(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた筒先部と、先端に穿刺用針先を有し、前記筒先部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒と、前記外筒に装着され、前記穿刺用針先を封止するキャップとを備えるシリンジ用組立体であって、
前記キャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記穿刺針を収納する穿刺針収納部を有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部と、前記筒先部に密着することで前記穿刺針収納部を密閉するシール部とを備えるシールキャップと、前記シールキャップの外側に装着され、前記シールキャップと係合した筒状被包部材とからなり、
前記シールキャップは、弾性材料により形成され、かつ、高圧蒸気滅菌のための水蒸気透過性を有し、前記筒状被包部材は、前記シールキャップよりも硬い熱可塑性プラスチック材料からなり、
前記筒状被包部材は、前記シールキャップに係合するために、前記筒状被包部材の内面に設けられた内部突出部と、前記内部突出部の基端部より先端方向に延びる開口部とを有し、かつ、前記シリンジ用組立体をオートクレーブ滅菌する際の熱によって前記内部突出部が内側に向かって熱変形することにより、前記筒状被包部材と前記シールキャップとの係合力が滅菌前よりも増加することを特徴とするシリンジ用組立体。
前記筒状被包部材は、前記シールキャップの側面を覆う側面被包部と、前記シールキャップの閉塞先端部を覆う先端被包部とを備え、前記先端被包部は、前記シールキャップの閉塞先端部の先端面と対向する対向内面を有し、かつ、前記対向内面と前記閉塞先端部との間に隙間が形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシリンジ用組立体。
前記筒状被包部材は、先端部に設けられた貫通孔を有し、前記キャップは、前記筒状被包部材の内面と前記シールキャップの外面により形成され、かつ前記貫通孔と連通し、前記シールキャップの穿刺針収納部の基端部まで延びる蒸気誘導用空隙部を備えている請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシリンジ用組立体。
前記シールキャップの前記シール部は、前記筒先部を収納し、かつ、収納した前記筒先部の先端部により外側に押し広げられた状態となっており、前記シール部における前記蒸気誘導用空隙部は、空隙間距離が他の部分より狭いものとなっている請求項7に記載のシリンジ用組立体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1(USP6719732)のシールキャップ(シリンジ針を保護する装置)は、特許文献1の
図6〜10に示すように、弾性キャップ20とキャップ20に装着された硬質シェル80を備えている。 シェル80は、針106の刺通が困難なものとなっている。シェル80の長手方向壁88は、水蒸気の通過を可能にするためのも4つの切欠94を備えている。また、シェル80は、内面にキャップ20を保持するためのキャップ保持手段を備える。保持手段として、空洞の内側に突出する突出部96を備えている。
【0005】
通常、上記のような硬質シェルと弾性キャップにより構成されたキャップは、シリンジから外す際に、硬質シェルとシールキャップは、一体となって外れる。しかし、シールキャップはシリンジに密着しているため、キャップを外す際に、シールキャップからハードカバーがはずれ、シールキャップのみが外筒に装着されたまま残る恐れがある。特に、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)されている場合、滅菌時の熱により、シールキャップがシリンジにより固着しやすく、上記リスクが高まる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、外筒にシールキャップを装着した状態での保管を行っても、また、シールキャップを装着したシリンジ用組立体を高圧蒸気滅菌などの加熱を伴う滅菌を行った場合においても、キャップ全体を確実に離脱することができる外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体、外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体を用いたプレフィルドシリンジおよびシリンジ用組立体が複数収納された包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた筒先部と、先端に穿刺用針先を有し、前記筒先部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒と、前記外筒に装着され、前記穿刺用針先を封止するキャップとを備えるシリンジ用組立体であって、
前記キャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記穿刺針を収納する穿刺針収納部を有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部と、前記筒先部に密着することで前記穿刺針収納部を密閉するシール部とを備えるシールキャップと、前記シールキャップの外側に装着され、前記シールキャップと係合した筒状被包部材とからなり、
前記シールキャップは、弾性材料により形成され、かつ、高圧蒸気滅菌のための水蒸気透過性を有し、前記筒状被包部材は、前記シールキャップよりも硬い熱可塑性プラスチック材料からなり、
前記筒状被包部材は、前記シールキャップに係合するために、前記筒状被包部材の内面に設けられた内部突出部と、前記内部突出部の基端部より先端方向に延びる開口部とを有し、かつ、前記シリンジ用組立体をオートクレーブ滅菌
する際の熱によって前記内部突出部が内側に向かって熱変形することにより、前記筒状被包部材と前記シールキャップとの係合力が滅菌前よりも増加するシリンジ用組立体。
【0008】
(
2) 前記内部突出部は、前記筒状被包部材の中心軸方向かつ先端方向に斜めに延び、弾性変形可能である上記(
1)に記載のシリンジ用組立体。
【0009】
(
3) 前記内部突出部は、前記筒状被包部材の中心軸周りに間欠的に複数設けられており、
前記開口部は、前記各内部突出部の基端部より先端方向に延び
るように、前記筒状被包部材の中心軸周りに間欠的に複数設けられている上記(1)
または(2)に記載のシリンジ用組立体。
(
4) 前記筒状被包部材は、前記シールキャップの側面を覆う側面被包部と、前記シールキャップの閉塞先端部を覆う先端被包部とを備え、前記先端被包部は、前記シールキャップの閉塞先端部の先端面と対向する対向内面を有し、かつ、前記対向内面と前記閉塞先端部との間に隙間が形成されている上記(1)ないし(
3)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【0010】
(
5) 前記筒状被包部材の前記先端被包部は、前記側面被包部の先端部に接続された複数のフレームを備えており、隣接する前記フレーム間により、貫通孔が形成されている上記(
4)に記載のシリンジ用組立体。
(
6) 前記筒状被包部材は、側面視において、前記フレームの基端と前記側面被包部の先端との境界部に形成され、先端方向を向くコーナー部を備えている上記(
5)に記載のシリンジ用組立体。
(
7) 前記筒状被包部材は、先端部に設けられた貫通孔を有し、前記キャップは、前記筒状被包部材の内面と前記シールキャップの外面により形成され、かつ前記貫通孔と連通し、前記シールキャップの穿刺針収納部の基端部まで延びる蒸気誘導用空隙部を備えている上記(1)ないし(
6)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【0011】
(
8) 前記シールキャップの前記シール部は、前記筒先部を収納し、かつ、収納した前記筒先部の先端部により外側に押し広げられた状態となっており、前記シール部における前記蒸気誘導用空隙部は、空隙間距離が他の部分より狭いものとなっている上記(
7)に記載のシリンジ用組立体。
(
9) 前記シリンジ用組立体は、高圧蒸気滅菌されている上記(1)ないし(
8)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【0012】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(
10) 上記(1)ないし(
9)のいずれかに記載のシリンジ用組立体と、前記外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、前記外筒と前記ガスケットにより形成された空間内に充填された薬剤とからなるプレフィルドシリンジ。
【0013】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(
11) 複数の上記(1)ないし(
9)のいずれかに記載のシリンジ用組立体を収納したシリンジ用組立体包装体であって、
前記包装体は、上面が開口し、かつ保形性を有する容器体と、複数の前記シリンジ用組立体を保持可能な外筒保持部材と、前記外筒保持部材に保持された複数のシリンジ用組立体と、前記容器体の上面開口を気密に封止するとともに剥離可能なシート状蓋部材とを備え、さらに、前記包装体は、前記容器体もしくは前記蓋部材に設けられた菌不透過性かつ滅菌ガス流通性を有する通気部を備え、高圧蒸気滅菌されているシリンジ用組立体包装体。
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(12) 外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた筒先部と、先端に穿刺用針先を有し、前記筒先部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒に装着され、前記穿刺用針先を封止するキャップであって、
前記キャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記穿刺針を収納可能な穿刺針収納部を有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部と、前記筒先部に密着することで前記穿刺針収納部を密閉可能なシール部とを備えるシールキャップと、前記シールキャップの外側に装着され、前記シールキャップと係合した筒状被包部材とからなり、
前記シールキャップは、弾性材料により形成され、かつ高圧蒸気滅菌のための水蒸気透過性またはエチレンオキサイドガス透過性を有し、前記筒状被包部材は、前記シールキャップよりも硬い熱可塑性プラスチック材料からなり、
前記筒状被包部材は、前記シールキャップの側面を覆う側面被包部と、前記シールキャップの閉塞先端部を覆う先端被包部と、前記先端被包部に設けられた貫通孔とを有し、
前記キャップは、前記筒状被包部材の側面被包部と前記シールキャップの外面により形成され、かつ前記貫通孔と連通し、前記シールキャップの穿刺針収納部の基端部まで延びる空隙部を備えているキャップ。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシリンジ用組立体は、外筒本体部と、外筒本体部の先端部に設けられた筒先部と、先端に穿刺用針先を有し、筒先部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒と、外筒に装着され、穿刺用針先を封止するキャップとを備えるシリンジ用組立体であって、キャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、穿刺針を収納する穿刺針収納部を有する中空部と、穿刺針収納部に収納された穿刺針の穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部と、筒先部に密着することで穿刺針収納部を密閉するシール部とを備えるシールキャップと、シールキャップの外側に装着され、シールキャップと係合した筒状被包部材とからなり、シールキャップは、弾性材料により形成され、かつ、高圧蒸気滅菌のための水蒸気透過性を有し、筒状被包部材は、シールキャップよりも硬い熱可塑性プラスチック材料からなり、かつ、シリンジ用組立体を高圧蒸気滅菌することにより、筒状被包部材とシールキャップとの係合力が滅菌前よりも増加するものとなっている。
このシリンジ用組立体では、高圧蒸気滅菌などの加熱を伴う滅菌を選択した場合において、筒状被包部材とシールキャップとの係合力が滅菌前よりも増加するため、使用時に、キャップを離脱する際に、筒状被包部材のみが外筒より離脱し、シーキャップが、外筒に残ることがなく、キャップ全体を確実に離脱することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体、外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体を用いたプレフィルドシリンジを図面に示す実施形態を用いて説明する。
本発明のプレフィルドシリンジ1は、
図1ないし
図3に示すように、シリンジ用組立体10と、シリンジ用組立体10内に収納され、かつシリンジ用組立体10内を液密に摺動可能なガスケット4と、シリンジ用組立体10とガスケット4により形成された空間内に充填された薬剤11とからなる。
【0017】
そして、本発明のシリンジ用組立体(言い換えれば、キャップが装着された穿刺針付き外筒)10は、
図1ないし
図4に示すように、外筒2と、外筒2に装着されたキャップ3とからなる。
外筒2は、外筒本体部21と、外筒本体部21の先端部に設けられた筒先部22と、先端に穿刺用針先61を有し、筒先部22に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針6とを備える。
【0018】
キャップ3は、
図4ないし
図15に示すように、閉塞先端部71aと、開口基端部72と、穿刺針6を収納する穿刺針収納部を有する中空部70と、穿刺針収納部に収納された穿刺針6の穿刺用針先61が刺入可能な刺入可能部73と、筒先部に密着することで穿刺針収納部を密閉するシール部75とを備えるシールキャップ7と、シールキャップ7の外側に装着され、シールキャップ7と係合した筒状被包部材8とからなる。
そして、シールキャップ7は、弾性材料により形成され、かつ、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)のための水蒸気透過性(言い換えれば、滅菌用蒸気の透過性)を有する。筒状被包部材8は、シールキャップ7よりも硬い熱可塑性プラスチック材料により形成されている。キャップ3は、シリンジ用組立体10を高圧蒸気滅菌することにより、筒状被包部材8とシールキャップ7との係合力が滅菌前よりも増加するものとなっている。
【0019】
プレフィルドシリンジ1は、
図1ないし
図3に示すように、外筒2と、穿刺針の針先をシールするように外筒2に装着されたキャップ3とからなるシリンジ用組立体10と、シリンジ用組立体10内に収納され、かつシリンジ用組立体10内を液密に摺動可能なガスケット4と、シリンジ用組立体10とガスケット4により形成された空間内に充填された薬剤11と、ガスケット4に取り付けられたもしくは使用時に取り付けられるプランジャー5とからなる。
【0020】
そして、薬剤11は、外筒2とガスケット4とキャップ3内により形成される空間内に充填されている。
充填される薬剤11としては、どのようなものでもよいが、例えば、高濃度塩化ナトリウム注射液、ミネラル類、ヘパリンナトリウム水溶液、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、シクロスポリン、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリンのような抗血栓剤、インスリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正用電解質、抗ウイルス剤、免疫賦活剤等、いかなるものでも良い。
【0021】
外筒2は、
図1ないし
図4、
図16および
図17に示すように、外筒本体部21と、外筒本体部21の先端部に設けられた筒状(中空状)の筒先部22と、外筒本体部21の基端部に設けられたフランジ23と、基端部が筒先部22内に挿入されかつ固定された穿刺針6とを備える。穿刺針6は、先端に穿刺用針先61を有する。穿刺針6の基端部は、筒先部22の中空部内に挿入されかつ固定されるとともに、穿刺針6の内部は、外筒2の内部空間20と連通している。なお、穿刺針6は、予め成形した外筒2の筒先部22の中空部内に挿入し、接着剤、熱溶着等により筒先部22に固定してもよい。また、外筒2に穿刺針6を直接インサート成形することで固定してもよい。インサート成形の場合、外筒2を成形することで、筒先部22は、穿刺針6が挿入された筒状(中空状)となり、穿刺針6は、その基端部が筒先部22の中空部内に挿入されかつ固定されたものとなる。
【0022】
外筒2は、透明もしくは半透明である。外筒本体部21は、ガスケット4を液密かつ摺動可能に収納するほぼ筒状の部分である。また、筒先部22は、外筒本体部の先端部(肩部)より、前方に突出するとともに、外筒本体部より小径の中空筒状となっている。また、筒先部22は、
図4,
図16および
図17に示すように、先端に設けられた頭部24(この実施例では、内部が窪んだ環状頭部となっている)と、頭部24の基端に設けられ、基端方向に向かって縮径する短いテーパー状縮径部25と、テーパー状縮径部25の基端部と外筒本体部21の先端部とを連結する連結部27とを有し、テーパー状縮径部25により、環状凹部が形成されている。頭部24には、先端面から基端側に向かって窪んだ凹所26と、凹所26内に位置し、先端側に頂点を有する中空の円錐状部とが形成されている。連結部27の外面には、外筒2の軸方向に延びる複数の溝が形成されている。なお、環状凹部は、テーパー状でなく、頭部24の基端との間に段差が形成されるように単に縮径した形状であってもよい。また、連結部27を省略し、環状凹部(テーパー状縮径部25)の基端部と外筒本体部21の先端部とが直接連結されていてもよい。また、頭部24は、凹所26および円錐状部を省略した中空の円柱形状(円筒形状)でもよい。
【0023】
外筒2の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン(例えば、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー)が好ましい。
穿刺針6としては、先端に穿刺用針先61を有する中空状のものが用いられる。穿刺針6の形成材料としては、金属が一般的である。金属としては、ステンレス鋼が好適である。
【0024】
ガスケット4は、
図1ないし
図3に示すようにほぼ同一外径にて延びる本体部と、この本体部に設けられた複数の環状リブ(この実施形態では2つ、2つ以上であれば、液密性と摺動性を満足できれば適宜数としてもよい)を備え、これらリブが、外筒2の内面に液密に接触する。また、ガスケット4の先端面は、外筒2の先端内面に当接した時に、両者間に極力隙間を形成しないように、外筒2の先端内面形状に対応した形状となっている。
【0025】
ガスケット4の形成材料としては、弾性を有するゴム(例えば、イソプレンゴム、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
【0026】
そして、ガスケット4には、その基端部より内部に延びる凹部が設けられ、この凹部は、雌ねじ状となっており、プランジャー5の先端部に形成された突出部52の外面に形成された雄ねじ部と螺合可能となっている。両者が螺合することにより、プランジャー5は、ガスケット4より離脱しない。なお、プランジャー5は、取り外しておき、使用時に取り付けるようにしてもよい。また、プランジャー5は、先端の円盤部より前方に筒状に突出する突出部52を備え、突出部の外面にはガスケット4の凹部と螺合する雄ねじが形成されている。また、プランジャー5は、断面十字状の軸方向に延びる本体部51と、基端部に設けられた押圧用の円盤部53を備えている。
【0027】
キャップ3は、
図4ないし
図6に示すように、シールキャップ7と筒状被包部材8とからなる。
このキャップ3は、外筒本体部21と、外筒本体部21の先端部に設けられ、かつ、頭部24と頭部24の基端に形成された環状凹部25とを有する筒状の筒先部22と、先端に穿刺用針先61を有し、筒先部22に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針6とを備える外筒に装着されて用いられるものである。
【0028】
シールキャップ7は、閉塞先端部71aと、開口基端部72と、穿刺針6を収納する穿刺針収納部を有する中空部70と、穿刺針収納部に収納された穿刺針6の穿刺用針先61が刺入可能な刺入可能部73と、筒先部に密着することで穿刺針収納部を密閉するシール部75とを備える。筒状被包部材8は、シールキャップ7の外側に装着され、シールキャップ7と係合している。
そして、シールキャップ7は、弾性材料により形成され、かつ、高圧蒸気滅菌のための水蒸気透過性を有している。
【0029】
シールキャップ7の形成材料としては、少なくとも刺入可能部73が、穿刺針の刺入可能な弾性材料により形成されていることが必要である。穿刺針の刺入可能な弾性材料であり、高圧蒸気滅菌のための水蒸気透過性を有するものとしては、熱可塑性エラストマー、例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなどが好ましい。また、弾性材料としては、例えば、ブチルゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴムなどのゴムであってもよい。
【0030】
シールキャップ7は、
図4、
図13ないし
図16に示すように、筒状本体部71とその基端より基端方向に延びるフランジ77を備えている。筒状本体部71は、所定長先端方向に延び、かつほぼ同一外径もしくは若干先端方向に縮径する外面形態を備えている。フランジ77は、筒状本体部71の基端の外径より、大きい外径を備え、かつほぼ同一外径にて基端方向に所定長延びるものとなっている。
筒状本体部71は、閉塞先端部71aと、筒先部22の先端部を収納するシール部75、穿刺針を収納する穿刺針収納部を有する中空部70と、中空部70に収納された穿刺針6の穿刺用針先61が刺入可能な刺入可能部73と、シール部75の内面に形成された突出部76を備える。そして、外筒2の筒先部22にシールキャップ7が装着された際に、穿刺用針先61がシールキャップ7の刺入可能部73に刺入しシールされ、さらに、突出部76と外筒2の筒先部22の環状凹部25とが係合し、かつ、シール部75の内面と筒先部22の外面とが密着し、穿刺針収納部が密封状態となる。フランジ77は、筒先部22の基端側部分を収納する内部空間と、基端72および基端面72aを有する。
【0031】
具体的には、シールキャップ7は、開口基端部72より所定長先端側に位置する内面に設けられた突出部76を備えている。突出部76は、最も突出した頂点部76aと、頂点部76aより先端方向に向かって延びかつ突出高さが先端方向に向かって漸次低下する傾斜部(テーパー部)76bとを有している。特に、この実施例は、突出部76が、環状突出部となっており、傾斜部76bは、シール部75の内径が先端方向に向かって縮径するテーパー部となっている。
【0032】
頂点部76aにおけるシール部75の内径は、外筒2の筒先部22の環状凹部25の先端部の外径より若干小さいものとなっている。これにより、外筒2の筒先部22にシールキャップ7が装着された際に、突出部76と環状凹部25とが係合する。また、先端側傾斜部76bは、外筒2の筒先部22にシールキャップ7が装着された状態で、環状凹部25よりも先端側まで延びている。そして、先端側傾斜部76bの少なくとも基端部近傍におけるシール部75の内径は、外筒2の筒先部22の頭部24の外径より若干小さいものとなっている。これにより、外筒2の筒先部22にシールキャップ7が装着された際に、先端側傾斜部76bは、頭部24の外面に押し付けられて密着した状態となる、このため、外筒2からのシールキャップ7の不本意な離脱がより少なくなる。
【0033】
特に、この実施例のものでは、
図4に示すように、シールキャップ7のシール部75は、収納した外筒2の筒先部22により外側に押し広げられた状態となっている。具体的には、弾性変形し、若干膨らんだ状態となる。このため、後述する筒状被包部材8の内面との距離が、他の部分より短いものとなっており、製造時などの大気圧下におけるオゾンガスの流入を規制している。
また、この実施形態のシールキャップ7では、突出部76は、シール部75の内面に沿って環状に形成されている。このため、突出部76がシール部75の内面に間欠的に形成されている場合と比べて、頭部24の外面に押し付けられて密着する先端側傾斜部76bの面積が大きくなり、外筒2からのシールキャップ7の不本意な離脱がさらに少なくなる。なお、突出部76は、シール部75の内面に間欠的に形成されていてもよい。
【0034】
また、この実施形態のシールキャップ7では、さらに突出部76は、頂点部76aより開口端(基端)方向に向かって延びかつ突出高さが開口端(基端)方向に向かって漸次低下する基端側傾斜部76cを有している。これにより、シールキャップ7を外筒2の筒先部22に装着する際、突出部76の頂点部76aが筒先部22の頭部24を先端側から乗り越え易くなる。
特に、この実施形態では、突出部76が、環状突出部となっており、基端側傾斜部76cは、シール部75の内径が基端方向に向かって拡径する基端側テーパー部となっている。なお、この実施形態のシールキャップ7では、基端側傾斜部(基端側テーパー部)76cは、先端側傾斜部(先端側テーパー部)76bに比べて、短く、かつテーパー角が大きいものとなっている。
【0035】
また、この実施形態のシールキャップ7では、シール部75は、突出部76の先端側傾斜部76bの先端部より先端方向に向かって所定長(具体的には、中空部70の基端部まで)延びる直線部76dを有している。この直線部76dにおけるシール部75の内径は一定、かつ、外筒2の筒先部22の頭部24の外径より若干小さくなっている。このため、外筒2の筒先部22にシールキャップ7が装着された際に、直線部76dは、頭部24の外面に押し付けられて密着した状態となる。なお、直線部76dにおけるシール部75の内径は、外筒2の筒先部22の頭部24の外径より大きくてもよい。また、直線部76dを省略し、先端側傾斜部76bをシール部75の基端部まで延ばしてもよい。
【0036】
そして、シールキャップ7の外筒2からの離脱抵抗は、1.5N〜20Nであることが好ましく、特に、5〜8Nが好ましい。これにより、外筒2からのシールキャップ7の不本意な離脱を防止しながら、プレフィルドシリンジ1の使用時に、シールキャップ7を外筒2から簡単に離脱させることができる。
また、シールキャップ7の突出部76の先端側傾斜部76bの傾斜角度(テーパー角度)は、1〜10度が好ましく、特に、1〜6°が好ましい。また、突出部76の頂点部の突出高さは、0.1〜0.5mmであることが好ましく、特に、0.05〜0.25mmが好ましい。
【0037】
また、この実施例では、シールキャップ7の突出部76の先端側傾斜部76bの基端部は、外筒2の筒先部22の環状凹部25の周囲に位置し、先端側傾斜部76bの少なくとも基端部近傍におけるシール部75の内径は、環状凹部25の外径より若干小さいものとなっている。また、この実施例では、外筒2の環状凹部25は、頭部24の基端に設けられ、基端方向に向かって縮径するテーパー状縮径部からなる。これにより、シールキャップ7を外筒2から離脱させる際、シールキャップ7の突出部76が、環状凹部25に沿って外側に押し拡げられ、頭部24を乗り越え易くなる。
【0038】
そして、シールキャップ7の突出部76の先端側傾斜部76bの頭部24の外面に押し付けられて密着する部分の頭部24の軸方向における長さは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、特に、0.3〜1.5mmが好ましい。これにより、外筒2からのシールキャップ7の不本意な離脱を少なくするとともに、シールキャップ7の外筒2からの離脱抵抗が必要以上に大きくなるのを抑えることができる。
【0039】
さらに、この実施形態のシールキャップ7は、シールキャップ7の開口基端部72からシール部75(突出部76)の基端にかけて形成され、ほぼ同一内径にて延びる筒先部導入部78を備えている。筒先部導入部78は、シール部75の最大内径よりも若干広い内径を有しており、外筒2の筒先部22の頭部24の外径より若干大きいものとなっている。このため、シールキャップ7を外筒2の筒先部22に装着する際の筒先部22の導入部として機能する。また、筒先部導入部78は、シール部75(突出部76)の基端との境界に、開口基端部72方向を向いて起立した環状起立面79を有している。
【0040】
よって、シールキャップ7の筒先部導入部78内に、外筒2の先端部が挿入されると、外筒2の筒先部22は、筒先部導入部78内に進入した後、筒先部22の頭部24の環状先端面が、上記の環状起立面79に当接するものとなり、この状態にて、穿刺針6は、シールキャップ7の中心軸とほぼ平行なものとなり、中空部70内に進入する状態となる。
また、この実施形態のシールキャップ7は、外筒2の筒先部22が、シールキャップ内に挿入され、筒先部22の頭部24の環状先端面が、シールキャップ7の筒先部導入部78の環状起立面79に当接した状態にて、穿刺針6の穿刺用針先61は、中空部70内に進入し、かつ、刺入可能部73には、到達しないように構成されている。
【0041】
また、シールキャップ7の基端部には、外方に環状に突出するフランジ77が形成されている。フランジ77の先端側位置は、中空部70の環状起立面79より先端側に位置し、かつ、突出部76の頂点部76a付近(
図4、
図14に示すものでは、頂点部76aより若干基端開口部72側)に位置するものとなっている。
そして、シールキャップ7の開口基端部72は、環状の基端面72aを備え、基端面72aには、複数の突起74が設けられている。そして、この基端面72aが、筒状被包部材8との係合におけるシールキャップ側の係合部を形成する。基端面72aは、フランジ77の基端面でもある。よって、キャップ側係合部は、基端面72aとフランジ77により構成されているということもできる。なお、フランジ77の基端面は、開口基端部72よりも先端側に設けられていてもよい。この場合、キャップ側係合部は、基端面72aではなく、フランジ77の基端面から構成される。
【0042】
次に、筒状被包部材8について、
図4ないし
図12を用いて説明する。
筒状被包部材8は、シールキャップ7よりも硬い熱可塑性プラスチック材料からなり、かつ、シリンジ用組立体10を高圧蒸気滅菌することにより、筒状被包部材8とシールキャップ7との係合力が滅菌前よりも増加するものとなっている。
筒状被包部材8は、
図4ないし
図12に示すように、内部にシールキャップ収納部80を有する筒状体である。この実施例の筒状被包部材8は、シールキャップ7の側面を覆う側面被包部81と、シールキャップ7の閉塞先端部を覆う先端被包部82とを備えている。
【0043】
そして、筒状被包部材8は、シールキャップ7と共同して構成される離脱規制用の係合機構を備えている。この実施例では、筒状被包部材8は、シールキャップ7に係合するために、筒状被包部材8の内面に設けられた内部突出部を有している。そして、この内部突出部が、高圧蒸気滅菌の熱によって内側に向かって変位することにより、筒状被包部材8とシールキャップ7との係合力が滅菌前よりも増加するものとなっている。また、内部突出部は、筒状被包部材8の内面から筒状被包部材8の中心軸方向かつ先端方向に斜めに延び、弾性変形可能である。筒状被包部材8をシールキャップ7に装着する際、内部突出部がシールキャップの外面に押されて筒状被包部材8の中心軸より離間する方向に弾性変形するため、筒状被包部材8をシールキャップ7に装着し易い。また、キャップ3を外筒2から外す際、内部突出部の先端がシールキャップ7に押されて筒状被包部材8の中心軸に近接する方向に変形するため、筒状被包部材8がシールキャップ7から離脱し難い。また、内部突出部は、筒状被包部材8の中心軸周りに間欠的に複数設けられている。具体的には、この実施例の筒状被包部材8は、側面被包部81の基端部の内面に設けられた複数の内部突出部85(85a,85b)を備えている。特に、図示するものでは、側面被包部81の基端部(実質的に基端)の内側より、筒状被包部材8の中心軸方向かつ先端方向に斜めに延び、筒状被包部材8の中心に到達しない位置にて自由端を有する弾性変形可能な複数の内部突出部85a,85bを備えている。そして、各内部突出部85(85a,85b)の自由端は、シールキャップ7の基端面72aもしくは突起74に当接可能なものとなっている。
【0044】
そして、
図11に示すように、4つ設けられている内部突出部85aは、自由端に向かって幅が狭くなっている。特に、内部突出部85aは、一方の側面が、傾斜することにより、自由端に向かって幅が狭くなっている。また、向かい合うように2つ設けられた内部突出部85a,85bは、同じ幅にて、自由端まで延びるものとなっている。また、筒状被包部材8の各内部突出部85a,85bの自由端の内面は、筒状被包部材8の中心軸をほぼ中心とする円弧面であることが好ましい。そして、この実施例では、また、内部突出部85a,85bの自由端は、ある程度の円弧長を有し、シールキャップ7の基端面72aもしくは突起74に、確実に当接可能なものとなっている。
【0045】
また、筒状被包部材8をシールキャップ7に装着する際は、各内部突出部85a,85bの自由端が、筒状被包部材の中心軸より離間する方向に変形する。また、筒状被包部材8がシールキャップ7から離脱する方向に移動する際は、各内部突出部85a,85bの自由端が、筒状被包部材の中心軸に近接する方向に変形する。さらに、この実施例の筒状被包部材8では、筒状被包部材8の複数の内部突出部85a,85bの後端側の面は、平滑かつ筒状被包部材中心方向に向かう傾斜面となっており、シールキャップ7を誘導するための誘導部を形成している。また、この実施例の筒状被包部材8では、筒状被包部材8の複数の内部突出部85a,85bの先端側の面も、平滑かつ筒状被包部材中心方向に向かう傾斜面となっている。さらに、各内部突出部85a,85bは、自由端に向かって肉薄となっており、自由端に向かって弾性変形性が高くなっている。
【0046】
そして、シールキャップ7の最大外径部(フランジ)における外径は、筒状被包部材8の各内部突出部85a,85bの自由端の内面が形成する円の直径より、0.5〜5mm大きいものであることが好ましく、特に、1.5〜3mm大きいものであることが好ましい。また、側面被包部81の基端部の内径、言い換えれば、シールキャップ7のフランジ77を収納する部分の内径は、シールキャップ7のフランジ77の外径とほぼ等しいことが好ましい。特に、高圧蒸気滅菌後において、側面被包部81の基端部は、シールキャップ7のフランジ77に密着していることが好ましい。特に、高圧蒸気滅菌後において、側面被包部81の基端部がシールキャップ7のフランジ77に密着し、押圧していることが好ましい。
【0047】
さらに、この実施例の筒状被包部材8では、
図7ないし
図9に示すように、各内部突出部85a,85bの基端部より先端方向に延びる開口部86を備えている。これにより、各内部突出部85a,85bは、筒状被包部材8の中心軸より離間する方向への変形がより容易なものとなっており、筒状被包部材8をシールキャップ7により装着し易い。そして、この実施例では、6つの内部突出部(具体的には、4つの内部突出部85aと2つの内部突出部85b)が、筒状被包部材8の中心軸に対して、ほぼ等角度となるように配置されている。
そして、開口部86は、図5、図7、図9、図12に示す通り、各内部突出部85a,85bの基端部より先端方向に延びるように、筒状被包部材8の中心軸周りに間欠的に複数設けられている。
【0048】
そして、この実施例の筒状被包部材8では、
図4ないし
図12に示すように、先端部、具体的には、先端被包部82に設けられた貫通孔84を有する。そして、キャップ3は、筒状被包部材8の内面とシールキャップ7の外面により形成され、貫通孔84と連通し、シールキャップ7の穿刺針収納部の基端部(言い換えれば、フランジの先端)まで延びる蒸気誘導用空隙部32を備えている。この実施例では、蒸気誘導用空隙部32は、貫通孔84より、シールキャップ7のフランジ77の先端部まで延びるものとなっている。また、蒸気誘導用空隙部32は、シールキャップ7の外面を取り囲むように、環状の空間となっている。
また、蒸気誘導用空隙部32は、その基端32aにおいて、開口部86と連通している。具体的には、シールキャップ7の筒状本体部71の基端部(言い換えれば、フランジ77より先端側部分)の一部が、開口部86の先端部に位置し、この部分において、シールキャップ7の外面(具体的には、シールキャップ7の筒状本体部71の基端部の外面)と、筒状被包部材8の基端部の内面には、隙間32aが形成されている。これにより、蒸気誘導用空隙部32は、先端が貫通孔84と連通し、基端が開口部86と連通するものとなっている。このため、滅菌用蒸気の流通が良好なものとなっている。なお、蒸気誘導用空隙部32の基端32aは、開口部86と連通していなくてもよい。この場合、高圧蒸気滅菌時の圧力変動により、滅菌用蒸気の流通は確保される。
【0049】
そして、この実施例では、
図4に示すように、シールキャップ7のシール部75は、収納した外筒2の筒先部22により外側に押し広げられた状態となっている。具体的には、弾性変形し、若干膨らんだ状態となる。このため、この部分における蒸気誘導用空隙部は、蒸気誘導用空隙部32の他の部分より幅が狭い狭小部32bとなっており、製造時などの大気圧下におけるオゾンガスの流入を規制している。
蒸気誘導用空隙部32の幅(筒状被包部材8の内面とシールキャップ7の外面間距離)は、0.1〜2mmであることが好ましい。蒸気誘導用空隙部32の幅が0.1mmより小さいと、滅菌用蒸気の流通性が悪くなり、2mmより大きいと、シールキャップ7に対する筒状被包部材8のぐらつきが大きく、キャップ3を外筒2から外す際の操作性が悪くなる。また、狭小部32bは、蒸気誘導用空隙部32の他の部分の幅(筒状被包部材8の内面とシールキャップ7の外面間距離)より、0.1〜2mm狭いことが好ましい。
【0050】
そして、この実施例の筒状被包部材8では、先端被包部82は、側面被包部81の先端部と接続された複数のフレームを備えており、隣接するフレーム間により、貫通孔84が形成されている。具体的には、先端被包部82は、中央に凹部を有する先端中央部83と、先端中央部83と側面被包部81の先端部とを接続する複数のフレームとフレーム間に形成された複数の貫通孔84を備えている。特に、この実施例では、先端被包部82は、6本のフレーム89a,89bを備えている。そして、フレーム89aは太く、フレーム89bは細いものとなっている。また、フレーム89a,89bは、交互に各3本配置されている。また、すべてのフレーム89a,89bは、筒状被包部材8の中心軸に対して、ほぼ等角度となるように配置されている。貫通孔の数は、この実施例では、6であるが、2〜10程度が好ましく、特に、3〜8が好ましい。また、筒状被包部材8の先端側の平面視における貫通孔の総面積は、3〜25mm
2であることが好ましく、特に、5〜20mm
2であることが好ましい。このようなものであれば、先端部は、十分な強度を保ち、かつ、滅菌用蒸気が通過も良好となる。
【0051】
さらに、この筒状被包部材8では、
図7に示す側面視において、フレーム89a,89bの基端と側面被包部81の先端との境界部に形成され、先端方向を向くコーナー部82aを備えている。コーナー部82aの幅は、0.2〜1mmであることが好ましい。このようなコーナー部82aを設けることにより、貫通孔の大きさを確保しつつ、後述する外筒保持部材104の筒状部142や薬液充填時に用いるセンタリングプレートの穴にシリンジ組立体10を挿入し易いものとなる。また、この筒状被包部材8では、図面に示すように、外側面に形成された滑り止め用のリブ87を多数備えている。
【0052】
そして、この実施例のキャップ3では、
図4および
図6に示すように、筒状被包部材8は、シールキャップ7の閉塞先端部71aの先端面と対向する対向内面88を有し、かつ、対向内面88と閉塞先端部71aとの間に、隙間31が形成されている。このため、キャップ内における水蒸気の流通が良好なものとなっている。また、滅菌時の凝縮水が、トラップされにくくなり、乾燥性が良好となる。特に、キャップ3の先端部を下に向けて滅菌する際は、凝縮水が先端部に溜まりやすいため、効果的である。隙間31の長さ、言い換えれば、対向内面88と閉塞先端部71a間距離は、0.1〜5mmであることが好ましく、特に、0.3〜2mmであることが好ましい。
【0053】
なお、上記の筒状被包部材8の構造的特徴は、シリンジ用組立体(言い換えれば、キャップが装着された穿刺針付き外筒)10が、高圧蒸気滅菌後における筒状被包部材8とシールキャップ7との係合力が、滅菌前よりも増加するかしないかに関わらず優れた効果を有する。すなわち、例えば
図5および
図6に示したキャップ3では、筒状被包部材8は、基端部にてシールキャップ7の基端部(フランジ77)と係合しており、滅菌前においても十分な係合力を備えるものとなっている。さらに、キャップ3は、筒状被包部材8とシールキャップ7との間に形成された空隙部32と、この空隙部32と連通する貫通孔84を備えている。このため、EOG滅菌の場合、貫通孔84から空隙部32にエチレンオキサ
イドガスが流通するため、ガス流通性が良好なものとなっている。また、上述したように、筒状被包部材の先端部に形成されたコーナー部の幅が、0.2〜1mmであるため、貫通孔84の大きさを確保しつつ、筒状被包部材の筒状部や薬液充填時に用いるセンタリングプレートの穴にシリンジ組立体を挿入し易いものとなっている。
【0054】
また、キャップが上記のようなタイプの場合、滅菌前において、筒状被包部材8とシールキャップ7が、十分な係合力を備えていることが好ましい。また、この場合、滅菌方法として、EOG滅菌、放射線滅菌などの高圧蒸気滅菌以外の滅菌法を用いてもよい。なお、シールキャプ7は、高圧蒸気滅菌のための水蒸気透過性(滅菌用蒸気の透過性)を持たないものであってもよい。また、EOG滅菌を用い場合では、シールキャプ7は、エチレンオキサ
イドガス透過性を有するものが用いられる。
【0055】
筒状被包部材8の形成材料としては、シールキャップ7の形成材料より、硬質なものが用いられる。形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられる。
【0056】
そして、筒状被包部材8は、高圧蒸気滅菌時の熱による熱収縮性を有することが好ましい。このキャップ3は、高圧蒸気滅菌時における熱により、熱収縮する。これにより、筒状被包部材8とシールキャップ7との係合力が滅菌前よりも増加する。なお、成形時の筒状被包部材8の形態が、
図4および
図6に示すように、シールキャップ7のフランジ77を除く部分の外面との間に空隙32を有するものであれば、高圧蒸気滅菌後(加熱後)においても、
図4に示すように、筒状被包部材8の内面とシールキャップ7の外面間には、貫通孔84と連通し、高圧蒸気滅菌時の水蒸気が通過可能な空隙32は維持される。
【0057】
そして、筒状被包部材8は、外筒2にシールキャップ7が装着された後に、シールキャップ7に装着されていることが好ましい。このように最初にシールキャップのみを装着することにより、穿刺針が、シールキャップにまっすぐ刺さったか確認することができる。もし、斜めに刺さると、シールキャップが曲がるため、それを容易に確認可能である。しかし、筒状被包部材を装着したキャップでは、針が曲がって刺さった場合でも、キャップが曲がらないため、確認が困難である。そして、シリンジ用組立体10は、高圧蒸気滅菌されていることが好ましい。
【0058】
次に、本発明のシリンジ用組立体が複数収納された包装体について、図面に示した実施形態を
図18ないし
図22を用いて説明する。
本発明の複数のシリンジ用組立体を収納した滅菌可能もしくは滅菌されたプレフィルドシリンジ用組立体包装体100は、上面が開口し、かつ保形性を有する容器体102と、容器体102内に収納された複数のシリンジ用組立体10を保持可能な外筒保持部材104と、外筒保持部材104に保持された複数のシリンジ用組立体10と、容器体102の上面開口を気密に封止するとともに剥離可能なシート状蓋部材103とを備える。
【0059】
本発明のプレフィルドシリンジ用組立体包装体100は、滅菌可能もしくは滅菌されたプレフィルドシリンジ用組立体包装体である。滅菌方法としては、高圧蒸気滅菌が用いられる。
本発明のプレフィルドシリンジ用組立体包装体100は、
図18、
図19および
図22に示すように、容器体102と、複数のシリンジ用組立体10を保持可能な外筒保持部材104と、外筒保持部材104に保持された複数のシリンジ用組立体10と、容器体102の上面開口を気密に封止するとともに剥離可能なシート状蓋部材103とからなる。さらに、包装体100は、容器体102もしくはシート状蓋部材103に設けられた菌不透過性かつ滅菌ガス流通性を有する通気部を備えている。
【0060】
容器体102は、
図18ないし
図22に示すように、ある程度の強度と保形性を有する所定の深さを有するトレー状のものとなっており、本体部121と、本体部121の上部に形成され、複数のシリンジ用組立体10を保持した外筒保持部材104の周縁部を保持するための外筒保持部材保持部126と、上面開口に設けられた環状フランジ124とを備えている。
【0061】
さらに、環状フランジ124の上面には、シート状蓋部材103との固着のための環状のヒートシール用凸部125が設けられている。そして、フランジ124より所定長底面側となる位置に、外筒保持部材保持部126が形成されている。この第1の実施形態の容器体102では、外筒保持部材保持部126は、環状の段差部となっており、複数のシリンジ用組立体10を保持した外筒保持部材104の周縁部を載置可能となっている。
【0062】
容器体102は、ある程度の保形性と剛性を備えることが好ましい。また、高圧蒸気滅菌に対応するために、耐熱性(120℃以上)を有する熱可塑性材料を用いることが望ましい。ある程度の保形性と、ある程度の剛性と、耐熱性と熱可塑性を有する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン/ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン/アイオノマー(例えば、エチレン系、スチレン系、フッ素系)/ポリエチレン、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アモルファス−ポリエチレンテレフタレート)、PP/EVOH/PP(ラミネート)等が挙げられる。この場合の容器体102の厚さとしては、0.05〜4.00mm程度が好ましく、特に、1.00〜2.00mmがより好適である。
【0063】
複数のシリンジ用組立体10を保持可能な外筒保持部材104は、
図19および
図22に示すように、基板部141と、この基板部141より上方に突出する複数の筒状部142を備えている。そして、筒状部142内に外筒保持用開口部143が形成されており、また、基板部141の側部には、把持用の切欠部144が形成されている。筒状部142および外筒保持用開口部143の内径は、保持されるシリンジ用組立体10の最大径部分の外径より大きいものとなっており、また、保持されるシリンジ用組立体10のフランジ部23の通過が不能なものとなっている。
【0064】
このため、
図22に示すように、シリンジ用組立体10は、筒状部142を貫通するとともに、外筒保持用開口部143によりシリンジ用組立体10のフランジ23が吊り下げられた状態となっている。また、
図22に示すように、外筒保持部材104により保持されたシリンジ用組立体10の下端(シールキャップ7の先端)は、容器体102の底面に接触しないものとなっている。言い換えれば、容器体102の底面と外筒保持部材104により保持されたシリンジ用組立体10の下端(シールキャップ7の先端)間は、離間し、水蒸気の流通を阻害しないものとなっている。この外筒保持部材104の形成材料も高圧蒸気滅菌に対応するために、耐熱性(120℃以上)を有するものであることが望ましい。
【0065】
シート状蓋部材103としては、高圧蒸気滅菌のために菌やウイルスなどの微粒子が透過不可能で、水蒸気が透過可能な部材が望ましい。また、容器体102にヒートシール可能であることが好ましい。シート状蓋部材103としては、例えば、合成樹脂製不織布、具体的には、タイベック(登録商標)として知られているポリオレフィン等の合成樹脂材料からなる不織布、合成樹脂製多孔質膜などが好適に使用できる。
【0066】
そして、シート状蓋部材103は、容器体102の環状フランジ124に設けられたヒートシール用凸部125にその周縁部が剥離可能にヒートシールされている。なお、この第1の実施形態では、シート状蓋部材103の外縁は、容器体102の環状フランジ124には、ヒートシールされておらず、剥離を容易なものとしている。また、ヒートシール用凸部125の角部に設けられた突出部125aが、剥離開始部として機能する。シート状蓋部材103としては、厚さ0.05〜1.00mm程度が好ましく、0.10〜0.50mm程度がより好適である。
なお、上述した第1の実施形態では、通気部は、シート状蓋部材103に設けられているが、これに限定されるものではなく、容器体102に設けてもよい。