特許第6479520号(P6479520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479520
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20190225BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20190225BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20190225BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   A61F13/53 100
   A61F13/532 200
   A61F13/533 200
   A61F13/511 400
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-57457(P2015-57457)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-174741(P2016-174741A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】中村 友里子
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−052161(JP,A)
【文献】 特開2010−075464(JP,A)
【文献】 特開2015−047432(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/004636(WO,A1)
【文献】 特開2005−218648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/53
A61F 13/511
A61F 13/532
A61F 13/533
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上層側及び下層側がコアラップシートで被覆されるとともに、長手方向に沿って厚み方向に貫通するスリットが形成された吸収体を備える吸収性物品であって、
前記スリットを含む領域の前記吸収体と前記下層側コアラップシートとの間に、熱融着性繊維を含む不織布シートが配置され、前記上層側コアラップシートの外面側から前記スリットに対しエンボスを施すことにより、前記スリットにおいて前記上層側コアラップシートと前記下層側コアラップシートとが一体化されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記不織布シートは、目付10〜50g/mのエアスルー不織布からなり、前記スリットより広い領域に配置されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記不織布シートは、繊維長5〜100mmの短繊維からなる請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記スリットは吸収性物品の幅方向に離間して複数条設けられ、これら全てのスリットを含む領域に前記不織布シートが連続的に配置されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記コアラップシートは、クレープ紙からなる請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体の上層側に透液性トップシートが配置され、前記エンボスは前記透液性トップシートの外面側から施されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体の上層側に透液性トップシートが配置されるとともに、前記透液性トップシートと吸収体との間に中間シートが配置され、前記エンボスは前記透液性トップシートの外面側又は前記中間シートの外面側から施されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記エンボスは、多数のピン状エンボス又はドット状エンボスからなる請求項1〜7いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記ピン状エンボス又はドット状エンボスは、前記スリットに沿って等間隔に3つ以上配置していない請求項8記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記エンボスは、前記スリットの中央部に向けて漸次幅狭又は漸次幅広に形成されている請求項1〜9いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、失禁パッド、生理用ナプキン等の吸収性物品に係り、詳しくは、上層側及び下層側がコアラップシートで被覆されるとともに、長手方向に沿って厚み方向に貫通するスリットが設けられた吸収体を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使い捨ておむつ、失禁パッド、生理用ナプキン等の吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの防漏シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性トップシートとの間に綿状パルプ及び高吸水性ポリマー等からなる吸収体を介在したものが知られている。前記吸収体は、形状保持および拡散性向上のためにクレープ紙や不織布等からなるコアラップシートによって囲繞されている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、フィット性を向上し、漏れを防止したものが種々開発されている。例えば、下記特許文献1においては、吸収部が繊維集合体内に高吸収性ポリマーを含有する吸収体と弾性材とからなり、前記弾性材の主成分が熱融着繊維からなり、前記吸収体と弾性材とが接着剤、エンボス及び熱融着からなる群より選ばれる少なくとも一つの一体化手段と、圧着溝とによって一体化している吸収性物品が開示されている。また、下記特許文献2においては、液体透過性包囲層、液体バリヤー層、これらの間に含まれる吸収要素、及び液体透過性包囲層と吸収層との間に配置される液体移動層を含み、前記液体透過性包囲層が液体移動層に対して明瞭に熱的に生成された結合で結合されている吸収製品が開示されている。
【0004】
さらに、下記特許文献3においては、吸収体は、高吸収性ポリマーが繊維材料に埋没保持された吸収性コアと、前記吸収性コアをバックシート側から被覆する下層コアラップシートと、前記吸収性コアをトップシート側から被覆する上層コアラップシートとを備え、前記吸収性コアは、吸収体の長手方向に延びた空隙を空けて下層コアラップシート上に配設されており、前記下層コアラップシートと上層コアラップシートが、前記吸収性コアの空隙箇所に対応する部分において接合されることにより、少なくとも吸収体の上層コアラップシートに吸収体の長手方向に延びた溝部が形成され、前記溝部における下層コアラップシートと上層コアラップシートとの間に高吸収性ポリマーが挟み込まれている吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−216172号公報
【特許文献2】特表2002−526279号公報
【特許文献3】特開2012−179230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2記載のものでは、所定のエンボスが付与されるものの、吸収体が全面に亘って一体的に形成されるため、吸収性物品の装着時に、特に股下部において吸収体の弛みや膨らみが発生しやすく、フィット性が必ずしも十分に得られるものではなかった。このため、肌と吸収性物品表面との間に隙間が生じ、漏れが発生するおそれがあった。
【0007】
一般に、吸収体に長手方向に沿って厚み方向に貫通するスリットを形成することにより、吸収体が変形しやすくなって、吸収性物品の装着時に幅方向両側からの脚圧によって股下部に弛みや過剰な膨らみが発生するのが抑えられるとともに、これに伴うシワやヨレが抑えられ、吸収性物品が着用者の身体に適切にフィットすることが知られている。このため、吸収体にスリットを形成することは、良好な装着感をもたらすことができるとともに、肌面との隙間が低減して漏れが防止でき、さらに装着時の外観も良好となるなどの点から好ましいとされている。
【0008】
ところが、吸収体にスリットを形成するに際しては、スリット部分に空間を設けるようにしてパルプ及びポリマーを積繊しただけでは、装着時の動きや吸収体が排泄物を吸収することなどによって、スリットの空間部に吸収体を構成するパルプやポリマーが移動して、スリットの空間部を埋めてしまうことがあった。特に、薄型吸収体の場合には、パルプやポリマーが移動しやすいという欠点があった。周囲のパルプやポリマーがスリット部分に移動することにより、周辺部の吸収体の密度が低下して、吸収体のヨレや割れが生じやすくなるという問題があった。
【0009】
この点について、上記特許文献3記載のものでは、吸収体のスリットに対応する部分において上層コアラップシートと下層コアラップシートとを接合する溝部が形成されているため、スリットの空間部に周囲のパルプやポリマーが移動するのが防止できるものの、溝部において下層コアラップシートと上層コアラップシートとの間に高吸収性ポリマーが挟み込まれているため、コアラップシート同士の接合強度が低下しやすく、装着中のヨレなどによって接合部分が外れた場合にはスリットを維持するのが困難であった。
【0010】
上記特許文献3にも開示されるように、スリットにおいて吸収体を囲繞する上層側及び下層側のコアラップシート同士を接合することによって、スリットの空間内にコアラップシートが入り込み、吸収体を構成するパルプやポリマーが移動しにくくなるためスリット形状が維持できる点で有効であるが、上層側及び下層側のコアラップシートがクレープ紙からなる場合には熱融着することができず、コアラップシートが不織布からなる場合でも、コアラップシートとして使用する素材は薄手のものであるため熱融着の際に穴が開いたり破れたりすることがあった。また、コアラップシートとして用いられる不織布はコシがないため、吸収体を構成するパルプやポリマーの移動を抑えて、吸収体のヨレや割れを防止するには至らないものである。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、長手方向に沿って厚み方向に貫通するスリットが形成された吸収体を備える吸収性物品において、スリットの形状を維持し、吸収体のヨレや割れを防止するとともに、股下部におけるフィット性を向上し、漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、上層側及び下層側がコアラップシートで被覆されるとともに、長手方向に沿って厚み方向に貫通するスリットが形成された吸収体を備える吸収性物品であって、
前記スリットを含む領域の前記吸収体と前記下層側コアラップシートとの間に、熱融着性繊維を含む不織布シートが配置され、前記上層側コアラップシートの外面側から前記スリットに対しエンボスを施すことにより、前記スリットにおいて前記上層側コアラップシートと前記下層側コアラップシートとが一体化されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項1記載の発明では、上層側コアラップシート、下層側コアラップシートによって被覆されるとともに、長手方向に沿って厚み方向に貫通するスリットが形成された吸収体を備える吸収性物品である。そして、前記スリットを含む領域の吸収体と下層側コアラップシートとの間には、熱融着性繊維を含む不織布シートが配置されている。更に、前記上層側コアラップシートの外面側から前記スリットに対しエンボスを施すことにより、前記スリットにおいて上層側コアラップシートと下層側コアラップシートとが一体化されている。すなわち、前記エンボス時の加熱によって、前記不織布シートに含まれる熱融着性繊維の熱融着作用又は接着作用により上層側コアラップシートと下層側コアラップシートとが前記不織布シートを介して一体化(接着)している。
【0014】
これによって、前記スリットに上層側コアラップシートが介在するため、スリットの空間部に吸収体を構成するパルプやポリマーが移動するのが防止でき、スリットの形状が維持しやすくなるとともに、吸収体のヨレや割れが防止できるようになる。また、スリット形状が維持できるため、吸収体が身体に沿って変形しやすくなり、股下部におけるフィット性が向上し、確実に漏れが防止できるようになる。
【0015】
請求項2に係る本発明として、前記不織布シートは、目付10〜50g/mのエアスルー不織布からなり、前記スリットより広い領域に配置されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項2記載の発明では、前記不織布シートとして所定目付のエアスルー不織布を用い、この不織布シートを前記スリットより広い領域に配置することによって、前記不織布シートの繊維の隙間に吸収体からこぼれ落ちたポリマーが入り込んで、ポリマーがスリット部分に移動するのを抑制している。これによって、前記エンボスを施す際に、上層側コアラップシートと下層側コアラップシートとの間にポリマーが介在することにより、これらの接合強度が低下するのが防止できるようになる。
【0017】
請求項3に係る本発明として、前記不織布シートは、繊維長5〜100mmの短繊維からなる請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項3記載の発明では、前記不織布シートを所定繊維長の短繊維で構成することによって、吸収体から脱落したポリマーが不織布シートの繊維の隙間に入り込みやすい構造とし、ポリマーがスリットに移動するのを抑制している。
【0019】
請求項4に係る本発明として、前記スリットは吸収性物品の幅方向に離間して複数条設けられ、これら全てのスリットを含む領域に前記不織布シートが連続的に配置されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項4記載の発明では、前記スリットが吸収性物品の幅方向に離間して複数条設けられた場合において、これら全てのスリットを含む領域に前記不織布シートを連続的に配置しているため、吸収体から脱落したポリマーを前記不織布シートで受け止めて、ポリマーがスリット部分に移動するのが確実に防止できるようになる。
【0021】
請求項5に係る本発明として、前記コアラップシートは、クレープ紙からなる請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項5記載の発明では、前記コアラップシートをクレープ紙で構成した場合でも、前記不織布シートに含まれる熱融着性繊維の熱融着作用又は接着作用により、クレープ紙同士が一体化(接着)できる。
【0023】
請求項6に係る本発明として、前記吸収体の上層側に透液性トップシートが配置され、前記エンボスは前記透液性トップシートの外面側から施されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記請求項6記載の発明では、前記エンボスを透液性トップシートの外面側から施すことによって、不織布シートに含まれる熱融着繊維の熱融着作用だけでは接合強度が不十分な場合に、前記透液性トップシートの熱融着作用により、上層側コアラップシートと下層側コアラップシートとの接合を補強している。
【0025】
請求項7に係る本発明として、前記吸収体の上層側に透液性トップシートが配置されるとともに、前記透液性トップシートと吸収体との間に中間シートが配置され、前記エンボスは前記透液性トップシートの外面側又は前記中間シートの外面側から施されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0026】
上記請求項7記載の発明では、透液性トップシートと吸収体との間に中間シートを配置した場合には、前記エンボスを透液性トップシートの外面側又は中間シートの外面側から施すことによって、これらの熱融着作用により、上層側コアラップシートと下層側コアラップシートとの接合を補強している。
【0027】
請求項8に係る本発明として、前記エンボスは、多数のピン状エンボス又はドット状エンボスからなる請求項1〜7いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0028】
上記請求項8記載の発明は、前記スリットに施されるエンボスのパターンとして、多数のピン状エンボス又はドット状エンボスとしたものである。エンボスパターンを連続圧搾状のパターンとした場合には、吸収性物品の装着時にエンボスの一部が剥がれると、これを基点として全体に連続的に伝播するように剥がれやすくなるという欠点があるが、多数のピン状エンボス又はドット状エンボスとした場合には、一部のピン状エンボス又はドット状エンボスが剥がれても、隣接するエンボスとの間に設けられた離間部で負荷が分散するため、連続的にエンボスが剥がれるのが防止できるようになる。
【0029】
請求項9に係る本発明として、前記ピン状エンボス又はドット状エンボスは、前記スリットに沿って等間隔に3つ以上配置していない請求項8記載の吸収性物品が提供される。
【0030】
上記請求項9記載の発明では、前記ピン状エンボス又はドット状エンボスを、スリットに沿って等間隔に3つ以上配置しないパターンで設けている。これによって、ピン状エンボス又はドット状エンボスに沿って体液が急速に拡散するのが防止できるようになる。
【0031】
請求項10に係る本発明として、前記エンボスは、前記スリットの中央部に向けて漸次幅狭又は漸次幅広に形成されている請求項1〜9いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0032】
上記請求項10記載の発明では、前記スリットにおいて上層側コアラップシートと下層側コアラップシートとを接合しているため、前記コアラップシートに引っ張られてスリット周辺の吸収体がある一定の高さ以上に膨出できず、体液の吸収量が低下するおそれがあるという課題を解決するため、エンボスパターンを、前記スリットの中央部に向けて漸次幅狭又は漸次幅広に形成することにより、スリット形状を維持しつつ、コアラップシートによって吸収体が湿潤時に膨出するのを妨げないようにしている。なお、前記エンボスをピン状エンボス又はドット状エンボスで構成した場合には、前記ピン状エンボス又はドット状エンボスの付与領域を前記スリットの中央部に向けて漸次幅狭又は漸次幅広に形成するようにする。
【発明の効果】
【0033】
以上詳説のとおり本発明によれば、スリットの形状が維持でき、吸収体のヨレや割れが防止できるとともに、股下部におけるフィット性が向上し、漏れが防止できる吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係る使い捨ておむつ1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3】吸収体13を示す、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線矢視図である。
図4】エンボス20の施工手順を示す、吸収体13の断面図である。
図5】他の形態例に係る吸収体13の平面図である。
図6】他の形態例に係るエンボス20の施工手順を示す、吸収体13の断面図である。
図7】エンボスパターンを示す、スリット18部分の拡大平面図(その1)である。
図8】エンボスパターンを示す、スリット18部分の拡大平面図(その2)である。
図9】エンボスパターンを示す、スリット18部分の拡大平面図(その3)である。
図10】エンボスパターンを示す、スリット18部分の拡大平面図(その4)である。
図11】体液拡散状態を示す吸収体13の平面図である。
図12】エンボスパターンを示す、スリット12部分の拡大平面図(その5)である。
図13】体液拡散状態を示す吸収体13の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0036】
(使い捨て紙おむつ1の基本構造)
図1及び図2に示されるように、本使い捨て紙おむつ1(以下、単におむつともいう。)は、不織布などからなる透液性トップシート11と、ポリエチレンなどからなる防水シート12との間に、不織布やクレープ紙などからなるコアラップシートによって被包された綿状パルプなどからなる吸収体13を介在させるとともに、肌面側の両側部にそれぞれ肌側に起立する立体ギャザーBS、BSを形成するギャザー不織布15が配設された吸収性本体10と、この吸収性本体10の外面側に一体的に設けられた外装シート30とからなり、製品状態で、おむつ長手方向中央部で前記外装シート30の前身頃Fと後身頃Bとが重ね合わされ、両側端の接合縁部31、32が接合されることによりウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成された構造のパンツ型おむつである。
【0037】
前記吸収体13は、図示例では平面形状を略方形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。この吸収体13は、形状保持と透液性トップシート11を透過した体液の拡散性向上のためにコアラップシートによって被包されている。この吸収体13については後段で詳述する。
【0038】
前記吸収体13の肌面側(上層側)を覆う透液性トップシート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。透液性トップシート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。前記透液性トップシート11は、吸収体13の肌面側を覆うだけとしてもよいし、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の非肌面側(防水シート12側)まで延在するように配置してもよい。
【0039】
前記吸収体13の非肌面側(下層側)を覆う防水シート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの不透液性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。
【0040】
前記吸収体13を被包するコアラップシートは、吸収体13の両側を巻込んで裏面側から表面側まで延在させ表面側の幅方向中央部で端部同士を重ね合わせる(所謂、額巻きにする)1枚のシートで構成してもよいし、吸収体13の上層側(肌側)と下層側(非肌側)にそれぞれ別体のシートを備える2枚のシートで構成してもよい。いずれの場合も、吸収体13の上層側を覆うものが上層側コアラップシート16であり、吸収体13の下層側を覆うものが下層側コアラップシート17である。このコアラップシートについては後段で詳述する。
【0041】
一方、前記立体ギャザーBSを形成するギャザー不織布15は、前記吸収体13の肌面側の両側部に配置され、幅方向外縁が前記吸収体13の幅方向外縁より外方に延在している。
【0042】
前記ギャザー不織布15は、折返しによって二重シートとした不織布が用いられ、前記吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。前記二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端部に1本又は起立方向に適宜の間隔をあけた複数本の糸状弾性部材(図示せず)が配設されている。前記糸状弾性部材は、製品状態において図2に示されるように、弾性伸縮力によりギャザー不織布15の内方側部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0043】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も前記透液性トップシート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法によって得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらに前記ギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0044】
次いで、前記外装シート30は、図1及び図2に示されるように、上層不織布30A及び下層不織布30Bからなる2層構造の不織布シートとされ、前記上層不織布30Aと下層不織布30Bとの間に各種弾性伸縮部材34、35が配設され、伸縮性が付与されている。平面形状は、中間両側部に夫々レッグ開口部を形成するために凹状の切欠き部39が形成され、全体として擬似砂時計形状を成している。前記弾性伸縮部材としては、図1に示されるように、前記ウエスト開口部に配置されたウエスト部弾性伸縮部材34,34…と、前身頃F及び後身頃Bに、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配置された複数の腰周り弾性伸縮部材35,35…とを備えている。
【0045】
(吸収体構造について)
前記吸収体13は、図2に示されるように、上層側及び下層側がそれぞれ、上層側コアラップシート16及び下層側コアラップシート17で被覆されている。また、図3に示されるように、長手方向に沿って厚み方向に貫通する1本又は複数本の、図示例では、幅方向に間隔をあけて2本のスリット18、18が形成されている。
【0046】
また、図1及び図2に示されるように、前記スリット18、18を含む領域の吸収体13と下層側コアラップシート17との間に、熱融着性繊維を含む不織布シート19が配置されている。そして、前記上層側コアラップシート16の外面側から前記スリット18、18に対しそれぞれエンボス20を施すことにより、エンボス時の加熱に伴う前記不織布シート19に含まれる熱融着性繊維の熱融着作用又は接着作用により、前記スリット18において上層側コアラップシート16と下層側コアラップシート17とが前記不織布シート19を介して一体化(接着)されている。
【0047】
前記吸収体13は、繊維の集合体に高吸収性ポリマー(SAP)が混入された構造からなるものである。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等を積繊した構造からなるものとするのが好ましい。繊維の目付としては、100〜300g/m程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。
【0048】
前記高吸収性ポリマーは、繊維集合体に対して実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。前記吸収体13の上部、下部及び中間部に高吸収性ポリマーが無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部の高吸収性ポリマーが繊維集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部の高吸収性ポリマーが繊維集合体を通り抜けて吸収体13の下層側のシート上にある形態も排除されるものではない。
【0049】
前記高吸収性ポリマーは、粒子以外に粉体からなるものも含む。高吸収性ポリマーは、この種の吸収性物品に使用される粒径のものをそのまま使用でき、平均粒径が1000μm以下、好ましくは未吸収時の粒径が106μm以上のものが全体の99重量%以上、特に150〜850μmのものが全体の99重量%以上であるのが望ましい。未吸収時の平均粒径は250〜500μm程度であるのが好ましい。また、高吸収性ポリマーは吸収後の平均粒径が未吸収時の平均粒径の3倍以上、具体的には500μm以上であることが望ましい。なお、未吸収時の高吸収性ポリマーの平均粒径は、重量基準粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。この場合における重量基準粒度分布は、JISZ8815−1994に準拠して測定される。すなわち、内径150mm、深さ45mmの710μm、500μm、300μm、150μm及び106μmの目開きのふるいを、目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広い710μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される。
【0050】
前記高吸収性ポリマーの材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマーとしては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマーの形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0051】
高吸収性ポリマーとしては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体内に供給された液が吸収体外に戻り出てしまう、所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0052】
高吸収性ポリマーの目付量は、当該吸収体13の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/mとすることができる。ポリマーの目付量が50g/m未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/mを超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマーの過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0053】
前記上層側コアラップシート16及び下層側コアラップシート17としては、クレープ紙や親水性の不織布など透水性のものであればよいが、保形性に優れ、パルプやポリマーの脱落を防止するため、クレープ紙を用いるのが好ましい。前記クレープ紙としては、薄葉紙やティッシュペーパーなどを用いることが可能であり、特に限定されないが、目付は13〜20g/m、特に14〜18g/mのものが望ましい。
【0054】
前記上層側コアラップシート16及び下層側コアラップシート17に不織布を使用する場合は、親水性のものが好ましく、SMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)、SMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)などの複合不織布や、ポイントボンド不織布、ポリラミ不織布などを好適に使用することができる。
【0055】
前記吸収体13の上層側及び下層側をそれぞれ別体のコアラップシートで被覆する場合、前記上層側コアラップシート16と下層側コアラップシート17とで異なる素材からなるものを用いてもよい。例えば、上層側コアラップシート16として、肌当たりを柔らかくし、クッション性を高めるなどの点から不織布を用い、下層側コアラップシート17として、パルプやポリマーの脱落を防止するなどの点からクレープ紙を用いてもよい。また、上層側コアラップシート16と下層側コアラップシート17とで親水度が異なる素材や繊維密度が異なる不織布を用いることも可能である。更に、下層側コアラップシート17として不透水性の防水シート(前記防水シート12参照。)を用いることもできる。
【0056】
前記吸収体13の上層側及び下層側をそれぞれ別体のコアラップシートで被覆する場合、前記上層側コアラップシート16及び下層側コアラップシート17は、前記吸収体13の周縁において、吸収体13が介在せず該上層側コアラップシート16及び下層側コアラップシート17が直接重ね合わされた部分において、ホットメルト接着剤やヒートシールなどの接合手段で接合するのが好ましい(図4(A)参照)。この周縁の接合部は、内包する吸収体13のパルプやポリマーがこぼれ出ないように、上層側コアラップシート16及び下層側コアラップシート17の周方向に沿って連続するパターンで設けるのが好ましい。
【0057】
前記吸収体13に設けられるスリット18は、吸収体13の長手方向に沿って、すなわち使い捨て紙おむつ1の前後方向に沿って形成されている。長手方向に沿って形成されるとは、スリット18の端部同士を結ぶ直線が吸収体13の長手方向線に対して0〜±45°の範囲内にあるもので、図3に示されるように、長手方向に直線的に形成されるものの他、曲線や波状線などで形成されるものも含まれる。
【0058】
前記スリット18は、吸収体13の厚み方向に貫通して、すなわち吸収体13の肌側面から非肌側面まで吸収体13を構成するパルプやポリマーなどの部材が一切介在しない空間部を形成することによって構成されている
また、前記スリット18は、吸収体13の平面に対し長手方向中間部に形成されている。すなわち、スリット18の長手方向両端が吸収体13の長手方向端縁まで達しない中間部に形成されている。具体的には、図1に示されるように、着用者の股下部を含む領域、特に外装シート30の両側部のレッグ開孔部を形成するための凹状の切欠部39とおむつ幅方向に重なる領域に設けるのが好ましい。この領域は、使い捨て紙おむつ1の装着時に幅方向両側から脚の付け根部分によって大きな圧力がかかる領域であるので、前記スリット18によって吸収体13を変形させやすくし、おむつ表面が肌面に沿ってフィットできるようにするのが好ましい。
【0059】
前記吸収体13と下層側コアラップシート17との間に配置される不織布シート19としては、目付が10〜50g/m、好ましくは20〜40g/mのエアスルー不織布を用いるのがよい。エアスルー不織布は、一般的に繊維の配列がランダムなため、吸収体13からこぼれ出た高吸収性ポリマーが繊維の隙間に入り込んでその場に止まりやすくなるため、高吸収性ポリマーが不織布シート19上を移動するのが防止できる。不織布シート19の厚みは0.05〜5mm、好ましくは0.3〜1mmとするのがよい。
【0060】
前記不織布シート19に含まれる熱融着性繊維としては、加熱によって溶融し相互に接着性を発現する任意の繊維を用いることができる。この熱融着性繊維は、単一繊維からなるものでもよいし、2種以上の合成樹脂を組み合わせた複合繊維等であってもよい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニルアルコール等のポリオレフィン系単一繊維や、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート−エチレン・プロピレン共重合体、低融点ポリエステル−ポリエステルなどからなる鞘部分が相対的に低融点とされる芯鞘型複合繊維または偏心芯鞘型複合繊維、またはポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン、ポロプロピレン/ポリエチレンからなる各成分の一部が表面に露出している分割型複合繊維、あるいはポリエチレンテレフタレート/エチレン−プロピレン共重合体からなる一方の成分の熱収縮により分割する熱分割型複合繊維などを用いることができる。この場合、生産性および寸法安定性を重視する場合は芯鞘型複合繊維が好ましく、ボリューム感を重視するならば偏心型複合繊維が好ましい。また、柔軟性を重視するならば、分割型複合繊維や熱分割型複合繊維を用いると、高圧水流処理によって各成分が容易に分割して極細繊維化されるようになる。
【0061】
前記不織布シート19は、熱融着性のバインダー繊維を20〜90%含有するのが望ましい。かかる熱融着性のバインダー繊維が20重量%未満の場合には、繊維の熱融着により接合する割合が少なく所定の接合強度が確保できなくなる。また、90重量%を超えると全体が硬化してしまい風合いが損なわれるようになる。
【0062】
前記不織布シート19は、繊維長5〜100mm、特に30〜70mmの短繊維で主に構成するのが好ましい。短繊維で構成することにより、表面に繊維の隙間が形成されやすく、繊維の隙間に吸収体13からこぼれ出た高吸収性ポリマーが入り込みやすくなり、高吸収性ポリマーが不織布シート19上を移動するのが抑制できる。前記短繊維は全体重量(不織布シート19の全重量)に対して50〜100%、好ましくは60〜80%含んでいることが望ましい。
【0063】
前記不織布シート19は、1層でもよいし、多層の不織布シート19を積層することにより構成してもよい。多層の不織布シート19…を積層した場合には、吸収体13から脱落した高吸収性ポリマーが不織布シート19、19の層間に滞留するようになるため、高吸収性ポリマーの移動をより一層抑えることができる。
【0064】
前記不織布シート19は、図1に示されるように、吸収体13の平面視で前記スリット18を含む領域に配置されている。前記スリット18を含む領域とは、スリット18の全部又は一部と厚み方向に重なる領域のことであり、前記スリット18の全部を含み、スリット18より広い領域に配置するのが好ましい。
【0065】
図1及び図2に示されるように、前記スリット18を使い捨て紙おむつ1の幅方向に離間して複数条(2条)設けた場合、前記不織布シート19は、これら両方のスリット18、18を含む領域に連続的に配置するのが好ましい。つまり、前記不織布シート19は、幅方向に離間するスリット18、18間に跨って、これらスリット18、18同士の離間部分にも連続して配置するのがよい。これにより、スリット18、18間の吸収体13から脱落した高吸収性ポリマーが不織布シート19の繊維の隙間に入り込むため、スリット18部分に高吸収性ポリマーが移動するのが防止できる。
【0066】
前記エンボス20を施すには、図4に示されるように、吸収体13の非肌側に前記不織布シート19を配置するとともに、これら吸収体13と不織布シート19との積層体の上層側及び下層側を、前記上層側コアラップシート16及び下層側コアラップシート17で一体的に被覆した状態で(同図4(A))、前記上層側コアラップシート16の外面側(肌側)から前記スリット18に対し施されている(同図4(B))。そして、同図4(C)に示されるように、前記エンボス20を施す際の加熱に伴う前記不織布シート19に含まれる熱融着性繊維の熱融着作用又は接着作用により、上層側コアラップシート16と下層側コアラップシート17とが一体化(接着)するようになる。このため、上層側コアラップシート16や下層側コアラップシート17としてクレープ紙などの熱融着性を有しない素材を用いた場合でも、前記不織布シート19に含まれる熱融着性繊維の熱融着作用又は接着作用により、不織布シート19の両面にそれぞれ上層側コアラップシート16及び下層側コアラップシート17が融着(接着)して、上層側コアラップシート16と下層側コアラップシート17との一体化が図れるようになる。
【0067】
本使い捨て紙おむつ1では、前記スリット18にエンボス20を施すことにより上層側コアラップシート16と下層側コアラップシート17とを一体化し、スリット18の空間部分にコアラップシートを介在させているため、装着中の動きや吸収体13が排泄物を吸収することなどによって、このスリット18の空間部分に吸収体13を構成するパルプやポリマーが移動するのが防止でき、スリット18の形状が維持できるようになるとともに、スリット18の空間部分にパルプやポリマーが移動することにより吸収体13にヨレや割れが発生するのが防止できるようになる。また、スリット18の形状が維持できるため、このスリット18を設けたことによる吸収体13の変形性が確保でき、吸収体13が身体に沿って変形することによる股下部のフィット性が維持されるとともに、おむつ表面が肌面にフィットすることにより確実に漏れ防止が図れるようになる。
【0068】
また、前記不織布シート19に含まれる熱融着性繊維の熱融着作用により、上層側コアラップシート16と下層側コアラップシート17とを一体化しているため、コアラップシート16、17としてクレープ紙を用いた場合でもこれらの接合が可能となる。更に、前記コアラップシート16、17として薄手の不織布を用いた場合でも、不織布シート19によって補強されるため、熱融着の際に穴が開いたり破れたりするのが防止できるとともに、コアラップシート16、17のコシが強くなり、パルプやポリマーの移動を確実に抑えることができるようになる。
【0069】
前記スリット18の平面形状は、吸収体13の長手方向に沿う細長状に形成するのが好ましい。具体的には、図3に示されるように、吸収体13の長手方向に沿う直線状(帯状)や、図5(A)に示されるように、幅方向中央側又は外方側に膨出する曲線状に形成することができる。また、図5(B)に示されるように、幅方向中央部に直線状のスリット18を配置するとともに、その両側に幅方向中央側に膨出する曲線状のスリット18、18を配置するというように、直線状のものと曲線状のものとを組み合わせてもよい。
【0070】
前記スリット18は、吸収体13に対し1本以上配置され、吸収体13の幅方向に対して左右対称に配置するのが好ましい。図3に示される例では、吸収体13の長手方向中心線の両側にそれぞれ1本ずつ、合計2本のスリット18、18が互いに幅方向に離間して設けられている。また、図5(B)に示される例では、吸収体13の幅方向中央部に長手方向に沿って1本のスリット18が形成されるとともに、その両側に幅方向に離間してそれぞれ1本ずつのスリット18、18が形成され、合計3本のスリット18、18…が設けられている。
【0071】
前記スリット18の長手寸法は、吸収体13の長手寸法に対して、20〜80%とするのが好ましい。また、前記スリット18の幅寸法は、パルプやポリマーが入り込んだときに上層側コアラップシート16と下層側コアラップシート17との接合強度が極端に低下しないように、できる限り広くするのが好ましい。しかし、あまり広くしすぎると吸収性能が低下するため、1本当たりのスリット幅を5〜30mm、好ましくは10〜15mmとするのがよい。
【0072】
本使い捨て紙おむつ1のように、吸収体13の上層側に透液性トップシート11を配置する場合、前記エンボス20は、図6(A)に示されるように、透液性トップシート11の外面側(上層側、肌面側)から施してもよい。これにより、同図6(B)に示されるように、エンボス時の加熱により、透液性トップシート11、上層側コアラップシート16、不織布シート19及び下層側コアラップシート17が一体化(接着)されるようになる。この方法によるエンボス20の付与は、不織布シート19の熱融着性繊維の熱融着作用又は接着作用だけでは上層側コアラップシート16と下層側コアラップシート17との接合強度が不足する場合などに特に有効である。つまり、透液性トップシート11の外面側からエンボス20を施すことにより、エンボス時に透液性トップシート11が加熱され、透液性トップシート11に含まれる熱融着性繊維が溶融し上層側コアラップシート16を下層側に浸透して、上層側コアラップシート16と下層側コアラップシート17との接合強度が補強できるようになる。
【0073】
また、図示しないが、透液性トップシート11と吸収体13との間に熱融着性繊維を含む中間シートを配置した上で、前記エンボス20を、透液性トップシート11の外面側から施すことにより、透液性トップシート11、中間シート、上層側コアラップシート16、不織布シート19及び下層側コアラップシート17を一体化するようにしてもよい。また、前記吸収体13の肌側に前記中間シートを配置し、前記透液性トップシート11を配置する前に、前記エンボス20を、前記中間シートの外面側から施すことにより、中間シート、上層側コアラップシート16、不織布シート19及び下層側コアラップシート17を一体化するようにしてもよい。
【0074】
前記エンボス20は、エンボス底面を全面に亘って圧搾する連続圧搾状のパターンでもよいが、図7に示されるように、多数のピン状エンボス又はドット状エンボス(以下、代表的に「ピン状エンボス」ともいう。)21、21…とするのが好ましい。前記連続圧搾状のエンボスパターンでは、おむつ装着時にエンボスの一部が剥がれると、これを基点として連続的に伝播するように剥がれやすくなるという欠点があるが、多数のピン状エンボスとした場合には、一部のエンボスが剥がれても、これと隣接するエンボスは離間しているため、エンボスにかかる負荷が分散して、連続的にエンボスが剥がれるのが防止できるようになる。前記ピン状エンボス21は、エンボス強度を確保するため、エンボスに沿って2列以上で形成するのがよい。これにより、ある一つの列のエンボスが剥がれても別の列のエンボスによってエンボスが維持できるようになる。
【0075】
前記ピン状エンボスとドット状エンボスとを区別する境界は必ずしも明確である必要はないが、前記ピン状エンボスとは、比較的小さな面積で形成されたエンボスであり、エンボス形状が長手方向に長く形成されたものでないもの、すなわち長手方向の寸法とこれに直交する短手方向の寸法との比が比較的小さいものを指し、ドット状エンボスとは、ピン状エンボスより大きな面積で形成されたものであり、小さな面積であってもエンボス形状が長手方向に長く形成されたもの、すなわち長手方向の寸法とこれに直交する短手方向の寸法との比が比較的大きなものを含む概念である。
【0076】
前記ピン状エンボス21の平面寸法(円形とした場合の直径、長手方向に長く形成した場合の長手寸法)は、0.5〜2mmとするのが好ましく、長手寸法と短手寸法との比は1:1〜5:1とするのが好ましい。また、図7に示されるように、隣り合うピン状エンボス21、21同士のスリット18に沿う方向の離間距離Lは、0.5〜5mmとするのが好ましい。スリット18の側縁からこれに隣接するピン状エンボス21までの離間距離Bは、0.5〜5mmとするのがよい。スリット18の側縁から0.5mmより近い位置にピン状エンボス21を設けると、誤って吸収体13を圧搾するおそれがあるとともに、吸収体13が吸水して膨潤したときに、引っ張られてエンボスに大きな負荷がかかったり、吸水が阻害されたりするおそれがある。一方、スリット端部の隣り合うピン状エンボス21、21同士の離間距離Lは、スリット18内にパルプやポリマーが入り込まないように若干小さくするのが好ましく、具体的には、L=0.2〜3mmとするのがよい。
【0077】
前記ピン状エンボス21は、スリット18に対し密に配置した方がエンボス内の体液が前記ピン状エンボス21を通じてコアラップシートに浸透し液残りしにくくなるという点から好ましいが、図9(A)に示されるように、ピン状エンボス21、21…が近接して連続的に配列されていると、このピン状エンボス21、21…に沿った急激な液流れが発生して、端部からスリット18の外に流れ出るおそれがある。そこで、ピン状エンボス21に沿った急激な液流れを防止するため、スリット18に沿って3つ以上のピン状エンボス21を等間隔に隣接せず、相対的に大きな離間距離を有する離間部をスリット18に沿って隣り合う3つのピン状エンボス21に1箇所の割合以上で配置したパターンとするのが好ましい。相対的に大きな離間距離を有する離間部の離間距離は、相対的に小さな離間距離を有する離間部の離間距離に対し、1.5倍〜3倍程度が好ましい。ただし、図9(B)に示されるように、ピン状エンボス21がスリット18に沿って近接して連続的に配列される場合でも、幅方向に対しピン状エンボス21が設けられない空間が存在する場合には、コアラップシートに浸透した体液がこの空間部分に拡散して液流れが生じにくくなる。この場合の空間の幅は、スリット18の長手方向に対するピン状エンボス21、21の離間距離に対し3倍〜5倍程度とするのが好ましい。空間部の幅を大きくし過ぎると、空間部分に体液が溜まりやすく、体液が吸収体に速やかに吸収されにくくなる。
【0078】
次いで前記ピン状エンボス21のエンボスパターンの変形例について説明すると、図10に示されるように、前記ピン状エンボス21の付与領域は、スリット18の中央部に向けて漸次幅狭となる、全体として略砂時計形状を成すように配置することができる。前記スリット18で上層側コアラップシート16と下層側コアラップシート17とを一体化することにより、コアラップシート16、17に引っ張られて、このスリット18周辺の吸収体13がある一定の高さ以上に膨出できなくなるため、吸収体13の体液吸収量が低下するおそれがあるとともに、吸収体13に吸収された体液が逆戻りしやすくなるおそれがある。かかる課題解決のため、スリット18の全体に亘ってエンボス面積を小さくすると(ピン状エンボス21の付与領域幅を小さくすると)、スリット18の形状維持や、コアラップシート16、17同士の接合強度に悪影響を及ぼすこととなる。そこで、前述の略砂時計形状のエンボスパターンとすることにより、スリット18の両端部でスリット形状を維持しつつ、スリット18の中央部において周辺の吸収体13の湿潤時の膨張を確保できるようにしている。
【0079】
かかる略砂時計形状のエンボスパターンでは、幅方向両側のピン状エンボス21をスリット18に沿って結んだときに形成される外形線が、スリット18の幅方向中央に向けて膨出する曲線状となるようにするのが好ましい。これにより、エンボス付与領域の幅が緩やかに変化するようになる。仮に、急激にエンボス付与領域の幅を小さくした部分を設けると、スリット18内に吸収体13のパルプやポリマーが入り込むおそれがあるとともに、湿潤時のポリマーが膨張した際に、その部分に負荷が集中してコアラップシート16、17同士の接合が外れるおそれがある。
【0080】
図11に示されるように、体液排出部の両側にそれぞれ長手方向に沿うスリット18、18を設けるとともに、各スリット18に略砂時計形状のエンボスパターンでピン状エンボス21を施した場合の尿の拡散範囲は、両側のエンボスで囲い込まれた中央部の一定の範囲に留めることができるようになる。このため、排尿量が比較的少量である場合には、本例のエンボスパターンが効果的である。
【0081】
また、前記エンボスパターンの他の変形例として、図12に示されるように、前記ピン状エンボス21の付与領域を、スリット18の中央部に向けて漸次幅広に形成することも可能である。これにより、スリット形状を維持しつつ、湿潤時の吸収体13の膨張が抑制されにくくなる。この場合の尿の拡散範囲は、図13に示されるように、体液排出部の両側にそれぞれ長手方向に沿うスリット18、18を設けたとき、体液が中央部から前側及び後側に拡散しやすくなり、吸収体13のより広い範囲で体液を吸収できるようになる。
【0082】
なお、スリット18の中央部に向けて漸次幅狭又は漸次幅広に形成したエンボスパターンは、ピン状エンボス21だけでなく、通常の全面を圧搾する連続圧搾状のエンボスについても同様に形成できる。
【符号の説明】
【0083】
1…使い捨て紙おむつ、10…吸収性本体、11…透液性トップシート、12…防水シート、13…吸収体、14…コアラップシート、15…ギャザー不織布、16…上層側コアラップシート、17…下層側コアラップシート、18…スリット、19…不織布シート、20…エンボス、21…ピン状エンボス、30…外装シート、30A…上層不織布、30B…下層不織布
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13