(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479419
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】PWM制御装置、及び、PWM制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20190225BHJP
【FI】
H02P27/08
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-224296(P2014-224296)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-92951(P2016-92951A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(72)【発明者】
【氏名】平田 光男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅康
【審査官】
尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−196621(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/041276(WO,A1)
【文献】
特開平08−066079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)方式により、制御対象の動作を制御
するPWM制御装置であって、
パルス幅(△T[κ])と、
パルス幅中心(Ts/2+h[κ])におけるパルス幅中心の変位量h[κ]と、の二つのパルス波形を制御する制御信号を変数として与える制御信号生成部と、
前記制御信号生成部から取得する前記制御信号に基づいて、前記制御対象に印加するPWM波形を生成し、前記制御対象に向けて出力する波形生成部と、を備え、
前記制御信号生成部は、
前記制御対象の動作を制御する際に、
前記制御対象について与えられる、前記パルス幅(△T[κ])と前記変位量h[κ]に関する非線形な離散時間状態方程式に、仮想入力uVを導入して、前記パルス幅(△T[κ])と前記変位量h[κ]を計算し、
前記波形生成部は、
計算された前記パルス幅(△T[κ])と前記変位量h[κ]を取得して、前記PWM波形を生成することを特徴とするPWM制御装置。
Ts:サンプリング周期
【請求項2】
パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)方式により、制御対象の動作を制御
するPWM制御装置であって、
パルス幅(△T[κ])と、
パルス幅中心(Ts/2+h[κ])におけるパルス幅中心の変位量h[κ]と、の二つのパルス波形を制御する制御信号を変数として与える制御信号生成部と、
前記制御信号生成部から取得する前記制御信号に基づいて、前記制御対象に印加するPWM波形を生成し、前記制御対象に向けて出力する波形生成部と、を備え、
前記制御信号生成部は、
前記制御対象について与えられる、前記パルス幅(△T[κ])と前記変位量h[κ]に関する非線形な離散時間状態方程式に、仮想入力uVを導入することによって予め求められている、前記仮想入力uVに対する前記パルス幅(△T[κ])と前記変位量h[κ]の関連データを保持し、
前記波形生成部は、
前記関連データを取得して、前記PWM波形を生成することを特徴とするPWM制御装置。
Ts:サンプリング周期
【請求項3】
パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)方式により、制御対象の動作を制御
するPWM制御方法であって、
パルス幅(△T[κ])と、
パルス幅の中心(Ts/2+h[κ])におけるパルス幅中心の変位量h[κ]と、の二つのパルス波形を制御する信号を変数として、前記制御対象に印加するPWM波形を生成し、前記制御対象に向けて印加し、
前記制御対象に向けて印加される前記PWM波形は、
前記制御対象の動作を制御する際に、
前記制御対象について与えられる、前記パルス幅(△T[κ])と前記変位量h[κ]に関する非線形な離散時間状態方程式に、仮想入力uVを導入して計算される前記パルス幅(△T[κ])と前記変位量h[κ]に基づいて、生成されることを特徴とするPWM制御方法。
Ts:サンプリング周期
【請求項4】
パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)方式により、制御対象の動作を制御
するPWM制御方法であって、
パルス幅(△T[κ])と、
パルス幅の中心(Ts/2+h[κ])におけるパルス幅中心の変位量h[κ]と、の二つのパルス波形を制御する信号を変数として、前記制御対象に印加するPWM波形を生成し、前記制御対象に向けて印加し、
前記制御対象に向けて印加される前記PWM波形は、
前記制御対象について与えられる、前記パルス幅(△T[κ])と前記変位量h[κ]に関する非線形な離散時間状態方程式に、仮想入力uVを導入することによって予め求められている、前記仮想入力uVに対する前記パルス幅(△T[κ])と前記変位量h[κ]の関連データに基づいて、生成されることを特徴とするPWM制御方法。
Ts:サンプリング周期
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス波のデューティー比を変化させて変調するパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)に関する。
【背景技術】
【0002】
PWMは、制御対象、例えばモータの動作を制御する際に、印加電圧を連続的に変化させるのではなく、パルス波の幅を変化させる、つまりデューティー比を変化させることで、印加電圧を変化させるのと同様の効果を果たす。PWMは、スイッチングがonの状態とoffの状態しかないので(
図6(b)参照)、駆動回路の損失が極めて少なく、効率の高い制御手法である。なお、デューティー比は、パルス波の幅(デューティー)をΔT,サンプリング周期をTsとすると、以下で定義される(
図6(a)参照)。
デューティー比:ΔT/Ts
【0003】
PWM制御は、制御対象が線形システムであっても、PWM入力で駆動すると、そのシステムは非線形特性を示す。そこで、非特許文献1に示されるように、「PWMホールド離散化」と称される、線形性の高い離散時間モデルを求める手法が提案されている。
この手法は、
図6(c)に示すように、パルス幅:△T[κ]を可変にすることを要旨とする。この手法は、現在、種々の用途のPWM制御に適用されている(例えば、特許文献1)が、離散化誤差の大きさは、制御対象の特性又はサンプリング周期に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−219216号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】河村篤男 「PWMインバータで駆動されるパワーエレクトロニクスシステムの線形サンプル値モデルの導出」 電気学会全国大会資料,pp636-637 1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、PWMホールド離散化では、以下の(21)式が成立することを仮定しており、この仮定が満たされない場合には、PWMホールド離散化モデルは、あくまで近似モデルにすぎない。したがって、特に、高い制御性能が求められる場合には、モデル化誤差を無視できなくなる。
【0007】
【数1】
【0008】
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、制御対象が線形性を有する場合に、制御対象を含むPWM制御システムを、線形性を有する離散時間システムにできるPWM制御装置及びPWM制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもとになされた本発明は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)方式により、制御対象の動作を制御するPWM制御装置であって、パルス幅(△T[κ])と、パルス幅中心(Ts/2+h[κ])におけるパルス幅中心の変位量h[κ]と、の二つのパルス波形の制御信号を変数として与える制御信号生成部と、制御信号生成部から取得する制御信号に基づいて、制御対象に印加するPWM波形を生成し、制御対象に向けて出力する波形生成部と、を備えることを特徴とする。
なお、Ts、h[κ]は以下の通りである。
Ts:サンプリング周期
h[κ]:パルス幅中心の変位量
【0010】
本発明のPWM制御装置は、パルス幅:△T[κ]とパルス幅中心:Ts/2+h[κ]の二つの変数を可変にすることにより、制御対象が線形性を有する場合に、制御対象を含むPWM制御システムを、線形性を有する離散時間システムにできる。したがって、本発明によると、高い制御性能を持って制御対象の動作を制御することができる。
【0011】
本発明のPWM制御装置において、波形生成部に与えられるパルス幅:△T[κ]とパルス幅中心の変位量:h[κ]は、制御対象の動作を制御する際に計算する第1形態と、予め計算して得られた関連データを保持しておく第2形態と、から選択して生成される。
より具体的には、第1形態は、制御信号生成部が、制御対象の動作を制御する際に、制御対象について与えられる、△T[κ]とh[κ]に関する非線形な離散時間状態方程式に、仮想入力u
Vを導入して、△T[κ]とh[κ]を計算し、波形生成部は、計算された△T[κ]とh[κ]を取得して、制御対象に印加するPWM波形を生成する。
また、第2形態は、制御信号生成部が、制御対象について与えられる、△T[κ]とh[κ]に関する非線形な離散時間状態方程式に、仮想入力u
Vを導入することによって予め求められている、仮想入力u
Vに対する△T[κ]と前記h[κ]の関連データを保持し、波形生成部は、関連データを取得して、制御対象に印加するPWM波形を生成する。
【0012】
本発明は、また、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)方式により、制御対象の動作を制御するPWM制御方法であって、パルス幅(△T[κ])とパルス幅中心(Ts/2+h[κ])の二つのパルス波形の制御信号を変数として、制御対象に印加するPWM波形を生成し、制御対象に向けて印加する、ことを特徴とするPWM制御方法を提供する。
【0013】
PWM制御方法においても、前述した第1形態と第2形態を選択することができる。
つまり、第1形態においては、制御対象に向けて印加されるPWM波形は、制御対象の動作を制御する際に、制御対象について与えられる、△T[κ]とh[κ]に関する非線形な離散時間状態方程式に、仮想入力u
Vを導入して計算される△T[κ]とh[κ]に基づいて、生成される。
また、第2形態においては、制御対象に向けて印加されるPWM波形は、制御対象について与えられる、△T[κ]とh[κ]に関する非線形な離散時間状態方程式に、仮想入力u
Vを導入することによって予め求められている、仮想入力u
Vに対する△T[κ]とh[κ]の関連データに基づいて、生成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パルス幅:△T[κ]とパルス幅中心:Ts/2+h[κ]の二つの変数を可変にすることにより、制御対象が線形性を有する場合に、制御対象を含むPWM制御システムを、線形性を有する離散時間システムにできる。したがって、本発明によると、高い制御性能を持って制御対象の動作を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るPWM制御システムの構成を示す図である。
【
図2】本実施形態の波形生成部から出力される波形を説明する図である。
【
図3】
図1のPWM制御システムのパラメータ計算部の処理内容の要旨を示す図である。
【
図4】本実施形態の効果を検証するシミュレーションを行った結果を(a)に示し、従来のPWMホールド離散化に従ったシミュレーションの結果を(b)に示す。
【
図5】本実施形態に適用できるルックアップテーブルの元データを示すグラフである。
【
図6】PWM制御の基本的な要素及び従来のPWMホールド離散化の要旨を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態におけるPWM制御システム1は、PWM制御装置10と、PWM制御装置10により動作が制御される制御対象20と、を備えている。制御対象20は、例えば、電動モータ、スイッチング電源などの任意の機器が適用される。
【0017】
[PWM制御装置10]
PWM制御装置10は、従来のPWMホールド離散化と同様に、パルス幅:△T[κ]を可変にするのに加えて、パルス幅中心:Ts/2+h[κ]の二つの制御信号を可変(ダブル可変制御と称する)にして、制御対象20の動作を制御する。
なお、パルス幅中心を特定するTs及びh[κ]は、以下を示している。
Ts:サンプリング周期
h[κ]:サンプリング周期により特定されるパルス幅中心の変位量
【0018】
PWM制御装置10は、ΔT[κ]及びh[κ]の二つの制御信号を、所定のサンプリング周期[κ]ごとに計算する制御信号生成部11と、制御信号生成部11で計算されたΔT[κ]及びh[κ]を取得してPWM波形を生成する波形生成部15と、を備える。
図2に、ダブル可変制御に従って波形生成部15で生成される波形の例を示す。つまり、本実施形態においては、パルス幅ΔTがサンプリング周期[κ]ごとに、△T[κ]、△T[κ+1]…というように可変とするとともに、Ts/2+hで特定されるパルス幅中心がサンプリング周期[κ]ごとに、Ts/2+h[κ]、Ts/2+h[κ+1]…というように可変として制御される。
【0019】
以下、ダブル可変制御を実行するために必要な二つのパラメータである、△T[κ]及びh[κ]を計算する手順を、説明する。以下の手順は、制御対象20の次数が二次で、固有値が異なる場合には、厳密に線形化が可能で、線形離散時間モデルが得られることを前提としている。
【0020】
1.制御対象とPWM入力の定義
制御対象20のモデル(連続時間入力システム)は、(1)式に示す通りであり、これをPWMホールドで離散化する。ただし、(1)式において、A
Cは互いに異なる実数固有値λ1,λ2を持つものとし、(2)式のように、一般性を失うことなく対角正準系で定義する。
【0023】
(1)式のPWM入力u(t)は、
各サンプリング周期κT
S≦t<(κ+1)T
S (κ=0,1,2,…)
において(3)式で与えられるものとする。
なお、ここでは簡単のためΔT>0に限定して話を進めるが、△T<0のとき負のパルス電圧−Eを発生すると仮定しても、以下に示す同様の議論が成立する。
【0024】
(3)式において、T
Sはサンプリング周期、△Tはパルス幅とし、パルスの中心はκT
S+T
S/2+hとする。パルスの中心が変えられるようにhを導入したところに、本実施形態の特徴がある。
なお、(3)式において、hとΔtについては、サンプリング周期κごとに変化するので、正確にはh[κ]、△T[κ]と表記すべきであるが、記述を簡単にするため[κ]は省略した。
【0026】
2.離散化モデル(非線形)の導出
(2)式を離散化するために、(4)式を計算する。
ついで、変数変換t=τ−Ts/2−hを行い、要素を計算すると(5)式〜(7)式を得る。ただし、(7)式のM(h,△T)は、(8)式の通りである。
【0030】
以上から、(2)式の離散化システムとして、以下に(9)式として示す、非線形離散時間状態方程式が得られる。ただし、(9)式のAdは、(10)式の通りである。
(9)式は、h及び△Tに関して非線形な状態方程式になっている。
【0033】
3.線形化
次に、非線形な(9)式を線形化するために、仮想入力u
Vを導入し、各サンプリング時刻κにおいて、与えられた仮想入力u
Vに対して、(11)式を満たすhと△Tを決めるものとする。なお、|u
V[κ]|≦T
S(サンプリング周期)を満たす。
【0035】
(11)式が成立すると、(9)式の非線形離散時間状態方程式は、(12)式で与えられる次の線形離散時間状態方程式へ線形化できる。
【0037】
4.線形化入力の計算
与えられた仮想入力u
Vに対して、(11)式を満たすh及び△Tを求める処理について述べる。この処理は、制御信号生成部11にて実行される。
(11)式は、新たに定義したf
1(△T)((15)式)、f
2(△T)((16)式)を使って(13)式、(14)式のように記述できる。ここで、f
1(T
S)=T
S,f
2(T
S)=T
Sが成立することに注意したい。
【0040】
(13)式,(14)式からu
Vを消去してh(パルス幅)について解くと(17)式を得るが、(17)式を(13)式あるいは(14)式に代入すると(18)式を得る。
【0043】
従って、次の手順でh及び△Tを求めることができる。
Step1:(18)式を解いて△Tを求める。
Step1:求めた△Tを(17)式に代入してhを求める。
【0044】
リアルタイム実装するには、(18)式及び(17)式を、サンプリング周期ごとに解かなければならない。制御演算装置の性能により、これが難しい場合は、仮想入力u
Vに対するh及び△Tをあらかじめ計算しておき、それを、ルックアップテーブルとしてメモリに保存して利用すれば良い。
【0045】
一例として、(19)式を与え、サンプリング周期をT
S=0.1[s]とし、u
V/T
Sを0.1から1まで0.1刻みで与えた時のhと△Tを求めた。結果を
図5に示すが、この
図5の関係をルックアップテーブル化して、制御信号生成部11又は他のメモリ手段に記憶しておき、必要に応じてこれを参照すれば、リアルタイムにhと△Tを計算する必要がなくなる。
【0047】
以上のようにして制御信号生成部11がΔT[κ]及びh[κ]を計算すると、
図1に示すように、波形生成部15は、取得するΔT[κ]及びh[κ]に従って、パルス幅:ΔT[κ]と、バルス幅中心(Ts/2+h[κ])により特定されたPWM波形を生成する。波形生成部15の構成は任意であるが、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのマイクロプロセッサが持つタイマー機能を使って容易に実装できる。
波形生成部15で生成されるPWM波形により、仮想入力u
Vから制御対象の状態や出力までの特性は線形となり、この波形に従って動作が制御される制御対象20の仮想入力u
Vから出力、例えば、制御対象がモータであれば回転角度、角速度までの特性が線形となる。
【0048】
[実施例]
次に、制御対象のモデルを(20)式に示すものとし、サンプリング周期T
Sを0.1[s]として、本実施形態の効果を検証するシミュレーションを行った。その結果を、
図4に示す。なお、本実施形態に従ったシミュレーションの結果は(a)に、また、比較として行った従来のPWMホールド離散化に従ったシミュレーションの結果は(b)に示す。
【0050】
従来のPWMホールド離散化によると、Error(Y−Ypwm)の応答からわかるように、実際の出力(Y)と離散化モデルの出力(Ypwm)に誤差が見られるのに対して、本実施形態によると、誤差(Y−Yprop)は0となることがわかる。
【0051】
なお、本実施形態による
図4(a)のY、Ypropは以下の通りである。なお、
図4(a)のYは実線、Ypropは破線であることが示されているが、Ypropを表示するために、Yの表示を省略している。
Y:仮想入力u
V[κ]を、u
V[κ]=sin(2π・f
C・T
S・κ)と与え、そこから、最適なh[κ]、△T[κ]を求めてPWM波形を生成したときの出力応答
Yprop:、線形化されたモデルの出力
また、比較例による
図4(b)のY、Ypwmは以下の通りである。
Y:h=0、△T[κ]=sin(2π・f
C・T
S・κ)/T
SとしてPWM波形を与えた時の出力
Y
pwm:制御対象20をPWMホールド離散化し、その離散化モデルに、△T[κ]=sin(2π・f
C・T
S・κ)/T
Sを与えた時の出力
【0052】
[効 果]
以上説明したように、本実施形態によると、パルス幅:△T[κ]とパルス幅中心:Ts/2+h[κ]の二つの変数を可変にすることにより、PWM制御装置10と制御対象20を含むPWM制御システム1が、線形な離散時間システムになる。したがって、本実施形態によると、高い制御性能を持って制御対象20の動作を制御することができる。
【0053】
また、hと△Tの関係を予め求めておき、その関係をルックアップテーブルとして記憶しておくことにより、リアルタイムにhと△Tを計算する必要がなくなるので、計算の負荷を軽減できるとともに、制御の迅速化が図られる。
また、既存のPWM制御装置は、マイクロコンピュータとプログラムで実現されているケースが多いが、このような場合は、格別な要素を加えることなく、プログラムを変更するだけで、本実施形態の機能を有する制御装置を得ることができる。
【0054】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、(1)式において固有値を実数としたが、共役な複素数においてほぼ同様の議論がなりたつ。また、(1)式は2次と仮定したが、3次以上の制御対象であっても2次システムとそれ以外のシステムに分解し、2次システムの部分に提案手法を適用することで、線形性の高いシステムにできる。
【符号の説明】
【0055】
1 制御システム
10 制御装置
11 制御信号生成部
15 波形生成部
20 制御対象