特許第6479674号(P6479674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6479674針付きシリンジ、プレフィルドシリンジおよびそれを用いた医療用液体投与具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6479674
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】針付きシリンジ、プレフィルドシリンジおよびそれを用いた医療用液体投与具
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20190225BHJP
   A61M 5/34 20060101ALI20190225BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   A61M5/32 520
   A61M5/32 540
   A61M5/34 500
   A61M5/315 512
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-544891(P2015-544891)
(86)(22)【出願日】2014年10月3日
(86)【国際出願番号】JP2014076525
(87)【国際公開番号】WO2015064299
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年9月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-228867(P2013-228867)
(32)【優先日】2013年11月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089060
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 正一
(72)【発明者】
【氏名】中村 宏司
(72)【発明者】
【氏名】大谷内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 安祐美
(72)【発明者】
【氏名】秋山 毅
(72)【発明者】
【氏名】玉造 滋
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/027799(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/065814(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/084646(WO,A1)
【文献】 特開2002−291884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/315
A61M 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた針固定部とを備える外筒と、先端に穿刺用針先を有し、前記外筒の前記針固定部に基端部が固定された注射針と、前記外筒内に収納され、かつ前記外筒内を液密状態にて摺動可能なガスケットとを有する針付きシリンジであって、
前記注射針は、前記穿刺用針先を有する穿刺時刺入部の外径が、0.42mm以下、肉厚が0.1mm以下かつ前記穿刺時刺入部より外径が大きい基端を有するテーパー部保有注射針であり、さらに、前記テーパー部保有注射針は、ほぼ同一外径にて所定長延びる前記穿刺時刺入部と、前記穿刺時刺入部の基端より、後端に向かってテーパー状に拡径するテーパー部と、前記テーパー部の基端よりほぼ同一外径にて所定長延びる基端部を備えており、
前記外筒は、内面に潤滑剤が塗布されておらず、
前記ガスケットは、弾性体からなるガスケット本体と、少なくとも前記外筒の内面と接触する部分に設けられ、前記外筒内面に対する液密摺動性を有する軟質被膜とを備え、さらに、
前記穿刺時刺入部の内径は、0.05mm以上であり、
前記注射針の前記基端部の外径は、前記穿刺時刺入部の外径より、0.15mm以上大きく、
前記注射針の前記基端部の長さは、3.0〜12.0mmであり、
前記注射針の前記テーパー部の基端の内径は、0.30mm以上であり、
前記注射針の前記基端部の基端の内径は、前記注射針の前記穿刺時刺入部の内径の1.5〜2.5倍であることを特徴とする針付きシリンジ。
【請求項2】
前記針付きシリンジは、前記外筒内での前記ガスケットの初期摺動抵抗値が動的摺動抵抗値の最高値付近もしくは以下である請求項1に記載の針付きシリンジ。
【請求項3】
前記注射針は、内面の平均粗度(Ra)が、0.3μm未満である請求項1に記載の針付きシリンジ。
【請求項4】
前記注射針の基端外径は、前記注射針の先端内径の1.2〜2.5倍である請求項1ないし3のいずれかに記載の針付きシリンジ。
【請求項5】
前記注射針の前記テーパー部の基端の内径は、0.43mm以上である請求項1ないし4のいずれかに記載の針付きシリンジ。
【請求項6】
前記穿刺時刺入部の外径は、0.35mm以下であり、前記刺入部における肉厚は、0.04〜0.08mmである請求項1ないし5のいずれかに記載の針付きシリンジ。
【請求項7】
前記軟質被膜は、前記ガスケット本体の外面に塗布された軟質被膜形成用液状物の固化物により形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の針付きシリンジ。
【請求項8】
前記外筒は、合成樹脂製である請求項1ないし7のいずれかに記載の針付きシリンジ。
【請求項9】
前記テーパー部保有注射針は、前記テーパー部の基端側部分において、前記外筒の前記針固定部に固定されている請求項1ないし8のいずれかに記載の針付きシリンジ。
【請求項10】
前記シリンジは、前記ガスケットを押圧するためのプランジャーを備えている請求項1ないし9のいずれかに記載の針付きシリンジ。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の針付きシリンジと、前記注射針の先端部を封止するシールキャップと、前記シリンジ内に充填された医療用液体とからなることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項12】
前記医療用液体は、粘度が10mPa・s以上である請求項11に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項13】
前記医療用液体は、蛋白製剤である請求項11または12に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項14】
オートインジェクタと、前記オートインジェクタに装着された請求項11ないし13のいずれかに記載のプレフィルドシリンジとからなることを特徴とする医療用液体投与具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度薬剤の注入に適した針付きシリンジ、プレフィルドシリンジおよび医療用液体投与具に関する。
【背景技術】
【0002】
蛋白製剤、抗体製剤、ヒアルロン酸、インスリンなどの少量の薬剤投与用シリンジとして、外筒先端部に細径の穿刺針が固定されているものが使用されている。そして、薬剤として、高粘度のものが用いられる場合も多い。そして、このような高粘度薬剤を投与する場合、小径の穿刺針では流動抵抗が高く、投与操作が容易でない場合がある。また、外筒の内面には、摺動性を付与するためのシリコーンオイルが塗布されることがあるが、このような潤滑剤は、充填される薬剤との相互作用により薬剤の凝集あるいは変性を惹起することがある。
【0003】
このため、潤滑剤を用いないシリンジであることが好ましい。しかしそのようなシリンジでは、ガスケットの外筒内での摺動性が悪く、投与操作が困難なものとなる。さらに、このような摺動性を有することによって、投与時にシリンジの破損により、副次的な医療事故発生リスクが高まる。このように、薬剤安定性および投与時の安全性などを考慮して潤滑剤を使うことなく、摺動抵抗値を低くする手段が望まれている。
そこで、本件出願人は、再表2009/084646(特許文献1)のガスケットを提案している。また、本件出願人は、特開2004−041391(特許文献2)を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表2009/084646
【特許文献2】特開2004−041391
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のガスケットは、良好な摺動性を備え、特許文献2の注射針は、患者に痛みや傷など、さらに恐怖感や不安感を与えることなく注射を行うことができる。また、薬液を生体内へ注入するときの注射針全体としての流路抵抗を低減することができ好適である。
【0006】
しかし、針付きシリンジとしては、より高濃度の薬液を低い注入抵抗にて、かつ、低いガスケット押圧力により投与可能である針付きシリンジが求められている。
そこで、本発明の目的は、高濃度あるいは高粘度の薬液を低い注入抵抗にて、かつ、低いガスケット押圧力により投与可能である針付きシリンジ、プレフィルドシリンジおよび医療用液体投与具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する針付きシリンジは、以下のものである。
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた針固定部とを備える外筒と、先端に穿刺用針先を有し、前記外筒の前記針固定部に基端部が固定された注射針と、前記外筒内に収納され、かつ前記外筒内を液密状態にて摺動可能なガスケットとを有する針付きシリンジであって、前記注射針は、前記穿刺用針先を有する穿刺時刺入部の外径が、0.42mm以下、肉厚が0.1mm以下かつ前記穿刺時刺入部より外径が大きい基端を有するテーパー部保有注射針であり、さらに、前記テーパー部保有注射針は、ほぼ同一外径にて所定長延びる前記穿刺時刺入部と、前記穿刺時刺入部の基端より、後端に向かってテーパー状に拡径するテーパー部と、前記テーパー部の基端よりほぼ同一外径にて所定長延びる基端部を備えており、前記外筒は、内面に潤滑剤が塗布されておらず、前記ガスケットは、弾性体からなるガスケット本体と、少なくとも前記外筒の内面と接触する部分に設けられ、前記外筒内面に対する液密摺動性を有する軟質被膜とを備え、さらに、 前記穿刺時刺入部の内径は、0.05mm以上であり、前記注射針の前記基端部の外径は、前記穿刺時刺入部の外径より、0.15mm以上大きく、前記注射針の前記基端部の長さは、3.0〜12.0mmであり、前記注射針の前記テーパー部の基端の内径は、0.30mm以上であり、前記注射針の前記基端部の基端の内径は、前記注射針の前記穿刺時刺入部の内径の1.5〜2.5倍である針付きシリンジ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施例の針付きシリンジを用いたプレフィルドシリンジの正面図である。
図2図2は、図1のA−A線断面図である。
図3図3は、図1および図2のプレフィルドシリンジに用いられている外筒の正面図である。
図4図4は、図3に示した外筒の斜め上方から見た斜視図である。
図5図5は、図3に示した外筒の先端部の拡大断面図である。
図6図6は、キャップが装着された状態の本発明の外筒の断面図である。
図7図7は、本発明の他の実施例に用いられる外筒の先端部の拡大断面図である。
図8図8は、本発明の針付きシリンジに用いられるガスケットの正面図である。
図9図9は、図8に示したガスケットの縦断面図である。
図10図10は、本発明のプレフィルドシリンジを用いた医療用液体投与具の正面図である。
図11図11は、図10に示した医療用液体投与具の内部構造を説明するための説明図である。
図12図12は、図10に示した医療用液体投与具の内部構造および作用を説明するための説明図である。
図13図13は、図10に示した医療用液体投与具の内部構造および作用を説明するための説明図である。
図14図14は、図10に示した医療用液体投与具の内部構造および作用を説明するための説明図である。
図15図15は、図10に示した医療用液体投与具の内部構造および作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の針付きシリンジ、プレフィルドシリンジおよびそれを用いた医療用液体投与具を図面に示す実施形態を用いて説明する。
本発明のプレフィルドシリンジ1は、針付きシリンジ2と、針付きシリンジの注射針6の先端部を封止するシールキャップ3と、針付きシリンジ2内に充填された医療用液体7とからなる。
【0010】
そして、本発明の針付きシリンジ2は、外筒本体部21と、外筒本体部21の先端部に設けられた針固定部22とを備える外筒10と、先端に穿刺用針先61を有し、外筒10の針固定部22に基端部67が固定された注射針6と、外筒10内に収納され、かつ外筒10内を液密状態にて摺動可能なガスケット4とを有する。注射針6は、穿刺用針先を有する穿刺時刺入部65の外径が、0.42mm以下(27G以下)かつ肉厚が0.1mm以下かつ穿刺時刺入部より外径が大きい基端を有するテーパー部保有注射針または前記穿刺用針先を有する穿刺時刺入部の外径が、0.42mm以下、肉厚が0.04mm以下かつ先端から基端までほぼ同一外径にて延びる小径超肉薄注射針であり、外筒10は、内面に潤滑剤が塗布されていない。そして、ガスケット4は、弾性体からなるガスケット本体41と、少なくとも外筒10の内面と接触する部分に設けられ、ガスケット本体41への密着性(難剥離性)と外筒10の内面に対する液密摺動性を有する軟質被膜42とを備える。
【0011】
図1ないし図6に示すように、この実施例の針付きシリンジ2は、外筒10と、注射針6と、注射針6の針先61をシールするように外筒10に装着されたシールキャップ3と、外筒10内に収納されたガスケット4と、ガスケット4に取り付けられたもしくは使用時に取り付けられるプランジャー5とを備える。
外筒10は、外筒本体部21と、外筒本体部21の先端部に設けられた注射針取付部22と、外筒本体部21の基端に設けられたフランジ23とを備える。外筒10は、内面に潤滑剤が塗布されないものが用いられている。
この実施例の針付きシリンジは、外筒10内でのガスケット4の初期摺動抵抗値が動的摺動抵抗値の最高値付近もしくは以下となっており、ガスケットの初期摺動が良好なものとなっている。
【0012】
外筒10は、透明もしくは半透明である。外筒本体部21は、ガスケット4を液密かつ摺動可能に収納するほぼ筒状の部分である。また、注射針取付部22は、外筒本体部の先端部(この実施例では、筒状本体部の先端に形成された先端方向に向かって縮径する肩部)より、前方に突出するとともに、外筒本体部より小径の中空筒状となっている。また、注射針取付部22は、図2ないし図6に示すように、先端に設けられた環状頭部24と、環状頭部24の基端に設けられ、基端方向に向かって縮径する短いテーパー状縮径部25と、テーパー状縮径部25の基端部と外筒本体部21の先端部とを連結する連結部27とを有し、テーパー状縮径部25により、環状凹部が形成されている。
【0013】
環状頭部24には、先端面から基端側に向かって窪んだ凹所26と、凹所26内に位置し、先端側に頂点を有する中空の円錐状部とが形成されている。連結部27の外面には、外筒10の軸方向に延びる複数の溝が形成されている。なお、環状凹部は、テーパー状でなく、環状頭部24の基端との間に段差が形成されるように単に縮径した形状であってもよい。また、連結部27は針の固定強度を高める機能も有しているが、連結部27を省略しても強度が得られる場合は、環状凹部(テーパー状縮径部25)の基端部と外筒本体部21の先端部とが直接連結されていてもよい。また、環状頭部24は、凹所26および円錐状部を省略した中空の円柱形状(円筒形状)でもよい。
【0014】
外筒10の形成材料としては、ガラスやプラスチックを用いることができるが、プラスチックを用いることが好ましく、プラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で透明性に優れ、薬剤に対する影響がなく、耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような樹脂が好ましい。
【0015】
注射針6は、先端に穿刺用針先61を有する。注射針6の基端部は、注射針取付部22の中空部内に挿入されかつ固定されるとともに、注射針6の内部60は、外筒10の内部空間20と連通している。
そして、この実施例の針付きシリンジ2では、外筒10に注射針6が離脱不能に固定されている。外筒10に注射針6を離脱不能に固定する方法としては、例えば、注射針6は、予め成形した外筒10の注射針取付部22の中空部内に挿入し、接着剤、熱溶着等により注射針取付部22に固定してもよい。また、外筒10に注射針6を直接インサート成形することで固定してもよい。インサート成形の場合、外筒10を成形することで、注射針取付部22は、注射針6が挿入された筒状(中空状)となり、注射針6は、その基端部が注射針取付部22の中空部内に挿入されかつ固定されたものとなる。
【0016】
さらには、外筒10に、注射針6を熱可塑性樹脂製筒状部材を用いて、融着(例えば、熱融着、超音波融着、レーザ融着、誘導加熱融着)することにより固定したものであってもよい。この場合、外筒10としては、熱可塑性樹脂製筒状部材を収納可能な内腔部を有する中空状先端部を有するものが用いられる。熱可塑性樹脂製筒状部材としては、注射針の基端部を収納可能な連通孔を有するものが用いられる。そして、注射針の基端部が挿入された熱可塑性樹脂製筒状部材を、外筒の中空状先端部に挿入し、熱可塑性樹脂製筒状部材を直接もしくは間接的に加熱溶融させることにより、注射針は、熱可塑性樹脂製筒状部材を介して、外筒に固定される。
【0017】
注射針6としては、先端に穿刺用針先61を有する中空状のものが用いられる。注射針6の形成材料としては、金属が一般的である。金属としては、ステンレス鋼が好適である。そして、注射針6は、内面の平均粗度(Ra)が、0.3μm未満であることが好ましい。このような平滑な内面とすることにより、薬剤の流動抵抗が少ないものとなる。特に、内面の平均粗度(Ra)が、0.2μm未満であることが好ましい。
【0018】
そして、この実施例の針付きシリンジ2では、穿刺用針先を有する穿刺時刺入部65の外径が、0.42mm以下(27G以下)かつ肉厚が0.1mm以下かつ穿刺時刺入部65より外径が大きい基端62を有するテーパー部保有注射針が用いられている。また、この注射針は、小径肉薄注射針に該当する。針先を有する刺入部65が、上記のようなものであれば、穿刺時に患者に与える苦痛が少なく、穿刺抵抗も低い。さらに、細径の注射針であっても肉薄のため、十分な内径を有し、薬剤流動も良好である。
【0019】
そして、テーパー部保有注射針6は、穿刺時刺入部65より大径の基端62を備え、基端62の外径は、穿刺時刺入部65の外径より、0.05mm以上大きいものであることが好ましい。このように、注射針6が、先端部より太い基端部を有することにより、剛性が高いものとなり、穿刺時の曲がり等を抑制できる。特に、注射針6の基端62の外径は、穿刺時刺入部65の外径より、0.15mm以上大きいことが好ましい。
【0020】
この実施例の針付きシリンジ2において用いるテーパー部保有注射針6は、図5に示すように、ほぼ同一外径にて所定長延びる穿刺時刺入部65と、穿刺時刺入部65の基端より、後端に向かってテーパー状に拡径するテーパー部66とを備えている。このテーパー部66部分(具体的には、テーパー部66の基端部)が、注射針取付部22に固定されている。このため、注射針6は、注射針取付部22より離脱しにくいものとなっている。このようなテーパー部保有注射針を注射針として用いた針付きシリンジにおいては、注射針と外筒とを直接インサート成形することによって、ストレート注射針と同様の設備および部材で効果的に針の離脱が防止された針付きシリンジを製造することができる。
さらに、この実施例のものでは、図5に示すように、テーパー部66の基端より、後端に向かってほぼ同一外径にて所定長延びる基端部67を備えている。このため、注射針が注射針取付部に対して十分な接触面積を以て固定されており、固定状態が安定したものとなっている。
【0021】
なお、注射針6は、外筒10に、レーザー溶着により固定されたものであってもよい。外筒10の注射針固定部22は、注射針6の基端部における最大外径より若干大きい内径を有する挿通孔(貫通路)を備えている。注射針取付前の外筒10の貫通路は、ほぼ同一外径にて延びるものとなっている。挿通孔の下端部に、注射針6のテーパー部66の基端部を挿入後、注射針6の基端部にレーザーを照射し、注射針を発熱させ、挿通孔の内面を溶解させることにより、注射針を外筒に固定したものであってもよい。また、挿通孔(貫通路)は、先端に向かって縮径するものであってもよい。この場合、縮径度は、注射針のテーパー部の基端部における縮径度とほぼ同じであることが好ましい。この場合、注射針は外筒10の注射針固定部22の基端側からその先端が挿入される。
【0022】
さらに、注射針6は、内筒体(図示せず)を介して、外筒10の注射針固定部に固定されたものであってもよい。内筒体としては、外筒の注射針固定部に挿入可能な外面形状と、内部に、注射針6のテーパー部66の基端部を挿入可能な挿通孔を備えるものが用いられる。そして、内筒体の挿通孔は、その内径を縮径させる縮径内面を備えることが好ましい。縮径内面は、挿通孔の基端側から先端側に向けてその内径が漸減するテーパー面(円錐面)に形成することが好ましい。縮径内面のテーパー角は、注射針の縮径外面のテーパー角とほぼ同一角であることが好ましい。挿通孔に挿通された注射針の注射針の縮径外面のテーパー部は、挿通孔の縮径内面に当接する。
【0023】
これにより、注射針は、内筒体に対して抜け方向つまり先端側への移動が阻止されるように係止されるものとなっている。なお、外筒の注射針固定部は基端側から先端側に向けてその内径が漸減するテーパー面(円錐面)に形成し、かつ外筒の注射針固定部に挿入可能な内筒体の外面形状は、基端側から先端側に向けてその外径が漸増するテーパー部に形成されていることが好ましく、注射針固定部のテーパー角と内筒体の外面形状のテーパー角とほぼ同一角であることが好ましい。そして、この内筒体を有するタイプのものにおいては、注射針を保持した内筒体を外筒の先端部の開口部内に挿入後、注射針の基端部にレーザーを照射し、注射針を発熱させ、内筒体および内筒体と当接する部分の外筒の先端部を溶解させることにより、注射針および内筒体が、外筒に固定される。
【0024】
そして、刺入部65の外径は、0.42mm以下であり、好ましくは、0.35mm以下である。また、刺入部65の内径は、0.05mm以上であることが流量確保の点から好ましい。また、内径は、0.34mm以下であれば、刺入部の外径が大きくなりすぎることがなく好ましい。内径としては、特に、0.1〜0.3mmであることが好ましい。また、刺入部65における注射針6の肉厚は、0.04〜0.08mmであることが好ましく、特に、0.04〜0.06mmであることが好ましい。そして、刺入部65の長さL1(図5)は、4.0〜12.0mmが好ましく、特に、5.0〜10.0mmが好ましい。なお、刺入部65は、穿刺時にその全体が生体に刺入するもの、先端側部分のみが刺入するもののいずれであってもよい。さらに、穿刺時に後述するテーパー部66の先端部も生体に刺入するものであってもよい。
【0025】
テーパー部66、後端の外径は、刺入部65の外径より、0.05mm以上大きいことが好ましく、具体的には、0.40mm以上、好ましくは、0.55mm以上である。また、テーパー部66の基端の内径は、0.30mm以上であることが好ましく、特に、0.43mm以上であることが好ましい。また、テーパー部66における注射針6の肉厚は、0.04〜0.08mmであることが好ましく、特に、0.04〜0.06mmであることが好ましい。また、テーパー部66の長さL2(図5)は、1.0〜10.0mmが好ましく、特に、2.0〜8.0mmが好ましい。
【0026】
基端部67は、基端の外径が刺入部65の外径より、0.05mm以上大きいことが好ましく、具体的には、0.40mm以上、好ましくは、0.55mm以上である。また、基端部67の基端の内径は、0.30mm以上であることが好ましく、特に、0.43mm以上であることが好ましい。また、基端部67における注射針6の肉厚は、0.04〜0.08mmであることが好ましく、特に、0.04〜0.06mmであることが好ましい。また、基端部67の長さL3(図5)は、3.0〜12.0mmが好ましく、特に、4.0〜10.0mmが好ましい。
【0027】
また、注射針6の先端外径と基端外径の比は、先端外径:基端外径が、1:1.2〜2.5であることが好ましく、特に、1:1.2〜2.0であることが好ましい。また、注射針6の刺入部65の内径と基端部67の基端の内径の比は、刺入部内径:基端内径が、1:1.5〜2.5であることが好ましく、特に、1:1.7〜2.3であることが好ましい。言い換えれば、注射針の基端部の基端の内径は、注射針の穿刺時刺入部の内径の1.5〜2.5倍であることが好ましい。このように、注射針として、先端が細径であるにもかかわらず基端が比較的大きな内径を有することにより、薬剤流動が良好なものとなる。
【0028】
なお、上述した実施例では、注射針6は、刺入部65および基端部67が、ストレート部となっている。しかし、このようなものに限定されるものではなく、基端部67の基端まで、テーパー部となっているものでもよく、さらには、先端から基端まで、テーパー部となっているものであってもよい。
また、注射針6の全長としては、10.0〜30.0mmが好ましく、特に、12.0〜25.0mmが好ましい。
【0029】
さらには、図7に示す針付き外筒10aのように、注射針6aとして、穿刺用針先を有する穿刺時刺入部65の外径が、0.42mm以下、肉厚が0.04mm以下かつ先端から基端までほぼ同一外径にて延びる小径超肉薄注射針を用いるものであってもよい。小径超肉薄注射針6aは、ストレート注射針である。
そして、小径薄肉のストレート注射針としては、外径は、0.42mm以下であり、好ましくは、0.35mm以下である。また、注射針6aの肉厚は、0.04mm以下、具体的には、0.02〜0.04mmであることが好ましい。ストレート注射針であっても上記のような薄肉のものであれば、十分な内径が確保でき、薬剤流動が良好なものとなる。
【0030】
ガスケット4は、ガスケット本体41と、少なくともガスケット本体41の外面であって外筒10の内面と接触する部分に設けられた軟質被膜42とを備えている。なお、ガスケット本体41の外面全体に軟質被膜42を設けてもよい。
ガスケット本体41は、図1図2図8および図9に示すように、ほぼ同一外径にて延びる本体部43と、本体部43の先端側に設けられ先端側に向かってテーパー状に縮径するテーパー部46と、本体部43の基端から先端側に向かって内部に設けられたプランジャー取付部47と、本体部43の先端部側面に設けられた先端側環状リブ44と、本体部43の後端部側面に設けられた後端側環状リブ45を備えている。プランジャー取付部47は、図9に示すように、本体部43の内部において基端から先端部付近まで延びる略円柱状の凹部となっており、凹部側面には、プランジャーの先端部に形成された螺合部と螺合可能な螺合部が設けられている。
【0031】
環状リブ44,45は、外筒10の外筒本体部21の内径より若干大きく作製されているため、外筒10内で圧縮変形するものとなっている。また、実施例において、環状リブは、2つ設けられているが、1つあるいは3つ以上であってもよい。
【0032】
ガスケット本体41の構成材料は、弾性材料であることが好ましい。弾性材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム材料(特に、加硫処理したもの)や、スチレン系エラストマー、水添スチレン系エラストマー、及びこれらスチレン系エラストマーにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンや、流動パラフィン、プロセスオイル等のオイルやタルク、キャスト、マイカなどの粉体無機物を混合したものが挙げられる。さらに、ポリ塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーや、それら混合物等が構成材料として使用できる。構成材料としては、特に、弾性特性を有し、高圧蒸気滅菌が可能などの観点からブチルゴムが好ましく、さらにγ線滅菌、電子線滅菌も可能となるなどの観点からジエン系ゴム、スチレン系エラストマーが好ましい。
【0033】
軟質被膜42は、ガスケット本体41への密着性(難剥離性)と外筒10の内面に対する液密摺動性を有する軟質のものである。なお、このガスケット4(軟質被膜42)は、液密摺動性を有するため、外筒内を充填液体のリークがない液密状態にて、比較的低い初期摺動抵抗および動的摺動抵抗にて摺動可能である。また、軟質被膜42は、ガスケット本体41への密着性、難剥離性を有するため、摺動時における剥離、および外筒内面への張り付きが実質的に生じない。
軟質被膜42は、先端側環状リブ44と基端側環状リブ45部分に設けられていればよいが、図9に示すように、ガスケット本体41の外面側面および先端面の全体に設けられていてもよい。
【0034】
軟質被膜42は、上記性能を有し、薬剤容器の薬剤接触部として使用できるものであれば、どのような手段で形成されたものであってもよい。例えば、蒸着、ラミネート、被覆層形成用液状組成物の塗布や噴霧によって形成することができる。
蒸着であれば、適切な表面性状のガスケット本体41にフッ素そのものやフルオロオレフィン等のフッ素含有モノマーを用いてガスケット本体41に蒸着し軟質被膜42とすることができる。ラミネートであれば、フルオロオフィレンとアクリル酸エステル等の共重合性分との共重合体により形成された滑性および柔軟性に富むフィルムをラミネート層として公知の各種ラミネート手法により積層し、軟質被膜42とすることができる。
【0035】
被覆層形成用液状樹脂組成物を用いる場合は、被覆層を形成する樹脂そのものが液状であればそのまま塗布あるいは噴霧し、固化させることにより、被覆層を形成する樹脂そのものが粘稠体あるいは粉末等固体の場合は水や有機溶媒に懸濁あるいは溶解したものを塗布あるいは噴霧し、固化させることにより軟質被膜42とすることができる。この際、被覆層自体の強度およびガスケット本体への密着強度を良好なものとするため、塗布あるいは噴霧した後、相互に架橋し、かつガスケット本体に対しても共有結合等の強固な結合を行うような官能基を複数有する樹脂を用いることが好ましい。
【0036】
軟質被膜42の形成材料として、ガスケット本体への密着性と外筒内面に対する液密摺動性の保有が良好であるシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。この場合、樹脂軟質被膜42の厚さは、1〜30μm、特に、3〜10μmであることが好ましい。1μm以上であれば、必要な摺動性能を発揮し、30μm以下であれば、ガスケットの弾性に影響を与えることがない。そして、そのようなシリコーン系樹脂としては、有機溶剤で溶解した溶剤系、および水に乳化、分散した水系のいずれも適用できるが、ガスケット材料への影響の点、あるいは薬液収納容器としての適性の点から、水系のものが好ましい。 軟質被膜42は、ガスケット本体41を構成している弾性材料よりも、摩擦係数の低い材料で構成される樹脂で構成されている。そして、軟質被膜42は、ガスケット本体41の外面に塗布された軟質被膜形成用液状物の固化物により形成されていることが好ましい。
【0037】
軟質被膜42としては、末端シラノール基を有する反応性シリコーン系樹脂を含有する組成物からなるものであることが好ましい。また、軟質被膜42は、末端シラノール基を有する反応性シリコーンの縮合物からなりシラノール基に由来するシロキサン結合を有するシリコーン系樹脂を含有する組成物からなるとともに固体微粒子を含まないものであることが好ましい。そして、反応性シリコーン系樹脂を含有する組成物は、熱硬化性型シリコーン系樹脂、常温硬化型シリコーン系樹脂であることが好ましく、特に、作業性などの点より、熱硬化性型シリコーン系樹脂であることが好ましい。
【0038】
反応性シリコーンとしては、末端シラノール基を有するポリジメチルシロキサンであることが好ましい。特に、反応性シリコーンは、両末端にシラノール基を有するものであることが好ましい。そして、反応性シリコーンとして、上述した末端シラノール基を有するポリシロキサン系シリコーンを用いた場合、この反応性シリコーンの縮合物は、主鎖の全体にシロキサン結合を有するものとなる。
【0039】
そして、末端シラノール基を有する反応性シリコーンとしては、具体的には、両末端シラノールポリジメチルシロキサン、両末端シラノールポリジェフェニルシロキサン、両末端シラノールジフェニルシロキサン−ジメチルシロキンサンコポリマーなどの両末端にシラノール基を有するポリシロキサン系シリコーンが好適である。また、反応性シリコーンの形態としては、特に限定されないが、上記のような反応性シリコーンシロキサン化合物、又はその縮合物からなるポリシロキサンを水性媒体に分散、乳化、溶解したもの、さらにアルコキシシリル基含有ビニルモノマ−を必要に応じて他のビニルモノマ−と共重合してなる共重合体エマルジョン、有機重合体にポリシロキサンを複合化させてなるエマルジョンなども使用できる。
【0040】
そして、上記シリコーン系樹脂を形成する樹脂組成物は、シラノール基もしくはシロキサン結合を有する反応性シリコーン系樹脂と異なる第2のシリコーン系化合物を含有していることが好ましい。第2のシリコーン系化合物としては、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルコキシシラン、アルキルフェノキシシラン、アミノアルキルアルコキシシランまたはグリシドキシアルキルアルコキシシランなどが好適である。
【0041】
さらに、上記シリコーン系樹脂を形成する組成物は、アルキルアルコキシシランまたはフェニルアルコキシシランを第2のシリコーン系化合物として含有し、さらに、アミノアルキルアルコキシシランまたは/およびグリシドキシアルキルアルコキシシランを第3のシリコーン系化合物として含有していることが好ましい。
より好ましくは、被覆層を形成する樹脂組成物は、アルキルアルコキシシランまたはフェニルアルコキシシランを第2のシリコーン系化合物として含有し、さらに、アミノアルキルアルコキシシランを第3のシリコーン系化合物として含有し、グリシドキシアルキルアルコキシシランを第4のシリコーン系化合物として含有していることが好ましい。
【0042】
そして、上記シリコーン系樹脂を形成する組成物は、第2および第3のシリコーン系化合物を含有するものであってもよい。第2のシリコーン化合物としては、アルキルアルコキシシラン、アルキルフェノキシシラン、フェニルアルコキシシランより選択することが好ましい。また、第3のシリコーン系化合物としては、アミノアルキルアルコキシシランまたはグリシドキシアルキルアルコキシシランを用いることが好ましい。さらに、被覆層を形成する組成物は、第2、第3および第4のシリコーン系化合物を含有するものであってもよい。第2のシリコーン化合物としては、アルキルアルコキシシラン、アルキルフェノキシシラン、フェニルアルコキシシランより選択することが好ましい。また、第3のシリコーン系化合物としては、アミノアルキルアルコキシシランが好ましく、第4のシリコーン系化合物としては、グリシドキシアルキルアルコキシシランを用いることが好ましい。
【0043】
そして、上記シリコーン系樹脂は、被覆層形成材料液状物(コーティング液)を清浄なガスケット表面に対して塗布させた後、硬化させることで得られる。このとき、ガスケット表面に塗布させる方法としては、浸漬法、噴霧法等、従来公知の方法で行うことができる。特に、被覆対象物を回転(具体的には、100〜600rpm)させた状態にて、被覆液を噴霧塗布(スプレー塗布)することが好ましい。さらに、噴霧塗布を行う場合には、ガスケットの被覆対象部位を60〜120℃程度に加熱処理した後に行うことが好ましい。このようにすることにより、被覆対象表面に対して、撥水することなく、速やかに被覆液が定着する。
【0044】
また、上記シリコーン系樹脂は、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとを触媒の白金を使用して付加反応により硬化させて得られるシリコーンからなるものであってもよい。そして、個体微粒子を含まないものが好ましい。この被覆層の形成に用いられる被覆層形成材料液状物(コーティング液)としては、反応性シリコーンを水に乳化、分散した水系コーティング液のものが好ましい。反応性シリコーンだけでなく、コア部2との密着性を獲得するための、また被覆層の強度を高めるための特定の助剤を処方してもよい。コーティング液は、水性コーティング液であることが好ましく、有効成分として、大きく分けて3種類のものを含有する。反応性シリコーンである成分1、成分1の反応触媒である成分2、軟質被膜42がガスケット本体41からの剥がれ、それ自体が破壊してしまわないための助剤である成分3である。さらに必要に応じて添加剤を配合することができる。(成分1:反応性シリコーン、成分2:成分1の反応触媒及び反応抑制剤、成分3:助剤。)
【0045】
成分1は、成分1aと成分1bとからなる。
成分1aは、軟質被膜42のシリコーンの主成分を含有するポリシロキサンのエマルジョンであり、そのポリシロキサンは一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサンである。一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサンとしては、両末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサン、両末端にビニル基を有するポリ(ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン)、両末端にビニル基を有するポリフェニルメチルシロキサン、両末端にビニルフェニルメチル基を有するポリ(ビニルフェニルシロキサン−フェニルメチルシロキサン)、両末端にビニル基を有するポリ(トリフルオロプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン)、両末端にビニル基を有するポリ(ジエチルシロキサン−ジメチルシロキサン)、両末端がトリメチルシリル基であるポリビニルメチルシロキサン、両末端がトリメチルシリル基であるポリ(ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン)、ポリビニルメトキシシロキサン、ポリビニルエトキシシロキサン、ポリ(ビニルエトキシシロキサン−プロピルエトキシシロキサン)などが挙げられる。
【0046】
成分1bは、上記シリコーン系樹脂のシリコーンの副成分が含有するポリシロキサンのエマルジョンであり、主成分である成分1a中のポリシロキサンと反応して、軟質被膜42のシリコーン中では架橋剤としての役割である。そのポリシロキサンは一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素基を有するポリシロキサンである。一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素基を有するポリシロキサンとしては、両末端にトリメチルシリル基を有するポリメチルハイドロシロキサン、両末端にトリメチルシリル基を有するポリ(メチルハイドロシロキサン−ジメチルシロキサン)、両末端にトリメチルシリル基を有するポリエチルハイドロシロキサン、両末端にトリメチルシリル基を有するポリ(メチルハイドロシロキサン−オクチルメチルシロキサン)などが挙げられる。
【0047】
成分2は、一つは成分1aと成分1bとの反応触媒であり、反応触媒としては、具体的には成分1aのビニル基と成分1bの水素基とのヒドロシリル化を促進するための白金族金属系触媒である。白金族金属系触媒(白金族系触媒)としては、白金系、パラジウム系、ロジウム系などの触媒が挙げられるが、中でも白金系触媒が好ましく、具体的には塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とケトン類との錯体、白金とオレフィンとの錯体やビニルシロキサンとの錯体が挙げられる。
成分3は、上記シリコーン系樹脂がコア部2から剥がれてしまわないため、あるいは、それ自体が破壊してしまわないための助剤であり、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルコキシシラン、アルキルフェノキシシラン、アミノアルキルアルコキシシランまたはグリシドキシアルキルアルコキシシランなどが好適である。
【0048】
ガスケット4は、軟質被膜42を有することにより、摺動面に潤滑剤を付与することなく安定した摺動性を有するとともに、薬剤収納空間内の密封性を維持することができる。よって、軟質被膜42としては、上記機能を備えるものであれば、どのようなものであってもよい。
特に、ガスケットは、初期摺動抵抗値が動的摺動抵抗値の最高値以下であることが好ましい。このようなものであれば、良好な初期摺動が開始できかつ、過剰な初期移動を起こすこともない。
【0049】
また、針付きシリンジ10は、ガスケット4に取り付けられたプランジャー5を有する。なお、プランジャー5は、使用時にガスケットに装着するものであってもよい。
プランジャー5は、本体部51と、本体部51に設けられたガスケット後端面押圧用の平板部54と、平板部54より前方に突出し、ガスケット4のプランジャー取付部47に収納可能な先端部52と、先端部52の外面に設けられ、ガスケット側螺合部と螺合可能なプランジャー側螺合部とを備える。さらに、プランジャー5は、本体部51の後端に設けられた押圧部53と、平板部54付近かつ基端側に設けられた複数の先端部補強部55と、先端部補強部55と押圧部53間に設けられた複数の本体部補強部56を備えている。プランジャー5は、先端部に、平板部を含め複数の補強部を備えることにより、プランジャー押圧時(ガスケット押圧時)における先端部の変形を防止している。
【0050】
シールキャップ3は、図2および図6に示すように、閉塞先端部31と、開口基端部32と、開口基端部32より先端側に位置し注射針取付部22を収納する注射針取付部収納部35と注射針取付部収納部35の先端に連続する注射針収納部34とを備える中空部30と、注射針収納部34に収納された注射針6の穿刺用針先61が刺入可能な刺入可能部33と、注射針取付部収納部35の内面に形成された突出部36とを備える。外筒10の注射針取付部22にシールキャップ3が装着された際に、穿刺用針先61がシールキャップ3の刺入可能部33に刺入し、シールされる。また、突出部36と外筒10の注射針取付部22の環状凹部25とが係合し、かつ、注射針取付部収納部35の内面と注射針取付部22の外面とが密着した状態となる。
【0051】
シールキャップ3の形成材料としては、少なくとも刺入可能部33が、注射針の刺入可能な弾性材料により形成されていることが必要である。注射針の刺入可能な弾性材料としては、例えば、ブチルゴム、イソプレンゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなどのゴム、合成樹脂エラストマー(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなどのエラストマー等が好ましい。
【0052】
また、この実施形態のシールキャップ3では、少なくとも注射針取付部収納部35および刺入可能部33(この実施形態においては、シールキャップの全体)が上述の注射針の刺入可能な弾性材料により形成されたものとなっている。このため、外筒10の注射針取付部22にシールキャップ3が装着された際に、注射針取付部収納部35の内面が、注射針取付部22の環状頭部24の外面に合わせて弾性変形する。これにより、注射針取付部収納部35の内面と注射針取付部22の環状頭部24の外面とが密着した状態となり、外筒10からのシールキャップ3の不本意な離脱がより少なくなる。
なお、シールキャップとしては、注射針の針先に損傷を与えることなく、封止できかつ離脱可能なものであれば、どのようなものであってもよい。また、上記シールキャップ3の注射針取付収納部にさらにシールキャップの先端〜側面を覆う硬質プラスチック製のカバーを設けたリジッドニードルシールドと呼ばれるものを用いてもよい。
【0053】
そして、プレフィルドシリンジ1に充填されている医療用液体7としては、例えば、薬剤を含有する溶液、ゲル、または懸濁液である。使用可能な薬剤は、経皮的な投与に適さない薬剤以外であるならば、実質的に制限されない。
薬剤としては、例えば、蛋白製剤、抗体製剤、ヒアルロン酸、抗菌薬、抗ウイルス薬、ワクチン、抗腫瘍薬、免疫抑制薬、ステロイド薬、抗炎症薬、抗リウマチ薬、関節炎治療薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、糖尿病治療薬、成長ホルモンなどのホルモン剤、骨カルシウム代謝薬、ビタミン、血液製剤、造血薬、抗血栓薬、抗高脂血症薬、抗不整脈薬、血管拡張薬、プロスタグランジン、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、βブロッカー、降圧薬、利尿薬、キサンチン誘導体、βアゴニスト、抗喘息薬、鎮咳薬、去痰薬、抗コリン薬、止寫薬、健胃消化薬、抗潰瘍薬、下剤、睡眠薬、鎮静薬、解熱剤、かぜ薬、抗てんかん薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、中枢神経刺激薬、副交感神経作用薬、交感神経作用薬、制吐剤、中枢興奮薬、抗パーキンソン病薬、筋弛緩薬、鎮痙薬、麻酔薬、鎮痒薬、抗片頭痛薬、オリゴヌクレオチド、遺伝子薬、などが挙げられる。特に、本発明の針付きシリンジは、粘度が10mPa・s以上の薬剤に用いた場合に特に有効である。
【0054】
次に、本発明の医療用液体投与具100について、図10ないし図15に示す実施例を用いて説明する。
この実施例の医療用液体投与具100は、オートインジェクタと、オートインジェクタに装着された上述したプレフィルドシリンジとを備える。
そして、この医療用液体投与具100のオートインジェクタは、筒状シース106と、筒状シース106内に収納されたガスケット押圧手段102と、プレフィルドシリンジ1を収納するプロテクタ103と、ガスケット押圧手段102の移動を規制する規制手段107とを備える。さらに、医療用液体投与具100は、プロテクタ103が注射針6の針先61を収納した注射針収納状態(第1の状態)と、筒状シース106が先端側に移動することにより針先61がプロテクタ103より突出し、かつガスケット押圧手段102により、ガスケット4が先端方向に移動可能となる投与可能状態(言い換えれば、液体吐出準備完了状態、第2の状態)と、ガスケット押圧手段102による押圧によりガスケット4が先端方向に移動し、注射針6より医療用液体7が吐出される投与状態(言い換えれば、液体吐出状態、第3の状態)と、筒状シース106が基端側に移動し、プロテクタ103内に注射針6の針先61が収納される注射針再収納状態(第4の状態)とを取り得るものとなっている。
【0055】
プロテクタ103は、その側壁に設けられ、弾性変形する外側係合片133を有する。係合用筒状部材125は、その基端部に設けられ、注射針再収納状態で外側係合片に係合し、弾性変形する内側係合片252を有する。ガスケット押圧手段102は、注射針再収納状態で内側係合片252を外側に向かって押圧して変形させる係合用筒状部材125を有し、注射針再収納状態では、内側係合片が係合用筒状部材125により外側に向かって押されて外側係合片に係合し、これにより、プロテクタの基端方向への移動を禁止している。
この医療用液体投与具100では、穿刺操作用のボタン等の設置を省略することができ、構造が簡単なものとなっている。さらに、穿刺後に係合用筒状部材125の先端方向への再移動を禁止することができ、よって、注射針の針先が再度プロテクタの先端開口から突出するのが防止される。
【0056】
ガスケット押圧手段102は、プレフィルドシリンジ1のガスケット4の後端部に先端部が接続されるガスケット押圧部材124と、プレフィルドシリンジ1の外筒10の基端側部分に装着される係合用筒状部材125を備える。また、プロテクタ103の筒状先端部136は、筒状シース106より突出している。
そして、この実施例の医療用液体投与具100では、図10および図12の状態(シールキャップ離脱状態)では、針先61を含む注射針6の全体は、医療用液体投与具100の先端部を構成するプロテクタ103内に収納されている。針先61は、プロテクタ103の筒状先端部136内に位置している。
【0057】
そして、医療用液体投与具100の筒状先端部136を投与対象部位に押し当て、第2の付勢部材105の付勢力を越える力にて、筒状シース106を投与対象部位方向に押すことにより、筒状シース106は先端側に移動する。言い換えれば、医療用液体投与具の全体から見た場合、相対的に、プロテクタ103が基端方向に後退する。これにより、筒状シース106およびそれに固定されている第1の規制部材171、ガスケット押圧手段102およびプレフィルドシリンジ1が前進し、図13に示すように、注射針6が突出し、投与対象部位に穿刺される。これと同時に、第2の規制部材172によるガスケット押圧部材124の移動規制が解除され、ガスケット押圧部材124が第1の付勢部材104により押圧され前進し、図14に示すように、ガスケット4を押圧し、プレフィルドシリンジ1内の医療用液体7が注射針6を通り、生体に注入される。そして、投与完了後、図15に示すように、筒状シース106の穿刺対象部位への押圧を解除することにより、第2の付勢部材105により、シリンジ1が押し戻され、基端側に移動する。これにより、注射針6は、プロテクタ103内に再び収納される。
【0058】
この実施例の医療用液体投与具100では、図11に示すように、係合用筒状部材125は、シリンジ1の外筒10の基端部外周部を覆う筒状部251を有している。この筒状部251の基端面により、外筒10のフランジ23が係止され、外筒10の係合用筒状部材125に対する先端方向への移動を規制している。そして、筒状部251の基端開口部の縁部には、基端方向に向かって突出する2枚の内側係合片252がそれぞれ形成されている。これらの内側係合片252は、筒状部251の中心軸に対して向かい合うように形成されている。
【0059】
そして、各内側係合片252は、弾性変形可能であり、互いに接近および離間可能となっている。また、各内側係合片252は、基端の外面に外側に向かって突出する爪253を有している。爪253は、装着されたシリンジ1の外筒10のフランジ23よりも基端側に位置する。この爪253は、図11に示すように、後述するプロテクタ103の外側係合片133と係合可能なものとなっている。また、係合用筒状部材125は、筒状部251の外周部に軸方向に延びかつ突出する2つのガイド部254を備えている。2つのガイド部254は、筒状部251の中心軸に対して向かい合うように形成されている。また、2つのガイド部254と2枚の内側係合片252は、軸方向に重ならないように配置されている。具体的には、2つのガイド部254の中央を結ぶ仮想線と2枚の内側係合片252の中央を結ぶ仮想線が、ほぼ直交するものとなっている。
【0060】
この実施例の医療用液体投与具100では、図11に示すように、ガスケット押圧部材124は、先端にガスケット接続部240を有し、先端側部分が外筒10内に進入可能な長尺状かつ中空状の本体部241と、本体部241の基端部の側面に、向かい合うように形成された2つの押圧用突出部242と、環状係合部243とを有している。なお、係合部243は、押圧用突出部242の先端付近に設けられている。各押圧用突出部242は、上述した係合用筒状部材125の内側係合片252を外側に押圧して変形させるために設けられている。
【0061】
図11に示すように、各押圧用突出部242は、所定幅にて所定長本体部241の軸方向に延びるものとなっており、かつ、その先端側の部分に先端方向に向かって突出高が小さくなる傾斜面245を備えている。このため、ガスケット押圧部材124が先端方向に向かって移動したときに、2つの押圧用突出部242が係合用筒状部材125の2枚の内側係合片252の間への進入を容易なものとしている。なお、2つの押圧用突出部242間の最大距離は、外力を付与しない自然状態での2枚の内側係合片252間の最小距離よりも大きいものとなっている。また、環状係合部243は、後述する規制手段107の一部を構成する。また、係合部243も押圧用突出部242の傾斜面245と同じように、先端側に向かって縮径する環状傾斜面を備えている。
【0062】
そして、医療用液体投与具100は、プレフィルドシリンジ1を装着したガスケット押圧手段102を部分的に被包する軸方向に延びるプロテクタ103を備えている。図11に示すように、プロテクタ103は、断面円弧状で所長延びる樋状側壁部131を向かい合うように2つ備えている。そして、2つの樋状側壁部131間には、所定幅を有し所定長延びる一対の側部開口部132が形成されている。また、プロテクタ103は、2つの樋状側壁部131の先端と連結した筒状先端部136と、筒状先端部136の外面と樋状側壁部131の先端間により形成された段差部137を備えている。
【0063】
また、プロテクタ103の樋状側壁部131は、中央部から基端側に延びる逆U字状(言い換えれば、開口部が下を向いた「コ」字状)に形成された2つのスリット134を備えている。これら2つのスリット134は、プロテクタ103の中心軸に対して向かい合うように形成されている。そして、各スリット134で囲まれた部分が、弾性変形可能な外側係合片133を形成している。外側係合片133は、ガスケット押圧手段102の内側係合片252と係合可能となっている。
【0064】
また、プロテクタ103の筒状先端部136の開口端351は、医療用液体投与具100を用いて医療用液体を生体に投与する際に、生体表面への当接部となる。
そして、プロテクタ103は、図12ないし図15に示す4つの状態を取り得る。
注射針収納状態では、図10および図12に示すように、プレフィルドシリンジ1が医療用液体を収納し、かつ、プロテクタ103の先端開口135が、注射針6の針先61よりも先端側に位置し、注射針6が露出しない状態である。投与可能状態は、図13に示すように、プロテクタ103が基端側に移動し、注射針6の針先61がプロテクタ103の先端開口135から突出し、ガスケット4が先端方向に向かって移動可能な状態である。
【0065】
投与状態は、図14に示すように、ガスケット4の先端方向への移動により、注射針6を介して医療用液体が排出される状態である。注射針再収納状態は、図15に示すように、再度プロテクタ103の先端開口135が注射針6の針先61よりも先端側に位置し、注射針6を再収納した状態である。そして、この注射針再収納状態では、係合用筒状部材125の内側係合片252がガスケット押圧部材124の各押圧用突出部242で外側に向かって押されてプロテクタ103の外側係合片133に係合し、これにより、プロテクタ103の基端方向への移動が規制される。
【0066】
そして、この実施例の医療用液体投与具100は、第1の付勢部材104と、第2の付勢部材105を備えている。第1付勢部材104は、ガスケット押圧部材124内に収納されている。第1付勢部材104としては、ガスケット押圧部材124の軸方向に延びるコイルバネが用いられている。第2付勢部材105は、プロテクタ103の先端部内に収納されている。第2付勢部材105は、プロテクタ103の軸方向に延びるコイルバネが用いられている。コイルバネ105は、その先端がプロテクタ103の先端内面に設けられた内側環状リブと当接し、その基端は、係合用筒状部材125の先端に当接するものとなっている。
そして、コイルバネ104は、図14に示す投与状態で、ガスケット押圧部材124を介してガスケット4を先端方向に向かって付勢する。コイルバネ105は、図12に示す注射針収納状態で、プロテクタ103の先端開口135が針先61よりも先端側に位置するように、プロテクタ103を先端方向に向かって付勢し、図15に示す注射針再収納状態となる際に、プロテクタ103を先端方向に付勢する。
【0067】
コイルバネ104は、ガスケット押圧手段102のガスケット押圧部材124内に圧縮状態にて配置されている。そして、コイルバネ104は、その先端141がガスケット押圧部材124の本体部241の閉塞した内腔先端部に当接し、基端142が、コイルバネ104を挿通する座屈防止部材108の基端部に形成されたフランジ181に当接している。これにより、ガスケット4を先端方向に向かって確実に付勢する。なお、座屈防止部材108は、コイルバネ104が収縮した際におけるコイルバネ104の座屈、すなわち、折れ曲がりを防止する。座屈防止部材108は、コイルバネ104内に挿入可能な棒状部材である。
【0068】
コイルバネ105は、プロテクタ103の先端部内に圧縮状態にて収納されている。コイルバネ105の基端部内には、シリンジ1の先端部が進入している。また、コイルバネ105は、その先端151がプロテクタ103の先端開口135の縁部の基端側に当接し、基端152が係合用筒状部材125に当接している。これにより、コイルバネ105は、プロテクタ103を後端方向に確実に付勢する。
【0069】
規制手段107は、図12に示す注射針収納状態では、ガスケット押圧手段102のガスケット押圧部材124の先端方向への移動を規制し、図13に示す投与可能状態では、ガスケット押圧部材124に対する規制を解除するものとなっている。この実施例では、規制手段107は、その先端面が外筒10の基端面に当接するように、かつ外筒10に対し固定的に設けられた管状の第1規制部材171と、第1規制部材171の外周側に移動可能に配置されたリング状の第2規制部材172とにより構成されている。
【0070】
図11に示すように、第1規制部材171は、断面円弧状で所長延びる樋状側壁部711を向かい合うように2つ備えている。そして、第1規制部材171は、2つの樋状側壁部711間により形成され、その先端面712から所定長長手方向に延びる一対の側部開口部173を備えている。そして、各側部開口部173には、ガスケット押圧部材124の押圧用突出部242が進入される。そして、ガスケット押圧部材124の係合部243と樋状側壁部711に設けられた後述する弾性片175とは、ガスケット押圧部材124の同じ周方向部位に位置するものとなっている。また、ガスケット押圧部材124が移動する際、移動するガスケット押圧部材124は、押圧用突出部242と側部開口部173とにより案内される。
また、第1規制部材171の各樋状側壁部711には、スリット174が形成されている。スリット174は、平行に並んだ3本の軸方向スリットと、隣接する軸方向スリット同士を連結する2本の周方向スリットを備えている。そして、スリット174で囲まれた部分が、弾性変形可能な弾性片175、176となっている。
【0071】
弾性片175は、弾性変形可能であり、ガスケット押圧部材124の係合部243に対し接近および離間可能となっている。また、弾性片175の内面には、突部751が形成されており、さらに、その突部の基端部には、基端に向かって突出高が減少する傾斜面752が形成されている。この傾斜面が、上述したガスケット押圧部材124の係合部243の傾斜面245と当接する。これにより、ガスケット押圧部材124の先端方向への移動に伴って、弾性片175の傾斜面に外側への力がかかるため、弾性片175は外側に向かってに容易に変形して係合部243から離間する。また、第1の規制部材171の各樋状側壁部711は、筒状シース106の後端部内に収納されており、かつ、第1の規制部材171は、後端部において筒状シース106に固定されている。
【0072】
第2規制部材172は、その内周面が弾性片175の外面と接する規制位置から、弾性片175よりも基端側に位置する解除位置まで移動可能となっている。さらに、第2規制部材172の先端面は、プロテクタ103の基端面と接している。これにより、プロテクタ103の基端方向へ移動に伴って、第2規制部材172は基端方向へ移動する。
【0073】
第1規制部材171の弾性片176は、弾性変形可能であり、第2規制部材172の基端面に対し接近および離間可能となっている。また、弾性片176は、その基端部に外面に設けられた突部を備えている。さらに、その突部の先端部には、先端方向に向かって突出高が減少する傾斜面を備えている。これにより、第2規制部材172の基端方向への移動に伴って、傾斜面に内側への力がかかるため、弾性片176は内側に向かってに容易に変形して第2規制部材172の基端面から離間する。
【0074】
そして、図12に示す注射針収納状態では、第1規制部材171の弾性片175は、プランジャー押圧部材124の環状係合部243と係合している。また、第2規制部材172は、規制位置にあり、弾性片175の外側への変形を規制している。さらに、弾性片176の突部(図示せず)は、第2規制部材172の基端面と係合し、第2規制部材172の基端方向への意図しない移動を防止している。これにより、弾性片175と係合部243との係合状態が維持され、ガスケット押圧部材124は、先端方向に移動しないものとなっている。
そして、図13に示す投与可能状態とするためには、プロテクタ103が基端方向に移動し、弾性片176が内側に向かって変形することにより、第2規制部材172の基端面との係合が解除される。そして、第2規制部材172は、解除位置まで基端方向へ移動する。そして、弾性片175が外側に向かって変形することで、弾性片175と係合部243との係合が解除され、ガスケット押圧部材124が先端方向へ移動可能な状態となる。
【0075】
また、第2規制部材172が解除位置にあるとき、コイルバネ104の付勢力は、係合部243を介して弾性片175を外側に向かって変形させて、弾性片175と係合部243との係合を解除するのに十分な大きさに設定されている。これにより、コイルバネ104でガスケット押圧部材124を先端方向へ確実に押し進めることができる。
そして、筒状シース106は、プロテクタ103を軸方向に摺動可能に収納している。筒状シース106の後端部は、第1の規制手段171に固定されている。また、筒状シース106には、軸方向に延びる膨出部164を向かい合うように2つ備えている。また、シース106は、窓部165を備えている。また、図11に示すように、筒状シース106は、内面に軸方向に延びる2本の溝163を備えている。
【0076】
この実施例では、溝163は、膨出部164の内側に形成されている。溝163は、筒状シース106の中心軸に対して向かい合うように形成されている。ガスケット押圧部材124の押圧用突出部242によりプロテクタ103の外側係合片133が外側に向かって押し広げられる際に、外側係合片133が溝163に進入するため、ガスケット押圧部材124は、円滑に移動可能である。
また、筒状シース106の先端開口の内径は、縮径している。この縮径した先端開口161の内部に、プロテクタ103の段差部137が当接する。これにより、プロテクタ103の筒状シース106の先端からの離脱が防止されている。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
シリンジ用外筒の形成材料として、環状オレフィン樹脂(商品名:ゼオネックス(登録商標)、日本ゼオン株式会社製)を用いて、後述する注射針を用いてインサート成形により図6に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、6.3mm、長さは、64mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレンを用いて、射出成形により、図1および図2に示す形状のプランジャーを作製した。
【0078】
注射針として、先端外径0.34mm、先端内径0.24mm、基端外径0.41mm、基端内径0.31mm、全長14mmのステンレス鋼製のテーパー針を作成した。このテーパー針は、ほぼ同一外径にて約6.5mm延びる先端部と、ほぼ同一外径にて約4.5mm延びる基端部と、先端部と基端部間に約3mmのテーパー部を有していた。このテーパー針の内面の平均粗度(Ra)は、0.3μm未満であった。
【0079】
そして、この注射針を用いて、インサート成形により、図2ないし図5に示すような形態を有する針付き外筒を作成した。
そして、ブチルゴムを用いて、図8および図9に示す形状のシリンジ用ガスケットのガスケット本体を作製した。ガスケット本体は、ブチルゴムに添加剤を配合した加硫性ゴム組成物をプレス成形することにより行なった。得られたガスケット本体の形状は、長さ7.5mm、先端側及び後端側環状リブ部分での外径6.8mm、内側に雌ねじ部を有するプランジャー取付用凹部を有するものであった。
【0080】
次に、精製水66重量部に、シリコーン系樹脂29重量部、ジオクチルジラウリル酸スズ1重量部を添加して、ガスケット用被覆液を調製した。なお、シリコーン系樹脂は以下のものを、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いて混合した。
1)主成分が両末端シラノールポリジメチルシロキサンである製品名1501Fluid(東レ・ダウコーニング株式会社製)25重量部
2)主成分がメチルトリメトキシシランである製品名Z−6366(東レ・ダウコーニング株式会社製)0.1重量部
3)主成分が3−アミノプロピルトリエトキシシランである製品名Z−6011(東レ・ダウコーニング株式会社製)とマレイン酸無水物のエタノール溶液の混合物1重量部(樹脂率は50%)
4)主成分が3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである製品名Z−6040(東レ・ダウコーニング株式会社製)0.5重量部
【0081】
そして、室温、常圧環境下において、上述のように作製したガスケット本体を、90℃、30分間加熱処理した後、その中心軸を中心として回転(300rpm)させるとともに、ガスケットの回転する側面側より、上記組成の被覆液をスプレー塗布した後、150℃、30分間乾燥させることによって、本発明のガスケットを作製した。その後、作製したガスケット上の余分な被覆液を洗うために、80℃以上の精製水で、洗浄を実施した。なお、ガスケット本体の表面に形成された被覆層の平均厚さは、約8μmであった。
上記針付き外筒、ガスケットおよびプランジャーを用いて、本発明の針付きシリンジ(実施例1)を作成した。
【0082】
(比較例1)
注射針として、外径0.34mm、内径0.24mm、肉厚0.05mmのステンレス鋼製の薄肉ストレート針を用いた以外は、実施例1と同様に行い、針付きシリンジ(比較例1)を作成した。
(比較例2)
ガスケットとして、実施例1のガスケット本体(被覆層を持たない)にシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング製)を塗布したもの用いた以外は、実施例1と同様に行い、針付きシリンジ(比較例2)を作成した。
【0083】
(比較例3)
注射針として、外径0.34mm、内径0.24mm、肉厚0.05mmのステンレス鋼製の薄肉ストレート針を用い、ガスケットとして、実施例1のガスケット本体(被覆層を持たない)にシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング製)を塗布したものを用いた以外は、実施例1と同様に行い、針付きシリンジ(比較例3)を作成した。
【0084】
(実験1)
分子量20,000のポリエチレングリコール(商品名:ポリエチレングリコール 20,000、和光純薬工業製)6.45gを、水30mLを溶解し、粘度47.5mPa・s)の粘度調整液を作成した。なお、粘度は振動式粘度計(機種名 VISCOMATE VM−100A、株式会社セコニック、CBC株式会社製)を用いて測定した。
【0085】
そして、実施例1,比較例1ないし3に上記の粘度調整液1.2mlを充填し、40℃で2日間保存したものを準備した。各シリンジの摺動抵抗値を、万能試験機(機種名 EZ−Test、会社名 島津製作所)により測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端をオートグラフの測定対象物固定部に固定し、プランジャーを200mm/minの速度で30mm降下(ロードセル500N)させたときの初期摺動抵抗値及び最大摺動抵抗値(N)を計測したところ、表1に示すような結果となった。
【0086】
表1
初期摺動値 最大摺動抵抗値
実施例1 2.1N 19.9N
比較例1 1.8N 31.2N
比較例2 5.8N 24.0N
比較例3 5.8N 32.5N
【0087】
本実験の結果、実施例1のシリンジは、初期摺動値が十分低く、かつ、すべての比較例のシリンジに比べて、動的摺動抵抗値が低く、投与作業が容易に行えるものであることがわかった。
【0088】
(実施例2)
注射針として、先端部外径0.33mm、先端部内径0.23mm、基端部外径0.56mm、基端部内径0.46mm、全長22.1mmのステンレス鋼製のテーパー針を作成した。このテーパー針は、ほぼ同一外径にて8.7mm延びる先端部と、ほぼ同一外径にて7.9mm延びる基端部と、先端部と基端部間に5.5mmのテーパー部を有していた。内面の平均粗度(Ra)は、0.3μm未満であった。
注射針として、上記のテーパー針を用いた以外は、実施例1と同様に行い、針付きシリンジ(実施例2)を作製した。
【0089】
(比較例4)
注射針として、外径0.33mm、内径0.23mm、肉厚0.05mmのステンレス鋼製の薄肉ストレート針を用いた以外は、実施例1と同様に行い、針付きシリンジ(比較例4)を作製した。
【0090】
(実験2)
[試験液の準備]
・試験液Aの作成
グリセリン(関東化学株式会社製)22.5gを水27.5mLに溶解して、試験液A(粘度3.987mPa・s)を作成した。
・試験液Bの作成
試験液Aの作成にて用いたものと同じグリセリン35gを水15mLに溶解して、試験液B(粘度17.55mPa・s)を作成した。
・試験液Cの作成
試験液Aの作成にて用いたものと同じグリセリン42.5gを水7.5mLに溶解して、試験液B(粘度74.01mPa・s)を作成した。
【0091】
・試験液Dの作成
気管支喘息治療剤[ヒト化抗ヒトIgEモノクロナール抗体(オマリズマブ)製剤]であり、バイアル瓶に収納されているゾレア皮下注用150mg(ノバルティスファーマ株式会社製)を準備した。上記薬剤に、注射用蒸留水2.5mlを添加して、試験液D(粘度9.456mPa・s)を作成した。
・試験液Eの作成
試験液Dの作成にて用いたものと同じ薬剤に、注射用蒸留水2.0mlを添加して、試験液E(粘度18.37mPa・s)を作成した。
【0092】
・試験液Fの作成
試験液Dの作成にて用いたものと同じ薬剤に、注射用蒸留1.4mlを添加して、試験液F(粘度72.30mPa・s)を作成した。
・試験液Gの作成
試験液Dの作成にて用いたものと同じ薬剤に、注射用蒸留水1.0mlを添加して、試験液G(粘度269.6mPa・s)を作成した。
【0093】
なお、粘度は振動式粘度計(機種名 VISCOMATE VM−100A、株式会社セコニック、CBC株式会社製)を用いて測定した。
そして、実施例2,比較例4に上記の各試験液1.2mlを充填したもの、を各3本 準備した。各シリンジの摺動抵抗値を、万能試験機(機種名 EZ−Test、会社名 島津製作所)により測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端を万能試験機の測定対象物固定部に固定し、押出速度6ml/minの速度にて、押し出したときの最大摺動抵抗値(N)を計測したところ、表2に示すような結果となった。
【0094】
表2
粘度(mPa・s) 実施例2 比較例4
試験液A 3.987 4.54±0.34N 6.69±0.16N
試験液B 17.55 10.52±0.60N 18.27±0.14N
試験液C 74.01 34.63±2.38N 70.14±0.53N
試験液D 9.456 5.30±0.07N 8.19±0.10N
試験液E 18.37 8.21±0.46N 13.15±0.09N
試験液F 72.30 17.35±0.14N 31.13±0.66N
試験液G 269.6 34.96±0.75N 65.01±1.43N
【0095】
本実験の結果、実施例2のシリンジは、比較例4のシリンジに比べて、最大摺動抵抗値が低く、投与作業が容易に行えるものであることがわかった。また、比較的粘度が近い、試験液Bと試験液E、試験液Cと試験液Fを対比することにより、最大摺動抵抗値は、粘度のみに依存するものではなく、含有する成分にも依存することがわかった。特に、試験液AないしCのダミー液より、実際の薬剤(抗体医薬)を用いた試験液DないしGにおいて、実施例2のシリンジは、比較例4のシリンジに比べて、最大摺動抵抗値が低く、より顕著な効果を持つことが確認できた。また、抗体医薬もタンパク製剤の一種であり、タンパク製剤においても同様の効果を持つものと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の針付きシリンジは、以下のものである。
(1) 外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた針固定部とを備える外筒と、先端に穿刺用針先を有し、前記外筒の前記針固定部に基端部が固定された注射針と、前記外筒内に収納され、かつ前記外筒内を液密状態にて摺動可能なガスケットとを有する針付きシリンジであって、前記注射針は、前記穿刺用針先を有する穿刺時刺入部の外径が、0.42mm以下、肉厚が0.1mm以下かつ前記穿刺時刺入部より外径が大きい基端を有するテーパー部保有注射針、または前記穿刺用針先を有する穿刺時刺入部の外径が、0.42mm以下、肉厚が0.04mm以下かつ先端から基端までほぼ同一外径にて延びる小径超肉薄注射針であり、前記外筒は、内面に潤滑剤が塗布されておらず、前記ガスケットは、弾性体からなるガスケット本体と、少なくとも前記外筒の内面と接触する部分に設けられ、前記外筒内面に対する液密摺動性を有する軟質被膜とを備える針付きシリンジ。
【0097】
この針付きシリンジでは、注射針が上記のテーパー部保有注射針または小径肉薄注射針であり、外筒は、内面に潤滑剤が塗布されておらず、ガスケットは、上記の外筒内面に対する液密摺動性を有する軟質被膜を備えるため、高濃度もしくは高粘度の薬液を低い注入抵抗にて、かつ、低いガスケット押圧力により投与可能であり、かつ、充填される医療用液体の潤滑剤に起因する変性がない。
【0098】
(2) 前記針付きシリンジは、前記外筒内での前記ガスケットの初期摺動抵抗値が動的摺動抵抗値の最高値付近もしくは以下である上記(1)に記載の針付きシリンジ。
(3) 前記注射針は、内面の平均粗度(Ra)が、0.3μm未満である上記(1)に記載の針付きシリンジ。
(4) 前記テーパー部保有注射針は、前記基端の外径が前記穿刺時刺入部の外径より、0.05mm以上大きいものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の針付きシリンジ。
(5) 前記テーパー部保有注射針は、ほぼ同一外径にて所定長延びる前記穿刺時刺入部と、前記穿刺時刺入部の基端より、後端に向かってテーパー状に拡径するテーパー部とを備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の針付きシリンジ。
【0099】
(6) 前記テーパー部保有注射針は、ほぼ同一外径にて所定長延びる前記穿刺時刺入部と、前記穿刺時刺入部の基端より、後端に向かってテーパー状に拡径するテーパー部と、前記テーパー部よりほぼ同一外径にて所定長延びる基端部を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の針付きシリンジ。
(7) 前記軟質被膜は、前記ガスケット本体の外面に塗布された軟質被膜形成用液状物の固化物により形成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の針付きシリンジ。
(8) 前記外筒は、合成樹脂製である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の針付きシリンジ。
(9) 前記テーパー部保有注射針は、前記テーパー部の基端側部分において、前記外筒の前記針固定部に固定されている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の針付きシリンジ。
(10) 前記シリンジは、前記ガスケットを押圧するためのプランジャーを備えている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の針付きシリンジ。
【0100】
また、本発明のプレフィルドシリンジは以下のものである。
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の針付きシリンジと、前記注射針の先端部を封止するシールキャップと、前記シリンジ内に充填された医療用液体とからなるプレフィルドシリンジ。
このプレフィルドシリンジは、上述した針付きシリンジを用いるものであるので、上述した効果を備える。
(12) 前記医療用液体は、粘度が10mPa・s以上である上記(11)に記載のプレフィルドシリンジ。
(13) 前記医療用液体は、蛋白製剤である上記(11)または(12)に記載のプレフィルドシリンジ。
【0101】
また、本発明の医療用液体投与具は以下のものである。
(14) オートインジェクタと、前記オートインジェクタに装着された上記(11)ないし(13)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジとからなる医療用液体投与具。
この医療用液体投与具が、上述の針付きシリンジを用いるものであるので、上述した効果を備える。
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