特許第6479557号(P6479557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479557
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】リニア振動モータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20190225BHJP
   H02K 33/16 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   B06B1/04 S
   H02K33/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-90929(P2015-90929)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-203126(P2016-203126A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片田 好紀
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−030370(JP,A)
【文献】 特開平10−117472(JP,A)
【文献】 特開2011−097747(JP,A)
【文献】 特開2011−078150(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0099600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
H02K 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動子と、
前記可動子を往復振動自在に支持する枠体と、
前記枠体に対して固定され前記可動子を駆動する駆動部材と、
前記枠体と前記可動子との間に設けられ、前記可動子の往復振動によって弾性変形する弾性部材と、
前記可動子に対して、前記可動子の振動方向に交差する方向に与圧を加える与圧部材とを備え
前記可動子は、前記振動方向に交差する方向の幅が前記振動方向に交差する方向の厚さ以上の方形状であり、
前記与圧部材は、前記可動子の幅に沿った面と前記枠体との間に配置された板バネであることを特徴とするリニア振動モータ。
【請求項2】
前記可動子には、前記幅方向の両端部に前記板バネ上を摺動する摺動部が設けられ、前記板バネ上には、前記摺動部が摺動する平面状の被摺動部が設けられることを特徴とする請求項記載のリニア振動モータ。
【請求項3】
前記板バネは、前記枠体の底面に設置される平板状の設置部と、該設置部から屈折して前記可動子を弾性的に保持する与圧部とを備えることを特徴とする請求項1又は2記載のリニア振動モータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニア振動モータを備えた携帯電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号によって往復振動を発生させるリニア振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
振動モータ(或いは振動アクチュエータ)は、携帯電子機器に内蔵され、着信やアラームなどの信号発生を振動によって携帯者に伝える装置として広く普及している。また、振動モータは、タッチパネルなどのヒューマン・インターフェースにおけるハプティクス(皮膚感覚フィードバック)を実現する装置として、近年注目されている。
【0003】
振動モータは、各種の形態が開発されている中で、可動子の直線的な往復振動によって比較的大きな振動を発生させることができるリニア振動モータが知られている。従来のリニア振動モータは、可動子側に錘とマグネットを設け、固定子側に設けたコイルに通電することでマグネットに作用するローレンツ力が駆動力となり、振動方向に沿って弾性支持される可動子を往復振動させるものである(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−97747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯電子機器の小型化・薄型化に伴い、それに装備される振動モータには一層の小型化・薄型化の要求がなされている。特に、スマートフォンなどのフラットパネル表示部を備える電子機器においては、表示面と直交する厚さ方向の機器内スペースが限られているので、そこに配備される振動モータには薄型化の高い要求がある。
【0006】
リニア振動モータの薄型化を実現する際に、マグネット体積を十分に確保して所望の駆動力を得ると共に錘の重量を十分に確保して所望の慣性力を得ようとすると、マグネットと錘を備える可動子を扁平状にして、マグネットの体積と錘の重量を確保しながら薄厚化を図ることになる。この場合、仮に、直線的な振動軸周りに可動子が回転すると、扁平状の可動子は、回転によって側部が周囲の枠体に衝突しやすい形状になっているので、衝突による異音が発生するなどして安定した動作が得られない。このため、従来技術は、2本のガイドシャフトを設けて可動子の振動軸周りの回転を抑え、安定した直線振動を実現している。しかしながら、2本のガイドシャフトを設けると、2本のガイドシャフトの平行を確保する必要があり、組み付けに高い精度が求められるので、生産性の向上が困難になる問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、リニア振動モータの薄型化を可能にすること、可動子を扁平状にした場合にも、可動子が振動軸周りに回転して異音が発生するのを抑止すること、高精度の部品を用いること無く安定した振動を得ること、高い生産性を得ること、などが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明によるリニア振動モータは、以下の構成を具備するものである。
可動子と、前記可動子を往復振動自在に支持する枠体と、前記枠体に対して固定され前記可動子を駆動する駆動部材と、前記枠体と前記可動子との間に設けられ、前記可動子の往復振動によって弾性変形する弾性部材と、前記可動子に対して、前記可動子の振動方向に交差する方向に与圧を加える与圧部材とを備え、前記可動子は、前記振動方向に交差する方向の幅が前記振動方向に交差する方向の厚さ以上の方形状であり、前記与圧部材は、前記可動子の幅に沿った面と前記枠体との間に配置された板バネであることを特徴とするリニア振動モータ。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明のリニア振動モータは、可動子に対して振動方向に交差する方向に与圧を加える与圧部材を備えているので、薄型化に対応するために可動子を扁平状にした場合にも、可動子が振動軸周りに回転して異音を発するのを抑止することができる。また、可動子を2軸で支持する必要が無いので、高精度の部品を用いること無く安定した振動を得ることができ、高い生産性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るリニア振動モータの分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るリニア振動モータの組み立て状態図((a)が平面図、(b)が(a)におけるA−A断面図)である。
図3】与圧部材の一例を示す斜視図である。
図4】与圧部材の一例を示す説明図((a)が平面図、(b)が正面図、(c)が側面図)である。
図5】本発明の実施形態に係るリニア振動モータを備えた携帯電子機器(携帯情報端末)を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係るリニア振動モータ1は、可動子2、枠体3、駆動部材4、弾性部材5、与圧部材6を備えている。図において、X方向が可動子2の振動方向、Y方向が可動子2の振動方向に交差する幅方向、Z方向が可動子2の振動方向に交差する厚さ方向を示している。
【0012】
可動子2は、マグネットを備え必要に応じてヨークを備えた磁極部材20と、錘21を備えている。可動子2は、図示X方向に沿って往復振動自在に枠体3に支持されている。可動子2は、図示の例では、X方向の中央にX方向に延設された断面方形状の磁極部材20が配置され、そのX方向両端に断面方形状の錘21がそれぞれ接続されている。
【0013】
可動子2は、磁極部材20と錘21の両方の形状が、図示X方向に交差する方向(図示Y方向)の幅が、図示X方向に交差する方向(図示Z方向)の厚さ以上の方形状、具体的には、Y方向の幅がZ方向の厚さより大きい扁平形状になっており、このような形状を備えることで、リニア振動モータ1の薄型化を実現している。
【0014】
磁極部材20としては、例えば、X方向に沿って着磁されたマグネットを互いに同磁極が向かい合うように複数配列し、そのマグネットの配列の間にヨークを配置したものなどで構成することができる。
【0015】
枠体3は、可動子2を往復振動自在に支持するものであればよいが、図示の例では、幅方向(Y方向)が厚さ方向(Z方向)以上の方形状に構成され、底面30Aと一対の側壁30Bと一対の正面壁30Cを備えるケース枠30と、ケース枠30を被う蓋枠31を備えている。蓋枠31には、後述する駆動部材4(コイル40)への通電を行うための入力端子部31Aが設けられている。
【0016】
X方向に沿った可動子2と枠体3との間には、弾性部材5が設けられている。弾性部材5は、可動子2のX方向に沿った往復振動によって弾性変形するものであり、図示の例では、X方向に沿った軸を有する圧縮コイルバネ50が片側2個ずつ計4個配備されている。圧縮コイルバネ50は、枠体3の正面壁30Cの内側に設けられるバネ保持部33に一端が保持され、他端が可動子2における錘21の端部に保持されている。
【0017】
可動子2を往復振動自在に支持する構成としては、各種の構成が実施可能であるが、図示の例では、可動子2に、X方向に沿って延びるガイドシャフト7が一対取り付けられており、このガイドシャフト7を摺動自在に支持する軸受32が、枠体3(ケース枠30)の底面30Aに取り付けられている。これに限らず、ガイドシャフトの両端を枠体3の正面壁30Cで支持して、そのガイドシャフトに沿って可動子2を摺動させる構造や、ガイドシャフトを設けること無く、枠体3の摺動面に沿って可動子を摺動させるものなどであってもよい。
【0018】
駆動部材4は、可動子2が備える被駆動部材(磁極部材20)と協働して可動子2を図示X方向に沿って往復振動させる駆動力を発生させる部材であり、図示の例では、可動子2における磁極部材20の周囲に巻き回され、枠体3に対して固定されるコイル40によって構成されている。図示の例では、磁極部材20におけるヨークの周囲に枠体3に固定されたコイル40が配備されている。コイル40に、錘21の重量と弾性部材5の弾性係数で決まる共振周波数の交流駆動信号を通電することで、可動子2を往復振動させることができる。枠体3に固定される駆動部材4と可動子2に装備される被駆動部材は、コイルとマグネットを用いて、可動子2をX方向に往復振動させるように、適宜の構成を選択することができる。
【0019】
与圧部材6は、枠体3において往復振動自在に支持された可動子2に対して、振動方向に交差する方向に与圧を加える部材である。与圧部材6は、可動子2の幅に沿った面と枠体3との間に配置された板バネ60によって構成することができる。与圧部材6は、これに限らず、捻りコイルバネなどで構成することもできる。
【0020】
図2及び図3に示すように、与圧部材6の一形態である板バネ60は、枠体3の底面30Aに沿って配置される板状部材であり、平板状の設置部61と設置部61から屈折して、片持ち状に傾斜して立ち上がる与圧部62とを備えている。図示の例では、与圧部62が可動子2の振動方向(X方向)に沿って一対設けられ、与圧部62を除いた部分に設置部61が設けられている。
【0021】
与圧部62は、板バネを形成する高弾性の板状部材から部分的に切り出されて屈折加工された部分であり、図示X方向に交差する方向に延びるアーム部分62Aと一対のアーム部分62Aの先端を連結する連結部分62Bとを備えており、アーム部分62Aが枠体3の底面30Aに沿って設置される設置部61に対して所定の角度で傾斜するように屈折加工されている。
【0022】
与圧部材6となる板バネ60は、図2(b)に示すように、枠体3(ケース枠30)の底面30Aと可動子2との間に配置され、与圧部62が可動子2の錘21を弾性的に保持している。これにより、与圧部62における連結部分(先端部分)62Bが可動子2の錘21における幅方向端部に当接することになり、可動子2は、与圧部62の傾斜によって、ガイドシャフト7周りに所定角度回転した状態で弾性的に保持されて、振動方向に交差する方向に与圧が加えられた状態になる。
【0023】
可動子2は、錘21における幅方向両端部に摺動部21Aとなる凸部を備えている。摺動部21Aは、接触抵抗が低くなるように少ない接触面積で与圧部材6上の被摺動部60Aに接触している。被摺動部60Aは、図示X方向に沿って形成された平坦部分であり、この被摺動部60A上を摺動することで、可動子2は少ない接触抵抗で振動することができる。図示の例では、摺動部21Aを錘21における幅方向両端部に設けているが、これに限らず、摺動部21Aを錘21の厚さ方向両端部に設けても良い。その場合には、それに対応して被摺動部を設けると良い。
【0024】
このようなリニア振動モータ1の可動子2は、可動子2の振動方向に交差する方向に(図示の例では、ガイドシャフト7に沿った一軸周りに)与圧が加えられた状態で、ガイドシャフト7に沿って往復振動する。これにより、可動子2は、加えられる与圧によって、ガイドシャフト7周りの回転が抑止された状態で振動することができ、振動動作中に可動子2に回転を起こさせる力が加わったとしても、可動子2は与圧部材6が加える与圧によって安定した振動状態を維持することができ、可動子2が回転して異音を発生したり、可動子2のがたつきにより不安定な振動が生じることを抑止できる。
【0025】
図5は、本発明の実施形態に係るリニア振動モータ1を装備した電子機器の一例として、携帯情報端末100を示している。安定した振動が得られ薄型化や幅方向のコンパクト化が可能なリニア振動モータ1を備える携帯情報端末100は、通信機能における着信やアラーム機能などの動作開始・終了時を異音が発生しにくい安定した振動で使用者に伝えることができる。また、リニア振動モータ1の薄型化・幅方向のコンパクト化によって高い携帯性或いはデザイン性を追求した携帯情報端末100を得ることができる。更に、リニア振動モータ1は、厚さを抑えた直方体形状の枠体3内に各部を収容したコンパクト形状であるから、薄型化された携帯情報端末100の内部にスペース効率よく装備することができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1:リニア振動モータ,
2:可動子,20:磁極部材(マグネットとヨーク),
21:錘,21A:摺動部,
3:枠体,30:ケース枠,30A:底面,30B:側壁,30C:正面壁,
31:蓋枠,31A:入力端子部,32:軸受,33:バネ保持部,
4:駆動部材,40:コイル,
5:弾性部材,50:圧縮コイルバネ,
6:与圧部材,60:板バネ,60A:被摺動部,
61:設置部,62:与圧部,62A:アーム部分,62B:連結部分,
7:ガイドシャフト
図1
図2
図3
図4
図5