(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二オリゴヌクレオチドが、3'−末端に前記第一核酸の4つの異なるSNPに特異的な別々のヌクレオチドをそれぞれ有する4つのオリゴヌクレオチドである請求項1記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語は、一般的に、本発明が属する技術分野の当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。本開示全体を通して参照されるすべての特許、特許出願および刊行物は、その全体が本明細書中に参照により組み入れられる。本明細書中の用語の定義が複数ある場合には、本項の定義が優先する。
【0024】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかであるヌクレオチドの多量体型を意味し、少なくとも2、または通常約5〜約200、またはより一般的には約100までの長さの、天然および非天然ヌクレオチドを包含する。したがって、この用語は、二本鎖および一本鎖DNAおよびRNAを含む。また、オリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性とすることができ、2'−O−メチルリボヌクレオチド、ホスホロチオエートヌクレオチド、ホスホロジチオエートヌクレオチド、ホスホルアミデートヌクレオチド、およびメチルホスホネートヌクレオチドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書で使用される用語「標的」、「標的配列」または「標的核酸」は、精製、単離、捕捉、固定化、増幅、同定、検出、定量、質量決定および/または配列決定などが望まれる、目的のポリヌクレオチド配列を含む核酸を意味する。標的配列は、その実際の配列の点では、既知であっても未知であってもよい。
【0026】
本明細書で使用される用語「プライマー」または「プライマー配列」は、増幅すべき各特定の配列に実質的に相補的であるように選択された配列を含む核酸である。より具体的には、プライマーはそれらのそれぞれの標的にハイブリダイズするために十分に相補的である。したがって、プライマー配列は、標的の正確な配列を反映する必要はない。非相補的な塩基またはより長い配列を、プライマー中に散在させることができるが、プライマー配列が標的核酸の配列に十分に相補的であり、ハイブリダイゼーションおよび伸長が可能であることが条件である。
【0027】
さらに、プライマーは、ヌクレアーゼ耐性とすることができ、エキソヌクレアーゼによる分解を防止するために修飾されたプライマーを含む。いくつかの実施形態において、プライマーは、3'または5'エキソヌクレアーゼ活性から保護するために修飾されている。そのような修飾には、2'−O−メチルリボヌクレオチド修飾、ホスホロチオエート骨格修飾、ホスホロジチオエート骨格修飾、ホスホロアミデート骨格修飾、メチルホスホネート骨格修飾、3'末端リン酸修飾および3'アルキル置換が挙げられるが、それらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、増幅反応において使用されるプライマーおよび/またはプローブは、1つ以上の修飾により、3'および/または5'エキソヌクレアーゼ活性から保護される。
【0028】
当業者は、標的配列の伸長のために適切であるプライマーを設計し製造することができる。本明細書で提供される方法および組成物における使用のためのプライマーの長さは、ヌクレオチド配列同一性や、これらの核酸がハイブリダイズされ、またはインビトロでの核酸伸長の間に使用される温度等のいくつかの要因に依存する。特定の配列同一性のプライマーの好ましい長さを決定するのに必要な検討事項は当業者に知られている。
【0029】
用語「支持体」または「固体支持体」とは、マイクロタイターウェル、ビーズ、粒子または繊維等のポリマー、および、スライドガラスまたはチューブなどのシランまたはケイ酸塩支持体等の従来支持体を意味し、そこに第一および第二オリゴヌクレオチドなどの捕捉分子が共有結合または非共有結合される。
【0030】
本明細書で使用される用語「試料」は、限定されるものではないが、生物の任意の部分から得られた血液、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、涙または唾液、尿、精液、糞便、喀痰、嘔吐物、胃吸引液、気管支吸引液、スワブ(鼻咽頭、直腸、眼、尿生殖器等)、臓器、筋肉、骨髄、FFPE組織、皮膚、腫瘍および/または細胞などのヒトまたは動物から単離された組織または液体;植物材料、細胞、流体等;個々の細菌、細菌の群やその培養物;食品;化粧品;薬/医薬品;バイオプロセスを経由して調製された材料(完成品及び中間原料);水;限定されるものではないが、土壌、水、空気などの環境試料;上述された源由来の半精製または精製された核酸;限定されるものではないが、次世代配列決定、試料プロセッシング、ヌクレアーゼ消化、制限酵素消化、複製等の配列決定のためのテンプレート形成のようなプロセスの結果である核酸等、を含むが、これらに限定されるものではなく、本質的に所望の標的核酸を含むあらゆる試料を意味する。
【0031】
本明細書で使用される用語「増幅すること(amplifying)」または「増幅(amplification)」とは、完全な標的核酸配列またはその一部と同一または相補的である核酸鎖、または標的核酸配列の代用として機能するユニバーサル配列を生成するプロセスを意味する。本明細書で使用される用語「同一」とは、別の核酸と同じまたは実質的に同じヌクレオチド配列を有する核酸を意味する。
【0032】
本明細書で使用される用語「固定される(affixed)」とは、第一および第二オリゴヌクレオチドなどの固体支持体への(各)分子の結合を意味する。本技術分野で一般に知られている多種多様な方法を結合のために使用することができる。1つの好ましい方法は共有結合である。
【0033】
本明細書で使用される用語「核酸」は、標準的なホスホジエステル結合または他の結合によって共有結合された含窒素複素環式塩基または塩基類似体を有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含むオリゴヌクレオチドを含むポリヌクレオチド化合物を意味する。核酸としては、RNA、DNA、キメラDNA−RNAポリマー又はそれらの類似体などが挙げられる。核酸では、骨格は、1つ以上の糖−ホスホジエステル結合、ぺプチド−核酸(PNA)結合(国際公開第95/32305号)、ホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合、またはそれらの組み合わせなどの種々の結合で構成される。核酸中の糖部分は、リボース、デオキシリボース、または2'メトキシおよび2'ハロゲン化物(2'−F等)置換等の置換を有する類似化合物である。
【0034】
窒素含有塩基は、従来の塩基(A、G、C、T、U)、イソシトシンおよびイソグアニンなどの非天然ヌクレオチド、それらの類似体(例えばイノシン;The Biochemistry of the Nucleic Acids 5-36, Adams et al., ed., 11th ed., 1992)、プリンまたはピリミジン塩基の誘導体(例えば、N
4−メチルデオキシグアノシン、デアザ−またはアザ−プリン、デアザ−またはアザ−ピリミジン、様々な化学的な位置のいずれかで変更されたまたは交換された置換基を有するピリミジンまたはプリン、例えば、2−アミノ−6−メチルアミノプリン、O
6−メチルグアニン、4−チオ−ピリミジン、4−アミノピリミジン、4−ジメチルヒドラジン−ピリミジン、およびO
4−アルキルピリミジン、または非置換又は3−置換ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンなどのピラゾロ化合物(例えば、米国特許第5,378,825号明細書、同第6,949,367号明細書および国際公開第93/13121号))であればよい。
【0035】
核酸は、骨格が1つ以上の位置で窒素含有塩基を有さない「脱塩基」位を含むことができる(米国特許第5,585,481号明細書)。例えば、1つまたは複数の脱塩基位置が、独立したオリゴヌクレオチド配列を一緒につなげるリンカー領域を形成することができる。核酸は、従来のRNAおよびDNAに見られるように従来の糖、塩基、および結合のみを含んでいてもよく、従来の構成要素および置換を含むこともできる(例えば、2'メトキシ骨格で連結された通常の塩基、または従来の塩基および1つまたは複数の類似体の混合物を含むポリマー)。この用語は、「ロックド核酸」(LNA)を含み、RNA模倣糖コンフォメーションにおいてロックされた二環式フラノースを有する1つまたは複数のLNAヌクレオチドモノマーを含み、一本鎖RNA、一本鎖DNA、または二本鎖DNA中の相補的な配列のためのハイブリダイゼーション親和性を強化させる(Vester et al., 2004, Biochemistry 43(42):13233-41)。
【0036】
本明細書で使用される用語「放出すること(releasing)」または「放出された(released)」は、2つの別個のオリゴヌクレオチド鎖を形成する核酸の二本鎖を変性させる温度まで加熱することにより、そのテンプレートから所望の増幅された核酸を分離することを意味する。
【0037】
本明細書で使用される用語「除去すること(removing)」は、二本鎖の1つの核酸鎖をもう一方から単離、さもなければ除去および分離するために使用される種々の方法を意味し、例えば二本鎖の鎖の一方の酵素的、熱的および/または化学的消化、分解および/または開裂、または熱、音響エネルギー、化学物質、酵素またはそれらの組み合わせによる鎖の変性/解離等である。
【0038】
用語「タグ領域」または「タグ配列」は、オリゴヌクレオチドまたはプライマーなどの他の核酸構造中に1つ以上の所望の機能を与えるために組み込まれるユーザーにより定義された1つまたは複数の核酸配列を意味する。そのようなエレメントの例としては、例えば、アダプタ、配列決定プライマー、増幅プライマー、捕捉及び/又はアンカーエレメント、ハイブリダイゼーション部位、プロモーターエレメント、制限エンドヌクレアーゼ部位、検出エレメント、質量タグ、バーコード、結合エレメント、および/または非天然ヌクレオチドなどが挙げられる。他のエレメントとしては、混合物中で他の核酸または核酸断片から、タグ配列が組み込まれている1つあるいはそれ以上の核酸または核酸断片を明確に区別するおよび/または同定するもの、交差反応性などを最小限に抑えるため核酸の混合物中において他に存在しないエレメント、および配列方向の決定を補助するためのエレメントなどを含む。タグ配列内のいくつかまたはすべてのエレメントは、増幅産物中に組み込むことができる。
【0039】
本明細書中で使用される用語「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする(hybridize)」、「アニール(anneal)」または「アニーリング(annealing)」は、適切な条件下で、ワトソン・クリック塩基対合によりお互い結合する実質的に相補的な配列を有する核酸についての能力を意味する。核酸のアニーリングまたはハイブリダイゼーション技術は本技術分野で周知である。参照:Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y. (1989); Ausubel, F.M., et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Secaucus, N.J.(1994)。本明細書で使用される用語「実質的に相補的」は、結合核酸の完全な相補性、ならびに核酸の所望の結合を達成するのに十分な相補性の両方を意味する。同様に、用語「相補的なハイブリッド」は、実質的に相補的なハイブリッドを包含する。
【0040】
本明細書で使用される用語「ディスプレーサーオリゴヌクレオチド」または「ディスプレーサー」は、同じ標的核酸上に結合された他の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドの3'である標的配列内の位置で核酸標的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを意味する。ディスプレーサーがポリメラーゼで伸長されると、成長している伸長産物は他の結合された1つまたは複数のオリゴヌクレオチドに遭遇し、その結合した1つまたは複数のオリゴヌクレオチドによって開始された任意の1つまたは複数の伸長産物と共に、核酸鎖からそれ/それらを外す。
【0041】
本明細書で使用される用語「ブロッカーオリゴヌクレオチド」または「ブロッカー」は、修飾オリゴヌクレオチドまたは核酸に結合する薬剤、または修飾された核酸に結合する薬剤であって、複製を予防または阻害することができ、増幅反応においてプライマーおよび/またはプローブ中に組み込まれるものを意味する。ブロッカーオリゴヌクレオチドは、2'フルオロ(2'−デオキシ−2'−フルオロヌクレオシド)修飾、ヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド、またはすべて複製を阻害または防ぐ3'−修飾を有するヌクレオチドを含むことができる。
【0042】
核酸配列を増幅する一般的な方法は、本技術分野において、十分に説明され、周知である。そのような方法はいずれも、本発明の方法で用いることができる。一部の実施形態において、増幅は、例えば、VogelsteinおよびKinzler("Digital PCR," PNAS, 96:9236-9241(1999)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたもののようなデジタルPCR法を使用する。そのような方法は、標的領域の増幅に先立ち、標的領域を含む試料を希釈することを含む。希釈は、従来のプレート、マルチウェルプレート、ナノウェルへの希釈、及びマイクロパッド上への希釈または微小液滴などを含むことができる。(参照:Beer NR, et al., "On-chip, real time, single copy polymerase chain reaction in picoliter droplets," Anal. Chem. 79(22):8471-8475(2007); Vogelstein and Kinzler, "Digital PCR," PNAS, 96:9236-9241(1999);およびPohl and Shih, "Principle and applications of digital PCR," Expert Review of Molecular Diagnostics, 4(1):41-47 (2004);これらのすべては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)いくつかの実施形態において、増幅はデジタルPCRによるものである。
【0043】
いくつかの場合において、標的領域の増幅のために、本発明の方法で使用される酵素には、3'−5'エキソヌクレアーゼプルーフリーディング能力を有するDNAポリメラーゼなどの高忠実度DNAポリメラーゼなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。この方法で使用することができる酵素の例としては、AmpliTaq、Phusion HS II、Deep Vent、およびKapa HiFiDNAポリメラーゼなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
高忠実度酵素は、標的配列の高忠実度(高精度)増幅を可能にする。いくつかの実施形態において、用いられる酵素は、3'−5'エキソヌクレアーゼプルーフリーディング能力を有するDNAポリメラーゼなどの高忠実度DNAポリメラーゼを含む。この方法で使用することができる酵素としては、AmpliTaq、Phusion HS II、Deep Vent、およびKapa HiFiDNAポリメラーゼなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
増幅産物は、当業者に公知の多くの方法、例えばこれらに限定されるものではないが、蛍光、電気化学検出、ゲル分析および配列決定などを用いて分析/検出することができる。さらに、産物は、リアルタイム増幅等の当業者に公知の多くの方法を用いて定量することができる。定量は、アクチンまたはGAPDHなどのいわゆる「ハウスキーピング遺伝子」と、または既知の量で反応に添加できる内部標準と比較することによって標準化することができる。そのような方法は周知であり、SambrookおよびRussell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd Ed.) (2001)に記載されている。
【0046】
本明細書に記載の方法を実行するための機器類は容易に入手可能である。このような機器には、リアルタイムおよびエンドポイントPCRアッセイ、エマルジョンPCR、固相PCR、融解曲線分析、および配列決定分析のための機器が挙げられる。このような機器には、ライフテクノロジーズ7500 Fast Dxリアルタイム機器(高解像度融解曲線分析も可能)および3500x1キャピラリーゲル機器が含まれる。本発明の方法において有用である本技術分野で公知の他の機器も、本発明の方法を実施する際に当業者の使用のために考慮される。
【0047】
本発明は、核酸の混合物を含有する試料からの核酸標的の固定化及び増幅のための方法を提供する。増幅の様々な技術は本技術分野で知られている。これらの公知の方法の一部は、本発明の方法で活用することができる。特許出願公開第2011/0003305号公報は、これらの方法のいくつかを開示しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0048】
本発明の方法は、多種多様な核酸構造および組成を利用する。これらのオリゴヌクレオチドの合成は、当業者に周知の標準的なホスホルアミダイト化学を用いて実施された。
【0049】
図1Aに示した本発明の1つの方法は、固体支持体の同じまたは隣接領域または別の支持体のいずれかに結合した第一及び第二固定化オリゴヌクレオチドを提供する。第一固定化オリゴヌクレオチドの配列は、標的核酸配列の第一部分に相補的である。第二固定化オリゴヌクレオチドの配列は、標的核酸配列の第二部分に同一である。第一固定化オリゴヌクレオチドの3'−末端は、第二固定化オリゴヌクレオチドの3'−末端が伸長を可能とするのに対し、その伸長を防止する方法でブロックされている。
【0050】
当技術分野で一般に知られているように、オリゴヌクレオチドの3'−末端は、ブロッキング部分を使用して、化学的または構造的にブロックすることができる。ブロックされたオリゴヌクレオチドは、例えば、米国特許第5,399,491号明細書、同第5,554,516号明細書、同第5,824,518号明細書および米国出願公開第2006−0046265号公報に記載されている。ブロックされたオリゴヌクレオチドとは、通常3'−末端にまたはその近くに化学的および/または構造的な修飾を含み、酵素的手段によるそのオリゴヌクレオチドからのDNA合成の開始を防止または妨げるオリゴヌクレオチドを意味する。そのような修飾の例としては、3'2'−ジデオキシヌクレオチド塩基、酵素的伸長を防止する3'−非ヌクレオチド部分、または2つの5'−末端を有する最終的なオリゴヌクレオチドを作るためのオリゴヌクレオチドの3'−〜5'−方向に短い配列のアタッチメント(すなわち、第1の5'−〜3'−オリゴヌクレオチドが、通常、より短い第2の5'−〜3'−オリゴヌクレオチドに、それらの3'−末端で共有結合することにより接続される)の使用を含む。修飾の他の例は、オリゴヌクレオチドの3'−末端で少なくとも3個のヌクレオチドに相補的な配列から構成される「キャップ」であり、キャップの5'−末端塩基がオリゴヌクレオチドの3'−末端塩基に相補的である。また、オリゴヌクレオチドの伸長阻止は、その3'−末端を固体支持体に連結することによって達成することができる。したがって、本発明で使用する固定化オリゴヌクレオチドは、伸長のブロックが所望される場合には、その3'−末端またはその近くで固体支持体に結合されるように配向することができる。
【0051】
標的核酸配列の第一部分と第二部分は、同じであってもよく、また異なっていてもよい。ほとんどの状況では、第一及び第二固定化オリゴヌクレオチド配列は、厳密には相補的でないことが好ましい。
【0052】
一例では、試料由来の標的RNA(例えばmRNA)は、第一固定化オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションにより固体支持体上に固定化される。これは、第一および第二固定化オリゴヌクレオチドが別々の支持体に結合している場合には、第一固体支持体とすることができる。固体支持体は、試料の結合されていない成分を除去するために洗浄される。次に、標的結合領域およびタグ領域(タグ領域がポリメラーゼのプロモーター配列(例えばT7 RNAポリメラーゼプロモーター配列)を含む)を含む第一プライマーが固定された標的RNAにハイブリダイズする。第一プライマーは、その後、標的RNAのセグメントに結合した第一cDNA鎖を生成するためにポリメラーゼ酵素を使用して伸長される。標的RNAのセグメントは、その後酵素的に分解され(例えばRNaseHなど)、溶液中に第一cDNA鎖を遊離させる。第一cDNA鎖は、その後第一固体支持体上の(または、第一および第二固定化オリゴヌクレオチドが別々の支持体に結合している場合は第二固体支持体上の)第二固定化オリゴヌクレオチドにアニールする。第二固定化オリゴヌクレオチドは、その後ポリメラーゼ酵素を使用して伸長され、第一cDNA鎖のセグメントに結合した第二cDNA鎖を生成する。これにより、活性な二重鎖T7 RNAポリメラーゼプロモーター部位を含む二本鎖が作り出される。複数のRNA転写物は、次いで、T7 RNAポリメラーゼを使用して、この二本鎖から溶液中に生成される。
【0053】
あるいは、第一固定化オリゴヌクレオチドは、この方法において第一プライマーの伸長を停止させるために使用することができる。そのため、所望であれば、第一cDNA鎖の長さは、第一固定化オリゴヌクレオチドの標的鎖上の位置によって決定することができる。例えば、このブロッキング特性は、標的核酸がRNAである場合2'−メトキシ残基を、または標的がDNAである場合ロックド核酸(LNA)を付けることなどの、標的核酸に対する非常に高いアフィニティーをもたせるように固定化オリゴヌクレオチドの標的結合領域を設計することにより、またはポリメラーゼの進行を阻止するためブロックグループ(立体的ブロッカー、インターカレート分子またはグルーブ結合剤等)を5'−末端に結合させることにより生じさせることができる。この技術は、本発明の他の方法においても利用することができる。
【0054】
一実施形態では、第一および第二固定化オリゴヌクレオチドは、多種多様な方法で1つまたは複数の固体支持体上に構成することができ、同じ固体支持体に両方のオリゴヌクレオチドを結合することを含むが、これらに限定されるものではない。これは、固定化オリゴヌクレオチドを本質的に表面全体に結合すること、または固定化オリゴヌクレオチドを表面上の特定の領域、例えばスポット、膜の層などの表面の一部、あるいはワイヤまたはチューブ上のような表面のセグメントなどに結合することを含む。固定化オリゴヌクレオチドは混合することができ、あるいは支持体上の別々の位置、例えば異なるスポット、膜の異なる部分またはワイヤまたはチューブの異なる領域に結合させてもよい。これらの別々の位置は、アッセイの設計フロー、およびアッセイ装置、デバイスまたは機器の構成に応じて、互いに直接隣接していてもよく、または遠位位置(種々の程度に)であってもよい。あるいは、オリゴヌクレオチドのそれぞれは、異なる支持体に結合されていてもよい。例えば、固定化オリゴヌクレオチドは、異なる粒子、異なるワイヤ、膜の異なる層、アレイの異なる個々のパッド、デバイスの異なるチャンバ、または異なる繊維に結合されていてもよい。
【0055】
異なる支持体は、異なる種類の固体支持体であってもよい。例えば、第一オリゴヌクレオチドはチャンバの壁に結合されていてもよく、第二オリゴヌクレオチドはチャンバの内側部分内の繊維メッシュに結合されていてもよい。あるいは、2つの異なる支持体は、例えば膜と表面、チューブとウェル、またはチューブとワイヤであってもよい。
【0056】
異なる固体支持体は、懸濁粒子の混合物、繊維マトリックスまたはワイヤーの束などのように相互に散在していてもよい。それらはまた、スタティックビーズアレイ、アレイの個々のパッド、膜の異なる層、またはマイクロ流体デバイス等のデバイス内の異なるチャンバ等、個別の位置であることができる。
【0057】
さらに、種々の固体支持体は、アッセイの設計フロー、およびアッセイ装置、デバイスまたは機器の構成に応じて、互いに直接隣接して構成されていてもよく、または遠位位置(種々の程度に)で構成されていてもよい。本発明において使用することができる多種多様な固体支持体の種類としては、多孔質または非多孔性粒子、繊維、膜、ワイヤ、メッシュ、チューブ、チャンバ、ウェルおよびフローセル等が含まれるが、これらに限定されるものではない。支持体のスケールは、マクロからミクロ、ナノまたはそれ以下の範囲で変化してもよい。
【0058】
この方法は、所望のRNA転写産物の数を増加させる追加の工程を含んでもよい。上記生成されたRNA転写物は、その後第二固定化オリゴヌクレオチドにアニールすることができ、ポリメラーゼを用いて伸長され、追加の第二cDNA鎖を生成する。得られたRNA:DNA二本鎖のRNAはRNaseHを用いて分解され、第一プライマーがこれらの追加の二cDNA鎖にハイブリダイズされる。第一プライマー及び追加の第二cDNA鎖が伸長され、活性なT7 RNAポリメラーゼプロモーターで二本鎖を生成し、より多くのRNA転写物がT7 RNAポリメラーゼを用いて製造される。溶液中のこれらの追加のRNA転写物は、第二固定化オリゴヌクレオチドにアニールされ、サイクルが繰り返される。
【0059】
上記実施形態では、第一固定化オリゴヌクレオチドの配列は、高特異性または低特異性、あるいは特定の所望のレベルの特異性で目的の標的にハイブリダイズするように設計することができる。これにより、単一標的配列の非常に特異的な捕捉または試料中に存在するすべての/ほとんどの/多くの核酸の一般的な非特異的捕捉が可能となる。同様に、第一プライマーおよび第二固定化オリゴヌクレオチドはまた、任意の所望の特異性のレベルで結合するように設計することができる。例えば、第一プライマーの配列と2つのオリゴヌクレオチドとは、目的の標的核酸の非常に特定の領域に正確に相補的であるように設計することができ、(適切な結合条件下で)高いレベルの特異性をもたらす。また、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドの配列は、1つだけまたはいくつかの相違点(例えばSNP、点変異、または2つ以上のSNPまたは点変異)を含む配列間を区別するように設計することができる。SNPまたは点変異を識別するための1つの方法は、3'−末端にSNP/突然変異の部位を有するように1つまたは両方のプライマーを設計することである。正しい一致は、伸長および増幅を可能とする一方、ミスマッチでは伸長および増幅ができない。
【0060】
オリゴヌクレオチドはまた、遺伝的転座事象(例えば慢性骨髄性白血病におけるBCR/abl)または他の融合事象(例えば前立腺がんにおけるT2:ERG)の産物であるmRNA標的などのキメラ標的の接合部位にまたがるように設計してもよい。あるいは、いずれかのオリゴヌクレオチドの配列が中程度の特異性で標的の複数の領域に結合するように設計することができる。
【0061】
上述の実施態様の第二の実施形態では、ディスプレーサーオリゴヌクレオチドはまた、第一プライマーの3'にある位置で標的核酸にハイブリダイズすることができる。第一プライマーが伸長されると、ディスプレーサーも伸長され、標的核酸から第一プライマーの伸長産物を外す。このアプローチの1つの利点は、標的核酸から伸長産物を取り除くために熱変性を必要としないということである。例えば標的がDNAである場合、RNaseHでの消化は考慮されない。更に、ディスプレーサーの伸長産物は、増幅過程に入ることもでき、それにより増幅収量を増加させる。さらに、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、標的核酸にハイブリダイズすることもできる。ブロッカーが、プライマーの5'側の位置で標的核酸に結合する。ブロッカーは、プライマー(ならびに使用される場合はディスプレーサー)の伸長を停止させ、これにより伸長産物の長さを規定することとなる。ディスプレーサーおよび/またはブロッカーオリゴヌクレオチドを採用するこの技術は、本発明の他の方法においても利用することができる。
【0062】
第三の実施形態では、オリゴヌクレオチドの配列は、縮重塩基および/またはランダムな塩基の領域を含んでもよく、またはその全体がランダムな塩基からなっていてもよく、これにより低い特異性をもたらす。本明細書に記載される方法は、上述の方法で第一および第二固定化オリゴヌクレオチドと第一プライマーとを用いて特異性を調節することができるという点において、アッセイ特異性の制御に関して他の既存の方法に対する改善をもたらす。例えば、第一および第二固定化オリゴヌクレオチドと第一プライマーとを高い特異性で標的核酸にハイブリダイズするように設計することにより、優れた特異性を達成することができる。これに対応して、標的核酸の第一固定化オリゴヌクレオチドへの結合は、より低い特異性の条件下で行うことができる。これにより、野生型および変異型配列などの複数の種類の標的が捕捉できる一方、第二固定化オリゴヌクレオチドの伸長は高い特異性で行うことができる。これは、SNPsまたは点突然変異の検出を可能とする(上記参照)。これらの条件下では、第一プライマーの特異性は、特異性の所望の全体的なレベルを提供するように調整することができる。
【0063】
第四の実施形態では、一組の4つの異なる第二固定化オリゴヌクレオチドが設計され、各々は3'−末端に異なるヌクレオチド(A、C、GまたはT)を備える。各々は標的核酸の対応する位置において異なるSNPに対して特異的である。一構成では、これらの4つの異なる第二固定化オリゴヌクレオチドは、第一固定化オリゴヌクレオチドを取り巻く固体支持体に結合してもよい。第一固定化オリゴヌクレオチドを用いる目的の標的核酸の捕捉および第一鎖cDNAの生成、cDNAの第二固定化オリゴヌクレオチドによる再捕捉および特異的伸長(すなわち、一致した3'−末端が伸長し、ミスマッチのものは伸長しない)の後、すべての4つの可能なSNPsを1つのアッセイで同定することができる。
【0064】
第五の実施形態では、T7プロモーターを、SP6およびT3などの種々のプロモーターで置換することができる。この置換がなされた場合、そのプロモーターに対応する適切な酵素が伸長のために使用される。
【0065】
第六の実施形態では、第一プライマーはさらにタグ領域を含み、タグ領域は、所望の機能性を提供する他のエレメントを含んでいてもよい。このようなエレメントの例には、アダプター、配列決定プライマー、増幅プライマー、追加の捕捉エレメント、検出エレメント、質量タグ、バーコードおよび結合エレメントなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらのエレメントは、増幅産物中に組み込まれる。また、第二固定化オリゴヌクレオチドは、標的核酸結合領域の5'に位置するタグ領域を含んでもよく、また、所望の機能性を加える他のエレメントを含んでもよい。他のエレメントの例は直前に挙げられている。
【0066】
第一プライマーのタグ領域は、さらにイソシトシン(isoC)及びイソグアニン(isoG)(
図2)などの非天然ヌクレオチドを含む。これらの非天然のヌクレオチドは、それぞれイソGおよびイソCと結合するが、天然のヌクレオチド(A、C、G及びT)とは結合しない。これらの非天然ヌクレオチドは、標準的なホスホジエステル結合、または、ホスホロチオエートおよびメチルホスホネート結合のような他の結合によって共有結合で連結されていてもよい。この構成を有する第一プライマーを使用すると、イソC及び/またはイソGヌクレオチドを含む第一cDNAが生成され、次いでこれが、イソCおよび/またはイソGヌクレオチドをまた含むRNA転写物を生成するために使用される。増幅の次の回では、第一プライマーから生成された配列に結合するプライミング領域を含む第二プライマーが利用される。このプライミング領域は、第一回の増幅で生成されたイソCおよび/またはイソGヌクレオチドに相補的であるイソCおよび/またはイソGヌクレオチドを含む。増幅はその後前述したように進むが、今度は第二プライマーによって駆動される。この態様の1つの利点は、第二プライマーがイソCおよび/またはイソGヌクレオチドに非常に特異的であり、標的の他の領域に結合しないので、増幅副生成物を減少させることである。他の非天然塩基対を使用してもよいが、それらは互いに対を作るが、天然ヌクレオチド(A、C、G及びT)とは対を作らず、DNAおよび/またはRNAポリメラーゼの基質となる。例として、非天然のヌクレオチドとしては、6−アミノ−5−ニトロ−3−(10−β−D−20−デオキシリボフラノシル)−2(1H)−ピリドン(Zとして知られている)及び2−アミノ−8−(10−β−D−20−デオキシリボフラノシル)−イミダゾ[1,2−a]−1,3,5−トリアジン−4(8H)−オン)(Pとしても知られいる)(Steven A. Benner, J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 15105-15112)、2,4−ジアミノ−5−(3−D−リボフラノシル)ピリミジン(pyDAD)と2'−デオキシキサントシン(puADA)(米国特許第8,354,225号明細書)とピリジン−2−オンおよび2−アミノ−6−(2−チエニル)プリン(Lee & Berdis, Biochim Biophys Acta, 2010 May; 1804(5): 1064-1080)があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
図6に示した本発明の第二の実施態様は、いずれも固体支持体の同じまたは隣接領域に、または別々の支持体に結合した第一及び第二固定化オリゴヌクレオチドを提供する。第一固定化オリゴヌクレオチドの配列は、標的配列の第一部分に相補的である。第二固定化オリゴヌクレオチドの配列は、標的配列の第二部分と同じである。第一固定化オリゴヌクレオチドの3'−末端は、第二固定化オリゴヌクレオチドの3'−末端が伸長を可能とするのに対し、伸長を防止する方法でブロックされている。
【0068】
標的核酸配列の第一部分と第二部分は、同じであっても異なっていてもよい。ほとんどの状況では、第一及び第二固定化オリゴヌクレオチド配列は、厳密には相補的でないことが好ましい。
【0069】
増幅法は、RNAまたはDNA標的核酸を用いて行うことができる。一例では、試料からのRNA標的(例えばmRNA)は、第一固定化オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションにより固体支持体上に固定化される。第一および第二固定化オリゴヌクレオチドが別々の支持体に結合している場合、これは第一固体支持体であってもよい。固体支持体は、試料の結合されていない成分を除去するために洗浄される。
【0070】
標的結合領域を含む第一プライマーは、固定された標的RNAにハイブリダイズされる。第一プライマーはポリメラーゼにより伸長され、固定化標的RNAのセグメントに結合した第一cDNA鎖を生成する。RNA標的のセグメントは酵素的に分解され(例えばRNaseHなど)、溶液中に第一cDNA鎖を遊離する。第一cDNA鎖は、第一固体支持体上の、あるいは第一および第二固定化オリゴヌクレオチドが異なる支持体に結合している場合には第二固体支持体の第二固定化オリゴヌクレオチドにアニールされる。第二固定化オリゴヌクレオチドはポリメラーゼを用いて伸長され、第一cDNA鎖のセグメントに結合した第二cDNA鎖を生成する。第一プライマーおよび/または第二固定化オリゴヌクレオチドはさらにタグ配列を含むことができる。
【0071】
二本鎖はその後分離される(例えば熱変性等)。第一プライマーは、固体支体に結合された第二cDNA鎖にハイブリダイズされ、第一cDNA鎖は、第二固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズされる。さらに、元の標的鎖は、第一固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、第一プライマーは元の標的鎖にハイブリダイズする。第一プライマーおよび第二固定化オリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼによって伸長され、プロセスが繰り返される。このサイクルは、所望の増幅がなされるまで繰り返すことができる。別のワークフローが本発明のこの実施形態で利用できることは、当業者によって認識される。例えば、第一プライマーは、標的核酸が第一固定化オリゴヌクレオチドに結合するのと同じ工程において、標的核酸に結合してもよい。また、元の標的鎖と第一cDNA鎖とは、熱変性などのRNAseH消化以外の方法を用いて分離することができる。
【0072】
図7に示す本発明の第三の実施態様では、固定化オリゴヌクレオチド/プライマーは、固体支持体にハイブリダイズされる。固定化オリゴヌクレオチド/第一プライマーの配列は、標的配列の第一部分に相補的である。本実施形態の一例では、標的の第一部分の5'側に、標的の第二部分に相補的なブロッカーオリゴヌクレオチドも必要に応じて提供される。ブロッカーオリゴヌクレオチドは標的核酸にハイブリダイズされ、標的核酸は固体支持体上の固定化オリゴヌクレオチド/第一プライマーにハイブリダイズされる。
【0073】
固体支持体は、試料の結合されていない成分を除去するために洗浄される。固定化オリゴヌクレオチド/第一プライマーは、ポリメラーゼで伸長され、伸長はブロッカーで終結し、固体支持体に結合された定義された長さの第一二本鎖核酸を生成する。標的核酸は、固体支持体に結合された第一核酸を残して、第一二本鎖から除去される(例えば、標的がRNAまたは熱変性である場合にRNaseHで消化など)。結合領域およびタグ領域(タグ領域は、ポリメラーゼプロモーター配列(例えばT7 RNAポリメラーゼプロモーター配列)そして必要に応じて伸長を防止する方法でブロックされた3'−末端を含む)を含む第二プライマーは、その結合領域が第一核酸の3'−末端と重なり合うように第一核酸にハイブリダイズされる。
【0074】
第一核酸は、活性な二重鎖T7 RNAポリメラーゼプロモーター部位を含む第二二本鎖核酸を生成するように伸長される。複数のRNA転写物は、次いで、T7 RNAポリメラーゼを使用して、この二本鎖から溶液中に生成される。これらのRNA転写物は、固体支持体上の固定化オリゴヌクレオチド/プライマーにハイブリダイズすることができ、固定化オリゴヌクレオチド/プライマーは、第三二本鎖核酸を生成するためにポリメラーゼにより伸長される。第三二本鎖のRNA鎖は、固体支持体に結合された第三核酸を残して除去される(例えばRNaseH消化、熱変性など)。第二プライマーはその後第三核酸にハイブリダイズされ、サイクルは所望の増幅が達成されるまで繰り返される。
【0075】
第四の実施態様では、新鮮凍結またはホルマリン固定パラフィン包埋組織試料などの断片化された試料から増幅された標的核酸の方向を決定するための方法が提供され、配列決定が簡素化される(
図3)。
【0076】
一例では、新鮮凍結もしくはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織、体液または他の同様な試料由来の核酸は、断片化され、多様な核酸を生成する。標的核酸の最初の捕捉は、第一プライマーとのハイブリダイゼーションの前にまたは後に起こってもよい。また、捕捉は、イオン性結合または他の結合性相互作用(核酸縮合または密集法(crowding method)など)に基づくまたは駆動されるハイブリダイゼーションであってもよい。必要に応じて、捕捉はヘアピンプライマーを利用することができる。一般に、捕捉は、捕捉が第一プライマーまたはヘアピンプライマーの伸長を妨げないように、標的核酸の5'−末端に向けられるか、または標的核酸配列の長さに沿った弱い相互作用に基づく。あるいは、標的/第一プライマー複合体は、過剰な第一プライマーを除去した後、固体支持体から放出される。
【0077】
あらかじめ結合されていない場合、第一プライマーまたはヘアピンプライマーは標的核酸にハイブリダイズされる。第一プライマーは、その3'−末端にランダム、または大部分がランダムである約6〜約9ヌクレオチドセグメントを、そしてその5'−末端にタグ配列を含む。バーコード配列は、必要に応じてタグ配列に含まれ、典型的には3'-ランダム配列とタグ配列の残り部分との間に挿入される。このタグ配列カセット、または(含まれる場合)バーコード配列またはその2つの組み合わせは、初期mRNA標的配列の方向を決定するために使用されものである。プライマーがヘアピンプライマーである場合、良好なエンドスタッキング相互作用に起因する標的核酸配列の3'−末端に優先的にハイブリダイズする約6〜約9のオーバーハング3'ランダムヌクレオチド領域を含む。あるいは、ヘアピンは標的配列の3'−末端にライゲートすることができる。
【0078】
第一プライマーまたはヘアピンプライマーの標的核酸へのハイブリダイゼーションが完了すると、固体支持体は過剰プライマーを除去するために洗浄され、プライマーは適当なポリメラーゼを用いて伸長される。通常では、ポリメラーゼは、mRNA標的の場合、逆転写酵素である(任意にはRNaseH活性を欠く)。これは、標的核酸上の第一プライマーのハイブリダイゼーション位置に依存して1つまたは複数のcDNA/mRNA複合体を生成する。具体的には、プライマーが3'−末端にハイブリダイズしたかまたは標的mRNAの長さに沿った複数の位置でハイブリダイズしたかによる。
【0079】
cDNAは標的mRNAから分離される。この工程は、RNaseHによる消化により達成することができる。遊離のcDNAは、通常ではプロトコルの前工程で使用されたのと同じ捕捉方法を用いて捕捉され、第一プライマーと類似している第二プライマーにハイブリダイズされる(必要でない場合バーコードを含めなくてもよい)。cDNA/第二プライマー複合体は、過剰のプライマーを除去するために洗浄される。第二プライマーは、適切なDNAポリメラーゼを用いて伸長される。しかし、DNAポリメラーゼ活性を有する逆転写酵素を用いてもよい。この伸長の産物(以下構築物という)は、それらの5'−末端および3'−末端の両方に既知のタグ配列を有することになる。
【0080】
これらの構築物は、その後第一および第二プライマーに対する元のタグ配列の少なくとも1つのセグメントとそれぞれ同一である第三及び第四プライマーを用いて増幅される。これら第三及び第四プライマーはまた任意に、第一および/または第二プライマーのタグ配列に含まれていなかった所望の機能的エレメントを含むそれらの5'−末端に位置するタグ配列を含有することができる。必要に応じて、種は、適切かつ所望のこの方法の任意の場所でサイズに応じて分離することができる。
【0081】
この方法はDNA標的に利用されることもでき、DNAポリメラーゼがRNAポリメラーゼの代わりに使用され、DNA/DNA二本鎖における鎖は熱変性などRNA消化以外の手段によって分離される。さらに、第一および第二プライマーは、標的配列へのそれらのハイブリダイゼーション特性を改善するために、5−メチル−dC、2,6−ジアミノプリン、C5プロピニル−dCおよび−dU、ならびに2'−F−修飾ヌクレオチド等のヌクレオチド類似体で修飾することができる。
【0082】
第五の実施態様では、ディスプレーサーとブロッカーオリゴヌクレオチドとを用いる所定の長さの増幅された標的核酸を調製するための方法が提供される。
【0083】
一例では、第一プライマーは固体支持体上に固定化される(
図4)。第一プライマーの配列は、標的核酸配列の第一部分に相補的である。ディスプレーサーオリゴヌクレオチド、ブロッカーオリゴヌクレオチドおよび標的核酸は固体支持体に追加される。ディスプレーサー配列は標的核酸の第二部分に相補的である。第二部分は第一部分の3'側に位置している。ブロッカー配列は標的核酸の第三部分に相補的である。第三部分は標的の第一部分の5'側に位置する。ディスプレーサーおよびブロッカーオリゴヌクレオチド両方は、標的核酸にハイブリダイズされ、ハイブリダイズされた標的は第一プライマーのハイブリダイゼーションにより固体支持体上に固定化される。
【0084】
固体支持体は、試料の結合されていない成分及び結合していないブロッカーおよびディスプレーサーオリゴヌクレオチドを除去するために洗浄される。第一プライマーは、ポリメラーゼによって伸長される。伸長はブロッカーオリゴヌクレオチドで終結し、固体支持体に結合された所定の長さの第一核酸を含む第一二本鎖を生成する。ディスプレーサーオリゴヌクレオチドはまた、ポリメラーゼによって伸長され、第一二本鎖から標的核酸を外す。伸長はブロッカーオリゴヌクレオチドで終結し、固体支持体に結合していない定義された長さの第二核酸を含む第二二本鎖を生成する。
【0085】
その後、第二プライマ―が第一核酸にハイブリダイズされ、ポリメラーゼによって伸長され、第一核酸と第三核酸を含む第三二本鎖を生成する。第二および第三二本鎖はまた、熱変性または本技術分野で公知の他の適切な手段等で解離される。第二プライマーは、第一核酸にアニーリングし、ポリメラーゼにより伸長され、より多くの第三二本鎖を生成する。
【0086】
第三核酸は、空いている第一プライマーへのハイブリダイゼーションによって固体支持体上に固定化される。第一プライマ―は、ポリメラーゼにより伸長され、より多くの第三二本鎖核酸を生成する。元の標的核酸鎖は、そこに結合されたディスプレーサーおよびブロッカーオリゴヌクレオチドと共に、空いている第一プライマーにハイブリダイズされ、第一プライマーは、より多くの第一二本鎖核酸を生成するためにポリメラーゼにより伸長される。ディスプレーサーオリゴヌクレオチドはまた、ポリメラーゼによって伸長され、第一二本鎖核酸の標的核酸鎖を外す。伸長はブロッカーオリゴヌクレオチドで終結し、支持体に結合されていない定義された長さの第二核酸を含む第二二本鎖核酸を生成する。
【0087】
第二プライマーが第二核酸にハイブリダイズされ、ポリメラーゼによって伸長され、第二核酸と第四核酸を含む第四二本鎖核酸を生成する。その後すべての二本鎖は変性され、そしてそのサイクルは所望のように繰り返される。
【0088】
この例の一実施形態では、追加のブロッカーおよび/またはディスプレーサーオリゴヌクレオチドは洗浄工程の後に上記の反応混合物に添加される。あるいは、ブロッカーとディスプレーサーオリゴヌクレオチドは、標的との最初のハイブリダイゼーション工程で除外されるが、洗浄工程の後に加えられる。
【0089】
第二の実施形態においては、ディスプレーサーおよび/またはブロッカーオリゴヌクレオチドが省略される。ディスプレーサーが省略される場合、そうでなければ置換活性を介してお互いに分離されていた二本鎖の鎖は、今回は熱変性等他の手段によって分離される。
【0090】
この例の第三の実施形態では、一方または他方または両方のプライマーがタグ配列を含む。一構成では、一方または両方のタグ配列は、ユーザ選択配列である追加のプライマー部位を含む。これらの1つまたは2つの追加のプライマー配列は、上記の第1回目の増幅後の増幅を駆動するために利用することができる。さらに、これらの1つまたは2つの追加プライマーは、上述した第一プライマーが結合している固体支持体と同じまたは異なるいずれかの1つまたは複数の固体支持体に取り付けることができる。
【0091】
また、本発明の特定の実施形態に関連して本明細書中において説明されるタグ配列の包含および潜在的使用は、本発明の他の実施形態にも同様に適用されること意図される。
【0092】
第四の実施形態では、(固体支持体に結合された)第一プライマーは、試料由来の多くの標的核酸の固定化をサポートする配列を有する。例えば、第一プライマーの配列は、多くの標的核酸の結合をサポートする長さで約6〜約9ヌクレオチドのランダムなヌクレオチドのストレッチを含むことができる(例えば、mRNA標的の複数の断片など)。あるいは、第一プライマーの配列は、多くの標的核酸の集団の規定または半規定サブセットの結合をサポートする長さで約8〜約20ヌクレオチドのセミランダムなヌクレオチドのストレッチを含むことができる(例えば、ゲノムDNA標的からの複数の断片など)。さらに、いくつかの他のレベルの特異性は、試料中の目的の標的核酸の大部分が固定化できるように設計することができる。プライマーが伸長され、手順が上述のように継続される。
【0093】
第五の実施形態では、方法は固体支持体に結合された第一および第二固定化オリゴヌクレオチド/プライマーを提供する(
図5)。第一固定化オリゴヌクレオチド/プライマーの配列は、標的核酸配列の第一部分に相補的である。第二固定化オリゴヌクレオチド/プライマーの配列は、標的核酸配列の第二部分と同一である。一例において、ディスプレーサーおよびブロッカーオリゴヌクレオチドが増幅法で使用される。ディスプレーサーオリゴヌクレオチドは、標的核酸の第二部分に相補的である配列を有し、その第二部分は標的核酸の第一部分の3'側に位置する。ブロッカーオリゴヌクレオチドは標的核酸の第三部分に相補的である配列を有し、その第三部分は標的核酸の第一部分の5'側に位置する。ディスプレーサーおよびブロッカーオリゴヌクレオチドは標的核酸にハイブリダイズされ、標的核酸は固体支持体上の第一固定化オリゴヌクレオチド/プライマーにハイブリダイズされる。
【0094】
固体支持体は、試料中の結合されていない成分を除去するために洗浄される。第一固定化オリゴヌクレオチド/プライマーは、ポリメラーゼによって伸長される。伸長はブロッカーオリゴヌクレオチドで終結し、固体支持体に結合され定義された長さの第一核酸を含む第一二本鎖核酸が生成される。ディスプレーサーオリゴヌクレオチドはまた伸長され、第一二本鎖核酸から標的核酸を外す。伸長はブロッカーオリゴヌクレオチドで終結し、定義された長さの第二核酸を含む第二二本鎖核酸が生成される。この第二二本鎖核酸は、固体支持体に結合されない。第二固定化オリゴヌクレオチド/プライマーは、ブリッジ構造を生成するために、固体支持体に結合された第一核酸にハイブリダイズされる(
図5参照)。
【0095】
第二固定化オリゴヌクレオチド/プライマーは、ポリメラーゼにより伸長され、共に固体支持体に結合された第一核酸および第三核酸を含む第三二本鎖核酸を生成する。第二および第三二本鎖は、その後解離される(例えば、熱変性または本技術分野で公知の他の適切な手段等により)。第一核酸は、空いている第二固定化オリゴヌクレオチド/プライマーにハイブリダイズされ、第二固定化オリゴヌクレオチド/プライマーは、より多くの第三二本鎖核酸を生成するためにポリメラーゼにより伸長される。同様に、第三核酸は、空いている第一固定化オリゴヌクレオチド/プライマーにハイブリダイズされ、第一固定化オリゴヌクレオチド/プライマーは、より多くの第三二本鎖核酸を生成するためにポリメラーゼにより伸長される。また、第二核酸は、第二固定化オリゴヌクレオチド/プライマーにハイブリダイズされ、第二固定化オリゴヌクレオチド/プライマーは、第四二本鎖核酸を生成するために伸長される。
【0096】
元の標的核酸は、そこにハイブリダイズされたディスプレーサーおよびブロッカーオリゴヌクレオチドと共に、空いている固定化オリゴヌクレオチド/第一プライマーにハイブリダイズされる。固定化オリゴヌクレオチド/第一プライマーは、ポリメラーゼにより伸長され、より多くの第一二本鎖核酸を生成する。ディスプレーサーオリゴヌクレオチドはまた伸長され、それが伸長されると第一二本鎖から標的核酸を外す。伸長はブロッカーで終結し、固体支持体に結合されていない定義された長さの第二核酸を含む第二二本鎖核酸を生成する。その後すべての二本鎖は変性され、そしてサイクルは所望のように繰り返される。
【0097】
第六の実施形態においては、標的核酸は二重鎖である。第一および第二固定化オリゴヌクレオチド/プライマーは、それぞれ二重鎖標的核酸の第一および第二鎖上の第一領域に相補的である。これらの2つの領域は、二重鎖標的核酸の異なる位置にある。一方または他方または両方の鎖は、上記のように任意のディスプレーサーおよび/またはブロッカーオリゴヌクレオチドを提供することができる。各鎖に対する方法は、1回目の増幅については上述したものと同じであり、その後置換された鎖もプロセスに入って上述したようなブリッジ増幅が進められ、これにより増幅量が増加される。溶液中に残された標的核酸は、ディスプレーサーおよび/またはブロッカーをハイブリダイズし、支持体上のプライマーに結合されるさらなるラウンドに加わり、さらなる増幅にも関与し、再び増幅量を増加させる。
【0098】
また、本発明の特定の実施形態に関して本明細書において説明される二本鎖標的の両方の鎖の増幅は、本発明の他の実施形態でも同様に増幅できることが意図される。
【0099】
上述した情報は、装置及び方法の実施形態を製造および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に与えるために設けられており、発明者が自分の発明で考慮する範囲を限定することを意図するものではない。(当業者に明らかである発明を実施するための)上記の態様の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。本明細書において引用した全ての刊行物、特許、および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、種々の方法で引用された洗浄工程の多くは任意であり、2つの核酸鎖をお互いに除去および/または分離するいくつかの工程も同様である。洗浄および/または分離工程の少なくとも一部を実施しないことにより、所望の結果を達成しながら、より速く、より簡単でより経済的なワークフローをもたらす。別の例では、例示の方法における特定のオリゴヌクレオチドおよび/または標的核酸の段階的な添加および/または結合は併合してもよい。さらに、タグ配列の使用は、いくつかの実施形態では任意であり、それらの可能性のある構成は、上記の例示したものから変化してもよいが、当業者の知識の範囲内に限る。いくつかの例では、エキソヌクレアーゼ消化を5'−末端から防止するブロッキンググループの使用は必要とされない。さらに、多種多様なポリメラーゼ、伸長条件及び当業者に公知の他の増幅プロトコールは、上述の方法における様々な工程または工程の組み合わせにおいて使用することができる。当業者に自明である開示された方法への他の自明な変更も本発明に包含される。