全く香らない。
【0052】
【表1】
【0053】
表1のとおり、実施例1〜
6は、本発明の範囲内においてシート材の枚数や第一シート材と第二シート材、第三シート材の材質や厚み等を変えたものであるが、各例において評価は異なるものの、取出し性については、全ての例でやや良い以上の結果であり、香り立ちについても全ての例で香りが感じられるとの評価となった。特に3層構造とした実施例4〜6ではすべて香りの発現具合が強く香るとの良好な結果となった。同素材で第一シート材よりも第二シート材の厚みが薄く、第一シート材よりも第二シート材の硬度が低い実施例7は、香り立ちの評価について他の実施例よりもやや低い評価となったものの取出し時に香りが感じられるとの評価が得られた。
【0054】
対して、単一シート材で厚み・素材とも従来品と同等の素材に構成の比較例1及び2では、取出し性については良好な評価が得られたものの香り立ちについては香りが殆ど感じられないか又は全く感じられないとの結果となった。比較例3及び比較例4は、比較例1及び比較例2と構造的には同一で、ティシュペーパーとシート材との擦れを高めるべく、素材及び厚みを変更してシート材の硬度を高め、さらにティシュペーパーも厚手タイプを用いて香り立ちの評価を改善するように試みた例であるが、比較例3及び比較例4では、香り立ちの評価の改善はなされたが、特にスリットの両端部で取出し時にティシュペーパーが破れてしまうことが確認され、取り出し性が非常に悪化するとの結果となった。また、比較例5は、比較例4においてティシュペーパーを薄手タイプに変更したものであるが、ティシュペーパーの厚さを薄くしても、取出性の改善は殆どみられず、取出し性の悪化はシート材の構成が大きく影響する結果となった。
【0055】
以上の結果から本発明の構成を採ることにより、ティシュペーパーの取出し性を十分に確保しつつ、その取出し時に製造時に崩壊しないようにティシュペーパーへ付与したマイクロカプセルを崩壊させ、使用時に香り立ちの効果が発揮されるティシュペーパー製品となるといえる。