特許第6479495号(P6479495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6479495-緩衝ストッパ 図000002
  • 特許6479495-緩衝ストッパ 図000003
  • 特許6479495-緩衝ストッパ 図000004
  • 特許6479495-緩衝ストッパ 図000005
  • 特許6479495-緩衝ストッパ 図000006
  • 特許6479495-緩衝ストッパ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479495
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】緩衝ストッパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/00 20060101AFI20190225BHJP
   F16F 7/09 20060101ALI20190225BHJP
   F16F 1/387 20060101ALI20190225BHJP
   B62D 3/12 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   F16F7/00 F
   F16F7/09
   F16F1/387 A
   B62D3/12 503C
   B62D3/12 511
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-23105(P2015-23105)
(22)【出願日】2015年2月9日
(65)【公開番号】特開2016-145619(P2016-145619A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2018年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】水町 昭二
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−161942(JP,A)
【文献】 特開2000−168597(JP,A)
【文献】 特開2008−024076(JP,A)
【文献】 特開2008−126790(JP,A)
【文献】 特開平02−209639(JP,A)
【文献】 特開2013−230769(JP,A)
【文献】 特開2014−223859(JP,A)
【文献】 特開2009−012663(JP,A)
【文献】 特開平08−133102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00
B62D 3/12
F16F 1/387
F16F 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向相対移動可能な二部材のうちの一方に取り付けられ前記二部材のうちの他方に形成された端面と対向する環状のストッパ本体と、このストッパ本体に一体的に設けられた環状の緩衝体を備え、この緩衝体はゴム状弾性材料からなるものであって、前記端面側を向いた前記ストッパ本体の端部より前記端面側へ向けて軸方向へ延びる突出端部と、前記二部材のうちの他方に形成された筒状面と摺動可能に接触される摩擦突起が形成されたことを特徴とする緩衝ストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の操舵装置におけるステアリングラックの端部に緩衝手段として取り付けられる緩衝ストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のラックアンドピニオン式の操舵装置は、よく知られているように、運転者がステアリングホイールを回転操作することにより、ピニオンギアを介してステアリングラックが移動され、その左右両端にボールジョイントを介して連結されたタイロッドが、ステアリングラックに対して揺動され、車輪を任意の方向へ旋回させるようになっている。この種の操舵装置において、ステアリングラックの端部には、ラックハウジングの端面との間で衝撃を緩和するための緩衝手段として、緩衝ストッパが設けられている。
【0003】
図4は、従来の技術による緩衝ストッパを装着状態で示す部分断面図であり、図5は単体で示す断面斜視図である。図4において、参照符号200はラックハウジング、参照符号300はこのラックハウジング200に軸方向往復動自在に挿通されたステアリングラック、参照符号400はステアリングラック300の端部に設けられたラックエンド301にボールジョイント401を介して連結されたタイロッドである。緩衝ストッパ100は、ラックエンド301におけるラックハウジング200の拡径部201の端面201aとの対向面に取り付けられており、図5にも示すように、金属環などからなるストッパ本体101と、その外周にゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)で一体に成形された緩衝体102を備える。緩衝体102は、ストッパ本体101の筒部101aの外周からラックハウジング200の拡径部201の端面201a側へ向けて軸方向へ延びる突出端部102aを有する。
【0004】
この緩衝ストッパ100は、例えば油圧や電動等により操舵力がアシストされた車両において、フルロックまで勢いよくハンドルを切った場合などに、ラックハウジング200に対して軸方向往復動するステアリングラック300がそのストロークエンドに達する過程で、緩衝体102の突出端部102aが、まずラックハウジング200の端面201aと衝突して圧縮変形されることにより衝撃を緩和し、次にストッパ本体101の筒部101aの端部がラックハウジング200の端面201aと接触することによって、ステアリングラック300の最大変位量を規制するメカニカルストッパとして機能するものである(例えば特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−133102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記従来の緩衝ストッパ100による緩衝は、可動体であるステアリングラック300の質量と移動速度による運動エネルギーを、ゴム状弾性材料からなる緩衝体102の圧縮に対する反力と変位により吸収するもので、縦軸に反力、横軸に変位量を取った図6に示すように、吸収可能なエネルギー量の大きさは、緩衝体102の特性線と横軸との間のハッチングされた領域の面積として表すことができる。このため、吸収可能なエネルギー量を大きくするには、緩衝体102の最大圧縮変位量を大きくするか、反力(ばね定数)を大きくすることによって、図6におけるハッチングされた領域の面積を大きくすることが一般的である。
【0007】
しかしながら、この種の緩衝ストッパ100は、メカニカルストッパ(ストッパ本体101)によって緩衝体102の圧縮変位量が規制されており、また、操舵装置の構造上、緩衝体102の最大圧縮変位時の最大反力FMAXが規制されている場合は、単純に緩衝体102の体積を拡大したり硬度の高いゴム材料を使用したりすると最大圧縮変位時の最大反力FMAXが大きくなりすぎてしまい、このため、緩衝ストッパ100によって吸収可能なエネルギー量を十分に大きくすることができない問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、緩衝体の最大圧縮変位量や圧縮に対する反力にのみ依存することなく、吸収可能なエネルギー量を大きくすることの可能な緩衝ストッパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る緩衝ストッパは、軸方向相対移動可能な二部材のうちの一方に取り付けられ前記二部材のうちの他方に形成された端面と対向する環状のストッパ本体と、このストッパ本体に一体的に設けられた環状の緩衝体を備え、この緩衝体はゴム状弾性材料からなるものであって、前記端面側を向いた前記ストッパ本体の端部より前記端面側へ向けて軸方向へ延びる突出端部と、前記二部材のうちの他方に形成された筒状面と摺動可能に接触される摩擦突起が形成されたものである。
【0010】
上記構成によれば、二部材の軸方向相対移動がそのストロークエンドに達する過程で、二部材のうちの一方に取り付けられた緩衝体の突出端部が、二部材のうちの他方に形成された端面と衝突して圧縮変形されると共に、この緩衝体に形成された摩擦突起が二部材のうちの他方に形成された筒状面と摺動することにより発生する摩擦抵抗により衝撃を緩和し、次にストッパ本体の端部が前記端面と接触することによって、最大変位量を規制する。このため、ゴム状弾性材料からなる緩衝体の圧縮に対する反力に加え、摩擦抵抗が作用することで、緩衝体の圧縮変位初期から大きな反力が得られるので、吸収可能なエネルギー量を効率よく大きくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る緩衝ストッパによれば、緩衝体の圧縮に対する反力と摩擦抵抗によって、緩衝体の最大圧縮変位量やばね定数のみに依存することなく、吸収可能なエネルギー量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る緩衝ストッパの好ましい実施の形態を装着状態で示す部分断面図である。
図2】本発明に係る緩衝ストッパの好ましい実施の形態を示す断面斜視図である。
図3】本発明に係る緩衝ストッパによる作用を説明するための特性線図である。
図4】従来の技術による緩衝ストッパの一例を装着状態で示す部分断面図である。
図5】従来の技術による緩衝ストッパの一例を示す断面斜視図である。
図6】従来の技術による緩衝ストッパの特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る緩衝ストッパの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る緩衝ストッパを装着状態で示す部分断面図であり、図2は単体で示す断面斜視図である。図1において、参照符号2はラックハウジング、参照符号3はこのラックハウジング2に軸方向往復動自在に挿通されたステアリングラック、参照符号4はステアリングラック3の端部に設けられたラックエンド31にボールジョイント41を介して連結されたタイロッドである。ラックハウジング2の端部には、ラックエンド31におけるタイロッド4と反対側の端面31aと軸方向に対向する拡径部21と、その外径部からタイロッド4側へ向けて延び、ラックエンド31より大径の筒状部22が形成されている。なお、ステアリングラック3は請求項1に記載された二部材のうちの一方に相当し、ラックハウジング2は請求項1に記載された二部材のうちの他方に相当する。
【0015】
緩衝ストッパ1は、ラックエンド31におけるタイロッド4と反対側の端面31aに当接配置されており、図2にも示すように、ストッパ本体11と、このストッパ本体11に一体的に設けられた緩衝体12を備える。
【0016】
緩衝ストッパ1におけるストッパ本体11は金属環などで製作されたものであって、ステアリングラック3に外挿される筒部11aと、この筒部11aの端部から外径側へ展開し、ラックエンド31におけるタイロッド4と反対側の端面31aに当接される鍔部11bからなる。
【0017】
緩衝ストッパ1における緩衝体12は、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)でストッパ本体11と一体的に成形されたものであって、ストッパ本体11の筒部11aの外周面及び鍔部11bにおけるラックエンド31と反対側の端面に接着されており、ストッパ本体11の筒部11aの外周からラックハウジング2の拡径部21の端面21a側へ向けて軸方向へ延びる突出端部12aと、この突出端部12aと反対側の端部寄り(ストッパ本体11の鍔部11b寄り)の外周面に円周方向へ連続又は断続して形成されラックハウジング2の筒状部22の内周面22aに摺動可能に接触される摩擦突起12bを備える。なお、筒状部22の内周面22aは請求項1に記載された筒状面に相当する。
【0018】
以上のように構成された緩衝ストッパ1によれば、例えば油圧や電動等により操舵力がアシストされた車両において、フルロックまで勢いよくハンドルを切った場合などに、ラックハウジング2に対して軸方向往復動するステアリングラック3がそのストロークエンドに達する過程で、緩衝体12の突出端部12aが、まずラックハウジング2の拡径部21の端面21aと衝突して圧縮変形されると共に、この緩衝体12に形成された摩擦突起12bがラックハウジング2の筒状部22の内周面22aとの間で摩擦抵抗を生じることにより衝撃を緩和し、次にストッパ本体11の筒部11aの端部がラックハウジング2の拡径部21の端面21aと接触することによって、ステアリングラック3の最大変位量を規制するメカニカルストッパとして機能する。
【0019】
ここで、緩衝体12がラックハウジング2の拡径部21の端面21aと衝突して圧縮変形されることによる反力は、図3に特性線Aで示すように、圧縮初期は線形的に増大し、変位量がある程度大きくなると非線形的に増大する。一方、摩擦突起12bがラックハウジング2の筒状部22の内周面22aとの間で発生する摩擦抵抗による反力は、図3に特性線Bで示すように、緩衝体12の圧縮変位初期は静摩擦力として大きく立ち上がり、その後、摩擦突起12bがラックハウジング2の筒状部22の内周面22aとの摺動を開始した時点で動摩擦力として若干低下するものの、変位量と関係なく一定の摩擦力が発生する。
【0020】
このため、図3に特性線Cで示す緩衝体12による反力は、圧縮反力と摩擦抵抗による反力の和であり、緩衝体12によって吸収可能なエネルギー量、すなわち特性線Cと横軸との間の領域(ハッチングされた領域)の面積は、特性線Aと横軸との間の領域の面積と、特性線Bと横軸との間の領域の面積の和に相当するものである。したがって、従来の技術のように、ゴム状弾性材料の硬度(ばね定数)を単純に高めることによって、最大圧縮変位時の最大反力FMAX1を緩衝体12の圧縮変形による反力と摩擦抵抗による反力の和による最大反力FMAX2へ引き上げた場合の特性線Dに比較して、本発明の緩衝ストッパ1によれば、特性線Cで示すように、摩擦抵抗が作用することで緩衝体12の圧縮変位初期から大きな反力が得られるので、吸収可能なエネルギー量を効率よく大きくし、緩衝性能を向上することができる。
【0021】
また、最大反力FMAX2が大きすぎるような場合は、ゴム状弾性材料の硬度(ばね定数)を低下させる等の対応によって、緩衝性能の低下を抑制しつつ問題を回避することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 緩衝ストッパ
11 ストッパ本体
12 緩衝体
12a 突出端部
12b 摩擦突起
2 ラックハウジング(二部材のうちの他方)
22a 内周面(筒状面)
3 ステアリングラック(二部材のうちの一方)
図1
図2
図3
図4
図5
図6