(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記摺動方向と前記摺動方向軸に直交する方向とのそれぞれに直交する方向を幅方向とするとき、前記幅方向の軸を中心として、前記スライダを回転させる力が前記スライダに加わった場合において、
前記スライダ側接触部が、前記収容部材側接触部に接触することで、前記スライダの前記幅方向の軸を中心とした回転を抑制する当て止めとなる請求項2記載のケーブル連結機構。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明のケーブル連結機構を詳細に説明する。以下に示す実施形態のケーブル連結機構はあくまで例示であり、本発明のケーブル連結機構は、図面および下記の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1および
図2に示されるように、本実施形態のケーブル連結機構1は、スライダ2と、スライダ2を収容し、スライダ2が摺動方向D1へ摺動可能な空間Sを有するスライダ収容部材3とを備える。ケーブル連結機構1は、少なくとも2つのケーブルC1、C2を連結し、一方のケーブルC1に加わった操作力を他方のケーブルC2に(または他方のケーブルC2から一方のケーブルC1に)伝達する。一方のケーブルC1の一端は、ケーブル連結機構1側(後述するスライダ2側)に接続され、他端は、ケーブルC1に操作力を加えるための操作部(図示せず)に直接または間接的に接続されている。他方のケーブルC2の一端は、ケーブル連結機構1側(スライダ2側)に接続され、他端は、被操作部(図示せず)に直接または間接的に接続される。被操作部は、操作部に加えられた操作力が、ケーブルC1およびケーブル連結機構1を介してケーブルC2に伝達されることで操作される。操作部は、ケーブルを操作することができればよく、レバーやハンドル等の手動の操作部の他、電動でケーブルを引き操作する操作部であってもよい。また、被操作部は、操作部の操作により遠隔操作されるものであれば、特に限定されないが、たとえば、車両のボンネットやトランク、フューエルリッド等の開閉体のロック機構や、シートの傾倒状態をロックするシートロック機構とすることができる。
【0016】
ケーブルC1、C2は、操作部により加わった操作力を被操作部に伝達することができればよく、ケーブルC1、C2として、たとえば公知のコントロールケーブルを用いることができる。
図1では、コントロールケーブルのインナーケーブルのみ(ケーブルC1、C2)を図示しているが、インナーケーブルが挿通される図示しないアウターケーシングが設けられても構わない。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態のケーブル連結機構1は、スライダ2と、スライダ2を収容するスライダ収容部材3とを備えている。スライダ2には、ケーブルC1、C2の一端がそれぞれ接続され、スライダ収容部材3内に収容される。スライダ2は、スライダ収容部材3に対して摺動する摺動面を備えた底部21を有し、ケーブルC1、C2のいずれかの引き操作によりスライダ収容部材3内を摺動する。
【0018】
また、スライダ2は、ケーブルC1、C2を接続するために、
図1および
図2に示されるように、スライダ2の摺動方向D1の両端部にケーブルC1、C2が接続されるケーブル接続部22a、22bを有している。ケーブル接続部22a、22bは、ケーブルC1、C2の端部が接続される部位である。ケーブル接続部22a、22bでのケーブルC1、C2の端部の接続方法は、係合接続、溶接等、特に限定されないが、たとえば、ケーブルC1、C2の端部に設けられたケーブルエンドCE1、CE2をケーブル接続部22a、22bに係合させることにより、ケーブルC1、C2をスライダ2に接続することができる。
本実施形態では、スライダ2は、底部21の摺動方向D1の両端から立設した壁部23a、23bを有し、この壁部23a、23bにケーブル接続部22a、22bが形成されている。本実施形態では、ケーブル接続部22a、22bは、壁部23a、23bを摺動方向D1に貫通するとともに、スライダ2の摺動方向軸X(
図2参照)に直交する方向D2(底部21から離間する方向。
図1参照)に延びるスリット状に形成されている。スリット状に形成されたケーブル接続部22a、22bは、壁部23a、23bの端縁(底部21の反対側の端縁)まで延びて、ケーブルC1、C2の取り付けを容易にしている。本実施形態では、ケーブルC1、C2がケーブル接続部22a、22bに係合して、ケーブルC1、C2が引き操作されると、筒状(略円筒状)のケーブルエンドCE1、CE2の一方の端面と、壁部23a、23bの内面とが面接触するように構成されている。
【0019】
なお、本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、スライダ2は、一対の壁部23a、23bの他、一対の壁部23a、23bを摺動方向D1で結ぶ一対の側壁24a、24bが形成され、摺動方向軸Xに直交する方向D2において開口部を有する箱状に形成されている。しかし、スライダ2の形状は、本実施形態に限定されるものではなく、ケーブルC1、C2を接続可能で、スライダ収容部材3内を摺動可能であり、後述する脱落防止機構Rを設けることが可能であれば、他の角筒状、円筒状、半円筒状等、他の形状であっても構わない。
【0020】
スライダ収容部材3は、スライダ2を摺動可能に収容する。スライダ収容部材3は、例えばブラケット、パネル若しくは車体等の取付対象に取り付けられ、スライダ2とともに所定の位置でケーブルC1、C2を中継接続する。スライダ収容部材3は、スライダ2を収容するために、
図1に示されるように、スライダ2が摺動可能な空間Sを有している。一方のケーブルC1が操作されたときに、この空間S内をスライダ2が摺動方向D1に摺動して、他方のケーブルC2が操作されて、操作力を伝達する。
【0021】
本実施形態では、スライダ収容部材3は、
図1〜
図3に示されるように、摺動方向軸X上に沿って設けられる一対の側壁31a、31bと、一対の側壁31a、31bをつなぐ平板状の底部32とを備えている。また、スライダ収容部材3は、スライダ2の摺動方向D1の両端に、底部32から立設された端壁33a、33bを備え、一対の側壁31a、31bをつないでいる。本実施形態では、一対の側壁31a、31b、一対の端壁33a、33b、底部32により空間Sが画定されている。なお、空間Sは、スライダ2が摺動可能な空間であればよく、一対の側壁31a、31b、一対の端壁33a、33b、底部32以外の構造により形成されていてもよい。
【0022】
本実施形態では、スライダ収容部材3の底部32は、スライダ2がスライダ収容部材3に収容されたときに、スライダ2の底部21と対向し、スライダ2の底部21が摺動する摺動面を構成する。スライダ2の底部21の構造は、スライダ収容部材3の底部32上を摺動することができれば、特に限定されないが、スライダ2の底部21の一部が、スライダ収容部材3の底部32と接触して摺動するように構成することができる。スライダ2の底部21の一部がスライダ収容部材3の底部32に接触して摺動することにより、スライダ2の底部21の全部がスライダ収容部材3の底部32に接触して摺動する場合よりも、スライダ2とスライダ収容部材3との間の摺動抵抗が減少し、スライダ2の摺動性を向上させることができる。
スライダ2の底部21の一部が、スライダ収容部材3の底部32と接触して摺動する構成としては、たとえば、
図2および
図3に示されるように、スライダ収容部材3の底部32に、摺動方向D1に沿って延びる一対の突条32a、32bを形成し、底部32の突条32a、32bと、スライダ2の底部21とを接触させる構成が挙げられる。これにより、スライダ2の底部21と、スライダ収容部材3の底部32との接触面積を減らすことができる。また、突条32a、32bに代えて、スライダ収容部材3の底部32に複数の突起を形成しても構わない。また、スライダ収容部材3の底部32に、1または2以上の摺動方向D1に沿って延びる溝を形成しても構わない。また、突条32a、32bをスライダ収容部材3の底部32に設けずに、スライダ2の底部21側に突条または突起を設けて、スライダ2の底部21とスライダ収容部材3の底部32との間の接触面積を減らしても構わない。
【0023】
また、
図1および
図2に示されるように、スライダ収容部材3の底部32には、スライダ収容部材3内の空間Sを、スライダ収容部材3の外側の空間に連通させる連通孔34を形成しても構わない。この連通孔34を形成することにより、たとえば、スライダ収容部材3内に水などの液体が入り込んだ場合に、底部32に形成された連通孔34から液体を排出することができる。本実施形態では、底部32のうち、摺動方向D1の一方の端部の角に2つの連通孔34が形成されているが、連通孔34は、底部32の摺動方向D1の両側に設けられていてもよいし、他の位置に設けられていてもよく、底部32における連通孔34の位置や数は特に限定されるものではない。なお、上述したように、スライダ収容部材3の底部32に摺動方向D1に沿って延びる一対の突条32a、32bや溝が形成され、突条32a、32bや溝の端部に連通孔34が形成されている場合、スライダ収容部材3内に入り込んだ水等の液体を、突条32a、32bや溝に沿って連通孔34へ導くことが可能である。そのため、スライダ収容部材3の内部に水等の液体が留まりにくく、水等の液体のスライダ収容部材3内部での残留を抑制することができる。
【0024】
底部32の、スライダ2の底部21と対向する面とは反対側の面には、スライダ収容部材3を、車体等の取付対象に取り付けるための、嵌合部35を有している。嵌合部35は、取付対象に設けられた孔などの被嵌合部に挿入されることにより、ケーブル連結機構1を車体等の取付対象に取り付けることができる。
【0025】
スライダ収容部材3の側壁31a、31bは、摺動方向D1に沿って設けられている。本実施形態では、
図1〜
図3に示されるように、側壁31a、31bは、平板状の底部32の摺動方向D1に延びる側縁から略垂直に延びる平板状の側壁として示されている。側壁31a、31bは、互いに略平行に配置され、一対の側壁31a、31bの間で、スライダ2を摺動方向D1に沿って案内する。本実施形態では、
図2および
図3に示されるように、スライダ収容部材3の一対の側壁31a、31bは、スライダ2の一対の側壁24a、24bにそれぞれ対向して、スライダ2が摺動方向軸X周りで回転すること(スライダ2の少なくとも一部が主開口部36に近接する方向へ移動すること)を抑制している。なお、側壁31a、31bは、本実施形態では平板状に形成されているが、側壁31a、31bの形状は特に限定されず、スライダ収容部材3に収容されるスライダ2の形状に応じて適宜変更が可能であり、曲面状等、他の形状の側壁31a、31bとしてもよい。
【0026】
スライダ収容部材3は、
図1および
図2に示されるように、スライダ2の摺動方向軸Xに直交する方向D2に開口する主開口部36と、スライダ2の摺動方向軸Xの軸上に開口するケーブル挿通開口部37a、37bとを有している。主開口部36は、スライダ2を空間S内に挿入可能なように開口し、スライダ2を摺動方向軸Xに直交する方向D2からスライダ収容部材3に収容することができる。摺動方向軸Xに直交する方向D2に開口する主開口部36側からのスライダ2のスライダ収容部材3への組み付けは、摺動方向D1側に開口した開口部(たとえば、
図5に示す開口106)からスライダ2を挿入して組み付ける場合と比較して容易であり、組み付け時の作業性が向上する。また、主開口部36が後述する蓋体38により塞がれていない場合、スライダ2へのケーブルC1、C2の接続も容易となる。
【0027】
主開口部36は、本実施形態では、一対の側壁31a、31bおよび一対の端壁33a、33bのうち底部32と反対側の端縁により画定されている。本実施形態では、主開口部36の開口方向は、摺動方向D1と摺動方向軸Xに直交する方向のうちの底部32と対向する方向であり、摺動方向軸Xを水平方向に合わせたときの略垂直方向である。スライダ収容部材3にスライダ2を収容可能とするために、本実施形態では、摺動方向D1での主開口部36の長さは、摺動方向D1でのスライダ2の長さより長く、摺動方向D1と摺動方向軸Xに直交する方向D2(ここでは主開口部36の開口方向)とのそれぞれに直交する方向を幅方向D3(
図1〜
図3参照)とするとき、主開口部36の幅方向D3の長さは、スライダ2の幅方向D3の長さより長くなるように形成されている。本実施形態では、スライダ収容部材3の主開口部36は、空間Sの摺動方向D1に沿った全面で開口している。しかし、主開口部36は、スライダ2を収容する大きさに形成されていればよく、空間Sの一部が覆われるように、空間Sの摺動方向D1に沿って部分的に開口していても構わない。
【0028】
ケーブル挿通開口部37a、37bは、ケーブルC1、C2を挿通可能なように開口している。ケーブル挿通開口部37a、37bは、ケーブルC1、C2が挿通可能であればよく、図示しないアウターケーシング、たとえばアウターケーシングの端部に設けられたケーシングキャップ等が固定されてもよい。ケーブル挿通開口部37a、37bは、本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、スライダ収容部材3の端壁33a、33bに形成されている。本実施形態では、ケーブル挿通開口部37a、37bは、端壁33a、33bを摺動方向D1に貫通するとともに、スライダ2の摺動方向軸Xに直交する方向D2に延びるスリット状に形成されている。スリット状に形成されたケーブル挿通開口部37a、37bは、端壁33a、33bの端縁まで延びて、主開口部36に連通している。この場合には、主開口部36側からケーブルC1、C2をスライダ2に接続する際に、スライダ2の組み付け方向と、ケーブルC1、C2のケーブル挿通開口部37a、37bへの組み付け方向が同方向(
図1中のスライダ2からスライダ収容部材3に向かう矢印方向)となるため、より組み付けが容易となり、作業性が向上する。特に、本実施形態のように、スライダ収容部材3の主開口部36、スライダ2のケーブル接続部22a、22b、スライダ収容部材3のケーブル挿通開口部37a、37bが全て同方向(主開口部36の開口方向D2)に開口している場合、スライダ2の組み付け方向と、ケーブルC1、C2のケーブル接続部22a、22bおよびケーブル挿通開口部37a、37bへの組み付け方向が同方向となり、組み付けがさらに容易であり、作業性が向上する。
【0029】
また、スライダ収容部材3には、
図1〜
図3に示されるように、蓋体38を設けてもよい。蓋体38は、スライダ収容部材3の主開口部36の少なくとも一部を塞ぐことが可能なように構成されている。蓋体38を設けることにより、スライダ収容部材3にスライダ2やケーブルC1、C2が組み付けられた後、主開口部36を閉鎖することができ、上述した作業性の向上に加えて、蓋体38を閉鎖するだけで、スライダ収容部材3内部への異物、たとえば水等の液体や、塵、埃の浸入を抑制することができる。また、蓋体38により主開口部36を閉鎖することにより、ケーブルC1、C2のケーブルエンドCE1、CE2の、ケーブル接続部22a、22bからの抜けを抑制することができる。特に、本実施形態のように、蓋体36は主開口部36の全部を塞ぐように設けると、上記の異物の侵入やケーブルエンドCE1、CE2のケーブル接続部22a、22bからの抜けをより抑制できるので好ましい。
【0030】
蓋体38は、本実施形態では、一方の側壁31bの上端(側壁31bのうち、底部32とは反対側の主開口部36側の端部)側にヒンジ部38aを介して接続されている。蓋体38は、摺動方向軸Xに略平行な回転軸を中心として回転する。この場合、スライダ2やケーブルC1、C2の組み付け時に、蓋体38が開放していても、ケーブルC1、C2の組み付け方向に蓋体38が位置していないため、スライダ2やケーブルC1、C2の組み付けの邪魔にならず、円滑に組み付け作業を行うことができる。本実施形態では、蓋体38には、蓋体38が閉鎖したときに、閉鎖状態を維持するために、係止爪38bが設けられている。係止爪38bは、ヒンジ部38aが設けられた側壁31bに対向する他方の側壁31aに設けられた被係止部38cに係止され、スライダ収容部材3の閉鎖状態を維持する。また、本実施形態では、スライダ収容部材3は、
図1〜
図3に示されるように、一方の側壁31bの上端から側壁31bの幅方向D3の外側に向かって傾斜して突出し(
図3参照)、側壁31bの上端に沿って摺動方向D1に延びる係合突部38dを有している。一方、蓋体38には、蓋体38を閉鎖方向に回転させたときに、係合突部38dと係合可能な係合孔38eが形成されている。この係合突部38dと係合孔38eとが係合することにより、蓋体38のヒンジ部38aが破損して、蓋体38と側壁31bとがヒンジ部38aの部位で分離してしまった場合であっても、蓋体38の閉鎖状態を維持することができる。
【0031】
また、
図1〜
図3に示されるように、ケーブル連結機構1には、摺動方向軸Xに直交する方向D2へスライダ2が移動することを規制する移動規制機構Rが設けられている。移動規制機構Rは、スライダ2の摺動方向軸Xに直交する方向D2への移動、すなわち、スライダ収容部材3に収容されたスライダ2の主開口部36側への移動を規制する。移動規制機構Rは、
図1〜
図3に示されるように、スライダ2の摺動方向D1に沿って、スライダ2と接触可能に設けられた収容部材側接触部R1と、スライダ2に対して摺動方向軸Xに直交する方向D2の力が加わった際に、収容部材側接触部R1と接触可能なスライダ側接触部R2とを備えている。移動規制機構Rは、収容部材側接触部R1と、スライダ側接触部R2とが接触することにより、様々な状況下において、スライダ2が摺動方向軸Xに直交する方向D2へ移動することを規制することができる。
以下、この移動の規制についてより詳細に説明する。たとえば、ケーブル連結機構1がでは、上述したように、摺動方向軸Xに直交する方向D2に開口した主開口部36からスライダ2を組み付けることができるので、組み付けが容易となる。ここで、ケーブル連結機構1が移動規制機構Rを有しない場合には、ケーブルからの張力や振動等により、スライダ2が主開口部36に向かって移動したり、場合によっては、その移動の結果としてスライダ2が脱落したりする可能性があるので、スライダやケーブルの組み付けが難しくなる。そこで、本実施形態では、移動規制機構Rを設けることにより、スライダ2の組み付けを容易としながら、さらに、スライダ2の主開口部36側への移動や脱落を規制して、ケーブル連結機構1の組み付けの作業性を向上させることができる。また、スライダ収容部材3にスライダ2が収容された状態で、たとえば、ケーブル連結機構1が搬送されるときや、車体などの取付対象の近傍までケーブル連結機構1を移動させるときなどに、スライダ収容部材3が傾いて、主開口部36が下方を向いてしまった場合などに、不意にスライダ2がスライダ収容部材3から脱落することを抑制することができる。
【0032】
収容部材側接触部R1は、スライダ収容部材3に設けられ、スライダ2と接触可能な位置に、特にスライダ2のスライダ側接触部R2と摺動方向軸Xに直交する方向D2で接触可能な位置に設けられる。なお、「スライダ2に対して摺動方向軸Xに直交する方向D2の力が加わった際」とは、ケーブルC1、C2や作業者などにより、スライダ2に直接的に外力が加わった場合の他、重力などにより、摺動方向軸Xに直交する方向D2の力が働く場合も含む。また、直交する方向の力とは、厳密に直交する方向のみの力をいうのではなく、加わった力が直交する方向の成分を有するものであってもよい。また、本明細書において、「摺動方向軸Xに直交する方向D2へスライダ2が移動することを規制する」とは、スライダ2が摺動方向軸Xに直交する方向D2へ所定の範囲を超えて移動する(たとえば、スライダ2が主開口部36から離脱したり、スライダ2の一部が主開口部36からはみ出したりするまで移動する)ことを規制することをいい、スライダ2が摺動方向軸Xに直交する方向D2へ全く移動しないことのみを意図したものではない。したがって、スライダ2がスライダ収容部材3に収容された状態で、収容部材側接触部R1と、スライダ側接触部R2とは、摺動方向軸Xに直交する方向D2で離間していても構わない。
【0033】
収容部材側接触部R1およびスライダ側接触部R2は、互いに接触が可能であり、スライダ2が摺動方向軸Xに直交する方向D2へ移動することを規制することができれば、特にその構造は限定されない。たとえば、本実施形態では、
図1〜
図3に示されるように、収容部材側接触部R1が、側壁31bから空間S側に突出する側壁側突起(以下、収容部材側接触部および側壁側突起をともに参照符号R1を用いて説明する)であり、スライダ側接触部R2が、収容部材側接触部R1が設けられた側壁31b側に突出するスライダ側突起(以下、スライダ側接触部およびスライダ側突起をともに参照符号R2を用いて説明する)とすることができる。側壁側突起R1およびスライダ側突起R2により、スライダ2の移動を規制する場合、スライダ2およびスライダ収容部材3の構造がシンプルとなり、スライダ2をスライダ収容部材3に組み付ける際にも、容易に組み付けることができる。しかし、収容部材側接触部およびスライダ側接触部は、側壁側突起R1とスライダ側突起R2との組み合わせに限定されるものではなく、収容部材側接触部およびスライダ側接触部の一方を突起(側壁側突起またはスライダ側突起)とし、他方を突起が係合する凹部(スライダ側凹部または側壁側凹部)としても構わない。
【0034】
スライダ収容部材3側の側壁側突起R1は、
図1〜
図3に示されるように、一方の側壁31a(または他方の側壁31b)に設けられてもよいし、両方の側壁31a、31bに設けられてもよい。本実施形態に示されるように、一方の側壁31aのみに側壁側突起R1が設けられている場合には、スライダ2の収容時に一対の側壁31a、31bの間の間隔が狭くなりすぎず、スライダ2を組み付けやすい。また、本実施形態では、側壁側突起R1は、摺動方向D1に垂直な断面が略半円状であり、摺動方向D1に延びて設けられている。側壁側突起R1が摺動方向D1に垂直な断面が略半円状であることで、スライダ2を挿入しやすい。しかし、側壁側突起R1の形状は特に限定されるものではなく、略三角形状等、多角形状であってもよい。
側壁側突起R1は、本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、側壁31aの摺動方向D1の中央部から、側壁31aの摺動方向D1の両側に向かって延び、側壁31aの摺動方向D1の両端部には側壁側突起R1が形成されていない突起非形成部位を有している。これにより、スライダ2をスライダ収容部材3に収容するときの側壁側突起R1とスライダ側突起R2との間の接触抵抗を減らすことができ、側壁31aの摺動方向D1の両端側の突起非形成部位からのスライダ2の組み付けが容易になる。本実施形態では、たとえば、突起非形成部位の摺動方向D1方向での長さは、スライダ2の壁部23a(または23b)がスライダ収容部材3の端壁33a(または33b)に接触した際に、側壁側突起R1とスライダ側突起R2とが接触する長さとしている。これにより、スライダ2がスライダ収容部材3の空間Sのいずれの箇所にあっても、側壁側突起R1とスライダ側突起R2とが接触できるので、スライダ2の脱落を防止できるので好ましい。
側壁側突起R1の摺動方向D1での長さや数等は特に限定されるものではない。たとえば、突起非形成部位を設けず、スライダ側突起R2と摺動方向D1の全体にわたって一つの側壁側突起R1が形成された形態や、不連続な複数の側壁側突起が形成された形態とすることが挙げられる。
【0035】
スライダ側突起R2は、
図1に示されるように、スライダ2の一方の側壁24aに摺動方向D1に延びて設けられている。側壁側突起R1が両方の側壁31a、31bに設けられる場合には、スライダ側突起R2を両方の側壁24a、24bに設けることができる。スライダ側突起R2は、本実施形態では、摺動方向D1に垂直な断面が略三角形状で、スライダ側突起R2のスライダ2の底部21側にテーパー面を有し、スライダ2のスライダ収容部材3への組み付け時に、スライダ側突起R2が側壁側突起R1を乗り越えるのを容易にしている。なお、スライダ側突起R2の断面形状は、特に限定されるものではなく、略半円状や、多角形状であってもよい。
【0036】
また、スライダ2のスライダ収容部材3への組み付け時に、スライダ側突起R2が側壁側突起R1を乗り越えるのを容易にするために、スライダ収容部材3の幅方向D3の大きさが、スライダ2の幅方向D3の大きさ以上に弾性変形することで空間Sにスライダ2が挿入可能とされることが好ましい。ここでいう、「スライダ収容部材3の幅方向D3の大きさ」は、収容部材側接触部(側壁側突起または側壁側凹部)R1を含めた、スライダ収容部材3の内部の幅方向D3での、スライダ収容部材3の最小寸法をいう。また、「スライダ2の幅方向D3の大きさ」は、スライダ側接触部(スライダ側突起またはスライダ側凹部)R2を含めたスライダ2の外側の幅方向D3での、スライダ2の最大寸法をいう。たとえば、本実施形態の場合には、スライダ収容部材3の一対の側壁31a、31bの幅方向D3の間隔から、側壁側突起R1の幅方向D3での突出長さを引いた大きさが、スライダ2の一方の側壁24aの外面から他方の側壁24bの外面までの幅方向D3の大きさに、スライダ側突起R2の突出長さを加えた大きさ以上に弾性変形するようにする。この場合、たとえば、スライダ収容部材3(側壁31a、31b)は、可撓性を有する樹脂や金属等の可撓性材料から構成することにより、スライダ収容部材3の側壁31a、31bを弾性変形させて、スライダ2を容易にスライダ収容部材3に組み付けることができ、作業性が向上する。スライダ2をスライダ収容部材3に収容した後は、弾性変形したスライダ収容部材3は元の状態に復元することにより、スライダ2の摺動方向軸Xに直交する方向D2への移動を規制することができる。
【0037】
つぎに、一実施形態に沿ってケーブル連結機構1の組み付けおよびスライダ2の移動の規制についてより詳細に説明する。
【0038】
図1に示すケーブル連結機構1の組み付け前の状態から、スライダ2を主開口部36からスライダ収容部材3に向かって組み付ける。スライダ2を主開口部36側からスライダ収容部材3の空間S内に押し込むと、スライダ2のスライダ側突起R2が、スライダ収容部材3の側壁31aに形成された側壁側突起R1を乗り越えて、スライダ2がスライダ収容部材3内に収容される。
【0039】
スライダ2がスライダ収容部材3内に収容されると、
図3に示されるように、スライダ2が摺動方向軸Xに直交する方向D2(主開口部36の開口方向)に移動しようとしても、スライダ側突起R2が、側壁側突起R1に接触して、スライダ2がスライダ収容部材3の主開口部36方向への移動が規制される。したがって、主開口部36が開口した状態(蓋体38が開いた状態)で、ケーブル連結機構1を搬送したり、車体での取付部位にケーブル連結機構1を移動させるときなどに、スライダ2がスライダ収容部材3から脱落することがない。そして、スライダ2のケーブル接続部22a、22bにケーブルC1、C2のケーブルエンドCE1、CE2を係合させるときは、スライダ2は摺動方向軸Xに直交する方向D2への移動が規制されているため、スライダ2が脱落しないようにスライダ2を抑える必要がなく、ケーブルC1、C2をスライダ2に容易に取り付けることができる。したがって、ケーブルC1、C2の接続作業が容易となり、作業性が向上する。また、スライダ収容部材3の主開口部36が開口しており、主開口部36、スライダ接続部22a、22bおよびケーブル挿通開口部37a、37bが全て同方向に開口している。したがって、ケーブルC1、C2を
図1中、上方から下方へと移動させるだけで、ケーブルC1、C2のスライダ2への接続と、スライダ収容部材3のケーブル挿通開口部37a、37bへの挿通が完了するため、組み付け作業がシンプルで作業性が向上する。
【0040】
ケーブルC1、C2のスライダ2への接続が完了すると、蓋体38を閉鎖して、主開口部36を閉鎖する。これにより、ケーブル連結機構1の組み付けが完了し、ケーブル連結機構1を車体等の取付対象に、嵌合部35等の固定手段により取り付けることが可能となる。もちろん、あらかじめスライダ収容部材3を取付対象に取り付けておき、スライダ2の収容とケーブルC1、C2の係合とを行ってもよく、スライダ2を収容したスライダ収容部材3を取付対象に取り付けておき、その後、ケーブルC1、C2の係合を行っても構わない。車体等の取付対象にケーブル連結機構1が取り付けられた後は、ケーブルC1、C2の引き操作により、スライダ2がスライダ収容部材3内を摺動して、操作力の伝達が可能になる。
【0041】
なお、ケーブル連結機構1が車両のフロント側の基体(たとえば、ボンネットやエンジンルーム内などの取付対象)に取り付けられる際などには、ケーブルC1、C2が湾曲しながら立体的に配索される場合が多い。このような場合、このケーブルC1、C2の引き操作がされて、スライダ2がスライダ収容部材3内を摺動するときに、幅方向D3の軸を中心として、スライダ2を回転させる力がスライダ2に加わる場合がある。一方のケーブルC1のスライダ2から操作部への延び方向と、他方のケーブルC2のスライダ2から被操作部への延び方向とが、摺動方向軸Xに直交する方向D2で異なる場合がある。
一例として、車両のボンネットの開閉機構など、運転席の下部側にあるレバー等の操作部と、ケーブル連結機構1を介してケーブルC1、C2により接続された、ボンネットのロック機構等の被操作部とは、車体の垂直方向で高低差を有しているため、スライダ2からの延び方向は、一方のケーブルC1と他方のケーブルC2とで異なる。また、車両のエンジンルーム内など、様々な部材が収容された狭い空間内では、様々な部材を避ける必要があり、ケーブル連結機構1の設置スペースも限られるため、ケーブル連結機構1が
図4に示されるように、水平方向に対して傾斜して配置される場合がある。
このように、ケーブル連結機構1が水平方向に対して傾斜した状態で取付対象に取り付けられる場合や、一方のケーブルC1のスライダ2からの延び方向と、他方のケーブルC2のスライダ2からの延び方向とが異なる場合に、ケーブルC1、C2の操作に伴い張力が加わると、幅方向D3(
図4中、紙面奥行方向)の軸を中心として、スライダ2にスライダ2を回転させる力が加わる場合がある。すなわち、一方のケーブルC1と他方のケーブルC2とで引っ張る方向がずれている場合に、ケーブルC1、C2に張力が加わると、湾曲して配索されたケーブルC1、C2が、配索距離が短くなるように直線状になろうとする。その場合に、スライダ2がケーブルC1からは
図4中、右下に力を受け、ケーブルC2からはケーブルC2からの反力により左上に力を受けるため、
図4に二点鎖線で示すように、幅方向D3の軸を中心として回転する。
この際、スライダ2の摺動方向軸Xに直交する方向D2への移動が規制されない場合、
図4に二点鎖線で示されるように、スライダ2が幅方向D3に延びる軸を中心として回転する方向に力が加わり、スライダ2が摺動方向軸Xに対して傾斜してしまう。スライダ2が傾斜すると、ケーブルC1、C2の操作力がスライダ2の傾斜によるガタツキ等により、一部ロスされてしまう。その結果、スライダ2をスライダ収容部材3内で摺動させるための摺動方向D1の力がうまく伝達されず、操作力の伝達性能が低下してしまう。また、スライダ2が傾斜して蓋体38等、本来接触が予定されていないスライダ収容部材3の部位と接触して摺動し、スライダ2やスライダ収容部材3が摩耗したり、異音が生じてしまう。
【0042】
このように、幅方向D3を中心として、スライダ2を回転させる力がスライダ2に加わった場合であっても、スライダ側接触部R2が、収容部材側接触部R1に接触することで、スライダ2の幅方向D3の軸を中心とした回転を抑制する当て止めとなる。したがって、スライダ側接触部(スライダ側突起)R2と、収容部材側接触部(側壁側突起)R1とが設けられていることにより、スライダ2がスライダ収容部材3内での幅方向D3を中心として回転することによる操作力の伝達性能の低下を抑制することができる。また、スライダ2が傾斜して本来接触すべきではないスライダ収容部材3の部位との接触を抑制し、スライダ2やスライダ収容部材3の摩耗や、異音を抑制することができる。
なお、本実施形態では、ケーブル連結機構1は、取付対象に取り付けた際において主開口部36が略上方に開口するように取り付けられているが、ケーブル連結機構1は主開口部36の開口方向が横方向になるように取り付けられてもよい。たとえば、
図4のケーブル連結機構1において、X軸を中心にして紙面手前から奥側へ90°回転させた状態で取付対象に取り付けられてもよい。この場合、主開口部36の開口方向は紙面手前側から奥側であり、スライダ2の側壁24bが摺動面となり、スライダ収容部材3の側壁31bを摺動することとなる。このような場合でも、上述したように、ケーブルC1、C2が湾曲しながら立体的に配索された場合に生じうる主開口部の開口方向へのスライダ2の脱落を抑制することができる。